JP4207394B2 - セラミック電子部品の銅電極形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、セラミック電子部品の銅電極形成方法に関し、特に、たとえばセラミック材料、あるいはセラミックと樹脂との複合セラミック材料で形成された基体の表面に銅電極を形成するためのセラミック電子部品の銅電極形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非導電性あるいは導電性に乏しい材料で形成された基体の表面に銅電極を形成する方法としては、たとえばスパッタ法、蒸着法、導電ペーストの印刷法、無電解めっき法、あるいはこれらの方法により基体の表面に下地金属を形成した後に電解めっきを施す方法など、種々の方法が用いられている。
【0003】
これらの方法では、たとえば大量生産に適当でなかったり、基体の電気的特性が変化したり、めっき浴の管理に手間がかかるなどの問題がある。このような問題点を解決する電極形成方法として、近年、ダイレクトプレーティング法と呼ばれる方法が注目されている。この方法は、プリント基板などに形成されたスルーホールの内表面にパラジウム−スズコロイドやカーボン、グラファイト粒子を吸着させて導電化したのち、電解めっき法により、この導電化材料を伝ってめっきが逐次析出していき(総じて、めっき伝播という)、スルーホール内にめっき金属を析出させて電極を形成するものである。この方法によれば、電解めっきを行なう前の下地金属の形成プロセスを簡略化することができ、電極の形成コストを大幅に抑制することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ダイレクトプレーティング法をセラミック材料で形成された基体に適用するには、いくつかの問題点がある。すなわち、用いられるパラジウム−スズコロイドなどの導電化材料は、水酸基やカルボニル基などの化学的な官能基と結合しやすいという性質を有している。プリント基板などの樹脂材料では、アルカリなどでエッチングすることにより、その表面にこれらの官能基を形成することが可能であり、プリント基板表面に導電化材料を付着させることができる。
【0005】
ところが、セラミック材料においては、エッチングなどによってもその表面に官能基を形成することが困難で、必要量の導電化材料を基体表面に付着させることができず、表面抵抗が高かった。そのため、電解めっきを施した場合、プリント基板などの樹脂材料で形成された基体ではめっきが伝播しやすく、所定の部分にめっきがつき回るが、セラミック材料で形成された基体ではめっきが伝播しにくく、所定部分にめっきが完全につき回らず、一部に不めっき部分が生じて電極を形成できなかった。さらに、このような電解めっきに用いられる電解銅めっき浴は、ほとんどの場合が硫酸をベースにした強酸性浴であり、酸に対して耐性の弱いセラミック材料では、電解めっき液に侵食されて電気的特性が劣化するなどの問題があった。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ダイレクトプレーティング法によってセラミック材料の表面に銅電極を形成するためのセラミック電子部品の銅電極形成方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、セラミック材料、あるいはセラミックと樹脂との複合セラミック材料を用いた基体の表面に銅電極を形成するためのセラミック電子部品の銅電極形成方法であって、基体を、パラジウム、スズ、銀、銅から選ばれる1つ以上を含有するコロイドを含む導電化溶液に浸漬させて、基体の表面にパラジウム、スズ、銀、銅から選ばれる1つ以上を含有する導電化材料を付着させる工程と、基体の表面に付着した導電化材料を下地として電解めっき法によって銅電極を形成する工程とを含み、電解めっき法に用いられる電解銅めっき液が、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、グリシンから選ばれる少なくとも1種であるアミン類あるいはリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、マロン酸から選ばれる少なくとも1種であるオキシカルボン酸類を銅イオンの錯化剤として含有することを特徴とする、セラミック電子部品の銅電極形成方法である。
このようなセラミック電子部品の銅電極形成方法において、電解銅めっき液の錯化剤濃度が、0.1〜1.0mol/Lの範囲にあることが好ましい。
また、電解銅めっき液の銅イオン濃度が、0.05〜0.5mol/Lの範囲にあることが好ましい。
さらに、電解銅めっき液のpHが、4.0〜10.0の範囲にあることが好ましい。
【0008】
本発明者の研究の結果、銅イオンの特定の錯化剤を含有する電解銅めっき液を用いることにより、セラミック材料で形成された基体の表面に十分に導電化材料を付着させることができなくても、めっきが伝播しやすく、所定部分にめっきがつき回り、良好な銅電極を形成できることが見出された。このめっき伝播性は、一般的に表現されている均一電着性とは異なる性質であることが明らかになった。
このような効果を得ることができる銅イオンの錯化剤としては、アミン類あるいはオキシカルボン酸類があるが、これらの錯化剤を用いた電解銅めっき液においては、pHを弱酸性から弱アルカリ性において使用できるため、セラミック材料を侵食する恐れがない。
【0009】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、セラミック材料、あるいはセラミックと樹脂との複合セラミック材料(以下、セラミック材料と総称する)で形成された基体が準備される。このようなセラミック材料としては、たとえば絶縁体、誘電体、圧電体、焦電体、磁性体などのセラミックや、これらのセラミックと樹脂との複合セラミック材料が含まれる。この電子部品の電極形成方法が適用される基体としては、その表面に直接電解めっきを施すことができないような導電性の乏しい表面を持つ基体である。これらの基体の形状や寸法は特に問題とされず、貫通孔や凹凸を有する基体に対しても、この発明の電極形成方法を好適に適用することができる。
【0011】
このような基体の表面に導電化材料を付着させるために、導電化溶液が準備される。導電化溶液には、パラジウム、スズ、銀、銅から選ばれる1つ以上を含有するコロイドが含まれる。この導電化溶液に脱脂やエッチングなどにより表面の洗浄された基体が浸漬される。それによって、基体の表面に導電化材料が付着する。このとき、基体の全面に導電化材料を付着させてもよいし、レジストなどのマスキング方法を用いて、選択的に基体表面に導電化材料を付着させてもよい。
【0012】
導電化材料を付着させた基体には、そのまま電解銅めっき処理を施してもよいし、さらに置換溶液に浸漬して、導電化材料に含まれる金属を部分的に他の金属に置換した後に電解銅めっき処理を施してもよい。このような置換溶液には、導電化溶液に含まれる金属より導電性が高く、電位的に貴な金属が含まれる。また、このような基体の導電化処理と置換処理とを繰り返した後に、電解銅めっき処理を施してもよい。
【0013】
表面が導電化処理された基体には、電解めっきによって銅電極が形成される。電解銅めっきで用いられるめっき液は、銅イオン、銅イオンの錯化剤、電導度剤、pH調整剤を含有し、必要に応じて界面活性剤が添加される。銅イオンについては、銅イオンとして供給されるものであればよく、たとえば、硫酸銅、塩化第二銅、酢酸銅などを用いることができる。めっき液中の銅イオン濃度は、0.01〜0.8mol/Lの範囲で使用され、より好ましくは、0.05〜0.5mol/Lの範囲で使用される。
【0014】
錯化剤としては、アミン類あるいはオキシカルボン酸類が用いられる。アミン類としては、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、グリシンなどが好適に用いられる。また、オキシカルボン酸類としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、マロン酸などが好適に用いられる。その中でも、特に好適であるのは、アミン類ではエチレンジアミンであり、オキシカルボン酸類ではクエン酸である。めっき液中の錯化剤濃度は、0.02〜2.0mol/Lであり、より好ましくは、0.1〜1.0mol/Lである。
【0015】
電導度剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムなどを用いることができ、めっき液中の電導度剤濃度は、0.1〜2.5mol/Lで使用される。
【0016】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、硫酸、塩酸などを用いることができ、めっき液のpHが3.0〜11.0となるように調整され、より好ましくは、pHが4.0〜10.0となるように調整される。このように、めっき液が、弱酸性から弱アルカリ性であれば、酸に対する耐性の弱いセラミック材料で形成された基体に銅めっきを施す場合にも、基体を侵食する恐れがない。
【0017】
さらに、めっき皮膜の特性改良のために、ノニオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を適宜添加してもよい。界面活性剤の添加量は、0.05〜5g/L程度が望ましい。
【0018】
電解めっき工程においては、バレルめっき法やラックめっき法など、種々のめっき法を用いることができる。ただし、チップ形状の電子部品の場合、バレルめっき法によって基体表面に銅電極を形成することが好ましい。
【0019】
この電極形成方法では、電解銅めっき液として、銅イオンの特定の錯化剤を含有するものを用いることにより、導電化材料が十分に付着されないセラミック材料で形成された基体表面に、電解めっき法によって銅電極を形成することができる。このように、基体を導電化溶液に浸漬して導電化し、電解めっきを施すことにより銅電極を形成することができ、銅電極の形成プロセスを簡単にすることができる。したがって、セラミック材料を用いた電子部品などの製造コストを低くすることができる。
【0020】
【実施例】
(実施例1〜9)
チタン酸バリウムを主原料とした誘電体共振器用の基体を準備した。基体のサイズは、20×8×5mmであり、直径0.4〜1.0mmの貫通孔が形成されたものである。この基体の全面に、以下の方法によって、外部銅電極を形成した。
【0021】
この基体をアルカリ系のクリーナーにより洗浄後、水洗し、ともに1〜3%程度の濃度をもつフッ酸と塩酸の混合溶液に浸漬して表面をエッチングし、再度水洗した。次に、塩化パラジウム0.15mol/L、塩化スズ0.4mol/L、塩酸0.05mol/L、塩化ナトリウム1.0mol/LからなるpH2.0、浴温50℃の導電化溶液(金属コロイドを含む)を準備した。この導電化溶液に、基体を10分間浸漬し、水洗した。このとき、基体表面に付着した導電化材料量は12μm/cm2 であり、そのときの抵抗率は500kΩ・cmであった。
【0022】
そして、表1に示す電解銅めっき浴によって、電流密度を0.5A/dm2 に設定し、バレルめっき法によって1時間のめっき(膜厚3μm程度)を行なった。評価として、めっきのつき回り(めっき伝播性)、膜厚分布、セラミック材料の侵食性の有無を調べた。
【0023】
また、表1に示す電解銅めっき液によって、周知のハルセル試験法で均一電着性を評価した。ハルセル試験は、267mlハルセル槽を用い、サイズが100×67mmで、材質がSUS304の試験板を使用した。評価は、試験板の強電側の端部から10mmと60mmの位置の膜厚を測定し、その比率を算出した。
【0024】
【表1】
【0025】
表1において、めっきつき回り性については、○:完全にめっきが伝播しつき回る、△:不めっき部分が10%未満、×:不めっき部分が10%以上であることを示す。また、膜厚分布(膜厚の最大値と最小値の比)については、◎:20%未満、○:20%以上〜40%未満、△:40%以上〜60%未満、×:60%以上であることを示す。さらに、均一電着性については、◎:90%以上、○:90%未満〜70%以上、△:70%未満〜50%以上、×:50%未満であることを示す。なお、以後の表2〜表4についても、同様の判断基準とする。
【0026】
表1からわかるように、実施例1〜3、実施例5〜8に示した錯化剤を用いた場合、基体の全面に銅電極が形成された。その中でも、実施例2に示したエチレンジアミンおよび実施例6に示したクエン酸を用いた場合、膜厚分布も少なく、良好な銅電極を形成することができた。一方、実施例4,9に示した錯化剤を用いた場合、銅電極が形成されたものの、一部で不めっき部分が生じた。
【0027】
(実施例10〜12、比較例1〜3)
実施例1〜9に示した電解銅めっき浴に変えて、表2に示す電解銅めっき浴によって、電流密度を0.5A/dm2 に設定し、バレルめっき法で1時間のめっきを行ない、基体の全面に銅電極を形成した。
【0028】
【表2】
【0029】
表2からわかるように、実施例10〜実施例12に示すように、錯化剤としてクエン酸を用いた場合、いずれの銅イオン濃度および錯化剤濃度においても、めっきが完全に伝播してつき回り、膜厚分布も少ない良好な銅電極が形成された。さらに、pH4.0の弱酸性のめっき浴であるため、基体が侵食されているようなことはなかった。
【0030】
一方、比較例1〜比較例3に示す硫酸をベースにした電解銅めっき浴では、比較例3の場合を除き、めっきが完全に伝播せず、一部で不めっき部分が生じるなど、良好な銅電極を形成することができなかった。また、比較例1〜比較例3の全てにおいて、pH1以下の強酸性浴であるため、基体が侵食されて電気的特性が劣化するなどの不具合が生じた。
【0031】
(実施例13〜18)
実施例1〜9および実施例10〜12、比較例1〜3に示した電解銅めっき浴に変えて、表3に示す電解銅めっき浴によって、電流密度を0.5A/dm2 に設定し、バレルめっき法で1時間のめっきを行ない、基体の全面に銅電極を形成した。
【0032】
【表3】
【0033】
表3からわかるように、実施例13〜実施例15に示すように、錯化剤としてエチレンジアミンを用いた場合、いずれの銅イオンおよび銅錯化剤濃度においても、めっきが完全に伝播してつき回り、膜厚分布の少ない良好な電極が形成された。一方、実施例16〜18に示すジエチレントリアミン五酢酸を用いた場合、銅電極が形成されたものの、一部で不めっき部分が生じた。
【0034】
(実施例19〜27)
実施例1〜実施例18と同様に、表4に示す電解銅めっき浴によって、電流密度を0.5A/dm2 に設定し、バレルめっき法で1時間のめっきを行ない、基体の全面に銅電極を形成した。
【0035】
【表4】
【0036】
表4からわかるように、クエン酸を錯化剤として用いた電解銅めっき浴の場合、銅イオンは0.05〜0.5mol/L、錯化剤は0.1〜1.0mol/L、pHは4〜10の範囲が、めっきの伝播性がよく、膜厚分布が少ない良好な銅電極を形成することができる範囲であると考えられる。
【0037】
【発明の効果】
この発明によれば、セラミック材料で形成された基体の表面に、チップ型電子部品としての特性を劣化させることなく、電極を形成することができる。このとき、樹脂板に適用していたダイレクトプレーティング法をセラミック材料で形成された基体に適用することができ、簡単な電極形成プロセスとすることができるため、チップ型電子部品などを製造する際に、製造コストを低減することができる。
Claims (4)
- セラミック材料、あるいはセラミックと樹脂との複合セラミック材料を用いた基体の表面に銅電極を形成するためのセラミック電子部品の銅電極形成方法であって、
前記基体を、パラジウム、スズ、銀、銅から選ばれる1つ以上を含有するコロイドを含む導電化溶液に浸漬させて、前記基体の表面にパラジウム、スズ、銀、銅から選ばれる1つ以上を含有する導電化材料を付着させる工程、および
前記基体の表面に付着した前記導電化材料を下地として電解めっき法によって前記銅電極を形成する工程を含み、
電解めっき法に用いられる電解銅めっき液が、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、グリシンから選ばれる少なくとも1種であるアミン類あるいはリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、マロン酸から選ばれる少なくとも1種であるオキシカルボン酸類を銅イオンの錯化剤として含有することを特徴とする、セラミック電子部品の銅電極形成方法。 - 前記電解銅めっき液の錯化剤濃度が、0.1〜1.0mol/Lであることを特徴とする、請求項1に記載のセラミック電子部品の銅電極形成方法。
- 前記電解銅めっき液の銅イオン濃度が、0.05〜0.5mol/Lであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品の銅電極形成方法。
- 前記電解銅めっき液のpHが、4.0〜10.0であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセラミック電子部品の銅電極形成方法。
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