以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプリント回路板を示す平面図である。プリント回路板100は、プリント配線板101と、プリント配線板101に実装された、第1の半導体パッケージであるIC111及び第2の半導体パッケージであるIC112と、を備えている。なお、プリント配線板とは、電子部品が実装されていない状態のプリント基板を示し、プリント回路板とは、電子部品が実装されたプリント基板を示している。
プリント配線板101は、導体パターンが配置された導体層を複数有する多層(例えば4層)のプリント配線板である。導体層である内層のうちの1つが主に不図示の電源パターンが配置された電源層であり、1つが主に不図示のグラウンドパターンが配置されたグラウンド層である。電源パターンは、電源電位が印加される、プレーン状に形成された導体であり、グラウンドパターンは、グラウンド電位が印加される、プレーン状に形成された導体である。電源パターン及びグラウンドパターンがプレーン状であるため、広面積であり、電源電位及びグラウンド電位が安定化されている。なお、電源層には、電源電位が印加される導体以外の導体(グラウンド線や信号線等)が配置されていてもよく、また、グラウンド層には、グラウンド電位が印加される導体以外の導体(電源線や信号線等)が配置されていてもよい。
プリント配線板101の一対の表層(表面)101A,101Bは、主に信号線が配置される信号配線層(第1信号配線層及び第2信号配線層)である。なお、信号配線層には、信号が印加される導体以外の導体(グラウンド線や電源線等)が配置されていてもよい。
一対の表層101A,101Bのうち、一方の表層101AにはIC111が実装され、他方の表層101BにはIC112が実装されている。
第1実施形態では、第1信号配線層である表層101Aには、絶縁体層を介してグラウンド層が隣接して配置され、第2信号配線層である表層101Bには、絶縁体層を介して電源層が隣接して配置されている。このように、第1信号配線層、グラウンド層、電源層及び第2信号配線層の4つの導体層が絶縁体層を介して積層された4層のプリント配線板101が構成されている。
IC111は、複数(第1実施形態では2つ)の信号出力回路(信号送信回路、ドライバ)1211,1212を有する。また、IC112は、複数(第1実施形態では2つ)の信号入力回路(信号受信回路、レシーバ)1311,1312を有する。
信号出力回路(第1の信号送信回路)1211は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P1及びネガティブ側の差動信号N1)P1,N1を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)121P1,121N1を有する。即ち、信号出力回路1211は、差動信号P1を出力する出力端子121P1と、差動信号N1を出力する出力端子121N1とを有する。
同様に、信号出力回路(第2の信号送信回路)1212は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P2及びネガティブ側の差動信号N2)P2,N2を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)121P2,121N2を有する。即ち、信号出力回路1212は、差動信号P2を出力する出力端子121P2と、差動信号N2を出力する出力端子121N2とを有する。これら複数の信号出力回路1211,1212は、同一の回路構成である。
信号入力回路(第1の信号受信回路)1311は、一対の差動信号P1,N1を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)131P1,131N1を有する。即ち、信号入力回路1311は、差動信号P1を入力する入力端子131P1と、差動信号N1を入力する入力端子131N1とを有する。
同様に、信号入力回路(第2の信号受信回路)1312は、一対の差動信号P2,N2を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)131P2,131N2を有する。即ち、信号入力回路1312は、差動信号P2を入力する入力端子131P2と、差動信号N2を入力する入力端子131N2とを有する。これら複数の信号入力回路1311,1312は、同一の回路構成である。
第1実施形態では、複数の信号出力回路1211,1212が、1つの半導体パッケージでパッケージ化されている場合について説明するが、個別の半導体パッケージで構成されていてもよい。同様に、複数の信号入力回路1311,1312が、1つの半導体パッケージでパッケージ化されている場合について説明するが、個別の半導体パッケージで構成されていてもよい。
プリント配線板101には、配線方向の一端に一対の出力端子が接続され、配線方向の他端に一対の入力端子が接続されて、一対の差動信号の伝送路となる一対の信号伝送路が複数組、並行して形成されている。
即ち、プリント配線板101には、複数組(第1実施形態では2組)の差動信号線1401(第1の差動信号線),1402(第2の差動信号線)が配線方向と直交する方向に互いに間隔をあけて並行して形成されている。各差動信号線1401,1402は、それぞれ一対の信号伝送路からなる。即ち、差動信号線1401は、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号線140N1(第1の信号伝送路)と、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号線140P1(第2の信号伝送路)とからなる。差動信号線1402は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号線140P2(第3の信号伝送路)と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号線140N2(第4の信号伝送路)とからなる。差動信号線140P1と差動信号線140N1とは、互いに隣接して配置されている。差動信号線140P2と差動信号線140N2とは、互いに隣接して配置されている。これらIC111の信号出力回路1211,1212、IC112の信号入力回路1311,1312及び差動信号線1401,1402を有して差動伝送回路160が構成されている。
差動信号線140N1は、ランド141N1、信号パターン142N1(第1の配線パターン)、信号ヴィア143N1、信号パターン144N1(第2の配線パターン)及びランド145N1を有して構成されている。ランド141N1は、表層101Aに形成され、出力端子121N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140N1の配線方向の一端となる。信号ヴィア143N1は、プリント配線板101に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。信号パターン142N1は、表層101Aに形成された導体であり、信号ヴィア143N1に対してIC111側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド141N1と信号ヴィア143N1とを電気的に接続する。ランド145N1は、表層101Bに形成され、入力端子131N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140N1の配線方向の他端となる。信号パターン144N1は、表層101Bに形成された導体であり、信号ヴィア143N1に対してIC112側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、ランド145N1と信号ヴィア143N1とを電気的に接続する。
差動信号線140P1は、ランド141P1、信号パターン142P1(第3の配線パターン)、信号ヴィア143P1、信号パターン144P1(第4の配線パターン)及びランド145P1を有して構成されている。ランド141P1は、表層101Aに形成され、出力端子121P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140P1の配線方向の一端となる。信号ヴィア143P1は、プリント配線板101に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。信号パターン142P1は、表層101Aに形成された導体であり、信号ヴィア143P1に対してIC111側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド141P1と信号ヴィア143P1とを電気的に接続する。ランド145P1は、表層101Bに形成され、入力端子131P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140P1の配線方向の他端となる。信号パターン144P1は、表層101Bに形成された導体であり、信号ヴィア143P1に対してIC112側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、ランド145P1と信号ヴィア143P1とを電気的に接続する。
差動信号線140P2は、ランド141P2、信号パターン142P2(第5の配線パターン)、信号ヴィア143P2、信号パターン144P2(第6の配線パターン)及びランド145P2を有して構成されている。ランド141P2は、表層101Aに形成され、出力端子121P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140P2の配線方向の一端となる。信号ヴィア143P2は、プリント配線板101に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。信号パターン142P2は、表層101Aに形成された導体であり、信号ヴィア143P2に対してIC111側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド141P2と信号ヴィア143P2とを電気的に接続する。ランド145P2は、表層101Bに形成され、入力端子131P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140P2の配線方向の他端となる。信号パターン144P2は、表層101Bに形成された導体であり、信号ヴィア143P2に対してIC112側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、ランド145P2と信号ヴィア143P2とを電気的に接続する。
差動信号線140N2は、ランド141N2、信号パターン142N2(第7の配線パターン)、信号ヴィア143N2、信号パターン144N2(第8の配線パターン)及びランド145N2を有して構成されている。ランド141N2は、表層101Aに形成され、出力端子121N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140N2の配線方向の一端となる。信号ヴィア143N2は、プリント配線板101に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。信号パターン142N2は、表層101Aに形成された導体であり、信号ヴィア143N2に対してIC111側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド141N2と信号ヴィア143N2とを電気的に接続する。ランド145N2は、表層101Bに形成され、入力端子131N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線140N2の配線方向の他端となる。信号パターン144N2は、表層101Bに形成された導体であり、信号ヴィア143N2に対してIC112側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、ランド145N2と信号ヴィア143N2とを電気的に接続する。
以上、隣り合う2組の差動信号線1401,1402における差動信号線140P1,140N1,140P2,140N2は、第1層である表層101Aと、第1層とは異なる第2層である表層101Bとに信号ヴィアを介して配線されている。
2組の差動信号線1401,1402は隣り合うように配置されている。第1実施形態では、隣り合う2組の差動信号線1401,1402の間には、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。
また、隣り合う差動信号線140P1と差動信号線140N1との間、及び隣り合う差動信号線140P2と差動信号線140N2との間にも、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。
ここで、図1に示すように、プリント配線板101の表層(表面)101A,101Bに垂直な方向(垂直方向)をZ方向とする。第1実施形態では、Z方向から平面視した場合、差動信号線1401(1402)における一方の差動信号線140P1(140P2)と他方の差動信号線140N1(140N2)とが、信号線の経路の途中で1回交差するように配線されている。即ち、差動信号線1401と差動信号線1402のポジティブ側/ネガティブ側の信号線の並び順が、それぞれ交差領域を形成する信号ヴィア143P1,143N1と交差領域を形成する信号ヴィア143P2,143N2で交差している。
具体的には、信号出力回路1211,1212に近い側では、ネガティブ側の信号パターン142N1、ポジティブ側の信号パターン142P1、ポジティブ側の信号パターン142P2、ネガティブ側の信号パターン142N2の並び順となる。また、信号入力回路1311,1312に近い側では、ポジティブ側の信号パターン144P1、ネガティブ側の信号パターン144N1、ネガティブ側の信号パターン144N2、ポジティブ側の信号パターン144P2の並び順となる。
換言すると、信号出力回路1211,1212に近い側では、差動信号線1401のうちポジティブ側の信号線140P1と、差動信号線1402のうちポジティブ側の信号線140P2とが向かい合っている。また、信号入力回路1311,1312に近い側では、差動信号線1401のうちネガティブ側の信号線140N1と、差動信号線1402のうちネガティブ側の信号線140N2とが向かい合っている。
このように、第1実施形態では、差動信号線1401,1402において、信号ヴィア143P1,143N1と信号ヴィア143P2,143N2が、信号線の経路の途中で交差する部分を構成している。即ち、差動信号線1401(1402)は、表層101Aと表層101Bとで、一方の差動信号線140P1(140P2)と他方の差動信号線140N1(140N2)とが交差するように配線されている。
第1実施形態の構成では、差動信号線1401のポジティブ側の信号線140P1の信号パターン142P1から差動信号線1402のポジティブ側の信号線140P2の信号パターン142P2にクロストークが重畳する。一方、差動信号線1401のネガティブ側の信号線140N1の信号パターン144N1から差動信号線1402のネガティブ側の信号線140N2の信号パターン144N2には、ポジティブ側の信号線とは逆相のクロストークが重畳する。
同様に、差動信号線1402のポジティブ側の信号線140P2の信号パターン142P2から差動信号線1401のポジティブ側の信号線140P1の信号パターン142P1にクロストークが重畳する。一方、差動信号線1402のネガティブ側の信号線140N2の信号パターン144N2から差動信号線1401のネガティブ側の信号線140N1の信号パターン144N1には、ポジティブ側の信号線とは逆相のクロストークが重畳する。
これにより、各信号入力回路1311,1312の入力端子131P1,131N1,131P2,131N2において、ポジティブ側の信号とネガティブ側の信号とでクロストークによるスルーレートの変動量が近付く。従って、差動信号P1,N1(P2,N2)の交差電圧の変動量が低減する。
また、複数組の差動信号線のうち隣り合う2組の差動信号線1401,1402について配置が交差する部分が、2組の差動信号線1401,1402の間の配線方向に沿う中心線C1に対して線対称となるように形成されている。
第1実施形態では、配置が交差する部分は、信号ヴィア143P1,143N1と信号ヴィア143P2,143N2である。したがって、信号ヴィア143P1,143N1と信号ヴィア143P2,143N2とが中心線C1に対して線対称に配置されている。このように、線対称構成にすることで、信号パターン142P1と信号パターン142P2との間で重畳するクロストークと、信号パターン144N1と信号パターン144N2との間で重畳するクロストークとの位相が効果的に一致する。これにより、差動信号の交差電圧の変動量が効果的に低減する。
更に、第1実施形態では、差動信号線1401と差動信号線1402とが、中心線C1に対して線対称に配置されている。このように、線対称構成にすることで、信号パターン142P1と信号パターン142P2との間で重畳するクロストークと、信号パターン144N1と信号パターン144N2との間で重畳するクロストークとの位相が更に効果的に一致する。これにより、差動信号の交差電圧の変動量が更に効果的に低減する。
また、図1のように、信号ヴィア143P1,143N1と信号ヴィア143P2,143N2とは、クロストークを低減するために、隣接しないように互いに2組の差動信号線1401,1402における外側へ配置することが好ましい。
また、第1実施形態では、隣り合う2組の差動信号線1401,1402について、差動信号線1401と差動信号線1402との間で隣接して配置される各配線部分を伝達する信号が同相となるように配線されている。ここで、信号パターン142P1と信号パターン142P2とが、隣接して配置される配線部分であり、信号パターン144N1と信号パターン144N2とが、隣接して配置される配線部分である。
隣接して配置される各配線部分(信号パターン142P1と信号パターン142P2、信号パターン144N1と信号パターン144N2)を伝搬する差動信号が同相の場合、隣接して配置される各配線部分間の電界結合が強くなり、交差電圧が低減する。一方、隣接して配置される各配線部分を伝搬する信号が逆相の場合、磁界結合が強まり、交差電圧の変動量が低減する。
信号の向きに対するクロストークの発生する向き(電圧の正負)は、出力インピーダンスや基板、終端条件によって異なる。すなわち、隣接して配置される各配線部分に流れる信号が同方向の場合、隣り合う一方の配線部分から発生するクロストークは、一方の配線部分を流れる信号の、立ち上がり/立ち下がり時間を短くする。また、交差電圧の変動改善に加え、アイパターンの開口も改善させることが出来る。逆に、隣接して配置される各配線部分に流れる信号が逆方向の場合、隣り合う一方の配線部分から発生するクロストークは、一方の配線部分を流れる信号の、立ち上がり/立ち下がり時間が長くする。また、交差電圧の変動に加え、オーバー/アンダーシュートの抑制が可能となる。
実際には、設計上の制約(アイパターンの開口を優先するかオーバー/アンダーシュートを優先するか)を考慮した上で、隣り合う2組の差動信号線から受けるクロストークを同相となるように配線するか逆相となるように配線するかを選択するのが良い。
なお、信号ヴィア143P1,143N1と信号ヴィア143P2,143N2とが線対称に配置されない場合であっても、ポジティブ側とネガティブ側に互いに逆相のクロストークが一部重畳されるため、交差電圧の変動の低減は可能となる。また、信号ヴィア143P1,143N1と信号ヴィア143P2,143N2とが隣接配置される場合も信号パターンにおけるクロストークの方が通常のプリント配線板では大きいため、交差電圧の変動の影響は小さい。
また、信号ヴィア143P1,143N1及び信号ヴィア143P2,143N2がIC111とIC112との中心付近に配置されているが、これに限定するものではない。中心に配置されない場合でもポジティブ配線とネガティブ配線とに互いに逆相のクロストークが一部重畳されるため、交差電圧の変動の低減は可能となる。
図2は、本発明の第1実施形態に係るプリント回路板100の原理を説明するための図である。図2(a)は、プリント回路板100における配線構造の模式図であり、図2(b)は、各信号P1,N1,P2,N2の波形図である。なお、図2(b)において、実線がクロストークを受けた場合、点線がクロストークがない場合を示している。
信号出力回路1211,1212と信号入力回路1311,1312との間で、2組の差動信号線1401,1402が隣接して配置されている。信号出力回路1211,1212から配線並び替え部(信号ヴィア)迄の区間Iと、配線並び替え部から信号入力回路1311,1312迄の区間IIとでポジティブ側/ネガティブ側の信号線の並び順が変更されている。つまり、図2(a)は、経路の途中で配線の並び替えが行われる様子を模式的に表している。
図2(a)では、区間Iにおいて差動信号線1401,1402は、ネガティブ側の信号線140N1、ポジティブ側の信号線140P1、ポジティブ側の信号線140P2、ネガティブ側の信号線140N2の並び順になっている。区間IIにおいて差動信号線1401,1402は、ポジティブ側の信号線140P1、ネガティブ側の信号線140N1、ネガティブ側の信号線140N2、ポジティブ側の信号線140P2の並び順になっている。
上記伝送路のクロストークを考えると、区間Iでは、ポジティブ側の信号線140P1とポジティブ側の信号線140P2とが隣接配置されているため、図2(b)に示すように、この2線間で主にクロストークによる波形変化が発生する。信号線140P1,140P2を伝搬する差動信号が同相であるので、ポジティブ側の信号線140P1と信号線140P2の各々に、コモンモードクロストークが重畳する。
一方で、区間IIでは、ネガティブ側の信号線140N1とネガティブ側の信号線140N2とが隣接配置されているため、図2(b)に示すように、この2線間で主にクロストークによる波形変化が発生する。信号線140N1,140N2を伝搬する差動信号が同相であるので、ネガティブ側の信号線140N1と信号線140N2の各々に、コモンモードクロストークが重畳する。
つまり、差動信号線1401のポジティブ側の信号線140P1はコモンモードクロストークによってスルーレートが変動する。ネガティブ側の信号線140N1は信号線140P1が受けるクロストークとは逆相のコモンモードクロストークによってスルーレートが変動する。
同様に、差動信号線1402のポジティブ側の信号線140P2はコモンモードクロストークによってスルーレートが変動する。ネガティブ側の信号線140N2は信号線140P2が受けるクロストークとは逆相のコモンモードクロストークによってスルーレートが変動する。
これにより、信号受信側、即ち各信号入力回路1311,1312の入力端子で、差動信号におけるポジティブ側の信号とネガティブ側の信号とのスルーレートが近づくことで、差動信号の交差電圧の変動量が低減する。
さらに、2組の差動信号線1401,1402は、区間Iにおいて隣接して配置される各配線部分の配線方向の配線長と、区間IIにおいて隣接して配置される各配線部分の配線方向の配線長とが等しくなるように配線されている。なお本願発明における実施形態において、配線長が等しいとは、3mm以下の配線長の差を言う。ただし、この配線長の差は、伝送する信号の周波数にもよる。
具体的には、信号パターン142P1(142P2)と信号パターン144N1(144N2)との配線長が等しい。また、第1実施形態では、信号パターン142P1と信号パターン142P2、信号パターン144N1と信号パターン144N2との配線長が等しい。
以上の構成により、差動信号線1401と差動信号線1402の各々のポジティブ側の信号線140P1,140P2とネガティブ側の信号線140N1,140N2に重畳するクロストークが逆相でかつ等量となる。それ故、ポジティブ側の信号とネガティブ側の信号のスルーレートはクロストークによる変動量が同一となるため、一対の差動信号の交差電圧の変動量がより低減する。
ここで、差動信号線140P1の立ち上り/立ち下り時間をTrfP1とする。一対の差動信号P1に対する一対の差動信号P2の出力位相差をδP2,P1とする。また、差動信号線140P1に対する差動信号線140P2の配線長差をΔl140P2,140P1、差動信号線140P1に対する差動信号線140N2の配線長差をΔl140N2,140P1、差動信号線周囲の絶縁体に対する実効比誘電率をεSとする。この時、交差電圧の変動量の低減効果を十分に発揮させるために、以下の数式が成り立っていることが好ましい(cは光速)。なお、差動信号線140N1、140P2、140N2の立ち上り/立ち下り時間についても同様である。
また、図1に示す構成で交差電圧の変動量の低減効果が顕著に現れるのは、分布定数線路としての考慮が必要な配線長でクロストークが重畳する場合である。差動信号線140P1の信号パターン142P1の長さ(区間Iの長さ)をL142P1とする。また、差動信号線140P1の信号パターン144P1の長さ(区間IIの長さ)をL144P1とする。この時、交差電圧の変動量の低減効果を十分に発揮させるために、以下の数式を満たすことが好ましい。なお、信号パターン142N1、142P2、142N2、144N1、144P2、144N2についても同様である。また、信号反射の影響を受けないように、信号出力回路121、信号入力回路131、配線パターン142P,142N,144P,144N、配線並び替え部である信号ヴィア143P,143Nのインピーダンスは揃えておくことが好ましい。
第1実施形態において、プリント配線板101は、4層構成の例で示したが、4層に限定するものではない。また、信号パターン142P1と信号パターン142P2との間や信号パターン144N1と信号パターン144N2との間にグラウンド線などの信号線以外の配線が介在していてもよい。
隣接して配置される各配線部分(信号パターン142P1と信号パターン142P2、信号パターン144N1と信号パターン144N2)を伝搬する差動信号が同相でなくてもよく、逆相やランダムパルスであっても交差電圧の変動量の低減効果は発揮される。そのため、2組の差動信号線1401,1402のポジティブ/ネガティブの配線の並び順は第1実施形態に限定されず、どのような組み合わせであってもよい。
また、第1実施形態では、プリント配線板101が、2組の差動信号線1401,1402を有する場合について説明したが、これに限定するものではなく、差動信号線を3組以上有している場合についても本発明は適用可能である。この場合、複数組の差動信号線のうち、隣り合う2組の差動信号線について、第1実施形態のように、各差動信号線における一方の信号線と他方の信号線とが、経路の途中で交差するように配線されていればよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るプリント回路板について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るプリント回路板を示す平面図である。図3に示すプリント回路板200は、プリント配線板201と、プリント配線板201に実装された、第1の半導体パッケージであるIC211及び第2の半導体パッケージであるIC212と、を備えている。
プリント配線板201は、導体パターンが配置された導体層を複数有する多層(例えば4層)のプリント配線板である。導体層である内層のうちの1つが主に不図示の電源パターンが配置された電源層であり、1つが主に不図示のグラウンドパターンが配置されたグラウンド層である。電源パターンは、電源電位が印加される、プレーン状に形成された導体であり、グラウンドパターンは、グラウンド電位が印加される、プレーン状に形成された導体である。なお、電源層には、電源電位が印加される導体以外の導体(グラウンド線や信号線等)が配置されていてもよく、また、グラウンド層には、グラウンド電位が印加される導体以外の導体(電源線や信号線等)が配置されていてもよい。
プリント配線板201の一対の表層(表面)201A,201Bは、主に信号線が配置される信号配線層(第1信号配線層及び第2信号配線層)である。なお、信号配線層には、信号が印加される導体以外の導体(グラウンド線や電源線等)が配置されていてもよい。
一対の表層201A,201Bのうち一方の表層201Aには、IC211及びIC212が実装されている。即ち、IC211及びIC212は、同一の面201Aに実装されている。
第2実施形態では、第1信号配線層である表層201Aには、絶縁体層を介してグラウンド層が隣接して配置され、第2信号配線層である表層201Bには、絶縁体層を介して電源層が隣接して配置されている。このように、第1信号配線層、グラウンド層、電源層及び第2信号配線層の4つの導体層が絶縁体層を介して積層された4層のプリント配線板201が構成されている。
IC211は、複数(第2実施形態では2つ)の信号出力回路(信号送信回路、ドライバ)2211,2212を有する。また、IC212は、複数(第2実施形態では2つ)の信号入力回路(信号受信回路、レシーバ)2311,2312を有する。
信号出力回路(第1の信号送信回路)2211は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P1及びネガティブ側の差動信号N1)P1,N1を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)221P1,221N1を有する。即ち、信号出力回路2211は、差動信号P1を出力する出力端子221P1と、差動信号N1を出力する出力端子221N1とを有する。
同様に、信号出力回路(第2の信号送信回路)2212は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P2及びネガティブ側の差動信号N2)P2,N2を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)221P2,221N2を有する。即ち、信号出力回路2212は、差動信号P2を出力する出力端子221P2と、差動信号N2を出力する出力端子221N2とを有する。これら複数の信号出力回路2211,2212は、同一の回路構成である。
信号入力回路(第1の信号受信回路)2311は、一対の差動信号P1,N1を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)231P1,231N1を有する。即ち、信号入力回路2311は、差動信号P1を入力する入力端子231P1と、差動信号N1を入力する入力端子231N1とを有する。
同様に、信号入力回路(第2の信号受信回路)2312は、一対の差動信号P2,N2を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)231P2,231N2を有する。即ち、信号入力回路2312は、差動信号P2を入力する入力端子231P2と、差動信号N2を入力する入力端子231N2とを有する。これら複数の信号入力回路2311,2312は、同一の回路構成である。
第2実施形態では、複数の信号出力回路2211,2212が、1つの半導体パッケージでパッケージ化されている場合について説明するが、個別の半導体パッケージで構成されていてもよい。同様に、複数の信号入力回路2311,2312が、1つの半導体パッケージでパッケージ化されている場合について説明するが、個別の半導体パッケージで構成されていてもよい。
プリント配線板201には、配線方向の一端に一対の出力端子が接続され、配線方向の他端に一対の入力端子が接続されて、一対の差動信号の伝送路となる差動信号線が複数組、並行して形成されている。
即ち、プリント配線板201には、複数組(第2実施形態では2組)の差動信号線2401(第1の差動信号線),2402(第2の差動信号線)が配線方向と直交する方向に互いに間隔をあけて並行して形成されている。各差動信号線2401,2402は、それぞれ一対の信号伝送路からなる。即ち、差動信号線2401は、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号線240N1(第1の信号伝送路)と、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号線240P1(第2の信号伝送路)とからなる。差動信号線2402は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号線240P2(第3の信号伝送路)と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号線240N2(第4の信号伝送路)とからなる。差動信号線240P1と差動信号線240N1とは、互いに隣接して配置されている。差動信号線240P2と差動信号線240N2とは、互いに隣接して配置されている。これらIC211の信号出力回路2211,2212、IC212の信号入力回路2311,2312及び差動信号線2401,2402を有して差動伝送回路260が構成されている。
差動信号線240N1は、ランド241N1、信号パターン242N1(第1の配線パターン)及び信号ヴィア243N1を有している。また差動信号線240N1は、信号パターン244N1(第2の配線パターン)、信号ヴィア245N1、信号パターン246N1(第3の配線パターン)及びランド247N1を有している。ランド241N1は、表層201Aに形成され、出力端子221N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240N1の配線方向の一端となる。ランド247N1は、表層201Aに形成され、入力端子231N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240N1の配線方向の他端となる。信号ヴィア243N1,245N1は、プリント配線板201に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。
信号パターン242N1は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア243N1に対してIC211側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド241N1と信号ヴィア243N1とを電気的に接続する。信号パターン244N1は、表層201Bに形成された導体であり、信号ヴィア243N1と信号ヴィア245N1との間に配置され、信号ヴィア243N1と信号ヴィア245N1とを電気的に接続する。信号パターン246N1は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア245N1に対してIC212側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、信号ヴィア245N1とランド247N1とを電気的に接続する。
差動信号線240P1は、ランド241P1、信号パターン242P1(第4の配線パターン)及び信号ヴィア243P1を有している。また差動信号線240P1は、信号パターン244P1(第5の配線パターン)、信号ヴィア245P1、信号パターン246P1(第6の配線パターン)及びランド247P1を有している。ランド241P1は、表層201Aに形成され、出力端子221P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240P1の配線方向の一端となる。ランド247P1は、表層201Aに形成され、入力端子231P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240P1の配線方向の他端となる。信号ヴィア243P1,245P1は、プリント配線板201に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。
信号パターン242P1は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア243P1に対してIC211側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド241P1と信号ヴィア243P1とを電気的に接続する。信号パターン244P1は、表層201Bに形成された導体であり、信号ヴィア243P1と信号ヴィア245P1との間に配置され、信号ヴィア243P1と信号ヴィア245P1とを電気的に接続する。信号パターン246P1は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア245P1に対してIC212側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、信号ヴィア245P1とランド247P1とを電気的に接続する。
差動信号線240P2は、ランド241P2、信号パターン242P2(第7の配線パターン)及び信号ヴィア243P2を有している。また差動信号線240P2は、信号パターン244P2(第8の配線パターン)、信号ヴィア245P2、信号パターン246P2(第9の配線パターン)及びランド247P2を有している。ランド241P2は、表層201Aに形成され、出力端子221P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240P2の配線方向の一端となる。ランド247P2は、表層201Aに形成され、入力端子231P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240P2の配線方向の他端となる。信号ヴィア243P2,245P2は、プリント配線板201に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。
信号パターン242P2は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア243P2に対してIC211側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド241P2と信号ヴィア243P2とを電気的に接続する。信号パターン244P2は、表層201Bに形成された導体であり、信号ヴィア243P2と信号ヴィア245P2との間に配置され、信号ヴィア243P2と信号ヴィア245P2とを電気的に接続する。信号パターン246P2は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア245P2に対してIC212側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、信号ヴィア245P2とランド247P2とを電気的に接続する。
差動信号線240N2は、ランド241N2、信号パターン242N2(第10の配線パターン)及び信号ヴィア243N2を有している。また差動信号線240N2は、信号パターン244N2(第11の配線パターン)、信号ヴィア245N2、信号パターン246N2(第12の配線パターン)及びランド247N2を有している。ランド241N2は、表層201Aに形成され、出力端子221N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240N2の配線方向の一端となる。ランド247N2は、表層201Aに形成され、入力端子231N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線240N2の配線方向の他端となる。信号ヴィア243N2,245N2は、プリント配線板201に形成されたヴィアホール(スルーホール)に形成された導体である。
信号パターン242N2は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア243N2に対してIC211側(第1の半導体パッケージ側)に配置され、ランド241N2と信号ヴィア243N2とを電気的に接続する。信号パターン244N2は、表層201Bに形成された導体であり、信号ヴィア243N2と信号ヴィア245N2との間に配置され、信号ヴィア243N2と信号ヴィア245N2とを電気的に接続する。信号パターン246N2は、表層201Aに形成された導体であり、信号ヴィア245N2に対してIC212側(第2の半導体パッケージ側)に配置され、信号ヴィア245N2とランド247N2とを電気的に接続する。
以上、隣り合う2組の差動信号線2401,2402における差動信号線240P1,240N1,240P2,240N2は、第1層である表層201Aと、第1層とは異なる第2層である表層201Bとに複数の信号ヴィアを介して配線されている。
2組の差動信号線2401,2402は隣り合うように配置されている。第2実施形態では、隣り合う2組の差動信号線2401,2402の間には、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。
また、隣り合う差動信号線240P1と差動信号線240N1との間、及び隣り合う差動信号線240P2と差動信号線240N2との間にも、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。
ここで、図3に示すように、プリント配線板201の表層(表面)201A,201Bに垂直な方向(垂直方向)をZ方向とする。第2実施形態では、Z方向から平面視した場合、差動信号線2401(2402)における一方の差動信号線240P1(240P2)と他方の差動信号線240N1(240N2)とが、経路の途中で2回交差するように配線されている。即ち、差動信号線2401と差動信号線2402のポジティブ側/ネガティブ側の信号線の並び順がそれぞれ交差している。
具体的には、信号出力回路2211,2212に近い側では、ネガティブ側の信号パターン242N1、ポジティブ側の信号パターン242P1、ポジティブ側の信号パターン242P2、ネガティブ側の信号パターン242N2の並び順となる。また、信号出力回路と信号入力回路との中間(信号ヴィア間)では、ポジティブ側の信号パターン244P1、ネガティブ側の信号パターン244N1、ネガティブ側の信号パターン244N2、ポジティブ側の信号パターン244P2の並び順となる。また、信号入力回路2311,2312に近い側では、ネガティブ側の信号パターン246N1、ポジティブ側の信号パターン246P1、ポジティブ側の信号パターン246P2、ネガティブ側の信号パターン246N2の並び順となる。即ち、信号パターン246P1,246N1,246P2,246N2のポジティブ/ネガティブの配線の並び順は、信号パターン242P1,242N1,242P2,242N2のポジティブ/ネガティブの配線の並び順と同じである。一方、信号パターン244P1,244N1,244P2,244N2のポジティブ/ネガティブの配線の並び順は、信号パターン242P1,242N1,242P2,242N2のポジティブ/ネガティブの配線の並び順と異なる。
換言すると、信号出力回路2211,2212に近い側では、差動信号線2401のうちポジティブ側の信号線240P1と、差動信号線2402のうちポジティブ側の信号線240P2とが向かい合っている。中間部分(信号ヴィア間)では、差動信号線2401のうちネガティブ側の信号線240N1と、差動信号線2402のうちネガティブ側の信号線240N2とが向かい合っている。また、信号入力回路2311,2312に近い側では、差動信号線2401のうちポジティブ側の信号線240P1と、差動信号線2402のうちポジティブ側の信号線240P2とが向かい合っている。
このように、第2実施形態では、差動信号線2401,2402において、信号ヴィア243P1,243N1と信号ヴィア243P2,243N2が、配線方向と直交する方向で交差する部分を構成している。また、差動信号線2401,2402において、信号ヴィア245P1,245N1と信号ヴィア245P2,245N2が、配線方向と直交する方向で交差する部分を構成している。即ち、差動信号線2401(2402)は、表層201Aと表層201Bとで、一方の差動信号線240P1(240P2)と他方の差動信号線240N1(240N2)とが交差するように配線されている。
上記の構成にすることで、IC211及びIC212を、例えば耐熱性や重量、高さ制約の観点などで、同一の面201Aに配置した場合、ポジティブ側の信号線に重畳したクロストークに対して、ネガティブ側の信号線には逆相のクロストークが重畳する。これにより、各差動信号線を流れる差動信号に関して、ポジティブ側の信号とネガティブ側の信号とのスルーレートが近づき、一対の差動信号の交差電圧の変動量が低減する。
また、複数組の差動信号線のうち隣り合う2組の差動信号線2401,2402について配置が交差する部分が、2組の差動信号線2401,2402の間の配線方向に沿う中心線C2に対して線対称となるように形成されている。
第2実施形態では、配置が交差する部分は、信号ヴィア243P1,243N1と信号ヴィア243P2,243N2、並びに信号ヴィア245P1,245N1と信号ヴィア245P2,245N2である。従って、信号ヴィア243P1,243N1と信号ヴィア243P2,243N2とが中心線C2に対して線対称に配置され、信号ヴィア245P1,245N1と信号ヴィア245P2,245N2とが中心線C2に対して線対称に配置されている。この線対称構成にすることで、信号パターン242P1,246P1と信号パターン242P2,246P2との間で重畳するクロストークと、信号パターン244N1と信号パターン244N2との間で重畳するクロストークとの位相が効果的に一致する。これにより、差動信号の交差電圧の変動量が効果的に低減する。
更に、第2実施形態では、差動信号線2401と差動信号線2402とが、中心線C2に対して線対称に配置されている。これにより、差動信号の交差電圧の変動量が更に効果的に低減する。
また、第2実施形態では、隣り合う2組の差動信号線2401,2402について、差動信号線2401と差動信号線2402との間で隣接して配置される各配線部分を伝達する信号が同相となるように配線されている。即ち、信号パターン242P1と信号パターン242P2とが、隣接して配置される各配線部分である。また、信号パターン244N1と信号パターン244N2とが、隣接して配置される各配線部分であり、信号パターン246P1と信号パターン246P2とが、隣接して配置される各配線部分である。
更に、ポジティブ側の信号パターン242P1,242P2と信号パターン246P1,246P2の配線長の合計と、ネガティブ側の信号パターン244N1,244N2の配線長の合計とが等しい。
即ち、差動信号線2401の差動信号線240P1と差動信号線2402の差動信号線240P2とが隣接して配置される配線部分の配線方向の配線長の合計をL1sumとする。また、差動信号線2401の差動信号線240N1と差動信号線2402の差動信号線240N2とが隣接して配置される配線部分の配線方向の配線長の合計をL2sumとする。2組の差動信号線2401,2402は、配線長L1sumと配線長L2sumが等しくなるように配線されている。
具体的には、信号パターン242P1(242P2)と信号パターン246P1(246P2)の配線長の合計と、信号パターン244N1(244N2)の配線長とが等しい。
以上、ポジティブ側の配線とネガティブ側の配線に重畳するクロストークが逆相、かつ、等量となる。そのため、ポジティブ側の信号とネガティブ側の信号のスルーレートは、クロストークによる変動量が同一となる。したがって、一対の差動信号の交差電圧の変動量がより低減する。
なお、第2実施形態では、各差動信号線240P1,240N1,240P2,240N2において信号ヴィアが2つの場合について説明したが、2つ以上であってもよい。この場合、信号パターンと信号ヴィアとのインピーダンス不整合による信号反射やポジティブ側の信号とネガティブ側の信号との差動性の崩れを考えると、必要最小限のヴィア数(2つ以下)であることが好ましい。
また、第2実施形態において、プリント配線板201は、4層構成の例で示したが、4層に限定するものではない。また、信号パターン242P1と信号パターン242P2との間や信号パターン244N1と信号パターン244N2との間などにグラウンド線などの信号線以外の配線が介在していてもよい。
また、隣接して配置される各配線部分(信号パターン242P1と信号パターン242P2、信号パターン244N1と信号パターン244N2、信号パターン246P1と信号パターン246P2)を伝搬する差動信号が同相でなくてもよい。例えば、逆相やランダムパルスであっても同様に効果は発揮される。そのため、差動信号線2401,2402のポジティブ/ネガティブの配線の並び順は第2実施形態に限定されず、どのような組み合わせであってもよい。
また、第2実施形態では、プリント配線板201が、2組の差動信号線2401,2402を有する場合について説明したが、これに限定するものではなく、差動信号線を3組以上有している場合についても本発明は適用可能である。この場合、複数組の差動信号線のうち、隣り合う2組の差動信号線について、第2実施形態のように、各差動信号線における一方の信号線と他方の信号線とが、経路の途中で交差するように配線されていればよい。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るプリント回路板について説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係るプリント回路板を示す平面図である。図4に示すプリント回路板300は、プリント配線板301と、プリント配線板301に実装された、第1の半導体パッケージであるIC311及び第2の半導体パッケージであるIC312と、を備えている。また、プリント回路板300は、電子素子であるチップ部品3501,3502を備えている。
プリント配線板301は、片面板(1層のプリント配線板)からなる。表層301Aには、IC311及びIC312が実装されている。即ち、IC311及びIC312は、同一の面301Aに実装されている。
IC311は、複数(第3実施形態では2つ)の信号出力回路(信号送信回路、ドライバ)3211,3212を有する。また、IC312は、複数(第3実施形態では2つ)の信号入力回路(信号送信回路、レシーバ)3311,3312を有する。
信号出力回路(第1の信号送信回路)3211は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P1及びネガティブ側の差動信号N1)P1,N1を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)321P1,321N1を有する。即ち、信号出力回路3211は、差動信号P1を出力する出力端子321P1と、差動信号N1を出力する出力端子321N1とを有する。
同様に、信号出力回路(第2の信号送信回路)3212は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P2及びネガティブ側の差動信号N2)P2,N2を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)321P2,321N2を有する。即ち、信号出力回路3212は、差動信号P2を出力する出力端子321P2と、差動信号N2を出力する出力端子321N2とを有する。これら複数の信号出力回路3211,3212は、同一の回路構成である。
信号入力回路(第1の信号受信回路)3311は、一対の差動信号P1,N1を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)331P1,331N1を有する。即ち、信号入力回路3311は、差動信号P1を入力する入力端子331P1と、差動信号N1を入力する入力端子331N1とを有する。
同様に、信号入力回路(第2の信号受信回路)3312は、一対の差動信号P2,N2を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)331P2,331N2を有する。即ち、信号入力回路3312は、差動信号P2を入力する入力端子331P2と、差動信号N2を入力する入力端子331N2とを有する。これら複数の信号入力回路3311,3312は、同一の回路構成である。
第3実施形態では、IC311は、複数のグラウンド端子321G1,321G2,321G3を有し、IC312は、複数のグラウンド端子331G1,331G2,331G3を有する。
グラウンド端子321G1,321G2の間に、出力端子321P1,321N1が配置され、グラウンド端子321G2,321G3の間に、出力端子321P2,321N2が配置されている。また、グラウンド端子331G1,331G2の間に、入力端子331P1,331N1が配置され、グラウンド端子331G2,331G3の間に、入力端子331P2,331N2が配置されている。
プリント配線板301には、配線方向の一端に一対の出力端子が接続され、配線方向の他端に一対の入力端子が接続されて、一対の差動信号の伝送路となる差動信号線が複数組、並行して形成されている。
即ち、プリント配線板301には、表層301Aに、複数組(第3実施形態では2組)の差動信号線3401(第1の差動信号線),3402(第2の差動信号線)が配線方向と直交する方向に互いに間隔をあけて並行して形成されている。各差動信号線3401,3402は、それぞれ一対の信号伝送路からなる。即ち、差動信号線3401は、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号線340N1(第1の信号伝送路)と、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号線340P1(第2の信号伝送路)とからなる。差動信号線3402は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号線340P2(第3の信号伝送路)と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号線340N2(第4の信号伝送路)とからなる。差動信号線340P1と差動信号線340N1とは、互いに隣接して配置されている。差動信号線340P2と差動信号線340N2とは、互いに隣接して配置されている。
また、プリント配線板301には、複数組の差動信号線のうち隣り合う2組の差動信号線3401,3402の間に、グラウンド線又は電源線、第3実施形態ではグラウンド線340G2が形成されている。グラウンド線340G2を挟んで差動信号線3401と差動信号線3402とが隣り合って配置されているので、差動インピーダンスが安定する。また、プリント配線板301には、グラウンド線340G1,340G3が形成されている。差動信号線3401が一対のグラウンド線340G1,340G2により挟まれているので、より差動インピーダンスが安定する。また、差動信号線3402が一対のグラウンド線340G2,340G3により挟まれているので、より差動インピーダンスが安定する。
差動信号線340N1は、ランド341N1、信号パターン342N1及びランド346N1を有して構成される。ランド341N1は、表層301Aに形成され、出力端子321N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340N1の配線方向の一端となる。ランド346N1は、表層301Aに形成され、入力端子331N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340N1の配線方向の他端となる。信号パターン342N1は、表層301Aに形成された導体であり、ランド341N1とランド346N1とを電気的に接続する。
差動信号線340P1は、ランド341P1、信号パターン342P1、ランド343P1、ランド344P1、信号パターン345P1及びランド346P1を有して構成される。ランド341P1は、表層301Aに形成され、出力端子321P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340P1の配線方向の一端となる。ランド346P1は、表層301Aに形成され、入力端子331P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340P1の配線方向の他端となる。ランド343P1及びランド344P1は、表層301Aに形成され、信号パターン342N1を挟んで配置されている。信号パターン342P1は、ランド341P1とランド343P1とを電気的に接続する。信号パターン345P1は、ランド344P1とランド346P1とを電気的に接続する。
第3実施形態では、チップ部品3501の一端がランド343P1に接合され、他端がランド344P1に接合されている。これにより、表層301Aにおいて一対の差動信号線340N1,340P1のうち一方の差動信号線340P1が、他方の差動信号線340N1をプリント配線板301の外側でチップ部品3501により跨ぐように配線されている。
差動信号線340N2は、ランド341N2、信号パターン342N2及びランド346N2を有して構成される。ランド341N2は、表層301Aに形成され、出力端子321N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340N2の配線方向の一端となる。ランド346N2は、表層301Aに形成され、入力端子331N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340N2の配線方向の他端となる。信号パターン342N2は、表層301Aに形成された導体であり、ランド341N2とランド346N2とを電気的に接続する。
差動信号線340P2は、ランド341P2、信号パターン342P2、ランド343P2、ランド344P2、信号パターン345P2及びランド346P2を有して構成される。ランド341P2は、表層301Aに形成され、出力端子321P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340P2の配線方向の一端となる。ランド346P2は、表層301Aに形成され、入力端子331P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線340P2の配線方向の他端となる。ランド343P2及びランド344P2は、表層301Aに形成され、信号パターン342N2を挟んで配置されている。信号パターン342P2は、ランド341P2とランド343P2とを電気的に接続する。信号パターン345P2は、ランド344P2とランド346P2とを電気的に接続する。
第3実施形態では、チップ部品3502の一端がランド343P2に接合され、他端がランド344P2に接合されている。これにより、表層301Aにおいて一対の差動信号線340N2,340P2のうち一方の差動信号線340P2が、他方の差動信号線340N2をプリント配線板301の外側でチップ部品3502により跨ぐように配線されている。
グラウンド線340G1は、ランド341G1、グラウンドパターン342G1及びランド346G1を有して構成される。ランド341G1は、表層301Aに形成され、グラウンド端子321G1がはんだ等で接合される導体であり、グラウンド線340G1の配線方向の一端となる。ランド346G1は、表層301Aに形成され、グラウンド端子331G1がはんだ等で接合される導体であり、グラウンド線340G1の配線方向の他端となる。グラウンドパターン342G1は、ランド341G1とランド346G1とを電気的に接続する。
同様に、グラウンド線340G2は、ランド341G2、グラウンドパターン342G2及びランド346G2を有して構成される。ランド341G2は、表層301Aに形成され、グラウンド端子321G2がはんだ等で接合される導体であり、グラウンド線340G2の配線方向の一端となる。ランド346G2は、表層301Aに形成され、グラウンド端子331G2がはんだ等で接合される導体であり、グラウンド線340G2の配線方向の他端となる。グラウンドパターン342G2は、ランド341G2とランド346G2とを電気的に接続する。
同様に、グラウンド線340G3は、ランド341G3、グラウンドパターン342G3及びランド346G3を有して構成される。ランド341G3は、表層301Aに形成され、グラウンド端子321G3がはんだ等で接合される導体であり、グラウンド線340G3の配線方向の一端となる。ランド346G3は、表層301Aに形成され、グラウンド端子331G3がはんだ等で接合される導体であり、グラウンド線340G3の配線方向の他端となる。グラウンドパターン342G3は、ランド341G3とランド346G3とを電気的に接続する。
IC311の信号出力回路3211,3212、IC312の信号入力回路3311,3312、差動信号線3401,3402、グラウンド線340G1,340G2,340G3及びチップ部品3501,3502で差動伝送回路360が構成されている。
ここで、図4に示すように、プリント配線板301の表層(表面)301Aに垂直な方向(垂直方向)をZ方向とする。第3実施形態では、Z方向から平面視した場合、差動信号線3401(3402)における一方の差動信号線340P1(340P2)と他方の差動信号線340N1(340N2)とが、経路の途中で1回交差するように配線されている。即ち、差動信号線3401と差動信号線3402のポジティブ側/ネガティブ側の信号線の並び順がそれぞれ交差している。
具体的には、信号出力回路3211,3212に近い側では、ネガティブ側の信号パターン342N1、ポジティブ側の信号パターン342P1、ポジティブ側の信号パターン342P2、ネガティブ側の信号パターン342N2の並び順となる。また、信号入力回路3311,3312に近い側では、ポジティブ側の信号パターン345P1、ネガティブ側の信号パターン342N1、ネガティブ側の信号パターン342N2、ポジティブ側の信号パターン345P2の並び順となる。即ち、信号パターン342N1、342P1、342P2、342N2の並び順から信号パターン345P1、342N1、342N2、345P2の並び順に交差する。
換言すると、信号出力回路3211,3212に近い側では、差動信号線3401のうちポジティブ側の信号線340P1と、差動信号線3402のうちポジティブ側の信号線340P2とが向かい合っている。また、信号入力回路3311,3312に近い側では、差動信号線3401のうちネガティブ側の信号線340N1と、差動信号線3402のうちネガティブ側の信号線340N2とが向かい合っている。
このように、第3実施形態では、差動信号線3401,3402において、チップ部品3501,3502が、配線方向と直交する方向で交差する部分を構成している。このように、差動信号線340P1,340P2を、チップ部品3501,3502を用いて差動信号線340N1,340N2を跨いて配線することができ、表層301Aにおいて、交差する部分を形成することができる。
チップ部品3501,3502としては、抵抗素子またはコンデンサ素子が好適であり、波形伝送に好ましい部品定数が選択されるが、特に低抵抗の抵抗素子が好ましい。
第3実施形態によれば、差動信号線3402のポジティブ側の信号線340P2から差動信号線3401のポジティブ側の信号線340P1にクロストークが重畳する。また、差動信号線3402のネガティブ側の信号線340N2から差動信号線3401のネガティブ側の信号線340N1には、ポジティブ側の信号線に重畳するクロストークとは逆相のクロストークが重畳する。
また、差動信号線3401のポジティブ側の信号線340P1から差動信号線3402のポジティブ側の信号線340P2にクロストークが重畳する。また、差動信号線3401のネガティブ側の信号線340N1から差動信号線3402のネガティブ側の信号線340N2には、ポジティブ側の信号線に重畳するクロストークとは逆相のクロストークが重畳する。
これにより、安価な片面のプリント配線板301において、各差動信号線を流れる信号に関して、ポジティブとネガティブのスルーレートが近づくことで、一対の差動信号の交差電圧の変動量が低減する。
なお、プリント配線板301は2層以上であってもよい。また、各差動信号線にチップ部品が複数あってもよい。1組の差動信号線に対してチップ部品が2個の場合は、ポジティブ側とネガティブ側の回路構成が同様となるように、ポジティブ側とネガティブ側の配線各々に1個ずつ配置することが好ましい。
また、複数組の差動信号線のうち隣り合う2組の差動信号線3401,3402について配置が交差する部分が、2組の差動信号線3401,3402の間の配線方向に沿う中心線に対して線対称となるように形成されている。第3実施形態では、複数組の差動信号線のうち隣り合う2組の差動信号線3401,3402について配置が交差する部分が、中心線に沿うグラウンド線340G2に対して線対称に形成されている。
第3実施形態では、配置が交差する部分は、チップ部品3501,3502で構成される。従って、チップ部品3501とチップ部品3502とがグラウンド線340G2に対して線対称に配置されている。この線対称構成にすることで、差動信号の交差電圧の変動量が効果的に低減する。
更に、第3実施形態では、差動信号線3401と差動信号線3402とが、中心線に沿うグラウンド線340G2に対して線対称に配置されている。これにより、差動信号の交差電圧の変動量が更に効果的に低減する。
また、第3実施形態では、隣り合う2組の差動信号線3401,3402について、差動信号線3401と差動信号線3402との間で隣接して配置される各配線部分を伝達する信号が同相となるように配線されている。即ち、信号パターン342P1と信号パターン342P2とが、隣接して配置される配線部分である。また、信号パターン342N1と信号パターン342N2とが、隣接して配置される配線部分である。
隣接して配置される配線部分を伝搬する差動信号が同相の場合、隣接して配置される配線部分間の電界結合が強くなる。したがって、信号の立ち上がり/立ち下がり時間が縮まり、交差電圧の変動改善に加え、アイパターンの開口も改善する(広がる)。
更にポジティブ側の信号パターン342P1,342P2の配線長と、ネガティブ側の信号パターン342N1,342N2の配線長(パターンの配置が交差する部分から入力端子迄の配線長)とが等しい。これにより、ポジティブ側の配線とネガティブ側の配線に重畳するクロストークが逆相、かつ、等量となる。そのため、ポジティブ側の信号とネガティブ側の信号のスルーレートは、クロストークによる変動量が同一となる。したがって、一対の差動信号の交差電圧の変動量がより低減する。
なお、第3実施形態では、プリント配線板301が、グラウンド線340G1〜340G3を有する場合について説明したが、グラウンド線340G1〜340G3を省略した構成であってもよい。
また、隣接して配置される配線部分を伝搬する差動信号が同相でなくてもよい。例えば、逆相やランダムパルスであっても同様に効果は発揮される。そのため、差動信号線3401,3402のポジティブ/ネガティブの配線の並び順は第3実施形態に限定されず、どのような組み合わせであってもよい。
また、第3実施形態では、プリント配線板301が、2組の差動信号線3401,3402を有する場合について説明したが、これに限定するものではなく、差動信号線を3組以上有している場合についても本発明は適用可能である。この場合、複数組の差動信号線のうち、隣り合う2組の差動信号線について、第3実施形態のように、各差動信号線における一方の信号線と他方の信号線とが、経路の途中で交差するように配線されていればよい。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るプリント回路板について説明する。図5は、本発明の第4実施形態に係るプリント回路板を示す平面図である。図5に示すプリント回路板400は、プリント配線板401と、プリント配線板401に実装された、第1の半導体パッケージであるIC411及び第2の半導体パッケージであるIC412と、を備えている。
プリント配線板401は、導体パターンが配置された導体層を複数有する3層以上(例えば4層)の多層プリント配線板である。導体層である内層のうちの1つが主に不図示の電源パターン402が配置された電源層であり、1つが主に不図示のグラウンドパターン403が配置されたグラウンド層である。電源パターン402は、電源電位が印加される、プレーン状に形成された導体であり、グラウンドパターン403は、グラウンド電位が印加される、プレーン状に形成された導体である。電源パターン402及びグラウンドパターン403がプレーン状であるため、広面積であり、電源電位及びグラウンド電位が安定化されている。なお、電源層には、電源電位が印加される導体以外の導体(グラウンド線や信号線等)が配置されていてもよく、また、グラウンド層には、グラウンド電位が印加される導体以外の導体(電源線や信号線等)が配置されていてもよい。
プリント配線板401の一対の表層(表面)401A,401Bは、主に信号線が配置される信号配線層(第1信号配線層及び第2信号配線層)である。なお、信号配線層には、信号が印加される導体以外の導体(グラウンド線や電源線等)が配置されていてもよい。
一対の表層401A,401Bのうち、一方の表層401AにはIC411が実装され、他方の表層401BにはIC412が実装されている。
第4実施形態では、第1信号配線層である表層401Aには、絶縁体層を介してグラウンド層が隣接して配置され、第2信号配線層である表層401Bには、絶縁体層を介して電源層が隣接して配置されている。このように、第1信号配線層、グラウンド層、電源層及び第2信号配線層の4つの導体層が絶縁体層を介して積層された4層のプリント配線板401が構成されている。
IC411は、複数(第4実施形態では6つ)の信号出力回路(信号送信回路、ドライバ)4211,4212,4213,4214,4215,4216を有する。また、IC412は、複数(第4実施形態では6つ)の信号入力回路(信号受信回路、レシーバ)4311,4312,4313,4314,4315,4316を有する。各信号出力回路4211〜4216は、上記第1実施形態の信号出力回路1211,1212と同様の構成である。また、各信号入力回路4311〜4316は、上記第1実施形態の信号入力回路1311,1312と同様の構成である。
プリント配線板401には、配線方向の一端に一対の出力端子が接続され、配線方向の他端に一対の入力端子が接続されて、一対の差動信号の伝送路となる差動信号線が複数組、並行して形成されている。
即ち、プリント配線板401には、複数組(第4実施形態では6組)の差動信号線4401,4402,4403,4404,4405,4406が配線方向と直交する方向に互いに間隔をあけて並行して形成されている。各差動信号線4401,4402,4403,4404,4405,4406は、一対の信号伝送路からなる。
差動信号線4401は、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号線440P1と、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号線440N1とからなる。差動信号線4402は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号線440P2と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号線440N2とからなる。差動信号線4403は、ポジティブ側の差動信号P3の伝送路となる差動信号線440P3と、ネガティブ側の差動信号N3の伝送路となる差動信号線440N3とからなる。差動信号線4404は、ポジティブ側の差動信号P4の伝送路となる差動信号線440P4と、ネガティブ側の差動信号N4の伝送路となる差動信号線440N4とからなる。差動信号線4405は、ポジティブ側の差動信号P5の伝送路となる差動信号線440P5と、ネガティブ側の差動信号N5の伝送路となる差動信号線440N5とからなる。差動信号線4406は、ポジティブ側の差動信号P6の伝送路となる差動信号線440P6と、ネガティブ側の差動信号N6の伝送路となる差動信号線440N6とからなる。
差動信号線4401,4403,4405は、上記第1実施形態の差動信号線1401と同様の配線構造である。差動信号線4402,4404,4406は、上記第1実施形態の差動信号線1402と同様の配線構造である。よって、第4実施形態では、プリント配線板401には、上記第1実施形態の2組の差動信号線1401,1402と同様の構成の配線を複数(3つ)形成されていることとなる。
ここで、図5に示すように、プリント配線板401の表層(表面)401A,401Bに垂直な方向(垂直方向)をZ方向とする。第4実施形態では、Z方向から平面視した場合、各差動信号線4401〜4406における一方の差動信号線440P1〜440P6と他方の差動信号線440N1〜440N6とが、経路の途中で1回交差するように配線されている。
また、第4実施形態では、差動信号線4401〜4406において、信号ヴィア443P1,443N1〜443P6,443N6が、経路の途中で交差する部分を構成している。
更に、第4実施形態では、プリント配線板401には、信号ヴィア443N1,443P1の近傍にグラウンドヴィア4511及び電源ヴィア4521が形成されている。また、プリント配線板401には、信号ヴィア443N1,443P1の近傍にランド4531及びランド4541が形成されている。グラウンドヴィア4511とランド4531とは、グラウンド線4551で電気的に接続されている。電源ヴィア4521とランド4541とは、電源線4561で電気的に接続されている。そして、一対のランド4531,4541にコンデンサ素子4571が接合されている。これにより、コンデンサ素子4571は、信号ヴィア443N1,443P1の近傍に配置され、電源パターン402とグラウンドパターン403とに、電源ヴィア4521とグラウンドヴィア4511を介して電気的に接続されている。
また、プリント配線板401には、信号ヴィア443N2,443P2の近傍にグラウンドヴィア4512及び電源ヴィア4522が形成されている。本実施形態では、グラウンドヴィア4512及び電源ヴィア4522は、信号ヴィア443N3,443P3の近傍に形成したことにもなる。つまり、グラウンドヴィア4512及び電源ヴィア4522は、信号ヴィア443N2,443P2と信号ヴィア443N3,443P3との間に形成したことになる。
また、プリント配線板401には、信号ヴィア443N2,443P2の近傍にランド4532及びランド4542が形成されている。グラウンドヴィア4512とランド4532とは、グラウンド線4552で電気的に接続されている。電源ヴィア4522とランド4542とは、電源線4562で電気的に接続されている。そして、一対のランド4532,4542にコンデンサ素子4572が接合されている。これにより、コンデンサ素子4572は、電源パターン402とグラウンドパターン403とに、電源ヴィア4522とグラウンドヴィア4512を介して電気的に接続されている。また、コンデンサ素子4572は、信号ヴィア443N2,443P2及び信号ヴィア443N3,443P3の近傍に配置されている。
信号ヴィア443N4,443P4と信号ヴィア443N5,443P5との間にも同様に、グラウンドヴィア4513、グラウンド線4553、ランド4533,4543、電源ヴィア4523が形成されている。そして、一対のランド4533,4543にコンデンサ素子4573が接合されている。
同様に、信号ヴィア443N6,443P6の近傍にグラウンドヴィア4514、グラウンド線4554、ランド4534,4544、電源ヴィア4524が形成されている。そして、一対のランド4534,4544にコンデンサ素子4574が接合されている。
IC411の信号出力回路4211〜4216、IC412の信号入力回路4311〜4316、差動信号線4401〜4406及びコンデンサ素子4571〜4574で差動伝送回路460が構成されている。
以上説明したように、2組の差動信号線を配置し、さらにコンデンサ素子457を信号ヴィア443N,443Pに隣接して配置している。特にコンデンサ素子4572は、信号ヴィア443N2,443P2と信号ヴィア443N3,443P3との間に、コンデンサ素子4573は、信号ヴィア443N4,443P4と信号ヴィア443N5,443P5との間に各々配置されている。これにより、信号ヴィアの間隔が広がり、信号ヴィアで発生するクロストークが発生しにくい状態となり、差動信号の交差電圧の変動量が低減する。
また、各差動信号線440において表層401A側を流れる信号のリターン経路は、内層のグラウンドパターン403であり、各差動信号線440において表層401B側を流れる信号のリターン経路は、電源パターン402である。コンデンサ素子457(電源ヴィア及びグラウンドヴィア)を信号ヴィア443の近傍に配置したことにより、信号のリターン経路が確保され、リターン経路の不連続によるインピーダンス不整合が原因の信号反射の影響を低減できる。それゆえに、差動信号の交差電圧の変動量が低減する。
なお、不図示であるが、差動信号線を流れる信号のリターン経路がグラウンドのみの場合は、バイパスコンデンサを配置せずにグラウンドヴィアを配置させることが好ましい。上記構成の場合に、信号ヴィアにおけるグラウンドパターンのリターン電流のみにして、リターン経路の不連続による信号反射の影響を低減できる。そのため、差動信号の交差電圧の変動量が低減する。さらに、コンデンサ素子などの部品を設けないことで配線面積を縮小することが可能となる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るプリント回路板について説明する。図6は、本発明の第5実施形態に係るプリント回路板を示す平面図である。図6に示すプリント回路板1000は、プリント配線板1001と、プリント配線板1001に実装された、第1の半導体パッケージであるIC1011及び第2の半導体パッケージであるIC1012と、を備えている。
プリント配線板1001は、導体パターンが配置された導体層を複数有する多層(例えば4層)のプリント配線板である。導体層である内層のうちの1つが主に不図示の電源パターンが配置された電源層であり、1つが主に不図示のグラウンドパターンが配置されたグラウンド層である。電源パターンは、電源電位が印加される、プレーン状に形成された導体であり、グラウンドパターンは、グラウンド電位が印加される、プレーン状に形成された導体である。電源パターン及びグラウンドパターンがプレーン状であるため、広面積であり、電源電位及びグラウンド電位が安定化されている。なお、電源層には、電源電位が印加される導体以外の導体(グラウンド線や信号線等)が配置されていてもよく、また、グラウンド層には、グラウンド電位が印加される導体以外の導体(電源線や信号線等)が配置されていてもよい。
プリント配線板1001の表層1001Aには、IC1011及びIC1012が実装されている。即ち、IC1011及びIC1012は、同一の面1001Aに実装されている。表層1001Aには、絶縁体層を介してグラウンド層が隣接して配置されている。
IC1011は、複数(第5実施形態では2つ)の信号出力回路(信号送信回路、ドライバ)10211,10212を有する。また、IC1012は、複数(第5実施形態では2つ)の信号入力回路(信号受信回路、レシーバ)10311,10312を有する。
信号出力回路(第1の信号送信回路)10211は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P1及びネガティブ側の差動信号N1)P1,N1を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)1021P1,1021N1を有する。即ち、信号出力回路10211は、差動信号P1を出力する出力端子1021P1と、差動信号N1を出力する出力端子1021N1とを有する。
同様に、信号出力回路(第2の信号送信回路)10212は、一対の差動信号(ポジティブ側の差動信号P2及びネガティブ側の差動信号N2)P2,N2を出力(送信)する一対の出力端子(送信端子)1021P2,1021N2を有する。即ち、信号出力回路10212は、差動信号P2を出力する出力端子1021P2と、差動信号N2を出力する出力端子1021N2とを有する。これら複数の信号出力回路10211,10212は、同一の回路構成である。
信号入力回路(第1の信号受信回路)10311は、一対の差動信号P1,N1を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)1031P1,1031N1を有する。即ち、信号入力回路10311は、差動信号P1を入力する入力端子1031P1と、差動信号N1を入力する入力端子1031N1とを有する。
同様に、信号入力回路(第2の信号受信回路)10312は、一対の差動信号P2,N2を入力(受信)する一対の入力端子(受信端子)1031P2,1031N2を有する。即ち、信号入力回路10312は、差動信号P2を入力する入力端子1031P2と、差動信号N2を入力する入力端子1031N2とを有する。これら複数の信号入力回路10311,10312は、同一の回路構成である。なお、IC1012はBGAパッケージであり、入力端子1031P1、1031N1、1031P2、1031N2が円状のランドを示している。
プリント配線板1001には、配線方向の一端に一対の出力端子が接続され、配線方向の他端に一対の入力端子が接続されて、一対の差動信号の伝送路となる外部差動信号線が複数組、並行して形成されている。
即ち、プリント配線板1001には、複数組(第5実施形態では2組)の差動信号線(外部差動信号線)10401,10402が配線方向と直交する方向に互いに間隔をあけて並行して形成されている。差動信号線(第1の外部差動信号線)10401は、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号線1040P1と、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号線1040N1とからなる。差動信号線(第2の外部差動信号線)10402は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号線1040P2と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号線1040N2とからなる。差動信号線1040P1と差動信号線1040N1とは、互いに隣接して配置されている。差動信号線1040P2と差動信号線1040N2とは、互いに隣接して配置されている。
IC1012の内部のパッケージ基板には、配線方向の一端に一対の入力端子が接続され、配線方向の他端に複数(2つ)の信号入力回路(信号受信回路)10311,10312となる半導体チップ(ダイ)が接続されている。また、IC1012の内部のパッケージ基板には、一対の差動信号の伝送路となる内部差動信号線が複数組、並行して形成されている。
即ち、IC1012の内部のパッケージ基板には、複数組(第5実施形態では2組)の差動信号線(内部差動信号線)10301,10302が配線方向と直交する方向に互いに間隔をあけて並行して形成されている。差動信号線(第1の内部差動信号線)10301は、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号線1030P1と、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号線1030N1とからなる。差動信号線(第2の内部差動信号線)10302は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号線1030P2と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号線1030N2とからなる。差動信号線1030P1と差動信号線1030N1とは、互いに隣接して配置されている。差動信号線1030P2と差動信号線1030N2とは、互いに隣接して配置されている。
差動信号線1040P1は、ランド1041P1、信号パターン1042P1、及びランド1043P1を有して構成されている。ランド1041P1は、表層1001Aに形成され、出力端子1021P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040P1の配線方向の一端となる。ランド1043P1は、表層1001Aに形成され、入力端子1031P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040P1の配線方向の他端となる。信号パターン1042P1は、表層1001Aに形成された導体であり、ランド1041P1とランド1043P1とを電気的に接続する。
差動信号線1030P1は、ランド1031P1、信号パターン1032P1、及びチップ端1033P1を有して構成されている。ランド1031P1は、IC1012のうちプリント配線板の表層1001A側に形成され、プリント配線板のランド1043P1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1030P1の配線方向の一端となる。差動信号線1030P1の配線方向の他端は、IC1012の半導体チップの信号入力回路10311の差動のポジティブ側のチップ端1033P1へ接続される。
差動信号線1040N1は、ランド1041N1、信号パターン1042N1、及びランド1043N1を有して構成されている。ランド1041N1は、表層1001Aに形成され、出力端子1021N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040N1の配線方向の一端となる。ランド1043N1は、表層1001Aに形成され、入力端子1031N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040N1の配線方向の他端となる。信号パターン1042N1は、表層1001Aに形成された導体であり、ランド1041N1とランド1043N1とを電気的に接続する。
差動信号線1030N1は、ランド1031N1、信号パターン1032N1、及びチップ端1033N1を有して構成されている。ランド1031N1は、IC1012のうちプリント配線板の表層1001A側に形成され、プリント配線板のランド1043N1がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1030N1の配線方向の一端となる。差動信号線1030N1の配線方向の他端は、IC1012の半導体チップの信号入力回路10311の差動のネガティブ側のチップ端1033N1へ接続される。
差動信号線1040P2は、ランド1041P2、信号パターン1042P2、及びランド1043P2を有して構成されている。ランド1041P2は、表層1001Aに形成され、出力端子1021P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040P2の配線方向の一端となる。ランド1043P2は、表層1001Aに形成され、入力端子1031P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040P2の配線方向の他端となる。信号パターン1042P2は、表層1001Aに形成された導体であり、ランド1041P2とランド1043P2とを電気的に接続する。
差動信号線1030P2は、ランド1031P2、信号パターン1032P2、及びチップ端1033P2を有して構成されている。ランド1031P2は、IC1012のうちプリント配線板の表層1001A側に形成され、プリント配線板のランド1043P2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1030P2の配線方向の一端となる。差動信号線1030P2の配線方向の他端は、IC1012の半導体チップの信号入力回路10312の差動のポジティブ側のチップ端1033P2へ接続される。
差動信号線1040N2は、ランド1041N2、信号パターン1042N2、及びランド1043N2を有して構成されている。ランド1041N2は、表層1001Aに形成され、出力端子1021N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040N2の配線方向の一端となる。ランド1043N2は、表層1001Aに形成され、入力端子1031N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1040N2の配線方向の他端となる。信号パターン1042N2は、表層1001Aに形成された導体であり、ランド1041N2とランド1043N2とを電気的に接続する。
差動信号線1030N2は、ランド1031N2、信号パターン1032N2、及びチップ端1033N2を有して構成されている。ランド1031N2は、IC1012のうちプリント配線板の表層1001A側に形成され、プリント配線板のランド1043N2がはんだ等で接合される導体であり、差動信号線1030N2の配線方向の一端となる。差動信号線1030N2の配線方向の他端は、IC1012の半導体チップの信号入力回路10312の差動のネガティブ側のチップ端1033N2へ接続される。
差動信号線1040P1と差動信号線1030P1は、ランド1043P1と出力端子1031P1とがはんだなどの導電性接合材を用いて接続されることで、電気的に接続される。差動信号線1040N1と差動信号線1030N1は、ランド1043N1と出力端子1031N1とがはんだなどの導電性接合材を用いて接続されることで、電気的に接続される。これらランド1043P1,1043N1、出力端子1031P1,1031N1、導電性接合材で接続領域(接合部分)が構成されている。
差動信号線1040P2と差動信号線1030P2は、ランド1043P2と出力端子1031P2とがはんだなどの導電性接合材を用いて接続されることで、電気的に接続される。差動信号線1040N2と差動信号線1030N2は、ランド1043N2と出力端子1031N2とがはんだなどの導電性接合材を用いて接続されることで、電気的に接続される。これらランド1043P2,1043N2、出力端子1031P2,1031N2、導電性接合材で接続領域(接合部分)が構成されている。
以上、プリント配線板の表層1001Aに配置された隣り合う2組の差動信号線10401,10402はそれぞれIC1012の内部のパッケージ基板に配置された隣り合う2組の差動信号線10301,10302と電気的に接続されている。つまり、差動信号線1040P1,1040N1,1040P2,1040N2は、それぞれ差動信号線1030P1,1030N1,1030P2,1030N2と電気的に接続されている。これにより、差動信号線10401と差動信号線10301とが接続されて、連続した一対の差動信号伝送路(第1の差動信号伝送路)1050N1,1050P1からなる差動信号線10501が形成されている。また、差動信号線10402と差動信号線10302とが接続されて、連続した一対の差動信号伝送路(第2の差動信号伝送路)1050N2,1050P2からなる差動信号線10502が形成されている。即ち、差動信号線10501は、ネガティブ側の差動信号N1の伝送路となる差動信号伝送路1050N1(第1の信号伝送路)と、ポジティブ側の差動信号P1の伝送路となる差動信号伝送路1050P1(第2の信号伝送路)とからなる。差動信号線10502は、ポジティブ側の差動信号P2の伝送路となる差動信号伝送路1050P2(第3の信号伝送路)と、ネガティブ側の差動信号N2の伝送路となる差動信号伝送路1050N2(第4の信号伝送路)とからなる。
信号出力回路10211,10212、信号入力回路10311,10312及び差動信号線10501,10502を有して差動伝送回路1060が構成されている。
2組の差動信号線10401,10402は隣り合うように配置されている。同様に、2組の差動信号線10301,10302は隣り合うように配置されている。第5実施形態では、隣り合う2組の差動信号線10401,10402の間、および差動信号線10301,10302の間には、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。
また、隣り合う差動信号線1040P1と差動信号線1040N1との間、及び隣り合う差動信号線1040P2と差動信号線1040N2との間にも、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。同様に、隣り合う差動信号線1030P1と差動信号線1030N1との間、及び隣り合う差動信号線1030P2と差動信号線1030N2との間にも、グラウンド線や電源線等の他の導体が介在していない。
ここで、図6に示すように、プリント配線板1001の表層(表面)1001Aに垂直な方向(垂直方向)をZ方向とする。第5実施形態では、Z方向から平面視した場合、差動信号線10501(10502)が、差動信号線10401(10402)と差動信号線10301(10302)との接続領域(接合部分)で交差するように配線されている。つまり、一方の差動信号線1040P1(1040P2)と他方の差動信号線1040N1(1040N2)の並び順が一方の差動信号線1030P1(1030P2)と他方の差動信号線1030N1(1030N2)の並び順と異なるように配線されている。即ち、差動信号線10401と差動信号線10402のポジティブ側/ネガティブ側の信号線の並び順が、差動信号線10301と差動信号線10302のポジティブ側/ネガティブ側の信号線の並び順とそれぞれ交差している。
具体的には、プリント配線板の表層1001Aにおいては、ネガティブ側の信号パターン1042N1、ポジティブ側の信号パターン1042P1、ポジティブ側の信号パターン1042P2、ネガティブ側の信号パターン1042N2の並び順となる。また、IC1021の内部のパッケージ基板においては、ポジティブ側の信号パターン1032P1、ネガティブ側の信号パターン1032N1、ネガティブ側の信号パターン1032N2、ポジティブ側の信号パターン1032P2の並び順となる。即ち、信号パターン1032P1,1032N1,1032P2,1032N2のポジティブ/ネガティブの配線の並び順は、信号パターン1042P1,1042N1,1042P2,1042N2のポジティブ/ネガティブの配線の並び順と異なる。
換言すると、プリント配線板の表層1001Aにおいては、差動信号線10401のうちポジティブ側の信号線1040P1と、差動信号線10402のうちポジティブ側の信号線1040P2とが向かい合っている。また、IC1012内部のパッケージ基板においては、差動信号線10301のうちネガティブ側の信号線1030N1と、差動信号線10302のうちネガティブ側の信号線1030N2とが向かい合っている。
このように、第5実施形態では、ランド1043P1,1043N1とランド1043P2,1043N2が、配線方向の途中で交差する部分を構成している。即ち、差動信号線10401(10402)は、差動信号線10301(10302)に対して一方の差動信号線1040P1(1040P2)と他方の差動信号線1040N1(1040N2)とが交差するように配線されている。
上記の構成にすることで、プリント配線板上でポジティブ側の信号線に重畳したクロストークに対して、IC1012の内部のパッケージ基板においてネガティブ側の信号線には逆相のクロストークが重畳する。これにより、各差動信号線を流れる差動信号に関して、ポジティブ側の信号とネガティブ側の信号とのスルーレートが近づき、一対の差動信号の交差電圧の変動量が低減する。さらに、プリント配線板上に信号ヴィアやチップ部品などの配線を並び替える為の部材を設ける必要が無くなるため、プリント配線板を省スペースで設計することができる。また、信号パターンと信号ヴィアとのインピーダンス不整合による信号反射を抑制できる。
また、図6に示すように、一般的にはICの内部のパッケージ基板の配線の幅および配線間隔は、プリント配線板の配線パターンの幅および配線間隔よりも微細である。その為、IC1012の内部のパッケージ基板の配線の方が単位長さ当たりのクロストーク量は、プリント配線板1001の配線よりも大きい。その為、ポジティブ側の信号パターン1042P1,1042P2の配線長を、ネガティブ側の信号パターン1032N1,1032N2の配線長よりも長くすることで、より交差電圧の変動量を低減できる。更に交差電圧の低減を図るためには、物理長に加えて電気長を考慮して設計するのが好ましい。
また、第5実施形態では、IC1012の出力端子1031P1,1031N1および出力端子1031P2,1031N2は2×2列の格子状に配置されている。そして、プリント配線板1001のランド1043P1,1043N1とランド1043P2,1043N2もまたIC1012の出力端子と導電接合する為に2×2列の格子状に配置される。その結果、ポジティブ/ネガティブの配線のうちの片方(図6の場合、信号パターン1042N1,1042N2)を出力端子の2列目内側へ配線することで、相対的な配置を入れ替える為の部分(面積)を出力端子が1列に並んだ場合に比べて縮小できる。それゆえに、ポジティブとネガティブの差動性が崩れることによるインピーダンス不整合の影響が小さくなり、交差電圧の変動量を低減できる。
なお、図6ではIC1012とプリント配線板1001の導電接続部分において配線の並び替えをしているが、IC1011内のクロストークが懸念される場合は、IC1011とプリント配線板1001との導電接続部分で配線の並び替えをしてもよい。また、IC1012とプリント配線板1001の導電接続部分、およびIC1011とプリント配線板1001の導電接続部分の両方について配線の並び替えをしてもよい。
また、プリント配線板1001とIC1011およびIC1012のパッケージ基板の配線のインピーダンスを出来るだけ揃える事により、信号反射の影響が低減できて、クロストークによる交差電圧の変動量の低減効果がより発揮される。
IC1011およびIC1012は必ずしもパッケージ基板を有する必要は無く、QFP(Quad Flat Package)やQFN(Quad Flat Non−Leaded Package)などでも良い。つまり、パッケージ内部に基板を有さないリードフレームにおいても本発明の思想を転用可能となる。
[実施例]
(実施例1)
実施例1のプリント回路板について説明する。図1に示すプリント回路板100の構成において、プリント配線板101の条件を以下となるように設計した。板厚1.0mmの4層基板とし、銅箔厚は36μm、銅箔を覆うレジスト層は20μmとした。また、表層の銅箔と内層の銅箔との間のプリプレグ(FR−4)の厚みは100μmとした。
信号パターン142P1,142N1,142P2,142N2の配線幅は全て150μmとし、信号パターン142P1,142N1,142P2,142N2の配線方向と直交する方向の間隔は全て180μmとした。信号パターン142P1,142N1,142P2,142N2の長さはポジティブ側とネガティブ側のうち短い方を50mmとし、ポジティブ側とネガティブ側との配線長差は0.5mmとしたが、合計配線長はポジティブ側とネガティブ側とで同一とした。つまり、図1のように、差動信号線1401でポジティブ側の信号パターン142P1がネガティブ側の信号パターン142N1よりも0.5mm長い配線構造とした。また、差動信号線1401でネガティブ側の信号パターン144N1がポジティブ側の信号パターン144P1よりも0.5mm長い配線構造とした。レジストの比誘電率を3.5、プリプレグの比誘電率を4.6とし、そのときの配線の特性インピーダンスZ0は48.3Ω、差動インピーダンスZdiffは84.6Ωと算出された。プリント配線板101に実装されるIC111の出力には34Ωのバッファを用いて、IC112の入力には40Ωで終端されるバッファを用いた。なお、終端される電位は、電源電圧の半分とした。信号ヴィア143P1,143N1,143P2,143N2に関しては、穴径は0.25mm、ヴィアホール内周のメッキ厚は20μm、ランド径は0.55mm、ランド外周のクリアランス径は0.8mmとした。これにより、信号ヴィアの特性インピーダンスZ0は38.4Ωと算出された。
図7は、実施例1及び比較例1,2における交差電圧のシミュレーション結果を示すグラフである。IC111およびIC112に供給される電源電圧は1.575Vとした。これはDDR3インタフェースのJEDEC規格に基づき、かつ、スルーレートが最も大きくなる電圧条件である。そして、IC111が信号を出力した際のIC112に入力されるポジティブとネガティブの差動信号の交差電圧を伝送線路シミュレーションにより求めた。IC111の出力パルスは、測定器メーカなどで一般的に使われるITU−T勧告O.150及びO.151で規定されたPRBS2^7−1のパルスパターンを用いて、動作速度800Mbpsを想定して周波数を400MHzとした。IC112に入力される信号の立ち上がり/立ち下がり時間は、クロストークが重畳しない場合に150psとなった。このときの実施例1における差動信号の交差電圧の変動量(電源電圧の半分である0.7875Vを基準電位とした変動量)を見積もった。その結果を図7に”○”でプロットした。なお図7においてプロットされた”○”は、重ねた状態で表わしている。
図8は、比較例1,2のプリント回路板における配線構造を示す模式図であり、図8(a)は、比較例1、図8(b)は比較例2を示している。
(比較例1)
比較例1では、実施例1とほぼ同様の構成のプリント回路板としたが、信号ヴィアにおいて2組の差動信号線のうちの一方について、ポジティブ/ネガティブの並び順を替えていない点が実施例1と異なる。
つまり、図8(a)に示すように、ポジティブとネガティブの配線の並び順を経路の途中で反転しない差動信号線とポジティブとネガティブの配線の並び順を経路の途中で反転した差動信号線が隣接している。このときの比較例1における差動信号の交差電圧の変動量をシミュレーションで見積もった。その結果を図7に”◇”でプロットした。なお図7においてプロットされた”◇”は、重ねた状態で表わしている。
(比較例2)
比較例2では、信号ヴィアホールが設けられておらず、二つのICが同一面に実装され、配線接続される構成とした。そのため、配線の並び順を替えるための配線の並び替え部は設けられておらず、ポジティブとネガティブの配線長差も生じない。これら以外の基板や配線の条件は実施例1と同様である。このときの比較例2における差動信号の交差電圧の変動量をシミュレーションにより見積もった。その結果を図7に”×”でプロットした。なお図7においてプロットされた”×”は、重ねた状態で表わしている。
図7によれば、2組の差動信号線の構成によって、交差電圧の変動量がどのように変化するかを、実施例1と比較例1,2とで比較することができる。
実施例1では、交差電圧の最大値は0.795Vで最小値は0.790Vであり、交差電圧の変動量の最大値は、約7mVとなった。比較例1では、交差電圧の最大値は0.830Vで最小値は0.754Vであり、交差電圧の変動量の最大値は、約43mVとなった。比較例2では、交差電圧の最大値は0.830Vで最小値は0.755Vであり、交差電圧の変動量の最大値は、約42mVとなった。つまり、実施例1の構成に基づいて差動信号線を配置したときに、最も交差電圧の変動量が低減できることを示している。
実施例1では2組の差動信号線の両方に配線の並び替え部が設けられている。そのため、信号パターン142P2から信号パターン142P1に重畳するクロストークに対して、信号パターン144N2から信号パターン144N1には逆相のクロストークが重畳する。また、信号パターン142P1から信号パターン142P2に重畳したクロストークに対して、信号パターン144N1から信号パターン144N2には逆相のクロストークが重畳する。これにより、信号パターン144P1,144N1,144P2,144N2を流れる信号に関して、レシーバ端でポジティブ側の信号とネガティブ側の信号とのスルーレートに影響を与えるクロストーク量がポジティブ側とネガティブ側で近付く。したがって、差動信号の交差電圧の変動量が低減する。
一方で、比較例1では、図8(a)に示すように、ポジティブとネガティブの配線の並び順を経路の途中で反転しない差動信号線と、ポジティブとネガティブの配線の並び順を経路の途中で反転する差動信号線とが隣接している。一方の差動信号線及び他方の差動信号線は、ドライバから一方の差動信号線の中点および他方の差動信号線の配線並び替え部までの区間Iで互いにクロストークが重畳される。また、一方の差動信号線及び他方の差動信号線は、一方の差動信号線の中点および他方の差動信号線の配線並び替え部からレシーバまでの区間IIにおいて、区間Iとは逆相のクロストークが重畳される。そのため、レシーバ端において区間Iと区間IIで重畳するクロストークが互いに打ち消し合って交差電圧の変動量は少なくなる。
一方で、他方の差動信号線が一方の差動信号線から重畳するクロストークを考える。図9は、比較例1のプリント回路板における各信号P1,N1,P2,N2の波形図である。
図9に示すように、他方の差動信号線のポジティブ側の信号線に隣接する一方の差動信号線のポジティブ側の信号線からコモンモードクロストークが重畳する。また、他方の差動信号線のネガティブ側の信号線には隣接する一方の差動信号線のポジティブ側の信号線からディファレンシャルモードクロストークが重畳する。そのため、レシーバ端において他方の差動信号線のポジティブ側の信号線とネガティブ側の信号線を伝搬する信号のスルーレートの差が大きくなる。それゆえに、配線の並びを反転した差動信号が配線の並びを反転しない差動信号から重畳するクロストークは、配線の並びを反転した差動信号のポジティブ配線に重畳するクロストークに対して、ネガティブ配線に同相のクロストークが重畳する。そのため、ポジティブ側とネガティブ側の信号のスルーレートの差が広がり、交差電圧は大きく変動する。
比較例2では、ポジティブ側とネガティブ側の信号線のうちの片側の信号線に主にクロストークが重畳して、ポジティブ側とネガティブ側の信号のスルーレートが異なるため、交差電圧は大きく変動する。
よって、実施例1のように交差電圧の変動量が低い方が、タイミングを規定する閾値電圧付近でポジティブとネガティブが交差することができ、信号の誤動作を起きにくくなる。
以上、2組の差動信号線における各差動信号線にてクロストークの影響が等しくなるように各差動信号線の配置を入れ替えて配線したので、各一対の差動信号の交差電圧の変動量が低減される。
(実施例2)
実施例2のプリント回路板について説明する。実施例1とほぼ同様の構成のプリント回路板としたが、図1の信号ヴィア143P1、143N1、143P2、143N2の位置を様々に変更した点が実施例1と異なる。具体的な実施条件を以下に示す。
ドライバから一対の差動信号線のうち、ドライバから配線並び替え部までの配線の長さの短い方(図1の場合、142N1,142N2)をXとした。また、一対の差動信号線のうち、レシーバから配線並び替え部までの配線の長さの短い方(図1の場合、144P1,144P2)をYとした。このとき、XとYを0.1mmから99.9mm迄変化させたが、XとYの長さの和は100mmとなるように設計した。また、ポジティブ側とネガティブ側との配線長差は0.5mmとしたが、合計配線長はポジティブ側とネガティブ側とで同一とした。なお、隣り合う2組の一対の差動信号線1401,1402について配置が交差する部分が、2組の一対の差動信号線1401,1402の間の配線方向に沿う中心線C1に対して線対称となるように設計している。
図10は、実施例2における交差電圧のシミュレーション結果を示すグラフである。伝送線路シミュレーションの条件は実施例1で記述の内容と同様であり、差動信号の交差電圧の変動量を見積もった。その結果を図10に棒グラフで表現した。
図10によると、XとYの長さの差が小さくなるほど、交差電圧の変動量が小さくなることを示している。つまり、信号パターン142P2から信号パターン142P1に重畳するクロストークに対して、信号パターン144N2から信号パターン144N1には逆相のクロストークの重畳が等量に近付くほど交差電圧が低減する。それゆえに、一方の一対の差動信号線のポジティブとネガティブの配線がそれぞれ隣接する他方の一対の差動信号線と隣接して配置される各配線長を等しくなるように配線されることが望ましい。
なお、DDR3メモリインタフェースの差動信号線への適用した場合に、JEDECの交差電圧の変動量(Vix)は150mVと規定されている。このうち、メモリコントローラなどのICにおける交差電圧の変動(ポジティブとネガティブの出力位相差やICパッケージ内の配線長差)を125mVと想定すると、プリント配線板における交差電圧の変動量の許容は25mVである。図10によると、XとYの長さの差は等しくなくても、25mm(総配線長の約25%)差があっても十分な効果が発揮されることを示している。実際には、差動インタフェースの種類や入出力ICの性能(信号のスルーレートやポジティブとネガティブの位相差)によって交差電圧の変動量の許容値は変わってくるが、一定の効果を得るにはXとYの長さは前述の数式2を満たすように設計するのが望ましい。
(実施例3)
実施例3のプリント回路板について説明する。実施例2とほぼ同様の構成のプリント回路板としたが、以下の点で条件が異なる。実施例2よりも高密度な配線を想定して、信号パターン1042P1,1042N1,1042P2,1042N2の配線幅は全て125μmとした。また、信号パターン1042P1,1042N1,1042P2,1042N2の配線方向と直交する方向の間隔は全て125μmとした。さらに、IC1011,IC1012の内部のパッケージ基板においてもクロストークが発生するように信号パターンの配線幅は45μmとして、信号パターンの配線方向と直交する方向の間隔は全て55μmで設計した。
ドライバから一方の一対の差動信号線のうち、ドライバから配線並び替え部までの配線の長さの短い方(図1の場合、142N1,142N2)をXとした。また、一方の一対の差動信号線のうち、レシーバから配線並び替え部までの配線の長さの短い方(図1の場合、144P1,144P2)をYとした。このとき、XとYを2mmから18mm迄変化させたが、XとYの長さの和は20mmとなるように設計した。ポジティブ側とネガティブ側との配線長差は0.5mmとしたが、合計配線長はポジティブ側とネガティブ側とで同一とした。なお、隣り合う2組の一対の差動信号線1401,1402について配置が交差する部分が、2組の一対の差動信号線1401,1402の間の配線方向に沿う中心線C1に対して線対称となるように設計している。
IC1011の信号パターンの長さはポジティブ側とネガティブ側共に5mmとして、IC1012の信号パターンの長さはポジティブ側とネガティブ側共に10mmとした。
IC1011,1012の内部のパッケージ基板の層の構造はプリント配線板1001と同様に、板厚1.0mmの4層基板とし、銅箔厚は36μm、銅箔を覆うレジスト層は20μmとした。また、表層の銅箔と内層の銅箔との間のプリプレグ(FR−4)の厚みは100μmとした。レジストの比誘電率を3.5、プリプレグの比誘電率を4.6とし、そのときのプリント配線板1001の配線の特性インピーダンスZ0は52.0Ω、差動インピーダンスZdiffは84.5Ωと算出された。また、IC1011,1012の内部のパッケージ基板の配線の特性インピーダンスZ0は73.0Ω、差動インピーダンスZdiffは84.8Ωと算出された。プリント配線板1001に実装されるIC1011の出力には34Ωのバッファを用いて、IC1012の入力には40Ωで終端されるバッファを用いた。なお、終端される電位は、電源電圧の半分とした。
図11は、実施例3および後述する実施例4における交差電圧のシミュレーション結果を示すグラフである。伝送線路シミュレーションの条件は実施例1で記述の内容と同様であり、差動信号の交差電圧の変動量を見積もった。その結果を図11に棒グラフで表現した。
(実施例4)
実施例4のプリント回路板について説明する。実施例3とほぼ同様の構成のプリント回路板としたが、図6に示すプリント回路板1000の構成のように、信号パターンの並び替えをプリント配線板1001とIC1012の導電接続部で行っている点が異なる。
信号パターン1042P1,1042N1,1042P2,1042N2の長さはポジティブ側とネガティブ側のうち短い方を20mmとし、ポジティブ側とネガティブ側との配線長差は0.8mmピッチのBGAを想定して1.1mmとした。IC1012の信号パターン1032P1,1032N1,1032P2,1032N2の配線幅は、プリント配線板1001よりも高密度な配線を想定して、全て45μmとした。また、信号パターン1032P1,1032N1,1032P2,1032N2の配線方向と直交する方向の間隔は全て55μmとした。信号パターン1032P1,1032N1,1032P2,1032N2の長さはポジティブ側とネガティブ側のうち短い方を10mmとし、ポジティブ側とネガティブ側との配線長差は1.1mmとした。また、IC1011の信号パターンもIC1012と同様の配線幅、配線間隔にして信号パターンの長さはポジティブ側とネガティブ側共に5mmとした。その結果、プリント配線板1001の差動信号線10401,10402と差動信号線10301,10302との合計配線長はポジティブ側とネガティブ側とで同一とした。つまり、図6のように、差動信号線10401でネガティブ側の信号パターン1042N1がポジティブ側の信号パターン1042P1よりも1.1mm長い配線構造とした。また、差動信号線10301でポジティブ側の信号パターン1030N1がネガティブ側の信号パターン1030P1よりも1.1mm長い配線構造とした。レジストの比誘電率を3.5、プリプレグの比誘電率を4.6とし、そのときのプリント配線板1001の配線の特性インピーダンスZ0は52.0Ω、差動インピーダンスZdiffは84.5Ωと算出された。また、IC1011,1012の内部のパッケージ基板の配線の特性インピーダンスZ0は73.0Ω、差動インピーダンスZdiffは84.8Ωと算出された。プリント配線板1001に実装されるIC1011の出力には34Ωのバッファを用いて、IC1012の入力には40Ωで終端されるバッファを用いた。なお、終端される電位は、電源電圧の半分とした。
図11は、実施例3および実施例4における交差電圧のシミュレーション結果を示すグラフである。伝送線路シミュレーションの条件は実施例1で記述の内容と同様であり、差動信号の交差電圧の変動量を見積もった。その結果を図11に棒グラフで表現した。
図11によると、IC1011およびIC1012の内部のパッケージ基板のクロストークが発生した場合には図10とは異なって配線並び替えの位置がIC1012寄りになるほど交差電圧の変動量が低減出来ていることが分かる。この理由は、IC1012の内部のパッケージ基板の配線の幅および配線間隔が、プリント配線板1001の配線パターンの幅および配線間隔よりも微細である事による。つまり、単位長さ当たりのクロストーク量は、IC1012の内部のパッケージ基板の配線の方がプリント配線板1001の配線よりも大きい為である。また、IC1012の内部のパッケージ基板の配線の長さが十分長い。
その為、プリント配線板1001とIC1012との接続部で配線が並び替わるように配線する事で、差動信号線のポジティブの配線に重畳されるクロストークと逆相のクロストークをネガティブの配線にも重畳させる。つまり、プリント配線板1001のポジティブ側の、隣接して配置される各配線で重畳するクロストークに対して、IC1012の内部のパッケージ基板のネガティブ側の、隣接して配置される各配線で重畳するクロストークを逆相かつ等量に近付ける。その結果、交差電圧の変動量を低減できる。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
第1、第3〜第5実施形態では、一対の信号伝送路が経路の途中で1回交差し、第2実施形態では、一対の信号伝送路が経路の途中で2回交差する場合について説明したが、これに限定するものではない。一対の信号伝送路が3回以上交差するようにしてもよい。即ち、一対の信号伝送路は少なくとも1回交差すればよい。