JP5073947B2 - 巻回型コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種電子機器に利用される巻回型コンデンサおよびその製造方法に関する。
近年、電子機器のデジタル化に伴って、コンデンサに大容量化、小型化および低消費電力化、および高周波領域でのインピーダンスの低下化が要求されている。これらコンデンサの一形態として、有底筒状のアルミニウム製ケース、樹脂ケース等の内部にコンデンサ素子が収納され、上記ケースの開口部が封口された巻回型電解コンデンサが知られている。
上記の封口方法としては、エポキシ樹脂などを流し込む方法、気密性の高い金属材料を用いて抵抗溶接する方法等が開示されている(例えば、特許文献1または2参照)。また、封止作業性および耐湿性を有するゴム等の安価な封口部材によって開口部を封口し、端子を封口部材に挿通させることも行われている。
さらに、上記コンデンサに低消費電力が要求されていることから、コンデンサからの漏洩電流を極力低減させることが必須となる。そこで、製造工程において電極箔にタブ端子を溶接し巻回した素子を電解液中にて通電し、電極箔およびタブ端子に対して化成皮膜を形成することによって漏洩電流を低減させることが行われている。また、タブ端子に絶縁性樹脂を塗布する技術もある(例えば、特許文献3参照)。
特開2000−114118号公報 特開平11−3840号公報 特開2001−284175号公報
しかしながら、特許文献1または特許文献2の技術によれば、樹脂を封入する際または抵抗溶接を行う際に、端子に負荷がかかりやすい。また、封口部材を用いる場合において、電極箔および端子に化成被膜を形成しようとしても、封口部材によって電極箔および端子への電解液の染込みが制限されることによって被膜形成効果が半減する。また、被膜形成後に封口部材を装着する場合においても、封口部材を装着する際に電極箔およびタブ端子にかかる圧力によって化成被膜が破壊されてしまう。その結果、漏洩電流の増大を招くことがある。特許文献3の技術においても同様である。
また、用途によっては、実装の為に高温リフロー半田付けのように200℃以上の熱が数秒から数分、上記コンデンサに対してかかる場合がある。この場合、電解質の分解によって内圧が上昇し、封口部材自体の膨張によって素子が圧力を受けることによって、漏洩電流の増大、さらには封口部材の変形による外観不良を招くことがある。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、漏洩電流の増加を抑制することができる巻回型コンデンサを提供することを目的とする。
本発明に係る巻回型コンデンサは、陽極端子が接続された陽極箔と陰極端子が接続された陰極箔とがセパレータを介して巻回され陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子からなる電解質層が形成されたコンデンサ素子と、開口部を有しコンデンサ素子を収容する収容部材と、陽極端子および陰極端子が貫通する貫通孔を備え収容部材の開口部を封口する封口部材とを備え、封口部材とコンデンサ素子との間には所定の間隙が介在し、陽極端子および陰極端子の少なくともいずれか一方は、リード線部と、リード線部よりも大きい径を有しリード線部に接続され封口部材の貫通孔を貫通し丸棒形状を有する第1の部材と、コンデンサ素子に接続される第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に設けられたストッパと、を含み、ストッパは、第1の部材の径よりも大きい幅を有し、前記第1の部材の一部を圧延することによって形成された平板形状を有することを特徴とするものである。
本発明に係る巻回型コンデンサにおいては、封口部材とコンデンサ素子との間の間隙によって、熱負荷等による封口部材の膨張を吸収することができる。また、ストッパが設けられていることから、封口部材とコンデンサ素子との接触をより効果的に防止することができる。それにより、封口部材からコンデンサ素子に圧力がかかることを防止することができる。その結果、陽極箔のエッジ部の破壊を防止することができる。また、封口部材とコンデンサ素子との間の間隙によって、コンデンサ素子内に残留する溶剤等の揮発による内圧上昇の影響を受けにくくなる。この場合、封口部材の変形を抑制することができる。以上のことから、本発明に係る巻回型コンデンサの漏洩電流の増加および封口部材の変形による外観不良を抑制することができる。
陽極箔、第1の部材、第2の部材およびストッパは、表面に酸化被膜を有し、陰極箔は、表面に酸化被膜または弁金属または炭素材料を有していてもよい。陽極箔、陰極箔、第1の部材、第2の部材およびストッパは、表面に酸化被膜を有していてもよい。この場合、本発明に係る巻回型コンデンサの漏洩電流増加を抑制することができる。
収容部材は、開口部近傍において第1の凹部を備え、封口部材は、第1の凹部によって保持されていてもよい。この場合、封口部材とコンデンサ素子との接触を効果的に防止することができる。また、封口部材の変形を抑制することができる。また、収容部材は、封口部材とコンデンサ素子との間に第2の凹部を備えていてもよい。この場合、封口部材とコンデンサ素子との接触をより効果的に防止することができる。また、封口部材の変形をより効果的に抑制することができる。さらに、封口部材は、ゴムからなっていてもよい。この場合、本発明に係る巻回型コンデンサの気密性が向上する。
本発明に係る巻回型コンデンサの製造方法は、陽極端子が接続された陽極箔と陰極端子が接続された陰極箔とをセパレータを介して巻回する工程と、陽極端子および陰極端子を封口部材に貫通させ封口部材と陽極箔および陰極箔との間に所定の間隙を設ける工程と、陽極端子、陽極箔、陰極端子および陰極箔に化成処理を施す工程と、陽極箔と陰極箔との間に導電性高分子からなる電解質層を形成してコンデンサ素子を形成する工程と、開口部を有する収容部材にコンデンサ素子を収容して開口部を封口部材によって封口する工程とを含み、陽極端子および陰極端子の少なくともいずれか一方は、リード線部と、リード線部よりも大きい径を有しリード線部に接続され封口部材の貫通孔を貫通し丸棒形状を有する第1の部材と、コンデンサ素子に接続される第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に設けられたストッパと、を含み、ストッパは、第1の部材の径よりも大きい幅を有し、前記第1の部材の一部を圧延することによって形成された平板形状を有することを特徴とするものである。
本発明に係る巻回型コンデンサの製造方法においては、陽極端子が接続された陽極箔と陰極端子が接続された陰極箔とがセパレータを介して巻回され、陽極端子および陰極端子が封口部材を貫通し、封口部材と陽極箔および陰極箔との間に所定の間隙が設けられ、陽極端子、陽極箔、陰極端子および陰極箔に化成処理が施され、陽極箔と陰極箔との間に電解質層が形成されることによってコンデンサ素子が形成され、開口部を有する収容部材にコンデンサ素子が収容され開口部が封口部材によって封口される。この場合、化成処理によって、陽極箔の端面(エッジ部)に露出する金属または端子接続による傷等に起因する露出金属面に酸化皮膜が形成される。また、封口部材と各電極箔との間に空隙が設けられていることから、陽極端子に十分に電解液を行き渡らせることができる。それにより、陽極端子の表面に酸化被膜を十分に形成することができる。その結果、本発明に係る巻回型コンデンサの漏洩電流の増加を抑制することができる。
収容部における封口部材を保持する部位に、絞り加工およびカール加工を施す工程をさらに含んでいてもよい。この場合、封口部材とコンデンサ素子との接触を効果的に防止することができる。収容部における封口部材とコンデンサ素子との間の部位に、絞り加工を施す工程をさらに含んでいてもよい。この場合、封口部材とコンデンサ素子との接触をより効果的に防止することができる。封口部材は、ゴムからなっていてもよい。この場合、本発明に係る巻回型コンデンサの気密性が向上する。
本発明によれば、封口部材とコンデンサ素子との接触を効果的に防止することができる。それにより、封口部材からコンデンサ素子に圧力がかかることを防止することができる。以上のことから、漏洩電流の増加を抑制することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る巻回型のコンデンサ100を説明するための図である。図1(a)および図1(b)はコンデンサ100の一部切り欠き断面図である。図1(a)はコンデンサ100を正面から見た場合の図であり、図1(b)はコンデンサ100を側面から見た場合の図である。図1(a)および図1(b)に示すように、コンデンサ100は、有底筒状の金属ケース10内にコンデンサ素子20が収容された構造を有する。
コンデンサ素子20は、陽極箔21および陰極箔22がセパレータ23を介して巻回された円筒状のコンデンサ素子である。陽極箔21とセパレータ23との間および陰極箔22とセパレータ23との間に、電解質層24が形成されている。陽極箔21および陰極箔22は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の金属からなる。陰極箔22は、陽極箔21と同種の金属であってもよく、金属材料表面に弁金属を蒸着させたもの、炭素を吸着させたもの等であってもよい。本実施の形態においては、陽極箔21および陰極箔22は、表面に誘電体酸化皮膜が形成されたアルミニウムからなる。
セパレータ23は、マニラ麻を主成分とするセルロース電解紙であってもよく、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を主成分とする不織布等であってもよい。また、不織布およびセルロース電解紙の混合物をセパレータ23として用いることもできる。本実施の形態においては、セパレータ23は、マニラ麻を主体とする電解紙からなる。この場合、化成工程における熱処理によってマニラ麻が炭化し密度が小さくなることにより、セパレータ23内に電解質を十分に充填することができる。
電解質層24としては、カルボン酸を水等の溶媒に溶解した駆動用電解液、TCNQ錯体等の錯塩等を用いることができる。本実施の形態においては、電解質層24は、より低抵抗で高温下でも安定である導電性高分子からなる。この導電性高分子には、ポリエチレンジオキシチオフェン等の重合物質を用いることができる。この場合、コンデンサ100の固有抵抗が低減され、ESRが低減される。
また、コンデンサ素子20は、電極引き出し手段として、陽極端子30および陰極端子40を備えている。陽極端子30は陽極箔21に接続され、陰極端子40は陰極箔22に接続されている。陽極端子30および陰極端子40の詳細については、後述する。
金属ケース10は、有底筒状に加工できる金属素材からなる。本実施の形態においては、安価で加工が容易なアルミニウムを金属ケース10として用いている。金属ケース10の開口部付近の円周面に沿って、溝部12が形成されている。金属ケース10の開口部には、封口部材11が押し込まれている。封口部材11は溝部12によって固定され、金属ケース10は封口部材11によって密封されている。封口部材11には、2つの貫通孔が形成されている。陽極端子30および陰極端子40は、この2つの貫通孔のそれぞれを通って金属ケース10の外部に引き出されている。
封口部材11としては、金属ケース10と抵抗溶接が可能な金属、成形が容易なエポキシ樹脂等を用いることができる。本実施の形態においては、封口部材11として、ゴム材を用いている。この場合、絞り加工およびカール加工を容易に行うことができるとともに、封口部材11の気密性が保証される。このゴム材としては、IIR(イソブチレン・イソプロピレン共重合体からなるゴム)、EPT(エチレン・プロピレン共重合体からなるゴム)、IIRおよびEPTのブレンド品等を用いることができる。
封口部材11とコンデンサ素子20との間には、1.0mm〜3.0mm程度の空間が介在する。この場合、熱負荷等による封口部材11の膨張を吸収することができる。それにより、封口部材11からコンデンサ素子20に圧力がかかることを防止することができる。その結果、陽極箔21のエッジ部における誘電体酸化皮膜の欠損発生を防止することができる。また、封口部材11とコンデンサ素子20との間に空間が介在することによって、コンデンサ素子20内に残留する溶剤等の揮発による内圧上昇の影響を受けにくくなる。この場合、封口部材11の変形を抑制することができる。以上のことから、コンデンサ100の漏洩電流の増加を抑制することができる。
続いて、陽極端子30の詳細について、図1および図2を参照しつつ説明する。図2は、陽極端子30の詳細について説明するための図である。図2(a)は陽極端子30の側面図であり、図2(b)は後述する圧延部31側から陽極端子30を見た場合の底面図であり、図2(c)は後述するリード線部33側から陽極端子30を見た場合の上面図であり、図2(d)は陽極端子30の正面図である。
図2(a)および図2(d)に示すように、陽極端子30は、タブ端子構造を有する。具体的には、陽極端子30は、圧延部31、丸棒部32、リード線部33を含む。丸棒部32とリード線部33とは溶接部34を介して接続されている。圧延部31および丸棒部32は、陽極箔21と同様の材料から構成される。また、圧延部31および丸棒部32の表面には、陽極箔21と同様に化成処理によって酸化被膜が形成されていてもよく、ポリイミド等の絶縁性樹脂がコーティングされていてもよい。本実施の形態においては、圧延部31および丸棒部32は表面に化成処理が施されたアルミニウムからなり、リード線部33は表面に錫めっき処理が施された銅線からなる。
圧延部31には、丸棒部32側から順にストッパ部35および接続部36が形成されている。ストッパ部35は、コンデンサ100において、封口部材11とコンデンサ素子20との間の空間に位置する。このストッパ部35は、図2(d)に示すように、丸棒部32の直径よりも大きい幅を有する。この場合、熱負荷等によって封口部材11が膨張しようとしても、封口部材11とコンデンサ素子20との接触を効果的に防止することができる。それにより、陽極箔21のエッジ部における誘電体酸化皮膜の欠損発生をより効果的に防止することができる。接続部36は、板状の形状を有する。陽極端子30と陽極箔21とは、接続部36によって接続されている。
ストッパ部35の幅は、例えば、丸棒部32の直径の1.2倍程度以上であることが好ましい。また、ストッパ部35の厚さは、接続部36の厚さの2.5倍以上であることが好ましい。この場合、コンデンサ100を安定的に組立てることができ、残留溶剤等の揮発による内圧上昇の影響を抑制することができ、封口部材11の膨張による封口部材11とコンデンサ素子20との接触を防止することができる。なお、ストッパ部35は、丸棒部32の一部を圧延することによって形成可能であり、接続部36は、ストッパ部35の一部をさらに圧延することによって形成可能である。
なお、陰極端子40は、陽極端子30と同様の構造を有する。本実施の形態においては、陰極端子40の圧延部31および丸棒部32は表面に化成処理が施されたアルミニウムからなり、陰極端子40のリード線部33は表面に錫めっき処理が施された銅線からなる。
続いて、コンデンサ100の製造方法について説明する。図3および図4は、コンデンサ100の製造フロー図である。まず、図3(a)に示すように、陽極端子30の接続部36と陽極箔21とを接合し、陰極端子40の接続部36と陰極箔22とを接合する。この場合、超音波溶接法、抵抗溶接法、カシメプレス法を用いることができる。本実施の形態においては、カシメプレス法を用いている。この場合、接続部と電極箔との間においてより多くの金属結合が形成されるため、巻回時等に負荷される外部応力に対して強くなる。それにより、抵抗変化を抑制することができる。次に、図3(b)に示すように、陽極箔21および陰極箔22をセパレータ23を介して巻回する。次いで、図3(c)に示すように、陽極端子30および陰極端子40の丸棒部32を封口部材11の貫通孔に挿入し、封口部材11と各電極箔との間に空隙を設ける。
次に、図3(d)に示すように、陽極箔21、陰極箔22、陽極端子30および陰極端子40に対して、電解液中で通電する化成処理を施す。電解液に用いる溶質は、リン酸等の、水溶液中で電気伝導性を有する溶質である。本実施の形態においては、電解液として、アジピン酸アンモニウムを用いている。この化成処理は、アジピン酸アンモニウム濃度0.5%〜2%を主体とした化成液を用いて誘電体酸化皮膜の化成電圧値に近似した電圧で行う。その後、熱処理を行い、化成処理をさらに数回施す。それにより、より強固な誘電体酸化皮膜を形成することができる。なお、熱処理は、200℃〜320℃の温度範囲数分〜数十分程度行う。
この化成処理により、陽極箔21の端面(エッジ部)に露出する弁金属または端子接続による傷等に起因する露出金属面に酸化皮膜が形成される。また、封口部材11と各電極箔との間に空隙が設けられていることから、陽極端子30に十分に電解液を行き渡らせることができる。それにより、陽極端子30の表面に酸化被膜を十分に形成することができる。その結果、コンデンサ100の漏洩電流の増加を抑制することができる。
なお、上記化成処理工程において、陰極箔22および陰極端子40の表面にも酸化皮膜が形成される。ただし、陰極箔22および陰極端子40の絶縁性は、コンデンサ100の漏洩電流と関係を有さない。したがって、陰極箔22および陰極端子40の表面には、酸化被膜が形成されていなくてもよい。
次いで、図4(a)に示すように、重合性モノマーおよび酸化剤をセパレータ23に含浸させることによって電解質層24を形成する。電解質層24を構成するポリエチレンジオキシチオフェンからなる導電性高分子は、例えば、3,4エチレンジオキシチオフェン等の重合性モノマー及び酸化剤により重合させることにより形成することができる。
なお、重合性モノマーの代わりに、重合性モノマーと揮発溶液とを1:1〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。この揮発性溶液としては、炭素数1以上の有機溶媒であって、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができ、これらの混合溶媒を用いることもできる。特に、メタノール、エタノール、アセトン等を用いることが好ましい。
酸化剤としては、高導電性の高分子形成に適している、例えば溶媒に溶解したp−トルエンスルホン酸第2鉄、p−トルエンスルホン酸第2鉄及びドデシルベンゼンスルホン酸第2鉄の混合物、p−トルエンスルホン酸第2鉄及びメトキシベンゼンスルホン酸第2鉄の混合物等を用いることができる。特に後者2例のような混合酸化剤の場合、高分子中のドーパントが安定化し耐熱性も安定する。上記溶媒は、ブタノールまたは、ブタノールと炭素数1以上のアルコールであることが好ましい。この場合、酸化剤分子が分散し、上記重合性モノマーの重合反応が促進される。その結果、重合時間の短縮化が図れる。
上記溶媒と酸第二鉄との比率は任意でよいが、40%〜70%溶液を用いることが好ましい。この場合、酸化剤濃度が高くなることから、上記重合性モノマーの重合反応においてより緻密で収量が大きい高分子が形成される。それにより、導電性高分子は導電性に優れる性質を持つ。その結果、ESRを低下させることができる。また、重合性モノマーと酸化剤との配合比は、1:3〜1:6の範囲が好ましい。
次に、重合が終了したコンデンサ素子20に対して熱処理を施す。この熱処理は、240℃〜320℃の温度で、3分〜20分程度行う。この場合、重合反応に使用されなかったモノマー、酸化剤およびそれらを溶解していた溶媒を除去することができる。それにより、溶媒等の揮発による内圧上昇を抑制することができる。その結果、金属ケース10および封口部材11の変形を防止することができる。
次に、図4(b)に示すように、コンデンサ素子20を金属ケース10内に収納する。次いで、図4(c)に示すように、封口部材11を金属ケース10の開口部に押し込み、金属ケース10の開口部に対して絞り加工およびカール加工を施す。それにより、溝部12が形成される。この場合、封口部材11とコンデンサ素子20との間に空間が介在していることから、コンデンサ素子20に対して圧力が加わらない。それにより、陽極箔21の化成被膜の破壊を防止することができる。以上の工程によりコンデンサ100が完成する。
なお、用途によっては、実装の為に高温リフロー半田付けのように200℃以上の熱が数秒から数分、コンデンサ100に対してかかる場合がある。しかしながら、コンデンサ素子20の上部、陽極端子30の圧延部31、ならびに丸棒部32は、すでに誘電酸化被膜が再化成処理時に形成されている。それにより、内圧上昇時でも漏洩電流を抑制することができる。封口後のコンデンサ素子20に対して120℃〜180℃にて所定の電圧処理を施した後に、必要であればリード線部33を加工してコンデンサ100を完成させる。例えば表面実装品においては、リード線部33をプレスし、座板を挿入後曲げ加工を施こしてもよい。
本実施の形態においては、金属ケース10が収容部材に相当し、丸棒部32が第1の部材に相当し、接続部36が第2の部材に相当し、溝部12が第1の凹部に相当する。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るコンデンサ100aの外観図である。図5に示すように、金属ケース10の開口部付近に、円周面に沿って溝部13がさらに形成されている。図6は、コンデンサ100aの一部切り欠き断面図である。図6(a)はコンデンサ100aを正面から見た場合の図であり、図6(b)はコンデンサ100aを側面から見た場合の図である。図6(a)および図6(b)に示すように、コンデンサ100aが図1のコンデンサ100と異なる点は、金属ケース10において、封口部材11とコンデンサ素子20との間に溝部13が形成されている点である。
この場合、溝部12および溝部13によって封口部材11が固定される。それにより、熱負荷等によって封口部材11が膨張しようとしても、封口部材11とコンデンサ素子20との接触を効果的に防止することができる。それにより、陽極箔21および陰極箔22のエッジ部における誘電体酸化皮膜の欠損発生をより効果的に防止することができる。また、封口部材11の変形をより効果的に抑制することができる。
続いて、コンデンサ100aの製造方法について説明する。図7は、コンデンサ100aの製造フロー図である。まず、図3(a)〜図3(c)および図4(a)の工程に従って、コンデンサ素子20を完成させる。次に、図7(a)に示すように、コンデンサ素子20を金属ケース10内に収納する。次いで、図7(b)に示すように、封口部材11を金属ケース10の開口部に押し込み、金属ケース10における封口部材11とコンデンサ素子20との間に絞り加工を施す。それにより、溝部13が形成される。この場合、封口部材11とコンデンサ素子20との間に空間が介在していることから、コンデンサ素子20に対して圧力が加わらない。それにより、陽極箔21および陰極箔22の化成被膜の破壊を防止することができる。
次に、図7(c)に示すように、金属ケース10における封口部材11が配置された箇所に絞り加工およびカール加工を施す。それにより、溝部12が形成される。この場合、封口部材11が溝部12によって固定される。以上の工程により、コンデンサ100aが完成する。
図8は、コンデンサ100aの他の製造フロー図である。まず、図3(a)〜図3(c)および図4(a)の工程に従って、コンデンサ素子20を完成させる。次に、図8(a)に示すように、絞り加工によってあらかじめ溝部13が形成された金属ケース10内に、コンデンサ素子20を収納する。次いで、図8(b)に示すように、封口部材11を金属ケース10の開口部に押し込み、金属ケース10の開口部に対して絞り加工およびカール加工を施す。それにより、溝部12が形成される。この場合、封口部材11とコンデンサ素子20との間に空間が介在していることから、コンデンサ素子20に対して圧力が加わらない。それにより、陽極箔21および陰極箔22の化成被膜の破壊を防止することができる。以上の工程によりコンデンサ100aが完成する。
本実施の形態においては、溝部13が第2の凹部に相当する。
以下、上記実施の形態に係るコンデンサを作製し、その特性を調べた。
(実施例)
実施例においては、図1のコンデンサ100を作製した。陽極箔21および陰極箔22には、エッチング処理及び化成処理が施されたアルミニウム箔を用いた。陽極端子30および陰極端子40のリード線部33には、銅母材に錫めっき処理を施したものを用いた。陽極端子30および陰極端子40の圧延部31および丸棒部32には、アルミニウムを用いた。セパレータ23には、マニラ麻主体の電解紙を用いた。金属ケース10には、内外面に樹脂コートが施されたアルミニウムを用いた。封口部材11には、IIRを用いた。実施例に係るコンデンサの定格電圧は、2.5WVである。
最初に、コンデンサ素子20を作製した。まず、カシメプレス法により、陽極箔21を陽極端子30に接続し、陰極箔22を陰極端子40に接続した。その後、セパレータ23を介して陽極箔21および陰極箔22を巻回し、陽極端子30および陰極端子40の丸棒部32を封口部材11の貫通孔に貫通させることによって封口部材11をコンデンサ素子20に装着した。
陽極箔21、陰極箔22、ならびに、陽極端子30および陰極端子の圧延部31に対して、アジピン酸アンモニウム濃度0.5%〜2%を主体とした化成液を用いて陽極箔21の酸化皮膜の化成電圧値に近似した電圧で化成処理を施し、200℃〜320℃の温度範囲で3分〜20分熱処理を施した。再びこの化成処理および熱処理を3回〜7回繰り返した後、純水で5分以上洗浄後、100℃以上の雰囲気で30分〜90分、乾燥した。
次いで電解質層24を形成した。セパレータ23に3,4エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸第2鉄の1−ブタノール溶液とを含侵させ、40℃〜150℃の温度範囲で16時間大気中に保持し、ポリエチレンジオキシチオフェンからなる導電性高分子層を形成させて電解質層24を完成させた。次に、コンデンサ素子20に240℃〜320℃で3分〜20分程度熱処理を行ったのち、金属ケース10へ収納後、絞り加工により封口した。封口後125℃以上の雰囲気中で2.5V以上の電圧を印加するエージング処理を施し、寸法φ8×11.5Lのコンデンサ100を完成させた。
(比較例)
比較例においては、コンデンサ素子20と封口部材11との間に空間を設けないコンデンサを作製した。まず、陽極箔21および陰極箔22をセパレータ23を介して巻き回し、封口部材11をコンデンサ素子20の上面まで押し込み、再化成処理を施した。その他の構成材料および製造工程は、実施例に係るコンデンサと同様である。比較例に係るコンデンサの定格電圧も、2.5WVである。
(分析)
実施例および比較例に係るコンデンサの周波数120Hzにおける静電容量、tanδ、周波数100kHzにおけるESR、および、定格電圧印加後2分における漏れ電流の値を表1に示す。実施例および比較例に係るコンデンサはそれぞれ50個ずつ作製されており、表1の各値はそれらの平均値Aveおよびバラツキσを示している。
Figure 0005073947
表1に示すように、静電容量、tanδ、ESRについては、条件による差異は確認されなかった。しかしながら、実施例に係るコンデンサにおいては、比較例に係るコンデンサと比較して、漏洩電流のバラツキが少なく平均値も大幅に低下していることが確認された。
比較例に係るコンデンサに比較して実施例に係るコンデンサにおいては、封口部材11とコンデンサ素子20との間に空間が介在している。それにより、実施例に係るコンデンサにおいては、化成処理において圧延部31および丸棒部32に電解液が十分に供給され、圧延部31および丸棒部32の表面に強固な誘電体酸化皮膜が形成されている。以上のことから、コンデンサ100への電圧印加時の絶縁性が向上し、漏洩電流が低減されたと考えられる。
次に、熱負荷による特性変化を調べた。具体的には、実施例および比較例に係るコンデンサを半田槽(240℃、90秒間)に含浸して、外観の確認を行うとともに、定格電圧印加後2分での漏れ電流を測定した。その結果を表2に示す。表2においても表1の各値同様に50個のコンデンサの平均値が示されており、試験後の外観状態と漏洩電流の平均値Aveおよびバラツキσが示されている。
Figure 0005073947
表2に示すように、実施例に係るコンデンサにおいては、比較例に係るコンデンサに比較して漏洩電流の増加量が低くなった。また、外観で比較した場合、実施例に係るコンデンサにおいては、比較例に係るコンデンサに比較して熱負荷後でも目立った変化がなく形状が安定していた。
熱負荷時においては、電解質中の未反応分の酸化剤、モノマー、残留溶剤等が揮発することによって、金属ケース10内の内圧が上昇する。比較例に係るコンデンサにおいては、内圧上昇に加えコンデンサ素子20が封口部材11の変形による応力を受ける。それにより、比較例に係るコンデンサにおいては、コンデンサ素子20の陽極箔21および陰極箔22のエッジ部の酸化被膜が破壊されて欠陥部となり、漏洩電流が増加したと考えられる。
さらに、実施例に係るコンデンサにおいては、金属ケース10内に空間が確保されていることから、内圧上昇後でも蒸気の逃げ場がある。したがって、実施例に係るコンデンサにおいては、漏洩電流の増加に至らなかったと考えられる。また、溝部12および圧延部31に封口部材11が均一な力で保持されることによって封口部材11の変形が抑制されたことも、理由の1つであると推測される。
以上のことから、実施例に係るコンデンサにおいては、初期漏洩電流が低減されることがわかった。また、熱負荷時においては、漏洩電流の増加が抑制されかつ形状変化が抑制されることがわかった。
本発明の第1の実施の形態に係る巻回型のコンデンサを説明するための図である。 陽極端子の詳細について説明するための図である。 第1の実施の形態に係るコンデンサの製造フロー図である。 第1の実施の形態に係るコンデンサの製造フロー図である。 本発明の第2の実施の形態に係るコンデンサの外観図である。 第2の実施の形態に係るコンデンサの一部切り欠き断面図である。 第2の実施の形態に係るコンデンサの製造フロー図である。 第2の実施の形態に係るコンデンサの他の製造フロー図である。
符号の説明
10 金属ケース
11 封口部材
12,13 溝部
20 コンデンサ素子
30 陽極端子
40 陰極端子
31 圧延部
32 丸棒部
33 リード線部
35 ストッパ部
36 接続部
100,100a コンデンサ

Claims (9)

  1. 陽極端子が接続された陽極箔と陰極端子が接続された陰極箔とがセパレータを介して巻回され、前記陽極箔と前記陰極箔との間に導電性高分子からなる電解質層が形成されたコンデンサ素子と、
    開口部を有し、前記コンデンサ素子を収容する収容部材と、
    前記陽極端子および前記陰極端子が貫通する貫通孔を備え、前記収容部材の開口部を封口する封口部材とを備え、
    前記封口部材と前記コンデンサ素子との間には、所定の間隙が介在し、
    前記陽極端子および前記陰極端子の少なくともいずれか一方は、リード線部と、前記リード線部よりも大きい径を有し前記リード線部に接続され前記封口部材の貫通孔を貫通し丸棒形状を有する第1の部材と、前記コンデンサ素子に接続される第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられたストッパと、を含み、
    前記ストッパは、前記第1の部材の径よりも大きい幅を有し、前記第1の部材の一部を圧延することによって形成された平板形状を有することを特徴とする巻回型コンデンサ。
  2. 前記陽極箔、前記第1の部材、前記第2の部材および前記ストッパは、表面に酸化被膜を有し、
    前記陰極箔は、表面に酸化被膜または弁金属または炭素材料を有することを特徴とする請求項1記載の巻回型コンデンサ。
  3. 前記収容部材は、前記開口部近傍において第1の凹部を備え、
    前記封口部材は、前記第1の凹部によって保持されていることを特徴とする請求項1または2記載の巻回型コンデンサ。
  4. 前記収容部材は、前記封口部材と前記コンデンサ素子との間に第2の凹部を備えていることを特徴とする請求項3記載の巻回型コンデンサ。
  5. 前記封口部材は、ゴムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の巻回型コンデンサ。
  6. 陽極端子が接続された陽極箔と陰極端子が接続された陰極箔とをセパレータを介して巻回する工程と、
    前記陽極端子および前記陰極端子を封口部材に貫通させ、前記封口部材と前記陽極箔および前記陰極箔との間に所定の間隙を設ける工程と、
    前記陽極端子、前記陽極箔、前記陰極端子および前記陰極箔に化成処理を施す工程と、
    前記陽極箔と前記陰極箔との間に導電性高分子からなる電解質層を形成してコンデンサ素子を形成する工程と、
    開口部を有する収容部材に前記コンデンサ素子を収容して、前記開口部を前記封口部材によって封口する工程とを含み、
    前記陽極端子および前記陰極端子の少なくともいずれか一方は、リード線部と、前記リード線部よりも大きい径を有し前記リード線部に接続され前記封口部材の貫通孔を貫通し丸棒形状を有する第1の部材と、前記コンデンサ素子に接続される第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられたストッパと、を含み、
    前記ストッパは、前記第1の部材の径よりも大きい幅を有し、前記第1の部材の一部を圧延することによって形成された平板形状を有することを特徴とする巻回型コンデンサの製造方法。
  7. 前記収容部における前記封口部材を保持する部位に、絞り加工およびカール加工を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項6記載の巻回型コンデンサの製造方法。
  8. 前記収容部における前記封口部材と前記コンデンサ素子との間の部位に、絞り加工を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項6または7記載の巻回型コンデンサの製造方法。
  9. 前記封口部材は、ゴムからなることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の巻回型コンデンサの製造方法。
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