JP4484084B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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この発明は、固体電解コンデンサの製造方法にかかり、特に導電性高分子を電解質に用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
電解コンデンサは、タンタル、アルミニウム等の弁作用金属からなるとともに微細孔やエッチングピットを備える陽極電極の表面に、誘電体となる酸化皮膜層を形成し、この酸化皮膜層から電極を引き出した構成からなる。
そして、酸化皮膜層からの電極の引出しは、導電性を有する電解質層により行っている。したがって、電解コンデンサにおいては電解質層が真の陰極を担うことになる。例えば、アルミニウム電解コンデンサでは、液状の電解質を真の電極として用い、陰極電極はこの液状電解質と外部端子との電気的な接続を担っているにすぎない。
真の陰極として機能する電解質層は、酸化皮膜層との密着性、緻密性、均一性などが求められる。特に、陽極電極の微細孔やエッチングピットの内部における密着性が電気的な特性に大きな影響を及ぼしており、従来数々の電解質層が提案されている。
固体電解コンデンサは、イオン伝導であるために高周波領域でのインピーダンス特性に欠ける液状の電解質の替わりに導電性を有する固体の電解質を用いるもので、なかでも二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られている。
二酸化マンガンからなる固体電解質層は、硝酸マンガン水溶液に、タンタルの焼結体からなる陽極素子を浸漬し、300℃〜400℃前後の温度で熱分解して生成している。このような固体電解質層を用いたコンデンサでは、硝酸マンガンの熱分解の際に酸化皮膜層が破損し易く、そのため漏れ電流が大きくなる傾向が見られ、また二酸化マンガン自体の比抵抗も高いためにインピーダンス特性において充分満足できる特性を得ることは困難であった。また熱処理によるリード線の損傷もあり、後工程として接続用の外部端子を別途設ける必要があった。
TCNQ錯体を用いた固体電解コンデンサとしては、特開昭58−191414号公報(特許文献1)に記載されたものなどが知られており、TCNQ錯体を熱溶融して陽極電極に浸漬、塗布して固体電解質層を形成している。このTCNQ錯体は、導電性が高く、周波数特性や温度特性において良好な結果を得ることができる。
しかし、TCNQ錯体は溶融したのち短時間で絶縁体に移行する性質があるため、コンデンサの製造過程における温度管理が困難であるほか、TCNQ錯体自体が耐熱性に欠けるため、プリント基板に実装する際の半田熱により著しい特性変動が見られる。
これら二酸化マンガンやTCNQ錯体の持つ不都合を解決するため、ポリピロール等の導電性高分子を固体電解質層として用いることが試みられている。
ポリピロールに代表される導電性高分子は、主に化学的酸化重合法(化学重合)や電解酸化重合法(電解重合)により生成されるが、化学的酸化重合法では、強度の強い皮膜を緻密に生成することは困難であった。一方、電解酸化重合法では、皮膜を生成する対象物に電圧を印加する必要があり、そのため表面に絶縁体である酸化皮膜層が形成された電解コンデンサ用の陽極電極に適用することは困難で、酸化皮膜層の表面に、予め導電性のプレコート層、例えば酸化剤を用いて化学重合した導電性高分子膜をプレコート層とし、その後このプレコート層を電極として電解重合による電解質層を形成する方法などが提案されている(特許文献2、特許文献3:二酸化マンガンをプレコート層とする)。
しかし、予めプレコート層を形成するため製造工程が煩雑となるほか、電解重合では、陽極電極の被皮膜面に配置した重合用の外部電極の近傍から固体電解質層が生成されるため、広範囲にわたって均一な厚さの導電性高分子膜を連続的に生成することは非常に困難であった。
そこで、箔状の陽極電極及び陰極電極を、セパレータを介して巻き取って、いわゆる巻回型のコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にピロール等のモノマー溶液と酸化剤を浸漬して化学重合のみにより生成した導電性高分子膜からなる電解質層を形成することを試みた。
このような巻回型のコンデンサ素子は、アルミニウム電解コンデンサにおいて周知であるが、導電性高分子層をセパレータで保持することで電解重合の煩雑さを回避するとともに、併せて表面積の大きい箔状の電極により容量を拡大させることが期待された。更に、巻回型のコンデンサ素子を用いることで、両極の電極とセパレータが一定の緊締力で保持され、両極の電極と電解質層との密着性に貢献することが期待された。
特開昭58−191414号公報 特開昭63−173313号公報 、特開昭63−158829号公報
しかし、モノマー溶液と酸化剤とを混合した混合溶液をコンデンサ素子に含浸したところ、コンデンサ素子の内部にまで固体電解質層が形成されておらず、期待された電気的特性を得ることはできないことが判明した。
そこで、モノマー溶液と酸化剤を別々に含浸したり、反応の際の溶液の重合温度を低くしたところ、ある程度良好な電気的特性が得られたが、耐圧特性だけは不充分であるという問題点があった。その原因は、これらの手段によっても、コンデンサ素子の端面付近に生成された固体電解質層がそれ以降の溶液の浸透を妨害してその内部にまで充分な溶液が浸透しておらず、結果として緻密で均一な固体電解質層を形成するには至っていないことが原因と考えられた。
また、低温で化学重合をする場合、厳重な温度制御が必要であるほか、製造装置が複雑になり、結果として製品コストが高くなってしまう問題点もあった。
一方で、各種の導電性高分子について検討を重ねたところ、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)に着目した(特開平2−15611号公報)。
本発明は、ポリエチレンジオキシチオフェンの重合反応速度が緩やかなことに着目し、巻回型のコンデンサ素子の内部に、緻密で均一な導電性高分子からなる固体電解質層を生成し、電気的特性に優れかつ大容量の固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することを課題としている。
本発明の固体電解コンデンサでは、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を、陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に含浸し、セパレータに浸透した前記混合溶液中の重合反応により生成したポリエチレンジオキシチオフェンを電解質層としてセパレータで保持している。
そしてこのような固体電解コンデンサを製造するために、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を、陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に含浸し、セパレータに浸透した前記混合溶液中の重合反応によりポリエチレンジオキシチオフェンを生成する。
このように、本発明では、陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を含浸することにより、コンデンサ素子の内部にまでこの混合溶液が浸透し、その浸透する過程及び浸透後に起きる3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤との穏やかな重合反応でポリエチレンジオキシチオフェン、すなわち固体電解質層をコンデンサ素子の内部においても生成させ、また固体電解質層を、その生成過程からセパレータで保持した状態で固体電解質層を形成している。
しかも、コンデンサ素子は、陽極電極箔と陰極電極箔とを、セパレータを介して一定の緊締力で巻き取っているため、陽極電極箔、陰極電極箔及びセパレータがそれぞれ一定の圧力で密着しており、セパレータによって保持された固体電解質層も結果的に一定の圧力で陽極電極箔に密着している。そのため、陽極電極箔上の酸化皮膜層と固体電解質層との密着性が向上し、所望の電気的特性を得ることが容易になる。
本発明では、陽極電極箔と陰極電極箔とを、セパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を含浸することにより、コンデンサ素子の内部にまでこの混合溶液が浸透する。そして、その浸透する過程及び浸透後に起きる3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤との穏やかな重合反応でポリエチレンジオキシチオフェン、すなわち固体電解質層をコンデンサ素子の内部においても生成させ、また固体電解質層を、その生成過程からセパレータで保持している。そのため、コンデンサ素子の内部にまで緻密で均一な固体電解質層を形成することができ、結果として固体電解コンデンサの電気的特性が向上し、特に耐電圧特性においては、ポリエチレンジオキシチオフェン自体の特性とも相俟って、従来の導電性高分子を固体電解質層に用いた固体電解コンデンサとの比較で改善が顕著である。
また、コンデンサ素子は、陽極電極箔と陰極電極箔とを、セパレータを介して一定の緊締力で巻き取っているため、陽極電極箔、陰極電極箔及びセパレータがそれぞれ一定の圧力で密着しており、セパレータによって保持された固体電解質層も結果的に一定の圧力で陽極電極箔に密着している。そのため、陽極電極箔上の酸化皮膜層と固体電解質層との密着性が向上し、所望の電気的特性を得ることが容易になる。
更に、ポリエチレンジオキシチオフェンを生成する工程では、従来の二酸化マンガンやTCNQ錯体のように高温域での熱処理を施すことがないため、酸化皮膜層の破損が抑制され、製品の信頼性が向上するほか、熱処理によるリード線の損傷もなく、そのまま外部接続用の端子として用いることができる。
次いで、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサで、アルミニウム等の弁作用金属からなり表面に酸化皮膜層が形成された陽極電極箔1と陰極電極箔2とを、セパレータ3を介して巻回してコンデンサ素子を形成する。そして、このコンデンサ素子に3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を含浸してセパレータ3に浸透した前記混合溶液中の重合反応により生成したポリエチレンジオキシチオフェンを固体電解質層5としてセパレータ3で保持している。
陽極電極箔1は、アルミニウム等の弁作用金属からなり、図2に示すように、その表面を、塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して多数のエッチングピット8を形成している。更にこの陽極電極箔1の表面には、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層4を形成している。
陰極電極箔2は、陽極電極箔1と同様にアルミニウム等からなり、表面にエッチング処理のみが施されているものを用いる。
陽極電極箔1及び陰極電極箔2にはそれぞれの電極を外部に接続するためのリード線6、7が、ステッチ、超音波溶接等の公知の手段により接続されている。このリード線6、7は、アルミニウム等からなり、陽極電極箔1、陰極電極箔2との接続部と外部との電気的な接続を担う外部接続部からなり、巻回したコンデンサ素子10の端面から導出される。
セパレータ3は、コンデンサ素子10に含浸する混合溶液中の酸化剤とセパレータ3とが酸化反応を起こし、酸化剤の酸化能力が低下するおそれのないものであれば良い。例えば、ガラスペーパーもしくはガラスペーパーと、マニラ紙、クラフト紙等の紙とを混抄したセパレータを用いることができる。ガラスペーパーと紙とを混抄したセパレータを用いる場合、その単位面積当たりの重量における混抄率は、紙が80%以下であることが望ましい。またセパレータ3の厚さは任意でよいが、厚いセパレータを用いる場合は巻回されるコンデンサ素子10の径寸法も大きくなるため、セパレータの引張強度に応じて選択すればよい。例えば、ガラスペーパーよりなるセパレータや、ガラスペーパーと、マニラ紙、クラフト紙等の紙とを混抄したセパレータを用いる場合には、80μmないし200μmのものが好適である。
コンデンサ素子10は、上記の陽極電極箔1と陰極電極箔2とを、セパレータ3を間に挟むようにして巻き取って形成している。両極電極箔1、2の寸法は、製造する固体電解コンデンサの仕様に応じて任意であり、セパレータ3も両極電極箔1、2の寸法に応じてこれよりやや大きい幅寸法のものを用いればよい。
3,4−エチレンジオキシチオフェンは、特開平2−15611号公報等により開示された公知の製法により得ることができる。また、酸化剤は、エチレングリコールに溶解したp−トルエンスルホン酸第二鉄を用いている。この酸化剤におけるエチレングリコールとp−トルエンスルホン酸第二鉄の比率は任意でよいが、本発明では1:1のものを用いている。この酸化剤と3,4−エチレンジオキシチオフェンとの配合比は1:3ないし1:15の範囲が好適である。
コンデンサ素子10に、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を含浸する方法としては、公知の手段、例えば減圧含浸法、加圧含浸法等用いることができる。
次に、発明における固体電解コンデンサの製造方法と、それによって得られる固体電解コンデンサについて具体的に説明する。
(実施例)陽極電極箔1及び陰極電極箔2は、弁作用金属、例えばアルミニウム、タンタルからなり、その表面には予めエッチング処理が施されて表面積が拡大されている。陽極電極箔1については、更に化成処理が施され、表面に酸化アルミニウムからなる酸化皮膜層4が形成されている。
この陽極電極箔1及び陰極電極箔2を、厚さ80〜200μmのガラスペーパーからなるセパレータ3を介して巻回し、コンデンサ素子10を得る。
この実施例において、コンデンサ素子10は、径寸法が4φ、縦寸法が7mmのものを用いている。なお、コンデンサ素子10の陽極電極箔1、陰極電極箔2にはそれぞれリード線6、7が電気的に接続され、コンデンサ素子10の端面から突出している。
以上のような構成からなるコンデンサ素子10に、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤との混合液を含浸する。酸化剤は、エチレングリコールに溶解したp−トルエンスルホン酸第二鉄を用い、3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤との配合比は、1:3〜1:15の範囲が好適である。
含浸は、一定量の前記混合溶液を貯溜した含浸槽にコンデンサ素子10を浸漬し、必要に応じて減圧する。
次いで、混合溶液を含浸したコンデンサ素子10を含浸槽から引上げ、25℃ないし100℃の重合温度で、15時間ないし2時間放置して重合反応によるポリエチレンジオキシチオフェンすなわち固体電解質層5を生成させる。
この重合温度及び放置時間の範囲は、それぞれ重合温度が高くなると製造された固体電解コンデンサの電気的特性のうち、静電容量、tanδ、インピーダンス特性が良くなるものの、漏れ電流特性が悪くなる傾向が見られることから、製造するコンデンサ素子10の仕様に応じて前記の範囲内で任意に変更することができる。なお、25℃の重合温度で15時間程度、50℃で4時間程度、100℃では2時間程度放置するのが適当であり、50℃の温度下で4時間放置するのが固体電解質層5の被覆状態と工程時間との兼ね合いで最適であった。
ついで、コンデンサ素子を、水、有機溶媒等を用いて120分程度洗浄するとともに100℃ないし180℃で30分程度乾燥させ、その後、常温において、陽極電極箔1の耐電圧の40%ないし60%程度の電圧を印加するいわゆるエージング工程を経て一連の固体電解質層5の生成工程は終了する。なお、以上の固体電解質層5の生成工程は、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
このようにして陽極電極箔1と陰極電極箔2との間に介在したセパレータ3に固体電解質層5が形成されたコンデンサ素子10は、例えばその外周に外装樹脂を被覆して固体電解コンデンサを形成する。
次に、上記実施例による固体電解コンデンサと従来の固体電解コンデンサとの電気的な特性について比較する。比較例として、実施例と同じ構成からなるコンデンサ素子を用い、これに、(比較例1)ピロールからなるモノマー溶液と酸化剤を常温においてコンデンサ素子に含浸して固体電解質層を形成した。(比較例2)ピロールからなるモノマー溶液と酸化剤を−10℃程度の低温においてコンデンサ素子に含浸して固体電解質層を形成した。それぞれ各10個の試料を製造し、それぞれの初期特性の平均値を測定した。以下にその結果を示す。
この結果から明らかなように、実施例による固体電解コンデンサは、低温域でポリピロールを生成した比較例2と比較しても静電容量、tanδ等において同等であり、耐電圧特性においては優れた特性を示している。
本発明で用いるコンデンサ素子の分解斜視図である。 本発明で用いる陽極電極箔の部分拡大図である。
符号の説明
1 陽極電極箔
2 陰極電極箔
3 セパレータ
4 酸化皮膜層
5 固体電解質層
6、7 リード線
8 エッチングピット
10 コンデンサ素子

Claims (1)

  1. 3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤とを混合した混合溶液を含浸槽に貯留し、巻回型のコンデンサ素子を含浸槽に浸漬した後引き上げて放置し、セパレータに浸透した前記混合溶液中の重合反応によりポリエチレンジオキシチオフェンを生成し、このポリマーを生成過程からセパレータで保持して、コンデンサ素子内部に形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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