JP5126865B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサの製造方法及び製造装置に係り、特に、コンデンサ素子にモノマー溶液と酸化剤溶液を含浸する際の方法及び条件に改良を施した固体電解コンデンサの製造方法及び製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
【0003】
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
【0004】
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、反応速度が緩やかで、かつ陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)に着目した技術(特開平2−15611号公報)が存在している。
【0005】
このような巻回型のコンデンサ素子にPEDTからなる固体電解質層を形成するタイプの固体電解コンデンサは、以下のようにして作製される。まず、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。
【0006】
このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、EDTと記す)と酸化剤溶液をそれぞれ吐出して、コンデンサ素子内でEDTの重合反応を促進し、PEDTからなる固体電解質層を生成する。
【0007】
この後、コンデンサ素子を外装ケースに挿入し、外装ケース内にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を付着して熱硬化させることによって、コンデンサ素子の外周に外装樹脂を被覆し(樹脂封止)、固体電解コンデンサを完成する。なお、このように樹脂封止を行うと、酸化皮膜層が損傷して漏れ電流特性が低下するため、樹脂封止後に、コンデンサ定格電圧に応じた電圧を印加して高温のエージングを行うことにより酸化皮膜層を修復し、特性の向上を図っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような製造方法では、コンデンサ素子にEDTを吐出→乾燥→酸化剤を吐出→重合という工程が必要となり、工程が煩雑なものとなっていた。
そこで、EDT溶液と酸化剤溶液を予め混合して含浸させる方法が用いられているが、2液を混合する場合には、以下のような問題点があった。すなわち、EDTと酸化剤は非常に混ざりにくく、一方の液に他方の液を注いだだけでは、2液はほとんど混合しない。従って、多量のEDTと酸化剤を混合した場合には、2液が接触しているところでは重合が進み、接触していないところでは重合が進まないという問題が生じていた。そのため、攪拌などの手段を用いて2液を混合する必要があるが、攪拌をした場合であっても、混合液の中で濃度ムラが発生しやすいという問題点があった。
また、含浸を終えた後の余剰の含浸液は、重合が発生したPEDTを含んでいるため、再び含浸に利用しようとしても、コンデンサ素子にうまく含浸できないために再利用ができず、廃棄処分となっていた。
【0009】
さらに、本発明者等が種々検討した結果、上記のような問題点は、モノマーとしてEDTを用いた場合に生ずる特有の問題点ではなく、モノマーと酸化剤を混合してコンデンサ素子に含浸し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーを重合させて固体電解質層を形成する場合に広く起こり得る問題点であることが判明した。
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、製造工程の簡略化を図ると共に、固体電解質層を形成するに際し、余剰の含浸液の廃棄量を低減することができる固体電解コンデンサの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子内で導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンを重合して固体電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、一定量のモノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェンと一定量の酸化剤とを所定の容器内で混合して前記コンデンサ素子に含浸し得る混合液の最大量の50〜200%とするとともに、均一な濃度とした直後に、前記コンデンサ素子をこの混合液に浸漬して、前記固体電解質層を形成することを特徴とする。
【0014】
上記のような構成を有する請求項1に記載の発明によれば、一定量のモノマーと一定量の酸化剤を所定の溶媒と共に混合することで、含浸及び重合に最適な濃度管理を行うことができる。また、両者を混合した直後に、コンデンサ素子を浸漬することにより、濃度ムラのない混合液中で重合反応が行われるので、均一な固体電解質層を形成することができる。なお、請求項1における「均一な濃度」とは、完全に均一な状態をいうのではなく、ある程度均一であれば良い。また、「所定の容器内で混合して」としたのは、混合液の濃度を均一にする手法として、所定の容器内で混合することがより望ましいからである。
また、容器に注ぐ液量を、コンデンサ素子に含浸し得る最大量の50〜200%に限定することにより、攪拌しやすくなり、濃度勾配を極力減少させることができる。また、一定量のEDT溶液と一定量の酸化剤溶液を混合することで、含浸及び重合に最適な濃度管理を行うことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法において、前記混合液を前記コンデンサ素子に含浸する際に、減圧状態とすることを特徴とするものである。上記のような構成を有する請求項2に記載の発明によれば、コンデンサ素子を混合液に浸漬する際に、10〜200mmHg程度の減圧状態とすることにより、揮発性溶媒の残留量が少なくなるため、コンデンサ素子内部でのポリマーの密度が高くなり、熱安定性等の特性の向上を図ることができる。また、電極箔のピット内部にも混合液が入りやすくなるため、静電容量のアップを図ることができる。
【0019】
酸化剤により酸化重合されて導電性ポリマーとなるモノマーの中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェンは穏やかな重合反応によりポリエチレンジオキシチオフェンを形成するため、酸化剤と混合した後、その混合液にコンデンサ素子を浸漬した時に、電極箔のエッチングピットにまで混合液を浸透させることができる。また、ポリエチレンジオキシチオフェンは、コンデンサ素子内での電極箔との密着性も良好であり、電気的特性の優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(固体電解コンデンサの製造方法)
陽極箔を陰極箔及びセパレータと共に巻回してコンデンサ素子を形成する。一方、カップ状の容器に一定量のEDTと一定量の酸化剤を入れて攪拌する。そして、2液を混合した直後に、10〜200mmHg程度の減圧状態で、コンデンサ素子をカップ状の容器に収納して、コンデンサ素子を混合液に浸漬し、コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、固体電解コンデンサを完成する。なお、2液の混合状態はある程度均一であれば良い。
【0021】
ここで、用いるカップ状の容器は、コンデンサ素子を個別に収納しうる形状のもので、コンデンサ素子とともに後に示す所定の混合液の液量を収容できる大きさのものであればよい。また、コンデンサ素子を混合液に浸漬したときに、少なくともコンデンサ素子の高さ寸法の半分以上が混合液に浸漬されるようにすると良い。
【0022】
なお、1個のカップ状の容器には1個のコンデンサ素子を収納するものだけでなく、数個のコンデンサ素子を同時に収納しうるものでもよい。ただし、数個のコンデンサ素子を収納する場合には、個々のコンデンサ素子に含浸される混合液の量にばらつきが生じたりするとともに、コンデンサ素子に含浸されずに容器に残留する混合液の量が多くなってしまうため、1個のカップ状の容器には1個のコンデンサ素子を収納することが好ましい。
【0023】
(EDT、酸化剤)
コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:0〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。
前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール等が好ましい。
【0024】
また、酸化剤としては、ブタノールに溶解したパラトルエンスルホン酸第二鉄、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸の水溶液を用いることができる。この場合、ブタノールとパラトルエンスルホン酸第二鉄の比率は任意で良いが、本発明においては30〜60%溶液を用いている。
なお、EDTと酸化剤(溶媒を含まず)の混合比は、重量比で1:0.2〜1:5の範囲が好適であり、最適値は約1:1である。
【0025】
(容器に注ぐ混合液の液量)
カップ状の容器に注ぐ混合液の液量は、コンデンサ素子に含浸し得る混合液の最大量の50〜200%の範囲とする。50%以下だと、静電容量が少ない、あるいはESRが大きい等、所望の電気的特性を得ることができなくなるからである。一方、200%以上だと、コンデンサ素子の端面から導出した電極タブの間にも固体電解質が生成して、ショートを発生させる可能性があり、また、含浸処理後の余剰の混合液の廃棄量も多くなるからである。
また、カップ状の容器に注ぐEDT溶液の液量は、(上記混合液の液量×混合液中におけるEDT溶液の含有率)であり、酸化剤溶液の液量は、(上記混合液の液量×混合液中における酸化剤溶液の含有率)であることが望ましい。
【0026】
(コンデンサ素子を混合液に浸漬する場合の条件)
コンデンサ素子を混合液に浸漬するのは、2液を混合した直後(1分程度まで)が望ましい。ただし、低温化、EDT及び酸化剤を希釈して濃度を低くしておく、重合遅延剤の添加等により、重合反応の進行を遅らせることにより、混合後10分程度まで特性維持が可能と考えられる。
【0027】
また、コンデンサ素子を混合液に浸漬する際には、10〜200mmHg程度の減圧状態とすることが望ましい。その理由は、揮発性溶媒の残留量が少なくなるため、コンデンサ素子内部でのポリマーの密度が高くなり、熱安定性等の特性の向上を図ることができるからである。また、電極箔のピット内部にも混合液が入りやすくなるため、静電容量のアップを図ることができるからである。
なお、減圧する手段としては、容器にコンデンサ素子を入れた状態で、減圧槽に移送し、減圧槽の内部の空気を真空ポンプで排出することにより減圧状態にする方法等を用いることができる。
【0028】
さらに、コンデンサ素子を混合液に浸漬する時間は、コンデンサ素子の大きさによって決まるが、φ5×3L程度のコンデンサ素子では10秒程度、φ8×5L程度のコンデンサ素子では30秒程度が望ましく、最低でも2秒間は浸漬することが必要である。なお、長時間浸漬しても特性上の弊害はない。
【0029】
(作用・効果)
上記のような本発明の製造方法によれば、一定量のEDT溶液と一定量の酸化剤溶液を混合することで、含浸及び重合に最適な濃度管理を行うことができる。また、容器に注ぐ液量を、コンデンサ素子に含浸し得る最大量の50〜200%に限定することにより、攪拌しやすくなり、濃度勾配を極力減少させることができる。
【0030】
さらに、EDT溶液と酸化剤溶液とを混合した直後に、この混合液中にコンデンサ素子を浸漬するので、濃度ムラのない混合液中で重合反応が行われ、その結果、均一な固体電解質層を形成することができる。
また、コンデンサ素子を混合液に浸漬する際に、10〜200mmHg程度の減圧状態とすることにより、揮発性溶媒の残留量が少なくなるため、コンデンサ素子内部でのポリマーの密度が高くなり、熱安定性等の特性の向上を図ることができる。また、電極箔のピット内部にも混合液が入りやすくなるため、静電容量のアップを図ることができる。
【0031】
(他の実施形態)
本発明に用いられるモノマーとしては、上記EDTの他に、EDT以外のチオフェン誘導体、アニリン、ピロール、フラン、アセチレンまたはそれらの誘導体であって、所定の酸化剤により酸化重合され、導電性ポリマーを形成するものであれば適用することができる。
【0032】
なお、本発明に用いられるモノマーとしては、酸化剤と混合した後、その混合液にコンデンサ素子を浸漬した時に、電極箔のエッチングピットにまで混合液が浸透するような、穏やかな重合反応を示すものが好ましい。一方、モノマーが酸化剤と接触することによって急速に酸化重合し、コンデンサ素子の内部にまで混合液が浸透しないうちに酸化重合が完了するようなモノマーは適さない。
【0033】
これらのモノマー及び酸化剤を用いた場合にも、上述したEDTを用いた場合と同様の条件で、これらの混合液にコンデンサ素子を浸漬することにより均一な固体電解質層を形成することができる。
また、EDTを用いた場合と同様に、コンデンサ素子を混合液に浸漬する際に、10〜200mmHg程度の減圧状態とすることにより、揮発性溶媒の残留量が少なくなるため、コンデンサ素子内部でのポリマーの密度が高くなり、熱安定性等の特性の向上を図ることができ、また、電極箔のピット内部にも混合液が入りやすくなるため、静電容量のアップを図ることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、一定量のモノマーと一定量の酸化剤を混合することで、含浸及び重合に最適な濃度管理を行うことができ、製造工程の簡略化を図ることができるとともに、一定量のモノマーと一定量の酸化剤を所定の容器内で混合して、コンデンサ素子を混合液に浸漬することにより、個々の容器には個々のコンデンサ素子毎に必要な混合液を入れれば足り、余剰の混合液の廃棄量を低減することができる固体電解コンデンサの製造方法及び製造装置を提供することができる。
Claims (2)
- 陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子内で導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンを重合して固体電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、一定量のモノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェンと一定量の酸化剤とを所定の容器内で混合して前記コンデンサ素子に含浸し得る混合液の最大量の50〜200%とするとともに、均一な濃度とした直後に、前記コンデンサ素子をこの混合液に浸漬して、前記固体電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記混合液を前記コンデンサ素子に含浸する際に、減圧状態とすることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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