JPH0833983B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JPH0833983B2
JPH0833983B2 JP61203610A JP20361086A JPH0833983B2 JP H0833983 B2 JPH0833983 B2 JP H0833983B2 JP 61203610 A JP61203610 A JP 61203610A JP 20361086 A JP20361086 A JP 20361086A JP H0833983 B2 JPH0833983 B2 JP H0833983B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は磁気ディスク装置などに用いられる磁気記録
媒体に係り、特に強磁性金属薄膜を磁性膜とする磁気記
録媒体において、耐食性が良好で、記録再生出力変動で
あるモジュレーションの値が小さく、耐久性ならびに磁
気特性に優れた信頼性の高い高密度磁気記録に好適な磁
気記録媒体に関する。
〔従来の技術〕
真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティン
グ法あるいは各種のメッキ法などで形成される強磁性金
属薄膜を磁性膜とする磁気記録媒体は、高密度磁気記録
に適した優れた磁気特性を有する反面、磁性膜が金属薄
膜であるため腐食され易く、そのために磁気特性が経時
的に劣化し、耐久性ならびに信頼性に劣るという欠点が
あった。この欠点を解消するために、Cr、Ti、Mn、Vな
どの金属またはそれらの酸化物よりなる薄膜を、金属磁
性膜の下地層(中間層)あるいは被覆層(保護膜)とし
て設け、耐食性を改善した積層構造の磁気記録媒体が特
公昭54−33523号公報において提案されている。また、C
oまたはCo−Niの磁性膜に第3元素であるCrを2〜15重
量%添加して、磁気特性および耐食性を改善する方法が
特開昭57−15406号公報に記載されている。しかし、こ
れらの従来の磁気記録媒体においては、耐食性は一応改
善されるものの磁気特性の向上という点においては未だ
十分でなく、高密度記録用の磁気記録媒体としての性能
ならびに信頼性に劣るものであった。なお、最近、強磁
性金属薄膜層の上に、潤滑剤、酸化防止剤、有機バイン
ダーなどを含むトップコート層(潤滑剤層)を塗布法に
よって形成し、その表面粗度(Rmax)を20〜200Åの範
囲に調整して、電磁変換特性の低下が少なく、摩擦が小
さく、削れがなく、走行性ならびに耐久性が良好である
という磁気記録媒体(特開昭60−223025号公報)の提案
がなされているが、これは主に磁気テープに関するもの
であり、潤滑剤層であるトップコート層を設けている理
由は、磁気テープ表面の摩擦を小さくし、その走行安定
性をはかることを主目的としているものである。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上述したごとく、従来の強磁性金属薄膜を磁性膜とす
る磁気記録媒体の耐久性ならびに磁気特性の改善は、磁
性膜に下地層(中間層)または被覆層(保護膜)を設け
るもの、磁性膜にCrなどの第3元素を添加させるものな
どがあり、あるいは特定の表面粗さを持つ潤滑剤層を形
成させて摩擦を小さくし走行安定性をはかるものなどが
あるが、これらの磁気記録媒体は、主にオーディオ、ビ
デオまたはディジタルなどの記録分野で用いられるもの
が多く、耐食性ならびに耐久性は一応改善されるものの
磁気特性の向上という点においては未だ十分でなく、例
えばコンピュータ用ハードディスクなどのように、より
高度の磁気特性、耐久性および信頼性が要求される高密
度記録用の磁気記録媒体としての厳しい仕様を満足する
には至っていない。特に、磁気記録媒体の記録再生特性
の中で、モジュレーション(再生出力変動)と呼ばれ
る、磁気ディスクの記録再生時における同一円周上の再
生出力エンベロープ曲線の最大出力値Emaxと最小出力値
Eminからなるパラメータ((Emax−Emin)/(Emax+Em
in))で表わされる、いわゆるモジュレーションの値
は、記録再生エラーに大きな影響を与えることが知られ
ており、このモジュレーションの値の低減化をはかるこ
とが強く要望されていた。
本発明の目的は、特に記録再生出力変動を表わすモジ
ュレーションの値の小さい優れた磁気特性を有し、かつ
耐食性が良好で耐久性ならびに信頼性の高いCo−Ni系も
しくはCo−Cr系合金を磁性膜とする強磁性金属薄膜型の
高密度記録に適した磁気記録媒体を提供することにあ
る。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、Co−Ni系もしくはCo−Cr系合金薄膜を
磁性膜とする強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体における
磁気特性ならびに耐食性の向上について鋭意研究を重ね
た結果、記録再生出力変動を表わすモジュレーションの
値は、磁気記録媒体を構成する磁性膜の磁気記録方向に
垂直な方向の中心線平均表面粗さRaと最大表面粗さRmax
および磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuによって
大きく変動することを知った。すなわち、Raが1nm≦Ra
≦20nmの範囲に対してRmaxがRmax≦25Raで変化する場合
は、面内の磁気異方性エネルギーKuを0≦Ku≦8×105e
rg/cm3とし、またRmaxがRmax≦8Raの範囲にある場合
は、Kuを0≦Ku≦2×105erg/cm3の範囲とし、Rmaxが9R
a≦Rmax≦25Raの範囲にある場合は、Kuが0≦Ku≦8×1
05erg/cm3の範囲とすることによって、モジュレーショ
ンの値を低下させることができ、高密度での記録再生特
性に優れた磁気記録媒体が得られることを見出した。さ
らに、Co−Ni系もしくはCo−Cr系合金薄膜を磁性膜とす
る磁気記録媒体において、磁性膜に第3元素としてZr、
Tiの1種または2種を4〜15原子(at)%添加すること
によって、磁気異方性エネルギーKuを低下すること、お
よび磁性膜の下地層(磁性膜と基板との中間層)とし
て、150〜500nmのCrあるいはCr合金薄膜を設けた場合に
は、さらにKuが低下し、モジュレーションの値をさらに
小さくすることができ、高密度での記録再生特性に優れ
た磁気記録媒体が得られることを確認した。
本発明の磁気記録媒体の磁性膜に設ける、記録方向に
垂直な方向の中心線平均表面粗さ(平均表面粗さとい
う)Raは、1nm未満では磁気記録媒体の作製が難しくな
りコスト高となるので好ましくなく、また20nmを超える
と表面が粗すぎて磁気ヘッドが安定して浮上しなくなる
ので、Raの範囲は1nm≦Ra≦20nmで、最大表面粗さRmax
≦25Raであることが望ましい。そして、磁気異方性エネ
ルギーKuの値を0≦Ku≦2×105erg/cm3とする場合の好
ましいRaおよびRmaxの範囲は、1nm≦Ra≦20nm、Rmax≦8
Raであり、より好ましいRaおよびRmaxの範囲は、1.5nm
≦Ra≦4nm、6Ra≦Rmax≦8Raであり、さらに好ましい範
囲は、Rmaxの絶対値が20nmを超え、150nm以下の範囲で
ある。
さらに、磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuの値
を0≦Ku≦8×105erg/cm3とする場合の好ましいRaおよ
びRmaxの範囲は、1nm≦Ra≦20nm、Rmax≦25Raであり、
より好ましくは1nm≦Ra≦20nm、9Ra≦Rmax≦25Raの範囲
であり、さらに好ましい範囲は、4nm≦Ra≦8nm、9Ra≦R
max≦16Raである。
本発明の磁気記録媒体の磁性膜に設ける表面粗さの形
成方法は、例えば所定の基板上に非磁性メッキ層などを
設けた基体の表面を、所望する表面粗さの形成が可能な
適度の大きさの研磨砥粒を用いて研磨加工し、その上に
磁性膜を成膜させることにより達成することができる。
本発明の磁気記録媒体の磁性膜であるCo−Ni系合金よ
りなる強磁性金属薄膜の組成は、Niの含有量がCoに対し
て、原子%で、20%未満であると保磁力Hcが低くなり、
また50%を超えると飽和磁束密度Bsが低下するので、Ni
の含有量は20〜50%が好ましく、より好ましい範囲は33
〜47%である。そして、Co−Ni系合金に添加するZrまた
はTi、およびZrとTiの添加量は、CoとNiの合計量に対し
て原子%で、4%未満では耐食性の向上効果が少なく、
15%を超えるとBsが劣化する傾向にあるので、4〜15%
の範囲が好ましく、より好ましい範囲は5〜10%であ
る。また、Co−Cr系合金よりなる磁性膜の組成は、Crの
含有量が20%を超えるとBsが低下するので、Cr含有量は
20%以下が好ましく、そしてCo−Cr系合金に添加するZr
またはTi、およびZrとTiの添加量は、上記Co−Ni系合金
の場合と同様の理由で、CoとCrの合計量に対して、4〜
15%の範囲が好ましく、より好ましい範囲は5〜10%で
ある。
さらに、本発明の磁気記録媒体において、Co−Ni系ま
たはCo−Cr系合金からなる磁性膜の下地層(基板と磁性
膜との間の中間層)として、CrまたはCrを主成分とする
合金よりなる薄膜を設けると、磁性膜の配向性がより高
まり、Kuの値がさらに低下するので、モジュレーション
の小さい高密度での記録再生特性に優れた磁気記録媒体
を安定して作製することが可能である。そして、Crなど
よりなる下地層の膜厚は、150nm未満では磁性膜との密
着性が悪化し、Ku値が大きくHcが小さくなるので好まし
くなく、500nmを超えると磁気ヘッドなどとの耐摺動接
触強度が低下するので好ましくなく、その膜厚は150〜5
00nmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は200〜300nm
である。
〔作用〕
磁気ディスクなどの磁気記録媒体を作製した場合に、
一般に、磁気ディスクの円周方向の磁気特性は一定であ
ることが望ましい。すなわち、円周方向の面内における
磁化容易軸の方向は一定で、しかも残留自発磁化の大き
さが一定であることが、再生出力の一様性、およびモジ
ュレーションエラー低減の点から望ましいと考えられて
いる。しかし、実際に作製される磁気記録媒体において
は、磁性膜の磁化容易軸が面内で種々の方向を向いた
り、すべて同じ方向を向いたりする。このとき、再生出
力は円周方向の各位置で変動し、再生出力波形のエンベ
ロープはモジュレーションと呼ばれる変動を示す。一般
に、磁性膜の磁化容易軸の方向を制御することはプロセ
ス上困難である。しかし、磁性膜の面内の磁気異方性エ
ネルギーKuの値を小さくすると共に、磁性層の表面粗さ
を制御すれば、上述のように磁化容易軸が望ましい方向
に向いていなくても、結果として磁気記録媒体の円周上
の位置による再生出力変動の幅を小さくすることができ
る。また、このとき磁気異方性エネルギーKuとモジュレ
ーションの関係は、磁気記録媒体の磁性膜の表面粗さに
より大きな影響を受ける。例えば、一般に表面粗さが1n
mRa20mm、Rmax8Raの磁気記録媒体と、磁気記録媒
体の走行方向と垂直の方向における表面粗さが1nmRa
20nm、9RaRmax25Raの磁気記録媒体とを比較する
と、後者の方が、同じKuで比較してモジュレーションが
小さくなる。このように、表面粗さによって磁気異方性
エネルギーKuに対する仕様が異なるのは、磁性膜を磁気
記録媒体の走行方向と垂直方向に意図的に面を粗くする
ことにより、媒体走行方向の形状磁気異方性を強め、Ku
の影響を小さくすることができるものと考えられる。し
かし、このような表面加工処理を磁気記録媒体に施した
場合、加工処理をしないときに比べて、磁気特性は向上
し、磁気ヘッドと媒体との粘着などの問題も少なく、走
行性が向上するという利点があるが、逆に浮上特性の劣
化や、磁気記録媒体の作製プロセスの追加による経済性
の低下などの問題があり、一長一短がある。この選択は
磁気ディスクなどの磁気記録媒体の仕様に応じてなされ
る。
そして、上記の磁性膜の面内の磁気異方性エネルギー
Kuは、本発明のCo−Ni系もしくはCo−Cr系合金薄膜から
なる磁気記録媒体の磁性膜においては、第3元素として
ZrまたはTi、およびZrとTiを添加することによって効果
的にKuを小さくすることができる。また、これらの本発
明のCo−Ni系、Co−Cr系合金からなる磁性膜は、表面に
緻密な酸化膜が形成され易く、いわゆる不動態化処理に
より耐食性を著しく向上できる利点がある。さらに、磁
性膜と基板との間(磁性層の下地層)にCrまたはCrの合
金よりなる下地層を形成させることにより、磁性膜の配
向性が一段と高まりモジュレーションのより小さい磁気
記録媒体を安定して作製することができる。
〔実施例〕
以下に本発明の一実施例を挙げ図面に基づいてさらに
詳細に説明する。
(実施例1) 外径130mmφ、内径40mmφ、厚さ1.9mmのAl合金からな
る基板1の上に、厚さが20μmのNi−PまたはNi−W−
Pなどからなる非磁性メッキ層2、2′を形成した。そ
して、非磁性メッキ層2、2′の表面は、研磨砥粒径1/
4〜10μmのAl2O3研磨テープなどを用いて研磨し、磁気
ディスクの磁性膜に所定の平均表面粗さRaおよび最大表
面粗さRmaxが得られるように制御した。この非磁性メッ
キ層2、2′を形成し表面粗さを制御した基体上に、基
体温度180℃、Arガス圧5mTorr、RF投入電力密度4W/cm2
の条件下でCrターゲットを用いスパッタリング法で、そ
れぞれ所定の膜厚のCr膜3、3′を形成した。このCr膜
3、3′の上に、上記と同一条件のスパッタリング法
で、Co−30(at%を示す)Ni合金ターゲットおよびZrま
たはTiを8at%添加したCo−30Ni合金ターゲットを用い
て、磁性膜4、4′を60nmの厚さに成膜した。磁性膜
4、4′の組成は、ほぼターゲットの組成と一致した。
さらに、磁性膜4、4′の上に、上記と同一条件のスパ
ッタリング法で、Cからなる保護潤滑層5、5′を形成
させた。
このようにして作製した磁気ディスクを、次に示す条
件で記録再生特性の測定を行った。
使用ヘッド……Mn−Znフェライトヘッド ヘッドギャップ長……0.3μm ヘッド浮上量……0.2μm また、磁気異方性エネルギーKuの測定は磁気トルクメ
ータを用いて行った。その結果を第1表に示す。
第1表に示す試料1〜5は、媒体の磁性膜の表面粗さ
RaとRmaxとの関係が、1nm≦Ra≦20nmに対して、Rmax≦8
Raとなるように表面を研磨処理した基体を用い、Cr膜の
膜厚をそれぞれ100、250、500nmとし、磁性膜としてCo
−30Ni、Co−30Ni−8Zr、Co−30Ni−8Ti合金薄膜を用い
た磁気ディスクであり、その磁気異方性エネルギーKu
(erg/cm3)とモジュレーション〔(Emax−Emin)/(E
max+Emin)(%)〕との関係を第2図に示す。図から
明らかなごとく、Kuの値が0≦Ku≦2×105erg/cm3のと
きにモジュレーションの値が20%未満になることを示し
ている。
また、第1表に示す試料1と3、4を比較すると、Co
−Ni系合金の磁性膜にTiやZrを7〜8at%添加すること
により、同一の成膜条件としたにもかかわらずKuおよび
モジュレーションの値が40〜50%程度低下することを示
している。
第1表に示す試料6〜10は、媒体の磁性膜の表面粗さ
RaとRmaxとの関係が、1nm≦Ra≦20nmに対して、9Ra≦Rm
ax≦25Raとなるように表面を研磨処理した基体を用い、
上記の試料1〜5と同様の条件で作製した磁気ディスク
であって、Kuとモジュレーションの関係を第3図に示
す。図から明らかなごとく、同じKu(erg/cm3)の媒体
であっても試料1〜5に比べて、さらにモジュレーショ
ン(%)が減少し、Kuの値が0≦Ku≦4×105erg/cm3
とき、モジュレーション値が10%未満となった。この磁
気ディスクの記録密度D50(低記録密度における再生出
力の1/2になる記録密度)は、いずれも23kFCI(1イン
チ当りの磁化反転密度)程度であったが、再生出力の大
きさは20%程度増大した。また、試料6と、試料8、試
料9とを比較すると、Co−Ni系合金磁性膜にTiやZrを7
〜8at%添加すると、同様の成膜条件にもかかわらず磁
気異方性エネルギーKuとモジュレーションの値が60〜70
%低下することを示している。
(実施例2) 実施例1における試料1〜10に用いた同様の基板1の
上に非磁性メッキ層2、2′を形成させた基体を用い、
基体温度150℃、Arガス圧15mTorr、RF投入電力密度6W/c
m2の条件下でスパッタリング法によって、所定の膜厚の
Cr膜3、3′を形成させた。このCr膜3、3′の上に、
上記と同一のスパッタリング条件で、Co−20Ni、Co−50
Ni合金のターゲットおよびZrを5at%、10at%、15at%
それぞれ添加したCo−20Ni、Co−50Ni合金をターゲット
として用い磁性層4、4′を70nmの膜厚に成膜した。さ
らに、磁性層4、4′の上には、実施例1と同様にし
て、膜厚が50nmのC膜である保護潤滑層5、5′を形成
させ、第2表の試料11〜25に示す磁気ディスクを作製し
た。このようにして作製した磁気ディスクについて、実
施例1と同様の方法で記録再生特性および磁気異方性エ
ネルギーKuを測定した。その結果を第2表に示す。
第2表に示す試料11〜25は、媒体の磁性膜の表面粗さ
RaとRmaxとの関係が、1nm≦Ra≦20nmおよびRmax≦8Raと
なるように表面を研磨処理した基体を用い、Cr膜の膜厚
をそれぞれ150、250、500nmとし、磁性膜として膜厚が7
00ÅのCo−40Ni、Co−20Ni−5Zr、Co−20Ni−10Zr、Co
−50Ni−5Zr、Co−50Ni−15Zr合金薄膜を形成させた磁
気ディスクであり、そのモジュレーション〔Emax−Emin
/Emax+Emin(%)〕とCr膜厚(μm)との関係を第4
図に示す。図から明らかなごとく、Cr膜厚の増加と共に
磁気ディスクのモジュレーションが低下し、Cr膜厚が0.
15μmから0.5μmと変化するとき、モジュレーション
の値は、Co−40Niでは31%から19%へ、Co−Ni−Zrはい
ずれも20%から8%へと低下した。このとき、第2表に
示す試料11〜13のCo−Ni系合金薄膜と試料14〜25のCo−
Ni−Zr系合金薄膜とを比べると、後者の方が40〜50%モ
ジュレーションの低下を示している。この傾向は、Zr添
加だけに限られるわけでなく、Ti添加の場合においても
同様な結果が得られた。さらに、Co−Ni合金にTiあるい
はZrを添加した3元ないし4元合金は、Co−Ni合金に比
べて耐食性も著しく向上した。また、Co−Ni合金薄膜で
はCo−20Ni、Co−50Ni合金薄膜においても試料11〜13と
同様の効果が認められた。そして、試料11〜25における
Cr膜厚とモジュレーションの関係は、上述の第1表に示
した試料2〜6に用いた基体と同様の基体を使用した場
合においても同様の結果が得られた。
以上、本発明の実施例において、磁性膜を構成する薄
膜としてCo−Ni系合金を例に挙げたが、Co−Cr系合金に
TiまたはZr、もしくはTiとZrを添加した磁性膜において
も上記実施例と同様の効果のあることを確認している。
また、上記実施例において、非磁性メッキ(Ni−P、
Ni−W−P)層を設けたAl基板による磁気ディスクを例
にして説明したが、本発明の効果はこの媒体に限るわけ
ではなく、セラミックス基板を用いた磁気ディスクや、
フロッピーディスク、磁気テープなどにも適用すること
ができる。なお、成膜方法についてもスパッタリング法
に限らず、イオンビームスパッタリング法、イオンプレ
ーティング法、真空蒸着法、各種メッキ法などの方法を
適用することができることは言うまでもない。
〔発明の効果〕
以上詳細に説明したごとく本発明によれば、磁気記録
媒体を構成する磁性膜に、記録方向に垂直な方向の中心
線平均表面粗さRa、および最大表面粗さRmaxを所定の範
囲内に設定し、かつZr、Tiを添加したCo−Ni系またはCo
−Cr系合金を磁性膜とし、さらに磁性膜にCrなどからな
る下地層を設けることによって、磁性膜の面内の磁気異
方性エネルギーKuを所定の値以下とした本発明の磁気記
録媒体は、耐食性が良く、磁気記録再生時における出力
変動であるモジュレーションの値を著しく小さくするこ
とができるので、高密度磁気記録に適した耐久性ならび
に信頼性の高い磁気記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例において作製した磁気ディスク
の断面構造を示す模式図、第2図および第3図は実施例
1における磁気ディスクの面内の磁気異方性エネルギー
Kuとモジュレーションの関係を示すグラフ、第4図は実
施例2におけるCr膜厚とモジュレーションの関係を示す
グラフである。 1…基板 2、2′…非磁性メッキ層 3、3′…Cr膜 4、4′…磁性膜 5、5′…保護潤滑層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 博之 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 白倉 高明 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所小田原工場内 (72)発明者 松岡 伸也 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所小田原工場内 (72)発明者 佐野 誠 神奈川県小田原市国府津2880番地 株式会 社日立製作所小田原工場内 (72)発明者 中村 孝雄 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地 株 式会社日立製作所生産技術研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に、直接もしくは下地層を介して形
    成されたCoを主成分とする合金よりなる磁性膜を有する
    磁気記録媒体において、上記磁性膜の磁気記録方向に垂
    直な方向の中心線平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRm
    axが、1nm≦Ra≦20nmおよびRmax≦25Raの範囲にあっ
    て、上記磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuが0≦
    Ku≦8×105erg/cm3の範囲にあることを特徴とする磁気
    記録媒体。
  2. 【請求項2】平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRmax
    が、1nm≦Ra≦20nmおよびRmax≦8Raの範囲にあって、磁
    性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuが0≦Ku≦2×10
    5erg/cm3の範囲にあることを特徴とする特許請求の範囲
    第1項記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRmax
    が、1.5nm≦Ra≦4nmおよび6Ra≦Rmax≦8Raの範囲にあっ
    て、磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuが0≦Ku≦
    2×105erg/cm3の範囲にあることを特徴とする特許請求
    の範囲第1項に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】Rmaxの絶対値が20nmを超え、150nm以下の
    範囲にあって、磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKu
    が0≦Ku≦2×105erg/cm3の範囲にあることを特徴とす
    る特許請求の範囲第3項に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRmax
    が、1nm≦Ra≦20nmおよび9Ra≦Rmax≦25Raの範囲にあっ
    て、磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuが0≦Ku≦
    8×105erg/cm3の範囲内にあることを特徴とする特許請
    求の範囲第1項に記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRmax
    が、4nm≦Ra≦8nmおよび9Ra≦Rmax≦16Raの範囲にあっ
    て、磁性膜の面内の磁気異方性エネルギーKuが0≦Ku≦
    8×105erg/cm3の範囲内にあることを特徴とする特許請
    求の範囲第1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】Coを主成分とする合金よりなる磁性膜の組
    成が、原子%で、Coに対して20〜50%のNiを含有し、さ
    らにCoとNiの合計量に対して4〜15%のZrおよびTiのう
    ちより選ばれる少なくとも1種の元素を含む合金よりな
    ることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第6項
    のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】Coを主成分とする合金よりなる磁性膜の組
    成が、原子%で、Coに対して20%以下のCrを含有し、さ
    らにCoとCrの合計量に対して4〜15%のZrおよびTiのう
    ちより選ばれる少なくとも1種の元素を含む合金よりな
    ることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第6項
    のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】磁性膜の下地層は、CrもしくはCrを主成分
    とする合金薄膜であって、上記下地層の膜厚は、150〜5
    00nmの範囲にあることを特徴とする特許請求の範囲第1
    項ないし第8項のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
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