JP2937716B2 - タンタル固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

タンタル固体電解コンデンサ及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、タンタル固体電解コン
デンサ及びその製造方法に関し、特に導電性高分子化合
物を固体電解質として用いたタンタル固体電解コンデン
サ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】タンタル固体電解コンデンサは、一般
に、タンタル粉末を焼結して得られる陽極体と、陽極体
上に形成された誘電体としてのタンタル酸化皮膜と、こ
の酸化皮膜上に形成された固体電解質と、更に固体電解
質上に形成された陰極側導電体とからなる。
【0003】固体電解質としては、従来、二酸化マンガ
ンを用いたものが良く知られているが、近年、例えば特
公平4−56445号公報(特願昭58−144374
号公報)に開示されているように、二酸化マンガンの代
りにポリピロールなどの導電性高分子化合物を用いたコ
ンデンサも提案されている。尚、陰極側導電体には、グ
ラファイト層および銀層が多く用いられている。
【0004】導電性高分子化合物を固体電解質として用
いたコンデンサは、二酸化マンガンを用いたものと比較
して、導電性高分子化合物の導電率が二酸化マンガンに
対して数十倍大きいことから、優れた高周波特性を示
し、近年の電子機器の動作周波数の高周波化に対応する
ものとして注目を集めている。但し、二酸化マンガンは
硝酸マンガンを熱分解することにより形成するので、2
00〜300℃程度の熱ストレスがくり返しコンデンサ
素子に加えられ、このため酸化皮膜に欠陥が生じ漏れ電
流が増大するという欠点がある。これに対して導電性高
分子化合物を固体電解質として用いた場合は、コンデン
サ素子を高温で処理する必要が無いために、酸化皮膜の
劣化がなく高信頼性の製品を提供できると言われている
(例えば、前述の特公平4−56445号公報参照)。
導電性高分子化合物の種類としては、ポリピロール及び
その誘導体(特公平4−56445および特開昭64−
4912号公報参照)や、例えば特開平2−98915
(特願昭63−250803号公報)に開示されている
ようなポリピロール、ポリチオフェン及びその誘導体等
の複素5員環の共重合物又は混合物等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、導電性
高分子化合物を用いた固体電解質コンデンサは、二酸化
マンガンのみを固体電解質として用いたタンタル固体電
解質コンデンサと比較して高周波特性が優れるという特
徴を有しているが、一方では、単一の化学種で構成して
いることに起因するいくつかの問題点を含んでいる。特
に電解コンデンサの固体電解質としての利用を考えた場
合、導電率と耐熱性とのバランスが問題である。つま
り、ポリピロールとポリアニリンとは両者共、固体電解
コンデンサの固体電解質としての適用が試みられている
ものの、一般的にポリピロールは導電率は高いが耐熱性
が低く、ポリアニリンは逆に耐熱性は高いが導電率が低
いという問題点がある。導電率は高周波特性に直接影響
を与え、また耐熱性はコンデンサの使用温度に影響を与
える。
【0006】上記の諸問題を解決するために、基本骨格
を等しくする共重合物あるいは混合物を固体電解質とす
る提案(例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−
エチルピロールなどの共重合物あるいは混合物。上記特
公平4−56445号公報参照)がなされているが、そ
の効果は十分ではない。一方、前述のように、ポリピロ
ール、ポリチオフェン及びその誘導体の複素5員環の共
重合物あるいは混合物を固体電解質とする提案(上記特
開平2−98915号公報参照)もあるが、構成要素間
に耐熱性および導電率上の有意な差がないことから、こ
の公報にも記載されているように、二酸化マンガンを固
体電解質として用いるコンデンサに比べて高周波特性が
向上するのみである。
【0007】本発明の目的は、上述の欠点を解決し、優
れた高周波特性と耐熱性能とを併せもつタンタル固体電
解コンデンサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のタンタル固体電
解コンデンサは、一般式、
【0009】
【0010】で表される繰り返し単位を有するポリピロ
ール若しくはその誘導体と、一般式、
【0011】
【0012】で表される繰り返し単位を有するポリアニ
リン若しくはその誘電体との共重合物または混合物にド
ーパントをドープして得られた導電性高分子化合物を固
体電解質とするタンタル固体電解コンデンサである。
【0013】上記の固体電解コンデンサは、前記導電性
高分子化合物の形成を化学酸化重合で行い、その化学酸
化重合を繰り返し実施することにより、前記導電性高分
子化合物の厚さを所望の厚さに調整することを特徴とす
る製造方法によって製造される。
【0014】
【作用】すなわち、本発明は、誘電体酸化皮膜上に導電
性高分子化合物を固体電解質として形成してなるタンタ
ル固体電解コンデンサであって、前記導電性高分子化合
物が、導電率の高いポリピロール若しくはその誘導体
と、耐熱性に優れたポリアリニン若しくはその誘導体と
の共重合物又は混合物にドーパントをドープして得られ
るものであることを特徴とするタンタル固体電解コンデ
ンサである。このタンタル固体電解コンデンサを製造す
るには、誘電体酸化皮膜が形成された陽極体を酸化剤溶
液と上記モノマーの混合溶液に交互に浸漬して導電性高
分子化合物を形成する方法や、酸化剤とモノマーとを混
合した溶液を重合反応が進行する温度より低い温度に保
ち、この混合溶液にコンデンサ素子を浸漬した後これを
引き上げ、所定の温度雰囲気で重合反応を進行させるこ
とによって導電性高分子化合物を形成すると共にその膜
厚調整を行なう。可溶性のポリピロール及びその誘導体
とポリアニリン及びその誘導体との混合溶液にタンタル
焼結体を浸漬することによっても、同じ効果が得られ
る。
【0015】
【実施例】次に、本発明の実施例および従来の技術によ
る比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
【0016】実施例1 タンタル粉末を焼結して作成した陽極体をリン酸水溶液
中で陽極酸化し、焼結体表面にタンタル酸化皮膜を形成
した後、ピロール,アニリン及びエタノールを重量比で
15:15:70の割合で含有するピロール・アニリン
混合溶液に浸漬した。次に、過硫酸アンモニウム,トル
エンスルホン酸,ドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄及
びエタノールを重量比で20:10:10:60の割合
で含有する温度15℃の酸化剤溶液に浸漬し、酸化皮膜
上に導電性高分子化合物を重合させた。反応終了後、未
反応の酸化剤と過剰の酸とを水洗によって洗浄し、50
℃で1時間、真空中で乾燥した。次に、生成した導電性
高分子化合物層の上にグラファイト層、銀層を順次形成
し、得られたコンデンサの電気特性、耐熱性能を測定し
た。耐熱性能の評価は、コンデンサを150℃の空気中
に放置し、100kHzでの等価直列抵抗(ESR)が
初期値の2倍となる時間を求めた。
【0017】比較例1 実施例1と同じ酸化皮膜形成後の陽極体を、ピロールと
エタノールとを重量比で30:70の割合で含有するピ
ロール溶液に浸漬した。次にドデシルヘンゼンスルホン
第二鉄とエタノールとを重量比で40:60の割合で含
有する温度15℃の酸化剤溶液に浸漬し、酸化皮膜上に
導電性高分子化合物を重合させた。反応終了後、未反応
の酸化剤と過剰の酸とを水洗によって洗浄し、50℃で
1時間、真空中で乾燥した。次に、生成した導電性高分
子化合物層の上に、グラファイト層、銀層を順次形成
し、得られたコンデンサの電気特性および耐熱性能を測
定した。
【0018】比較例2 実施例1と同じ酸化皮膜形成後の陽極体を、アニリンと
エタノールとを重量比で30:70の割合で含有するア
ニリン溶液に浸漬した。次に、過硫酸アンモニウム,ト
ルエンスルホン酸およびエタノールを重量比で20:2
0:60の割合で含有する温度15℃の酸化剤溶液に浸
漬し、酸気皮膜上に導電性高分子化合物を重合させた。
反応終了後、未反応の酸化剤と過剰の酸とを水洗によっ
て洗浄し、50℃で1時間、真空中で乾燥した。次に、
生成した導電性高分子化合物層の上に、グラファイト
層、銀層を順次形成し、得られたコンデンサの電気特性
および耐熱性能を測定した。
【0019】実施例2 ピロール,アニリン及びエタノールを重量比で15:1
5:70の割合で含有するピロール・アニリン混合溶液
と、過硫酸アンモニウム,トルエンスルホン酸,デドシ
ルベンスルホン酸第二鉄及びエタノールを重量比で2
0:10:10:60の割合で含む酸化剤溶液とを当量
混合し、この混合液をろ紙でろ過した。ろ紙上の生成物
を水洗によって洗浄し、50℃で1時間、真空中で乾燥
した。乾燥後、この生成物を錠剤成形機でペッレト化し
た。得られた導電性高分子化合物のペレットの導電率を
三端子法により測定した。次に、実施例1,比較例1及
び2の場合と同じ様に、耐熱性能を評価するために、1
50℃の空気中に放置し導電率が初期値の2倍となる時
間を求めた。
【0020】比較例3 ピロールとエタノールとを重量比で30:70の割合で
含有するピロール溶液と、ドデシルベンゼンスルホン酸
第二鉄及びエタノールを重量比で40:60の割合で含
有する酸化剤溶液とを当量混合し、実施例1と同じ操作
をくり返し、導電率および耐熱性能を評価した。
【0021】比較例4 アニリンとエタノールとを重量比で30:70の割合で
含有するアニリン溶液と、過硫酸アンモニウム,トルエ
ンスルホン酸及びエタノールを重量比で20:20:6
0の割合で含有する酸化剤溶液とを当量混合し、実施例
1と同じ操作を繰り返して導電率および耐熱性能を評価
した。
【0022】上述の実施例1,比較例1及び2で作成し
たコンデンサの電気特性及び耐熱性能を表1に示す。
又、実施例2,比較例3及び4で作成した導電性高分子
ペレットの導電率及び耐熱性能を表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】表1及び表2を参照すると、本発明の実施
例1,2は、ポリピロール単独の高分子化合物を固体電
解質とするもの(比較例1および3)に比べて、耐熱性
能が6〜10倍程度に向上している。又、ポリアニリン
単独の高分子化合物を固体電解質とするもの(比較例2
及び4)に比べて、固体電解質の導電率が約2倍程度に
高くなっている。すなわち、実施例1および2は、それ
ぞれポリピロール及びポリアニリンの持つ優れた性質を
兼ね備えていることが分る。
【0026】尚、上述の実施例において、導電性高分子
化合物を生成する際の化学酸化重合を繰り返せば、その
回数により固体電解質の厚さを調整し、そのESRおよ
び耐熱性の度合をコントロールできることを確認した。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のタンタル
固体電解コンデンサは、固体電解質にポリピロール若し
くはその誘導体とポリアニリン若しくはその誘導体との
共重合物又は混合物にドーパントをドープして得られる
導電性高分子化合物を用いているために、高周波特性に
優れ、かつ耐熱性能にも優れるタンタル固体電解コンデ
ンサである。
【0028】このような優れたタンタル固体電解コンデ
ンサは、導電性高分子化合物の形成を化学酸化重合で行
い、その化学酸化重合を繰り返し実施することにより、
導電性高分子化合物の厚さを所望の厚さに調整すること
を特徴とする本発明の製造方法により、固体電解質層の
厚さの再現性よく、すなわち導電率および耐熱性発現の
制御性良く製造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 深海 隆 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (72)発明者 小林 淳 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (72)発明者 荒井 智次 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気 株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−98915(JP,A) 特開 昭61−239617(JP,A) 特公 平4−56445(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式、 で表される繰り返し単位を有するポリピロール若しくは
    その誘導体と、一般式、 で表される繰り返し単位を有するポリアニリン若しくは
    その誘電体との共重合物または混合物にドーパントをド
    ―プして得られた導電性高分子化合物を固体電解質とす
    るタンタル固体電解コンデンサ。
  2. 【請求項2】 前記導電性高分子化合物の形成を化学酸
    化重合で行い、その化学酸化重合を繰り返し実施するこ
    とにより、前記導電性高分子化合物の厚さを所望の厚さ
    に調整することを特徴とする請求項1記載のタンタル固
    体電解コンデンサの製造方法。
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