以下、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。尚、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、本願明細書において、「上に設けられる」状態は、直接接して設けられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて設けられる状態も含む。
[1.第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、第1の実施の形態に係る圧力センサの動作を説明する。図1は、第1の実施の形態に係る圧力センサの動作を説明するための模式的な断面図である。
図1に示す通り、圧力センサ100は、膜部120と、膜部120の上に設けられた歪検出素子200を備える。膜部120は、外部からの圧力に応じて生じて撓む。歪検出素子200は、膜部120の撓みに応じて歪み、この歪に応じて電気抵抗値を変化させる。従って、歪検出素子の電気抵抗値の変化を検出することにより、外部からの圧力が検出される。尚、圧力センサ100Aは、音波または超音波を検出するものであっても良い。この場合、圧力センサ100Aは、マイクロフォンとして機能する。
次に、図2を参照して、歪検出素子200の構成を説明する。図2は、第1の実施の形態に係る歪検出素子の構成を示す模式的な斜視図である。以下、第1の磁性層201及び第2の磁性層202が積層された方向をZ方向とする。また、このZ方向に対して垂直な所定の方向をX方向とし、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向とする。
図2に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に設けられた中間層203を有する。歪検出素子200に歪みが生じると、磁性層201及び202の相対的な磁化方向が変化する。これに伴い、磁性層201及び202の間の電気抵抗値が変化する。従って、この電気抵抗値の変化を検出することによって、歪検出素子200に生じた歪を検出する事が出来る。
本実施の形態において、第1の磁性層201は強磁性体からなり、例えば磁化自由層として機能する。また、第2の磁性層202も強磁性体からなり、例えば参照層として機能する。第2の磁性層202は、磁化固定層であっても良いし、磁化自由層であっても良い。
図2に示す通り、第1の磁性層201は第2の磁性層202と比較して大きく形成されている。即ち、第2の磁性層202に対向する第1の磁性層201の下面は、第1の磁性層201に対向する第2の磁性層202の上面と比較して広く形成されている。換言すれば、第1の磁性層201のXY平面における寸法は、第2の磁性層202のXY平面における寸法と比較して大きく形成されている。
また、図2に示す通り、第1の磁性層201は、下面の一部において第2の磁性層202と対向している。これに対し、第2の磁性層202は、上面の全体において第1の磁性層201と対向している。換言すれば、第2の磁性層202はXY平面において第1の磁性層201の内側に設けられる。
尚、図2に示す通り、中間層203のXY平面における寸法は、第1の磁性層201のXY平面における寸法と略一致する。従って、第2の磁性層202に対向する中間層203の下面は、中間層203に対向する第2の磁性層202の上面と比較して広く形成されている。
尚、図2に示す歪検出素子200は、第1の磁性層201と第2の磁性層202を別々のエッチング工程で独立に寸法をコントロールする事が出来る。従って第1の磁性層201と第2の磁性層202の寸法の差を自由に設定できる。
次に、図3を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の動作について説明する。図3(a),(b)及び(c)は、それぞれ歪検出素子200に引張歪が生じている状態、歪が生じていない状態及び圧縮歪が生じている状態の様子を表す模式的な斜視図である。尚、以下の説明において、歪検出素子200の第2の磁性層202の磁化方向は−Y方向であるものとし、歪検出素子200に生じる歪の方向はX方向であるものとする。また、第2の磁性層202は、磁化固定層として機能するものとする。
図3(b)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200に歪が生じていない場合、第1の磁性層201の磁化方向と第2の磁性層202の磁化方向との相対的な角度は、0°よりも大きく180°よりも小さくすることができる。図3(b)に示す例においては、第1の磁性層201の磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向に対して135°であり、歪が生じる方向に対しては45°(135°)であるが、ここでの135°と言う角度はあくまで一例であり、他の角度とすることが可能である。以下、図3(b)に示すように、歪が生じていない場合における第1の磁性層201の磁化方向を「初期磁化方向」と呼ぶ。尚、第1の磁性層201の初期磁化方向は、ハードバイアス、または、第1の磁性層201の形状磁気異方性などによって設定される。
ここで、図3(a)及び図3(c)に示す通り、歪検出素子200にX方向に歪が生じた場合、第1の磁性層201に、「逆磁歪効果」が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が相対的に変化する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化方向が、歪によって変化する現象である。例えば、磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合、磁化自由層の磁化の方向は、引張歪の方向に対しては平行に近づき、圧縮歪の方向に対しては垂直に近付く。一方、磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合、同磁化の方向は、引張歪の方向に対しては垂直に近付き、圧縮歪の方向に対しては平行に近付く。
図3に示す例において、歪検出素子200の第1の磁性層201には、正の磁歪定数を有する強磁性体が用いられている。従って、図3(a)に示す通り、第1の磁性層201の磁化方向は、引張歪の方向に対して平行に近付き、圧縮歪の方向に対して垂直に近付く。尚、第1の磁性層201の磁歪定数は、負であっても良い。
図3(d)は、歪検出素子200の電気抵抗と、歪検出素子200に生じた歪の大きさとの関係を示す概略的なグラフである。尚、図3(d)においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪とする。
図3(a)及び図3(c)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が相対的に変化すると、図3(d)に示す通り、「磁気抵抗効果(MR効果)」によって第1の磁性層201と第2の磁性層202との間の電気抵抗値が変化する。
MR効果は、磁性層同士の間で磁化方向が相対的に変化すると、これら磁性層間の電気抵抗が変化する現象である。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)
効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。
尚、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203が正の磁気抵抗効果を有する場合、第1の磁性層201と第2の磁性層202との相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。一方、負の磁気抵抗効果を有する場合、相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
歪検出素子200は、例えば正の磁気抵抗効果を有する。従って、図3(a)に示す様に、歪検出素子200に引張歪が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が135°から90°に近付いた場合、図3(d)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗は小さくなる。一方、図3(c)に示す様に、歪検出素子200に圧縮歪が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が135°から180°に近付いた場合、図3(d)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗は大きくなる。尚、歪検出素子200は、負の磁気抵抗効果を有していても良い。
ここで、図3(d)に示す通り、例えば微小歪をΔε1と、歪検出素子200に微小歪Δε1を加えた時の歪検出素子200における抵抗変化をΔr2とする。更に、単位歪あたりの電気抵抗値の変化量を、ゲージファクタ(GF: Gauge Factor)と呼ぶ。高感度な歪検出素子200を製造する場合、ゲージファクタを高くすることが望ましい。
次に、図4及び図5を参照して、歪検出素子200の動作をより詳しく説明する。図4は歪検出素子200の動作を説明するための模式的な斜視図、図5は歪検出素子200の動作を説明するための模式的な平面図である。
図4及び図5は、歪検出素子200が図3(c)に示した状態である時の磁化状態を模式的に示している。即ち、図4及び図5に示す状態では、第2の磁性層202が−Y方向に磁化されている。また、第1の磁性層201の大部分はY方向に磁化されているが、端部(4隅)における磁化方向が乱れている。
この磁化方向の乱れは、反磁界の発生に起因する。即ち、歪検出素子200の寸法が小さい場合、第1の磁性層201端部における磁極の影響によって第1の磁性層201(磁化自由層)の内部に反磁界が発生し、当該端部における磁化方向が乱れることがある。一方、第2の磁性層202は、後述するように、ピニング層などで磁化方向を一方向に固着することができ、ピニング層による固着を第2の磁性層202の内部に発生する反磁界よりも強く設定することができる。そのため、第2の磁性層202を第1の磁性層201よりも小さい面積としても磁化の乱れは生じない。
ここで、図3(d)を参照して説明した通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗値は、第1の磁性層201の磁化方向に応じて変化する。従って、磁化方向の乱れた部分が第2の磁性層202に対向していた場合、抵抗値から磁化方向の変化を好適に検出できず、ゲージファクタが低下してしまう場合がある。
しかしながら、図4及び図5に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、第2の磁性層202の上面が、第1の磁性層201の下面のうち、磁化方向の乱れていない中央部分付近のみと対向しており、第1の磁性層201の下面のうち、磁化方向の乱れやすい端部とは対向していない。従って、本実施の形態に係る歪検出素子200は、磁化方向の乱れていない第1の磁性層201下面の磁化方向に応じて好適に抵抗値を変化させ、小型化してもゲージファクタを損なわず、感度良く動作する。従って、高分解能且つ高感度な歪検出素子を提供する事が出来る。
尚、図4及び図5においては、第1の磁性層201の下面うち磁化方向の乱れた領域は、第2の磁性層202の上面と全く対向していない。しかしながら、例えば、磁化方向の乱れた領域の一部が第2の磁性層202の上面と対向していても良い。この場合においても、第1の磁性層201端部の磁化方向の乱れが歪検出素子200の抵抗値に与える影響は削減される。
また、例えば第2の磁性層202のX方向またはY方向の寸法は、第1の磁性層201のX方向またはY方向の寸法に比べて0.9倍以下とすることが好ましく、0.8倍以下とすることがさらに好ましい。また、第2の磁性層202のXY平面における面積は、第1の磁性層201のXY平面における面積に比べて0.81倍以下とすることが好ましく、0.64倍以下とすることがさらに好ましい。
次に、図6〜図9を参照して、歪検出素子200の他の構成例について説明する。図6〜図8は歪検出素子200の他の構成例を示す模式的な斜視図であり、図9は歪検出素子200の他の構成例を示す模式的な平面図である。尚、以下に示す各構成例に係る歪検出素子200及び図2に示す歪検出素子200は、お互いに組み合わせて使用する事も可能である。
図2に示す例においては、中間層203のXY平面における寸法が、第1の磁性層201のXY平面における寸法と略一致していた。しかしながら、図6(a)に示す通り、中間層203のXY平面における寸法は、第2の磁性層202のXY平面における寸法と略一致していても良い。この場合、即ち、中間層203に対向する第1の磁性層201の下面は、第1の磁性層201に対向する中間層203の上面と比較して広く形成される。
また、図2及び図6(a)に示す例において、歪検出素子200は、第2の磁性層202、中間層203及び第1の磁性層201が順に積層されて構成されていた。しかしながら、図6(b)及び図6(c)に示す通り、歪検出素子200は、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202が順に積層されて構成されていても良い。
また、図2及び図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示す例において、歪検出素子200は、第1の磁性層201の上方及び下方のいずれか一方に、中間層203を介して第2の磁性層202を積層して構成されていた。しかしながら、図6(d)及び図(e)に示す通り、第1の磁性層201の上方及び下方の双方に、中間層203を介して第2の磁性層202を積層して構成されていても良い。
また、図2及び図6に示す例において、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203の側面は、Z方向に対して略平行に形成されていた。しかしながら、例えば図7に示す通り、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203の側面を連続的な斜面として形成する事も可能である。この場合、図7(a)及び図7(b)に示す通り、歪検出素子200をテーパ状に形成する事も可能であるし、図7(c)及び図7(d)に示す通り、逆テーパ状に形成する事も可能である。このようなテーパ形状は素子加工時のエッチング工程の条件を適切に選択することによって、作製することができる。尚、図7(a)または図7(c)に示す歪検出素子200においては、例えば図7(b)または図7(d)に示す通り、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の最も大きい部分の寸法を測ることにより、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の寸法を確認しても良いし、例えば、第1の磁性層201の平均的な平面寸法と第2の磁性層202の平均的な平面寸法の差を比較してもよい。
また、図8(a)及び図8(b)に示す通り、第1の磁性層201と中間層203との間に、第3の磁性層251を介在させても良い。図8(a)及び図8(b)に示す例においては、第2の磁性層202、中間層203及び第3の磁性層251のXY平面における寸法が略一致しており、これらは第1の磁性層201のXY平面における寸法よりも小さい。第3の磁性層251は強磁性体からなり、第1の磁性層201と共に磁化自由層として機能する。即ち、第3の磁性層251は第1の磁性層201と磁気結合し、第3の磁性層251の磁化方向は第1の磁性層201の中心部分付近の磁化方向と一致する。図8(a)及び図8(b)に示すような構造を用いた場合、後述するように、磁化固定層/中間層/磁化自由層の積層構造の中で、MR効果に寄与の大きい中間層近傍の積層構造を真空中一貫成膜で製造することが可能なため、高いMR変化率を得る観点において製造上好ましい。ここで、第3の磁性層251は第2の磁性層202と同様に第1の磁性層201よりも小さい素子寸法とされているが、相対的に寸法が大きく磁化の乱れの少ない第1の磁性層201の中央領域と接続して磁気結合しているため、第3の磁性層251の磁化の乱れも少なくすることができる。よって、本実施形態の効果を得ることができる。
また、図9(a)に示す通り、第1の磁性層201の重心と第2の磁性層202の重心とは、XY平面内において重ねても良い。また、図9(a)に示す通り、第2の磁性層202は、XY平面内において第1の磁性層201の内部に収めても良い。このような態様は、前述したとおり、第1の磁性層201と第2の磁性層202が重なる領域に含まれる第1の磁性層201の端部における磁化の乱れた領域を減らす観点で好ましく、ひいては高ゲージファクタを得る観点で好ましい。
ただし、図9(b)に示す通り、第1の磁性層201の重心と第2の磁性層202の重心とXY平面内においてずらしても良い。また、図9(b)に示す通り、第2の磁性層202は、XY平面内において第1の磁性層201からはみ出していても良い。このような態様においても、前述したとおり、第1の磁性層201と第2の磁性層202が重なる領域に含まれる第1の磁性層201の端部における磁化の乱れた領域を減らす効果は得ることができる。
また、図9(a)及び図9(b)に示す通り、第1の磁性層201のXY平面における形状は略正方形としても良いし、図9(c)及び図9(d)に示す通り、X方向の寸法及びY方向の寸法に差を有する略長方形状とし、形状磁気異方性を持たせても良い。同様に、図9(a)及び図9(c)に示す通り、第2の磁性層202のXY平面における形状は略正方形としても良いし、図9(b)及び図9(d)に示す通り、X方向の寸法及びY方向の寸法に差を有する略長方形状とし、形状磁気異方性を持たせても良い。
第1の磁性層201及び第2の磁性層202の少なくとも一方がXY平面において略長方形状に形成された場合、長軸方向が磁化容易方向となる。従って、例えばハードバイアスを用いることなく第1の磁性層201の初期磁化方向を設定する事が可能となり、歪検出素子200の製造コストを削減する事が出来る。
また、図9(e)及び図9(f)に示す通り、第1の磁性層201のXY平面における形状は略円状としても良いし、図9(g)に示す通り、長円状(楕円状)とし、形状磁気異方性を持たせても良い。また、図9(f)に示す通り、第2の磁性層202のXY平面における形状は略円状としても良い。更に、図9(e),図9(f)及び図9(g)に示す通り、これら第1の磁性層201及び第2の磁性層202は、適宜組み合わせて使用する事が出来る。第1の磁性層201および第2の磁性層202の平面形状は任意である。
次に、図10〜図17を参照して、本実施の形態に係る歪検出素子200の構成例について説明する。尚、以下において、「材料A/材料B」の記載は、材料Aの層の上に、材料Bの層が設けられている状態を示す。
図10は、歪検出素子200の一の構成例200Aを示す模式的な斜視図である。図10に示す通り、歪検出素子200Aは、下部電極204と、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図10に示す歪検出素子200Aの第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状は、図2に示す構造と同様である。図10に示す歪検出素子200Aにおいても、図6(a)、図7(c)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
下部電極204及び上部電極212には、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)の少なくともいずれかが用いられる。第1電極及び第2電極として、このような電気抵抗が比較的小さい材料を用いることで、歪検出素子200Aに効率的に電流を流すことができる。下部電極204及び上部電極212には、非磁性材料を用いることができる。
下部電極204及び上部電極212は、例えば、下部電極204及び上部電極212用の下地層(図示せず)と、下部電極204及び上部電極212用のキャップ層(図示せず)と、それらの間に設けられた、Al、Al−Cu、Cu、Ag、及び、Auの少なくともいずれかの層と、を含んでもよい。例えば、下部電極204及び上部電極212には、タンタル(Ta)/銅(Cu)/タンタル(Ta)などが用いられる。下部電極204及び上部電極212の下地層としてTaを用いることで、例えば、基板210と下部電極204及び上部電極212との密着性が向上する。下部電極204及び上部電極212用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
下部電極204及び上部電極212のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下の銅(Cu)などの酸化を防ぐことができる。下部電極204及び上部電極212用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
下地層205には、例えば、バッファ層(図示せず)と、シード層(図示せず)と、を含む積層構造を用いることができる。このバッファ層は、例えば、下部電極204や膜部120等の表面の荒れを緩和し、このバッファ層の上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層として、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。バッファ層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。
下地層205のうちのバッファ層の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましい。バッファ層の厚さは、1nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎると、バッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎると、歪検出素子200の厚さが過度に厚くなる。バッファ層の上にシード層が形成され、そのシード層がバッファ効果を有することができる。この場合、バッファ層は省略してもよい。バッファ層には、例えば、3nmの厚さのTa層が用いられる。
下地層205のうちのシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶配向を制御する。このシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶粒径を制御する。このシード層として、fcc構造(face-centered cubic structure:面心立方格子構造)、h
cp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body-centered cubic structure:体心立方格子構造)の金属等が用いられる。
下地層205のうちのシード層として、hcp構造のルテニウム(Ru)、または、fcc構造のNiFe、または、fcc構造のCuを用いることにより、例えば、シード層の上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。シード層には、例えば、2nmの厚さのCu層、または、2nmの厚さのRu層が用いられる。シード層の上に形成される層の結晶配向性を高める場合には、シード層の厚さは、1nm以上5nm以下が好ましい。シード層の厚さは、1nm以上3nm以下がより好ましい。これにより、結晶配向を向上させるシード層としての機能が十分に発揮される。
一方、例えば、シード層の上に形成される層を結晶配向させる必要がない場合(例えば、アモルファスの磁化自由層を形成する場合など)には、シード層は省略してもよい。シード層としては、例えば、2nmの厚さのCu層が用いられる。
ピニング層206は、例えば、ピニング層206の上に形成される第2磁化固定層207(強磁性層)に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して、第2磁化
固定層207の磁化を固定する。ピニング層206には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層206には、例えば、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Ru−Mn、Rh−Mn、Ru−Rh−Mn、Fe−Mn、Ni−Mn、Cr−Mn−PtおよびNi−Oよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Ru−Mn、Rh−Mn、Ru−Rh−Mn、Fe−Mn、Ni−Mn、Cr−Mn−PtおよびNi−Oにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層206の厚さは適切に設定される。
ピニング層206に接する強磁性層の磁化の固定を行うためには、磁場印加中での熱処理が行われる。熱処理時に印加されている磁場の方向にピニング層206に接する強磁性層の磁化が固定される。アニール温度は、例えば、ピニング層206に用いられる反強磁性材料の磁化固着温度以上とする。また、Mnを含む反強磁性層を用いる場合、ピニング層206以外の層にMnが拡散してMR変化率を低減する場合がある。よってMnの拡散が起こる温度以下に設定することが望ましい。例えば200度(℃)以上、500度(℃)以下とすることができる。好ましくは、250度(℃)以上、400度(℃)以下とすることができる。
ピニング層206として、PtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、ピニング層206の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。ピニング層206の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層206としてIrMnを用いる場合には、ピニング層206としてPtMnを用いる場合よりも薄い厚さで、一方向異方性を付与することができる。この場合には、ピニング層206の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。ピニング層206の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
ピニング層206として、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層として、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。例えば、CoPt(Coの比率は、50%以上85%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは、50at.%以上85at.%以下であり、yは、0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は、40at.%以上60at.%以下)などを用いてもよい。
第2磁化固定層207には、例えば、CoxFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層207として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層207として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。第2磁化固定層207として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0%以上30%以下)を用いることもできる。第2磁化固定層207として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、歪検出素子のサイズが小さい場合にも、歪検出素子200Aの特性のばらつきを抑えることができる。
第2磁化固定層207の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、ピニング層206による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層207の上に形成される磁気結合層を介して、第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間の反強磁性結合磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層207の磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第1磁化固定層209の磁気膜厚と、実質的に等しいことが好ましい。
薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)である。例えば、第1磁化固定層209として、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いると、第1磁化固定層209の磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。一方、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2磁化固定層207の厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2磁化固定層207には、約2.7nmの厚さのCo75Fe25層を用いることが好ましい。第2磁化固定層207として、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
歪検出素子200Aにおいては、第2磁化固定層207と磁気結合層208と第1磁化固定層209とにより、シンセティックピン構造が用いられている。その代わりに、1層の磁化固定層からなるシングルピン構造を用いても良い。シングルピン構造を用いる場合には、磁化固定層として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、上述した第2磁化固定層207の材料と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層208は、第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間において、反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層208は、シンセティックピン構造を形成する。磁気結合層208として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層208の厚さは、例えば、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層208としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層208の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm
以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層208の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層208として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層209に用いられる磁性層は、MR効果に直接的に寄与する。第1磁化固定層209として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層209として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0%以上100%以下であり、yは、0%以上30%以下)を用いることもできる。第1磁化固定層209として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いた場合には、例えば、歪検出素子200のサイズが小さい場合においても、結晶粒に起因した素子間のばらつきを抑えることができる。
第1磁化固定層209の上に形成される層(例えばトンネル絶縁層(図示せず))を平坦化することができる。トンネル絶縁層の平坦化により、トンネル絶縁層の欠陥密度を減らすことができる。これにより、より低い面積抵抗で、より大きいMR変化率が得られる。例えば、トンネル絶縁層の材料としてMgOを用いる場合には、第1磁化固定層209として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、トンネル絶縁層の上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性をより高くすることで、より大きいMR変化率が得られる。(CoxFe100−x)100−yBy合金は、アニール時にMgO層の(100)面をテンプレートとして結晶化する。このため、MgOと(CoxFe100−x)100−yBy合金との良好な結晶整合が得られる。良好な結晶整合を得ることで、より大きいMR変化率が得られる。
第1磁化固定層209として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いてもよい。
第1磁化固定層209がより厚いと、より大きなMR変化率が得られる。より大きな固定磁界を得るためには、第1磁化固定層209は、薄いほうが好ましい。MR変化率と固定磁界との間には、第1磁化固定層209の厚さにおいてトレードオフの関係が存在する。第1磁化固定層209としてCo−Fe−B合金を用いる場合には、第1磁化固定層209の厚さは、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第1磁化固定層209の厚さは、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
第1磁化固定層209には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層209として、bcc構造のFeCo合金材料、50%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50%以上のNi組成の材料(Ni合金)を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。
第1磁化固定層209として、例えば、Co2MnGe、Co2FeGe、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGa0.5Ge0.5、及び、Co2FeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層209として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層203は、例えば、第1の磁性層201と第2の磁性層202との磁気的な結合を分断する。中間層203には、例えば、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層203として金属を用いる場合、中間層の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、亜鉛酸化物(ZnO等)、または、ガリウム酸化物(Ga−O)などが用いられる。中間層203として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層203の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。中間層203として、例えば、CCP(Current-Confined-Path)スペーサ層を用い
てもよい。スペーサ層としてCCPスペーサ層を用いる場合には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の絶縁層中に銅(Cu)メタルパスが形成された構造が用いられる。例えば、中間層として、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。
磁化自由層210には、強磁性体材料が用いられる。磁化自由層210には、例えば、Fe、Co、Niを含む強磁性体材料を用いることができる。磁化自由層210の材料として、例えばFeCo合金、NiFe合金等が用いられる。さらに、磁化自由層210には、Co−Fe−B合金、Fe−Co−Si−B合金、λs(磁歪定数)が大きいFe−Ga合金、Fe−Co−Ga合金、Tb−M−Fe合金、Tb−M1−Fe−M2合金、Fe−M3−M4−B合金、Ni、Fe−Al、または、フェライト等が用いられる。前述したTb−M−Fe合金において、Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したTb−M1−Fe−M2合金において、M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。M2は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したFe−M3−M4−B合金において、M3は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。M4は、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したフェライトとしては、Fe3O4、(FeCo)3O4などが挙げられる。磁化自由層210の厚さは、例えば2nm以上である。
磁化自由層210には、ホウ素を含有した磁性材料が用いられてよい。磁化自由層210には、例えば、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金が用いられてもよい。例えば、Co−Fe−B合金やFe−B合金を用いることができる。例えば、Co40Fe40B20合金を用いることができる。磁化自由層210に、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金を用いる場合、高磁歪を促進する元素として、Ga、Al、Si、または、Wなどを添加してもよい。例えば、Fe−Ga−B合金、Fe−Co−Ga−B合金、または、Fe−Co−Si−B合金を用いてもよい。このようなホウ素を含有する磁性材料を用いることで磁化自由層210の保磁力(Hc)が低くなり、歪に対する磁化方向の変化が容易となる。これにより、高い歪感度を得ることができる。
磁化自由層210におけるホウ素濃度(例えば、ホウ素の組成比)は、5at.%(原子パーセント)以上が好ましい。これにより、アモルファス構造が得易くなる。磁化自由層におけるホウ素濃度は、35at.%以下が好ましい。ホウ素濃度が高すぎると、例えば、磁歪定数が減少する。磁化自由層におけるホウ素濃度は、例えば、5at.%以上35at.%以下が好ましく、10at.%以上30at.%以下がさらに好ましい。
磁化自由層210の磁性層の一部に、Fe1−yBy(0<y≦0.3)、または(FeaX1−a)1−yBy(X=CoまたはNi、0.8≦a<1、0<y≦0.3)用いる場合、大きい磁歪定数λと低い保磁力を両立することが容易となるため、高いゲージファクタを得る観点で特に好ましい。例えば、磁化自由層210として、Fe80B20(4nm)を用いることができる。磁化自由層として、Co40Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)を用いることができる。
磁化自由層210は、多層構造を有してもよい。中間層203としてMgOのトンネル絶縁層を用いる場合には、磁化自由層210のうちの中間層203に接する部分には、Co−Fe−B合金の層を設けることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗効果が得られる。この場合、中間層203の上には、Co−Fe−B合金の層が設けられ、そのCo−Fe−B合金の層の上には、磁歪定数の大きい他の磁性材料が設けられる。磁化自由層210が多層構造を有する場合、磁化自由層210には、例えば、Co−Fe−B(2nm)/Fe−Co−Si−B(4nm)などが用いられる。
キャップ層211は、キャップ層211の下に設けられる層を保護する。キャップ層211には、例えば、複数の金属層が用いられる。キャップ層211には、例えば、Ta層とRu層との2層構造(Ta/Ru)が用いられる。このTa層の厚さは、例えば1nmであり、このRu層の厚さは、例えば5nmである。キャップ層211として、Ta層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層211の構成は、任意である。例えば、キャップ層211として、非磁性材料を用いることができる。キャップ層211の下に設けられる層を保護可能なものであれば、キャップ層211として、他の材料を用いても良い。
磁化自由層210にホウ素を含有する磁性材料を用いる場合、ホウ素の拡散を防ぐために、図示しない酸化物材料や窒化物材料の拡散防止層を磁化自由層210とキャップ層211との間に設けても良い。酸化物層または窒化物層からなる拡散防止層を用いることにより、磁化自由層210に含まれるホウ素の拡散を抑制し、磁化自由層210のアモルファス構造を保つことができる。拡散防止層に用いる酸化物材料や窒化物材料として、具体的には、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Sn、Cd、Gaなどの元素を含む酸化物材料や窒化物材料を用いることができる。ここで、拡散防止層は、磁気抵抗効果には寄与しない層のため、その面積抵抗は低いほうが好ましい。例えば、拡散防止層の面積抵抗は、磁気抵抗効果に寄与する中間層の面積抵抗よりも低く設定することが好ましい。拡散防止層の面積抵抗を下げる観点では、バリアハイトの低いMg、Ti、V、Zn、Sn、Cd、Gaの酸化物または窒化物が好ましい。ホウ素の拡散を抑制する機能としては、より化学結合の強い酸化物のほうが好ましい。例えば、1.5nmのMgOを用いることができる。また、酸窒化物は酸化物か窒化物のいずれかと見なすことができる。
拡散防止層に酸化物材料、窒化物材料を用いる場合、拡散防止層の膜厚は、ホウ素の拡散防止機能を十分に発揮する観点で0.5nm以上が好ましく、面積抵抗を低くする観点で5nm以下が好ましい。つまり、拡散防止層の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、1nm以上3nm以下が好ましい。
拡散防止層として、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくともいずれかを用いることができる。拡散防止層として、これらの軽元素を含む材料を用いることができる。これらの軽元素は、ホウ素と結合して化合物を生成する。拡散防止層と磁化自由層210との界面を含む部分に、例えば、Mg−B化合物、Al−B化合物、及び、Si−B化合物の少なくともいずれかが形成される。これらの化合物が、ホウ素の拡散を抑制する。
拡散防止層と磁化自由層210との間に他の金属層などが挿入されていてもよい。ただし、拡散防止層と磁化自由層210との距離が離れすぎていると、その間でホウ素が拡散して磁化自由層210中のホウ素濃度が下がってしまうため、拡散防止層と磁化自由層210との間の距離は、10nm以下が好ましく3nm以下がさらに好ましい。
図11は、歪検出素子200の他の構成例200Bを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Bは、歪検出素子200Aと異なり、中間層203と第1の磁性層201との間に、第3の磁性層251を有してなる。即ち、図11に示す通り、歪検出素子200Bは、下部電極204と、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)と、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。第2磁化自由層241は、第3の磁性層251に相当する。第1磁化自由層242は、第1の磁性層201に相当する。また、図11に示す歪検出素子200Bの第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)の平面形状は、図8(a)に示す構造と同様である。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第2磁化自由層241には、例えば、1.5nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。第1磁化自由層242には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
図11に示す歪検出素子200Bにおいては、第2磁化自由層241の平面寸法が、第1磁化固定層209と同様である。ここで、第2磁化自由層241は第1磁化自由層242と磁気結合し、磁化自由層として機能させることができる。ここで、第2磁化自由層241は第1磁化固定層209と同様に第1磁化自由層242よりも小さい素子寸法とされているが、相対的に寸法が大きく磁化の乱れの少ない第1の磁性層242の中央領域と接続して磁気結合しているため、第2磁化自由層241の磁化の乱れも少なくすることができる。よって、本実施形態の効果を得ることができる。図11に示す歪検出素子200Bを用いた場合、後述するように、磁化固定層/中間層/磁化自由層の積層構造の中で、MR効果に寄与の大きい中間層203近傍の積層構造を真空中で一貫して製造することが可能なため、高いMR変化率を得る観点において好ましい。
ここで、第2磁化自由層241に用いる材料は、前述した磁化自由層210(図10)に用いる材料と同様のものを用いることができる。第2磁化自由層241の膜厚は、厚くしすぎると、第1磁化自由層242との磁気結合による磁化の乱れの低減効果が弱まるため、4nm以下とすることが好ましく、2nm以下とすることがさらに好ましい。また、第1磁化自由層242に用いる材料は、前述した磁化自由層210(図10)に用いる材料と同様のものを用いることができる。その他の各層の材料は、歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図12は、歪検出素子200Aの構成例を示す模式的な斜視図である。図12に例示したように、歪検出素子200Aは、下部電極204と上部電極212との間に充填された絶縁層(絶縁部分)213を備えていても良い。
絶縁層213には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層213により、歪検出素子200Aのリーク電流を抑制することができる。
図13は、歪検出素子200Aの他の構成例を示す模式的な斜視図である。図13に例示したように、歪検出素子200Aは、下部電極204と上部電極212との間に、互いに離間して設けられた2つのハードバイアス層(ハードバイアス部分)214と、下部電極204、上部電極212及びハードバイアス層214の間に充填された絶縁層213を備えていても良い。
ハードバイアス層214は、ハードバイアス層214の磁化により、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定する。ハードバイアス層214により、外部からの圧力が膜部に印加されていない状態において、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定できる。
ハードバイアス層214には、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)などが用いられてもよい。このような材料を用いる場合、ハードバイアス層214の磁化の方向は、ハードバイアス層214の保磁力よりも大きい外部磁界を加えることで、外部磁界を加えた方向に設定(固定)することができる。ハードバイアス層214の厚さ(例えば、下部電極204から上部電極に向かう方向に沿った長さ)は、例えば5nm以上50nm以下である。
下部電極204と上部電極212の間に絶縁層213を配置する場合、絶縁層213の材料として、SiOxやAlOxを用いることができる。さらに、絶縁層213とハードバイアス層214の間に、図示しない下地層を設けてもよい。ハードバイアス層214にCo−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料を用いる場合には、ハードバイアス層214用の下地層の材料として、CrやFe−Coなどを用いることができる。上記のハードバイアス層214は、後述するいずれの歪検出素子にも適用できる。
ハードバイアス層214は、図示しないハードバイアス層用ピニング層に積層された構造を有していてもよい。この場合、ハードバイアス層214とハードバイアス層用ピニング層の交換結合により、ハードバイアス層214の磁化の方向を設定(固定)できる。この場合、ハードバイアス層214には、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、これらの少なくとも1種を含む合金からなる強磁性材料を用いることができる。この場合、ハードバイアス層214には、例えば、CoxFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いることができる。ハードバイアス層214として、前述した第1磁化固定層209と同様の材料を用いることができる。また、ハードバイアス層用ピニング層には、前述した歪検出素子200A中のピニング層206と同様の材料を用いることができる。また、ハードバイアス層用ピニング層を設ける場合、下地層205に用いる材料と同様の下地層をハードバイアス層用ピニング層の下に設けても良い。また、ハードバイアス層用ピニング層は、ハードバイアス層の下部に設けても良いし、上部に設けても良い。この場合のハードバイアス層214の磁化方向は、ピニング層206と同様に、磁界中熱処理により決定することができる。
上記のハードバイアス層214及び絶縁層213は、本実施の形態に記載する歪検出素子200Aのいずれにも適用できる。また、上述したようなハードバイアス層214とハードバイアス層用ピニング層の積層構造を用いた場合、瞬間的に大きい外部磁界がハードバイアス層214に加わった場合においても、ハードバイアス層214の磁化の向きを容易に保持することが出来る。
図14は、歪検出素子200の他の構成例200Cを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Cは、歪検出素子200Aと異なり、トップスピンバルブ型の構造を有している。即ち、図14に示す通り、歪検出素子200Cは、下部電極204と、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図14に示す歪検出素子200Cの第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状は、図6(c)に示す構造と同様である。図14に示す歪検出素子200Cにおいても、図6(b)、図7(a)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、図8(b)に示す様な第3の磁性層251を加えた構造を用いても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Cuが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このCu層の厚さは、例えば、5nmである。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
前述したボトムスピンバルブ型の歪検出素子200Aにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも下(−Z軸方向)に形成されている。これに対し、トップスピンバルブ型の歪検出素子200Cにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも上(+Z軸方向)に形成されている。従って、歪検出素子200Cに含まれる各層の材料は、歪検出素子200Aに含まれる各層の材料を上下反転させて用いることができる。また、上述した拡散防止層を、歪検出素子200Cの下地層205と磁化自由層210の間に設けることができる。
図15は、歪検出素子200の他の構成例200Dを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Dは、単一の磁化固定層を用いたシングルピン構造が適用されている。即ち、図15に示す通り、歪検出素子200Dは、下部電極204と、下地層205と、ピニング層206と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図15に示す歪検出素子200Dの第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状は、図2に示す構造と同様である。図15に示す歪検出素子200Dにおいても、図6(a)、図7(c)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、図8(a)に示す様な第3の磁性層251を加えた構造を用いても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Dの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
図16は、歪検出素子200の他の構成例200Eを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Eにおいては、第2の磁性層202を磁化固定層ではなく参照層252として機能させる。即ち、図16に示す通り、歪検出素子200Eは、下部電極204と、下地層205と、参照層252(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図16に示す歪検出素子200Eの参照層252(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状は、図2に示す構造と同様である。図16に示す歪検出素子200Eにおいても、図6(a)、図7(c)に示す参照層252(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、図8(a)に示す様な第3の磁性層251を加えた構造を用いても良い。
下地層205には、例えば、Crが用いられる。このCr層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、5nmである。参照層252には、例えば、10nmの厚さのCo80Pt20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
ここで、参照層252に用いる材料は、磁化自由層210に用いる材料に対して、同一の歪に対する磁化方向の変化の態様が異なる様に選定することができる。例えば、参照層252は磁化自由層210に比べて歪に対する磁化の変化が起こりにくい材料を用いることができる。
参照層252には、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。磁気異方性の高いハード磁性材料を用いることで、磁化自由層に比べて歪に対する磁化の変化が起こりにくい、もしくは殆ど起こらない参照層を得ることができる。例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)などが用いられてもよい。このような材料を用いる場合、参照層252の磁化の方向は、参照層252の保磁力よりも大きい外部磁界を加えることで、外部磁界を加えた方向に設定(固定)することができる。参照層252の厚さ(例えば、下部電極から上部電極に向かう方向に沿った長さ)は、例えば5nm以上50nm以下である。
例えば、参照層は、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、これらの少なくとも1種を含む合金からなる強磁性材料を用いることができる。この場合、参照層には、磁歪定数の低い強磁性材料を用いることができる。磁歪定数の低い強磁性材料を用いることで、磁気異方性があまり高い材料でなくとも、磁化自由層に比べて歪に対する磁化の変化が起こりにくい、もしくは殆ど起こらない参照層を得ることができる。
歪検出素子200Eのその他の各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
図17は、歪検出素子200の他の構成例200Fを示す模式的な斜視図である。図17に示す通り、歪検出素子200Fにおいては、第1の磁性層201の上下に、中間層203を介して第2の磁性層202が形成されている。即ち、図17に示す通り、歪検出素子200Fは、下部電極204と、下地層205と、下部ピニング層221と、下部第2磁化固定層222と、下部磁気結合層223と、下部第1磁化固定層224と、下部中間層225と、磁化自由層226と、上部中間層227と、上部第1磁化固定層228と、上部磁気結合層229と、上部第2磁化固定層230と、上部ピニング層231と、キャップ層211と、上部電極212とを順に積層してなる。下部第1磁化固定層224及び上部第1磁化固定層228は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層226は、第1の磁性層201に相当する。また、図17に示す歪検出素子200Fの下部第1磁化固定層224(第2の磁性層202)と、下部中間層225(中間層203)と、磁化自由層226(第1の磁性層201)と、上部中間層227(中間層203)と、上部第1磁化固定層228(第2の磁性層202)の平面形状は、図6(d)及び図6(e)に示す構造を組み合わせたものである。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。下部ピニング層221には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。下部第2磁化固定層222には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。下部磁気結合層223には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。下部第1磁化固定層224には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。下部中間層225には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層226には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。上部中間層227には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。上部第1磁化固定層228には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。上部磁気結合層229には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。上部第2磁化固定層230には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。上部ピニング層231には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Fの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
次に、図18及び図19を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の製造方法について説明する。図18及び図19は、例えば図10に示す歪検出素子200Aを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
歪検出素子200の製造に際しては、例えば図18(a)に示す通り、基板110上に膜部120や、図示しない配線等を形成する事が出来る。次に、図18(b)に示す通り、膜部120上に絶縁層125及び下部電極204を形成する。例えば、絶縁層125として、SiOx(80nm)を形成する。例えば、下部電極204として、Ta(5nm)/Cu(200nm)/Ta(35nm)を形成する。この後に、下部電極204の最表面にCMP処理などの表面平滑化処理を行い、下部電極上に形成される構成を平坦にしても良い。ここで、膜部120の最表面が絶縁性を有する材料で構成されている場合には、絶縁層125の形成は必ずしも必要ではない。また、基板110自体を最終的に変形可能とする場合、基板110と別に膜部120を必ずしも設けなくともよい。
次に、図18(c)に示すように、下部電極204の平面形状を加工する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。さらに、下部電極204の周辺に絶縁層126の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層126を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層126として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図18(d)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209と、中間キャップ層260とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Ru(2nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に第2磁化固定層207/磁気結合層208/第1磁化固定層209として、Co75Fe25(2.5nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(8nm)を形成する。さらに中間キャップ層260として、MgO(3nm)を形成する。ここで、中間キャップ層260と第1磁化固定層209の一部は後に説明する工程で除去される。
次に、図18(e)に示す通り、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、キャップ層260とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図18(f)に示すように、積層体の最表面の中間キャップ層260と第1磁化固定層209の一部、および絶縁層213の一部を除去する。この除去工程には、物理ミリングなどが実施される。例えば、ArイオンミリングやArプラズマを用いた基板バイアス処理を実施する。図18(f)に示す工程を、後に形成される磁化自由層210(第1の磁性層201)を含む積層体を成膜する装置内で行うことによって、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の最表面を清浄な状態として、真空中にて中間層の形成に移ることができる。例えば、中間キャップ層260のMgO(3nm)を完全に除去し、第1磁化固定層209のCo40Fe40B20(8nm)のうち5nmを除去した後、第1磁化固定層209としてCo40Fe40B20(3nm)を形成する。
次に、図18(g)に示す通り、第1磁化固定層209上に、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に、磁化自由層210として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。尚、磁化自由層210とキャップ層211の間には、図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図18(h)に示す通り、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。ここで、磁化自由層210(第1の磁性層201)を含む積層体の平面寸法を、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を含む積層体の平面寸法よりも大きく加工する。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図18(d)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
次に、図18(i)に示す通り、絶縁層213中にハードバイアス層214を埋め込む。例えば、ハードバイアス層214を埋め込むためのホールを絶縁層213に形成する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。この工程において、ホールの形成は周辺の絶縁層213を貫通するところまで行っても良いし、途中で止めても良い。図18(i)ではホールの形成を途中で止めて、絶縁層213を貫通させない場合を例示している。ホールを、絶縁層213を貫通するところまでエッチングした場合には、図18(i)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程において、ハードバイアス層214の下に図示しない絶縁層を成膜する必要がある。
次に、形成したホールにハードバイアス層214を埋め込む。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面にハードバイアス層214を成膜し、その後レジストパターンを除去する。ここでは、例えば、ハードバイアス層用下地層として、Cr(5nm)を形成し、その上にハードバイアス層214として、例えば、Co80Pt20(20nm)を形成する。その上に、さらに図示しないキャップ層を形成しても良い。このキャップ層として、歪検出素子200Aのキャップ層に使用可能な材料として上述した材料を用いても良いし、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。
次に、室温で外部磁界を加えて、ハードバイアス層214に含まれるハード磁性材料の磁化方向の設定を行う。この外部磁界によるハードバイアス層214の磁化方向の設定は、ハードバイアス層214の埋め込み後であれば、どのタイミングで行ってもよい。
尚、図18(i)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程は、図18(h)に示す絶縁層213の埋め込み工程で同時に行ってもよい。また、図18(h)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程は必ずしも行わなくともよい。
次に、図19(j)に示す通り、キャップ層211上に、上部電極212を積層する。次に、図19(k)に示す通り、上部電極212を、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが行われる。
次に、図19(l)に示す通り、上部電極212及びハードバイアス214を覆う保護層215を成膜する。例えば、保護層215として、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。尚、保護層215は必ずしも設けなくともよい。
尚、図18(a)〜図19(l)では図示していないが、下部電極204や上部電極212へのコンタクトホールの形成を行っても良い。
次に、図20及び図21を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図20及び図21は、例えば図11に示す歪検出素子200Bを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)〜図18(c)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図20(a)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)と、中間キャップ層260とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Ru(2nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に第2磁化固定層207/磁気結合層208/第1磁化固定層209として、Co75Fe25(2.5nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(3nm)を形成する。その上に中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に、さらに中間キャップ層260として、MgO(3nm)を形成する。ここで、中間キャップ層260と第2磁化自由層241の一部は後に説明する工程で除去される。
次に、図20(b)に示す通り、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)と、キャップ層260とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図20(c)に示すように、積層体の最表面の中間キャップ層260と第2磁化自由層241の一部、および絶縁層213の一部を除去する。この除去工程には、物理ミリングなどが実施される。例えば、ArイオンミリングやArプラズマを用いた基板バイアス処理を実施する。図20(c)に示す工程を、後に形成される第1磁化自由層242(第1の磁性層201)を含む積層体を成膜する装置内で行うことによって、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の最表面を清浄な状態として、真空中にて中間層の形成に移ることができる。例えば、中間キャップ層260のMgO(3nm)を完全に除去し、第2磁化自由層241のCo40Fe40B20(4nm)のうち3nmを除去した後、第2磁化自由層241としてCo40Fe40B20(1nm)を形成する。
次に、図20(d)に示す通り、第2磁化自由層241上に、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。尚、磁化自由層210とキャップ層211の間には、図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図20(e)に示す通り、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。ここで、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)を含む積層体の平面寸法を、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を含む積層体の平面寸法よりも大きく加工する。
次に、第1磁化自由層242を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図20(a)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
以下、図20(f)及び図21に示す通り、図18(i)及び図19を参照して説明した工程とほぼ同様の工程によって、図11に示した歪検出素子200Bを製造する事が可能である。このような製造方法を用いた場合、図20(a)を参照して説明した工程においては、MR効果に重要な影響を与える中間層203近傍の積層構造(第1磁化固定層209、中間層203及び第2磁化自由層241)を真空中で一貫して成膜できるため、高いMR変化率を得る観点から好ましい。
次に、図22及び図23を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図22及び図23は、例えば図14に示す歪検出素子200Cを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)〜図18(c)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図22(a)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間キャップ層260とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Cu(5nm)を形成する。その上に磁化自由層210として、Co40Fe40B20(8nm)を形成する。その上に、さらに中間キャップ層260として、MgO(3nm)を形成する。ここで、中間キャップ層260と磁化自由層210の一部は後に説明する工程で除去される。ここで、磁化自由層210と下地層205の間に図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図22(b)に示す通り、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間キャップ層260とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図22(c)に示すように、積層体の最表面の中間キャップ層260と磁化自由層210の一部、および絶縁層213の一部を除去する。この除去工程には、物理ミリングなどが実施される。例えば、ArイオンミリングやArプラズマを用いた基板バイアス処理を実施する。図22(c)に示す工程を、後に形成される中間層203と第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を含む積層体を成膜する装置内で行うことによって、磁化自由層210の最表面を清浄な状態として、真空中にて中間層の形成に移ることができる。例えば、中間キャップ層260のMgO(3nm)を完全に除去し、磁化自由層210のCo40Fe40B20(8nm)のうち4nmを除去することで、磁化自由層210としてCo40Fe40B20(4nm)を形成する。
次に、図22(d)に示す通り、磁化自由層210上に、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に第1磁化固定層209(第2の磁性層202)磁気結合層208/第2磁化固定層207として、Co40Fe40B20(2nm)/Fe50Co50(1nm)/Ru(0.9nm)/Co75Fe25(2.5nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。
次に、図22(e)に示す通り、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。ここで、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を含む積層体の平面寸法を、磁化自由層210(第1の磁性層201)を含む積層体の平面寸法よりも小さく加工する。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図22(d)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
以下、図22(f)及び図23に示す通り、図18(i)及び図19を参照して説明した工程とほぼ同様の工程によって、図14に示した歪検出素子200Cを製造する事が可能である。
次に、図24を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図24は、図22及び図23を参照して説明した製造方法と同様、例えば図14に示す歪検出素子200Cを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)〜図18(c)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図24(a)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Cu(5nm)を形成する。その上に磁化自由層210として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に第1磁化固定層209(第2の磁性層202)/磁気結合層208/第2磁化固定層207として、Co40Fe40B20(2nm)/Fe50Co50(1nm)/Ru(0.9nm)/Co75Fe25(2.5nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。ここで、磁化自由層210と下地層205の間に図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図24(b)に示すように、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。この工程では、中間層203または磁化自由層210の一部まででエッチング工程を止めることによって、磁化自由層210の平面形状が全て加工されない状態とする。
次に、図24(c)に示すように、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、上記工程において埋め込んだ絶縁層213とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程では、下地層205までエッチングを行い、磁化自由層210の平面形状が第1磁化固定層209の寸法よりも大きい状態とする。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図24(a)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
以下、図24(d)〜図24(g)に示す通り、図18(i)及び図19を参照して説明した工程とほぼ同様の工程によって、図14に示した歪検出素子200Cを製造する事が可能である。このような製造方法を用いた場合、図24(a)を参照して説明した工程においては、MR効果に重要な影響を与える中間層203近傍の積層構造(磁化自由層210、中間層203及び第1磁化固定層209)を真空中で一貫して成膜できるため、高いMR変化率を得る観点から好ましい。
[2.第2の実施の形態]
次に、図25を参照して、第2の実施の形態に係る歪検出素子200の構成を説明する。図25は、第2の実施の形態に係る歪検出素子200の構成を示す模式的な斜視図である。尚、本実施の形態に係る歪検出素子200も、図1に示す圧力センサに搭載する事が可能である。
図25に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第2の磁性層202を複数有している。換言すれば、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202の接合を複数有する。従って、これら複数の接合を電気的に直列または並列に接続することにより、シグナルノイズ比(signal-noise ratio:SNR、SN比)を向上させることができる。
即ち、図25に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の磁性層201、複数の第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に設けられた中間層203を有する。本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の実施の形態に係る歪検出素子200と同様に、逆磁歪効果及びMR効果を利用して歪検出素子200に生じた歪を検出する事が出来る。
本実施の形態において、第1の磁性層201は強磁性体からなり、例えば磁化自由層として機能する。また、第2の磁性層202も強磁性体からなり、例えば参照層として機能する。第2の磁性層202は、磁化固定層であっても良いし、磁化自由層であっても良い。
図25に示す通り、歪検出素子200は、第2の磁性層202を複数有している。即ち、第1の磁性層201の下面は、中間層203を介して複数の第2の磁性層202の上面と対向している。換言すれば、第2の磁性層202が、X方向及びY方向の少なくとも一の方向に分断されている。従って、第1の磁性層201の下面は、一部において第2の磁性層202のうちのいずれかと対向している。尚、図25においては、歪検出素子200が第2の磁性層202を4つ備えた例について示しているが、第2の磁性層202の数は2つでも良いし、3つ以上でも良い。
また、図25に示す通り、第1の磁性層201は第2の磁性層202と比較して大きく形成されている。即ち、第2の磁性層202に対向する第1の磁性層201の下面は、第1の磁性層201に対向する第2の磁性層202の上面と比較して広く形成されている。換言すれば、第1の磁性層201のXY平面における寸法は、第2の磁性層202のXY平面における寸法と比較して大きく形成されている。
また、図25に示す通り、第1の磁性層201は、下面の一部において第2の磁性層202と対向している。これに対し、第2の磁性層202は、上面の全体において第1の磁性層201と対向している。換言すれば、第2の磁性層202はXY平面において第1の磁性層201の内側に設けられる。
尚、図25に示す通り、中間層203のXY平面における寸法は、第1の磁性層201のXY平面における寸法と略一致する。
ここで、例えば、N個の歪検出素子200が電気的に直列に接続されている場合、得られる電気信号の大きさはN倍となる。その一方で、熱ノイズ及びショットキーノイズはN1/2倍になる。すなわち、シグナルノイズ比(signal-noise ratio:SNR、SN比)はN1/2倍になる。従って、直列に接続する歪検出素子200の数Nを増やすことで、SN比を改善することができる。
一方、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202の接合を複数設けた場合、それぞれの接合における歪−電気抵抗特性を同様(もしくは完全逆極性)とすることが望ましい。この為には、複数の接合が含まれる領域の歪が均一であると良い。
次に、複数の歪検出素子200をある領域内に設け、これら歪検出素子200を直列に接続する場合について考える。例えば歪検出素子200を小さくした場合、この領域内に設けられる歪検出素子200の数を増やすことが出来るため、より多くの歪検出素子200を直列に接続する事が可能である。しかしながら、図4及び図5を参照して説明した通り、歪検出素子200の寸法が小さい場合、第1の磁性層201端部における磁極の影響によって、第1の磁性層201内部に反磁界が発生してしまう事がある。この場合、それぞれの接合におけるゲージファクタが低下する場合がある。
図25に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202の接合を複数有している。この複数の接合の電気抵抗値は、それぞれ上述したMR効果による影響を受ける。従って、例えば1の電極を第1の磁性層201と接続し、他の電極を複数の第2の磁性層202と電気的に並列に接続した場合、歪検出素子200を複数並列に接続した状態とすることが出来る。また、例えば1の電極を一の第2の磁性層と電気的に接続し、他の電極を他の第2の磁性層と電気的に接続することにより、歪検出素子200を複数直列に接続した状態とすることが出来る。従って、SN比を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る歪検出素子200は、直列または並列に接続された複数の歪検出素子200として動作する。従って、例えば限られた領域に複数の歪検出素子を独立に設ける場合と比較して、第1の磁性層201を大きく製造する事が可能である。従って、第1の磁性層201内部における反磁界の発生を抑制する事が可能である。
次に、図26〜図29を参照して、歪検出素子200の他の構成例について説明する。図26〜図28は歪検出素子200の他の構成例を示す模式的な斜視図であり、図29は歪検出素子200の他の構成例を示す模式的な平面図である。尚、以下に示す各構成例に係る歪検出素子200及び図25に示す歪検出素子200は、お互いに組み合わせて使用する事も可能である。
図25に示す例においては、中間層203のXY平面における寸法が、第1の磁性層201のXY平面における寸法と略一致していた。しかしながら、図26(a)に示す通り、複数の中間層203のそれぞれのXY平面における寸法は、複数の第2の磁性層202のそれぞれのXY平面における寸法と略一致していても良い。
また、図25及び図26(a)に示す例において、歪検出素子200は、第2の磁性層202、中間層203及び第1の磁性層201が順に積層されて構成されていた。しかしながら、図26(b)及び図26(c)に示す通り、歪検出素子200は、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202が順に積層されて構成されていても良い。
また、図25及び図26(a)、図26(b)及び図26(c)に示す例において、歪検出素子200は、第1の磁性層201の上方及び下方のいずれか一方に、中間層203を介して第2の磁性層202を積層して構成されていた。しかしながら、図26(d)及び図26(e)に示す通り、第1の磁性層201の上方及び下方の双方に、中間層203を介して第2の磁性層202を積層して構成されていても良い。
また、図27(a)及び図27(b)に示す通り、第1の磁性層201と中間層203との間に、第3の磁性層251を介在させても良い。図27(a)及び図27(b)に示す例においては、第2の磁性層202、中間層203及び第3の磁性層251のXY平面における寸法が略一致しており、これらは第1の磁性層201のXY平面における寸法よりも小さい。第3の磁性層251は強磁性体からなり、第1の磁性層201と共に磁化自由層として機能する。即ち、第3の磁性層251は第1の磁性層201と磁気結合し、第3の磁性層251の磁化方向は第1の磁性層201の磁化方向と一致する。図27(a)及び図27(b)に示すような構造を用いた場合、後述するように、磁化固定層/中間層/磁化自由層の積層構造の中で、MR効果に寄与の大きい中間層近傍の積層構造を真空中一貫成膜で製造することが可能なため、高いMR変化率を得る観点において製造上好ましい。
また、図25及び図26及び図27に示す例において、第1の磁性層201は第2の磁性層202と比較して大きく形成されており、第2の磁性層202は、XY平面内において第1の磁性層201の内部に収まっていた。しかしながら、図28に示す通り、第2の磁性層202を第1の磁性層201と同程度または第1の磁性層201と比較して大きく形成しても良いし、第2の磁性層202が、XY平面内において第1の磁性層201からはみ出ていても良い。
また、図29(a)に示す通り、第2の磁性層202は、XY平面内において第1の磁性層201の内部に収めても良い。このような態様は、前述したとおり、第1の磁性層201と第2の磁性層202が重なる領域に含まれる第1の磁性層201の端部における磁化の乱れた領域を減らす観点で好ましく、ひいては高ゲージファクタを得る観点で好ましい。また、高いSN比を有する歪検出素子を提供することができる。
ただし、図29(b)及び図29(i)に示す通り、第2の磁性層202は、XY平面内において第1の磁性層201からはみ出していても良い。このような態様においても、高いSN比を有する歪検出素子を提供することができる。
また、図29(a)、図29(b)及び図29(c)に示す通り、第1の磁性層201のXY平面における形状は略正方形としても良いし、図29(d)及び図29(e)に示す通り、X方向の寸法及びY方向の寸法に差を有する略長方形状とし、形状磁気異方性を持たせても良い。同様に、図29(a)、図29(b)及び図29(d)に示す通り、第2の磁性層202のXY平面における形状は略正方形としても良いし、図29(c)及び図29(e)に示す通り、X方向の寸法及びY方向の寸法に差を有する略長方形状とし、形状磁気異方性を持たせても良い。第1の磁性層201と第2の磁性層202のXY平面における形状は任意である。
第1の磁性層201及び第2の磁性層202の少なくとも一方がXY平面において略長方形状に形成された場合、長軸方向が磁化容易方向となる。従って、例えばハードバイアスを用いることなく第1の磁性層201の初期磁化方向を設定する事が可能となり、歪検出素子200の製造コストを削減する事が出来る。
また、図29(f)及び図29(g)に示す通り、第1の磁性層201のXY平面における形状は略円状としても良いし、図29(h)に示す通り、長円状(楕円状)とし、形状磁気異方性を持たせても良い。また、図29(g)に示す通り、第2の磁性層202のXY平面における形状は略円状としても良い。更に、図29(f),図29(g)及び図29(h)に示す通り、これら第1の磁性層201及び第2の磁性層202は、適宜組み合わせて使用する事が出来る。
また、図29(a)〜図29(h)に示す通り、第2の磁性層202のXY平面内における大きさは第1の磁性層201より小さくても良いし、図29(i)に示す通り、同程度またはそれ以上であっても良い。
次に、図30〜図53を参照して、本実施の形態に係る歪検出素子200の構成例について説明する。
図30は、本実施の形態に係る歪検出素子200の構成例200aを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200aは、下部電極204と、上部電極212の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、並列に接続してなる。
即ち、図30に示す通り、歪検出素子200aは、下部電極204と、下部電極204上に設けられた複数の第2の積層体lba2と、複数の第2の積層体lba2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lba1と、第1の積層体lba1上に設けられた上部電極212とを備える。複数の第2の積層体lba2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。第1の積層体lba1は、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図30に示す歪検出素子200aの複数の第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)の平面形状は、図25に示す構造と同様である。図30に示す歪検出素子200aにおいても、図26(a)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
各層の材料は、図10を参照して説明した歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図31は、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の構成例200bを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200bは、2つの下部電極204の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、直列に接続してなる。即ち、図30に示す歪検出素子200aにおいては下部電極204及び上部電極212のうちの一方を陽極、他方を陰極としていたが、図31に示す歪検出素子200bにおいては、例えば2つの下部電極204のうちの一方を陽極とし、他方を陰極とする。
図31に示す通り、歪検出素子200bは、複数の下部電極204と、複数の下部電極204上にそれぞれ設けられた複数の第2の積層体lbb2と、複数の第2の積層体lbb2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbb1とを備える。複数の第2の積層体lbb2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。第1の積層体lbb1は、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図31に示す歪検出素子200bの複数の第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)の平面形状は、図25に示す構造と同様である。図31に示す歪検出素子200aにおいても、図26(a)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、キャップ層211上には、保護層として、例えば図示しない絶縁層を設けることができる。このような絶縁層としては、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
各層の材料は、図10を参照して説明した歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図32は、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の構成例200cを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200cは2つの下部電極204を有しており、それぞれの下部電極204と磁化自由層210(第1の磁性層201)との間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を並列に接続してなる。また、これら並列に接続された複数の接合は、更に2つの下部電極204の間で直列に接続されている。即ち、図32に示す歪検出素子200cにおいては、例えば2つの下部電極204のうちの一方を陽極とし、他方を陰極とする。
即ち、図32に示す通り、歪検出素子200cは、複数の下部電極204と、複数の下部電極204上にさらに複数設けられた複数の第2の積層体lbc2と、複数の第2の積層体lbc2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbc1とを備える。複数の第2の積層体lbc2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。第1の積層体lbc1は、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。また、1つの下部電極204上には、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とからなる積層体が複数設けられている。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、キャップ層211上には、保護層として、例えば図示しない絶縁層を設けることができる。このような絶縁層としては、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
各層の材料は、図10を参照して説明した歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図33は、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の構成例200dを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200dは、2つの下部電極204の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、直列に接続してなる。即ち、図33に示す歪検出素子200dにおいては、例えば2つの下部電極204のうちの一方を陽極とし、他方を陰極とする。
即ち、図33に示す通り、歪検出素子200dは、2つの下部電極204と、この2つの下部電極204上にそれぞれ設けられた2つの第2の積層体lbd2と、これら2つの第2の積層体lbd2の間に位置する第2の積層体lbd2と、隣接する2つの第2の積層体lbd2の上面にまたがって設けられた複数の第1の積層体lbd1とを備える。複数の第2の積層体lbd2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。複数の第1の積層体lbd1は、それぞれ中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
複数の第2の積層体lbd2はお互いに離間している。また、これら複数の第2の積層体lbd2の上端は、複数の第1の積層体lbd1を介して電気的に接続されている。更に、複数の第1の積層体lbd1もお互いに離間しており、それぞれ2つの第2の積層体lbd2をまたぐように形成されている。また、2つの第2の積層体lbd2に含まれる下地層205はそれぞれ下部電極204に接続されており、これによって複数の第2の積層体lbd2が電気的に直列に接続されている。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、キャップ層211上には、保護層として、例えば図示しない絶縁層を設けることができる。このような絶縁層としては、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
各層の材料は、図10を参照して説明した歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図34は、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の構成例200eを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200eは、2つの上部電極212の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、直列に接続してなる。
即ち、図34に示す通り、歪検出素子200eは、複数の第2の積層体lbe2と、隣接する2つの第2の積層体lbe2の上面にまたがって設けられた複数の第1の積層体lbe1と、最も離間する2つの第1の積層体lbe1上にそれぞれ設けられた、2つの上部電極212を備えてなる。複数の第2の積層体lbe2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。複数の第1の積層体lbe1は、それぞれ中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
複数の第2の積層体lbe2はお互いに離間している。また、これら複数の第2の積層体lbe2の上端は、第1の積層体lbe1を介して電気的に接続されている。更に、複数の第1の積層体lbe1もお互いに離間しており、それぞれ2つの第2の積層体lbe2をまたぐように形成されている。また、2つの第2の積層体lbe2に含まれるキャップ層211はそれぞれ上部電極212に接続されており、これによって複数の第2の積層体lbe2が電気的に直列に接続されている。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。
各層の材料は、図10を参照して説明した歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図35は、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の構成例200fを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200fは、下部電極204及び上部電極212の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、直列に接続してなる。
即ち、図35に示す通り、歪検出素子200fは、下部電極204と、この下部電極204上に設けられた第2の積層体lbf2と、この第2の積層体lbf2に隣接して更に設けられた第2の積層体lbf2と、この隣接する2つの第2の積層体lbf2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbf1と、上記更に設けられた第2の積層体の上面に更に設けられた第1の積層体lbf1と、この更に設けられた第1の積層体lbf1上に設けられた上部電極212とを備える。2つの第2の積層体lbf2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。2つの第1の積層体lbf1は、それぞれ中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
2つの第2の積層体lbf2はお互いに離間している。また、これら2つの第2の積層体lbf2の上端は、2つの第1の積層体lbf1を介して電気的に接続されている。更に、2つの第1の積層体lbf1もお互いに離間しており、一方は2つの第2の積層体lbf2をまたぐように、他方は1つの第2の積層体lbf2上に形成されている。また、1つの第1の積層体lbf1に接続された方の第2の積層体lbf2の下地層205は下部電極204に接続され、1つの第2の積層体lbf2に接続された方の第1の積層体lbf1のキャップ層211は上部電極212に接続されている。これによって上記複数の第2の積層体lbf2各積層体が電気的に直列に接続されている。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。
各層の材料は、図10を参照して説明した歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
図36は、本実施の形態に係る歪検出素子200の構成例200gを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200gは、歪検出素子200aと異なり、中間層203と第1の磁性層201との間に、第3の磁性層251を有してなる。また、歪検出素子200gは、下部電極204と、上部電極212の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、並列に接続してなる。
即ち、図36に示す通り、歪検出素子200gは、下部電極204と、下部電極204上に設けられた複数の第2の積層体lbg2と、複数の第2の積層体lbg2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbg1と、第1の積層体lbg1上に設けられた上部電極212とを備える。複数の第2の積層体lbg2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)とを順に積層してなる。第1の積層体lbg1は、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。第2磁化自由層241は、第3の磁性層251に相当する。第1磁化自由層242は、第1の磁性層201に相当する。また、図36に示す歪検出素子200gの複数の第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)と、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)の平面形状は、図27(a)に示す構造と同様である。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第2磁化自由層241には、例えば、1.5nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。第1磁化自由層242には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
図36に示す歪検出素子200gにおいては、第2磁化自由層241の平面寸法が、第1磁化固定層209と同様である。ここで、第2磁化自由層241は第1磁化自由層242と磁気結合し、磁化自由層として機能させることができる。ここで、第2磁化自由層241は第1磁化固定層209と同様に第1磁化自由層242よりも小さい素子寸法とされているが、相対的に寸法が大きく磁化の乱れの少ない第1の磁性層242と接続して磁気結合しているため、第2磁化自由層241の磁化の乱れも少なくすることができる。よって、本実施形態の効果を得ることができる。図36に示す歪検出素子200gを用いた場合、後述するように、磁化固定層/中間層/磁化自由層の積層構造の中で、MR効果に寄与の大きい中間層203近傍の積層構造を真空中で一貫して製造することが可能なため、高いMR変化率を得る観点において好ましい。
ここで、第2磁化自由層241に用いる材料は、前述した磁化自由層210(図10)に用いる材料と同様のものを用いることができる。第2磁化自由層241の膜厚は、厚くしすぎると、第1磁化自由層242との磁気結合による磁化の乱れの低減効果が弱まるため、4nm以下とすることが好ましく、2nm以下とすることがさらに好ましい。また、第1磁化自由層242に用いる材料は、前述した磁化自由層210(図10)に用いる材料と同様のものを用いることができる。その他の各層の材料は、歪検出素子200Aの材料と同様のものを用いることが出来る。
また、図36に示す歪検出素子200gは、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202からなる接合を並列に接続して構成されているが、例えば図37に示す歪検出素子200hの様に、直列に接続しても良いし、図38に示す歪検出素子200iの様に、並列及び直列に接続しても良い。
図39は歪検出素子200aの構成例を、図40は歪検出素子200bの構成例を示す模式的な斜視図である。図39及び図40に例示したように、歪検出素子200は、下部電極204と上部電極212との間に充填された絶縁層(絶縁部分)213を備えていても良い。
絶縁層213には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層213により、歪検出素子200aのリーク電流を抑制することができる。
図41は歪検出素子200aの構成例を、図42は歪検出素子200bの他の構成例を示す模式的な斜視図である。図41及び図42に例示したように、歪検出素子200aは、下部電極204と上部電極212との間に、互いに離間して設けられた2つのハードバイアス層(ハードバイアス部分)214と、下部電極204とハードバイアス層214の間に充填された絶縁層213を備えていても良い。
ハードバイアス層214は、ハードバイアス層214の磁化により、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定する。ハードバイアス層214により、外部からの圧力が膜部に印加されていない状態において、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定できる。
ハードバイアス層214およびその周辺の層は、図13を参照して説明したハードバイアス層214の材料と同様のものを用いることができる。
図43は、歪検出素子200の他の構成例200jを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200jは、トップスピンバルブ型の構造を有している。また、歪検出素子200jは、下部電極204と、上部電極212の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、並列に接続してなる。
即ち、図43に示す通り、歪検出素子200jは、下部電極204と、下部電極204上に設けられた第1の積層体lbj1と、第1の積層体lbj1の上面に設けられた複数の第2の積層体lbj2と、複数の第2の積層体lbj2上にまたがって設けられた上部電極212とを備える。複数の第1の積層体lbj1は、それぞれ下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とを順に積層してなる。第2の積層体lbj2は、それぞれ中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、複ピニング層206と、キャップ層211とを順に積層してなる。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図43に示す歪検出素子200jの第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状は、図26(c)に示す構造と同様である。図43に示す歪検出素子200jにおいても、図26(b)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、図7(b)に示す様な第3の磁性層251を加えた構造を用いても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Cuが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このCu層の厚さは、例えば、5nmである。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200aにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも下(−Z軸方向)に形成されている。これに対し、歪検出素子200jにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも上(+Z軸方向)に形成されている。従って、歪検出素子200jに含まれる各層の材料は、歪検出素子200aに含まれる各層の材料を上下反転させて用いることができる。
また、図43に示す歪検出素子200jは、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202からなる接合を並列に接続して構成されているが、例えば図44に示す歪検出素子200kの様に、直列に接続しても良いし、図45に示す歪検出素子200lの様に、並列及び直列に接続しても良い。
図46は、歪検出素子200の他の構成例200mを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200mは、単一の磁化固定層を用いたシングルピン構造が適用されている。また、歪検出素子200mは、下部電極204と、上部電極212の間に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、並列に接続してなる。
即ち、図46に示す通り、歪検出素子200mは、下部電極204と、下部電極204上に設けられた複数の第2の積層体lbm2と、複数の第2の積層体lbm2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbm1と、第1の積層体lbm1上に設けられた上部電極212とを備える。複数の第2の積層体lbm2は、それぞれ下地層205と、ピニング層206と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。第1の積層体lbm1は、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図30に示す歪検出素子200mの複数の第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)の平面形状は、図25に示す構造と同様である。図46に示す歪検出素子200mにおいても、図26(a)に示す第1磁化固定層209(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、図27(a)に示す通り、第1の磁性層201と中間層203との間に、第3の磁性層251を介在させても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200mの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
また、図46に示す歪検出素子200mは、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202からなる接合を並列に接続して構成されているが、例えば図47に示す歪検出素子200nの様に、直列に接続しても良いし、図48に示す歪検出素子200oの様に、並列及び直列に接続しても良い。
図49は、歪検出素子200の他の構成例200pを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200pにおいては、第2の磁性層202を磁化固定層ではなく参照層252として機能させる。また、歪検出素子200pは、下部電極204と、上部電極212の間に、参照層252(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)とからなる複数の接合を、並列に接続してなる。
即ち、図49に示す通り、歪検出素子200pは、下部電極204と、下部電極204上に設けられた複数の第2の積層体lbp2と、複数の第2の積層体lbp2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbp1と、第1の積層体lbp1上に設けられた上部電極212とを備える。複数の第2の積層体lbp2は、それぞれ下地層205と、参照層252(第2の磁性層202)とを順に積層してなる。第1の積層体lbp1は、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。
参照層252は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。また、図49に示す歪検出素子200pの参照層252(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状は、図25に示す構造と同様である。図49に示す歪検出素子200pにおいても、図26(a)に示す参照層252(第2の磁性層202)、中間層203、磁化自由層201(第1の磁性層201)の平面形状を用いてもよい。また、図27(a)に示す通り、第1の磁性層201と中間層203との間に、第3の磁性層251を介在させても良い。
下地層205には、例えば、Crが用いられる。このCr層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、5nmである。参照層252には、例えば、10nmの厚さのCo80Pt20層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
ここで、参照層252に用いる材料は、磁化自由層210に用いる材料に対して、同一の歪に対する磁化方向の変化の態様が異なる様に選定することができる。例えば、参照層252は磁化自由層210に比べて歪に対する磁化の変化が起こりにくい材料を用いることができる。
また、図49に示す歪検出素子200pは、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202からなる接合を並列に接続して構成されているが、例えば図50に示す歪検出素子200qの様に、直列に接続しても良いし、図51に示す歪検出素子200rの様に、並列及び直列に接続しても良い。
図52は、歪検出素子200の他の構成例200sを示す模式的な斜視図である。図52に示す通り、歪検出素子200sにおいては、第1の磁性層201の上下に、中間層203を介して第2の磁性層202が形成されている。また、歪検出素子200sは、下部電極204と、上部電極212の間に、第2の磁性層202と、中間層203と、第1の磁性層201とからなる複数の接合を、直列及び並列に接続してなる。
即ち、図52に示す通り、歪検出素子200sは、下部電極204と、下部電極204上に設けられた複数の第2の積層体lbs2と、複数の第2の積層体lbs2の上面にまたがって設けられた第1の積層体lbs1と、第1の積層体lbs1上に設けられた複数の第3の積層体lbs3と、この複数の第3の積層体lbs3の上面にまたがって設けられた上部電極212とを備える。複数の第2の積層体lbs2は、それぞれ下地層205と、下部ピニング層221と、下部第2磁化固定層222と、下部磁気結合層223と、下部第1磁化固定層224とを順に積層してなる。第1の積層体lbs1は、下部中間層225と、磁化自由層226とを順に積層してなる。複数の第3の積層体lbs3は、それぞれ上部中間層227と、上部第1磁化固定層228と、上部磁気結合層229と、上部第2磁化固定層230と、上部ピニング層231と、キャップ層211とを順に積層してなる。
下部第1磁化固定層224及び上部第1磁化固定層228は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層226は、第1の磁性層201に相当する。また、図52に示す歪検出素子200sの下部第1磁化固定層224(第2の磁性層202)と、下部中間層225(中間層203)と、磁化自由層226(第1の磁性層201)と、上部中間層227(中間層203)と、上部第1磁化固定層228(第2の磁性層202)の平面形状は、図26(d)及び図26(e)に示す構造を組み合わせたものである。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。下部ピニング層221には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。下部第2磁化固定層222には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。下部磁気結合層223には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。下部第1磁化固定層224には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。下部中間層225には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層226には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。上部中間層227には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。上部第1磁化固定層228には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。上部磁気結合層229には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。上部第2磁化固定層230には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。上部ピニング層231には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200sの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
また、図52に示す歪検出素子200sは、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202からなる接合を直列及び並列に接続して構成されているが、例えば図53に示す歪検出素子200tの様に、直列及び並列に接続しても良い。
次に、図54及び図55を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の製造方法について説明する。図54及び図55は、例えば図30に示す歪検出素子200aを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図54(a)〜図54(d)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する図18(a)〜図18(d)に示す工程と同様に行われる。
次に、図54(e)に示す通り、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、キャップ層260とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程で、第2の磁性層202を含む積層体が複数に分断され、複数の第2の磁性層202が形成される。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図54(f)に示すように、積層体の最表面の中間キャップ層260と第1磁化固定層209の一部、および絶縁層213の一部を除去する。この除去工程には、物理ミリングなどが実施される。例えば、ArイオンミリングやArプラズマを用いた基板バイアス処理を実施する。図54(f)に示す工程を、後に形成される磁化自由層210(第1の磁性層201)を含む積層体を成膜する装置内で行うことによって、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の最表面を清浄な状態として、真空中にて中間層の形成に移ることができる。例えば、中間キャップ層260のMgO(3nm)を完全に除去し、第1磁化固定層209のCo40Fe40B20(8nm)のうち5nmを除去した後、第1磁化固定層209としてCo40Fe40B20(3nm)を形成する。
次に、図54(g)に示す通り、第1磁化固定層209上に、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に、磁化自由層210として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。尚、磁化自由層210とキャップ層211の間には、図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図54(h)に示す通り、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。ここで、磁化自由層210(第1の磁性層201)を含む積層体の平面寸法を、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を含む積層体の平面寸法と重なる様に加工する。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図54(d)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
次に、図54(i)に示す通り、絶縁層213中にハードバイアス層214を埋め込む。例えば、ハードバイアス層214を埋め込むためのホールを絶縁層213に形成する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。この工程において、ホールの形成は周辺の絶縁層213を貫通するところまで行っても良いし、途中で止めても良い。図54(i)ではホールの形成を途中で止めて、絶縁層213を貫通させない場合を例示している。ホールを、絶縁層213を貫通するところまでエッチングした場合には、図54(i)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程において、ハードバイアス層214の下に図示しない絶縁層を成膜する必要がある。
次に、形成したホールにハードバイアス層214を埋め込む。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面にハードバイアス層214を成膜し、その後レジストパターンを除去する。ここでは、例えば、ハードバイアス層用下地層として、Cr(5nm)を形成し、その上にハードバイアス層214として、例えば、Co80Pt20(20nm)を形成する。その上に、さらに図示しないキャップ層を形成しても良い。このキャップ層として、歪検出素子200Aのキャップ層に使用可能な材料として上述した材料を用いても良いし、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。
次に、室温で外部磁界を加えて、ハードバイアス層214に含まれるハード磁性材料の磁化方向の設定を行う。この外部磁界によるハードバイアス層214の磁化方向の設定は、ハードバイアス層214の埋め込み後であれば、どのタイミングで行ってもよい。
尚、図54(i)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程は、図54(h)に示す絶縁層213の埋め込み工程で同時に行ってもよい。また、図54(i)に示すハードバイアス層214の埋め込み工程は必ずしも行わなくともよい。
次に、図55(j)に示す通り、キャップ層211上に、上部電極212を積層する。次に、図55(k)に示す通り、上部電極212を、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが行われる。
次に、図55(l)に示す通り、上部電極212及びハードバイアス214を覆う保護層215を成膜する。例えば、保護層215として、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。尚、保護層215は必ずしも設けなくともよい。
尚、図54(a)〜図55(l)では図示していないが、下部電極204や上部電極212へのコンタクトホールの形成を行っても良い。
次に、図56を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図56は、例えば図31に示す歪検出素子200bを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)及び図18(b)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図56(a)に示すように、下部電極204の平面形状を加工する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程において、下部電極204の平面形状が複数に分断される。すなわち、第1の下部電極と第2の下部電極が形成される。
さらに、下部電極204の周辺に絶縁層126の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層126を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層126として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図56(b)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209と、中間キャップ層260とを順に積層する。この工程は、図18(d)を参照して説明した方法と同様に行う事が出来る。
次に、図56(c)に示す通り、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、キャップ層260とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。また、この工程は、図56(a)を参照して説明した工程において分断された下部電極204上に、第2の磁性層202を含む積層体がそれぞれ独立して設けられるように行われる。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
以下、図56(d)〜図56(g)に示す通り、図54(f)〜図54(i)を参照して説明した工程とほぼ同様の工程を行う。
次に、図56(h)に示す通り、キャップ層211及びハードバイアス214を覆う保護層215を成膜する。例えば、保護層215として、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。尚、保護層215は必ずしも設けなくともよい。
尚、図56(a)〜図56(h)では図示していないが、下部電極204や上部電極212へのコンタクトホールの形成を行っても良い。
次に、図57を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図57は、例えば図37に示す歪検出素子200hを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)及び図18(b)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。また、図56(a)に示す工程については、歪検出素子200bを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図57(a)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)と、中間キャップ層260とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Ru(2nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に第2磁化固定層207/磁気結合層208/第1磁化固定層209として、Co75Fe25(2.5nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(3nm)を形成する。その上に中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に、さらに中間キャップ層260として、MgO(3nm)を形成する。ここで、中間キャップ層260と第2磁化自由層241の一部は後に説明する工程で除去される。
次に、図57(b)に示す通り、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、第2磁化自由層241(第3の磁性層251)と、キャップ層260とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。また、この工程は、図56(a)を参照して説明した工程において分断された下部電極204上に、第2の磁性層202を含む積層体がそれぞれ独立して設けられるように行われる。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、図57(c)に示すように、積層体の最表面の中間キャップ層260と第2磁化自由層241の一部、および絶縁層213の一部を除去する。この除去工程には、物理ミリングなどが実施される。例えば、ArイオンミリングやArプラズマを用いた基板バイアス処理を実施する。図57(c)に示す工程を、後に形成される第1磁化自由層242(第1の磁性層201)を含む積層体を成膜する装置内で行うことによって、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の最表面を清浄な状態として、真空中にて中間層の形成に移ることができる。例えば、中間キャップ層260のMgO(3nm)を完全に除去し、第2磁化自由層241のCo40Fe40B20(4nm)のうち3nmを除去した後、第2磁化自由層241としてCo40Fe40B20(1nm)を形成する。
次に、図57(d)に示す通り、第2磁化自由層241上に、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、第1磁化自由層242(第1の磁性層201)として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。尚、磁化自由層210とキャップ層211の間には、図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図57(e)に示す通り、第2磁化自由層241(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。ここで、磁化自由層210(第1の磁性層201)を含む積層体の平面寸法を、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)を含む積層体の平面寸法と重なる様に加工する。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図57(a)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
以下、図57(f)に示す通り、図56(h)を参照して説明した工程とほぼ同様の工程によって、図37に示した歪検出素子200hを製造する事が可能である。このような製造方法を用いた場合、図56(a)を参照して説明した工程においては、MR効果に重要な影響を与える中間層203近傍の積層構造(第1磁化固定層209、中間層203及び第2磁化自由層241)を真空中で一貫して成膜できるため、高いMR変化率を得る観点から好ましい。
次に、図58を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図58は、例えば図43に示す歪検出素子200jを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)〜図18(c)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図58(a)に示す通り、下部電極204上に、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Cu(5nm)を形成する。その上に磁化自由層210として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に第1磁化固定層209(第2の磁性層202)/磁気結合層208/第2磁化固定層207として、Co40Fe40B20(2nm)/Fe50Co50(1nm)/Ru(0.9nm)/Co75Fe25(2.5nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。ここで、磁化自由層210と下地層205の間に図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図58(b)に示すように、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程で、第2の磁性層202を含む積層体が複数に分断され、複数の第2の磁性層202が形成される。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。この工程では、中間層203または磁化自由層210の一部まででエッチング工程を止めることによって、磁化自由層210の平面形状が全て加工されない状態とする。
次に、図58(c)に示すように、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、上記工程において埋め込んだ絶縁層213とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程では、下地層205にまでエッチングを行い、磁化自由層210の平面形状が第1磁化固定層209の寸法よりも大きい状態とする。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図58(a)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
以下、図58(d)〜図58(g)に示す通り、図54(i)及び図55を参照して説明した工程とほぼ同様の工程によって、図43に示した歪検出素子200jを製造する事が可能である。このような製造方法を用いた場合、図58(a)を参照して説明した工程においては、MR効果に重要な影響を与える中間層203近傍の積層構造(磁化自由層210、中間層203及び第1磁化固定層209)を真空中で一貫して成膜できるため、高いMR変化率を得る観点から好ましい。
次に、図59を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の製造方法について説明する。図59は、例えば図44に示す歪検出素子200kを製造する時の様子を示す模式的な断面図である。
本製造方法は、図18(a)及び図18(b)に示す工程については、歪検出素子200Aを製造する上記方法と同様に行われる。
次に、図59(a)に示す通り、膜部120上に、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを順に積層する。例えば、下地層205として、Ta(3nm)/Cu(5nm)を形成する。その上に磁化自由層210として、Co40Fe40B20(4nm)を形成する。その上に中間層203として、MgO(1.6nm)を形成する。その上に第1磁化固定層209(第2の磁性層202)/磁気結合層208/第2磁化固定層207として、Co40Fe40B20(2nm)/Fe50Co50(1nm)/Ru(0.9nm)/Co75Fe25(2.5nm)を形成する。その上にピニング層206として、IrMn(7nm)を形成する。その上に、キャップ層211として、Cu(3nm)/Ta(2nm)/Ru(10nm)を形成する。ここで、磁化自由層210と下地層205の間に図示しない拡散防止層として、MgO(1.5nm)を形成してもよい。
次に、図59(b)に示すように、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程で、第2の磁性層202を含む積層体が複数に分断され、複数の第2の磁性層202が形成される。
次に、第1磁化固定層209を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。この工程では、中間層203または磁化自由層210の一部まででエッチング工程を止めることによって、磁化自由層210の平面形状が全て加工されない状態とする。
次に、図59(c)に示すように、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、上記工程において埋め込んだ絶縁層213とを、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが実施される。例えば、Arイオンミリングを実施する。この工程では、下地層205にまでエッチングを行う。また、この工程は、図59(b)において分断された複数の第1磁化固定層209が、XY平面から見て磁化自由層210と重なる様に行われる。
次に、磁化自由層210を含む積層体の周辺に、絶縁層213の埋め込み成膜を行う。この工程では、例えば、リフトオフ工程が行われる。例えば、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンは残したままで、全面に絶縁層213を成膜し、その後レジストパターンを除去する。絶縁層213として、例えば、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどを用いることができる。
次に、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)の磁化方向を固着する磁界中アニールを行う。例えば、7kOeの外部磁場を印加しつつ300℃で一時間のアニールを行う。ここで、磁界中アニールは、第2の磁性層202を含む積層体を形成した図59(a)の工程以降であれば、どのタイミングで行ってもよい。
次に、例えば図59(d)に示す通り、絶縁層213にハードバイアス層214を埋め込む。本工程は、例えば、図54(e)を参照して説明した工程と同様に行う事が出来る。
次に、図59(e)に示す通り、キャップ層211上に、上部電極212を積層する。次に、図59(f)に示す通り、上部電極212を、一部を残して除去する。この工程では、レジストをフォトリソグラフィによりパターニングし、その後、図示しないレジストパターンをマスクとして用いて、物理ミリングまたは化学ミリングが行われる。この工程において、上部電極212の平面形状が複数に分断される。すなわち、第1の上部電極と第2の上部電極が形成される。
次に、図59(g)に示す通り、上部電極212及びハードバイアス214を覆う保護層215を成膜する。例えば、保護層215として、SiOx、AlOx、SiNx及びAlNxなどの絶縁層を用いても良い。尚、保護層215は必ずしも設けなくともよい。
尚、図59(a)〜図59(g)では図示していないが、下部電極204や上部電極212へのコンタクトホールの形成を行っても良い。このような製造方法を用いた場合、図59(a)を参照して説明した工程においては、MR効果に重要な影響を与える中間層203近傍の積層構造(磁化自由層210、中間層203及び第1磁化固定層209)を真空中で一貫して成膜できるため、高いMR変化率を得る観点から好ましい。
[3.第3の実施の形態]
次に、第1及び第2の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサの構成例100について説明する。図60は、本実施の形態に係る圧力センサ100の構成を示す模式的な斜視図、図61は図1のA−A’から見た模式的な断面図、図62は圧力センサ100の構成を示す模式的な平面図である。
図60に示す通り、圧力センサ100は、基板110と、基板110の一の面に設けられた膜部120と、膜部120上に設けられた歪検出素子200を備える。歪検出素子200は、第1または第2の実施の形態に係る歪検出素子200である。歪検知素子200は、膜部120上の一部に設けられる。また、膜部120上には、歪検出素子200に接続される配線131、パッド132、配線133及びパッド134が設けられている。
図61に示す通り、基板110は空洞部111を有する板状の基板であり、膜部120が外部の圧力に応じて撓むように膜部120を支持する支持部として機能する。本実施の形態において、空洞部111は基板110を貫通する円筒状の穴である。基板110は、例えばシリコンなどの半導体材料、金属などの導電材料、または、絶縁性材料からなる。また、基板110は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを含んでいても良い。
空洞部111の内部は、膜部120を撓ませることが出来るように設計されている。例えば、空洞部111の内部は減圧状態または真空状態であっても良い。また、空洞部111の内部には、空気などの気体または液体が充填されていても良い。更に、空洞部111は、外部と連通されていても良い。
図61に示す通り、膜部120は、基板110と比較して薄く形成されている。また、膜部120は、空洞部111の直上に位置し、外部の圧力に応じて撓む振動部121と、振動部121と一体形成され、基板111によって支持される被支持部122を有する。歪検知素子200は、振動部121の一部に設けられる。例えば図62(a)に示す通り、被支持部122は、振動部121を取り囲んでいる。以下、膜部120の空洞部111の直上に位置する領域を第1の領域R1と呼ぶ。
第1の領域R1は種々の形に形成する事が可能であり、例えば図62(a)に示す通り、略真円状に形成しても良いし、図62(b)に示す通り、楕円状(例えば、扁平円形状)に形成しても良いし、図62(c)に示す通り、略正方形状に形成しても良いし、図62(e)に示す通り、長方形状に形成しても良い。また、例えば第1の領域R1を略正方形状または略長方形状に形成した場合には、図62(d)または図62(f)に示す通り、4隅の部分を丸く形成する事も可能である。更に、第1の領域R1は、多角形や正多角形とすることも可能である。
膜部120の材料には、例えば、SiOxやSiNx、ポリイミドまたはパラキシリレン系ポリマーなどのフレキシブルプラスティック材料等の絶縁性材料を用いても良い。また、膜部120の材料には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの少なくともいずれかを含んでも良い。また、膜部120の材料には、例えば、シリコンなどの半導体材料を用いても良いし、Al等の金属材料を用いても良い。
膜部120は、基板110と比較して薄く形成される。膜部120の厚み(Z方向の幅)は、例えば、0.1マイクロメートル(μm)以上3μm以下である。膜部120の厚みは、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。膜部120には、例えば、厚さが0.2μmの酸化シリコン膜と、厚さが0.4μmのシリコン膜との積層体を用いても良い。
図62に示す通り、歪検出素子200は、膜部120上の第1の領域R1内に複数配置することができる。また、歪検出素子200は、それぞれ第1の領域R1の外縁に沿って配置される。即ち、図62に示す例においては、複数の歪検出素子200のそれぞれと、第1の領域R1の外縁との間の距離(最短距離Lmin)は、互いに同じである。膜部120上の第1の領域R1内に配置する歪検出素子200の数は1でもよい。
例えば図62(a)及び図62(b)に示す通り、第1の領域R1の外縁が曲線である場合、歪検出素子200はその曲線に沿って配置される。また、例えば図62(c)及び(d)に示す通り、第1の領域R1の外縁が直線である場合、歪検出素子200はその直線に沿って直線状に配置される。
また、図62中には、膜部120に外接する矩形と、この矩形の対角線を、一点鎖線で示している。この矩形及び一点鎖線によって分断された膜部120上における領域を、第1〜第4の平面領域と呼ぶ事とすると、歪検出素子200は、第1〜第4の平面領域内に、第1の領域R1の外縁に沿って、複数配置されている。
歪検出素子200は、図60に示す配線131を介してパッド132と、配線133を介してパッド134と接続されている。圧力センサ100によって圧力の検出を行う場合には、これらパッド132及び134を介して歪検出素子200に電圧が印加され、歪検出素子200の電気抵抗値が測定される。尚、配線131及び配線133の間には、層間絶縁層を設けても良い。
歪検出素子200として、例えば図10に示す歪検出素子200Aの様に、下部電極204及び上部電極212を備えた構成を採用する場合には、例えば下部電極204に配線131が接続され、上部電極212に配線133が接続される。一方、図31に示す歪検出素子200bの様に、上部電極を有さず、下部電極204を2つ有している構成や、図34に示す歪検出素子200eの様に、下部電極を有さず、上部電極212を2つ有している構成を採用する場合には、一方の下部電極204または上部電極212に配線131が接続され、他方の下部電極204または上部電極212に配線133が接続される。尚、複数の歪検出素子200は、図示しない配線を介して直列または並列に接続されていても良い。これにより、SN比を増大することができる。
歪検出素子200のサイズは、極めて小さくても良い。歪検出素子200のXY平面における面積は、第1の領域R1の面積よりも十分に小さくできる。例えば、歪検出素子200の面積は、第1の領域R1の面積の1/5以下とすることができる。例えば、歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201の面積は、第1の領域R1の面積の1/5以下とすることができる。複数の歪検出素子200を直列または並列に接続することによって、第1の領域R1の面積よりも十分に小さい歪検出素子200を用いた場合でも、高いゲージファクタ、もしくは高いSN比を実現することができる。
例えば、第1の領域R1の直径が60μm程度の場合に、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の第1の寸法は、12μm以下とすることができる。例えば、第1の領域R1の直径が600μm程度の場合には、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の寸法は、120μm以下とすることができる。歪検出素子200の加工精度などを考慮すると、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の寸法を過度に小さくする必要はない。そのため、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の寸法は、例えば、0.05μm以上、30μm以下とすることができる。
尚、図60〜図62に示す例においては、基板110と膜部120を別体として構成しているが、膜部120を基板110と一体に形成しても良い。また、膜部120には、基板110と同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。膜部120を基板110と一体に形成する場合には、基板110のうちの薄く形成された部分が膜部120(振動部121)となる。更に、振動部121は、図60〜図62に示すように、第1の領域R1の外縁に沿って連続的に支持されていても良いし、第1の領域R1の外縁のうちの一部で支持されていても良い。
また、図62に示す例においては、膜部120の上に複数の歪検出素子200が設けられているが、例えば膜部120の上に歪検出素子200を一つだけ設けても良い。
次に、図63〜図65を参照して、圧力センサ100について行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、膜部120に圧力を加えた場合における、膜部120上の各位置での歪の大きさεを計算している。このシミュレーションは、有限要素法解析によって膜部120の表面を複数に分割し、分割された各要素にフックの法則を適用することによって行われている。
図63は、シミュレーションに用いたモデルについて説明するための模式的な斜視図である。図63に示す通り、シミュレーションにおいては、膜部120の振動部121を円形とした。また、振動部121の直径L1(直径L2)を500μmとし、膜部120の厚さLtは、2μmとした。更に、振動部121の外縁は、完全に拘束された固定端とした。
尚、シミュレーションにおいては、膜部120の材料としてシリコンを想定している。従って、膜部120のヤング率は165GPaとし、ポアソン比は、0.22とした。
更に、図63に示す通り、膜部120には下面から圧力が加わるものとし、圧力の大きさは13.33kPaとし、且つ振動部121に均一に加わるものとした。また、有限要素法においては、振動部121を、XY平面内においては5μmのメッシュサイズで分割し、Z方向においては、2μmの間隔で分割した。
次に、図64及び図65を参照し、シミュレーションの結果について説明する。図64は、シミュレーションの結果を示すグラフであり、縦軸は歪の大きさεを示しており、横軸は振動部121の中心からの距離rxを半径rで規格化した値rx/rを示している。尚、図64においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪としている。
図64には、半径方向(X方向)の歪εrと、周方向の歪εθと、これら歪の差である異方歪Δε(=εr−εθ)とを示している。尚、図3を参照して説明した様な、逆磁歪効果による第1の磁性層201の磁化方向の変化には、この異方歪Δεが寄与する。
図64に示したように、凸状に撓んでいる振動部121の中心付近においては、半径方向の歪εr及び周方向の歪εθは引張歪である。これに対し、凹状に撓んでいる外縁付近では、半径方向の歪εr及び周方向の歪εθは圧縮歪である。中心付近において、異方歪Δεはゼロであり、等方歪となっている。外縁付近では、異方歪Δεは圧縮の値を示しており、外縁直近で最も大きい異方歪が得られる。円形の振動部121では、この異方歪Δεが中心からの放射線方向に対して常に同様に得られる。従って、歪検出素子200を、振動部121の外縁付近に配置することにより、歪の検出を感度良く行う事が出来る。このように、歪検出素子200を、振動部121の外縁付近の一部に配置することができる。
図65は、振動部121に生じる異方歪ΔεのXY面内分布を示すコンター図である。図65においては、図64に示した極座標系での異方歪Δε(Δεr−θ)をデカルト座標系での異方歪Δε(ΔεX−Y)に変換して、振動部121の全面において解析した結果が例示されている。
図65において、「90%」〜「10%」の文字で示されている線は、振動部121外縁の直近における最も大きい異方歪ΔεX−Yの値(絶対値)の、それぞれ90%〜10%の異方歪Δεが得られる位置を示している。図65に示す通り、同様の大きさの異方歪ΔεX−Yは限られた領域で得られる。
ここで、例えば図62(a)に示す通り、膜部120上に、複数の歪検出素子200を設ける場合、磁化固定層の磁化方向はピン固着を目的とした磁界中アニール方向に揃うため、同一方向をむく。従って、歪検出素子200は、ほぼ一様な大きさの異方歪が生じる範囲内に配置することが望ましい。
この点、第1の実施の形態に示した歪検出素子200は、比較的小さくしても高いゲージファクタ(歪検知感度)を実現することができる。従って、膜部120の寸法が小さい場合でも、ほぼ一様な大きさの異方歪が生じる範囲内に歪検出素子200を配置し、高いゲージファクタを得ることができる。また、歪検出素子200を膜部120上に複数配置して、同様な圧力に対する電気抵抗変化(例えば極性など)を得ようとする場合、図65に示すように同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に近接して配置することが好ましい。第1の実施の形態に示した歪検出素子200は比較的小さくしても高いゲージファクタ(歪検知感度)を実現することができるため、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に数多く配置することが可能となる。
また、第2の実施の形態に係る、第1の磁性層201に対して第2の磁性層202が複数設けられた構造を有する歪検出素子200を用いることによって、第1の磁性層201の寸法は、必要とされる歪の分解能に応じて過剰に小さくせず、反磁界の影響による磁化の乱れを可能な限り低減し、接続される第2の磁性層202の寸法のみを小さくして、第1の磁性層201/中間層203/第2の磁性層202の接合を複数とすることによって、前述したSN比の増大効果を得ることができる。第2の実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の磁性層201の平面寸法を過分に小さくせずに、第1の磁性層201/中間層203/第2の磁性層202の接合を同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に近接して配置することでSN比の高い圧力センサを実現することができる。
ここで、図62を参照して説明した通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1〜第4の平面領域内に、第1の領域R1の外縁に沿って、複数配置されている。従って、第1〜第4の平面領域内に配置された複数の歪検出素子200によって一様な歪を検出する事が出来る。
次に、図66を参照して、圧力センサ100の他の構成例について説明する。図66は、圧力センサ100の他の構成例を示す平面図である。図66に示した圧力センサ100は、図62に示す圧力センサ100とほぼ同様に構成されているが、歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201が、略正方形でなく、略長方形に形成されている点において異なる。
図66(a)には、膜部120の振動部121が略円形状である態様を、図66(b)には、膜部120の振動部121が略長円形状である態様を、図66(d)には、膜部120の振動部121が略正方形状である態様を、図66(e)には、膜部120の振動部121が略長方形状である態様を示している。また、図66(c)は、図66(b)の一部の拡大図である。
図66(c)に示す通り、膜部120には複数の歪検出素子200が、第1の領域R1の外縁に沿って配置されている。ここで、歪検出素子200の重心Gと、第1の領域R1の外縁とを最短距離で結ぶ直線を直線Lとすると、この直線Lの方向と歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201の長手方向との角度が、0°よりも大きく90°よりも小さくなるように設定されている。
上述した通り、歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201を、長方形状または長円形状等、形状磁気異方性を有する形状にした場合、磁化自由層201の初期磁化方向を、長手方向に設定する事が可能である。また、図66(c)に示した直線Lの方向は、歪検出素子200に生じる歪の方向を示している。従って、この直線Lの方向と歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201の長手方向との角度を、0°よりも大きく90°よりも小さく設定することにより、磁化自由層201の初期磁化方向と歪検出素子200に生じる歪の方向を調整して、正負の圧力に対して感応する圧力センサを製造する事が出来る。尚、この角度は、30度以上60度以下がさらに好ましい。
また、上記角度の最大値と最小値との差が、例えば5度以下となる様に設定した場合、複数の歪検出素子200で同様の圧力―電気抵抗特性を得ることができる。
尚、図66に示す例においては、圧力センサ100が複数の歪検出素子200を備えていたが、1つのみ備えていても良い。
次に、図67を参照して、歪検出素子200の配線パターンについて説明する。図67(a)、図67(b)及び図67(d)は、歪検出素子200の配線パターンについて説明するための回路図である。また、図67(c)は、歪検出素子200の配線パターンについて説明するための概略的な平面図である。
圧力センサ100に、複数の歪検出素子200を設けた場合、例えば、図67(a)に示す通り、全ての歪検出素子200を直列に接続しても良い。ここで、歪検出素子200のバイアス電圧は、例えば、50ミリボルト(mV)以上150mV以下である。N個の歪検出素子200を直列に接続した場合、バイアス電圧は、50mV×N以上150mV×N以下となる。例えば、直列に接続されている歪検出素子の数Nが25である場合には、バイアス電圧は、1V以上3.75V以下となる。
バイアス電圧の値が1V以上であると、歪検出素子200から得られる電気信号を処理する電気回路の設計は容易になり、実用的に好ましい。一方、バイアス電圧(端子間電圧)が10Vを超えると、歪検出素子200から得られる電気信号を処理する電気回路においては、望ましくない。実施形態においては、適切な電圧範囲になるように、直列に接続される歪検出素子200の数N及びバイアス電圧が設定される。
例えば、複数の歪検出素子200を電気的に直列に接続したときの電圧は、1V以上10V以下となるのが好ましい。例えば、電気的に直列に接続された複数の歪検出素子200の端子間(一方の端の端子と、他方の端の端子との間)に印加される電圧は、1V以上10V以下である。
この電圧を発生させるためには、1つの歪検出素子200に印加されるバイアス電圧が50mVである場合、直列に接続される歪検出素子200の数Nは、20以上200以下が好ましい。1つの歪検出素子200に印加されるバイアス電圧が150mVである場合、直列に接続される歪検出素子200の数Nは、7以上66以下であることが好ましい。
尚、複数の歪検出素子200は、例えば、図67(b)に示す通り、全て並列に接続されていても良い。
また、例えば、図67(c)に示す通り、図62を参照して説明した第1〜第4の平面領域にそれぞれ複数の歪検出素子200を配置し、これを第1〜第4の歪検出素子群310,320,330及び340とした場合、図67(d)に示す通り、第1〜第4の歪検出素子群310,320,330及び340によってホイートストンブリッジ回路を構成しても良い。ここで、図67(d)に示す第1の歪検出素子群310と第3の歪検出素子群330は同極性の歪―電気抵抗特性が得られ、第2の歪検出素子群320と第4の歪検出素子群340は第1の歪検出素子群310と第3の歪検出素子群330とは逆極性の歪―電気抵抗特性を得ることができる。尚、第1〜第4の歪検出素子群310,320,330及び340に含まれる歪検出素子200の数は1でもよい。これにより、例えば、検出特性の温度補償を行うことができる。
次に、図68を参照して、本実施の形態に係る圧力センサ100の製造方法について、より詳しく説明する。図68は圧力センサ100の製造方法を示す模式的な斜視図である。
本実施の形態に係る圧力センサ100の製造方法においては、図68(a)に示す様に、基板110の一の面112に、膜部120を形成する。例えば基板110がSi基板であった場合、膜部120として、SiOx/Siの薄膜をスパッタによって成膜しても良い。
尚、例えば基板110としてSOI(Silicon On Insulator)基板を採用する場合には、Si基板上のSiO2/Siの積層膜を膜部120として採用する事も出来る。この場合、膜部120の形成は、Si基板とSiO2/Siの積層膜との貼り合わせである。
次に、図68(b)に示す通り、基板110の一の面112に、配線部131及びパッド132を形成する。即ち、配線部131及びパッド132となる導電膜を成膜し、その導電膜を、一部を残して除去する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、配線部131及びパッド132の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、配線部131及びパッド132のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図68(c)に示す通り、基板110の一の面112に、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に位置する中間層203を成膜する。
次に、図68(d)に示す通り、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去し、歪検出素子200を形成する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、歪検出素子200の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、歪検出素子200のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図68(d)に示す通り、基板110の一の面112に、配線部133及びパッド134を形成する。即ち、配線部133及びパッド134となる導電膜を成膜し、その導電膜を、一部を残して除去する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、配線部133及びパッド134の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、配線部133及びパッド134のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図68(e)に示す通り基板110の一部を、基板110の他の面113から除去して、基板110に空洞部111を形成する。この工程において除去する領域は、基板110の第1の領域R1に相当する部分である。尚、本実施の形態においては、基板110の第1の領域R1内に位置する部分を全て除去しているが、基板110の一部を残すことも可能である。例えば、膜部120と基板110を一体に形成する場合には、基板110の一部を除去して薄膜化し、この薄膜化された部分を膜部120としても良い。
本実施の形態において、図68(e)に示す工程にはエッチングが用いられる。例えば膜部120がSiO2/Siの積層膜である場合、本工程は、基板110の他の面113からの深堀加工によって行われても良い。また、本工程には、両面アライナー露光装置を用いることができる。これにより、歪検出素子200の位置に合わせて、レジストのホールパターンを他の面113にパターニングできる。
また、エッチングにおいては、例えばRIEを用いたボッシュプロセスが用いることができる。ボッシュプロセスでは、例えば、SF6ガスを用いたエッチング工程と、C4F8ガスを用いた堆積工程と、を繰り返す。これにより、基板110の側壁のエッチングを抑制しつつ、基板110の深さ方向(Z軸方向)に選択的にエッチングが行われる。エッチングのエンドポイントとして、例えば、SiOx層が用いられる。すなわち、エッチングの選択比がSiとは異なるSiOx層を用いてエッチングを終了させる。エッチングストッパ層として機能するSiOx層は、膜部110の一部として用いられても良い。SiOx層は、エッチングの後に、例えば、無水フッ化水素及びアルコールなどの処理などで除去されても良い。基板110のエッチングはボッシュプロセス以外にウェット工程による異方性エッチングや犠牲層を用いたエッチングを行っても良い。
次に、図69〜図71を参照して、本実施の形態に係る圧力センサ200の構成例440について説明する。
図69は、圧力センサ440の構成を示す模式的な斜視図である。図70及び図71は、圧力センサ440を例示するブロック図である。
図69及び図70に示すように、圧力センサ440には、基部471、検知部450、半導体回路部430、アンテナ415、電気配線416、送信回路417、及び、受信回路417rが設けられている。尚、本実施の形態に係る検知部450は、例えば第1または第2の実施の形態に係る歪検出素子200である。
アンテナ415は、電気配線416を介して、半導体回路部430と電気的に接続されている。
送信回路417は、検知部450に流れる電気信号に基づくデータを無線で送信する。送信回路417の少なくとも一部は、半導体回路部430に設けることができる。
受信回路417rは、電子機器418dからの制御信号を受信する。受信回路417rの少なくとも一部は、半導体回路部430に設けることができる。受信回路417rを設けるようにすれば、例えば、電子機器418dを操作することで、圧力センサ440の動作を制御することができる。
図70に示すように、送信回路417には、例えば、検知部450に接続されたADコンバータ417aと、マンチェスター符号化部417bと、を設けることができる。切替部417cを設け、送信と受信を切り替えるようにすることができる。この場合、タイミングコントローラ417dを設け、タイミングコントローラ417dにより切替部417cにおける切り替えを制御することができる。またさらに、データ訂正部417e、同期部417f、判定部417g、電圧制御発振器417h(VCO;Voltage Controlled Oscillator)を設けることができる。
図71に示すように、圧力センサ440と組み合わせて用いられる電子機器418dには、受信部418が設けられる。電子機器418dとしては、例えば、携帯端末などの電子装置を例示することができる。
この場合、送信回路417を有する圧力センサ440と、受信部418を有する電子機器418dと、を組み合わせて用いることができる。
電子機器418dには、マンチェスター符号化部417b、切替部417c、タイミングコントローラ417d、データ訂正部417e、同期部417f、判定部417g、電圧制御発振器417h、記憶部418a、中央演算部418b(CPU;Central
Processing Unit)を設けることができる。
この例では、圧力センサ440は、固定部467をさらに含んでいる。固定部467は、膜部464(70d)を基部471に固定する。固定部467は、外部圧力が印加されたときであっても撓みにくいように、膜部464よりも厚み寸法を厚くすることができる。
固定部467は、例えば、膜部464の周縁に等間隔に設けることができる。膜部464(70d)の周囲をすべて連続的に取り囲むように固定部467を設けることもできる。固定部467は、例えば、基部471の材料と同じ材料から形成することができる。この場合、固定部467は、例えば、シリコンなどから形成することができる。固定部467は、例えば、膜部464(70d)の材料と同じ材料から形成することもできる。
次に、図72〜図83を参照して、圧力センサ440の製造方法を例示する。図72〜図83は、圧力センサ440の製造方法を例示する模式的な平面図及び断面図である。
図72(a)及び図72(b)に示すように、半導体基板531の表面部分に半導体層512Mを形成する。続いて、半導体層512Mの上面に素子分離絶縁層512Iを形成する。続いて、半導体層512Mの上に、図示しない絶縁層を介して、ゲート512Gを形成する。続いて、ゲート512Gの両側に、ソース512Sとドレイン512Dとを形成することで、トランジスタ532が形成される。続いて、この上に層間絶縁膜514aを形成し、さらに層間絶縁膜514bを形成する。
続いて、非空洞部となる領域において、層間絶縁膜514a、514bの一部に、トレンチ及び孔を形成する。続いて、孔に導電材料を埋め込んで、接続ピラー514c〜514eを形成する。この場合、例えば、接続ピラー514cは、1つのトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続され、接続ピラー514dはドレイン512Dに電気的に接続される。例えば、接続ピラー514eは、別のトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続される。続いて、トレンチに導電材料を埋め込んで、配線部514f、514gを形成する。配線部514fは、接続ピラー514c及び接続ピラー514dに電気的に接続される。配線部514gは、接続ピラー514eに電気的に接続される。続いて、層間絶縁膜514bの上に、層間絶縁膜514hを形成する。
図73(a)及び図73(b)に示すように、層間絶縁膜514hの上に、酸化シリコン(SiO2)からなる層間絶縁膜514iを、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法を用いて形成する。続いて、層間絶縁膜514iの所定の位置に孔を形成し、導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて平坦化する。これにより、配線部514fに接続された接続ピラー514jと、配線部514gに接続された接続ピラー514kと、が形成される。
図74(a)及び図74(b)に示すように、層間絶縁膜514iの空洞部570となる領域に凹部を形成し、その凹部に犠牲層514lを埋め込む。犠牲層514lは、例えば、低温で成膜できる材料を用いて形成することができる。低温で成膜できる材料は、例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)などである。
図75(a)及び図75(b)に示すように、層間絶縁膜514i及び犠牲層514lの上に、膜部564(70d)となる絶縁膜561bfを形成する。絶縁膜561bfは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。絶縁膜561bfに複数の孔を設け、複数の孔に導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、接続ピラー561fa、接続ピラー562faを形成する。接続ピラー561faは、接続ピラー514kと電気的に接続され、接続ピラー562faは、接続ピラー514jと電気的に接続される。
図76(a)及び図76(b)に示すように、絶縁膜561bf、接続ピラー561fa、接続ピラー562faの上に、配線557となる導電層561fを形成する。
図77(a)及び図77(b)に示すように、導電層561fの上に、積層膜550fを形成する。
図78(a)及び図78(b)に示すように、積層膜550fを所定の形状に加工し、その上に、絶縁層565となる絶縁膜565fを形成する。絶縁膜565fは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。
図79(a)及び図79(b)に示すように、絶縁膜565fの一部を除去し、導電層561fを所定の形状に加工する。これにより、配線557が形成される。このとき、導電層561fの一部は、接続ピラー562faに電気的に接続される接続ピラー562fbとなる。さらに、この上に、絶縁層566となる絶縁膜566fを形成する。
図80(a)及び図80(b)に示すように、絶縁膜565fに開口部566pを形成する。これにより、接続ピラー562fbが露出する。
図81(a)及び図81(b)に示すように、上面に、配線558となる導電層562fを形成する。導電層562fの一部は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図82(a)及び図82(b)に示すように、導電層562fを所定の形状に加工する。これにより、配線558が形成される。配線558は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図83(a)及び図83(b)に示すように、絶縁膜566fに所定の形状の開口部566oを形成する。開口部566oを介して、絶縁膜561bfを加工し、さらに開口部566oを介して、犠牲層514lを除去する。これにより、空洞部570が形成される。犠牲層514lの除去は、例えば、ウェットエッチング法を用いて行うことができる。
なお、固定部567をリング状とする場合には、例えば、空洞部570の上方における非空洞部の縁と、膜部564と、の間を絶縁膜で埋める。
以上の様にして圧力センサ440が形成される。
[4.第4の実施の形態]
次に、図84を参照して、第4の実施の形態について説明する。図84は、本実施の形態に係るマイクロフォン150の構成を示す模式的な断面図である。第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100は、例えば、マイクロフォンに搭載する事が出来る。
本実施の形態に係るマイクロフォン150は、圧力センサ100を搭載したプリント基板151と、プリント基板151を搭載した電子回路152と、プリント基板151と共に圧力センサ100と電子回路152とを覆うカバー153とを備える。圧力センサ100は、第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100である。
カバー153には、アコースティックホール154が設けられており、ここから音波155が入射する。音波155がカバー153内に入射すると、圧力センサ100によって音波155が検知される。電子回路152は、例えば、圧力センサ100に搭載された歪検出素子に電流を流し、圧力センサ100の抵抗値の変化を検出する。また、電子回路152は、増幅回路等によってこの電流値を増幅しても良い。
第1〜第4の実施の形態に係る方法によって製造された圧力センサは高感度であるため、これを搭載したマイクロフォン150は感度良く音波155の検出を行う事が可能である。
[5.第5の実施の形態]
次に、図85及び図86を参照して、第5の実施の形態について説明する。図85は、第5の実施の形態に係る血圧センサ160の構成を示す模式図である。図86は、同血圧センサ160のH1−H2から見た模式的な断面図である。第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100は、例えば、血圧センサ160に搭載する事が出来る。
図85に示す通り、血圧センサ160は、例えばヒトの腕165の動脈166上に貼り付けられる。また、図86に示す通り、血圧センサ160は第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100を搭載しており、これによって血圧を測定する事が可能である。
第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100は高感度であるため、これを搭載した血圧センサ160は感度良く連続的に血圧の検出を行う事が可能である。
[6.第6の実施の形態]
次に、図87を参照して、第6の実施の形態について説明する。図87は、第6の実施の形態に係るタッチパネル170の構成を示す模式的な回路図である。タッチパネル170は、図示しないディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
タッチパネル170は、マトリクス状に配置された複数の圧力センサ100と、Y方向に複数配置され、X方向に配置された複数の圧力センサ100の一端にそれぞれ接続された複数の第1の配線171と、X方向に複数配置され、Y方向に配置された複数の圧力センサ100の他端にそれぞれ接続された複数の第2の配線172と、複数の第1の配線171及び複数の第2の配線172を制御する制御部173とを備える。圧力センサ100は、第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサである。
また、制御部173は、第1の配線171を制御する第1の制御回路174と、第2の配線172を制御する第2の制御回路175と、第1の制御回路174及び第2の制御回路175を制御する第3の制御回路176とを備える。
例えば、制御部173は、複数の第1の配線171及び複数の第2の配線172を介して圧力センサ100に電流を流す。ここで、図示しないタッチ面が押圧された場合、圧力センサ100はその圧力に応じて歪検出素子の抵抗値を変化させる。制御部173は、この抵抗値の変化を検出することにより、押圧による圧力を検出した圧力センサ100の位置を特定する。
第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100は高感度であるため、これを搭載したタッチパネル170は感度良く押圧による圧力を検出する事が可能である。また、圧力センサ100は小型であり、解像度の高いタッチパネル170を製造する事が可能である。
尚、タッチパネル170は、圧力センサ100の他にタッチを検出するための検出要素を備えていても良い。
[7.その他の応用例]
以上、具体例を参照しつつ、第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサ100の応用例について説明した。しかし、圧力センサ100は、第4〜第6に示す実施の形態の他に、気圧センサやタイヤの空気圧センサ等、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
また、歪検出素子200、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170に含まれる膜部、歪検出素子、第1の磁性層、第2の磁性層及び中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
[8.その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、下記の様な態様によっても実施することが可能である。
[態様1]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
前記第1の磁性層の第1の対向面に対向する第2の対向面を有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層は、前記第1の対向面の一部において前記第2の対向面と対向する
ことを特徴とする歪検出素子。
[態様2]
前記第1の対向面の面積は、前記第2の対向面の面積よりも大きい
ことを特徴とする態様1記載の歪検出素子。
[態様3]
前記第2の対向面は、前記第2の対向面の全体において前記第1の対向面と対向する
ことを特徴とする態様1または2記載の歪検出素子。
[態様4]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
前記第1の磁性層の第1の対向面に対向する第2の対向面をそれぞれ有する複数の第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた中間層と
を備えた
ことを特徴とする歪検出素子。
[態様5]
前記第1の磁性層は、前記第1の対向面の一部において前記第2の対向面と対向する
ことを特徴とする態様4記載の歪検出素子。
[態様6]
前記第1の磁性層と電気的に接続された第1の電極と、
前記複数の第2の磁性層と電気的に並列に接続された第2の電極と
を更に備え、
前記第1の磁性層と前記複数の第2の磁性層との前記中間層を介した接合が、前記第1の電極と前記第2の電極との間で電気的に並列に接続されている
ことを特徴とする態様4または5記載の歪検出素子。
[態様7]
一の前記第2の磁性層と電気的に接続された第1の電極と、
他の前記第2の磁性層と電気的に接続された第2の電極と
を更に備え、
前記第1の磁性層と前記複数の第2の磁性層との前記中間層を介した接合が、前記第1の電極と前記第2の電極との間で電気的に直列に接続されている
ことを特徴とする態様4または5記載の歪検出素子。
[態様8]
前記第2の磁性層の磁化方向は、一方向に固着されている
ことを特徴とする態様1〜7のうちのいずれか一項記載の歪検出素子。
[態様9]
前記第2の磁性層の磁化方向は、積層方向に隣接する反強磁性層によって一方向に固着されている
ことを特徴とする態様8記載の歪検出素子。
[態様10]
前記中間層と前記第1の磁性層の間に設けられた第3の磁性層を更に備えた
ことを特徴とする態様1〜9のうちのいずれか一項記載の歪検出素子。
[態様11]
前記中間層の平面形状は、前記第1の磁性層と同じである
ことを特徴とする態様1〜10記載の歪検出素子。
[態様12]
前記中間層の平面形状は、前記第2の磁性層と同じである
ことを特徴とする態様1〜10記載の歪検出素子。
[態様13]
前記第2の磁性層と前記膜部との間に前記第1の磁性層が設けられている
ことを特徴とする態様1〜12記載の歪検出素子。
[態様14]
支持部と、前記支持部に支持された前記膜部と、前記膜部の上に設けられた態様1〜13のうちのいずれか一項記載の歪検出素子とを備えた
ことを特徴とする圧力センサ。
[態様15]
前記第1の磁性層は、積層方向に垂直な面内における第1の面内方向に対して、前記積層方向及び前記第1の面内方向に垂直な第2の面内方向よりも長く形成されている
ことを特徴とする態様1〜14記載の歪検出素子。
[態様16]
支持部と、前記支持部に支持された前記膜部と、前記膜部の上に設けられた態様15記載の歪検出素子とを備えた圧力センサであって、
前記第1の磁性層は、前記第1の磁性層の重心と前記第1の領域の外縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記第1の面内方向との相対角度が、0°よりも大きく90°よりも小さくなるように設けられる
ことを特徴とする圧力センサ。
[態様17]
前記歪検出素子を前記膜部の上に複数設けてなる
ことを特徴とする態様14または16記載の圧力センサ。
[態様18]
支持部と、前記支持部に支持された前記膜部と、前記膜部の上に複数設けられた態様15記載の歪検出素子とを備えた圧力センサであって、
前記第1の磁性層の、前記第1の磁性層の重心と前記第1の領域の外縁とを最短距離で結ぶ直線と、前記第1の面内方向との相対角度を第3角度とすると、
前記複数の歪検出素子について、最大の第3角度と最小の第3角度の差が5度以下である
ことを特徴とする圧力センサ。
[態様19]
支持部と、前記支持部に支持された前記膜部と、前記膜部の上に複数設けられた態様1〜13または態様15記載の歪検出素子とを備えた圧力センサであって、
複数の前記歪検出素子のうちの少なくとも2つが電気的に直列に接続されている
ことを特徴とする圧力センサ。
[態様20]
態様14または態様16〜19記載の圧力センサを備えたマイクロフォン。
[態様21]
態様14または態様16〜19記載の圧力センサを備えた血圧センサ。
[態様22]
態様14または態様16〜19記載の圧力センサを備えたタッチパネル。
[9.その他]
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
また、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。