以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る音制御装置を含む音制御システムの構成図である。この音制御システムは、音制御装置としての鍵盤装置1000と外部機器2000とが通信可能に接続されることで構成される。鍵盤装置1000は、一例として電子鍵盤楽器として構成される。鍵盤装置1000は、複数の鍵から成る鍵盤部1003を有する。鍵盤装置1000のパネル面1001には、マスターボリュームノブ1002、ピッチベンドレバー1004、モジュレーションレバー1005が配置されている。パネル面1001には、さらに、各種の操作や設定を受け付けるための複数のセクションが配置されている。これら複数のセクションは、メインセクション20、第1音色セクション30、第2音色セクション50、第3音色セクション70、ディレイセクション90、リバーブセクション100およびマスタEQ(イコライザ)セクション110を含む。
図2は、鍵盤装置1000の全体構成を示すブロック図である。鍵盤装置1000は、検出回路3、検出回路4、ROM6、RAM7、タイマ8、表示装置9、記憶装置10、およびMIDI(Musical Instrument Digital Interface)インターフェイス(MIDII/F)11を備える。鍵盤装置1000は、さらに、通信インターフェイス(通信I/F)12、音源回路13及び効果回路14を備える。符号3、4、6~14で示される構成要素はそれぞれ、バス16を介してCPU5に接続されている。
検出回路3には、音高情報を入力するための演奏操作子1が接続されている。演奏操作子1は、鍵盤部1003、マスターボリュームノブ1002、ピッチベンドレバー1004およびモジュレーションレバー1005(図1)を含む。検出回路4には、各種情報を入力するための複数のスイッチを含む設定操作子2が接続されている。設定操作子2は、セクション20、30、50、70、90、100、110のそれぞれが備える複数の操作子(図2、図3で後述する)を含む。表示装置9は液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、各種情報を表示する。CPU5にはタイマ8が接続されている。MIDII/F11には、外部機器2000が接続可能である。外部機器2000は、外部MIDI音源を含む。通信I/F12には通信ネットワークを介してサーバコンピュータ等が接続可能である(図示せず)。音源回路13には効果回路14を介してサウンドシステム15が接続されている。なお、サウンドシステム15は、鍵盤装置1000に内蔵されてもよいし、外部装置として鍵盤装置1000に接続されてもよい。
検出回路3は演奏操作子1の操作状態を検出する。検出回路4は設定操作子2の操作状態を検出する。CPU5は、本装置全体の制御を行う。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM7は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。記憶装置10は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラム、演奏情報、各種データ等を記憶する。記憶装置10は、不揮発性の記憶媒体を有する。記憶装置10は、内蔵される記憶装置であってもよいし、外部記憶装置であってもよい。記憶装置10は、例えば、半導体メモリ、フレキシブルディスクドライブ(FDD)、ハードディスクドライブ(HDD)、CD-ROMドライブまたは光磁気ディスク(MO)ドライブ等である。
MIDII/F11は、外部機器2000からのMIDI信号を入力したり、MIDI信号を外部機器2000に出力したりする。鍵盤装置1000と外部機器2000とは、互いのMIDI端子同士がMIDIケーブルで接続されることで、MIDIメッセージの送受信が可能である。送受信されるMIDIメッセージは、少なくともコントロールチェンジメッセージを含む。
音源回路13は、演奏操作子1から入力された演奏データや予め設定された演奏データ(記憶装置10に記憶されている自動演奏データ等)等を音信号に変換する。効果回路14は、音源回路13から入力される音信号に各種エフェクトを付与する。DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム15は、効果回路14から入力される音信号等を音響に変換する。なお、後述するパフォーマンスを用いて演奏する場合、CPU5は、当該パフォーマンスにおいて規定されるエフェクト設定に基づき、効果回路14を用いて音信号に効果を付与する。
次に、図3および図4で、鍵盤装置1000のパネル面1001に配置された各セクションの構成および機能について説明する。図3および図4は、鍵盤装置1000のパネル面1001に配置された主要な構成要素を示す図である。
まず、パフォーマンスとは、音色およびエフェクト設定の組を少なくとも1組含む情報(設定情報)である。1つのパフォーマンスには、少なくとも1つの音色と、少なくとも1つのエフェクト設定とが属する。複数のパフォーマンスが、予めROM6または記憶装置10に格納(プリセット)されている。また、演奏者(以下、ユーザと称することもある)は、当該格納されたパフォーマンスを編集して、保持部としての記憶装置10に保存することにより、当該格納されたパフォーマンスを上書きすることができ、また、演奏者は、新たなパフォーマンスを作成し、保持部としての記憶装置10に保存することにより、パフォーマンスを追加することもできる。
エフェクト設定とは、エフェクトの種類と付与の態様に関する情報である。エフェクト設定は、パフォーマンスごとに、含まれる音色に対して設定されている。エフェクト設定は、エフェクト、例えば、インサーションエフェクト、リバーブ、ディレイ、EQの各設定を含む。なお、エフェクト設定として含まれる設定の対象となるエフェクトは、上記のように複数のエフェクトに限られず、少なくとも一つのエフェクトであればよいし、その種類も、上記の4つに限られず、音色に付与されるエフェクトであればよい。例えば、エフェクト設定が、リバーブ、ディレイ、EQの各設定だけを含むとしてもよい。
図3に示すメインセクション20は、他のセクションと協働して、各種の設定を行うために用いられる。第1音色セクション30、第2音色セクション50、および図4に示す第3音色セクション70は、それぞれ、発音に用いる音色ごとに設定を行うために用いられる。一例としては、第1音色セクション30は、ピアノセクションであり、主にアコースティックピアノ系の音色を設定するために用いられる。第2音色セクション50は、エレクトリックピアノセクションであり、主に電気ピアノ系の音色を設定するために用いられる。第3音色セクション70は、サブセクションであり、主にピアノやエレクトリックピアノにレイヤさせる音色を設定するために用いられる。ディレイセクション90、リバーブセクション100およびマスタEQセクション110は、発音対象の音色に共通に付与されるエフェクト(以下、共通エフェクトと呼称する)を設定するためのエフェクトセクションである。なお、共通エフェクトとは別に、各音色セクションに固有に付与できるエフェクトとして、インサーションエフェクトが設けられている。インサーションエフェクトは、各音色セクションごとに特有に設計された種類のエフェクトであり、各音色セクションにおけるインサーションエフェクトの選択については後述する。
図3に示すように、メインセクション20は、ダイアル21、メインディスプレイ22、選択スイッチ群23およびメニューボタン24等を含む。メニューボタン24は、システム全体の設定を行うための画面を表示するために用いられる。ダイアル21が回転されると項目が選択され、押し込み操作されると編集内容が決定される。メインディスプレイ22には、設定画面が表示され、例えば、選択された項目または編集内容が表示される。選択スイッチ群23は複数の押しボタンを含む。これら複数の押しボタンは、例えば、登録された複数のパフォーマンスのうち1つを呼び出すために用いられる。
第1音色セクション30は、音色セクションON/OFFスイッチ31、インサーションエフェクトON/OFFスイッチ32、カテゴリセレクタ33、音色セレクトスイッチ34、ディスプレイ35を含む。第1音色セクション30は、さらに、ボリュームノブ36、トーンノブ37、デプスノブ38、インサーションエフェクト切り替えスイッチ39等を含む。
カテゴリセレクタ33は、音色カテゴリを選択するための回転操作子である。音色セレクトスイッチ34は、選択された音色カテゴリに属する音色群から1つの音色を選択するためのスイッチである。音色セクションON/OFFスイッチ31は、音色の有効/無効を指定するスイッチである。音色の有効が指定されている場合、当該音色は発音する対象となる。例えば、鍵盤部1003が演奏操作されるのに応じて、当該音色の音が発音される。反対に、音色の無効が指定されている場合は、当該音色は発音されない。音色セクションON/OFFスイッチ31は、一例として、押下操作または傾倒操作されるトグル式のスイッチである。例えば、音色セクションON/OFFスイッチ31は、操作が終了すると、元の姿勢に復帰する。ディスプレイ35には、選択中の音色を示す番号等が表示される。
インサーションエフェクト切り替えスイッチ39は、第1音色セクション30で設定された音色に付与するインサーションエフェクトを切り替えるためのスイッチである。ここでいうインサーションエフェクトとして、例えば、ステレオコンプレッサ、ディストーション等、複数種類が用意されている。演奏者は、インサーションエフェクト切り替えスイッチ39を操作することで、付与するインサーションエフェクトを1つ選択する。インサーションエフェクトON/OFFスイッチ32は、インサーションエフェクト切り替えスイッチ39で選択されたインサーションエフェクトの付与の有効/無効を指定するスイッチである。インサーションエフェクトの付与が有効と指定されている場合に限り、第1音色セクション30で設定された音色に対して、選択されているインサーションエフェクトが付与される。
ボリュームノブ36は、音色の音量を調節するための回転操作子である。トーンノブ37は、音色のトーンを調節するための回転操作子である。デプスノブ38は、インサーションエフェクトがかかる深さを調節するための回転操作子である。
第2音色セクション50は、音色セクションON/OFFスイッチ51、インサーションエフェクトON/OFFスイッチ52、カテゴリセレクタ53、音色セレクトスイッチ54およびディスプレイ55を含む。第2音色セクション50は、さらに、ボリュームノブ56、トーンノブ57、ドライブノブ58を含む。第2音色セクション50は、さらに、インサーションエフェクトON/OFFスイッチ61、62、インサーションエフェクト切り替えスイッチ63、64、スピードノブ65、デプスノブ66、レートノブ67、デプスノブ68等を含む。
スイッチ51、52、54、カテゴリセレクタ53、ディスプレイ55、ノブ56、57の構成及び機能はそれぞれ、スイッチ31、32、34、カテゴリセレクタ33、ディスプレイ35、ノブ36、37の構成及び機能と同様である。スイッチ61、62の構成及び機能はいずれも、スイッチ32の構成及び機能と同様である。スイッチ63、64の構成及び機能はいずれも、スイッチ39の構成及び機能と同様である。
インサーションエフェクトON/OFFスイッチ61、62はそれぞれ、第2音色セクション50で設定された音色に対する、インサーションエフェクト切り替えスイッチ63、64で設定されたインサーションエフェクトの付与の有効/無効を指定するスイッチである。インサーションエフェクト切り替えスイッチ63によれば、例えば、コーラスやフランジャ等のインサーションエフェクトを切り替えることができる。インサーションエフェクト切り替えスイッチ64によれば、例えば、オートパンやトレモロ等のインサーションエフェクトを切り替えることができる。
デプスノブ66、68の構成及び機能は、デプスノブ38の構成及び機能と同様である。スピードノブ65は、インサーションエフェクトの速さを調節するための回転操作子である。レートノブ67は、インサーションエフェクトの速さを調節するための回転操作子である。
図4に示すように、第3音色セクション70は、音色セクションON/OFFスイッチ71、インサーションエフェクトON/OFFスイッチ72、カテゴリセレクタ73、音色セレクトスイッチ74およびディスプレイ75を含む。第3音色セクション70は、さらに、ボリュームノブ76、トーンノブ77、スピードノブ78、デプスノブ79、インサーションエフェクト切り替えスイッチ80、アタックノブ81およびリリースノブ82等を含む。
スイッチ71、72、74、80、カテゴリセレクタ73、ディスプレイ75、ノブ76、77の構成及び機能はそれぞれ、スイッチ31、32、34、39、カテゴリセレクタ33、ディスプレイ35、ノブ36、37の構成及び機能と同様である。インサーションエフェクトON/OFFスイッチ72は、第3音色セクション70で設定された音色に対する、インサーションエフェクト切り替えスイッチ80で設定されたインサーションエフェクトの付与の有効/無効を指定するスイッチである。インサーションエフェクト切り替えスイッチ80によれば、例えば、コーラスやロータリースピーカ等のインサーションエフェクトを切り替えることができる。
デプスノブ79の構成及び機能は、デプスノブ38の構成及び機能と同様である。スピードノブ78の構成及び機能は、スピードノブ65の構成及び機能と同様である。アタックノブ81は、音が立ち上がるまでの時間を調節するための回転操作子である。リリースノブ82は、音が消えるまでの時間を調節するための回転操作子である。
第3音色セクション70とディレイセクション90との間に、エフェクトレベル切り替えボタン95、ランプ部96が配置されている。エフェクトレベル切り替えボタン95は、ディレイとリバーブのうち、センドレベルを調節する対象のエフェクトを選択するためのスイッチである。ランプ部96は、3つのセクションランプを有する。エフェクトレベル切り替えボタン95により、センドレベルを調節する対象として設定されている音色セクションに対応するセクションランプが点灯する。
ディレイセクション90は、ディレイON/OFFスイッチ91、タイムノブ93およびデプスノブ94等を含む。リバーブセクション100は、リバーブON/OFFスイッチ101、タイムノブ102およびデプスノブ103等を含む。ON/OFFスイッチ91、101は、音色セクション30、50、70のうち有効な音色セクションに対応する音色(発音対象の音色)に、それぞれディレイエフェクト、リバーブエフェクトを付与するか否かを切り替えるスイッチである。言い換えると、ON/OFFスイッチ91、101は、選択されているパフォーマンスにおいて規定される共通エフェクト(リバーブ、ディレイ)の有効/無効の指定を受け付けるための指定操作子である。
タイムノブ93は、フィードバックディレイの長さを調節するための回転操作子である。デプスノブ94は、ディレイエフェクトがかかる深さを調節するための回転操作子である。タイムノブ102は、リバーブエフェクトがかかる長さを調節するための回転操作子である。デプスノブ103は、リバーブエフェクトがかかる深さを調節するための回転操作子である。
マスタEQセクション110のマスタEQON/OFFスイッチ111は、音色セクション30、50、70のうち有効な音色セクションに対応する音色に、マスタEQを付与するか否かを切り替えるスイッチである。マスタEQを付与することで、サウンド全体の音質が補正される。
なお、音色セクションごとに設定される音量や、音色セクションごとに設定されるインサーションエフェクトの速さ、長さ、深さ等は、音色セクションに対応する音色に設定された音パラメータである。そして、上述のように、エフェクトレベル切り替えボタン95により、センドレベルを調節する対象を切り替えることができる。従って、演奏者は、ランプ部96において、センドレベルを調節する対象の音色セクションに対応するセクションランプを点灯させた状態でノブ93、94、102、103を操作する。この操作により、音色セクションごとに音パラメータを調節することができる。
次に、パフォーマンスの呼び出し、編集および新規追加時の動作例を説明する。ユーザは、選択スイッチ群23(図3)を操作することで、登録された複数のパフォーマンスのうち所望の1つを選択する。すると、選択された1つのパフォーマンスの名称がメインディスプレイ22に表示される。なお、鍵盤装置1000の電源オン時等の初期状態においては、選択状態となるパフォーマンスは、予め決まっている。パフォーマンスが選択された状態で、ユーザが選択スイッチ群23を操作することで、別のパフォーマンスを選択すると、それまで表示されていた名称に代わって、新たに選択された1つのパフォーマンスの名称がメインディスプレイ22に表示される。このように、選択スイッチ群23の操作により、選択状態となるパフォーマンスが切り替わる。
選択中のパフォーマンスを編集する際、ユーザは、例えば、音色セクションON/OFFスイッチ31、51または71を操作することで、音色セクションごとに有効/無効を切り替えることができる。また、ユーザは、カテゴリセレクタ33、53または73、音色セレクトスイッチ34、54または74を操作することで、音色セクションごとに、対応する音色を設定することができる。さらに、ユーザは、インサーションエフェクト切り替えスイッチ39、63、64または80を操作することで、音色セクションごとに、付与するインサーションエフェクトを設定することができる。また、ユーザは、インサーションエフェクトON/OFFスイッチ32、52または72を操作することで、音色セクションごとに、インサーションエフェクトの有効/無効を切り替えることができる。さらに、ユーザは、ノブ36~38、56~58、65~68、76~79等を適宜操作することで、音量およびインサーションエフェクトに関する音パラメータを調節することができる。
パフォーマンスは、編集中の状態のまま保存されなくても、演奏による発音に反映される。編集後のパフォーマンスを保存するには、ユーザは、選択スイッチ群23のストアスイッチを操作する。この操作により、現在の編集状態の音色セクションが保存される。なお、編集後の音色セクションを保存・登録する際に、上書きによる更新が可能である。また、別名称を付して新たな音色セクションを追加登録することもできる。ユーザ操作に基づき新たな音色セクションを作成する作成部の機能は、主として設定操作子2、CPU5、ROM6、RAM7および記憶装置10の協働により実現される。なお、マスタEQの設定はパフォーマンスに含まれるが、含まれないようにしてもよい。
一例として、パフォーマンスを、第1グランドピアノ音にステレオコンプレッサが付加される音と、第1電気ピアノ音にインサーションエフェクトを付加しない音の2つの音をレイヤ発音する設定にしたいとする。しかも、発音対象の音色にディレイを付与することなく、リバーブを付与したいとする。この場合、ユーザは、次のように設定する。
まず、ユーザは、第1音色セクション30において、音色として第1グランドピアノ音を設定すると共に、第2音色セクション50において、音色として第1電気ピアノ音を設定する。また、ユーザは、音色セクション30、50における、スイッチ31、51をそれぞれONにすると共に、第3音色セクション70のスイッチ71をOFFにする。また、ユーザは、インサーションエフェクト切り替えスイッチ39を共にONにすると共に、インサーションエフェクトON/OFFスイッチ61、62をOFFにする。また、ユーザは、ディレイON/OFFスイッチ91をOFFにすると共に、リバーブON/OFFスイッチ101をONにする。このほか、ユーザは、音パラメータを調節するために、ノブや回転操作子を適宜操作する。
図5は、各音色セクションからマスタEQセクション110への信号の流れを示す概念図である。各音色セクションに対応する音色の音信号は、各音色セクションに固有のインサーションエフェクトを付与された後、エフェクトセクションに供給される。そして、各音色セクションからエフェクトセクションに供給された信号の全てに対して、設定されたセンドレベルに応じた共通エフェクトが付与される。共通エフェクトが付与された信号は、マスタEQセクション110でEQが付与された後に出力される。
ところで、音源回路13および効果回路14を用いた発音に関しては、音信号生成部が、演奏情報と、選択されたパフォーマンスとに基づき、音信号を生成する。この音信号生成部の機能は、主としてCPU5、音源回路13および効果回路14の協働により実現される。上記演奏情報は、例えば、演奏操作子1により入力される。なお、演奏情報は、記憶装置10から取得、あるいはMIDII/F11を経由して取得されるものであってもよい。音信号生成部は、パフォーマンスにおいて規定される音色で、且つ、演奏情報に基づく音高の音信号を生成する。音信号生成部は、さらに、生成した音信号に、パフォーマンスにおいて規定されるエフェクトを付与する。エフェクトが付与された音信号がサウンドシステム15によって音響に変換されることで、発音される。
これまでは、内部音源(音源回路13)による発音だけに着目して説明した。次に、内部音源と外部音源(外部機器2000)とを併用してレイヤ発音を行う処理を説明する。このレイヤ発音を、以降、「外部音源併用のレイヤ発音」と呼称する。
まず、各音色セクションに対応する音色に対して音パラメータを設定するための操作子であるパラメータ操作子の操作に応じて、MIDI規格のコントロールチェンジメッセージ(以下、CCメッセージと略記する)が生成される。ここでいうパラメータ操作子には、各音色セクションに含まれる、ノブ36~38、56~58、65~68、76~79等が該当する。なお、本発明で設定対象とされる音パラメータは、音量またはエフェクトの少なくともいずれかを含めばよい。外部音源併用のレイヤ発音においては、生成されたCCメッセージが、MIDII/F11を通じて外部機器2000に送信される。また、外部機器2000から出力されたCCメッセージが、MIDII/F11を通じて鍵盤装置1000に受信されてもよい。
図6は、制御モードに応じたCCメッセージの送受信制御の態様を示す概念図である。本実施の形態では、通信に関する制御モードとして、Invertモード(第1のモード)、ONモード(第2のモード)、OFFモード(第3のモード)の3つがある。制御モードと、各音色セクションの有効/無効の指定との組み合わせによって、CCメッセージが送受信されるか否かが決定される。図6に示す「送受信」となる組み合わせの場合に、CCメッセージが送受信されると決定される。
ONモードは、有効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信し、無効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信しないモードである。OFFモードは、各音色セクションの有効/無効の指定に拘わらず、各音色セクションにおけるパラメータ操作子の操作に応じて生成されたいずれのCCメッセージもMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信しないモードである。
Invertモードは、有効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信せず、無効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信するモードである。
なお、外部機器2000からのCCメッセージの受信に関しては、ONモードでは、有効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信され、無効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信されない。OFFモードでは、各音色セクションの有効/無効の指定に拘わらず、外部機器2000からのCCメッセージは受信されない。Invertモードでは、有効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信されず、無効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信される。
図7は、鍵盤装置1000の機能構成のブロック図である。鍵盤装置1000は、主な機能ブロックとして、制御部201、モード選択部202、生成部203、通信部204、および設定部230、250、270を有する。制御部201の機能は、主としてCPU5、ROM6、RAM7、タイマ8および記憶装置10の協働により実現される。通信部204には、MIDII/F11が該当する。通信部204は、CCメッセージの送受信を外部機器2000と行う。
設定部230、250、270にはそれぞれ、音色セクション30、50、70(図3、図4)が該当する。設定部230、250、270はそれぞれ、指定部231、251、271を有する。指定部231、251、271にはそれぞれ、スイッチ31、51、71が該当する。また、設定部230、250、270はそれぞれ、パラメータ操作子232、252、272を有する。パラメータ操作子232には、ノブ36~38(図3参照)が該当する。パラメータ操作子252には、ノブ56~58、65~68(図3参照)が該当する。パラメータ操作子272には、ノブ76~79(図4参照)が該当する。
生成部203の機能は、主としてCPU5、ROM6およびRAM7の協働により実現される。生成部203は、複数の設定部(230、250、270)の各パラメータ操作子(232、252、272)に対する操作に応じたCCメッセージを生成する。
モード選択部202の機能は、主として設定操作子2、CPU5、ROM6、RAM7および記憶装置10の協働により実現される。モード選択部202は、通信部204の3つの制御モードのうち1つをユーザ操作に従って選択する。具体的には、モード選択部202は、ダイアル21およびメニューボタン24に対する操作の受け付けによって制御モードを選択する。例えば、演奏者は、メニューボタン24をONにし、ダイアル21を回転させることで所望の制御モードを選択した状態で、ダイアル21を押し込み操作することで、制御モードを確定させることができる。
外部音源併用のレイヤ発音においては、演奏者がパラメータ操作子232、252、272を操作すると、その操作に応じてCCメッセージが生成される。そして、送受信されると決定されている設定部に対応するCCメッセージが、外部機器2000に送信される。
例えば、Invertモードにおいて、設定部230(音色セクション30)が有効で、設定部250、270(音色セクション50、70)が無効の場合を考える。音色セクション30に対応する音色の発音に関し、パラメータ操作子232の操作に応じたCCメッセージは、音源回路13および効果回路14による音信号の生成に反映されるが、外部機器2000には送信されない。他方、パラメータ操作子252または272の操作に応じたCCメッセージは外部機器2000に送信されるので、外部機器2000が備える音源回路および効果回路による音信号の生成に反映される。従って、Invertモードにおいて、演奏者は、無効指定により内部音源の制御に使用されないパラメータ操作子を、外部機器2000の音パラメータの制御に用いることができる。このようにパラメータ操作子を有効に利用することができる。
図8は、音信号制御処理のフローチャートである。この処理は、CPU5が、ROM6に格納されたプログラムをRAM7に展開すると共に、展開したプログラムを実行することにより、実現される。この処理は、鍵盤装置1000の電源が入れられると開始される。
まず、ステップS101では、CPU5は、初期化処理を実行する。この初期化処理では、例えば、CPU5は、デフォルトのパフォーマンスを選択状態にする。ステップS102では、CPU5は、パフォーマンスの編集、新規追加または削除等のユーザ指示があれば、その指示に従った処理を実行する。ステップS103では、CPU5は、通信に関する制御モード等の選択処理を実行する。例えば、CPU5は、ダイアル21およびメニューボタン24に対するユーザ操作を受け付けることにより、Invertモード、ONモード、OFFモードのいずれかを選択状態にする。
ステップS104では、CPU5は、音色セクションの設定変更処理を実行する。例えば、CPU5は、ユーザ操作等に基づいて、各音色セクションの有効/無効の指定、各エフェクトの有効/無効の設定、等の処理を実行する。ステップS105では、CPU5は、パラメータ操作子232、252、272のいずれかに対する操作があったか否かを判別する。そして、パラメータ操作子232、252、272のいずれに対する操作もない場合は、CPU5は、処理をステップS112に進める。一方、パラメータ操作子232、252、272のいずれかに対する操作があった場合は、CPU5は、処理をステップS106に進める。
ステップS106では、CPU5は、パラメータ操作子のそれぞれに対する操作に応じたCCメッセージを生成する。ステップS107では、CPU5は、現在の制御モードがONモードであるか否かを判別する。CPU5は、現在の制御モードがONモードである場合は、処理をステップS109に進める。しかし、現在の制御モードがONモードでない場合は、CPU5は、現在の制御モードがOFFモードであるか否かを判別する。CPU5は、現在の制御モードがOFFモードである場合は、処理をステップS110に進める。しかし、現在の制御モードがOFFモードでない場合は、CPU5は、現在の制御モードがInvertモードであると判断できるので、処理をステップS111に進める。
ステップS109では、CPU5は、有効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信する。またCPU5は、無効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信しない。さらに、CPU5は、有効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000から送信されてきた場合、それを受信する。しかし、CPU5は、無効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000から送信されてきても、それを受信しない。
ステップS111では、CPU5は、有効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信しない。またCPU5は、無効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信する。さらに、CPU5は、有効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000から送信されてきた場合でも、それを受信しない。しかし、CPU5は、無効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000から送信されてきた場合、それを受信する。
ステップS109、S110、S111の各処理の後、ステップS112で、CPU5は、現在のパフォーマンスで有効と設定されている音色セクションに対応する音色の各々につき、演奏操作子1または記憶装置10から取得される演奏データに基づく音高の音信号を生成する。その際、CPU5は、有効に設定されているエフェクト設定を反映させる。ここで、CPU5は、生成されたCCメッセージをMIDII/F11を通じて外部機器2000に送信する場合であっても、CCメッセージの送信と並行して、上記音信号生成部による音信号の生成を制御する。その際CPU5は、有効に指定されている設定部の設定内容と、有効に指定されている設定部について生成されたCCメッセージとに基づいて、上記音信号生成部による音信号の生成を制御する。
ステップS113では、CPU5は、ステップS112で生成された音信号をサウンドシステム15に出力することで、音響を発生させる。CPU5は、ステップS114で、その他の処理を実行してから、処理をステップS102に戻す。当該その他の処理においては、CPU5は、例えば、終了指示を示すユーザ操作があれば、図8に示す音信号制御処理を終了させる。
本実施の形態によれば、まず、外部音源併用のレイヤ発音が実現されるので、演奏性を高めることができる。また、Invertモードでは、有効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージが外部機器2000に送信されず、無効に指定されている音色セクションについて生成されたCCメッセージが外部機器2000に送信される。従って、有効に指定されている音色セクションのパラメータ操作子を内部音源の制御に用い、無効に指定されている音色セクションのパラメータ操作子を外部音源の制御に用いる、という使用態様が可能となる。このように、内部音源用に使用されない状態となっている音色セクションのパラメータ操作子を外部音源用に有効利用するので、外部音源の制御用に専用のパラメータ操作子を設ける必要がない。従って、レイヤ発音のための構成の複雑化およびコスト上昇を避けることができる。また、特に、パラメータ操作子を内部音源の制御に用いるか、外部音源の制御に用いるかを、スイッチ31、51、71の操作によって演奏中に簡単に切り替えることができるので、操作性が向上する。よって、本実施の形態により、操作性が向上すると共に、操作子を有効利用することができる。
しかも、各音色セクションに、音色を設定する機能と共に、有効/無効を指定する音色セクションON/OFFスイッチ(31、51、71)があるので、演奏者は、操作を覚えやすい。
また、受信に関しても、スイッチ31、51、71の操作によって、制御モードを変更できるので、操作性が向上する。
なお、本実施の形態では、送受信されると決定されている場合、CPU5は、外部機器2000から送信されてきたCCメッセージがあれば、それを受信する。しかし、通信方向を切り替える切り替え部を設けてもよい。例えば、当該切り替え部には、メインセクション20におけるダイアル21およびメニューボタン24等を適用できる。そして、通信方向が「送信方向」である場合は、CPU5は、ステップS104の後、ステップS105へ移行する。一方、通信方向が「受信方向」である場合は、CPU5は、ステップS104の後、受信処理を実行してから処理をステップS112に進める。この受信処理では、制御モードに応じた処理が実行される。すなわち、ONモードでは、有効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信され、無効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信されない。OFFモードでは、各音色セクションの有効/無効の指定に拘わらず、外部機器2000からのCCメッセージは受信されない。Invertモードでは、有効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信されず、無効に指定されている音色セクションに対応するCCメッセージが外部機器2000からMIDII/F11を通じて受信される。
なお、指定部231、251、271が、設定部230、250、270のそれぞれに含まれることは必須でない。指定部231、251、271の機能を果たす操作子が、音色セクションとは別個に設けられてもよい。
なお、音色セクション30、50、70のそれぞれの有効/無効状態を示すランプ等の報知部を設けてもよい。また、現在の制御モードを示すランプ等の報知部を設けてもよい。さらに、Invertモードにおいて、外部へCCメッセージが送信される対象となっている音色セクションを知らせるためのランプ等の報知部を設けてもよい。これら報知の態様は問わず、ランプの点灯、消灯または点滅を適宜採用してもよい。
なお、Invertモードにおいて、外部へ送信されるメッセージとしてCCメッセージを挙げたが、エクスクルーシブメッセージも含めてもよい。
なお、図6で示した例に限定されず、制御モードがONモードの場合は、各音色セクションの有効/無効の指定に拘わらず、送受信されると決定される(「送受信」となる)ように構成してもよい。
なお、本実施の形態で例示した共通エフェクトは2つであったが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、各音色セクションに固有のインサーションエフェクトの種類および数は、例示に限定されない。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
なお、本発明を達成するためのソフトウェアによって表される制御プログラムを記憶した記憶媒体を、音制御装置に読み出すことによって、本発明と同様の効果を奏するようにしてもよい。その場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明を構成することになる。また、プログラムコードを伝送媒体等を介して供給してもよい。その場合は、プログラムコード自体が本発明を構成することになる。なお、これらの場合の記憶媒体としては、ROMのほか、フロッピディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。非一過性のコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。