JP6650136B2 - フレキシブル熱電変換部材の作製方法 - Google Patents
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不導体である高分子素材上へ無電解銀めっきを行う場合には、不導体と金属間に化学結合が形成されにくいため、めっき物(銀皮膜)と不導体の密着性を獲得し、めっき物を長期的に高分子素材の表面に固定する上で、高分子素材の表面に凹凸が必要とされる。ところが、表面の過剰な粗化は必ずしも良好な密着性の獲得につながるとは限らず、素地材自体の特性や最終的に作製されるデバイスの電気的特性に様々な悪影響を及ぼすこともあるため、用途に応じたエッチング方法の選択と、エッチング条件の見極めが肝要である。
なお、本発明においては、第一の表面処理を行う前には、高分子素材の脱脂をするのが望ましい。高分子素材の表面には指紋、油脂などの有機物、および静電作用による塵やほこりなどの付着物が存在する。このような高分子素材の表面処理を脱脂や洗浄が不十分のまま行うと、後続のプロセスにおける加工不良につながり、特にめっきを扱うプロセスでは析出物と高分子素材との密着不良や析出物自体の品質不良などを招くことになるからである。
第一の表面処理を行った後の高分子素材には、スミアと呼ばれる高分子素材の凹凸処理の樹脂残渣が存在する。この樹脂残渣は、その後に行う無電解銀めっきにおいて高分子素材上に形成される銀皮膜の密着力不足等を引き起こし、やけたような部分が広がって、光沢性に優れる高品質な銀皮膜が得られなくなることがある。
触媒化処理は、本発明のフレキシブル熱電変換部材の作製方法において、活性を持たない高分子素材の表面に銀皮膜を析出させるため、高分子素材の表面に触媒活性を持つパラジウムを付与するものである。触媒化処理では、感受性化処理、活性化処理の二工程を経る。無電解銀めっきの場合、高分子素材へのパラジウムの吸着量が金属の析出に大きな影響を与える。高分子素材にパラジウムが十分に吸着しないと、銀皮膜が全面に形成しないことが起こり得る。これに対し、高分子基材に過剰量のパラジウムを吸着させた場合には、高分子基材をめっき液に浸漬させた際、高分子基材からパラジウム微粒子が脱落して、めっき液中に拡散するため、容器壁面で不要な析出が発生し、析出物もまた拡散することによって浴寿命を短縮させること(浴分解)につながるため、触媒化処理では基材の洗浄にも十分な注意を要する。
上述した、脱脂処理、第一の表面処理、第二の表面処理、触媒化処理の終了した高分子素材は、第一の工程の最終段階として、めっき液に浸漬され、無電解銀めっきが施される。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
基材となる柔軟性を有する高分子素材として、ポリイミドフィルムを用いた。縦3cm、横2cm、厚さ50.8マイクロメートルのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、Kapton(登録商標)200H)を6枚用意し、ポリイミドフィルム1〜6とした。
エチレンジアミン(和光純薬工業株式会社製、特級)を75ミリリットルと純水75ミリリットルを混合し、第一の表面処理液としてのエチレンジアミン水溶液1を作成した。
1−メチル−2−ピロリドン(東京化成工業株式会社製、特級)を75ミリリットルと純水75ミリリットルを混合し、第二の表面処理液としての1−メチル−2−ピロリドン2を作成した。
塩化スズ二水和物(関東化学株式会社、特級)を0.75g秤量し、濃塩酸(和光純薬工業株式会社、特級)を0.5ミリリットル加えて溶解させた。この混合物に10ミリリットルの純水を加えてよく撹拌して水溶液とした後、これを純水で150ミリリットルにメスアップして、感応化処理溶液1とした。
酸化銀(I)(関東化学株式会社、鹿特級)を0.15g秤り取り、これを20ミリリットルの純水に加えた後、0.7ミリリットルの28%アンモニア水(和光純薬工業株式会社、特級)を加え、超音波攪拌により酸化銀を溶解させ、金属源溶液1とした。他方、D(+)−グルコース(関東化学株式会社、特級)を0.9g秤量し、純水20ミリリットルに加えて攪拌し、完全に溶解させ、還元剤溶液1とした。金属源溶液1と還元剤溶液1を室温で混合させて無電解銀めっき液1とした。
(1)Bi2Te3系の組成物
酸化テルル(IV)(和光純薬工業株式会社、一級)を0.24gに濃硝酸(和光純薬工業株式会社、特級)を9.7ミリリットル加え、10分間撹拌した後、純水10ミリリットルを加えて撹拌して、酸化テルル(IV)を溶解させた。溶解後の酸化テルル溶液に硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社、特級)0.55gを添加し、最終的に酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物の各濃度が、それぞれ、9ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットルとなるように純水を加え、150ミリリットルまでメスアップして、電解めっき液2−1を作成した。
酸化テルル(IV)(和光純薬工業株式会社、一級)を0.27gに濃硝酸(和光純薬工業株式会社、特級)を9.7ミリリットル加え、10分間撹拌した後、純水10ミリリットルを加えて撹拌して、酸化テルル(IV)を溶解させた。溶解後の酸化テルル溶液に硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社、特級)0.55gを添加し、最終的に酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物の各濃度が、それぞれ、10ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットルとなるように純水を加え、150ミリリットルまでメスアップして、電解めっき液2−2を作成した。
酸化テルル(IV)(和光純薬工業株式会社、一級)を0.14gに濃硝酸(和光純薬工業株式会社、特級)を6.0ミリリットル加え、10分間撹拌した後、純水10ミリリットルを加えて撹拌して、酸化テルル(IV)を溶解させた。溶解後の酸化テルル溶液に硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社、特級)0.36gを添加して溶解させた後、亜セレン酸(純正化学株式会社、特級)を0.013g秤量し、よく攪拌し完全に溶解させた。最終的に酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物、亜セレン酸の各濃度が、それぞれ、8ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットル、1ミリモル/リットルとなるように純水を加え、150ミリリットルまでメスアップして、電解めっき液2−3を作成した。
酸化テルル(IV)(和光純薬工業株式会社、一級)を0.215gに濃硝酸(和光純薬工業株式会社、特級)を9.7ミリリットル加え、10分間撹拌した後、純水10ミリリットルを加えて撹拌して、酸化テルル(IV)を溶解させた。溶解後の酸化テルル溶液に硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社、特級)0.55gを添加して溶解させた後、亜セレン酸(純正化学株式会社、特級)を0.019g秤量し、よく攪拌し完全に溶解させた。最終的に酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物、亜セレン酸の各濃度が、それぞれ、9ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットル、1ミリモル/リットルとなるように純水を加え、150ミリリットルまでメスアップして、電解めっき液2−4を作成した。
酸化テルル(IV)(和光純薬工業株式会社、一級)を0.24gに濃硝酸(和光純薬工業株式会社、特級)を4.9ミリリットル加え、10分間撹拌した後、純水10ミリリットルを加えて撹拌して、酸化テルル(IV)を溶解させた。溶解後の酸化テルル溶液に硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社、特級)0.47gを添加し、溶解させて、ビスマステルル溶液2−5とした。
酸化テルル(IV)(和光純薬工業株式会社、一級)を0.27gに濃硝酸(和光純薬工業株式会社、特級)を4.9ミリリットル加え、10分間撹拌した後、純水10ミリリットルを加えて撹拌して、酸化テルル(IV)を溶解させた。溶解後の酸化テルル溶液に硝酸ビスマス五水和物(和光純薬工業株式会社、特級)0.47gを添加し、溶解させて、ビスマステルル溶液2−6とした。
Claims (11)
- 基材となる柔軟性を有する高分子素材の表面に、無電解銀めっきを行って金属皮膜基材を形成させる第一の工程と、第一の工程の無電解銀めっきにより形成された金属皮膜基材に、電解めっきを行う第二の工程を含む、フレキシブル熱電変換部材の作製方法であって、
前記無電解銀めっきは、酸化銀、アンモニア及びD−グルコースを含有してなるめっき液を用いて行うことを特徴とするフレキシブル熱電変換部材の作製方法。 - 前記無電解銀めっきは、酸化銀、アンモニア、D−グルコースのそれぞれの含有量を、150ミリモル/リットル、30ミリモル/リットル、25ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記柔軟性を有する高分子素材は、ポリイミド性の樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第一の工程は、前記無電解銀めっきを行う前において、前記高分子素材を、50容量%〜90容量%のエチレンジアミン水溶液に浸漬する第一の表面処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第一の工程は、前記無電解銀めっきを行う前において、前記第一の表面処理を行った後の高分子素材を、40容量%〜70容量%の1−メチル−2−ピロリドン水溶液に浸漬する第二の表面処理を行うことを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第二の工程における電解めっきは、前記無電解銀めっきを行った後の金属皮膜基材を、酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物のそれぞれの含有量を、9ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第二の工程における電解めっきは、前記無電解銀めっきを行った後の金属皮膜基材を、酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物のそれぞれの含有量を、10ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第二の工程における電解めっきは、前記無電解銀めっきを行った後の金属皮膜基材を、酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物、亜セレン酸のそれぞれの含有量を、5〜8ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットル、1〜4ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第二の工程における電解めっきは、前記無電解銀めっきを行った後の金属皮膜基材を、酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物、亜セレン酸のそれぞれの含有量を、6〜9ミリモル/リットル、1モル/リットル、7.5ミリモル/リットル、1〜4ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の製造方法。
- 前記第二の工程における電解めっきは、前記無電解銀めっきを行った後の金属皮膜基材を、酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物、酸化アンチモン、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物のそれぞれの含有量を、9ミリモル/リットル、1モル/リットル、3.5〜6.5ミリモル/リットル、1〜4ミリモル/リットル、10〜40ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
- 前記第二の工程における電解めっきは、前記無電解銀めっきを行った後の金属皮膜基材を、酸化テルル、硝酸、硝酸ビスマス五水和物、酸化アンチモン、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物のそれぞれの含有量を、10ミリモル/リットル、1モル/リットル、3.5〜6.5ミリモル/リットル、1〜4ミリモル/リットル、10〜40ミリモル/リットルとしためっき液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフレキシブル熱電変換部材の作製方法。
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