JP4977885B2 - 電気銅めっき方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス、セラミックス等の絶縁性材料上に対しても、優れた密着性を有する銅めっき皮膜を形成できる電気銅めっき方法に関する。
近年、プリント配線板の基板材料として、高純度アルミナ、窒化アルミニウム等の熱伝導率が高いセラミックスが注目されている。これらのセラミックス材料を基板として使用するためには、その表面を金属化する技術の開発が必要であるが、セラミックス材料は、表面が化学的に安定であるために、密着性よく導体を形成することは困難である。
セラミックス材料の表面を金属化する方法としては、蒸着・スパッタリングなどの気相法や無電解めっき法などが知られている。これらの方法の内で、無電解めっき法を適用する場合には、通常、基板とめっき皮膜との間の密着性を確保するために、基板表面に対してエッチング゛処理が必要となる。しかしながら、一般にセラミックス材料は、化学的安定性が高いために、均一なエッチング効果を得ることは難しく、特に、微小領域において均一な密着力を得ることは困難である。
絶縁性基板上に密着性のよい金属薄膜を形成する方法としては、スプレーパイロシス法によって製膜したZnOをバインダー層として用い、この上に触媒を付与した後、無電解めっき皮膜を形成する方法が報告されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、充分な密着性を得るためには、400nm程度以上のZnO膜を形成することが必要とされており、処理時間が長いために生産性が低く、コストの点でも満足のいくものではない。
また、絶縁性基板上に無電解めっき皮膜を形成する方法として、酸化亜鉛膜を形成した後、特定の条件を満足する触媒液を用いて無電解めっき用触媒を付与し、次いで、無電解めっきを行う方法が知られている(下記特許文献1参照)。しかしながら、この方法で形成された無電解めっき皮膜について、その膜厚を増加するために電気めっきを行うと、電気めっき液中において、無電解めっき皮膜の下地の酸化亜鉛膜が簡単に溶解するために、厚膜化が困難である。
H.Yoshiki, V. Alexandruk, K.Hoshimoto, and A. Fujishima, J. Electrochem, Soc., 141, L56(1994) 特開2007−126743号公報
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ガラス、セラミックス等の非導電性材料表面に対しても適用可能なめっき皮膜の形成方法であって、簡単な処理工程によって優れた密着性を有する金属皮膜を形成でき、しかも、厚膜化が容易な方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、非導電性材料を含む各種の被処理物に対して、特定の処理方法によって、酸化亜鉛膜を形成した後、触媒金属を付与し、次いで、無電解めっき皮膜を形成した後、酢酸銅を含有する特定組成の銅めっき液を用いて電気めっき法によって銅皮膜を形成する方法によれば、無電解めっき皮膜の下地として存在する酸化亜鉛膜を殆ど浸食することなく、良好な銅皮膜を形成できることを見出した。そして、この方法によれば、各種の非導電性材料に対しても、簡単な方法で密着性に優れた電気めっき皮膜を形成することができ、形成される金属皮膜を容易に厚膜化できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の電気銅めっき方法を提供するものである。
1.下記(1)〜(4)の工程を含む電気銅めっき方法:
(1)亜鉛イオン、硝酸イオン及びアミンボラン化合物を含み、亜鉛イオン濃度が0.03〜0.2モル/Lであって、硝酸イオンのモル濃度が亜鉛イオンのモル濃度の1〜3倍の範囲内にある水溶液からなる酸化亜鉛膜形成用組成物を被処理物に接触させて、酸化亜鉛膜を形成する工程、
(2)上記(1)工程によって酸化亜鉛膜を形成した被処理物を、触媒金属を含有するpH3.5以上の水溶液からなる触媒付与液に接触させて触媒を付与する工程、
(3)上記(2)工程によって触媒を付与した後、被処理物を無電解めっき液に接触させて無電解めっき皮膜を形成する工程、
(4)上記(3)工程で無電解めっき皮膜を形成した後、酢酸銅、導電性塩及び塩化物イオンを含有する水溶液からなる電気銅めっき液を用いて電気銅めっき皮膜を形成する工程。
2. 上記(3)工程において無電解めっき皮膜を形成した後、熱処理を行い、その後、電気銅めっき皮膜を形成する請求項1に記載の方法。
3. 電気銅めっき液が、酢酸銅を0.05〜0.6mol/L、導電性塩を10〜150g/L、及び塩化物イオンを0.001〜0.15mol/L含有するpH2〜6の水溶液である、請求項1又は2に記載の方法。
4. 電気銅めっき液が、更に、アミノカルボン酸を0.001〜0.1mol/L含有する水溶液である請求項3に記載の方法。
5. 請求項1〜4のいずれかの方法で形成された電気銅めっき皮膜を有する物品。
以下、本発明の電気銅めっき方法について具体的に説明する。
被処理物
本発明方法では、被処理物としては、後述する酸化亜鉛膜形成用水溶液中に浸漬した場合に変質しない材料であればどのような材料も使用可能であり、導電性及び非導電性のいずれの材料であってもよい。その具体例としては、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム等の金属材料、NESAガラス、ITOガラス等の導電性ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス(コーニング7059ガラス)などの非導電性ガラス材料、セラミックス材料、ABS,PC,PET、ポリイミド、エポキシなどのプラスチックス材料などを挙げることができる。
特に、本発明方法によれば、被処理物としてガラス、セラミック、プラスチックス等の非導電性材料を用いる場合であっても、簡単な処理工程によって優れた密着性を有する金属皮膜を形成でき、しかも、厚膜化が容易である。このため、本発明方法は、非導電性材料に対する金属皮膜形成方法として、特に有用性が高い方法である。
酸化亜鉛膜形成工程
本発明方法では、まず、第一工程として、亜鉛イオン、硝酸イオンおよびアミンボラン化合物を含有する酸化亜鉛膜形成用水溶液を用いて被処理物の表面に酸化亜鉛膜を形成する。
酸化亜鉛膜形成用水溶液としては、亜鉛イオン、硝酸イオン及びアミンボラン化合物を含み、亜鉛イオン濃度が0.03〜0.08mol/Lであって、硝酸イオンのモル濃度が亜鉛イオンのモル濃度の1〜3倍の範囲内にある水溶液を用いる。
この様な水溶液を被処理物に接触させることによって、被処理物の表面に酸化亜鉛膜を還元析出させることができる。この際、上記した特定の濃度範囲の亜鉛イオンと硝酸イオンを含む組成物を用いることによって、形成される酸化亜鉛膜は、微小なポーラス構造を有する皮膜となる。形成される酸化亜鉛皮膜は、各種基板に対する密着性が良好であり、また、酸化亜鉛皮膜が微細なポーラス構造を有することによって、後述する工程に従って触媒付与と無電解めっきを行うと、充分なアンカー効果が発揮されて優れた密着性を有する無電解めっき皮膜を形成することができる。
亜鉛イオン源となる化合物としては、水溶性亜鉛塩を用いればよく、その具体例として、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、炭酸亜鉛等を挙げることができる。
硝酸イオン源としては、硝酸、水溶性硝酸塩等を用いることができ、硝酸塩の具体例として、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸尿素等を挙げることができる。
亜鉛イオン源となる化合物及び硝酸イオン源となる化合物は、それぞれ、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。また、亜鉛イオン及び硝酸イオンの両方のイオン源として、硝酸亜鉛を単独で用いても良い。特に、硝酸亜鉛を単独で用いる場合には、浴中に存在する不要な成分が少なく、水酸化亜鉛の形成なども抑制されて、純度の高い酸化亜鉛膜を広い濃度範囲で形成することが可能となる。
アミンボラン化合物としては、水溶性の化合物であればいずれも用いることができる。具体例として、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等を挙げることができる。特に、トリメチルアミンボランを用いる場合には、浴の安定性が良好となり、良好な酸化亜鉛膜を長期間継続して形成できる。
上記した酸化亜鉛膜形成用組成物に含まれる亜鉛イオン濃度は、0.03〜0.08mol/L程度であることが適当であり、0.05〜0.07mol/L程度であることが好ましい。硝酸イオンのモル濃度は、亜鉛イオンのモル濃度の1〜3倍程度、好ましくは1.5〜2.5倍程度とする。
アミンボラン化合物の添加量については、広い範囲で調整することが可能であり、例えば、0.001〜0.5mol/L程度とすることができるが、0.01〜0.1mol/L程度とすることが好ましい。この様にアミンボラン化合物の添加量は、広い範囲で調整できるので、例えば、低コストとするためには、アミンボラン化合物の添加量を比較的低い濃度とすればよい。この場合には、析出速度は若干の低下があるものの、目的とする微細なポーラス構造の酸化亜鉛膜を形成することは可能である。
酸化亜鉛膜形成用水溶液のpHについては、特に限定されるものではないが、pHが低い場合には浴の安定性は向上するものの成膜速度が低下し、一方、pHが高い場合には、成膜速度は向上するが浴の安定性が低下して沈殿が生成し易くなり、酸化亜鉛膜を得ることが困難となる。これらの点から、該組成物のpHは4〜7程度とすることが好ましい。
酸化亜鉛膜形成用水溶液の液温については、特に限定的ではないが、60〜90℃程度とすることが好ましく、70〜85℃程度とすることがより好ましい。この様な温度範囲で酸化亜鉛膜を形成することによって、優れた密着性を有する無電解めっき皮膜を形成することが可能となる。
形成される酸化亜鉛膜の膜厚は、特に限定的ではないが、良好な密着性を得るためには、100nm程度以上、特に、200nm程度以上とすることが好ましい。膜厚の上限については、特に限定的ではないが、生産性などを考慮すると、300nm程度以下とすることが好ましく、250nm程度以下とすることがより好ましい。本発明の方法によれば、この様な薄い膜厚の酸化亜鉛膜を形成するだけで、優れた密着性を有する無電解めっき皮膜を形成できるので、製造時間が短縮され、生産効率が高く、コスト的にも有利である。
更に、酸化亜鉛膜形成用水溶液から酸化亜鉛膜を形成する方法によれば、微細なパターン上に均一で密着性の良い皮膜を形成できるので、高密度の配線パターンにも対応が可能である。
酸化亜鉛膜を形成する方法としては、被処理物を上記した酸化亜鉛膜形成用水溶液に接触させればよく、通常は、酸化亜鉛膜形成用水溶液に被処理物を浸漬すればよい。浸漬する際には、該水溶液は、無撹拌及び撹拌状態のいずれでも良く、撹拌法としては、公知の攪拌方法を適宜採用できる。形成される酸化亜鉛膜の膜厚は浸漬時間とともに増加するので、液温に応じて、浸漬時間を適宜設定することによって、目的とする膜厚の酸化亜鉛膜を形成することができる。例えば、80℃程度の液温で200nm程度の酸化亜鉛膜を形成するためには、20分程度又はそれ以上の処理時間となる。
被処理物としてガラス、セラミック、プラスチックス等を用いる場合には、被処理物を酸化亜鉛膜形成用水溶液に浸漬する前に、触媒金属を付与する。触媒金属の付与方法としては、無電解めっき皮膜を形成する際に行われている触媒付与方法と同様とすればよい。触媒付与処理の具体的な方法としては、無電解めっき皮膜を形成する際に行われている公知の方法をいずれも適用できる。一般的には、パラジウムを付与する方法が広く行われており、例えば、センシタイジング−アクチベーション法、キャタリスト−アクセレレーター法、アルカリキャタリスト法等により触媒を付与すればよい。
その他、触媒金属としては、例えば、銀を用いることもできる。銀触媒を付与する方法については、特に限定はないが、例えば、特開平1−68478号公報に記載されている銀ヒドロゾルを用いて触媒を付与する方法、特開平10−30188号公報に記載されている銀塩0.01〜100mmol/L、陰イオン界面活性剤0.01〜0.5重量%、及び銀塩に対して0.1〜0.8倍モルの還元剤を含有する水溶液を用いる方法、特開2000−8180号公報に記載されている、2価の錫イオンを含むセンシタイジング溶液と接触させてセンシタイジング処理を行った後、銀イオンを含有する溶液と接触させることによって銀触媒を付与する方法などを適用できる。
更に、無電解めっき皮膜を形成する際に用いられるその他の触媒、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、白金等の触媒金属を付与してもよい。また、上記した触媒金属を二種類以上併用してもよい。例えば、Sn−Ag触媒(奥野製薬工業(株)、MOONプロセス)、Sn―Ag−Pd触媒(奥野製薬工業(株)、テクノクリアプロセス)などを適用出来る。
触媒付与工程
上記した方法で酸化亜鉛膜を形成した後、無電解めっき用の触媒を付与する。触媒付与方法としては、触媒金属を含有するpH3.5以上の水溶液からなる触媒付与液を被処理物に接触させればよい。
触媒付与液のpHは、3.5以上であることが必要であり、3.5〜13程度であることが好ましく、4〜10程度であることがより好ましく、4.5〜7程度であることが特に好ましい。この様なpH範囲の触媒付与液を使用することによって、酸化亜鉛膜をほとんど溶解させることなく、無電解めっき用触媒を付与することができる。
触媒金属としては、無電解めっきに対して触媒活性を有する金属であれば、特に限定無く使用できる。例えば、Pd、Ag、Pt等を例示できる。
これらの触媒金属は、後述する錯化剤との組み合わせにおいて、所定のpH範囲の水溶液中に可溶性の化合物であれば特に限定なく使用できる。
例えば、代表的な触媒金属であるPdを用いる場合には、その水溶性塩である硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等を使用できる。
これらの触媒金属をpH3.5以上の水溶液中で安定化させるためには、通常、触媒付与液中に錯化剤を配合する。錯化剤の代表例としては、イミノジ゛酢酸(IDA),ニトリロトリ酢酸(NTA),エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのアミノカルボン酸類;ギ酸,酢酸,プロピオン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸,マロン酸、コハク酸、リンゴ酸等のジカルボン酸;クエン酸等のトリカルボン酸;LiCl、NaCl、KCl等の塩化物等を挙げることができる。特に、塩化物を錯化剤としてクロロ錯体とする場合には、酸化亜鉛膜の溶解量が少ない点で好ましい。
本発明で用いる触媒付与液では、触媒金属の濃度については特に限定的ではないが、例えば、金属濃度として、5〜200ppm程度であることが好ましく、10〜50ppm程度であることがより好ましい。
錯化剤の濃度についても特に限定的ではなく、上記したpH範囲の触媒付与液中において、触媒金属が安定に存在し得る濃度とすればよい。例えば、上記のカルボン酸類を錯化剤とする場合には、触媒金属に対して1〜10倍モル程度,好ましくは2〜5倍モル程度の錯化剤を用いることができ、塩化物を錯化剤としてクロロ錯体を形成する場合には、触媒金属に対して5〜50倍モル程度,好ましくは10〜30倍モル程度の錯化剤を用いることができる。
上記した触媒付与液を用いる場合には、一般に、触媒付与液中の触媒金属濃度を増加させるとZnO膜表面の触媒付与量が増加する傾向がある。例えば、触媒金属としてPdを用いる場合には、触媒付与液中のPd濃度を増加させると、ZnO膜表面のPd存在率は10原子%を上回る場合がある。しかしながら、ZnO膜表面のPd存在量が多くなると、無電解めっきにおいて初期反応が大きくなり過ぎて微細なポアの内部からの無電解めっきの析出が阻害され、十分なアンカー効果が得られず、その結果ZnO膜と無電解めっき皮膜との密着性が低下することがある。この様な点を考慮すると、Pdを触媒金属とする場合には、ZnO膜表面におけるPd存在率は5原子%程度以下であることが好ましい。この場合、触媒付与液中のPd金属濃度は、5〜200ppm程度であることが適当であり、10〜50ppm程度であることが好ましい。
触媒を付与する方法としては、酸化亜鉛膜を形成した被処理物を上記した触媒付与液に接触させればよく、通常は、触媒付与液に被処理物を浸漬すればよい。触媒付与液の液温は、通常、20〜50℃程度とすればよく、処理時間は10〜60秒程度とすればよい。
上記したpH条件を満足する触媒付与液を用いて、触媒金属を付与することによって、酸化亜鉛膜をほとんど溶解することなく、酸化亜鉛膜に触媒金属を付与することができる。このため、本発明の方法では、非常に薄い膜厚の酸化亜鉛膜を形成するだけで、密着性の良好な無電解めっき皮膜を形成することが可能である。
無電解めっき法
上記した方法で触媒金属を付与した後、無電解めっきを行うことによって、各種の基板に対して、密着性のよいめっき皮膜を形成することができる。
無電解めっき液としては、公知の自己触媒型無電解めっき液をいずれも用いることができる。この様な無電解めっき液としては、無電解ニッケルめっき液、無電解銅めっき液、無電解コバルトめっき液、無電解ニッケル−コバルト合金めっき液、無電解金めっき液等を例示できる。特に、後述する電気銅めっき皮膜を厚付けする場合に、良好な密着性を得るためには、無電解めっき皮膜としては、無電解銅めっき皮膜を形成することが好ましい。
無電解めっきの条件については、公知の方法と同様とすればよい。また、必要に応じて無電解めっき皮膜を二層以上形成してもよい。
熱処理工程
本発明では、上記した方法によって無電解めっき皮膜を形成した後、必要に応じて熱処理を行うことによって、無電解めっき皮膜の密着性を大きく向上させることができる。通常、上記した方法で無電解めっきを行った後、安定した密着性を得るために、室温で24時間程度放置することが望ましいが、無電解めっき後に熱処理を行うことによって、短時間で十分な密着性を得ることができる。
尚、無電解めっき皮膜を形成した後熱処理を行う場合には、熱処理を行わない場合と比較して、酸化亜鉛膜形成用組成物における亜鉛イオン濃度及び硝酸イオン濃度がより高い場合にも、良好な密着性の無電解めっき皮膜を形成することができる。具体的には、亜鉛イオン濃度が0.03〜0.2mol/Lであって、硝酸イオンのモル濃度が亜鉛イオンのモル濃度の1〜3倍の範囲内にある水溶液を酸化亜鉛膜形成用組成物として用いることができる。この場合の酸化亜鉛膜形成用組成物による処理条件は、熱処理を行わない場合と同様とすればよい。
熱処理温度については、特に限定的ではないが、100℃程度以上とすることが好ましい。特に、好ましくは120℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上の温度で熱処理を行うことによって、短時間の熱処理で密着強度を大きく向上させることができる。熱処理温度の上限については特に限定的ではなく、使用する基材の種類などに応じて、変質などが生じない温度とすればよい。通常、熱処理温度を250℃程度以下とすれば、無電解めっき皮膜表面の酸化物などによる変質を抑制することができる。
熱処理時の雰囲気については特に限定的ではないが、通常、大気雰囲気中などの酸素含有雰囲気とすればよい。また、高温で熱処理を行う場合には、窒素雰囲気中などの不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うことによって、無電解めっき皮膜表面の変質を抑制できる。
熱処理時間については、十分な密着強度が発現される時間とすればよい。具体的な熱処理時間は、熱処理温度に応じて異なるが、例えば、100℃程度の熱処理温度では、1時間程度以上とすることが好ましく、特に、8時間程度以上、好ましくは12時間程度以上とすれば、密着強度を大きく向上させることができる。熱処理温度が120℃程度以上の場合には、30分程度以上、好ましくは8時間程度以上の熱処理を行えば密着強度を大きく向上させることができ、特に、150℃以上の熱処理温度では、30分程度以上の熱処理を行えば密着強度を大きく向上させること可能であり、短時間で密着強度の高い無電解めっき皮膜を形成することができる。
電気めっき工程
本発明のめっき方法では、上記した方法によって無電解めっき皮膜を形成した後、又は無電解めっきに引き続いて熱処理を行った後、酢酸銅、導電性塩及び塩化物イオンを含有する水溶液からなる電気銅めっき液を用いて、電気銅めっき皮膜を形成する。
上記した特定の電気銅めっき液を用いることによって、無電解めっき皮膜の下地として存在する酸化亜鉛膜を溶解させることなく、無電解めっき皮膜上に密着性に優れた良好な電気銅めっき皮膜を形成することができる。これに対して、硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅めっき液等の公知の電気銅めっき液を用いる場合には、無電解めっき皮膜の下地として存在する酸化亜鉛膜が簡単に溶解するために、良好な電気めっき皮膜を形成することができない。
このため、上記した特定の銅めっき液を用いる本発明の電気めっき方法によれば、各種の被処理物に対して密着性に優れた良好な電気銅めっき皮膜を形成することが可能となり、形成される金属皮膜を容易に厚膜化できる。従って、本発明方法によれば、ガラス、セラミック、プラスチックス等の非導電性材料に対しても、簡単な方法によって、密着性に優れた任意の膜厚の金属皮膜を形成することができる。
本発明方法で用いる電気銅めっき液では、酢酸銅の濃度は、0.05〜0.6mol/L程度とすることが好ましく、0.1〜0.3mol/L程度とすることがより好ましい。
導電性塩としては、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができ、特に、硫酸カリウムが好ましい。これらの導電性塩は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。導電性塩の濃度は、10〜150g/L程度とすることが好ましく、50〜100g/L程度とすることがより好ましい。硫酸カリウムを用いる場合には、特に、50〜70g/L程度とすることが好ましい。
上記した電気銅めっき液では、塩化物イオンの供給源としては、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化カリウムなどを用いることができる。これらの化合物は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。上記電気銅めっき液中の塩化物イオンの濃度は、0.001〜0.15mol/L程度とすることが好ましく、0.01〜0.07mol/L程度とすることがより好ましく、0.02〜0.06mol/Lとすることが特に好ましい。上記した濃度範囲の塩化物イオンが含まれることによって、均一性に優れた銅めっき皮膜を形成することが可能となる。
本発明方法で用いる電気銅めっき液では、更に必要に応じて、アミノカルボン酸を添加することができる。アミノカルボン酸を添加することによって、形成される電気めっき皮膜の均一性をより向上させることができる。アミノカルボン酸としては、例えば、ヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸等を用いることができる。これらのアミノカルボン酸は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。アミノカルボン酸の添加量は、0.001〜0.1mol/L程度とすることが好ましく、0.005〜0.05mol/L程度とすることがより好ましい。
本発明で用いる電気銅めっき液には、更に、必要に応じて、通常の電気銅めっき液に配合される光沢剤などを添加してもよい。
上記した電気銅めっき液のpHは、2〜6程度とすることが好ましく、3〜5.5程度とすることがより好ましく、3.5〜5程度とすることが特に好ましい。この様なpH範囲とすることによって、酸化亜鉛膜を溶解することなく、密着性に優れた均一な銅めっき皮膜を形成することが可能となる。
上記した電気銅めっき液を用いて電気銅めっきを行うには、電気銅めっきに先だって、必要に応じて、酸を含む水溶液を用いて無電解めっき皮膜を活性化することができる。
活性化に用いる水溶液としては、硫酸、酢酸、過硫酸塩等を含む水溶液を例示できる。酸を含む水溶液による活性化は、常法に従って、該水溶液中に被めっき物を浸漬する方法によって行うことができる。
電気銅めっき皮膜を形成する方法としては、通常の電気めっき方法を適宜採用すればよい。電気めっき液の液温は、0〜60℃程度とすることが好ましく、15〜50℃程度とすることがより好ましい。
使用できるアノードについては特に限定はなく、Ir-Ta、Ti-Pt等の不溶性陽極、銅陽極などの可溶性陽極をいずれも使用可能である。
陰極電流密度は、通常0.3〜3A/dm程度とすることが好ましく、0.5〜2A/dm程度とすることがより好ましい。
電気銅めっきを行う際には、通常、空気攪拌、機械的攪拌などの方法によってめっき液を攪拌することが好ましい。
電気銅めっき皮膜の膜厚は、目的に応じて適宜決定すればよく、電流密度とめっき時間を調整することによって、任意の膜厚の電気銅めっき皮膜を形成できる。
本発明の電気めっき方法によれば、各種の被処理物の表面に、密着性の良好な均一な銅めっき皮膜を形成できる。従って、本発明のめっき方法は、例えば、ガラス、セラミックス、プラスチックスなどの非導電性材料を被処理物として用い、その表面を金属化する方法として非常に有用性が高い方法である。また、本発明では、下地に悪影響を及ぼすことなく、電気めっき法によって銅めっき皮膜を形成できるので、めっき時間を延長することによって、銅皮膜を容易に厚膜化することができる。
従って、本発明方法は、例えば、ガラス、セラミックス、プラスチックスなどの非導電性材料をプリント配線板の基板材料として使用する際に、導電性回路を形成する方法等として非常に有用性が高い方法である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
板厚1mmのソーダライムガラス基板(100×100mm)を被めっき物として用い、市販の触媒付与液(奥野製薬工業(株)製、テクノクリアSN.AG, PD)を用いてSn-Ag-Pd触媒核を基板表面に付与した。
その後、硝酸亜鉛0.05mol/L及びジメチルアミンボラン0.02mol/Lを含有する水溶液を80℃に保持し、触媒核を付与したソーダライムガラス基板を60分間浸漬して、厚さ300nmの酸化亜鉛膜を形成した。
次いで、塩化パラジウムをPdイオン濃度として30ppmと、塩化アンモニウムを0.5g/L含有し、pH4.5に調整した触媒溶液中に、上記方法で酸化亜鉛膜を形成したガラス基板を30℃で1分間浸漬することによって、酸化亜鉛膜上にPd触媒を付与した。
その後、市販の無電解Cuめっき浴(奥野製薬工業(株)製ATSアドカッパーIW)を用いて、厚さ0.3μmの無電解Cuめっき皮膜を形成した。
次いで、3%硫酸水溶液に浸漬して無電解Cuめっき膜表面を活性化した後、酢酸第二銅0.2mol/L、硫酸カリウム50g/L、塩化カリウム5g/L及び市販の光沢剤(商標名:トップルチナSF、奥野製薬工業製)を含有し、pH4.0に調整した電気銅めっき液を用いて、液温30℃、陰極電流密度2A/dm2で10分間通電して、厚さ3μmの銅めっき膜を形成した。
形成された銅めっき皮膜は、良好な光沢を有し、密着性にも優れたものであった。
実施例2
被めっき物としてPETフィルム基板(100×100mm)を用いること以外は、実施例1と同様にして、厚さ0.3μmの無電解銅めっき膜を形成した。
その後、無電解銅めっき膜を形成したPET基板を、濃度15%の過硫酸ナトリウム水溶液に浸漬して無電解Cuめっき膜表面の活性化を行い、酢酸第二銅0.3mol/L、塩化アンモニウム5g/L、硫酸ナトリウム70g/Lおよび市販の光沢剤(商標名:トップルチナSF、奥野製薬工業製)を含有し、pH5.6に調整した電気銅めっき液を用いて、浴温20℃、陰極電流密度0.5A/dm2で10分間通電して、厚さ1μmの電気銅めっき膜を形成した。
形成された銅めっき膜は、やや梨地状であったが良好な密着性を示した。
比較例1
実施例1と同様にして、ソーダライムガラス基板上に厚さ0.3μmの無電解銅めっき膜を形成した。
その後、硫酸銅0.28mol/L、硫酸2mol/L及び添加剤(奥野製薬工業(株)製、商標名:トップルチナSF)を含有する強酸性の硫酸銅めっき浴を用いて、浴温23℃、陰極電流密度2.5A/dm2 で1時間通電して、厚さ25μmの銅めっき膜を得ようとしたが、バインダー層であるZnOが溶解し、銅めっき膜はガラス基板との良好な密着が得られず容易に剥離した。
比較例2
実施例1と同様にして、ソーダライムガラス基板上に厚さ0.3μmの無電解銅めっき膜を形成した。
その後、ピロリン酸銅0.31mol/L、ピロリン酸カリウム1mol/L及び添加剤(奥野製薬工業(株)製、商標名:ピロトップPC)を含有し、pH8.8に調整したピロリン酸銅めっき浴を用いて、浴温55℃、陰極電流密度2.5A/dm2 で1時間通電して、厚さ25μmの銅めっき膜を得ようとしたが、バインダー層であるZnOが溶解して、銅めっき膜はガラス基板との良好な密着が得られず、容易に剥離した。
比較例3
実施例1と同様にして、ソーダライムガラス基板上に厚さ0.3μmの無電解銅めっき膜を形成した。
その後、シアン化銅(I)0.2mol/L、シアン化ナトリウム1.2mol/L、KOH 0.25mol/L及びチオシアン酸カリウム0.1mol/Lを含有しpH12に調整したシアン化銅めっき浴を用いて、浴温60℃、陰極電流密度2A/dm2 で1時間通電して、厚さ12μmの銅めっき膜を得ようとしたが、バインダー層であるZnOが溶解し、銅めっき膜はガラス基板との良好な密着が得られず、容易に剥離した。

Claims (5)

  1. 下記(1)〜(4)の工程を含む電気銅めっき方法:
    (1)亜鉛イオン、硝酸イオン及びアミンボラン化合物を含み、亜鉛イオン濃度が0.03〜0.2モル/Lであって、硝酸イオンのモル濃度が亜鉛イオンのモル濃度の1〜3倍の範囲内にある水溶液からなる酸化亜鉛膜形成用組成物を被処理物に接触させて、酸化亜鉛膜を形成する工程、
    (2)上記(1)工程によって酸化亜鉛膜を形成した被処理物を、触媒金属を含有するpH3.5以上の水溶液からなる触媒付与液に接触させて触媒を付与する工程、
    (3)上記(2)工程によって触媒を付与した後、被処理物を無電解めっき液に接触させて無電解めっき皮膜を形成する工程、
    (4)上記(3)工程で無電解めっき皮膜を形成した後、酢酸銅、導電性塩及び塩化物イオンを含有する水溶液からなる電気銅めっき液を用いて電気銅めっき皮膜を形成する工程。
  2. 上記(3)工程において無電解めっき皮膜を形成した後、熱処理を行い、その後、電気銅めっき皮膜を形成する請求項1に記載の方法。
  3. 電気銅めっき液が、酢酸銅を0.05〜0.6mol/L、導電性塩を10〜150g/L、及び塩化物イオンを0.001〜0.15mol/L含有するpH2〜6の水溶液である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 電気銅めっき液が、更に、アミノカルボン酸を0.001〜0.1mol/L含有する水溶液である請求項3に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの方法で形成された電気銅めっき皮膜を有する物品。
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