以下、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。尚、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、本願明細書において、「上に設けられる」状態は、直接接して設けられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて設けられる状態も含む。
[1.第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る圧力センサの製造方法の説明に先立ち、同製造方法によって製造される圧力センサについて説明する。図1は第1の実施の形態に係る圧力センサ100Aの構成を示す模式的な斜視図、図2は図1のA−A’から見た模式的な断面図、図3は圧力センサ100Aの構成を示す模式的な平面図、図4は同圧力センサの動作を説明するための模式的な断面図である。
図4に示す通り、圧力センサ100Aは、膜部120と、膜部120の上に設けられた歪検出素子200を備える。膜部120は、外部からの圧力に応じて生じて撓む。歪検出素子200は、膜部120の撓みに応じて歪み、この歪に応じて電気抵抗値を変化させる。従って、歪検出素子の電気抵抗値の変化を検出することにより、外部からの圧力が検出される。尚、圧力センサ100Aは、音波または超音波を検出するものであっても良い。この場合、圧力センサ100Aは、マイクロフォンとして機能する。
図1に示す通り、圧力センサ100Aは、基板110と、基板110の一の面に設けられた膜部120と、膜部120上に設けられた歪検出素子200を備える。また、膜部120上には、歪検出素子200に接続される配線131、パッド132、配線133及びパッド134が設けられている。以下、基板110に対して垂直な方向をZ方向とする。また、このZ方向に対して垂直な所定の方向をX方向とし、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向とする。
図2に示す通り、基板110は空洞部111を有する板状の基板であり、膜部120が外部の圧力に応じて撓むように膜部120を支持する支持部として機能する。本実施の形態において、空洞部111は基板110を貫通する円筒状の穴である。基板110は、例えばシリコンなどの半導体材料、金属などの導電材料、または、絶縁性材料からなる。また、基板110は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを含んでいても良い。
空洞部111の内部は、膜部120を撓ませることが出来るように設計されている。例えば、空洞部111の内部は減圧状態または真空状態であっても良い。また、空洞部111の内部には、空気などの気体または液体が充填されていても良い。更に、空洞部111は、外部と連通されていても良い。
図2に示す通り、膜部120は、基板110と比較して薄く形成されている。また、膜部120は、空洞部111の直上に位置し、外部の圧力に応じて撓む振動部121と、振動部121と一体形成され、基板111によって支持される被支持部122を有する。例えば図3(a)に示す通り、被支持部122は、振動部121を取り囲んでいる。以下、膜部120の空洞部111の直上に位置する領域を第1の領域R1と呼ぶ。
第1の領域R1は種々の形に形成する事が可能であり、例えば図3(a)に示す通り、略真円状に形成しても良いし、図3(b)に示す通り、楕円状(例えば、扁平円形状)に形成しても良いし、図3(c)に示す通り、略正方形状に形成しても良いし、図3(d)に示す通り、長方形状に形成しても良い。また、第1の領域R1は、多角形や正多角形とすることも可能である。
膜部120の材料には、例えば、SiOxやSiNx、ポリイミドまたはパラキシリレン系ポリマーなどのフレキシブルプラスティック材料等の絶縁性材料を用いても良い。また、膜部120の材料には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの少なくともいずれかを含んでも良い。また、膜部120の材料には、例えば、シリコンなどの半導体材料を用いても良いし、Al等の金属材料を用いても良い。
膜部120は、基板110と比較して薄く形成される。膜部120の厚み(Z方向の幅)は、例えば、0.1マイクロメートル(μm)以上3μm以下である。膜部120の厚みは、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。膜部120には、例えば、厚さが0.2μmの酸化シリコン膜と、厚さが0.4μmのシリコン膜との積層体を用いても良い。
図3に示す通り、歪検出素子200は、膜部120上の第1の領域R1内に複数配置される。また、歪検出素子200は、それぞれ第1の領域R1の外縁に沿って配置される。歪検出素子200は、第1の領域R1の一部に配置される。即ち、図3に示す例においては、複数の歪検出素子200のそれぞれと、第1の領域R1の外縁との間の距離(最短距離Lmin)は、互いに同じである。
例えば図3(a)及び図3(b)に示す通り、第1の領域R1の外縁が曲線である場合、歪検出素子200はその曲線に沿って配置される。また、例えば図3(c)及び(d)に示す通り、第1の領域R1の外縁が直線である場合、歪検出素子200はその直線に沿って直線状に配置される。
歪検出素子200は、図1に示す配線131を介してパッド132と、配線133を介してパッド134と接続されている。圧力センサ100Aによって圧力の検出を行う場合には、これらパッド132及び134を介して歪検出素子200に電圧が印加され、歪検出素子200の電気抵抗値が測定される。尚、配線131及び配線133の間には、層間絶縁層を設けても良い。
複数の歪検出素子200は、図示しない配線を介して直列または並列に接続されていても良い。これにより、SN比を増大することができる。
歪検知素子200のサイズは、極めて小さくても良い。歪検知素子200のXY平面における面積は、第1の領域R1の面積よりも十分に小さくできる。例えば、歪検知素子200の面積は、第1の領域R1の面積の1/5以下とすることができる。複数の歪検出素子200を直列または並列に接続することによって、第1の領域R1の面積よりも十分に小さい歪検知素子200を用いた場合でも、高いゲージファクタ、もしくは高いSN比を実現することができる。
例えば、第1の領域R1の直径が60μm程度の場合に、歪検知素子200の第1の寸法は、12μm以下とすることができる。例えば、第1の領域R1の直径が600μm程度の場合には、歪検知素子200の寸法は、120μm以下とすることができる。歪検知素子200の加工精度などを考慮すると、歪検知素子200の寸法を過度に小さくする必要はない。そのため、歪検知素子200の寸法は、例えば、0.05μm以上、30μm以下とすることができる。
尚、図1〜図3に示す例においては、基板110と膜部120を別体として構成しているが、膜部120を基板110と一体に形成しても良い。また、膜部120には、基板110と同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。膜部120を基板110と一体に形成する場合には、基板110のうちの薄く形成された部分が膜部120(振動部121)となる。更に、振動部121は、図1〜図3に示すように、第1の領域R1の外縁に沿って連続的に支持されていても良いし、第1の領域R1の外縁のうちの一部で支持されていても良い。
また、図3に示す例においては、膜部120の上に複数の歪検出素子200が設けられているが、例えば膜部120の上に歪検出素子200を一つだけ設けても良い。
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る歪検出素子200の概略的な構成を説明する。図5は、第1の実施の形態に係る歪検出素子200の構成を示す模式的な斜視図である。図5に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に設けられた中間層203を有する。歪検出素子200に歪みが生じると、磁性層201及び202の相対的な磁化方向が変化する。これに伴い、磁性層201及び202の間の電気抵抗値が変化する。従って、この電気抵抗値の変化を検出することによって、歪検出素子200に生じた歪を検出する事が出来る。
本実施の形態において、第1の磁性層201は強磁性体からなり、例えば磁化自由層として機能する。また、第2の磁性層202も強磁性体からなり、例えば参照層として機能する。第2の磁性層202は、磁化固定層であっても良いし、磁化自由層であっても良い。
尚、例えば第1の磁性層201を第2の磁性層202よりもXY平面内において大きく形成する事も可能である。また、第1の磁性層201及び第2の磁性層202のうちの一方を分割する事も可能である。
次に、本実施の形態に係る歪検出素子200の動作を説明するために、図6を参照し、比較例に係る歪検出素子200Zの動作について説明する。図6(a),(b)及び(c)は、それぞれ歪検出素子200Zに引張歪が生じている状態、歪が生じていない状態及び圧縮歪が生じている状態の様子を表す模式的な斜視図である。
図6(a),(b)及び(c)に示す通り、歪検出素子200Zは、歪検出素子200と同様に、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び第3の磁性層203を備える。尚、歪検出素子200Zにおいては、第2の磁性層202が磁化固定層として機能するものとする。また、以下の説明において、歪検出素子200Zの第2の磁性層202の磁化方向は−Y方向であるものとし、歪検出素子200Zに生じる歪の方向はX方向であるものとする。
図6(b)に示す通り、歪検出素子200Zに歪が生じていない場合における第1の磁性層201の磁化方向(以下、「初期磁化方向」と呼ぶ。)は、下記理由から、第2の磁性層202の磁化方向と同方向または逆方向(+Y方向または−Y方向)となる。即ち、歪検出素子200Zを製造する際、磁界中アニール等の方法によって第2の磁性層202の磁化方向を固定する。この際、第2の磁性層202の磁化方向だけでなく、第1の磁性層201の磁化容易方向も、アニール中の磁場方向に誘導磁気異方性が生じ、第2の磁性層の磁化方向と同方向または逆方向となる。
ここで、図6(a)に示す通り、歪検出素子200ZにX方向に引張歪が生じた場合、第1の磁性層201に、「逆磁歪効果」が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が相対的に変化する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化方向が、歪によって変化する現象である。例えば、磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合、磁化自由層の磁化の方向は、引張歪の方向に対しては平行に近づき、圧縮歪の方向に対しては垂直に近付く。一方、磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合、同磁化の方向は、引張歪の方向に対しては垂直に近付き、圧縮歪の方向に対しては平行に近付く。
歪検出素子200Zの第1の磁性層201には、正の磁歪定数を有する強磁性体が用いられている。従って、図6(a)に示す通り、第1の磁性層201の磁化方向は、引張歪の方向に対して平行に近づく。尚、第1の磁性層201の磁歪定数は、負であっても良い。
一方、図6(c)に示す通り、歪検出素子200ZにX方向に圧縮歪が生じても、第1の磁性層201と第2の磁性層202の相対的な磁化方向は変化しない。何故なら、歪検出素子200ZにX方向に圧縮歪が生じた場合、逆磁歪効果によって第1の磁性層201の初期磁化方向が圧縮歪の方向に対して垂直に傾こうとするが、第1の磁性層201の初期磁化方向は、既に圧縮歪の方向に対して垂直となっているからである。
図6(d)は、歪検出素子200Zの電気抵抗と、歪検出素子200Zに生じた歪の大きさとの関係を示す概略的なグラフである。尚、図6(d)においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪とする。
図6(a)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が相対的に変化すると、図6(d)に示す通り、「磁気抵抗効果(MR効果)」によって第1の磁性層201と第2の磁性層202との間の電気抵抗値が変化する。
MR効果は、磁性層同士の間で磁化方向が相対的に変化すると、これら磁性層間の電気抵抗が変化する現象である。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。
尚、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203が正の磁気抵抗効果を有する場合、第1の磁性層201と第2の磁性層202との相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。一方、負の磁気抵抗効果を有する場合、相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
歪検出素子200Zは正の磁気抵抗効果を有する。従って、図6(a)に示す様に、歪検出素子200Zに引張歪が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が180°から90°に近付いた場合、図6(d)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗は小さくなる。尚、歪検出素子200Zは、負の磁気抵抗効果を有していても良い。
一方、図6(c)に示すように、歪検出素子200Zに圧縮歪が生じたとしても、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が変化しないため、図6(d)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗は変化しない。このように、第1の磁性層201の初期磁化方向と、第1の磁性層201に生じる歪の方向との相対角度が90°である場合や、0°、180°または270°に設定されている場合、図6(d)に示すように、歪検出素子は、片方の極性の歪にのみ反応する。このような、歪検出素子200Zは、例えば、マイクロフォンなど正負の圧力に感応するデバイスに直接用いることが出来ない。
また、歪検出素子200Zの歪が0近傍であった場合、例えば正方向(引張方向)に微小歪Δε1を加えても、歪検出素子200Zの抵抗変化Δr1はわずかである。更に、例えば負方向(圧縮方向)に微小歪Δε1を加えても、殆ど抵抗変化を得られない。以下、単位歪あたりの電気抵抗値の変化量を、ゲージファクタ(GF: Gauge Factor)と呼ぶ。高感度な圧力センサ100Aを製造する場合、歪が0近傍である時のゲージファクタが高い歪検知素子200を用いることが望ましい。
次に、図7を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の動作を説明する。図7(a),(b)及び(c)は、それぞれ歪検出素子200に引張歪が生じている状態、歪が生じていない状態及び圧縮歪が生じている状態の様子を表す模式的な斜視図である。また、図7(d)は、本実施の形態に係る歪検出素子200の電気抵抗と、歪検出素子200に生じた歪との関係を示す概略的なグラフである。また、図8は、歪検出素子200の動作を説明するための模式的な平面図である。
図7(b)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200に歪が生じていない場合、第1の磁性層201の磁化方向と第2の磁性層202の磁化方向との相対的な角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい。図7(b)に示す例においては、第1の磁性層201の初期磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向に対して135°であり、歪が生じる方向に対しては45°(135°)であるが、ここでの135°と言う角度はあくまで一例であり、他の角度とすることが可能である。
本実施の形態に係る歪検出素子200を製造する際にも、磁界中アニール等の方法によって第2の磁性層202の磁化方向を固定する。しかしながら、本実施の形態においては、第1の磁性層201を製造する際に基板110を湾曲させている。従って、本実施の形態に係る第1の磁性層201においては、検出する歪が0近傍であっても内部応力による歪が生じており、この歪によって生じる逆磁歪効果によって第1の磁性層201の初期磁化方向が調整されている。
また、図7(a),(b)及び(c)に示す通り、第1の磁性層201の初期磁化方向は、歪が生じる方向に対して略垂直でも略平行でもない。更に、本実施の形態に係る歪検出素子200は、図1〜図3に示すように、膜部120上の第1の領域R1内に形成されている。従って、図8に示す通り、歪検出素子200の重心Gと第1の領域R1の外縁とを最短距離で結ぶ直線をLとすると、歪検出素子200には、直線Lと平行な方向に対して歪が生じる。即ち、直線Lと第1の磁性層201の初期磁化方向との相対角度は、0°よりも大きく90°よりも小さい。尚、直線Lと第1の磁性層201の初期磁化方向との相対角度は、30°以上60°以下が、更に好ましい。尚、ここで言う相対角度は、鈍角でなく鋭角である。
従って、本実施の形態に係る歪検出素子200の電気抵抗値は、図7(d)に示す通り、正方向の歪(引張歪)が生じた場合には減少し、負方向の歪(圧縮歪)が生じた場合には増加する。従って、歪検出素子200は、例えば、マイクロフォンなど正負の圧力に感応するデバイスに直接用いることが出来る。
また、歪検出素子200の歪が0近傍であった場合、正方向(引張方向)に微小歪Δε1を加えた場合にも、負方向(圧縮方向)に微小歪Δε1を加えた場合にも、比較的大きい抵抗変化Δr2を得ることが出来る。即ち、本実施の形態に係る歪検出素子200は、歪が極めて微小である場合のゲージファクタが大きく、高感度な圧力センサ100Aの製造に適している。
図9は、本実施の形態に係る他の歪検出素子の特性を示すグラフである。図9(a)には、正方向(引張方向)への歪を検出する歪検出素子の動作特性を示している。また、図9(b)及び(c)には、負方向(圧縮方向)への歪を検出する歪検出素子の動作特性を示している。また、図9(a)及び(c)に示す動作特性においては、歪の検出範囲に歪が極めて微小である範囲が含まれていない。
ここまでの説明においては、第1の磁性層201の磁化方向と、歪検知素子200を駆動させる際に第1の磁性層201に加わる歪の方向との間の相対角度が、0°と90°の間の所定の角度に設定される場合を例にとり説明したが、用途によっては、図7(d)に示した様な動作特性を有する歪検出素子200だけでなく、図6(d)、図9(a)、(b)及び(c)に示した様な動作特性を有する歪検出素子200を利用する事がある。
例えば、歪検出素子が搭載される膜部120(図1)には、膜部120の製造工程や圧力センサ100Aの実装時等に、初期の撓みを生じる場合がある。このような場合には、初期の撓みに合わせて歪検出素子が感応する歪レンジをシフトさせても良い。
本実施の形態に係る製造方法を用いた場合、基板110を湾曲させる態様によって、図7(d)、図6(d)、図9(a)、(b)及び(c)に示した様な特性を有する歪検出素子を製造する事が出来る。従って、第1の磁性層を有する歪検知素子が感応する歪のレンジを自在に調整することが可能となり、歪検知素子を搭載するデバイスで必要とされる検出歪レンジで高い歪感度を示す歪検知素子を提供することができる。
次に、図10〜図15を参照して、本実施の形態に係る歪検出素子200の構成例について説明する。尚、以下において、「材料A/材料B」の記載は、材料Aの層の上に、材料Bの層が設けられている状態を示す。
図10は、歪検出素子200の一の構成例200Aを示す模式的な斜視図である。図10に示す通り、歪検出素子200Aは、下部電極204と、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、下部電極204は、例えば配線131(図1)に接続されており、上部電極212は、例えば配線133(図1)に接続されている。ただし、例えば第1の磁性層201が分割されている場合には、一方の第1の磁性層201に接続された上部電極を配線131(図1)に接続し、他方の第1の磁性層201に接続された上部電極を配線133(図1)に接続しても良い。同様に、例えば第2の磁性層202が分割されている場合には、一方の第2の磁性層202に接続された下部電極を配線131(図1)に接続し、他方の第2の磁性層202に接続された下部電極を配線133(図1)に接続しても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
下部電極204及び上部電極212には、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)の少なくともいずれかが用いられる。第1電極及び第2電極として、このような電気抵抗が比較的小さい材料を用いることで、歪検出素子200Aに効率的に電流を流すことができる。下部電極204及び上部電極212には、非磁性材料を用いることができる。
下部電極204及び上部電極212は、例えば、下部電極204及び上部電極212用の下地層(図示せず)と、下部電極204及び上部電極212用のキャップ層(図示せず)と、それらの間に設けられた、Al、Al−Cu、Cu、Ag、及び、Auの少なくともいずれかの層と、を含んでもよい。例えば、下部電極204及び上部電極212には、タンタル(Ta)/銅(Cu)/タンタル(Ta)などが用いられる。下部電極204及び上部電極212の下地層としてTaを用いることで、例えば、基板210と下部電極204及び上部電極212との密着性が向上する。下部電極204及び上部電極212用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
下部電極204及び上部電極212のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下の銅(Cu)などの酸化を防ぐことができる。下部電極204及び上部電極212用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
下地層205には、例えば、バッファ層(図示せず)と、シード層(図示せず)と、を含む積層構造を用いることができる。このバッファ層は、例えば、下部電極204や膜部120等の表面の荒れを緩和し、このバッファ層の上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層として、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。バッファ層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。
下地層205のうちのバッファ層の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましい。バッファ層の厚さは、1nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎると、バッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎると、歪検出素子200Aの厚さが過度に厚くなる。バッファ層の上にシード層が形成され、そのシード層がバッファ効果を有することができる。この場合、バッファ層は省略してもよい。バッファ層には、例えば、3nmの厚さのTa層が用いられる。
下地層205のうちのシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶配向を制御する。このシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶粒径を制御する。このシード層として、fcc構造(face-centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body-centered cubic structure:体心立方格子構造)の金属等が用いられる。
下地層205のうちのシード層として、hcp構造のルテニウム(Ru)、または、fcc構造のNiFe、または、fcc構造のCuを用いることにより、例えば、シード層の上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。シード層には、例えば、2nmの厚さのCu層、または、2nmの厚さのRu層が用いられる。シード層の上に形成される層の結晶配向性を高める場合には、シード層の厚さは、1nm以上5nm以下が好ましい。シード層の厚さは、1nm以上3nm以下がより好ましい。これにより、結晶配向を向上させるシード層としての機能が十分に発揮される。
一方、例えば、シード層の上に形成される層を結晶配向させる必要がない場合(例えば、アモルファスの磁化自由層を形成する場合など)には、シード層は省略してもよい。シード層としては、例えば、2nmの厚さのCu層が用いられる。
ピニング層206は、例えば、ピニング層206の上に形成される第2磁化固定層207(強磁性層)に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して、第2磁化固定層207の磁化を固定する。ピニング層206には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層206には、例えば、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Ru−Mn、Rh−Mn、Ru−Rh−Mn、Fe−Mn、Ni−Mn、Cr−Mn−PtおよびNi−Oよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Ru−Mn、Rh−Mn、Ru−Rh−Mn、Fe−Mn、Ni−Mn、Cr−Mn−PtおよびNi−Oにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層206の厚さは適切に設定される。
ピニング層206に接する強磁性層の磁化の固定を行うためには、磁場印加中での熱処理が行われる。熱処理時に印加されている磁場の方向にピニング層206に接する強磁性層の磁化が固定される。アニール温度は、例えば、ピニング層206に用いられる反強磁性材料の磁化固着温度以上とする。また、Mnを含む反強磁性層を用いる場合、ピニング層206以外の層にMnが拡散してMR変化率を低減する場合がある。よってMnの拡散が起こる温度以下に設定することが望ましい。例えば200度(℃)以上、500度(℃)以下とすることができる。好ましくは、250度(℃)以上、400度(℃)以下とすることができる。
ピニング層206として、PtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、ピニング層206の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。ピニング層206の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層206としてIrMnを用いる場合には、ピニング層206としてPtMnを用いる場合よりも薄い厚さで、一方向異方性を付与することができる。この場合には、ピニング層206の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。ピニング層206の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
ピニング層206として、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層として、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは、50at.%以上85at.%以下であり、yは、0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は、40at.%以上60at.%以下)などを用いてもよい。
第2磁化固定層207には、例えば、CoxFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層12として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。第2磁化固定層として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第2磁化固定層として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、歪検知素子のサイズが小さい場合にも、歪検出素子200Aの特性のばらつきを抑えることができる。
第2磁化固定層207の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、ピニング層206による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層207の上に形成される磁気結合層を介して、第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間の反強磁性結合磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層207の磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第1磁化固定層209の磁気膜厚と、実質的に等しいことが好ましい。
薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)である。例えば、第1磁化固定層209として、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いると、第1磁化固定層209の磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。一方、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2磁化固定層207の厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2磁化固定層207には、約2.7nmの厚さのCo75Fe25層を用いることが好ましい。第2磁化固定層207として、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
歪検知素子200Aにおいては、第2磁化固定層207と磁気結合層208と第1磁化固定層209とにより、シンセティックピン構造が用いられている。その代わりに、1層の磁化固定層からなるシングルピン構造を用いても良い。シングルピン構造を用いる場合には、磁化固定層として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、上述した第2磁化固定層の材料と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層208は、第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間において、反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層208は、シンセティックピン構造を形成する。磁気結合層208として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層208の厚さは、例えば、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層208としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層208の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層208の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層208として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層209に用いられる磁性層は、MR効果に直接的に寄与する。第1磁化固定層209として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層209として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第1磁化固定層209として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いた場合には、例えば、歪検出素子200Aのサイズが小さい場合においても、結晶粒に起因した素子間のばらつきを抑えることができる。
第1磁化固定層209の上に形成される層(例えばトンネル絶縁層(図示せず))を平坦化することができる。トンネル絶縁層の平坦化により、トンネル絶縁層の欠陥密度を減らすことができる。これにより、より低い面積抵抗で、より大きいMR変化率が得られる。例えば、トンネル絶縁層の材料としてMgOを用いる場合には、第1磁化固定層209として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、トンネル絶縁層の上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性をより高くすることで、より大きいMR変化率が得られる。(CoxFe100−x)100−yBy合金は、アニール時にMgO層の(100)面をテンプレートとして結晶化する。このため、MgOと(CoxFe100−x)100−yBy合金との良好な結晶整合が得られる。良好な結晶整合を得ることで、より大きいMR変化率が得られる。
第1磁化固定層209として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いてもよい。
第1磁化固定層209がより厚いと、より大きなMR変化率が得られる。より大きな固定磁界を得るためには、第1磁化固定層209は、薄いほうが好ましい。MR変化率と固定磁界との間には、第1磁化固定層209の厚さにおいてトレードオフの関係が存在する。第1磁化固定層209としてCo−Fe−B合金を用いる場合には、第1磁化固定層209の厚さは、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第1磁化固定層209の厚さは、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
第1磁化固定層209には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層209として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層209として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層209として、bcc構造のFeCo合金材料、50%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50%以上のNi組成の材料(Ni合金)を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。
第1磁化固定層209として、例えば、Co2MnGe、Co2FeGe、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGa0.5Ge0.5、及び、Co2FeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層209として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層203は、例えば、第1の磁性層201と第2の磁性層202との磁気的な結合を分断する。中間層203には、例えば、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層203として金属を用いる場合、中間層203の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、亜鉛酸化物(ZnO等)、または、ガリウム酸化物(Ga−O)などが用いられる。中間層203として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層203の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。中間層203として、例えば、CCP(Current-Confined-Path)スペーサ層を用いてもよい。スペーサ層としてCCPスペーサ層を用いる場合には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の絶縁層中に銅(Cu)メタルパスが形成された構造が用いられる。例えば、中間層として、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。
磁化自由層210には、強磁性体材料が用いられる。磁化自由層210には、例えば、Fe、Co、Niを含む強磁性体材料を用いることができる。磁化自由層210の材料として、例えばFeCo合金、NiFe合金等が用いられる。さらに、磁化自由層210には、Co−Fe−B合金、Fe−Co−Si−B合金、λs(磁歪定数)が大きいFe−Ga合金、Fe−Co−Ga合金、Tb−M−Fe合金、Tb−M1−Fe−M2合金、Fe−M3−M4−B合金、Ni、Fe−Al、または、フェライト等が用いられる。前述したTb−M−Fe合金において、Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したTb−M1−Fe−M2合金において、M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。M2は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したFe−M3−M4−B合金において、M3は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。M4は、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したフェライトとしては、Fe3O4、(FeCo)3O4などが挙げられる。磁化自由層210の厚さは、例えば2nm以上である。
磁化自由層210には、ホウ素を含有した磁性材料が用いられてよい。磁化自由層210には、例えば、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金が用いられてもよい。例えば、Co−Fe−B合金やFe−B合金を用いることができる。例えば、Co40Fe40B20合金を用いることができる。磁化自由層210に、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金を用いる場合、高磁歪を促進する元素として、Ga、Al、Si、または、Wなどを添加してもよい。例えば、Fe−Ga−B合金、Fe−Co−Ga−B合金、または、Fe−Co−Si−B合金を用いてもよい。このようなホウ素を含有する磁性材料を用いることで磁化自由層210の保磁力(Hc)が低くなり、歪に対する磁化方向の変化が容易となる。これにより、高い歪感度を得ることができる。
磁化自由層210におけるホウ素濃度(例えば、ホウ素の組成比)は、5at.%(原子パーセント)以上が好ましい。これにより、アモルファス構造が得易くなる。磁化自由層210におけるホウ素濃度は、35at.%以下が好ましい。ホウ素濃度が高すぎると、例えば、磁歪定数が減少する。磁化自由層におけるホウ素濃度は、例えば、5at.%以上35at.%以下が好ましく、10at.%以上30at.%以下がさらに好ましい。
磁化自由層210の磁性層の一部に、Fe1−yBy(0<y≦0.3)、または(FeaX1−a)1−yBy(X=CoまたはNi、0.8≦a<1、0<y≦0.3)用いる場合、大きい磁歪定数λと低い保磁力を両立することが容易となるため、高いゲージファクタを得る観点で特に好ましい。例えば、磁化自由層210として、Fe80B20(4nm)を用いることができる。磁化自由層210として、Co40Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)を用いることができる。
磁化自由層210は、多層構造を有してもよい。中間層203としてMgOのトンネル絶縁層を用いる場合には、磁化自由層210のうちの中間層203に接する部分には、Co−Fe−B合金の層を設けることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗効果が得られる。この場合、中間層203の上には、Co−Fe−B合金の層が設けられ、そのCo−Fe−B合金の層の上には、磁歪定数の大きい他の磁性材料が設けられる。磁化自由層210が多層構造を有する場合、磁化自由層210には、例えば、Co−Fe−B(2nm)/Fe−Co−Si−B(4nm)などが用いられる。
キャップ層211は、キャップ層211の下に設けられる層を保護する。キャップ層211には、例えば、複数の金属層が用いられる。キャップ層211には、例えば、Ta層とRu層との2層構造(Ta/Ru)が用いられる。このTa層の厚さは、例えば1nmであり、このRu層の厚さは、例えば5nmである。キャップ層211として、Ta層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層211の構成は、任意である。例えば、キャップ層211として、非磁性材料を用いることができる。キャップ層211の下に設けられる層を保護可能なものであれば、キャップ層211として、他の材料を用いても良い。
磁化自由層210にホウ素を含有する磁性材料を用いる場合、ホウ素の拡散を防ぐために、図示しない酸化物材料や窒化物材料の拡散防止層を磁化自由層210とキャップ層211との間に設けても良い。酸化物層または窒化物層からなる拡散防止層を用いることにより、磁化自由層210に含まれるホウ素の拡散を抑制し、磁化自由層210のアモルファス構造を保つことができる。拡散防止層に用いる酸化物材料や窒化物材料として、具体的には、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Sn、Cd、Gaなどの元素を含む酸化物材料や窒化物材料を用いることができる。ここで、拡散防止層は、磁気抵抗効果には寄与しない層のため、その面積抵抗は低いほうが好ましい。例えば、拡散防止層の面積抵抗は、磁気抵抗効果に寄与する中間層の面積抵抗よりも低く設定することが好ましい。拡散防止層の面積抵抗を下げる観点では、バリアハイトの低いMg、Ti、V、Zn、Sn、Cd、Gaの酸化物または窒化物が好ましい。ホウ素の拡散を抑制する機能としては、より化学結合の強い酸化物のほうが好ましい。例えば、1.5nmのMgOを用いることができる。また、酸窒化物は酸化物か窒化物のいずれかと見なすことができる。
拡散防止層に酸化物材料、窒化物材料を用いる場合、拡散防止層の膜厚は、ホウ素の拡散防止機能を十分に発揮する観点で0.5nm以上が好ましく、面積抵抗を低くする観点で5nm以下が好ましい。つまり、拡散防止層の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、1nm以上3nm以下が好ましい。
拡散防止層として、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくともいずれかを用いることができる。拡散防止層として、これらの軽元素を含む材料を用いることができる。これらの軽元素は、ホウ素と結合して化合物を生成する。拡散防止層と磁化自由層210との界面を含む部分に、例えば、Mg−B化合物、Al−B化合物、及び、Si−B化合物の少なくともいずれかが形成される。これらの化合物が、ホウ素の拡散を抑制する。
拡散防止層と磁化自由層210との間に他の金属層などが挿入されていてもよい。ただし、拡散防止層と磁化自由層210との距離が離れすぎていると、その間でホウ素が拡散して磁化自由層210中のホウ素濃度が下がってしまうため、拡散防止層と磁化自由層210との間の距離は、10nm以下が好ましく3nm以下がさらに好ましい。
図11は、歪検出素子200Aの構成例を示す模式的な斜視図である。図11に例示したように、歪検出素子200Aは、下部電極204と上部電極212との間に充填された絶縁層(絶縁部分)213を備えていても良い。
絶縁層213には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層213により、歪検出素子200Aのリーク電流を抑制することができる。
図12は、歪検出素子200Aの他の構成例を示す模式的な斜視図である。図12に例示したように、歪検出素子200Aは、下部電極204と上部電極212との間に、互いに離間して設けられた2つのハードバイアス層(ハードバイアス部分)214と、下部電極204とハードバイアス層214の間に充填された絶縁層213を備えていても良い。
ハードバイアス層214は、ハードバイアス層214の磁化により、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定する。ハードバイアス層214により、外部からの圧力が膜部に印加されていない状態において、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定できる。
ハードバイアス層214には、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)などが用いられてもよい。このような材料を用いる場合、ハードバイアス層214の磁化の方向は、ハードバイアス層214の保磁力よりも大きい外部磁界を加えることで、外部磁界を加えた方向に設定(固定)することができる。ハードバイアス層214の厚さ(例えば、下部電極204から上部電極212に向かう方向に沿った長さ)は、例えば5nm以上50nm以下である。
下部電極204と上部電極212の間に絶縁層213を配置する場合、絶縁層213の材料として、SiOxやAlOxを用いることができる。さらに、絶縁層213とハードバイアス層214の間に、図示しない下地層を設けてもよい。ハードバイアス層214にCo−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料を用いる場合には、ハードバイアス層214用の下地層の材料として、CrやFe−Coなどを用いることができる。上記のハードバイアス層214は、後述するいずれの歪検知素子にも適用できる。
ハードバイアス層214は、図示しないハードバイアス層用ピニング層に積層された構造を有していてもよい。この場合、ハードバイアス層214とハードバイアス層用ピニング層の交換結合により、ハードバイアス層214の磁化の方向を設定(固定)できる。この場合、ハードバイアス層214には、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、これらの少なくとも1種を含む合金からなる強磁性材料を用いることができる。この場合、ハードバイアス層214には、例えば、CoxFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いることができる。ハードバイアス層214として、前述した第1磁化固定層209と同様の材料を用いることができる。また、ハードバイアス層用ピニング層には、前述した歪検知素子200A中のピニング層206と同様の材料を用いることができる。また、ハードバイアス層用ピニング層を設ける場合、下地層205に用いる材料と同様の下地層をハードバイアス層用ピニング層の下に設けても良い。また、ハードバイアス層用ピニング層は、ハードバイアス層の下部に設けても良いし、上部に設けても良い。この場合のハードバイアス層214の磁化方向は、ピニング層206と同様に、磁界中熱処理により決定することができる。
上記のハードバイアス層214及び絶縁層213は、本実施の形態に記載する歪検知素子200のいずれにも適用できる。また、上述したようなハードバイアス層214とハードバイアス層用ピニング層の積層構造を用いた場合、瞬間的に大きい外部磁界がハードバイアス層214に加わった場合においても、ハードバイアス層214の磁化の向きを容易に保持することが出来る。
図13は、歪検出素子200の他の構成例200Bを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Bは、歪検出素子200Aと異なり、トップスピンバルブ型の構造となっている。即ち、図13に示す通り、歪検出素子200Bは、下部電極204と、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、下部電極204は、例えば配線131(図1)に接続されており、上部電極212は、例えば配線133(図1)に接続されている。
下地層205には、例えば、Ta/Cuが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このCu層の厚さは、例えば、5nmである。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
上述したボトムスピンバルブ型の歪検知素子200Aにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも下(−Z軸方向)に形成されている。これに対し、トップスピンバルブ型の歪検出素子200Bにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも上(+Z軸方向)に形成されている。従って、歪検知素子200Bに含まれる各層の材料は、歪検出素子200Aに含まれる各層の材料を上下反転させて用いることができる。また、上述した拡散防止層を、歪検知素子200Bの下地層205と磁化自由層210の間に設けることができる。
図14は、歪検出素子200の他の構成例200Cを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Cは、単一の磁化固定層を用いたシングルピン構造が適用されている。即ち、図14に示す通り、歪検出素子200Cは、下部電極204と、下地層205と、ピニング層206と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、下部電極204は、例えば配線131(図1)に接続されており、上部電極212は、例えば配線133(図1)に接続されている。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Cの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
図15は、歪検出素子200の他の構成例200Dを示す模式的な斜視図である。図15に示す通り、歪検出素子200Dは、下部電極204と、下地層205と、下部ピニング層221と、下部第2磁化固定層222と、下部磁気結合層223と、下部第1磁化固定層224と、下部中間層225と、磁化自由層226と、上部中間層227と、上部第1磁化固定層228と、上部磁気結合層229と、上部第2磁化固定層230と、上部ピニング層231と、キャップ層211とを順に積層してなる。下部第1磁化固定層224及び上部第1磁化固定層228は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層226は、第1の磁性層201に相当する。また、下部電極204は、例えば配線131(図1)に接続されており、上部電極212は、例えば配線133(図1)に接続されている。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。下部ピニング層221には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。下部第2磁化固定層222には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。下部磁気結合層223には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。下部第1磁化固定層224には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。下部中間層225には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層226には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。上部中間層227には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。上部第1磁化固定層228には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。上部磁気結合層229には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。上部第2磁化固定層230には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。上部ピニング層231には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Dの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
次に、図16及び図17を参照し、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法について概説する。図16は、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法の一部を示すフローチャートである。図17は、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法を説明するための概略的な側面図である。尚、図17においては、基板110を、Y方向に延びる所定の線を中心として、X方向に湾曲させる例について示している。
図16に示す通り、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法は、基板110を湾曲させる工程(ステップS111)と、基板110が湾曲した状態において第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS113)を含んでいる。
例えば、本実施の形態に係る製造方法においては、図17(a)に示す通り、ステップS111において基板110を凸状に湾曲させ、図17(b)に示す通り、ステップS112において第1の磁性層201を成膜しても良い。この場合、第1の磁性層201は、基板110が凸状に湾曲した状態においてほぼ応力を生じない状態となる。従って、図17(c)に示す通り、ステップS113において基板110の湾曲を解除すると、第1の磁性層201に、内部応力による圧縮歪がX方向に生じる。
また、本実施の形態に係る製造方法においては、例えば、図17(d)に示す通り、ステップS111において基板110を凹状に湾曲させ、図17(e)に示す通り、ステップS112において第1の磁性層201を成膜しても良い。この場合、第1の磁性層201は、基板110が凹状に湾曲した状態においてほぼ応力を生じない状態となる。従って、図17(f)に示す通り、ステップS113において基板110の湾曲を解除すると、第1の磁性層201に、内部応力による引張歪がX方向に生じる。
従って、本実施の形態に係る製造方法によれば、第1の磁性層201の内部応力による歪を自由に調整し、これによって第1の磁性層201の初期磁化方向を調整する事が可能である。従って、歪検知素子200が感応する歪のレンジを自在に調整することが可能となり、歪検知素子200を搭載するデバイスで必要とされる検出歪レンジで高い歪感度を示す歪検知素子200を提供することができる。
次に、図18〜図23を参照し、基板110を湾曲させる態様について説明する。図18〜図23は、基板110を湾曲させる態様について説明するための模式的な平面図である。尚、図18〜図23では、第1の磁性層201が正の磁歪定数を有する磁性材料で構成されている場合を例にとり、説明する。
図7(b)を参照して説明した通り、本実施の形態に係る第1の磁性層201の初期磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向に対し、0°よりも大きく180°よりも小さい角度をなす。また、第1の磁性層201の初期磁化方向は、検出する歪の方向に対し、0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなす。即ち、基板110を湾曲させる工程(図16のステップS111)は、このような条件を満たすように行われる。
例えば、図18に示す通り、第2の磁性層202の磁化方向が−Y方向であり、検出する歪の方向がX方向であった場合、基板110を、Y方向に延びる所定の線を中心として、X方向に凹状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、X方向に働く内部応力による引張歪が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、内部応力による歪によってX方向に向こうとし、第2の磁性層202の磁化に平行な磁界中熱処理による誘導磁気異方性によってY方向に向こうとする。その結果、第1の磁性層201の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。
尚、図18に示す例においては、基板110を強く湾曲させるほど(曲率半径を小さくするほど、基板表面の歪を大きくするほど)、第1の磁性層201の初期磁化方向に対する歪の寄与が大きくなり、初期磁化方向は−X方向に近付く。従って、基板110を湾曲させる際の曲率を調整することによって、第1の磁性層201の初期磁化方向を自在に調整することができる。
また、図19に示す通り、基板110を、X方向に延びる所定の線を中心として、Y方向に凸状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、Y方向に働く内部応力による圧縮歪が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、内部応力による歪によってX方向に向こうとし、第2の磁性層202の磁化に平行な磁界中熱処理による誘導磁気異方性によってY方向に向こうとする。その結果、第1の磁性層201の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。尚、図19に示す例においても、基板110を強く湾曲させるほど(曲率半径を小さくするほど、基板表面の歪を大きくするほど)、第1の磁性層201の初期磁化方向に対する歪の寄与が大きくなり、初期磁化方向は−X方向に近付く。
また、図20に示す通り、基板110を、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に延びる所定の線を中心として、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に延びる方向に凹状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に働く内部応力による引張歪が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、内部応力による歪によってX方向に向こうとし、第2の磁性層202の磁化に平行な磁界中熱処理による誘導磁気異方性によってY方向に向こうとする。その結果、第1の磁性層201の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。
尚、図21〜図23に示す通り、例えば第2の磁性層202の磁化方向が−Y方向であり、検出する歪の方向がY方向であった場合にも、同様の態様において基板110を湾曲させることにより、第1の磁性層201の初期磁化方向を、上記条件を満たすように調整する事が出来る。尚、初期磁化方法の設定方法は、図18〜図23に示した具体例に限られるものではなく、デバイスからの要求に合わせて適宜調整して用いることができる。
次に、図24及び図25を参照して、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法について、より詳しく説明する。図24は圧力センサ100Aの製造方法の一部を示すフローチャート、図25は同製造方法を示す模式的な斜視図である。
図24に示す通り、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法は、基板の一の面に、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に位置する中間層203を成膜する工程(ステップS110)と、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去する工程(ステップS120)と、基板110の一部を、基板110の他の面113から除去する工程(ステップS130)とを含んでいる。
即ち、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法においては、図25(a)に示す様に、基板110の一の面112に、膜部120を形成する。例えば基板110がSi基板であった場合、膜部120として、SiOx/a−Siの薄膜をスパッタによって成膜しても良い。
尚、例えば基板110としてSOI(Silicon On Insulator)基板を採用する場合には、Si基板上のSiO2/Siの積層膜を膜部120として採用する事も出来る。この場合、膜部120の形成は、Si基板とSiO2/Siの積層膜との貼り合わせである。
次に、図25(b)に示す通り、基板110の一の面112に、配線部131及びパッド132を形成する。即ち、配線部131及びパッド132となる導電膜を成膜し、その導電膜を、一部を残して除去する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、配線部131及びパッド132の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、配線部131及びパッド132のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図25(c)に示す通り、基板110の一の面112に、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に位置する中間層203を成膜する(ステップS110)。尚、第1の磁性層201を成膜する際には、上述の通り、基板110を湾曲させる。
次に、図25(d)に示す通り、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去し(ステップS120)、歪検出素子200を形成する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、歪検出素子200の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、歪検出素子200のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図25(d)に示す通り、基板110の一の面112に、配線部133及びパッド134を形成する。即ち、配線部133及びパッド134となる導電膜を成膜し、その導電膜を、一部を残して除去する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、配線部133及びパッド134の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、配線部133及びパッド134のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図25(e)に示す通り基板110の一部を、基板110の他の面113から除去して(ステップS130)、基板110に空洞部111を形成する。
ステップS130において除去する領域は、基板110の第1の領域R1に相当する部分である。尚、本実施の形態においては、基板110の第1の領域R1内に位置する部分を全て除去しているが、基板110の一部を残すことも可能である。例えば、膜部120と基板110を一体に形成する場合には、ステップS130において基板110の一部を除去して薄膜化し、この薄膜化された部分を膜部120としても良い。
本実施の形態において、ステップS130にはエッチングが用いられる。例えば膜部120がSiO2/a−Siの積層膜である場合、本工程は、基板110の他の面113からの深堀加工によって行われても良い。また、本工程には、両面アライナー露光装置を用いることができる。これにより、歪検出素子200の位置に合わせて、レジストのホールパターンを他の面113にパターニングできる。
また、ステップS130のエッチングにおいては、例えばRIEを用いたボッシュプロセスが用いることができる。ボッシュプロセスでは、例えば、SF6ガスを用いたエッチング工程と、C4F8ガスを用いた堆積工程と、を繰り返す。これにより、基板110の側壁のエッチングを抑制しつつ、基板110の深さ方向(Z軸方向)に選択的にエッチングが行われる。エッチングのエンドポイントとして、例えば、SiOx層が用いられる。すなわち、エッチングの選択比がSiとは異なるSiOx層を用いてエッチングを終了させる。エッチングストッパ層として機能するSiOx層は、膜部110の一部として用いられても良い。SiOx層は、エッチングの後に、例えば、無水フッ化水素及びアルコールなどの処理などで除去されても良い。基板110のエッチングはボッシュプロセス以外にウェット工程による異方性エッチングや犠牲層を用いたエッチングを行っても良い。
次に、図26、図27A及び図27Bを参照し、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法の一部の工程について、より詳しく説明する。図26は、同工程の一例を説明するための概略的なフローチャートである。図27A及び図27Bは、本実施の形態に係る製造方法によって、例えば図12に示す歪検出素子200Aを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
図26に示す例において、ステップS110の工程は、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、基板110を湾曲させる工程(ステップS111)と、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS113)とを含んでいる。
図27A(a)は、図25(b)に示す構成の一部の拡大断面図である。ただし、図27A(a)においては、配線131及びパッド132を省略している。図27A(b)に示す通り、膜部120上に絶縁層125及び下部電極204を形成する。例えば、絶縁層125として、SiOx(80nm)を形成する。例えば、下部電極204として、Ta(5nm)/Cu(200nm)/Ta(35nm)を形成する。この後に、下部電極204の最表面にCMP処理などの表面平滑化処理を行い、下部電極上に形成される構成を平坦にしても良い。ここで、膜部120の最表面が絶縁性を有する材料で構成されている場合には、絶縁層125の形成は必ずしも必要ではない
次に、図27A(c)に示すように、下部電極204の平面形状を加工する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。さらに、下部電極204の周辺に絶縁層126の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層126を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層126として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図27A(d)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Ru(2nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に第2磁化固定層207/磁気結合層208として、Co75Fe25(2.5nm)/Ru(0.9nm)を形成する。
図27A(e)に示す通り、ステップS114においては、磁気結合層208上に第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を積層する。例えば、第1磁化固定層(第2の磁性層)として、Co75Fe25(2.5nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(4nm)を形成する。
図27A(f)に示す通り、ステップS115においては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)上に中間層203を積層する。例えば、中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。
図27A(g)に示す通り、ステップS111においては、基板110を湾曲させる。図27A(h)に示す通り、ステップS112においては、基板110を湾曲させた状態で、中間層203上に磁化自由層210(第1の磁性層201)を積層する。例えば、磁化自由層210として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。図27A(i)に示す通り、ステップS113においては、基板110の湾曲を解除する。
次に、図27B(j)に示す通り、磁化自由層210上に、キャップ層211を積層する。例えば、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。尚、磁化自由層210とキャップ層211の間には、図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
図27B(k)に示す通り、ステップS120(図24)においては、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。
次に、第1の磁性層201を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図27A(e)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
次に、図27B(l)に示す通り、絶縁層213中にハードバイアス層214を埋め込む。例えば、ハードバイアス層214を埋め込むためのホールを絶縁層213に形成する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。この工程において、ホールの形成は周辺の絶縁層213を貫通するところまで行っても良いし、途中で止めても良い。図27B(l)ではホールの形成を途中で止めて、絶縁層213を貫通させない場合を例示している。ホールを、絶縁層213を貫通するところまでエッチングした場合には、図27B(l)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程において、ハードバイアス層214の下に図示しない絶縁層を成膜する必要がある。
次に、形成したホールにハードバイアス層214を埋め込む。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面にハードバイアス層214を成膜し、その後レジストパターンを除去する。ここでは、例えば、ハードバイアス層用下地層として、Cr(5nm)を形成し、その上にハードバイアス層214として、例えば、Co80Pt20(20nm)を形成する。その上に、さらに図示しないキャップ層を形成しても良い。このキャップ層として、歪検知素子200Aのキャップ層に使用可能な材料として上述した材料を用いても良いし、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。
次に、室温で外部磁界を加えて、ハードバイアス層214に含まれるハード磁性材料の磁化方向の設定を行う。この外部磁界によるハードバイアス層214の磁化方向の設定は、ハードバイアス層214の埋め込み後であれば、どのタイミングで行ってもよい。
尚、図27B(l)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程は、図27B(k)に示す絶縁層213の埋め込み工程で同時に行ってもよい。また、図27B(k)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程は必ずしも行わなくともよい。
次に、図27B(m)に示す通り、キャップ層211上に、上部電極212を積層する。次に、図27B(n)に示す通り、上部電極212を、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが行われる。
次に図27B(o)に示す通り、上部電極212及びハードバイアス214を覆う保護層215を成膜する。例えば、保護層215として、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。尚、保護層215は必ずしも設けなくともよい。
このような方法を用いた場合、中間層203を成膜するステップS115の後に基板110を湾曲させるステップS111を実行しているため、第1の磁性層201に効率よく歪を加えることが出来る。尚、図27A(a)〜図27B(o)では図示していないが、下部電極204や上部電極212へのコンタクトホールの形成を行っても良い。
次に、ステップS110の他の態様について説明する。図28は、ステップS110の他の態様を説明するための概略的なフローチャートである。図28に示す例においては、第1の磁性層201を、第2の磁性層202よりも前に成膜する。
即ち、図28に示す例において、ステップS110の工程は、基板110を湾曲させる工程(ステップS111)と、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS113)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)とを含んでいる。
このような方法を用いた場合、例えば歪検出素子200B(図13)のように、第1の磁性層201が第2の磁性層202よりも下層に位置する歪検出素子200を搭載した圧力センサ100Aを製造する事が出来る。
また、このような方法を用いた場合、第1の磁性層201を成膜するステップS112の後に基板110を湾曲させるステップS111を実行しているため、第1の磁性層201に効率よく歪を加えることが出来る。
尚、図29及び図30に示す通り、第2の磁性層202や中間層203を成膜するタイミングにおいて基板110をすでに湾曲させても良い。図29及び図30は、ステップS110の他の態様を説明するための概略的なフローチャートである。
即ち、図29に示す例において、ステップS110の工程は、基板110を湾曲させる工程(ステップS111)と、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS113)とを含んでいる。
また、図30に示す例において、ステップS110の工程は、基板110を湾曲させる工程(ステップS111)と、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS113)とを含んでいる。
例えば、これら図29及び図30に示す方法を用いて図10〜図15に示す歪検出素子200A,200B,200Cまたは200Dを製造する場合、例えば図27A(c)に示す構造が作成された時点で基板110を湾曲させ(ステップS111)、基板110が湾曲された状態において、それぞれの歪検出素子の構成に対応する下地層205からキャップ層211までの膜を成膜し(ステップS112,ステップS114及びステップS115)、その後で基板110の湾曲を解除しても良い(ステップS113)。
次に、図31を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の態様について説明する。ここまでの説明においては、第2の磁性層202が磁化固定層である態様について説明したが、図5を参照して説明した通り、第2の磁性層202は磁化自由層であっても良い。以下、第2の磁性層202が磁化自由層であり、歪検出素子200がいわゆる2層フリー構造を有する場合について説明する。
図31(a),(b)及び(c)は、それぞれ歪検出素子200に引張歪が生じている状態、歪が生じていない状態及び圧縮歪が生じている状態の様子を表す模式的な斜視図である。また、図31(a),(b)及び(c)に示す例においては、第2の磁性層202が磁化自由層であるものとし、歪検出素子200に生じる歪の方向はX方向であるものとする。
図31(b)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200に歪が生じていない場合、第1の磁性層201の磁化方向と第2の磁性層202の磁化方向との相対的な角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい。図31(b)に示す例においては、第1の磁性層201の初期磁化方向は、第2の磁性層202の初期磁化方向に対して90°である。また、これらの初期磁化方向は、歪が生じる方向に対してはそれぞれ45°(135°)である。
図31(a)に示す通り、歪検出素子200ZにX方向に引張歪が生じた場合、第1の磁性層201及び第2の磁性層202に、逆磁歪効果が生じ、これら磁性層の磁化方向は相対的に変化する。歪検出素子200の第1の磁性層201及び第2の磁性層202には、正の磁歪定数を有する強磁性体が用いられている。従って、図31(a)に示す通り、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の磁化方向は、それぞれ引張歪の方向に対して平行に近づく。尚、第1の磁性層201の磁歪定数は、負であっても良い。図31(a)に示す例においては、これら磁化方向は、お互いの間での角度差が小さくなるように変化する。
一方、図31(c)に示す通り、歪検出素子200にX方向に圧縮歪が生じた場合、第1の磁性層201及び第2の磁性層202に逆磁歪効果が生じ、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の磁化方向は、それぞれ圧縮歪の方向に対して垂直に近づく。図31(c)に示す例においては、これら磁化方向は、お互いの間での角度差が大きくなるように変化する。
図31(d)は、歪検出素子200の電気抵抗と、歪検出素子200に生じた歪の大きさとの関係を示す概略的なグラフである。尚、図31(d)においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪とする。
図31(d)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200の電気抵抗値は、正方向の歪(引張歪)が生じた場合には減少し、負方向の歪(圧縮歪)が生じた場合には増加する。従って、歪検出素子200は、例えば、マイクロフォンなど正負の圧力に感応するデバイスに直接用いることが出来る。
また、歪検出素子200の歪が0近傍であった場合、正方向(引張方向)に微小歪Δε1を加えた場合にも、負方向(圧縮方向)に微小歪Δε1を加えた場合にも、比較的大きい抵抗変化Δr2を得ることが出来る。即ち、本実施の形態に係る歪検出素子200は、歪が極めて微小である場合のゲージファクタが大きく、高感度な圧力センサ100Aの製造に適している。
次に、図32を参照して、第2の磁性層202を磁化自由層として使用する歪検出素子200の構成例について説明する。図32は、歪検出素子200の一の構成例200Eを示す模式的な斜視図である。図32に示す通り、歪検出素子200Eは、下部電極204と、下地層205と、第1磁化自由層241(第1の磁性層201)と、中間層203と、第2磁化自由層242(第2の磁性層202)と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。第1磁化自由層241は、第1の磁性層201に相当する。第2磁化自由層242は、第2の磁性層202に相当する。また、下部電極204は、例えば配線131(図1)に接続されており、上部電極212は、例えば配線133(図1)に接続されている。
下地層205には、例えば、Ta/Cuが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このCu層の厚さは、例えば、5nmである。第1磁化自由層241には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第2磁化自由層242には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばCu/Ta/Ruが用いられる。このCu層の厚さは、例えば、5nmである。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Eの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。また、第1磁化自由層241及び第2磁化自由層242の材料としては、例えば歪検出素子200A(図10)の磁化自由層210と同様のものを用いても良い。
次に、図24、図25及び図33を参照し、歪検出素子200Eを搭載した圧力センサ100Aの製造方法について概説する。
このような圧力センサ100Aを製造する場合においても、図24及び図25を参照して説明した製造方法を適用する事が可能である。しかしながら、ステップS110(図24)において、図33に示す工程を行う。図33は、ステップS110の一例を説明するための概略的なフローチャートである。図33に示す例においては、第1の磁性層201と第2の磁性層202とを成膜する段階において、異なる方向に基板110を湾曲させる。
即ち、図33に示す例において、ステップS110の工程は、基板を湾曲させる工程(S111)と、第1の磁性層を成膜する工程(S112)と、基板の湾曲を解除する工程(S113)と、中間層を成膜する工程(S115)と、基板を湾曲させる工程(S116)と、第2の磁性層を成膜する工程(S114)と、基板の湾曲を解除する工程(S117)とを含んでいる。即ち、基板を湾曲させる工程と基板の湾曲を解除する工程が、それぞれ2ずつ行われる。ここで、ステップS111とステップS116においては、基板が湾曲される方向が異なる。
尚、図33に示す工程はステップS110の一例に過ぎない。例えば、第1の磁性層を成膜する工程(S112)を行った後に中間層を成膜する工程(S115)を行い、その後で基板の湾曲を解除する工程(S113)を行っても良い。また、第1の磁性層を成膜する工程(S112)を行った後に基板の湾曲を解除する工程(S113)を行い、その後で中間層を成膜する工程(S115)を行っても良い。
次に、図34〜図37を参照し、基板110を湾曲させる態様について説明する。図34〜図37は、基板110を湾曲させる態様について説明するための模式的な平面図である。尚、図34〜図37では、第1の磁性層201及び第2の磁性層202が正の磁歪定数を有する磁性材料で構成されている場合を例にとり、説明する。
図31(b)を参照して説明した通り、本実施の形態に係る第1の磁性層201の初期磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向に対し、0°よりも大きく180°よりも小さい角度をなす。また、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の初期磁化方向は、それぞれ検出する歪の方向に対し、0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなす。即ち、基板110を湾曲させる工程(図33のステップS111及びステップS116)は、このような条件を満たすように行われる。
例えば、図34に示す通り、検出する歪の方向がX方向であった場合、ステップS111においては、基板110を(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に延びる所定の線を中心として、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に延びる方向に凹状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に働く内部応力による引張歪が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、(X,Y)方向または(−X,−Y)方向に向こうとする。
更に、図34に示す通り、ステップS116においては、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に延びる所定の線を中心として、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に延びる方向に凹状に湾曲させても良い。これにより、第2の磁性層202に、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に働く内部応力による引張歪が発生する。従って、第2の磁性層202の初期磁化方向は、内部応力による歪によって(X,−Y)方向または(−X,Y)方向に向こうとする。
従って、図33に示す製造方法において、ステップS111及びステップS116をこのように行った場合、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。
また、図35に示す通り、例えば検出する歪の方向がX方向であった場合、ステップS111においては、基板110を(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に延びる所定の線を中心として、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に延びる方向に凸状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に働く内部応力による圧縮歪が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、内部応力による歪によって(X,−Y)方向または(−X,Y)方向に向こうとする。
更に、図35に示す通り、ステップS116においては、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に延びる所定の線を中心として、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に延びる方向に凸状に湾曲させても良い。これにより、第2の磁性層202に、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に働く内部応力による引張歪が発生する。従って、第2の磁性層202の初期磁化方向は、(X,Y)方向または(−X,−Y)方向に向こうとする。
従って、図33に示す製造方法において、ステップS111及びステップS116をこのように行った場合にも、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。
尚、図34及び図35に示す例においては、基板110を強く湾曲させるほど(曲率半径を小さくするほど、基板表面の歪を大きくするほど)、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の初期磁化方向に対する歪の寄与が大きくなる。従って、基板110を湾曲させる際の曲率を調整することによって、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の初期磁化方向を自在に調整することができる。
また、図36及び図37に示す通り、例えば検出する歪の方向がY方向であった場合にも、同様の態様において基板110を湾曲させることにより、第1の磁性層201の初期磁化方向を、上記条件を満たすように調整する事が出来る。尚、初期磁化方法の設定方法は、図34〜図37に示した具体例に限られるものではなく、デバイスからの要求に合わせて適宜調整して用いることができる。
[2.第2の実施の形態]
次に、図38及び図39を参照し、第2の実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法について概説する。図38は、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法の一部を示すフローチャートである。図39は、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法を説明するための概略的な側面図である。尚、図39においては、基板110を、Y方向に延びる所定の線を中心として、X方向に湾曲させる例について示している。
第1の実施の形態においては、基板110が湾曲した状態において第1の磁性層201を成膜し、これによって第1の磁性層201の初期磁化方向を設定していた。これに対し、本実施の形態においては、第1の磁性層201が成膜された基板110を湾曲させ、この状態で熱処理を行い、これによって第1の磁性層201の初期磁化方向を設定する。
即ち、図38に示す通り、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法は、基板110を湾曲させる工程(ステップS211)と、第1の磁性層201に熱処理を行う工程(ステップS212)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS213)とを含んでいる。
例えば、本実施の形態に係る製造方法においては、図39(a)に示す通り、ステップS211において第1の磁性層201が成膜された基板110を凸状に湾曲させ、図39(b)に示す通り、ステップS212において熱処理を行っても良い。この場合、第1の磁性層201には誘導磁気異方性が生じ、第1の磁性層201の初期磁化方向はX方向または−X方向となる。従って、図39(c)に示す通り、ステップS213において基板110の湾曲を解除しても、第1の磁性層201の初期磁化方向はX方向または−X方向のままとなる。
また、本実施の形態に係る製造方法においては、例えば、図39(d)に示す通り、ステップS211において第1の磁性層201が成膜された基板110を凹状に湾曲させ、図39(e)に示す通り、ステップS212において熱処理を行っても良い。この場合、第1の磁性層201には誘導磁気異方性が生じ、第1の磁性層201の初期磁化方向はY方向または−Y方向となる。従って、図39(f)に示す通り、ステップS213において基板110の湾曲を解除しても、第1の磁性層201の初期磁化方向はY方向または−Y方向のままとなる。
従って、本実施の形態に係る製造方法によれば、第1の磁性層201の内部応力による歪を自由に調整し、これによって第1の磁性層201の初期磁化方向を調整する事が可能である。従って、歪検知素子200が感応する歪のレンジを自在に調整することが可能となり、歪検知素子200を搭載するデバイスで必要とされる検出歪レンジで高い歪感度を示す歪検知素子200を提供することができる。尚、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法は、第1の実施の形態に係る製造方法と併用する事も可能である。
次に、図40〜図45を参照し、基板110を湾曲させる態様について説明する。図40〜図45は、基板110を湾曲させる態様について説明するための模式的な平面図である。尚、図40〜図45では、第1の磁性層201が正の磁歪定数を有する磁性材料で構成されている場合を例にとり、説明する。
本実施の形態に係る製造方法によって歪検出素子200を製造した場合にも、例えば図7(b)に示す通り、第1の磁性層201の初期磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向に対し、0°よりも大きく180°よりも小さい角度をなす。また、第1の磁性層201の初期磁化方向は、検出する歪の方向に対し、0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなす。即ち、基板110を湾曲させる工程(図38のステップS211)は、このような条件を満たすように行われる。
例えば、図40に示す通り、第2の磁性層202の磁化方向が−Y方向であり、検出する歪の方向がX方向であった場合、基板110を、Y方向に延びる所定の線を中心として、X方向に凸状に湾曲させて熱処理を行っても良い。これにより、第1の磁性層201に、X方向に働く誘導磁気異方性が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、湾曲熱処理による誘導磁気異方性による磁化によってX方向に向こうとし、第2の磁性層202の磁化に平行な磁界中熱処理による誘導磁気異方性によってY方向に向こうとする。その結果、第1の磁性層201の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。
尚、図40に示す例においては、基板110を強く湾曲させるほど(曲率半径を小さくするほど、基板表面の歪を大きくするほど)、第1の磁性層201の初期磁化方向に対する歪の寄与が大きくなり、初期磁化方向は−X方向に近付く。従って、基板110を湾曲させる際の曲率を調整することによって、第1の磁性層201の初期磁化方向を自在に調整することができる。
また、図41に示す通り、基板110を、X方向に延びる所定の線を中心として、Y方向に凹状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、X方向に働く導磁気異方性が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、湾曲熱処理による誘導磁気異方性による磁化によってX方向に向こうとし、第2の磁性層202の磁化に平行な磁界中熱処理による誘導磁気異方性によってY方向に向こうとする。その結果、第1の磁性層201の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。尚、図41に示す例においても、基板110を強く湾曲させるほど(曲率半径を小さくするほど、基板表面の歪を大きくするほど)、第1の磁性層201の初期磁化方向に対する歪の寄与が大きくなり、初期磁化方向は−X方向に近付く。
また、図42に示す通り、基板110を、(X,Y)方向及び(−X,−Y)方向に延びる所定の線を中心として、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に延びる方向に凸状に湾曲させても良い。これにより、第1の磁性層201に、(X,−Y)方向及び(−X,Y)方向に働く誘導磁気異方性が発生する。従って、第1の磁性層201の初期磁化方向は、湾曲熱処理による誘導磁気異方性による磁化によってX方向に向こうとし、第2の磁性層202の磁化に平行な磁界中熱処理による誘導磁気異方性によってY方向に向こうとする。その結果、第1の磁性層201の初期磁化方向は、上記条件を満たすように調整される。
尚、図43〜図45に示す通り、例えば第2の磁性層202の磁化方向が−Y方向であり、検出する歪の方向がY方向であった場合にも、同様の態様において基板110を湾曲させることにより、第1の磁性層201の初期磁化方向を、上記条件を満たすように調整する事が出来る。尚、初期磁化方法の設定方法は、図40〜図45に示した具体例に限られるものではなく、デバイスからの要求に合わせて適宜調整して用いることができる。
次に、図46を参照して、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法について、より詳しく説明する。図46は、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法の一部を示すフローチャートである。
図46に示す通り、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法は、基板110の一の面112に、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に位置する中間層203を成膜する工程(ステップS210)と、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去する工程(ステップS120)と、基板110の一部を、基板110の他の面113から除去する工程(ステップS130)とを含んでいる。尚、ステップS210以外の工程は、図24及び図25を参照して説明した通りに行われる。
ステップS210においては、基板110の一の面112に、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に位置する中間層203を成膜する。尚、第1の実施の形態においては、ステップS110で第1の磁性層201を成膜する際に基板110を湾曲させていたが、本実施の形態においては、ステップS210で第1の磁性層201を成膜する際に基板110を湾曲させなくともよい。
次に、図47を参照し、本実施の形態に係る圧力センサ100Aの製造方法の一部の工程(ステップS210)について、より詳しく説明する。図47は、同工程の一例を説明するための概略的なフローチャートである。
図47に示す例において、ステップS210の工程は、第2の磁性層を成膜する工程(ステップS114)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、基板110を湾曲させる工程(ステップS211)と、第1の磁性層201に熱処理を行う工程(ステップS212)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS213)とを含んでいる。
このような方法を用いた場合、例えば歪検出素子200A(図10)のように、第1の磁性層201が第2の磁性層202よりも上層に位置する歪検出素子200を搭載した圧力センサ100Aを製造する事が出来る。
次に、ステップS210の他の態様について説明する。図48は、ステップS210の他の態様を説明するための概略的なフローチャートである。図48に示す例においては、第1の磁性層201を、第2の磁性層202よりも前に成膜する。
即ち、図48に示す例において、ステップS210の工程は、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、基板110を湾曲させる工程(ステップS211)と、第1の磁性層201に熱処理を行う工程(ステップS212)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS213)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第2の磁性層203を成膜する工程(ステップS114)とを含んでいる。
このような方法を用いた場合、例えば歪検出素子200B(図13)のように、第1の磁性層201が第2の磁性層202よりも下層に位置する歪検出素子200を搭載した圧力センサ100Aを製造する事が出来る。
次に、ステップS210の他の態様について説明する。図49は、ステップS210の他の態様を説明するための概略的なフローチャートである。
即ち、図49に示す例において、ステップS210の工程は、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)と、基板110を湾曲させる工程(ステップS211)と、第1の磁性層201に熱処理を行う工程(ステップS212)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS213)とを含んでいる。
本実施の形態に係る方法によれば、例えば図10〜図15に示す歪検出素子200A,200B,200Cまたは200Dを搭載した圧力センサ100Aを製造する事が可能である。
[第3の実施の形態]
次に、図50〜図52を参照して、第3の実施の形態に係る圧力センサの製造方法を説明する。図50は、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法の一部を示すフローチャートである。図51及び図52は、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法を説明するための概略的な側面図である。尚、図51及び図52においては、基板110を等法的に(球面状に)湾曲させる例について示している。本実施の形態においては、基板110を、所定の点を中心として、Z方向に湾曲させる。
第1の実施の形態においては、例えば図17に示す通り、基板110を湾曲させた状態で第1の磁性層201を成膜することにより、第1の磁性層201の初期磁化方向を設定していた。これに対し、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法においては、図50〜図52に示す通り、基板110を湾曲させた状態で膜部120の成膜を行い、膜部120の内部応力を調整して歪を与えている。
即ち、図50に示す通り、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法は、基板110を湾曲させる工程(ステップS310)と、膜部120を形成する工程(ステップS320)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS330)と、歪検出素子を製造する工程(ステップS340)と、基板110の一部を、基板110の他の面113から除去する工程(ステップS130)とを含んでいる。尚、ステップS130に示す工程は、図24及び図25(e)を参照して説明した工程と同様に行う事が可能である。また、基板110と膜部120との間には、他の層が形成されていても良い。
例えば、本実施の形態に係る製造方法においては、図51(a)及び(d)に示す通り、ステップS310において基板110を凸状に湾曲させ、図51(b)及び(e)に示す通り、ステップS320において膜部120を形成しても良い。この場合、膜部120は、基板110が凸状に湾曲した状態においてほぼ応力を生じない状態となる。従って、図51(c)及び(f)に示す通り、ステップS330において基板110の湾曲を解除すると、膜部120に、内部応力による圧縮歪が等方的に生じる。
また、本実施の形態に係る製造方法においては、図52(a)及び(d)に示す通り、ステップS310において基板110を凹状に湾曲させ、図52(b)及び(e)に示す通り、ステップS320において膜部120を形成しても良い。この場合、膜部120は、基板110が凹状に湾曲した状態においてほぼ応力を生じない状態となる。従って、図52(c)及び(f)に示す通り、ステップS330において基板110の湾曲を解除すると、膜部120に、内部応力による引張歪が等方的に生じる。
即ち、圧力センサの感度を上げようとする場合、膜部120は、微弱な外部圧力に対応して大きく撓むことが望ましい。ここで、膜部120を形成する工程においては、膜部120に残留応力が生じてしまう事がある。膜部120に残留応力が生じると、その大きさに応じて膜部120のばね定数が大きくなり、外部圧力に対する膜部120の撓みが小さくなってしまうことがある。このような場合、感度の高い圧力センサを提供する事が出来ないことがあった。
膜部120における残留応力は、材料の選択や成膜の条件(プロセスガス圧、基板バイアス条件など)などによって調整することも可能である。ただし、外部圧力に対してたわみの大きくとれるヤング率の材料群の中で材料選定を行う場合、成膜条件の調整のみでは残留応力をゼロ付近とすることが難しい場合がある。
ここで、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法においては、膜部120の内部応力を調整することによって膜部120に歪を与え、これによって上記残留応力を低減させることが可能である。従って、膜部120の材料に依存せずに、湾曲成膜時の基板の曲率によって残留応力の値を自在にコントロールすることが可能なため、外部圧力に対する膜部120の撓み量を増加させて、感度の高い圧力センサを提供する事が出来る。
尚、図50のステップS340においては、第1の実施の形態において説明した方法とほぼ同様の方法によって歪検出素子を製造する事が可能である。ただし、ステップS340においては、必ずしも基板110を湾曲させる必要はない。
例えば、歪検出素子は、図53や図54に示す方法によって製造する事が可能である。図53及び図54は、それぞれ歪検出素子を製造する工程の一部を示すフローチャートである。図53及び図54に示す工程には、基板110を湾曲させる工程が含まれていない。
即ち、図53に示す例において、ステップS340の工程は、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去する工程(ステップS120)とを含んでいる。
また、図54に示す例において、ステップS340の工程は、第1の磁性層201を成膜する工程(ステップS112)と、中間層203を成膜する工程(ステップS115)と、第2の磁性層202を成膜する工程(ステップS114)と、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去する工程(ステップS120)とを含んでいる。
尚、ステップS112、ステップS114及びステップS115に示す工程は、図26、図27A及び図27Bを参照して説明した工程と同様に行う事が出来る。また、ステップS120に示す工程は、図24及び図25(d)を参照して説明した工程と同様に行う事が出来る。
また、例えば本実施の形態に係る圧力センサの製造方法を、第1または第2の実施の形態に係る圧力センサの製造方法と組み合わせることも可能である。これにより、残留応力の低減された膜部120と、ゲージファクタの大きい歪検出素子とを備えた圧力センサを製造する事が可能となり、更に圧力感度の高い圧力センサを製造する事が可能となる。
[第4の実施の形態]
次に、図55〜図57を参照して、第4の実施の形態に係る圧力センサの製造方法を説明する。図55は、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法の一部を示すフローチャートである。図56及び図57は、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法を説明するための概略的な側面図である。尚、図56及び図57においては、基板110を等法的に(球面状に)湾曲させる例について示している。本実施の形態においては、基板110を、所定の点を中心として、Z方向に湾曲させる。
第3の実施の形態においては、例えば図51または図52に示す通り、基板110を湾曲させた状態で膜部120の成膜を行い、膜部120の内部応力を調整して歪を与えていた。これに対し、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法においては、図55〜図57に示す通り、基板110を湾曲させた状態で膜部120に熱処理を行い、膜部120の内部応力を調整して歪を与えている。
即ち、図55に示す通り、本実施の形態に係る圧力センサの製造方法は、基板110を湾曲させる工程(ステップS410)と、膜部120に熱処理を行う工程(ステップS420)と、基板110の湾曲を解除する工程(ステップS430)と、歪検出素子を製造する工程(ステップS340)と、基板110の一部を、基板110の他の面113から除去する工程(ステップS130)とを含んでいる。尚、ステップS130に示す工程は図24及び図25(e)を参照して説明した工程と同様に、ステップS340に示す工程は図53及び図54を参照して説明した工程と同様に行う事が可能である。また、基板110と膜部120との間には、他の層が形成されていても良い。
例えば、本実施の形態に係る製造方法においては、図56(a)及び(d)に示す通り、ステップS410において膜部120が形成された基板110を凸状に湾曲させ、図56(b)及び(e)に示す通り、ステップS420において膜部120に熱処理を行っても良い。この場合、膜部120は、基板110が凸状に湾曲した状態においてほぼ応力を生じない状態となる。従って、図56(c)及び(f)に示す通り、ステップS430において基板110の湾曲を解除すると、膜部120に、内部応力による圧縮歪が等方的に生じる。
また、本実施の形態に係る製造方法においては、図57(a)及び(d)に示す通り、ステップS410において基板110を凹状に湾曲させ、図57(b)及び(e)に示す通り、ステップS420において膜部120に熱処理を行っても良い。この場合、膜部120は、基板110が凹状に湾曲した状態においてほぼ応力を生じない状態となる。従って、図57(c)及び(f)に示す通り、ステップS430において基板110の湾曲を解除すると、膜部120に、内部応力による引張歪が等方的に生じる。
本実施の形態に係る圧力センサの製造方法においては、膜部120の内部応力を調整することによって膜部120に歪を与え、これによって上記残留応力を低減させることが可能である。従って、膜部120の材料に依存せずに、湾曲成膜時の基板の曲率によって残留応力の値を自在にコントロールすることが可能なため、外部圧力に対する膜部120の撓み量を増加させて、感度の高い圧力センサを提供する事が出来る。
尚、例えば本実施の形態に係る圧力センサの製造方法を、第1または第2の実施の形態に係る圧力センサの製造方法と組み合わせることも可能である。これにより、残留応力の低減された膜部120と、ゲージファクタの大きい歪検出素子とを備えた圧力センサを製造する事が可能となり、更に圧力感度の高い圧力センサを製造する事が可能となる。
[第5の実施の形態]
次に、図58を参照して、第5の実施の形態について説明する。図58は、本実施の形態に係るマイクロフォン150の構成を示す模式的な断面図である。第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサ100は、例えば、マイクロフォンに搭載する事が出来る。
本実施の形態に係るマイクロフォン150は、圧力センサ100を搭載したプリント基板151と、プリント基板151を搭載した電子回路152と、プリント基板151と共に圧力センサ100と電子回路152とを覆うカバー153とを備える。圧力センサ100は、第1〜第4の実施の形態に係る製造方法によって製造された圧力センサである。
カバー153には、アコースティックホール154が設けられており、ここから音波155が入射する。音波155がカバー153内に入射すると、圧力センサ100によって音波155が検知される。電子回路152は、例えば、圧力センサ100に搭載された歪検出素子に電流を流し、圧力センサ100の抵抗値の変化を検出する。また、電子回路152は、増幅回路等によってこの電流値を増幅しても良い。
第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサは高感度であるため、これを搭載したマイクロフォン150は感度良く音波155の検出を行う事が可能である。
[6.第6の実施の形態]
次に、図59及び図60を参照して、第6の実施の形態について説明する。図59は、第6の実施の形態に係る血圧センサ160の構成を示す模式図である。図60は、同血圧センサ160のH1−H2から見た模式的な断面図である。第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサ100は、例えば、血圧センサ160に搭載する事が出来る。
図59に示す通り、血圧センサ160は、例えばヒトの腕165の動脈166上に貼り付けられる。また、図60に示す通り、血圧センサ160は第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサ100を搭載しており、これによって血圧を測定する事が可能である。
第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサは高感度であるため、これを搭載した血圧センサ160は感度良く連続的に血圧の検出を行う事が可能である。
[7.第7の実施の形態]
次に、図61を参照して、第7の実施の形態について説明する。図61は、第7の実施の形態に係るタッチパネル170の構成を示す模式的な回路図である。タッチパネル170は、図示しないディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
タッチパネル170は、マトリクス状に配置された複数の圧力センサ100と、Y方向に複数配置され、X方向に配置された複数の圧力センサ100の一端にそれぞれ接続された複数の第1の配線171と、X方向に複数配置され、Y方向に配置された複数の圧力センサ100の他端にそれぞれ接続された複数の第2の配線172と、複数の第1の配線171及び複数の第2の配線172を制御する制御部173とを備える。圧力センサ100は、第1〜第4の実施の形態に係る製造方法によって製造された圧力センサである。
また、制御部173は、第1の配線171を制御する第1の制御回路174と、第2の配線172を制御する第2の制御回路175と、第1の制御回路174及び第2の制御回路175を制御する第3の制御回路176とを備える。
例えば、制御部173は、複数の第1の配線171及び複数の第2の配線172を介して圧力センサ100に電流を流す。ここで、図示しないタッチ面が押圧された場合、圧力センサ100はその圧力に応じて歪検出素子の抵抗値を変化させる。制御部173は、この抵抗値の変化を検出することにより、押圧による圧力を検出した圧力センサ100の位置を特定する。
第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサ100は高感度であるため、これを搭載したタッチパネル170は感度良く押圧による圧力を検出する事が可能である。また、圧力センサ100は小型であり、解像度の高いタッチパネル170を製造する事が可能である。
尚、タッチパネル170は、圧力センサ100の他にタッチを検出するための検出要素を備えていても良い。
[その他の応用例]
以上、具体例を参照しつつ、第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサ100の応用例について説明した。しかし、圧力センサ100は、第5〜第7に示す実施の形態の他に、気圧センサやタイヤの空気圧センサ等、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
また、歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170に含まれる膜部、歪検出素子、第1の磁性層、第2の磁性層及び中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
[8.第8の実施の形態]
次に、図62を参照して、第8の実施の形態について説明する。図62は、第8の実施の形態に係る圧力センサ製造システム300の構成を示す模式図である。圧力センサ製造システム300は、例えば第1〜第4の実施の形態に示した製造方法を実現すべく、基板110を湾曲可能に構成されている。
圧力センサ製造システム300は、第1の成膜装置401と、第2の成膜装置402と、第3の成膜装置403と、熱処理装置500と、酸化装置301と、エッチング装置302と、ゲートバルブ303を介してこれら各装置に接続された搬送装置304と、第1の準備室(ロードロック室)305と、第2の準備室(ロードロック室)306とを備えている。
これら各装置は真空チャンバ及び真空ポンプを有しており、第1の準備室305と第2の準備室306以外は常時真空状態に維持されている。尚、第1の準備室305と第2の準備室306とを兼用する場合には、一方を省略する事も可能である。更に、ゲートバルブ303は、基板を搬送する場合以外は閉じられている。
第1の成膜装置401、第2の成膜装置402及び第3の成膜装置403は、例えばスパッタリングなどの方法によって成膜を行う成膜装置である。
熱処理装置500は、例えば第1の成膜装置401、第2の成膜装置402及び第3の成膜装置403において成膜された薄膜の表面に熱を加えることで、薄膜の熱処理を行うために用いられる。熱処理装置500は、例えば基板ステージと対抗して加熱ランプを設ける構造や、基板支持ステージに近接して抵抗加熱ヒータを設ける構造を有する。
酸化装置301は、例えば真空に排気された酸化室中に酸素ガスを供給して、成膜室にて成膜された薄膜の表面の酸化を行い、酸化物を形成する。酸化室は、酸素を単純に供給する自然酸化を行う以外に、イオンビームガンや逆スパッタエッチング機講などを併設して、酸素をプラズマ化したプラズマ酸化を行う構造としてもよい。また、もしくはプラズマ化した希ガス(Arなど)をイオンビームガンなどで基板表面に照射しながら酸素の供給を行うイオンビームアシスト酸化を行う構造としてもよい。
エッチング装置302は、例えば基板表面の酸化物および汚染物を除去する逆スパッタエッチング機講など備えている。
搬送装置304は、図示しない基板搬送ロボットを備え、基板搬送ロボットによって基板を所定の装置に搬入し、または取り出す。基板搬送ロボットは、コンピュータプログラムによって動作させることが可能である。
第1の準備室305は基板を搬送装置304に導入する場合に用いられる。即ち、基板を搬送装置304に導入する際には、ゲートバルブ303によって第1の準備室305と搬送装置304との間を遮断し、第1の準備室305内の気圧を大気圧に設定しておく。次に、基板を第1の準備室305内に導入し、第1の準備室305内を真空状態にする。第1の準備室305内が真空状態となった後にゲートバルブ303を開放し、基板を搬送装置304に導入する。
第2の準備室306は基板を搬送装置304から取り出す場合に用いられる。即ち、基板を取り出す際には、まずゲートバルブ303を開放し、基板を搬送装置304から第2の準備室306に移動させる。次に、ゲートバルブ303によって第2の準備室306と搬送装置304との間を遮断し、第2の準備室306内を大気圧に設定する。第2の準備室306内の気圧が充分大気圧に近付いた後に基板を取り出すことが可能である。
尚、圧力センサ製造システム300には、スパッタリング成膜以外のプロセスを行うプロセス装置等、他の装置を取り付けることも可能である。例えば、プラズマ、イオンビーム、原子ビーム、分子ビーム、ガスクラスタービームによって基板もしくは基板上に形成された薄膜を除去するためのプロセス装置を取り付けることができる。また、化学的気相成長法によって基板もしくは基板上に形成された薄膜上に薄膜を形成するためのプロセス装置、ガス、中性活性種、イオンまたはそれらの混合雰囲気の中で基板もしくは基板上に形成された薄膜を化学反応させるためのプロセスチャンバ、基板を加熱、または冷却、または加熱と冷却を行うためのプロセス装置を取り付けることができる。
次に、図63及び図64を参照して、第1の成膜装置401、第2の成膜装置402または第3の成膜装置403の構成例400Aについて説明する。図63は、成膜装置400Aを示す模式的な断面図である。図64は、成膜装置400Aの動作を説明するための模式的な断面図である。
図63に示す通り、成膜装置400Aは、基板110を湾曲可能に支持する基板ホルダ600と、基板ホルダ600に支持された基板110に成膜を行う成膜部410と、基板ホルダ600及び成膜部410を収容する成膜室420とを備える。
成膜装置400Aは、図63に示す通り、基板110を湾曲させない状態でスパッタリング処理を行う事も可能であり、図64に示す通り、基板110を湾曲させた状態でスパッタリング処理を行う事も可能である。また、図64に示す例においては基板110を凸状に湾曲させているが、凹状に湾曲させる事も可能である。
図63に示す通り、成膜部410は、基板ホルダ600に所定の位置から対向し、スパッタリングターゲット411を設置するスパッタリングカソード412を備えている。スパッタリングターゲット411はバッキングプレートなどを介してスパッタリングカソード412に設置されている。また、スパッタリングターゲット411のスパッタ面の裏側には、マグネトロンスパッタリングを行うためのマグネットが配置することが好ましい。
成膜部410は、例えば、成膜室420内に希ガス(Arなど)が供給された状態でスパッタリングカソード412にDCもしくはRF電力を投入することで、スパッタリングカソード412近傍にプラズマを発生させて、スパッタリングターゲット411をスパッタリングして、スパッタリングターゲット411の材料を基板110上に堆積させる。
基板ホルダ600は、基板110を湾曲可能に支持する。また、基板ホルダ600は、回転駆動機構312により、図63中の回転軸Aを中心として回転可能に成膜室420に取り付けられている。従って、基板110上に堆積する薄膜の基板平面内の分布を良好にすることが出来る。
成膜室420は真空チャンバであり、ゲートバルブ303を介して搬送装置304に接続されている。また、成膜室420は、バルブ307を介して取り付けられた真空ポンプ308と、ガス供給口309と、バルブ310を介して取り付けられた真空ゲージ311とを備える。
真空ポンプ308としては、例えばターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ドライポンプなどを組み合わせて用いる事が可能である。
ガス供給口309は、アルゴン(Ar)などの不活性ガスを供給するためのガス供給装置(ボンベ)と、ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラと、ガスの供給を遮断・開始するためのストップバルブに接続されており、ガスを成膜室420内に供給する
次に、図65〜図69を参照して、基板ホルダ600の構成例600Aについて説明する。図65は、基板ホルダ600Aの一部の構成を示す模式的な側面図である。図66は、基板ホルダ600Aの一部の構成を示す模式的な斜視図である。図67は、基板ホルダ600Aの他の構成例を示す模式的な斜視図である。基板ホルダ600Aは、基板上の所定の線を中心として、基板を湾曲させる。
図65に示す通り、基板ホルダ600Aは、基板を支持面611に支持する支持機構610と、支持機構610と共に基板を挟持することにより、基板を支持面611に保持する保持機構620とを備える。また、保持機構620には成膜用窓623が形成され、この成膜用窓623を介して基板が配置される支持面611を成膜部410に露出させている。
図65に示す通り、支持機構610は、支持面611に対して略垂直な方向(Z方向)に独立して動作可能な複数の可動支持部材612を、X方向に並べてなる。保持機構620は、支持ピン622によって可動支持部材612上に支持され、支持面611に対して略垂直な方向(Z方向)に独立して動作可能な複数の可動保持部材621を、X方向に並べてなる。基板ホルダ600Aは、可動支持部材612及び可動保持部材621のZ方向位置を調整することにより、挟持した基板を、Y方向に延びる所定の線を中心として、X方向に湾曲させる。
図66に示す通り、可動支持部材612はY方向に延び、可動支持部材612の両端部には、支持ピン挿通孔614が設けられている。また、支持ピン挿通孔614には、可動保持部材621を支持する支持ピン622が挿通されている。複数の支持ピン622は、支持ピン挿通孔614を介して図示しない昇降機構に接続されており、可動支持部材612とは独立して昇降させることが可能である。
また、図66に示す通り、更に、可動支持部材612の上面及び可動保持部材621の下面は、曲面状に形成された円形ナイフエッジ構造を有している。尚、図67に示す通り、可動支持部材612の上面及び可動保持部材621の下面を、角状に形成されたナイフエッジ構造としても良い。
図68は、支持機構610の構成を示す模式的な平面図である。支持機構610の支持面611は、曲面状または角状に形成された複数の可動支持部材612の上面によって構成される。また、図68中の点線部分には、基板110が配置される。即ち、支持ピン挿通孔614は、基板110が配置される部分を避けて形成される。また、支持機構610の支持面611には、ロボットアームの一部を通す溝613が形成されている。
図69は、保持機構620の構成を示す模式的な平面図である。保持機構620は、曲面状または角状に形成された複数の可動保持部材621の下面によって支持部610の支持面611に対向し、支持面611と共に基板110を挟持する。また、保持機構620の中心部分には、成膜用窓623が形成され、この成膜用窓623を介して基板を成膜部410に露出させている。換言すれば、一部の可動保持部材621は、Y方向に分離された構成となる。従って、基板110上面のうち、成膜用窓623から露出した部分に成膜が行われる。また、成膜用窓623は、基板110を挟持可能な様に、基板110の少なくとも一部が保持機構620によって覆われるように形成される。
尚、図65〜図69において、支持機構610は9つの可動支持部材612を有し、保持機構620は9つの可動保持部材621を有しているが、これは説明のために例示したものであり、適宜変更可能である。ここで、曲率が面内で均一となるように基板を湾曲させる観点から、基板ホルダ600Aは、可動支持部材612及び可動保持部材621を4セット以上有する事が好ましい。
次に、図70〜図82を参照して、基板ホルダ600Aの使用態様について説明する。図70及び図71は、基板ホルダ600Aの使用態様について説明するための模式的な平面図である。図72〜図82は、基板ホルダ600Aの使用態様について説明するための模式的な側面図である。
まず、図70または図71に示す通り、ロボットアーム313上に基板110を設置する。ロボットアーム313は、基板110を基板ホルダ600内に挿入する際、支持機構610に設けられた溝613に沿って移動する。
図70または図71に示す通り、基板110のオリエンテーションフラット方向(オリフラ方向)は、搬送装置304に設けられた図示しないアライナー装置によって調整可能であり、例えば図70または図71に示す通りにロボットアーム313上に設置する事が可能である。このように搬送時の基板110のオリフラ方向を変えることで、基板110のオリフラ方向と基板110の湾曲方向を自由に変更することが可能である。
次に、図72に示す通り、ロボットアーム313を溝613に沿って移動させ、基板110を基板ホルダ600内に挿入する。この際、複数の可動支持部材612のZ方向の位置(高さ位置)を全て揃え、同様に、複数の可動保持部材621のZ方向の位置(高さ位置)を全て揃え、更に、支持機構610と保持機構620とを、基板110とロボットアーム313が十分に通過出来る程度に離しておく。
次に、図73に示す通り、ロボットアーム313を−Z方向(下方)に移動させ、支持機構610の支持面611に基板110を設置する。ただし、例えば支持機構610を上昇させることによって基板110を支持面611に設置しても良い。その後、ロボットアーム313は、溝613に沿って、X方向に引き抜かれる。
次に、図74に示す通り、図示しない昇降機構によって支持ピン622及び可動保持部材621を下降させ、支持機構610及び保持機構620によって基板110を挟持する。即ち、基板110は、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621によって、複数個所で挟持される。ただし、例えば支持機構610を上昇させることによって基板110を挟持しても良い。基板110を湾曲させないで成膜処理を行う場合には、図74に示した状態で成膜処理が行われる。
基板110を凸状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図75に示す通り、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621の位置を、凸状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621によって挟持された基板110の複数個所のうち、基板110の中心部付近に位置する個所は可動支持部材612によってZ方向に押圧され、中心部付近から離れた箇所は可動保持部材621によって−Z方向に押圧され、基板110が凸状に湾曲される。
尚、図75及び図76に示す通り、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621の位置の調整によって好適に調整可能である。
基板110を凹状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図77に示す通り、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621の位置を、凹状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621によって挟持された基板110の複数個所のうち、基板110の中心部付近に位置する個所は可動保持部材621によって−Z方向に押圧され、中心部付近から離れた箇所は可動支持部材612によってZ方向に押圧され、基板110が凹状に湾曲される。
尚、図77及び図78に示す通り、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材612及び複数の可動保持部材621の位置の調整によって好適に調整可能である。
また、図79〜図82に示す通り、一部の可動支持部材612及び可動保持部材621の位置のみを曲面に沿う様に調整することによっても、基板110を凹状または凸状に、任意の曲率を有するように湾曲させることが可能である。図79〜図82に示す例においては、X方向位置の異なる2つの可動支持部材612及び可動保持部材621を用いて、4点ベンディングにより基板110を湾曲させている。更に、例えば、図79〜図82において使用していない可動支持部材612及び可動保持部材621は、省略する事も可能である。
次に、図83〜図85を参照して、基板ホルダ600の他の構成例600Bについて説明する。図83は、基板ホルダ600Bの保持機構620Bの構成を示す模式的な平面図である。図84は、基板ホルダ600Bの一部の構成を示す模式的な斜視図である。図85は、基板ホルダ600Bの他の構成例を示す模式的な斜視図である。
図83に示す通り、基板ホルダ600Bの成膜用窓623には、基板の内側に架橋する格子625が設けられている。尚、基板ホルダ600Bは、その他の点においては図65〜図69に示す基板ホルダ600Aとほぼ同様に構成されている。
即ち、図83に示す通り、基板ホルダ600Bの保持機構620Bの中心部分には成膜用窓623が形成され、この成膜用窓623には、X方向に複数配列され、Y方向に延びる格子625が設けられている。また、基板ホルダ600Bは、複数のY方向に分離された可動保持部材621(図69)の一部または全部を、格子623を介してY方向に連結された可動保持部材624に入れ替えてなる。
図84に示す通り、可動保持部材624の下面は、曲面状に形成された円形ナイフエッジ構造を有している。尚、図85に示す通り、可動保持部材624の下面を、角状に形成されたナイフエッジ構造としても良い。
基板ホルダ600Bは、格子625を基板の上面に当接させる。従って、基板を湾曲させる際に、より効率よく基板の上面に力を印加する事ができ、基板110をより精度良く湾曲させることが可能である。
尚、基板ホルダ600Bを使用した場合、圧力センサ100は、基板上の露出した部分、即ち、格子625が位置する部分と異なる部分に作成することになる。
次に、図86〜図88を参照して、基板ホルダ600の他の構成例600Cについて説明する。図86は、基板ホルダ600Cの一部の構成を示す模式的な側面図である。
図86に示す通り、基板ホルダ600Cは、基板を支持面641に支持する支持機構630と、静電チャック板(もしくは真空チャック板)によって基板を支持面641に保持する保持機構640とを備える。支持機構630は、支持面641に対して略垂直な方向(Z方向)に独立して動作可能な複数の可動支持部材632を、X方向に並べてなる。保持機構640は湾曲可能な静電チャック板からなり、複数の可動支持部材632の上面の形状に沿って支持面641を変形させる。基板ホルダ600Cは、変形された支持面641に基板を引き付けることによって、基板を、Y方向に延びる所定の線を中心として、X方向に湾曲させる。
図87は、支持機構630の構成を示す模式的な平面図である。支持機構630の上面は、複数の可動支持部材632の上面によって構成される。また、支持機構630の上面には、ロボットアームの一部を通す溝633が形成されている。
尚、図86に示す例においては、基板の設置面を平面としているが、図88に示す通り、例えば複数の可動支持部材632の上面を曲面状に形成し、この曲面に沿ってそれぞれ曲面状に形成された複数の静電チャック板を設け、これを保持機構640としても良い。この場合、静電チャック板は湾曲可能でなくても良い。
尚、図86〜図88において、支持機構630は9つの可動支持部材632を有しているが、これは説明のために例示したものであり、適宜変更可能である。ここで、曲率が面内で均一となるように基板を湾曲させる観点から、基板ホルダ600Cは、可動支持部材632を4つ以上有する事が好ましい。
次に、図89〜図93を参照して、基板ホルダ600Cの使用態様について説明する。図89〜図93は、基板ホルダ600Cの使用態様について説明するための模式的な側面図である。
まず、図89に示す通り、基板110を支持面641に設置する。この際、複数の可動支持部材632のZ方向の位置(高さ位置)を全て揃えておく。次に、保持機構640によって基板110をチャッキングする。基板110を湾曲させないで成膜処理を行う場合には、図89に示した状態で成膜処理が行われる。
基板110を凸状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図90に示す通り、複数の可動支持部材632の位置を、凸状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、複数の可動支持部材632に沿って支持面641が凸状に変形し、基板110の中心部付近はZ方向に押圧され、中心部付近から離れた箇所は静電チャック板によって−Z方向に引き付けられ、基板110が凸状に湾曲される。尚、図90及び図91に示す通り、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材632の位置の調整によって好適に調整可能である。
基板110を凹状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図92に示す通り、複数の可動支持部材632の位置を、凹状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、複数の可動支持部材632に沿って支持面641が凹状に変形し、基板110の中心部付近は静電チャック板によって−Z方向に引き付けられ、中心部付近から離れた箇所はZ方向に押圧され、基板110が凹状に湾曲される。尚、図92及び図93に示す通り、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材632の位置の調整によって好適に調整可能である。
次に、図94〜図97を参照して、基板ホルダ600の他の構成例600Dについて説明する。図94は、基板ホルダ600Dの一部の構成を示す模式的な側面図である。基板ホルダ600Dは、基板を等法的に(球面状に)湾曲させる。
図94に示す通り、基板ホルダ600Dは、基板を支持面651に支持する支持機構650と、支持機構650と共に基板を挟持することにより、基板を支持面651に保持する保持機構660とを備える。また、保持機構660には成膜用窓663が形成され、この成膜用窓663を介して基板が配置される支持面651を成膜部410に露出させている。
支持機構650は、支持面611に対して略垂直な方向(Z方向)に独立して動作可能な複数の可動支持部材652からなる。保持機構660は、支持ピン662によって可動支持部材652上に支持され、支持面651に対して略垂直な方向(Z方向)に独立して動作可能な可動保持部材661を有する。基板ホルダ600Dは、可動支持部材662及び可動保持部材661のZ方向位置を調整することにより、挟持した基板を、所定の点を中心として、Z方向に湾曲させる。
支持ピン662は、後述する支持ピン挿通孔654(図95)を介して図示しない昇降機構に接続されており、可動支持部材652とは独立して昇降させることが可能である。
図95は、支持機構650の構成を示す模式的な平面図、図96は、支持機構650の一部の構成を示す模式的な斜視図である。図95に示す通り、支持機構650の支持面651は、X方向及びY方向に賽の目状に並べられた複数の可動支持部材652の上面によって構成される。また、図96に示す通り、複数の可動支持部材652の上面は、曲面状に形成されている。ただし、複数の可動支持部材652の上面を、角状に形成しても良い。さらに、支持面651の縁部に配置された一部の可動支持部材652には、支持ピン挿通孔654が設けられている。
図97は、保持機構660の構成を示す模式的な平面図である。保持機構660は、環状に形成された可動保持部材661を備える。可動保持部材661は、下面によって支持部650の支持面651に対向し、支持面651と共に基板110を挟持する。また、可動保持部材661の中心部分には、成膜用窓663が形成され、この成膜用窓663を介して基板を成膜部410に露出させている。従って、基板110上面のうち、成膜用窓663から露出した部分に成膜が行われる。また、成膜用窓663は、基板110を挟持可能な様に、基板110の少なくとも一部が可動保持部材661によって覆われるように形成される。
尚、図94〜図97に示した可動支持部材652の数は例示したものにすぎず、適宜変更可能である。
次に、図98〜図100を参照して、基板ホルダ600Dの使用態様について説明する。図98及び図99は、基板ホルダ600Dの使用態様について説明するための模式的な側面図である。図100は、基板ホルダ600Dの使用態様について説明するための模式的な斜視図である。
まず、図98に示す通り、支持機構650の支持面651に基板110を設置する。この際、複数の可動支持部材652のZ方向の位置(高さ位置)を全て揃え、更に、支持機構650と保持機構660とを、基板110と図示しないロボットアームが十分に通過出来る程度に離しておく。
次に、図99に示す通り、図示しない昇降機構によって支持ピン662及び可動保持部材661を下降させ、支持機構650及び保持機構660によって基板110を挟持する。ただし、例えば支持機構650を上昇させることによって基板110を挟持しても良い。基板110を湾曲させないで成膜処理を行う場合には、図99に示した状態で成膜処理が行われる。
基板110を凸状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図100に示す通り、複数の可動支持部材652の位置を、凸状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、基板110の中心部付近に位置する個所は可動支持部材652によってZ方向に押圧され、中心部付近から離れた箇所は可動保持部材661によって−Z方向に押圧され、基板110が凸状に湾曲される。尚、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材652の位置の調整によって好適に調整可能である。
次に、図101及び図102を参照して、基板ホルダ600の他の構成例について説明する。図101は、本構成例に係る保持機構670の構成を示す模式的な平面図である。また、図102は、本構成例に係る基板ホルダの構成を示す模式的な斜視図である。
図101及び図102に示す通り、保持機構670は、基板の内側に架橋する棒状部材672及び−Z方向に突出する基板押圧部材674を有しており、基板中心部を−Z方向に押圧可能に構成されている。保持機構670は、例えば図94〜図97を参照して説明した基板ホルダ600Dに、保持機構660に替えて採用する事が可能である。
図101に示す通り、保持機構670は、環状に形成された環状部671と、環状部671と一体に形成され、環状部671の中心部を通る棒状部材672を有している。また、図102に示す通り、棒状部材672には、−Z方向に突出する基板押圧部材674が設けられている。図102に示す通り、保持機構670は、基板押圧部材674によって支持部650の支持面651に対向する。従って、例えば複数の可動支持部材652のZ方向の位置を凹状の曲面に沿って移動させ、基板110の中心部分を基板押圧部材674によって押圧することにより、基板110を凹状に湾曲する事が可能である。
また、図101に示す通り、環状部671の中心部分には、棒状部材672によって分断された成膜用窓673が形成され、この成膜用窓673を介して基板を成膜部410に露出させている。従って、基板110上面のうち、成膜用窓673から露出した部分に成膜が行われる。また、成膜用窓673は、基板110を挟持可能な様に、基板110の少なくとも一部が可動保持部材671によって覆われるように形成される。
尚、図102に示す例においては、保持機構670は棒状部材672を1つのみ有しているが、複数有していても良い。また、棒状部材672は、基板押圧部材674を複数有していても良い。更に、基板押圧部材674を、Z方向に移動可能に構成することも可能である。さらに、図102においては、基板押圧部材674の下面が曲面状に形成されているが、角状に形成する事も可能である。
次に、図103及び図104を参照して、第1の成膜装置401、第2の成膜装置402または第3の成膜装置403の他の構成例400Bについて説明する。図103は、成膜装置400Bを示す模式的な断面図である。図104は、成膜装置400Bの動作を説明するための模式的な断面図である。
図103に示す通り、成膜装置400Bは、基板ホルダ680と別に構成された基板ステージ314を備えている。成膜を行う際には、図103に示す通り、予め基板110がセットされた基板ホルダ680がロボットアーム313によって成膜室420内に導入され、図104に示す通り基板ホルダ680が基板ステージ314にセットされる。また、図103及び図104に示す通り、成膜装置400Bは、その他の点においては、図63及び図64を参照して説明した成膜装置400Aとほぼ同様に構成されている。
即ち、基板ステージ680は、基板ホルダ680を安定して支持する事が可能である。また、基板ステージ680は、回転駆動機構312により、図103中の回転軸Aを中心として回転可能に成膜室420に取り付けられている。従って、基板110上に堆積する薄膜の基板平面内の分布を良好にすることが出来る。
次に、図105及び図106を参照して、基板ホルダ680の構成例について説明する。図105は、基板ホルダ680の一部の構成を示す模式的な側面図である。基板ホルダ680は、ロボットアーム313によって搬送され、基板ステージ314に取り付けられ、基板ステージ314から取り外すことが可能である。また、基板ホルダ680は、ロボットアーム313によって搬送可能な大きさを有している。
図105に示す通り、基板ホルダ680は、基板を支持面691に支持する支持機構690と、支持機構690と共に基板を挟持することにより、基板を支持面691に保持する保持機構620とを備える。また、保持機構620には成膜用窓623が形成され、この成膜用窓623を介して基板が配置される支持面691を成膜部410に露出させている。
支持機構690は、支持面691に対して略垂直な方向(Z方向)に独立して動作可能な複数の可動支持部材692を、X方向に並べてなる。また、複数の可動支持部材692は、ハウジング693に収容されている。保持機構620は、図65〜図69を参照して説明した基板ホルダ600の保持機構620とほぼ同様に構成されている。
図106は、支持機構690の構成を示す模式的な平面図である。支持機構690の支持面691は、複数の可動支持部材692の上面によって構成される。また、図106中の点線部分には、基板110が配置される。複数の可動支持部材692はY方向に延び、可動支持部材692のY方向の端部には、支持ピン622を挿通する為の支持ピン挿通孔694が形成されている。支持ピン挿通孔694は、基板110が配置される部分を避けて形成される。
尚、基板ホルダ680は、図105及び図106に示した例においては図65〜図69を参照して説明した基板ホルダ600Aと類似の構成を有していたが、例えば図83〜図85を参照して説明した基板ホルダ600Bと同様に構成しても良いし、図86〜図88を参照して説明した基板ホルダ600Cと同様に構成しても良いし、図94〜図97若しくは図101または図102を参照して説明した基板ホルダ600Dと同様に構成しても良い。
基板ホルダ680を用いた場合、大気中で基板を湾曲させ、またはチャッキング等を行う事が可能である。この場合、真空中一貫プロセスにおいて、基板の曲率および基板表面の歪は固定された状態で行われる。また、成膜装置400Bとは異なる装置内において基板を湾曲させ、またはチャッキング等を行う事も可能である。この場合は、真空中一貫プロセスにおいても、各プロセスに対して基板の曲率および基板表面の歪を自由に調整することができる。
次に、図107〜図112を参照して、基板ホルダ680の使用態様について説明する。図107〜図112は、基板ホルダ680の使用態様について説明するための模式的な側面図である。
まず、図107に示す通り、基板110を基板ホルダ680内に挿入する。この際、複数の可動支持部材692のZ方向の位置(高さ位置)を全て揃え、同様に、複数の可動保持部材621のZ方向の位置(高さ位置)を全て揃え、更に、支持機構690と保持機構620とを充分離しておく。
次に、図108に示す通り、支持ピン622及び可動保持部材621を下降させ、支持機構690及び保持機構620によって基板110を挟持する。即ち、基板110は、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621によって、複数個所で挟持される。ただし、例えば支持機構610を上昇させることによって基板110を挟持しても良い。基板110を湾曲させないで成膜処理を行う場合には、図108に示した状態で基板ホルダ680を成膜装置400Bに導入する。
基板110を凸状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図109に示す通り、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621の位置を、凸状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621によって挟持された基板110の複数個所のうち、基板110の中心部付近に位置する個所は可動支持部材692によってZ方向に押圧され、中心部付近から離れた箇所は可動保持部材621によって−Z方向に押圧され、基板110が凸状に湾曲される。
尚、図109及び図110に示す通り、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621の位置の調整によって好適に調整可能である。
基板110を凹状に湾曲させて成膜処理を行う場合には、図111に示す通り、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621の位置を、凹状の曲面に沿う様に個別に調整する。これにより、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621によって挟持された基板110の複数個所のうち、基板110の中心部付近に位置する個所は可動保持部材621によって−Z方向に押圧され、中心部付近から離れた箇所は可動支持部材692によってZ方向に押圧され、基板110が凹状に湾曲される。
尚、図111及び図112に示す通り、基板110が湾曲される曲率半径等は、複数の可動支持部材692及び複数の可動保持部材621の位置の調整によって好適に調整可能である。
次に、図113及び図114を参照して、第1の成膜装置401、第2の成膜装置402または第3の成膜装置403の他の構成例400C及び400Dについて説明する。図113は、成膜装置400Cを示す模式的な断面図である。図114は、成膜装置400Dを示す模式的な断面図である。
図113に示す通り、成膜装置400Cは、成膜部410を複数備えており、その他の点においては図63を参照して説明した成膜装置400Aとほぼ同様に構成されている。また、図114に示す通り、成膜装置400Dは、成膜部410を複数備えており、その他の点においては図103を参照して説明した成膜装置400Bとほぼ同様に構成されている。
[9.第9の実施の形態]
次に、図115〜図120を参照して、第9の実施の形態について説明する。図115は、本実施の形態に係る熱処理装置の構成例500Aを示す模式的な断面図である。
本実施の形態に係る圧力センサ製造システムは、基板を湾曲させた状態で、熱処理を行う事が可能に構成されている。尚、本実施の形態に係る圧力センサ製造システムは、第8の実施の形態において例示した成膜装置を備えていても良いし、異なる熱処理装置を採用しても良い。本実施の形態に係る圧力センサ製造システムは、その他の点においては図62に示す圧力センサ製造システム300とほぼ同様に構成されている。
図115に示す通り、熱処理装置500Aは、図63等を参照して説明した基板ホルダ600と、基板ホルダ600に支持された基板110に熱処理を行う熱処理部510Aと、基板ホルダ600及び熱処理部510Aを収容する熱処理室520とを備える。
熱処理装置500Aは、図115に示す通り、基板110を湾曲させた状態で熱処理を行う事も可能であり、基板110を湾曲させない状態で熱処理を行う事も可能である。また、図115に示す例においては基板110を凸状に湾曲させているが、凹状に湾曲させる事も可能である。
図115に示す通り、熱処理部510Aは、基板ホルダ600に所定の位置から対向して設けられ、基板110の表面に熱を加える。熱処理部510Aは、例えば、ランプヒータなどで構成される。基板110に均一に熱を伝えるために、ランプヒータの数は十分な数を設けることが好ましい。尚、熱処理は真空排気下などで行っても良いし、ガスなどを供給したガス雰囲気下でおこなってもよい。
熱処理室520は真空チャンバであり、ゲートバルブ303を介して搬送装置304に接続されている。また、成膜室520は、バルブ307を介して取り付けられた真空ポンプ308と、ガス供給口309と、バルブ310を介して取り付けられた真空ゲージ311とを備える。
尚、熱処理装置500Aは、その他の構成については、成膜装置400Aとほぼ同様に構成されている。
次に、図116を参照して、熱処理装置の他の構成例500Bについて説明する。図116は、熱処理装置500Bの構成を示す模式的な断面図である。熱処理装置500Bは、図115を参照して説明した熱処理装置500Aとほぼ同様に構成されているが、基板ホルダ600に替えて、図103〜図106を参照して説明した基板ホルダ680及び基板ステージ314を備えている。
次に、図117を参照して、熱処理装置の他の構成例500Cについて説明する。図117は、熱処理装置500Cの構成を示す模式的な断面図である。熱処理装置500Cは、熱処理部510Bを内蔵した基板ホルダ600Eを備える。熱処理装置500Cにおいては、熱処理部510Bが基板ホルダ600Eに内蔵されているため、熱処理部510Bを基板110の近傍に配置して、基板110に効率よく熱を加えることが出来る。熱処理装置熱処理部510Bは、例えば抵抗加熱などを用いたヒータである。尚、熱処理装置500Cは、その他の点においては、図115を参照して説明した熱処理装置500Aとほぼ同様に構成される。また、基板ホルダ600Eは、その他の点においては、図63を参照して説明した基板ホルダ600とほぼ同様に構成される。
次に、図118を参照して、熱処理装置の他の構成例500Dについて説明する。図118は、熱処理装置500Dの構成を示す模式的な断面図である。熱処理装置500Dは、図103〜図106を参照して説明した基板ホルダ680と、上述した熱処理部510Bを内蔵した基板ステージ315を備えている。熱処理装置500Dにおいては、熱処理部510Bが基板ステージ315に内蔵されているため、熱処理部510Bを基板110の近傍に配置して、基板110に効率よく熱を加えることが出来る。尚、熱処理装置500Dは、その他の点においては、図117を参照して説明した熱処理装置500Cとほぼ同様に構成される。また、基板ステージ315は、その他の点においては、図103〜図106を参照して説明した基板ステージ314とほぼ同様に構成される。
[10.第10の実施の形態]
次に、図119及び図120を参照し、第10の実施の形態について説明する。図119は、本実施の形態に係る熱処理装置500Eの概略的な構成を示す側面図である。図115〜図118を参照して説明した熱処理装置500A,500B,500C及び500Dは、ゲートバルブ303及び搬送装置304を介して他の装置と接続されていた。一方、図119に示す通り、本実施の形態に係る熱処理装置500Eは、これら装置等に接続されておらず、独立して設けられている。
熱処理装置500Eは、図63等を参照して説明した基板ホルダ600と、基板ホルダ600に支持された基板110に熱処理を行う熱処理部510Cと、基板ホルダ600及び熱処理部510Aを収容する熱処理室520Eとを備える。
熱処理装置500Eは、図119に示す通り、基板110を湾曲させた状態で熱処理を行う事も可能であり、基板110を湾曲させない状態で熱処理を行う事も可能である。また、図119に示す例においては基板110を凸状に湾曲させているが、凹状に湾曲させる事も可能である。
図119に示す通り、熱処理部510Cは、基板ホルダ600に所定の位置から近接して設けられ、基板110に熱を加える。熱処理部510Cは、例えば抵抗加熱などを用いたヒータであっても良いし、ランプヒータ等であっても良い。尚、ランプヒータを用いる場合等には、基板110に均一に熱を伝えるために、ランプヒータの数は十分な数を設けることが好ましい。尚、熱処理は真空排気下などで行っても良いし、ガスなどを供給したガス雰囲気下でおこなってもよい。
成膜室520Eは真空チャンバであり、バルブ307を介して取り付けられた真空ポンプ308と、ガス供給口309と、バルブ310を介して取り付けられた真空ゲージ311とを備える。
ガス供給口309は、N2などのガスを供給するためのガス供給装置(ボンベ)と、ガスの供給を遮断・開始するためのストップバルブに接続されており、ガスを成膜室520E内に供給する。ガスは、例えば、熱処理後の冷却に用いられたり、ガス雰囲気中の熱処理などに用いられる。
尚、熱処理装置500Eは、その他の構成については、図115を参照して説明した熱処理装置500Aとほぼ同様に構成されている。
次に、図120を参照し、本実施の形態に係る熱処理装置の他の構成例500Fについて説明する。図120は、熱処理装置500Fの概略的な構成を示す側面図である。図120に示す通り、熱処理装置500Fは、複数の基板110を湾曲させ、同時に熱処理を行う事が可能である。
即ち、熱処理装置500Fは、図103〜図106を参照して説明した基板ホルダ680を複数支持するラック316と、このラックを支持する基板ステージ317とを備える。尚、熱処理装置500Fは、その他の点については、図119を参照して説明した熱処理装置500Eとほぼ同様に構成されている。
[11.第11の実施の形態]
次に、図121及び図122を参照し、第11の実施の形態について説明する。図121は、本実施の形態に係る熱処理成膜装置700Aの概略的な構成を示す側面図である。
熱処理成膜装置700Aは、基板110を湾曲させた状態で成膜及び熱処理を行う事が可能である。熱処理成膜装置700Aは、例えば図62に示す様な圧力センサの製造システム300において、成膜装置(例えば第1の成膜装置401)及び熱処理装置500に替えて、またはこれらの装置と共に採用する事が可能である。
即ち、図121に示す通り、熱処理成膜装置700Aは、熱処理部510Bを内蔵し、基板110を湾曲可能に支持する基板ホルダ600Eと、基板ホルダ600Eに支持された基板110に成膜を行う成膜部410と、基板ホルダ600及び成膜部410を収容する成膜成膜室720とを備える。尚、成膜部410については、図63を参照して既に説明した。熱処理部510B及び基板ホルダ600Eについては、図117を参照して既に説明した。
次に、図122を参照し、熱処理成膜装置の他の構成例700Bについて説明する。図122は、本実施の形態に係る熱処理成膜装置700Bの概略的な構成を示す側面図である。
熱処理成膜装置700Bは、基板110を湾曲させた状態で成膜及び熱処理を行う事が可能である。また、熱処理成膜装置700Bは、取付や取り外しの可能な基板ステージ680を備えている。
即ち、図122に示す通り、熱処理成膜装置700Bは、基板110を湾曲可能に支持する基板ホルダ680と、熱処理部510Bを内蔵し、基板ホルダ680を支持する基板ステージ315と、基板ホルダ680に支持された基板110に成膜を行う成膜部410と、基板ホルダ680及び成膜部410を収容する成膜成膜室720とを備える。尚、基板ホルダ680については、図103〜図106を参照して、既に説明した。基板ステージ315については、図118を参照して、既に説明した。その他の点について、熱処理成膜装置700Bは、熱処理成膜装置700Aとほぼ同様に構成されている。
尚、図121及び図122に示す例においては、熱処理部510Bとして抵抗化熱等のヒータを採用しているが、例えばランプヒータを採用する事も可能である。この場合には、スパッタリングターゲット411から基板110へのスパッタ粒子の飛来を阻害しない位置にランプヒータを設けることが好ましい。
[12.その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、下記の様な態様も可能である。
[態様1]
膜部が形成された基板の前記膜部が形成された一の面に、第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、前記第1及び第2の磁性層の間に位置する中間層を成膜する工程と、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層を、一部を残して除去する工程と、
前記基板の一部を、前記基板の他の面から除去する工程と
を備え、
前記第1の磁性層の成膜は、前記基板を湾曲させて行う
ことを特徴とする圧力センサの製造方法。
[態様2]
膜部が形成された基板の前記膜部が形成された一の面に、第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、前記第1及び第2の磁性層の間に位置する中間層を成膜する工程と、
前記第1の磁性層に熱処理を行う工程と、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層を、一部を残して除去する工程と、
前記基板の一部を、前記基板の他の面から除去する工程と
を備え、
前記第1の磁性層に熱処理を行う工程は、前記基板を湾曲させて行う
ことを特徴とする圧力センサの製造方法。
[態様3]
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層を、一部を残して除去する工程においては、前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層を有する歪検出素子が第1の領域内に形成され、
前記基板の一部を、前記基板の他の面から除去する工程においては、前記基板の前記第1の領域内の部分が前記他の面から除去され、
前記基板は、前記歪検出素子の重心と前記第1の領域の外縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記第1の磁性層の磁化方向との相対角度が、0°よりも大きく90°よりも小さくなるように湾曲される
ことを特徴とする態様1または2記載の圧力センサの製造方法。
[態様1〜3に記載された圧力センサの製造方法について]
前記基板は、前記膜部に外部圧力が加わっていない定常状態において、前記第1の磁性層の磁化方向と前記第2の磁性層の磁化方向との相対的な角度が、0°よりも大きく180°よりも小さくなるように湾曲されても良い。
また、前記基板は、所定の線を中心として湾曲されても良い。
更に、本製造方法は、
前記基板を湾曲させる工程と、
前記基板の前記膜部が形成された一の面に前記第1の磁性層を成膜し、または前記第1の磁性層に熱処理を行う工程と、
前記基板の湾曲を解除する工程と
を備えていても良い。
[態様1に記載された圧力センサの製造方法について]
前記第2の磁性層の成膜は、前記基板を湾曲させて行っても良い。
[態様3に記載された圧力センサの製造方法について]
前記第1の磁性層の成膜は、所定の線を中心として前記基板を湾曲させて行い、
前記第2の磁性層の成膜は、前記所定の線と異なる方向に延びる線を中心として前記基板を湾曲させて行っても良い。
[態様4]
基板の一の面に、膜部を形成する工程と、
前記膜部上に歪検出素子を製造する工程と、
前記基板の一部を、前記基板の他の面から除去する工程と
を備え、
前記膜部を形成する工程は、前記基板を湾曲させて行う
ことを特徴とする圧力センサの製造方法。
[態様5]
基板に形成された膜部に熱処理を行う工程と、
前記膜部上に歪検出素子を製造する工程と、
前記基板の一部を、前記基板の他の面から除去する工程と
を備え、
前記膜部に熱処理を行う工程は、前記基板を湾曲させて行う
ことを特徴とする圧力センサの製造方法。
[態様6]
前記基板は、所定の点を中心として湾曲される
ことを特徴とする態様4または5記載の圧力センサの製造方法。
[態様4〜6に記載された圧力センサの製造方法について]
本製造方法は、
前記基板を湾曲させる工程と、
前記基板の一の面に前記膜部を成膜し、または前記膜部に熱処理を行う工程と、
前記基板の湾曲を解除する工程と
を備えていても良い。
[態様7]
基板を支持する基板ホルダと、
前記基板ホルダに支持された基板に成膜を行う成膜部と
を備え、
前記基板ホルダは、前記基板を湾曲させる機構を有する
ことを特徴とする成膜装置。
[態様8]
前記基板ホルダは、
前記基板を支持面に支持する支持機構と、
前記基板を前記支持面に保持する保持機構と
を備え、
前記支持機構は、
前記支持面に対して略垂直な方向に独立して動作可能な複数の可動支持部材を有し、
前記複数の可動支持部材によって前記支持面に凹凸を形成し、
前記保持機構は、前記支持面の凹凸に応じて前記基板を湾曲させる
ことを特徴とする態様7記載の成膜装置。
[態様9]
基板を支持する基板ホルダと、
前記基板ホルダに支持された基板に熱処理を行う熱処理部と
を備え、
前記基板ホルダは、前記基板を湾曲させる機構を有する
ことを特徴とする熱処理装置。
[態様10]
前記基板ホルダは、
前記基板を支持面に支持する支持機構と、
前記基板を前記支持面に保持する保持機構と
を備え、
前記支持機構は、
前記支持面に対して略垂直な方向に独立して動作可能な複数の可動支持部材を有し、
前記複数の可動支持部材によって前記支持面に凹凸を形成し、
前記保持機構は、前記支持面の凹凸に応じて前記基板を湾曲させる
ことを特徴とする態様9記載の熱処理装置。
[態様8または10に記載された基板ホルダについて]
前記複数の可動支持部材は、
前記支持面に対して平行な所定の方向に配列され、
前記支持面に対して平行であり、且つ前記所定の方向に対して垂直な方向に延び、
前記支持面は、所定の線を中心として湾曲されても良い。
また、前記複数の可動支持部材は、
前記支持面に対して平行な面内にマトリクス状に配列され、
前記支持面は、所定の点を中心として湾曲されても良い。
[13.その他]
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
また、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。