JPH11311286A - ロータリダンパ - Google Patents

ロータリダンパ

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JPH11311286A
JPH11311286A JP13122098A JP13122098A JPH11311286A JP H11311286 A JPH11311286 A JP H11311286A JP 13122098 A JP13122098 A JP 13122098A JP 13122098 A JP13122098 A JP 13122098A JP H11311286 A JPH11311286 A JP H11311286A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ロータリダンパにおける最大発生減衰トルク
のチューニングを容易にすると共に、全速度域に亙り回
動方向に応じて所定の減衰トルク差を確保しつつ車両と
しての操縦安定性を良好に保つ。 【解決手段】 相対回動運動を行うベーン25,26に
よってセパレートブロック5,6を有するケーシング4
の内部を交互に拡張および収縮を繰り返す作動油室2
7,28,29,30に区画し、かつ、ベーン25,2
6に対して交互に拡張および収縮を繰り返す作動油室2
7,28と作動油室29,30を相互に連通する連通孔
33,34を穿つと共に、当該連通孔33,34に小径
部35,36を備えるピン部材37,38を挿通して絞
り油路39,40を形成し、当該絞り油路39,40を
一方では抵抗油路49を通して常にロータシャフト9の
内部に設けた貯油室23に連通し、また他方では、絞り
油路39,40に対し対向状態を保って直列に設けたそ
れぞれのチェックバルブ43,44によりこれら絞り油
路39,40を減衰トルクチューニング用の絞り油路と
減衰トルク差設定用の絞り油路として構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、回動運動を利用
して外部振動を減衰する油圧式のロータリダンパに関
し、さらに詳しくは、自動車やオートバイまたは産業車
両や特殊車両等の車体振動、或いは、その他の機器また
は装置の外部振動を減衰するシールレスタイプのロータ
リダンパの特性改善手段に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のシールレスタイプのロー
タリダンパにあっては、例えば、先に特許出願人が提案
した特開平8−100829号公報に示されるように、
ベーンの周りに設定した隙間をオイルが流れるときの発
生差圧により減衰トルクを発生させるようにしている。
【0003】このことから、ロータリダンパにおける発
生減衰トルクは、それ自体のサイズと隙間の大きさおよ
び当該隙間を通るオイルの粘度によって決定されること
になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そのために、同じサイ
ズで減衰トルクの違うロータリダンパを何種類かに亙っ
て設定しようとすると、ベーンの周りにおける隙間の大
きさを変えるか粘度の異なるオイルを用いざるを得ず、
結果として減衰トルクの設定の自由度が狭くなってしま
う。
【0005】しかも、特に、これらベーンの周りにおけ
る隙間の違いをベーンおよびケーシングの大きさで変え
ようとするとその場合に識別が必要となり、部品管理に
多大な手数が掛って煩雑になるばかりでなく誤組付の起
る可能性もある。
【0006】さらに、ベーンとケーシングは、それぞれ
の金型により一体成形して製作するのが一般であるため
に、減衰トルクの異なるロータリダンパを何種類かに亙
って設定するには何種類もの金型を保有する必要があ
り、多大な金型製作費が掛ると共にそれらの管理が煩雑
になるという問題点をも有する。
【0007】そこで、所定の方向への回動時にのみ収縮
側の作動油室からベーンに設けた錐穴を通してチェック
バルブを開きつつ拡張側の作動油室へとオイルを逃がす
減衰トルク差設定用のオリフィスと同等のオリフィス
を、反対方向への回動に対しても働くように設けて減衰
トルクの異なった同サイズのロータリダンパを構成する
手段が考えられる。
【0008】しかし、これとても、両方向への回動に際
して必ず何れか一方のオリフィスが作用することから、
発生減衰トルクが二乗特性となって低速度域における減
衰トルクが不足気味となり、フワフワ感を生じて車両と
しての操縦安定性が損なわれるばかりでなく、オリフィ
スを設けることによって減衰トルクの温度特性も悪化す
ることになる。
【0009】したがって、この発明の目的は、ベーンの
周りの隙間やオイル粘度を変更することなしに減衰トル
クの異なるロータリダンパを何種類かに亙り設定可能に
すると共に、低速度域から高速度域に亙る減衰トルクを
オリフィスに依らないリニアな特性にして、車両として
の操縦安定性は勿論のこと温度特性にも優れた減衰トル
ク設定手段を備えたロータリダンパを提供することであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記した目的は、この発
明において、相対回動運動を行うベーンによってセパレ
ートブロックを有するケーシングの内部を交互に拡張お
よび収縮を繰り返す作動油室に区画し、かつ、ベーンに
対して交互に拡張および収縮を繰り返す両作動油室を相
互に連通する複数個の連通孔を穿つと共に、当該連通孔
に小径部を備えるピン部材を挿通して絞り油路を形成
し、当該絞り油路を一方では抵抗油路を通して常にロー
タシャフトの内部に設けた貯油室に連通し、また他方で
は、絞り油路に対し対向状態を保って直列に設けたそれ
ぞれのチェックバルブによりこれら絞り油路を減衰トル
クチューニング用の絞り油路と減衰トルク差設定用の絞
り油路として構成することにより達成される。
【0011】何となれば、上記のように構成すること
で、減衰トルクチューニング用の絞り油路を構成するピ
ン部材を変えて絞り抵抗を変更することにより、ベーン
周りの隙間やオイルの粘度を変更することなしに最大発
生減衰トルクを設定してチューニングを行うことができ
る。
【0012】また、上記チューニング用の絞り油路は勿
論のこと連通孔とピン部材で形作った減衰トルク差設定
用の絞り油路は、従来例における錐穴として構成した絞
り油路のように二乗特性のオイル流れではなく、単なる
連通路として働く一次特性のチョーク作用を行いつつオ
イルを流す。
【0013】その結果、低速度域から高速度域に亙る全
速度域でのロータリダンパの回動方向に応じた減衰トル
ク差を所定の値に大きく保ち、車両用ダンパとしての減
衰性能を充分に引き出すことが可能になる。
【0014】しかも、上記と併せて、低速度域でのロー
タリダンパの動作時における減衰トルクを高めることが
できることから、低速度域における減衰トルクが不足気
味となってフワフワ感を生じ、車両としての操縦安定性
が著しく損なわれることもなくなる。
【0015】さらに、ベーンに対する絞り油路の構成も
簡単になることから、当該絞り油路の加工および精度管
理も著しく容易となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面に基き、この
発明の実施の形態であるシールレスタイプのロータリダ
ンパ1について説明することにする。
【0017】ロータリダンパ1は、図1と図2にみられ
るように、外郭部分を形作るハウジング2と、当該ハウ
ジング2の軸線に沿って回動自在に支架したロータ3の
二つの主要部分とで構成されている。
【0018】ハウジング2は、鋳物や鉄系燒結合金等の
摺動性に優れた耐圧強度をもつ金属材料を用いて円筒状
に形成したケーシング4を有し、当該ケーシング4の内
周面に180度の位相差をもって二つのセパレートブロ
ック5,6(勿論、一つ或いは三つ以上であってもよ
い)を形成している。
【0019】ケーシング4の両端面には、同じく鋳物や
鉄系燒結合金等の摺動性に優れた耐圧強度をもつ材料で
作った肉厚のベアリング7,8を宛てがい、これらベア
リング7,8でケーシング4を左右から挟み込みつつロ
ータシャフト9を摺接支持すると共に、それらの上を薄
肉プレス材等で成形したパッキンケース10とエンドキ
ャップ11で覆って構成してある。
【0020】また、ケーシング4とベアリング7,8と
の間には、予めスペースの大きいセパレートブロック
5,6の部分を利用して各二本づつの位置決めピン1
2,13を挿通し、これら位置決めピン12,13でケ
ーシング4とベアリング7,8の同芯を確保しつつ回転
方向へのずれをも規制している。
【0021】ベアリング8の背面外周にはシール14を
介装して他方のベアリング7との間にケーシング4を挟
み、これらをエンドキャップ11と共にパッキンケース
10の開口端から内部に納め、かつ、パッキンケース1
0の開口端を加締めることによりシール14でベアリン
グ8とパッキンケース10およびエンドキャップ11と
の間を油密状態に保つようにしている。
【0022】なお、この場合において、パッキンケース
10とケーシング4およびベアリング7,8との間は接
着剤で固定し、かつ、エンドキャップ11を宛てがった
状態でパッキンケース10の開口端を加締め止めするこ
とにより、回り止めと併せて内部作動圧力により加締部
を押し開こうとする推力をも負担している。
【0023】ただし、パッキンケース10とケーシング
4は、必要とする減衰トルクが低い場合には上記した接
着剤による固着手段だけでもよいが、必要とする減衰ト
ルクが高い場合には、レーザー溶接やプラグ溶接等の溶
着手段により固着してハウジング2を一体化してやれば
よい。
【0024】さらに、パッキンケース10の外側壁に
は、ナット体等で構成した外部連結用の取付部材15を
プロジェクション溶接等の手段によって固着し、これら
取付部材15を利用してハウジング2側を外部振動体の
一方即ち車両であれば車体側に対して直接或いはリンク
等を介して結合するようにしてある。
【0025】一方、ロータ3は、ハウジング2側のベア
リング7,8によって回動自在に両持ち支持したロータ
シャフト9と、これらベアリング7,8の内壁面に摺接
してロータシャフト9にキー形結合の一種であるセレー
ション16を用いて一体的に結合したベーン体17とか
らなっている。
【0026】ロータシャフト9は、強度的に優位の鉄系
材料を用いて冷間鍛造等の塑性加工により所定の形状に
成形し、かつ、セレーション16を介してベーン体17
を回転方向に規制して結合してある。
【0027】ベーン体17は、鉄系材料のケーシング4
およびベアリング7,8に比べて線膨張係数の大きいア
ルミ材で作ってあり、これらケーシング4およびベアリ
ング7,8と互に共働してロータリダンパ1内における
作動オイルの温度の高低に関係なく両者の間の摺接隙間
をできるだけ一定に保つようにしている。
【0028】上記ロータシャフト9の一端は、パッキン
ケース10の側壁を貫通して外部へと延び、この外部へ
と突出した部分を取付部18として外部振動体の他方即
ち車両であれば車輪側に対し直接或いはリンク等を介し
て結合すると共に、当該ロータシャフト9の突出部分を
パッキンケース10に設けたオイルシール19で油密状
態に保っている。
【0029】また、ロータシャフト9の他端は、エンド
キャップ11の内部と対向する部分で終わっており、か
つ、ロータシャフト9の内部には、エンドキャップ11
の内部に連通して軸線方向に沿う有底の中空穴20を設
けてある。
【0030】この中空穴20の内部には、外周面にシー
ル21を有するフリーピストン22を移動可能に収装
し、このフリーピストン22によって中空穴20の内部
をエンドキャップ11の内部に連通する貯油室23と、
当該貯油室23内のオイル圧力に応じて圧縮および膨張
するガス室24とに区画している。
【0031】このようにして、ロータシャフト9におけ
る中空穴20の内部をフリーピストン22で貯油室23
とガス室24とに区画することにより、当該ロータシャ
フト9の内部をアキュムレータとして構成している。
【0032】それに対して、セレーション16によりロ
ータシャフト9へと結合したベーン体17は、ハウジン
グ2側におけるケーシング4のセパレートブロック5,
6と同数で同位相のベーン25,26を外周面に設けて
構成してある。
【0033】ベーン体17の外周面は、ケーシング4側
におけるセパレートブロック5,6の先端面と摺接する
と共に、ベーン25,26の先端面はケーシング4の内
壁面と摺接し、これらセパレートブロック5,6とベー
ン25,26とによってロータリダンパ1の内部をハウ
ジング2とロータ3との相対回動運動に伴って交互に収
縮と拡張を繰り返す作動油室27,28と作動油室2
9,30とに区画している。
【0034】しかも、これと併せて、ベアリング7,8
の内壁面には僅かな段差を設け、ハウジング2とロータ
3間のスラスト力でベーン25,26がベアリング7,
8へと強く押し付けられることがないように、当該段差
でベーン25,26との間に極微小(図1では誇張して
ある)のクリアランス31,32を設けてある。
【0035】また、ベーン25,26には、それらを挟
んで交互に収縮と拡張を繰り返す作動油室27,28お
よび作動油室29,30を相互に連通する連通孔33,
34を穿ち、これら連通孔33,34に対して図3の部
分拡大図にられるような小径部35,36を備えるピン
部材37,38を挿通してベーン25,26側の連通孔
33,34との間に作動油室27と28および作動油室
29と30を互に連通する絞り油路39,40をそれぞ
れ形成している。
【0036】なお、この実施の形態にあっては、小径部
35,36をピン部材37,38に対し最大に偏芯して
形成し、これら小径部35,36によって連通孔33,
34の一方の側壁との間に間隙を残して絞り油路39,
40を形成してある。
【0037】そして、上記した絞り油路39,40は、
各ピン部材37,38に穿った油孔41,42から当該
ピン部材37,38と直列に並べてベーン25,26の
連通孔33,34に嵌着したチェックバルブ43,44
を通り、これらチェックバルブ43,44によりベーン
25,26を通して作動油室28,29を対向する作動
油室27,30へと連通している。
【0038】このようにして、ベーン25に対し直列に
設けたピン部材37で必要とする減衰トルクを設定する
ための減衰トルクチューニング機構を構成すると共に、
ベーン26に対して直列に設けたピン部材38により回
動方向に応じて減衰トルクに所定の差を与えるための減
衰トルク差設定機構を構成したのである。
【0039】また、これらと併せて、油孔41,42を
ベーン25,26の内部に設けた油路45,46、およ
び、セレーション16の噛合部に設けた油路47,4
8、並びに、ロータシャフト9とベアリング8の軸受面
との間に設けた抵抗油路49を通し、さらに、ここから
エンドキャップ11の内部を通してロータシャフト9の
内部に配設した貯油室23へと連通している。
【0040】この場合においてロータシャフト9とベア
リング7の軸受面間に対しても同様の油路50を設けて
あるが、この油路50は、収縮する高圧の作動油室から
洩れるオイルでベアリング7とオイルシール19との間
に籠った圧力オイルを拡張する低圧側の作動油室に逃が
すためのものである。
【0041】かくして、外部振動体に発生した振動は、
直接およびリンク等の連結機構を通してロータリダンパ
1のハウジング2側における取付部材15とロータ3側
におけるロータシャフト9の取付部18との間に伝えら
れる。
【0042】そのために、ロータリダンパ1のハウジン
グ2とロータ3は、外部振動体の振動に伴って軸心周り
に相対回動運動を起こし、セパレートブロック5,6と
ベーン25,26との間の作動油室27,29と作動油
室28,30を交互に収縮および拡張させる。
【0043】このとき、収縮する側の作動油室27,2
9或いは作動油室28,30内の高圧オイルがベーン2
5,26の先端とケーシング4の内壁面の間の隙間、お
よびベーン25,26の側面とベアリング7,8の内側
面の間の隙間、さらにはベーン体17の外周面とセパレ
ートブロック5,6の先端面の間の隙間を通して拡張す
る側の作動油室28,30或いは作動油室27,29に
押し出され、これら微少の隙間を流れるオイルの流動抵
抗で減衰トルクを発生する。
【0044】一方、収縮する側の作動油室27,29或
いは作動油室28,30内の高圧オイルは、ベーン体1
7の側面とベアリング8の内側面の間の隙間からロータ
シャフト9とベアリング7の内周面の間の抵抗油路49
を通してロータシャフト9内の貯油室23に流出しよう
とする。
【0045】しかし、このような作動油室27,29或
いは作動油室28,30内の動圧に対しては、ロータシ
ャフト9とベアリング8の間の隙間および抵抗油路49
が絞り効果を発揮して高圧をカットしつつ貯油室23へ
と流入し、それによって、貯油室23が高圧とならない
ことからエンドキャップ11を薄肉プレス材で構成する
ことが可能になる。
【0046】さらに、貯油室23に流入したオイルは、
ガス室24の圧力によってフリーピストン22が常に貯
油室23側へと付勢されているので、抵抗油路49から
油路47,48および油路45,46並びに油孔41,
42を通り、かつ、絞り油路39,40からまたはチェ
ックバルブ43,44を押し開いて拡張する作動油室2
8,30或いは作動油室27,29へと供給され、これ
ら作動油室28,30或いは作動油室27,29内にキ
ャビテーションが発生するのを防止する。
【0047】また、ここにおいて、シールレスタイプの
ロータリダンパ1における減衰トルクの発生は、ベーン
25,26の周囲の各隙間および絞り油路39,40を
オイルが流れるときの発生差圧Δpによるものであっ
て、したがって、減衰トルクの計算に当っては、ロータ
リダンパ1を構成する各部品の寸法に基づくそれぞれの
隙間と絞り油路39,40によって生じる発生差圧を求
めてやればよく、図4にはそれらの油圧回路図を、ま
た、図5と図6に計算モデルをそれぞれ示す。
【0048】図4にみられるように、前記したロータリ
ダンパ1の各部における隙間での絞りおよび絞り油路3
9,40による絞りは互に並列に配置されており、この
中の絞り油路39による絞りがチェックバルブ43と共
同して、例えば、ロータリダンパ1の所定の回動方向へ
の動作時における必要減衰トルクを設定するための減衰
トルクチューニング用の絞り機構を構成する。
【0049】それに対して、絞り油路40による絞り
は、チェックバルブ44と共同しつつ反対方向への回動
に際して発生減衰トルクに所定の差を与えるための減衰
トルク差設定用の絞りとして作用することになる。
【0050】ここで、差圧Δpのときにベーン25,2
6の周囲の各部隙間であるそれぞれの絞りを通して流れ
るオイル流量Q1,Q21,Q22,Q3,Q4は平行
隙間流れの式を用いて計算できる。
【0051】また、一方向への回動に際して収縮する作
動油室28から絞り油路39を通してチェックバルブ4
3を押し開きつつ流れるオイル流量Q5と、反対方向へ
の回動に際して収縮側の作動油室29から絞り油路40
を通してチェックバルブ44を押し開きつつ流れるオイ
ル流量Q6とは環状隙間流れの式を適用して計算可能で
ある。
【0052】すなわち、オイル流量Q1,Q21,Q2
2,Q3,Q4,Q5,Q6は、以下に示す
【0053】
【数1】 の式から式の各式で各部のオイル流量が与えられ
る。
【0054】ただし、上記におけるオイル流量Q5,Q
6を求めるための式と式は、各ピン部材37,38
に対して小径部35,36を同芯状態に形成した場合の
式であって、これら小径部35,36をピン部材37,
38に対し偏芯して形成した場合のオイル流量Q5,Q
6を求める式は、上記式と式を変更して
【0055】
【数2】 で与えられる。
【0056】しかも、この実施の形態のように小径部3
5,36を最大に偏芯して設けた場合には、「ε=1」
となってオイル流量Q5,Q6を求める式は、
【0057】
【数3】 となり、ピン部材37,38に対して小径部35,36
を同芯状態にした場合の二倍半のオイル流量Q5,Q6
を得ることが可能となる。
【0058】ここで、オイル流量Q1,Q21,Q2
2,Q3,Q4およびQ5,Q6を合計したオイル流量
Qは、ベーンの枚数をnとすると
【0059】
【数4】 での式で表わされ、特に、この場合においてチェック
バルブ43またはチェックバルブ44が閉じる方向に向
ってハウジング2とロータ3が相対的に回動する場合の
減衰トルク発生時には、前者では「Q5=0」に、ま
た、後者では「Q6=0」となる。
【0060】一方、上記した合計のオイル流量Qは、ハ
ウジング2とロータ3の相対回動運動に伴うオイルの排
除体積よっても求めることができ、ワンストローク当り
である「θrad」当りの排除体積Dは、
【0061】
【数5】 の式で表わされる。
【0062】したがって、合計のオイル流量Qとワンス
トローク当りの排除体積Dとの関係は、
【0063】
【数6】 の式で与えられ、「dθ/dt=ω」からオイル流量
Qは、ロータリダンパ1の形状諸元と入力角速度によっ
て求めることができる。
【0064】それに対して、発生減衰トルクTは
【0065】
【数7】 での表わされることから、ここで、上記式と式が等
しいときの差圧Δpを求めて上記した発生減衰トルクT
の式に代入することにより減衰トルクを求めることがで
きる。
【0066】しかも、先に述べた差圧Δpのときのベー
ン25,26の周囲の各部隙間であるそれぞれの絞りを
通して流れるオイル流量と絞り油路39或いは絞り油路
40による絞りを通して流れるオイル流量Q1,Q2
1,Q22,Q3,Q4およびQ5,Q6を求める式
から式によって分かるように、計算された差圧Δpは
入力角速度ωに対して図7の減衰トルク特性図のように
線形となるために、減衰トルクTも入力角速度ωに対し
て線形のリニアな特性となる。
【0067】一方、上記した発生減衰トルクTの式から
分かるように、ロータリダンパの発生減衰トルクは、ダ
ンパサイズが決まると各構成部品の強度から許容オイル
圧力▲pが決まることから、必然的に当該ダンパサイズ
における許容最大減衰トルクTmが決まってしまうの
で、当該許容最大減衰トルクTmは
【0068】
【数8】 となる。
【0069】よって、減衰トルクの設定に際しては、先
づ絞り油路39,40を通るオイル流量Q5,Q6が零
の状態において、ロータリダンパの許容最大減衰トルク
Tmを越えないように各構成部品の隙間を決め、これら
隙間を通る合計オイル流量Qを設定する。
【0070】これにより、そのときの設定隙間が当該ダ
ンパサイズにおける許容最大減衰トルクTmを決める設
定状態となるので、それよりも低い発生減衰トルクを選
択して設定値違いのオイルダンパを構成する場合にあっ
ては、上記許容最大減衰トルクを発生するロータリダン
パに対して図2の実施の形態のように、例えばベーン2
5へと減衰トルクチューニング用のピン部材37とチェ
ックバルブ43を介装し、絞り油路39を通してオイル
流量Q5を分流させることによって発生減衰トルクを低
く設定することが可能になる。
【0071】また、ロータリダンパの回動方向に応じて
発生減衰トルクに差を与える場合には、同じく図2の実
施の形態に示したように、ベーン26に対して同じ構造
の減衰トルク差設定用のピン部材38とチェックバルブ
44を先の減衰トルクチューニング用のピン部材37と
チェックバルブ43に向かい合わせて設け、ロータリダ
ンパ1の回動方向に応じて各絞り油路39,40からオ
イル流量Q5,Q6を選択的に分流させることで設定す
ることができる。
【0072】しかも、これらの減衰トルクの設定は、ト
ルクチューニング用のピン部材37と減衰トルク差設定
用のピン部材38における小径部35,36の直径と長
さを適宜に選択することで、絞り油路39,40を流れ
るオイルの流動抵抗を変えることにとって調整すること
ができる。
【0073】それに対して、錐穴によるオリフィスを用
いた従来のロータリダンパにあっては、オリフィス径を
d,オイル密度をρ,流量係数をcとすると、当該オリ
フィスを通して流れるオイル流量Q51は
【0074】
【数9】 となり、当該オリフィスを通して流れるオイルによって
発生する差圧Δpはオイル流量Q5の二乗に比例する特
性となる。
【0075】よって、発生減衰トルクも入力角速度ωの
二乗に比例する特性となり、入力角速度ωが大きくなる
のに連れてベーンの周囲の各部隙間であるそれぞれの絞
りへと分流するオイル流量Q1,Q21,Q22,Q
3,Q4が増加していき、結果として、オリフィスを通
るオイル流量が少なくなることから入力角速度に対する
減衰トルク特性が図8に示すようになり、高速度域での
回動方向に応じた減衰トルクに差が得られないことにな
る。
【0076】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明によれ
ば、ベーンに対して交互に拡張および収縮を繰り返す両
作動油室を相互に連通する複数個の連通孔を穿つと共
に、当該連通孔に小径部を備えるピン部材を挿通して絞
り油路を形成し、当該絞り油路を一方では抵抗油路を通
して常にロータシャフトの内部に設けた貯油室に連通
し、また他方では、絞り油路に対し対向状態を保って直
列に設けたそれぞれのチェックバルブによりこれら絞り
油路を減衰トルクチューニング用の絞り油路と減衰トル
ク差設定用の絞り油路として構成したことにより、減衰
トルクチューニング用の絞り油路を構成するピン部材を
変えて絞り抵抗を変更することで、ベーン周りの隙間や
オイルの粘度を変更することなく発生減衰トルクを設定
して、最大発生減衰トルクのチューニングを行うことが
できる。
【0077】また、上記チューニング用の絞り油路は勿
論のこと連通孔とピン部材で形作った減衰トルク差設定
用の絞り油路は、オリフィスによる二乗特性ではなく発
生差圧に対して一次的に比例するリニアな特性となり、
したがって、ロータリダンパの低速度域から高速度域に
亙る回動方向に応じて一定した大きな減衰トルク差が得
られることになって、外部振動に対し一層優れた減衰特
性を発揮しつつ振動吸収を行うことが可能になる。
【0078】しかも、上記と併せて、低速度域から確り
とした一次比例の減衰トルクを発生させることができる
ことになるので、減衰トルクの不足によるフワフワ感を
除去しつつ車両としての操縦安定性を良好に保つことが
可能になる。
【0079】また、構造上からも、最大発生減衰トルク
のチューニングと回動方向に応じた発生減衰トルク差を
充分にとるためにベーンに対して加工長さの長い小径の
錐穴を穿つ必要もなく、ベーンに対して連通孔を穿つと
共に当該連通孔に対し小径部をもつピン部材を挿通して
やればよいことことから、回動方向に応じて減衰トルク
差を与えるための絞り油路作成時の精度管理の低減およ
び加工時間の短縮を図ることも可能になるのである。
【0080】さらに、請求項2の発明によれば、ベーン
に穿った連通孔へと挿通したピン部材の小径部を当該ピ
ン部材に対し偏芯して設けるだけで、ピン部材に対し同
芯状態を保って小径部を設けた場合よりも発生差圧に対
するオイル流量を二倍半とすることができ、小さなスペ
ースの下でより大きな最大発生減衰トルクのチューニン
グ幅と回動方向に応じた大きな発生減衰トルク差を与え
得ることから、これらの設定の自由度を容易に広げるこ
とが可能になるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるシールレスタイプのロータリダ
ンパの一実施の形態を示すもので、図2のA−A線に沿
って切断した展開縦断正面図である。
【図2】同上、ハウジングとロータの関係を示す縦断側
面図である。
【図3】ロータにおける一方のベーンの部分を拡大して
示す縦断側面図である。
【図4】シールレスタイプのロータリダンパを構成する
各部品の寸法による隙間を流れるオイル流量を示す油圧
回路図である。
【図5】同上の各隙間を流れるオイル流量を求めるため
の計算モデルを示す正面図である。
【図6】同じく、各隙間を流れるオイル流量を求めるた
めの計算モデルを示す側面図である。
【図7】この発明によるロータリダンパの入力角速度に
対する発生減衰トルクの関係を示す減衰トルク特性図で
ある。
【図8】従来におけるロータリダンパの入力角速度に対
する発生減衰トルクの関係を示す減衰トルク特性図であ
る。
【符号の説明】
1 ロータリダンパ 2 ハウジング 3 ロータ 4 ケーシング 5,6 セパレートブロック 7,8 ベアリング 9 ロータシャフト 22 フリーピストン 23 貯油室 24 ガス室 25,26 ベーン 27,28,29,30 作動油室 33,34 連通孔 35,36 小径部 37,38 ピン部材 39,40 絞り油路 43,44 チェックバルブ 49 抵抗油路

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対回動運動を行うベーンによってセパ
    レートブロックを有するケーシングの内部を交互に拡張
    および収縮を繰り返す作動油室に区画し、かつ、ベーン
    に対して交互に拡張および収縮を繰り返す両作動油室を
    相互に連通する複数個の連通孔を穿つと共に、当該連通
    孔に小径部を備えるピン部材を挿通して絞り油路を形成
    し、当該絞り油路を一方では抵抗油路を通して常にロー
    タシャフトの内部に設けた貯油室に連通し、また他方で
    は、絞り油路に対し対向状態を保って直列に設けたそれ
    ぞれのチェックバルブによりこれら絞り油路を減衰トル
    クチューニング用の絞り油路と減衰トルク差設定用の絞
    り油路として構成したことを特徴とするロータリダン
    パ。
  2. 【請求項2】 チェックバルブと共同して減衰トルクチ
    ューニング用の絞り油路と減衰トルク差設定用の絞り油
    路を形成するピン部材の小径部を当該ピン部材に対して
    偏芯して設けた請求項1のロータリダンパ。
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