以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1(a)および図1(b)は、第1の実施形態にかかる歪検知素子を例示する模式図である。
図1(a)は、歪検知素子が用いられる圧力センサを例示する模式的断面図である。図1(b)は、歪検知素子の模式的斜視図である。
図1(a)に表したように、歪検知素子100は、圧力センサ200に用いられる。圧力センサ200は、基板210と、歪検知素子100と、を含む。基板210は、可撓性の領域を有する。基板210は、変形可能である。歪検知素子100は、基板210に固定される。本願明細書において、固定される状態は、直接的に固定される状態と、別の要素のよって間接的に固定される状態と、を含む。例えば、歪検知素子100が基板210に固定される状態は、歪検知素子100と基板210との間の相対的な位置が固定される状態を含む。歪検知素子100は、例えば、基板210の一部の上に設けられる。
本願明細書において、「上に設けられる」状態は、直接接して設けられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて設けられる状態も含む。
基板210に力801が加わると、基板210は変形する。基板210の変形に伴い、歪検知素子100に歪みが生ずる。
実施形態にかかる歪検知素子100において、例えば、外部からの力に対して基板210が変形すると、歪検知素子100に歪みが生ずる。歪検知素子100は、この歪の変化を電気抵抗の変化に変換する。
図1(b)に表したように、実施形態にかかる歪検知素子100は、参照層10と、磁化自由層20と、中間層30と、を含む。
例えば、参照層10から磁化自由層20に向かう方向をZ軸方向(積層方向)とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
磁化自由層20においては、基板210の撓みに応じて磁化方向が変化する。中間層30は、磁化自由層20と、参照層10と、の間に設けられる。磁化自由層20は、第1磁性層21と、磁気結合層23と、第2磁性層22と、を含む。第1磁性層21は、中間層30に接して配置される。第2磁性層22は、第1磁性層21と離れて設けられる。磁気結合層23は、第1磁性層21と第2磁性層22との間に設けられる。第1磁性層21と第2磁性層22とのそれぞれの磁化方向は、磁気結合層23を介して互いに逆向き(反平行)に設定されている。
第1磁性層21及び第2磁性層22には、例えば強磁性層が用いられる。参照層10には、例えば強磁性層が用いられる。参照層10として、磁化固定層、または、磁化自由層が用いられる。例えば、磁化自由層の磁化の変化は、参照層の磁化の変化よりも容易とすることができる。このようにすることで、後述するように基板210に力が加わって基板210が曲がった際に磁化自由層の磁化と参照層の磁化との相対角度に変化を生じさせることができる。
次に、歪検知素子の動作の例について説明する。
図2(a)〜図2(c)は、比較例に係る歪検知素子の動作を例示する模式図である。 図2(a)は、歪検知素子100に引張応力tsが印加されたときの状態(引張状態STt)に対応する。図2(b)は、歪検知素子100が歪を有しないときの状態(無歪状態ST0)に対応する。図2(c)は、歪検知素子100に圧縮応力csが印加されたときの状態(圧縮状態STc)に対応する。
図2(a)〜図2(c)に表した歪検知素子180は、比較例として、単層の磁性層からなる磁化自由層20を有する。
なお、図2(a)〜図2(c)では、単層の磁化自由層20と、参照層10として磁化固定層と、を用いた場合を例にとっている。
歪検知素が歪センサとして機能する動作は、「逆磁歪効果」と「磁気抵抗効果」との応用に基づく。「逆磁歪効果」は、磁化自由層に用いられる強磁性層において得られる。「磁気抵抗効果」は、磁化自由層と中間層と参照層(磁化固定層)との積層膜において発現する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化が強磁性体に生じた歪によって変化する現象である。すなわち、歪検知素子の積層体に外部歪が印加されると、磁化自由層の磁化方向が変化する。その結果、磁化自由層の磁化と参照層(磁化固定層)の磁化との間の相対角度が変化する。この際に「磁気抵抗効果(MR効果)」により、電気抵抗の変化が引き起こされる。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。積層体に電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで、MR効果が発現する。例えば、積層体(歪検知素子)に歪が生じ、歪によって磁化自由層の磁化の向きが変化し、磁化自由層の磁化の向きと、参照層(磁化固定層)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。すなわち、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。
磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が小さくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が大きくなるように、磁化の方向が変化する。磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が大きくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が小さくなるように、磁化の方向が変化する。
磁化自由層と中間層と参照層(磁化固定層)との積層体の材料の組み合わせが正の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層と磁化固定層の相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。磁化自由層と中間層と参照層(磁化固定層)との積層体の材料の組み合わせが負の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層と磁化固定層の相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
以下、磁化自由層と、磁化固定層と、に用いられる強磁性材料がそれぞれ正の磁歪定数を有し、磁化自由層と中間層と磁化固定層との積層膜が正の磁気抵抗効果を有する場合の例に関して、磁化の変化の例について説明する。
図2(b)に示すように、歪を印加されていない初期状態の磁化自由層20の磁化20mと、磁化固定層10(参照層10)の磁化10mと、の相対角度は、任意に設定することができる。初期状態の磁化自由層20の磁化20m方向は、ハードバイアスや歪検知素子の形状異方性などで設定することができる。
図2(a)において、矢印の方向に引張歪が生じた場合、磁化自由層20の磁化20mは、引張歪が加わった方向との角度を小さくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。図2(a)に示した例では、引張歪が加わった場合は、歪なしの初期磁化方向に比べて、磁化自由層20の磁化20mと磁化固定層10の磁化10mとの相対角度が小さくなり、歪検知素子180の電気抵抗は減少する。
一方で、図2(c)において、矢印の方向に圧縮歪が生じた場合、磁化自由層20の磁化20mは、圧縮歪が加わった方向との角度が大きくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。図2(c)に示した例では、圧縮歪が加わった場合は、歪なしの初期磁化方向に比べて、磁化自由層20の磁化20mと磁化固定層10の磁化10mの相対角度が大きくなり、歪検知素子180の電気抵抗は増大する。
このようにして、歪検知素子180は、歪検知素子180に加わった歪の変化を電気抵抗の変化に変換することができる。上記の作用に得られる単位歪(d)あたりの磁気抵抗変化量(dR/R)をゲージファクター(GF:gauge factor)と呼び、ゲージファクターの高い歪検知素子を実現することで高感度な歪センサを実現することができる。
図2(a)〜図2(c)に示した単層の磁化自由層20を有する歪検知素子180では、素子寸法が小さくなった場合に、磁化自由層20の素子端部における磁極の影響によって、磁化自由層20の内部に反磁界が発生し、磁化方向が乱れることがある。この磁化方向の乱れは、歪検知素子180の歪による磁化固定層10と磁化自由層20との相対角度の変化を低減する事がある。磁化自由層20の反磁界を低減することで、小さい素子寸法において高感度な歪センサを提供することができる。
図3(a)〜図3(c)は、本実施形態の歪検知素子の作用について例示するための模式図である。
なお、図3(a)〜図3(c)では、第1磁性層21と磁気結合層23と第2磁性層22からなる磁化自由層20と、参照層10として磁化固定層を用いた場合を例にとっている。
図3(a)〜図3(c)に示す歪検知素子100においても、図2(a)〜図2(c)にて説明した歪検知素子180と同様に、「逆磁歪効果」と「磁気抵抗効果」との応用に基づいて、歪センサとして機能する。
図2(a)〜図2(c)にて説明した歪検知素子180と同様に、磁化自由層20に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が小さくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が大きくなるように、磁化の方向が変化する。磁化自由層20に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が大きくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が小さくなるように、磁化の方向が変化する。
磁化自由層20と中間層30と磁化固定層10との積層膜の材料の組み合わせが正の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層20と磁化固定層10との相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。磁化自由層20と中間層30と磁化固定層10との積層膜の材料の組み合わせが負の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層20と磁化固定層10との相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
中間層30に絶縁層を用いたトンネル磁気抵抗効果型の積層膜の場合、磁化自由層20の中でも中間層30に接している第1磁性層21と中間層30と磁化固定層10との積層膜の材料の組み合わせが正の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層20中の第1磁性層21の磁化21mと磁化固定層10の磁化10mとの相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。磁化自由層20の中でも中間層30に接している第1磁性層21と中間層30と磁化固定層10との積層膜の材料の組み合わせが負の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層20中の第1磁性層21の磁化21mと磁化固定層10の磁化10mとの相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
以下、磁化自由層20に含まれる第1磁性層21と、第2磁性層22と、磁化固定層10と、に用いられる強磁性材料がそれぞれ正の磁歪定数を有し、中間層30に絶縁層が用いられたトンネル磁気抵抗効果の積層膜において、磁化自由層20中の第1磁性層21と中間層30と磁化固定層10との積層膜が正の磁気抵抗効果を有する場合の例に関して、磁化の変化の例について説明する。
図3(b)に示すように、歪を印加されていない初期状態の磁化自由層20内に含まれる第1磁性層21の磁化21mと第2磁性層22の磁化22mと磁化固定層10の磁化10mとの相対角度は任意に設定することができる。初期状態の磁化自由層20の方向はハードバイアスや歪検知素子の形状異方性などで設定することができる。
図3(a)において、矢印の方向に引張歪が生じた場合、磁化自由層20の磁化20mは、引張歪が加わった方向との角度を小さくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。磁気結合層23によって、互いに反平行に設定された第1磁性層21と第2磁性層22とのそれぞれの磁化方向は、反平行の磁化方向を保ったまま、引張歪が加わった方向との角度を小さくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。図3(a)に示した例では、引張歪が加わった場合は、歪なしの初期磁化方向に比べて、磁化自由層20内の第1磁性層21の磁化21mと磁化固定層10の磁化10mとの相対角度が小さくなり、歪検知素子100の電気抵抗は減少する。
一方で、図3(c)において、矢印の方向に圧縮歪が生じた場合、磁化自由層20は、圧縮歪が加わった方向との角度が大きくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。磁気結合層23によって、互いに反平行に設定された第1磁性層21と第2磁性層22のそれぞれの磁化方向は、反平行の磁化方向を保ったまま、圧縮歪が加わった方向との角度を大きくなるように、歪なしの初期磁化方向から変化する。図3(c)に示した例では、圧縮歪が加わった場合は、歪なしの初期磁化方向に比べて、磁化自由層20内の第1磁性層21の磁化21mと磁化固定層10の磁化10mとの相対角度が大きくなり、歪検知素子100の電気抵抗は増大する。
このようにして、歪検知素子100は、歪検知素子100に加わった歪の変化を電気抵抗の変化に変換することができる。上記の作用に得られる単位歪(d)あたりの磁気抵抗変化量(dR/R)をゲージファクター(GF:gauge factor)と呼び、ゲージファクターの高い歪検知素子を実現することで高感度な歪センサを実現することができる。
本実施形態のように、磁気結合層23を介して互いに反平行に磁気結合した第1磁性層21と第2磁性層22とを含む磁化自由層20を用いることによって、第1磁性層21の磁極と第2磁性層22の磁極とが互いに逆の極性となって結合することで、素子端部における磁性層の反磁界が低減される。磁化自由層20の反磁界が低減されることによって、小さい素子寸法においても高い歪検知感度を実現することができる。ひいては、高分解能と高感度を両立した歪検知素子100を提供することができる。
第1の実施形態にかかる歪検知素子100の例について説明する。
以下において、「材料A/材料B」の記載は、材料Aの層の上に、材料Bの層が設けられている状態を示す。
図4は、第1の実施形態に係る歪検知素子を例示する模式的斜視図である。
図4に表したように、実施形態に用いられる歪検知素子100aは、第1電極E1と、下地層50と、ピニング層60と、参照層10と、中間層30と、磁化自由層20と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。参照層10は、第2磁化固定層12と、第1磁化固定層11と、磁気結合層13と、を含む。磁化自由層20は、第1磁性層21と、磁気結合層23と、第2磁性層22と、を含む。
第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、ピニング層60が設けられる。ピニング層60と第2電極E2との間に、第2磁化固定層12が設けられる。第2磁化固定層12と第2電極E2との間に、磁気結合層13が設けられる。磁気結合層13と第2電極E2の間に、第1磁化固定層11が設けられる。第1磁化固定層11と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第1磁性層21が設けられる。第1磁性層21と第2電極E2との間に、磁気結合層23が設けられる。磁気結合層23と第2電極E2との間に、第2磁性層22が設けられる。第2磁性層22と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
第2磁化固定層12には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。 磁気結合層13には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第1磁化固定層11には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。 中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
磁化自由層20に含まれる第1磁性層21には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。磁気結合層23には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。磁化自由層20に含まれる第2磁性層22には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。
キャップ層70には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
第1電極E1及び第2電極E2には、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)の少なくともいずれかが用いられる。第1電極E1及び第2電極E2として、このような電気抵抗が比較的小さい材料を用いることで、歪検知素子100aに効率的に電流を流すことができる。第1電極E1には、非磁性材料を用いることができる。
第1電極E1は、例えば、第1電極E1用の下地層(図示せず)と、第1電極E1用のキャップ層(図示せず)と、それらの間に設けられた、Al、Al−Cu、Cu、Ag、及び、Auの少なくともいずれかの層と、を含んでもよい。例えば、第1電極E1には、タンタル(Ta)/銅(Cu)/タンタル(Ta)などが用いられる。第1電極E1用の下地層としてTaを用いることで、例えば、基板210と第1電極E1との密着性が向上する。第1電極E1用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
第1電極E1のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下の銅(Cu)などの酸化を防ぐことができる。第1電極E1用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
下地層50には、例えば、バッファ層(図示せず)と、シード層(図示せず)と、を含む積層構造を用いることができる。このバッファ層は、例えば、第1電極E1または基板210の表面の荒れを緩和し、このバッファ層の上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層として、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。バッファ層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。
下地層50のうちのバッファ層の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましい。バッファ層の厚さは、1nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎると、バッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎると、歪検知素子100aの厚さが過度に厚くなる。バッファ層の上にシード層が形成され、そのシード層がバッファ効果を有することができる。この場合、バッファ層は省略してもよい。バッファ層には、例えば、3nmの厚さのTa層が用いられる。
下地層50のうちのシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶配向を制御する。このシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶粒径を制御する。このシード層として、fcc構造(face-centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body-centered cubic structure:体心立方格子構造)の金属等が用いられる。
下地層50のうちのシード層として、hcp構造のルテニウム(Ru)、または、fcc構造のNiFe、または、fcc構造のCuを用いることにより、例えば、シード層の上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。シード層には、例えば、2nmの厚さのCu層、または、2nmの厚さのRu層が用いられる。シード層の上に形成される層の結晶配向性を高める場合には、シード層の厚さは、1nm以上5nm以下が好ましい。シード層の厚さは、1nm以上3nm以下がより好ましい。これにより、結晶配向を向上させるシード層としての機能が十分に発揮される。
一方、例えば、シード層の上に形成される層を結晶配向させる必要がない場合(例えば、アモルファスの磁化自由層を形成する場合など)には、シード層は省略してもよい。シード層としては、例えば、2nmの厚さのRu層が用いられる。
ピニング層60は、例えば、ピニング層60の上に形成される参照層10(強磁性層)に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して、参照層10の磁化10mを固定する。ピニング層60には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層60には、例えば、IrMn、PtMn、PdPtMn及びRuRhMnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層60の厚さは適切に設定される。
ピニング層60として、PtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、ピニング層60の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。ピニング層60の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層60としてIrMnを用いる場合には、ピニング層60としてPtMnを用いる場合よりも薄い厚さで、一方向異方性を付与することができる。この場合には、ピニング層60の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。ピニング層60の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
ピニング層60として、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層として、例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoxPt100−x)100−yCry(xは、50at.%以上85at.%以下であり、yは、0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は、40at.%以上60at.%以下)などを用いてもよい。
第2磁化固定層12には、例えば、CoxFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層12として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層12として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。第2磁化固定層12として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第2磁化固定層12として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、歪検知素子100aのサイズが小さい場合にも、歪検知素子100aの特性のばらつきを抑えることができる。
第2磁化固定層12の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、ピニング層60による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層12の上に形成される磁気結合層13を介して、第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間の反強磁性結合磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層12の磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第1磁化固定層11の磁気膜厚と、実質的に等しいことが好ましい。
薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)である。例えば、第1磁化固定層11として、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いると、第1磁化固定層11の磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。一方、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2磁化固定層12の厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2磁化固定層12には、約2.7nmの厚さのCo75Fe25層を用いることが好ましい。第2磁化固定層12として、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
歪検知素子100aにおいては、第1磁性層21には、第2磁化固定層12と磁気結合層13と第1磁化固定層11とにより、シンセティックピン構造が用いられている。第1磁性層21に、1層の磁化固定層からなるシングルピン構造を用いても良い。シングルピン構造を用いる場合には、磁化固定層として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、上述した第2磁化固定層12の材料と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層13は、第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間において、反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層13は、シンセティックピン構造を形成する。磁気結合層13として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層13の厚さは、例えば、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層13としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層13の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層13の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層13として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層11に用いられる磁性層は、MR効果に直接的に寄与する。第1磁化固定層11として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いた場合には、例えば、歪検知素子100aのサイズが小さい場合においても、結晶粒に起因した素子間のばらつきを抑えることができる。
第1磁化固定層11の上に形成される層(例えばトンネル絶縁層(図示せず))を平坦化することができる。トンネル絶縁層の平坦化により、トンネル絶縁層の欠陥密度を減らすことができる。これにより、より低い面積抵抗で、より大きいMR変化率が得られる。例えば、トンネル絶縁層の材料としてMgOを用いる場合には、第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、トンネル絶縁層の上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性をより高くすることで、より大きいMR変化率が得られる。(CoxFe100−x)100−yBy合金は、アニール時にMgO層の(100)面をテンプレートとして結晶化する。このため、MgOと(CoxFe100−x)100−yBy合金との良好な結晶整合が得られる。良好な結晶整合を得ることで、より大きいMR変化率が得られる。
第1磁化固定層11として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いてもよい。
第1磁化固定層11がより厚いと、より大きなMR変化率が得られる。より大きな固定磁界を得るためには、第1磁化固定層11は、薄いほうが好ましい。MR変化率と固定磁界との間には、第1磁化固定層11の厚さにおいてトレードオフの関係が存在する。第1磁化固定層11としてCo−Fe−B合金を用いる場合には、第1磁化固定層11の厚さは、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第1磁化固定層11の厚さは、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
第1磁化固定層11には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層11として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層11として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層11として、bcc構造のFeCo合金材料、50at.%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50at.%以上のNi組成の材料(Ni合金)を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。
第1磁化固定層11として、例えば、Co2MnGe、Co2FeGe、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGa0.5Ge0.5、及び、Co2FeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層11として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層30は、例えば、参照層10と磁化自由層20との磁気的な結合を分断する。中間層30には、例えば、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層30として金属を用いる場合、中間層30の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、亜鉛酸化物(ZnO等)、または、ガリウム酸化物(Ga−O)などが用いられる。中間層30として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層30の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。中間層30として、例えば、CCP(Current-Confined-Path)スペーサ層を用いてもよい。スペーサ層としてCCPスペーサ層を用いる場合には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の絶縁層中に銅(Cu)メタルパスが形成された構造が用いられる。例えば、中間層30として、1.5nmの厚さのMgO層が用いられる。
磁化自由層20には、順に積層した第1磁性層21、磁気結合層23、第2磁性層22が含まれる。第1磁性層21および第2磁性層22には、例えば、強磁性体材料が用いられる。磁気結合層23は、第1磁性層21と第2磁性層22との間に反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層23は、シンセティックフリー構造を形成する。磁気結合層23として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層23の厚さは、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第1磁性層21と第2磁性層22との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層23としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層23の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層23の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層23として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。Ru以外にもRh、Irなどを用いることができる。
本実施形態では、互いに反平行に結合した第1磁性層21と第2磁性層22からなるシンセティック型のフリー層を磁化自由層20に用いることによって、小さい素子寸法においても高い歪感度を実現することができる。
第1磁性層21および第2磁性層22の材料として、例えば、Fe、Co、Niを含む強磁性材料が用いられる。第1磁性層21および第2磁性層22の材料として、例えばFeCo合金、NiFe合金等が用いられる。さらに、磁化自由層20には、Co−Fe−B合金、Fe−Co−Si−B合金、λs(磁歪定数)が大きいFe−Ga合金、Fe−Co−Ga合金、Tb−M−Fe合金、Tb−M1−Fe−M2合金、Fe−M3−M4−B合金、Ni、Fe−Al、または、フェライト等が用いられる。前述したTb−M−Fe合金において、Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したTb−M1−Fe−M2合金において、M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。M2は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したFe−M3−M4−B合金において、M3は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つである。M4は、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy及びErよりなる群から選択された少なくとも1つである。前述したフェライトとしては、Fe3O4、(FeCo)3O4などが挙げられる。磁化自由層20の厚さは、例えば2nm以上である。
第1磁性層21および第2磁性層22には、ホウ素を含有した磁性材料を用いてもよい。例えば、磁化自由層20には、例えば、Fe、Co、Niから選択される少なくとも一つの元素とホウ素(B)とを含む合金を用いることができる。例えば、Co40Fe40B20合金を用いることができる。磁化自由層20に、Fe、Co、Niから選択される少なくとも一つの元素とホウ素(B)とを含む合金を用いる場合、高磁歪を促進する元素として、Ga、Al、Si、Wなどを添加しても良い。例えば、Fe−Ga−B合金やFe−Co−Ga−B合金やFe−Co−Si−B合金を用いても良い。このようなホウ素を含有する磁性材料を用いることで磁化自由層20の保磁力(Hc)が低いものとなり、歪に対する磁化の方向の変化が容易となり、高い歪感度を得ることができる。
第1磁性層21および第2磁性層22の少なくともいずれかの磁性層に含まれるB濃度は、アモルファス構造を得る観点で5at.%以上が好ましく、一方でB濃度が高すぎると磁歪が減少するため35at.%以下が好ましい。つまり、B濃度は、5at.%以上35at.%以下が好ましく、10at.%以上30at.%以下がさらに好ましい。
例えば、第1磁性層21/磁気結合層23/第2磁性層22の積層構造を、Co−Fe−B(4nm)(第1磁性層21)/Ru(0.9nm)(磁気結合層23)/Co−Fe−B(2nm)(第2磁性層22)などを用いることができる。
第1磁性層21および第2磁性層22の少なくともいずれかの磁性層の一部に、Fe1−yBy(0<y≦0.3)、または(FeaX1−a)1−yBy(X=CoまたはNi、0.8≦a<1、0<y≦0.3)用いる場合、大きい磁歪定数λと低い保磁力を両立することが容易となるため、高いゲージファクターを得る観点で特に好ましい。
例えば、第1磁性層21/磁気結合層23/第2磁性層22の積層構造を、Co40Fe40B20(0.5nm)/Fe80B20(4nm)/Co40Fe40B20(0.5nm)(第1磁性層21)/Ru(0.9nm)(磁気結合層23)/Co−Fe−B(0.5nm)/Fe80B20(4nm)(第2磁性層22)などを用いることができる。
図5は、磁化自由層の別の例を例示する模式的斜視図である。
図5に表した歪検知素子100bのように、第1磁性層21と第2磁性層22は、それぞれ多層構造を有しても良い。この例では、第1磁性層21は、第1磁性膜21sと、第2磁性膜21tと、を含む。この例では、第2磁性層22は、第1磁性膜22sと、第2磁性膜22tと、を含む。
第1磁性層21は、図5に示すように、中間層30に接する磁性層である。中間層30としてMgOのトンネル絶縁層を用いる場合には、中間層30に接する界面には、Co−Fe−B合金の層を設けることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗効果が得られる。この場合、中間層30の上にはCo−Fe−B合金の層を設け、その上には磁歪定数の大きい他の磁性材料を設けることができる。この場合、第2磁性層22の磁歪定数の絶対値は、第1磁性層21の磁歪定数の絶対値よりも大きい。
また、第1磁性層21と磁気結合層23との間の界面、および、第2磁性層22と磁気結合層23との間の界面には、Coを含む磁性層を配置することが望ましい。磁気結合層23にRuを用いる場合、Ruを介した反強磁性結合を安定に得るためには、Ruの界面にCoを含む磁性層を配置することが望ましい。例えば、磁気結合層23の界面にはCoやCo−Fe合金、Co−Fe−B合金を用いることができる。
第1磁性層21および第2磁性層22のうち、磁気結合層23の下部に配置される磁性層(この例では第2磁性膜21t)と磁気結合層23との間の界面には、結晶構造を有する磁性層を配置することが望ましい。結晶構造を有する磁性層を配置することで、例えば、磁気結合層23に用いられるRuの結晶性を向上することができ、Ruを介した反強磁性結合を安定的に得ることができる。例えば、磁気結合層23の下部界面には、hcp構造のCoやfcc構造のCo−Fe合金やbcc構造のCo−Fe合金を用いることができる。図4および図5に示す例では、第1磁性層21が磁気結合層23の下部に配置されているため、第1磁性層21と磁気結合層23との間の界面に結晶構造を有する磁性層を用いることが好ましい。
上述したように、第1磁性層21と第2磁性層22とのそれぞれを多層構造とする場合、例えば、Co−Fe−B(1nm)/Fe−Co−Si−B(3nm)/Co−Fe(0.5nm)(第1磁性層21)/Ru(0.9nm)(磁気結合層23)/Co−Fe−B(1nm)/Fe−Co−Si−B(2nm)(第2磁性層22)などを用いることが出来る。
第1磁性層21と第2磁性層22との磁気膜厚は、目的に応じて適宜調整することができる。例えば、磁化自由層20の素子端部に生ずる磁極による反磁界の影響を少なくする目的では、第1磁性層21と第2磁性層22との磁気膜厚をそろえることが望ましい。また、後述するように、本実施形態の歪検知素子を複数近接して配置する場合、複数の歪検知素子のそれぞれの磁化自由層20からの漏洩磁界が互いに干渉し、歪検知素子の動作に悪影響を及ぼすことがある。このような場合、第1磁性層21と第2磁性層22の磁気膜厚をそろえることで、反平行に結合した磁化自由層20から外部への漏洩磁界は、ほぼゼロとすることができる。
外部への漏洩磁界を最小限に抑える目的の場合には、例えば、第1磁性層21と第2磁性層22の磁気膜厚の差分を2T・nm(テスラナノメートル)以内にすることが好ましく、1T・nm(テスラナノメートル)以内にすることがさらに好ましい。例えば、第1磁性層21と第2磁性層22とにそれぞれCo40Fe40B20を用いる場合、第1磁性層21にCo40Fe40B20(4nm)を用いると、薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)であるため、第1磁性層21の磁気膜厚は7.6T・nmとなる。この場合、例えば、第2磁性層22の磁気膜厚を5.6T・nm以上9.6T・nm以下、さらに好ましくは6.6T・nm以上8.6T・nm以下とすることができる。すなわち、第2磁性層22のCo40Fe40B20の膜厚を3nm以上5nm以下とすることができ、さらに好ましくは3.5nm以上4.5nm以下とすることができる。
一方で、後述するハードバイアス素子を用いて磁化自由層20の初期磁化方向を制御したい場合、第1磁性層21と第2磁性層22との磁気膜厚の差は、ある程度大きいことが望ましい。ハードバイアス構造で磁化自由層20の初期磁化方向を制御する目的の場合、第1磁性層21と第2磁性層22の磁気膜厚の差は、0.5T・nm(テスラナノメートル)以上にすることが好ましく、1T・nm(テスラナノメートル)以上にすることがさらに好ましい。例えば、第1磁性層21と第2磁性層22とにそれぞれCo40Fe40B20を用いた場合、第1磁性層21にCo40Fe40B20(4nm)を用いると、薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)であるため、第1磁性層21の磁気膜厚は7.6T・nmとなる。この場合、例えば、第2磁性層22の磁気膜厚を、7.1T・nm以下または8.1T・nm以上とすることができ、さらに好ましくは6.6T・nm以下または8.6T・nm以上とすることができる。すなわち、第2磁性層22のCo40Fe40B20の膜厚を3.7T・nm以下または4.3T・nm以上とすることができ、さらに好ましくは3.5T・nm以下または4.5T・nm以上とすることができる。
図6は、磁化自由層の別の例を例示する模式的斜視図である。
図6に示す歪検知素子100cのように、磁化自由層20に用いる磁気結合層を介して反平行結合した磁性層を3層以上設けてもよい。例えば、第1磁性層21/第1磁気結合層23a/第2磁性層22/第2磁気結合層23b/第3磁性層24を用いることができる。この場合、第1磁気結合層23aと第2磁気結合層23bとは、前述した磁気結合層23と同様の材料を用いることができる。第1磁性層21には、前述した第1磁性層21と同様の材料を用いることができる。第2磁性層22および第3磁性層24のそれぞれには、前述した第2磁性層22と同様の材料を用いることができる。
キャップ層70(図4参照)は、キャップ層70の下に設けられる層を保護する。キャップ層70には、例えば、複数の金属層が用いられる。キャップ層70には、例えば、Ta層とRu層との2層構造(Ta/Ru)が用いられる。このTa層の厚さは、例えば1nmであり、このRu層の厚さは、例えば5nmである。キャップ層70として、Ta層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層70の構成は、任意である。例えば、キャップ層70として、非磁性材料を用いることができる。キャップ層70の下に設けられる層を保護可能なものであれば、キャップ層70として、他の材料を用いても良い。
磁化自由層20にホウ素を含有する磁性材料を用いる場合、ホウ素の拡散を防ぐために、酸化物材料や窒化物材料の拡散防止層を磁化自由層20とキャップ層70との間に設けても良い。酸化物層または窒化物層からなる拡散防止層を用いることにより、磁化自由層20に含まれるホウ素の拡散を抑制し、磁化自由層20のアモルファス構造を保つことができる。拡散防止層に用いる酸化物材料や窒化物材料として、具体的には、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Sn、Cd、Gaなどの元素を含む酸化物材料や窒化物材料を用いることができる。ここで、拡散防止層は、磁気抵抗効果には寄与しない層のため、その面積抵抗は低いほうが好ましい。例えば、拡散防止層の面積抵抗は、磁気抵抗効果に寄与する中間層30の面積抵抗よりも低く設定することが好ましい。拡散防止層の面積抵抗を下げる観点では、バリアハイトの低いMg、Ti、V、Zn、Sn、Cd、Gaの酸化物または窒化物が好ましい。ホウ素の拡散を抑制する機能としては、より化学結合の強い酸化物のほうが好ましい。例えば、2.0nmのMgOを用いることができる。
拡散防止層に酸化物材料、窒化物材料を用いる場合、拡散防止層の膜厚は、ホウ素の拡散防止機能を十分に発揮する観点で0.5nm以上が好ましく、面積抵抗を低くする観点で5nm以下が好ましい。つまり、拡散防止層の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、1nm以上3nm以下が好ましい。
拡散防止層として、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくともいずれかを用いることができる。拡散防止層として、これらの軽元素を含む材料を用いることができる。これらの軽元素は、ホウ素と結合して化合物を生成する。拡散防止層と磁化自由層20との界面を含む部分に、例えば、Mg−B化合物、Al−B化合物、及び、Si−B化合物の少なくともいずれかが形成される。これらの化合物が、ホウ素の拡散を抑制する。
拡散防止層と磁化自由層20との間に他の金属層などが挿入されていてもよい。ただし、拡散防止層と磁化自由層20との距離が離れすぎていると、その間でホウ素が拡散して磁化自由層20中のホウ素濃度が下がってしまうため、拡散防止層と磁化自由層20との間の距離は、10nm以下が好ましく3nm以下がさらに好ましい。
図7は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を例示する模式的斜視図である。
図7に例示したように、歪検知素子100dにおいては、絶縁層81が設けられる。すなわち、第1電極E1と第2電極E2との間に、互いに離間する2つの絶縁層81(絶縁部分)が設けられ、それらの間に、積層体が配置される。積層体は、第1電極E1と第2電極E2との間に配置されている。積層体は、歪検知素子100dの場合には、下地層50と、ピニング層60と、参照層10と、中間層30と、磁化自由層20と、キャップ層70と、を含む。磁化自由層20は、第1磁性層21と、磁気結合層23と、第2磁性層22と、を含む。すなわち、積層体の側壁に対向して、絶縁層81が設けられる。
絶縁層81には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層81により、積層体の周囲におけるリーク電流を抑制することができる。
図8は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を例示する模式的斜視図である。
図8に例示したように、歪検知素子100eにおいては、ハードバイアス層83がさらに設けられる。すなわち、第1電極とE1と第2電極E2との間に、互いに離間する2つのハードバイアス層83(ハードバイアス部分)が設けられ、それらの間に、積層体が配置される。そして、ハードバイアス層83と積層体との間に、絶縁層81が配置される。さらに、この例では、ハードバイアス層83と第1電極E1との間に、絶縁層81が延在している。
ハードバイアス層83は、ハードバイアス層83の磁化により、第1磁性層21の磁化21m及び第2磁性層22の磁化22mの少なくともいずれかを所望の方向に設定させる。ハードバイアス層83により、力が基板210に印加されていない状態において、第1磁性層21の磁化21m及び第2磁性層22の磁化22mの少なくともいずれかを所望の方向に設定できる。
ハードバイアス層83には、例えば、CoPt、CoCrPt、または、FePt等の磁気異方性が比較的高い硬質強磁性材料が用いられる。ハードバイアス層83には、FeCoまたはFeなどの軟磁性材料の層と、反強磁性層と、を積層した構造を用いることができる。この場合には、交換結合により、磁化が所定の方向に沿う。ハードバイアス層83の厚さ(第1電極E1から第2電極E2に向かう方向に沿った長さ)は、例えば5nm以上50nm以下である。
上記のハードバイアス層83及び絶縁層81は、後述する歪検知素子のいずれにも適用できる。
(実施例1)
実施形態に係る第1の実施例として、下記の構造を有する歪検知素子を作製する。
下地層50:Ta(1nm)/Ru(2nm)
ピニング層60:Ir22Mn78(7nm)
第2磁化固定層12:Co75Fe25(2.5nm)
磁気結合層13:Ru(0.9nm)
第1磁化固定層11:Co40Fe40B20(3nm)
中間層30:MgO(2nm)
磁化自由層20:Co40Fe40B20(4nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(2nm)
拡散防止層:MgO(1.8nm)
キャップ層70:Cu(1nm)/Ta(2nm)/Ru(5nm)
第1の実施例では、磁化自由層20として、Co40Fe40B20(4nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(2nm)を用いる。垂直通電素子の素子サイズは、20μm×20μmと、6μm×6μmと、の2種類を作製する。
図9(a)〜図9(d)は、第1の実施例と第1の比較例との歪検知素子の歪センサ特性の結果を示す。
図9(a)〜図9(d)に示す歪センサ特性の評価は、基板ベンディング法により行う。試作する歪検知素子のウェーハを短冊状にカットしたウェーハ(短冊ウェーハ)をナイフエッジによる4点ベンディング法により歪印加を行う。短冊ウェーハを曲げるナイフエッジにロードセルを組み込んでおり、そのロードセルにて計測された荷重により、ウェーハ表面の歪検知素子に加わる歪を計算している。歪の計算には、次式で表される一般的な2辺支持梁の理論式を用いる。
ここで、esは、ウェーハのヤング率を表す。L1は、外側ナイフエッジのエッジ間長を表す。L2は、内側ナイフエッジのエッジ間長を表す。Wは、短冊ウェーハの幅を表す。tは、短冊ウェーハの厚みを表す。Gは、ナイフエッジに加えた荷重を表す。ここで、ナイフエッジに加わる荷重は、モーター制御で連続的に変化させられるようにしてある。
歪印加の方向については、同一平面内で第1磁化固定層11の磁化方向と垂直な方向に加えている。また、本願明細書中で、正の値の歪は引張歪であり、負の値の歪は圧縮歪である。
図9(a)は、素子サイズが20μm×20μmの第1の実施例の歪検知素子について、歪検知素子に加わる歪を−0.8(%0)から0.8(%0)までの間で0.2(%0)刻みで固定値として設定し、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果を表す。図9(c)は、素子サイズが6μm×6μmの第1の実施例の歪検知素子について、歪検知素子に加わる歪を−0.8(%0)から0.8(%0)までの間で0.2(%0)刻みで固定値として設定し、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果を表す。
測定時の外部磁場方向は、第1磁化固定層11と平面内で平行な方向に加えており、正の外部磁場は、第1磁化固定層11の磁化と反対側に磁場を加えた場合である。図9(a)および図9(c)ともに、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、磁化自由層20の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図9(b)は、素子サイズが20μm×20μmの第1の実施例の歪検知素子について、外部磁場は固定として、歪を−0.8(%0)から0.8(%0)までの間で連続的に掃引した場合の電気抵抗の変化を示す。図9(d)は、素子サイズが6μm×6μmの第1の実施例の歪検知素子について、外部磁場は固定として、歪を−0.8(%0)から0.8(%0)までの間で連続的に掃引した場合の電気抵抗の変化を示す。
歪については、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させる。これらの結果が、歪センサ特性を示している。図9(b)、および図9(d)より、第1の実施例および第1の比較例の歪に対する電気抵抗の変化から、ゲージファクターを見積もる。
ゲージファクターは、次式で表される。
GF=(dR/R)/dε ・・・式(2)
図9(b)より、20μm×20μmの第1の実施例のゲージファクターは、841であることがわかった。図9(d)より、6μm×6μmの第1の実施例のゲージファクターは、770であることがわかった。第1の実施例のように、磁化自由層20に磁気結合層23を介して互いに反平行に結合したシンセティック型の磁化自由層20を用いることによって、素子サイズに依存せずに高いゲージファクターを実現することができることがわかった。
図10は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を表す模式的斜視図である。
図10に表したように、実施形態に係る圧力センサ200に用いられる歪検知素子100fは、第1電極E1と、下地層50と、磁化自由層20と、中間層30と、参照層10と、ピニング層60と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。参照層10は、第1磁化固定層11と、第2磁化固定層12と、磁気結合層13と、を含む。磁化自由層20は、第2磁性層22と、磁気結合層23と、第1磁性層21と、を含む。
第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、第2磁性層22が設けられる。第2磁性層22と第2電極E2との間に、磁気結合層23が設けられる。磁気結合層23と第2電極E2との間に、第1磁性層21が設けられる。第1磁性層21と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第1磁化固定層11が設けられる。第1磁化固定層11と第2電極E2との間に、磁気結合層13が設けられる。磁気結合層13と第2電極E2との間に、第2磁化固定層12が設けられる。第2磁化固定層12と第2電極E2との間に、ピニング層60が設けられる。ピニング層60と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
この例では、第1磁化固定層11は参照層10に対応する。歪検知素子100fは、トップスピンバルブ型である。
下地層50には、例えば、Ta/Cuが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
磁化自由層20には、例えば、Co40Fe40B20(2nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(4nm)が用いられる。中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
ここで、下地層50と磁化自由層20との間に図示しない拡散防止層を設けても良い。拡散防止層として、例えば、2.0nmのMgOを用いることができる。
第1磁化固定層11には、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。
磁気結合層13には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第2磁化固定層12には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。 ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
キャップ層70には、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検知素子100fに含まれる層のそれぞれには、例えば、歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。
図11は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を表す模式的斜視図である。
図11に表したように、実施形態に係る圧力センサ200に用いられる歪検知素子100gは、第1電極E1と、下地層50と、ピニング層60と、参照層10と、中間層30と、磁化自由層20と、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。磁化自由層20は、第1磁性層21と、磁気結合層23と、第2磁性層22と、を含む。
第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、ピニング層60が設けられる。ピニング層60と第2電極E2との間に、参照層10が設けられる。参照層10と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第1磁性層21が設けられる。第1磁性層21と第2電極E2との間に、磁気結合層23が設けられる。磁気結合層23と第2電極E2との間に、第2磁性層22が設けられる。第2磁性層22と第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
既に説明した歪検知素子においては、第2磁化固定層12と磁気結合層13と第1磁化固定層22を用いた構造が適用されている。実施形態の歪検知素子100gにおいては、単一の磁化固定層を用いたシングルピン構造が適用されている。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
ピニング層60には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
参照層10には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
磁化自由層20には、例えば、Co40Fe40B20(4nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(2nm)が用いられる。
キャップ層70には、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
ここで、磁化自由層20とキャップ層70との間に図示しない拡散防止層を設けても良い。拡散防止層として、例えば、2.0nmのMgOを用いることができる。
歪検知素子100gに含まれる層のそれぞれには、例えば、実施形態で歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。
図12は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を表す模式的斜視図である。
図12に表したように、実施形態に係る圧力センサ200に用いられる歪検知素子100hは、第1電極E1と、下地層50と、第1ピニング層60aと、第1参照層10aと、第1中間層30aと、磁化自由層20と、第2中間層30bと、第2参照層10bと、第2ピニング層60bと、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。第1参照層10aは、第2磁化固定層12aと、第1磁化固定層11aと、磁気結合層13aと、を含む。第2参照層10bは、第1磁化固定層11bと、第2磁化固定層12bと、磁気結合層13bと、を含む。磁化自由層20は、第1磁性層21と、第1磁気結合層23aと、第2磁性層22と、第2磁気結合層23bと、第3磁性層24と、を含む。
第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、第1ピニング層60aが設けられる。第1ピニング層60aと第2電極E2との間に、第2磁化固定層12aが設けられる。第2磁化固定層12aと第2電極E2との間に、磁気結合層13aが設けられる。磁気結合層13aと第2電極E2の間に、第1磁化固定層11aが設けられる。第1磁化固定層11aと第2電極E2との間に、第1中間層30aが設けられる。第1中間層30aと第2電極E2との間に、第1磁性層21が設けられる。第1磁性層21と第2電極E2との間に、第1磁気結合層23aが設けられる。第1磁気結合層23aと第2電極E2との間に、第2磁性層22が設けられる。第2磁性層22と第2電極E2との間に、第2磁気結合層23bが設けられる。第2磁気結合層23bと第2電極E2との間に、第3磁性層24が設けられる。第3磁性層24と第2電極E2との間に、第2中間層30bが設けられる。第2中間層30bと第2電極E2との間に、第1磁化固定層11bが設けられる。第1磁化固定層11bと第2電極E2との間に、磁気結合層13bが設けられる。磁気結合層13bと第2電極E2の間に、第2磁化固定層12bが設けられる。第2磁化固定層12bと第2電極E2との間に、第2ピニング層60bが設けられる。第2ピニング層60bと第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
この例では、歪検知素子100hは、デュアルスピンバルブ型である。図12に示したようなデュアルスピンバルブ型を用いる場合、磁化自由層20に含まれる互いに反平行に結合した磁性層の層数は奇数とすることが好ましい。これは、中間層付近に配置される磁性層の磁化方向を同一とすることで、磁化自由層20と第1磁化固定層11aと第1磁化固定層11bとの磁化アライメントと同様にし、電気抵抗変化を同様にそろえることができるためである。第1磁化固定層11aと第1磁化固定層11bとの磁化方向を、磁化固定層の層数をずらすことで反平行とした場合には、磁化自由層20に含まれる磁性層の層数は偶数とすることが好ましい。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
第1ピニング層60aには、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
第1参照層10aの第2磁化固定層12aには、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
第1参照層10aの磁気結合層13aには、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第1参照層10aの第1磁化固定層11aには、例えば、Co40Fe40B20(3nm)が用いられる。
第1中間層30aには、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
磁化自由層20には、例えば、Co40Fe40B20(2nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(4nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(2nm)が用いられる。
第2中間層30bには、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
第2参照層10bの第1磁化固定層11bには、例えば、Co40Fe40B20/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe40B20層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。
第2参照層10bの磁気結合層13bには、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第2参照層10bの第2磁化固定層12bには、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
第2ピニング層60bには、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。
キャップ層70には、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検知素子100hに含まれる層のそれぞれには、例えば、歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。
図13は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を表す模式的斜視図である。
図13に表したように、実施形態に係る圧力センサ200に用いられる歪検知素子100iは、第1電極E1と、下地層50と、第1磁化自由層20cと、中間層30と、第2磁化自由層20dと、キャップ層70と、第2電極E2と、を含む。第1磁化自由層20cは、第2磁性層22cと、第1磁気結合層23cと、第1磁性層21cと、を含む。第2磁化自由層20dは、第1磁性層21dと、第2磁気結合層23dと、第2磁性層22dと、を含む。
第1電極E1と第2電極E2との間に、下地層50が設けられる。下地層50と第2電極E2との間に、第2磁性層22cが設けられる。第2磁性層22cと第2電極E2との間に、第1磁気結合層23cが設けられる。第1磁気結合層23cと第2電極E2との間に、第1磁性層21cが設けられる。第1磁性層21cと第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第1磁性層21dが設けられる。第1磁性層21dと第2電極E2との間に、第2磁気結合層23dが設けられる。第2磁気結合層23dと第2電極E2との間に、第2磁性層22dが設けられる。第2磁性層22dと第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
実施形態に用いられる歪検知素子100iは2層のフリー層を有する2層フリー型の歪検知素子である。
下地層50には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
第1磁化自由層20cには、例えば、Co40Fe40B20(2nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(4nm)が用いられる。
中間層30には、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いられる。
第2磁化自由層20dには、例えば、Co40Fe40B20(4nm)/Ru(0.9nm)/Co40Fe40B20(2nm)が用いられる。
キャップ層70には、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
また、下地層50と第1磁化自由層20cとの間に拡散防止層を設けても良い。拡散防止層として、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いることができる。また、第2磁化自由層20dとキャップ層70との間に拡散防止層を設けても良い。拡散防止層として、例えば、2.0nmの厚さのMgO層が用いることができる。
実施形態の歪検知素子100iに含まれる層のそれぞれには、例えば、実施形態の歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。
上述した歪検知素子のように、第1磁化自由層20cと中間層30と第2磁化自由層20dとの積層構造が用いられる場合も、第1磁化自由層20cの磁化と第2磁化自由層20dの磁化との相対角度が歪に対して変化する。これにより、歪センサとして機能させることができる。この場合、第1磁化自由層20cの磁歪の値と、第2磁化自由層20dの磁歪の値と、は互いに異なるように設計することができる。これにより、第1磁化自由層20cの磁化と第2磁化自由層20dの磁化との相対角度が、歪に対して変化する。
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
図15(a)および図15(b)は、実施形態に係る圧力センサの別の例を例示する模式図である。
図14に表したように、実施形態に係る圧力センサ200は、支持部201と、基板210と、歪検知素子100と、を含む。実施形態に係る圧力センサ200は、実施形態に係る歪検知素子100の代わりに、実施形態に係る歪検知素子100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、100h、100iのいずれかの歪検知素子を含んでいてもよい。
基板210は、支持部201に支持される。基板210は、例えば、可撓性領域を有する。基板210は、例えば、ダイアフラムである。基板210は、支持部201と一体的でも良く、別体でも良い。基板210には、支持部201と同じ材料を用いても良く、支持部201とは異なる材料を用いても良い。支持部201の一部を除去して、支持部201のうちの厚さが薄い部分が基板210となっても良い。
基板210の厚さは、支持部201の厚さよりも薄い。基板210と支持部201とに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分が基板210となり、厚い部分が支持部201となる。
支持部201が、支持部201を厚さ方向に貫通する貫通孔201hを有しており、貫通孔201hを覆うように基板210が設けられても良い。このとき、例えば、基板210となる材料の膜が、支持部201の貫通孔201h以外の部分の上にも延在している場合がある。このとき、基板210となる材料の膜のうちで、貫通孔201hと重なる部分が基板210となる。
基板210は、外縁210rを有する。基板210と支持部201とに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分の外縁が、基板210の外縁210rとなる。支持部201が、支持部201を厚さ方向に貫通する貫通孔201hを有しており、貫通孔201hを覆うように基板210が設けられている場合は、基板210となる材料の膜のうちで、貫通孔201hと重なる部分の外縁が基板210の外縁210rとなる。
支持部201は、基板210の外縁210rを連続的に支持しても良く、基板210の外縁210rの一部を支持しても良い。
歪検知素子100は、基板210の上に設けられる。例えば、歪検知素子100は、基板210の一部の上に設けられる。この例では、基板210上に、複数の歪検知素子100が設けられる。膜部上に設けられる歪検知素子の数は、1でも良い。
図14に表した圧力センサ200においては、第1配線221及び第2配線222が設けられている。第1配線221は、歪検知素子100に接続される。第2配線222は、歪検知素子100に接続される。例えば、第1配線221と第2配線222との間には、層間絶縁膜が設けられ、第1配線221と第2配線222とが電気的に絶縁される。第1配線221と第2配線222との間に電圧が印加され、この電圧が、第1配線221及び第2配線222を介して、歪検知素子100に印加される。圧力センサ200に圧力が加わると、基板210が変形する。歪検知素子100においては、基板210の変形に伴って電気抵抗Rが変化する。電気抵抗Rの変化を第1配線221及び第2配線222を介して検知することで、圧力を検知できる。
支持部201には、例えば、板状の基板を用いることができる。基板の内部には、例えば、空洞部(貫通孔201h)が設けられている。
支持部201には、例えば、シリコンなどの半導体材料、金属などの導電材料、または、絶縁性材料を用いることができる。支持部201は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを含んでも良い。空洞部(貫通孔201h)の内部は、例えば減圧状態(真空状態)である。空洞部(貫通孔201h)の内部に、空気などの気体、または、液体が充填されていても良い。空洞部(貫通孔201h)の内部は、基板210が撓むことができるように設計される。空洞部(貫通孔201h)の内部は、外部の大気とつながっていてもよい。
空洞部(貫通孔201h)の上には、基板210が設けられている。基板210には、例えば、支持部201の一部が薄く加工され部分が用いられる。基板210の厚さ(Z軸方向の長さ)は、支持部201の厚さ(Z軸方向の長さ)よりも薄い。
基板210に圧力が印加されると、基板210は変形する。この圧力は、圧力センサ200が検知すべき圧力に対応する。印加される圧力は、音波または超音波などによる圧力も含む。音波または超音波などによる圧力を検知する場合は、圧力センサ200は、マイクロフォンとして機能する。
基板210には、例えば、絶縁性材料が用いられる。基板210は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。基板210には、例えば、シリコンなどの半導体材料を用いても良い。基板210には、例えば、金属材料を用いても良い。
基板210の厚さは、例えば、0.1マイクロメートル(μm)以上3μm以下である。この厚さは、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。基板210には、例えば、厚さが0.2μmの酸化シリコン膜と、厚さが0.4μmのシリコン膜と、の積層体を用いても良い。
歪検知素子100は、図14に示すとおり、基板210の上に複数配置してもよい。複数の歪検知素子100で圧力に対して同等の電気抵抗の変化を得ることは、後述するように、複数の歪検知素子100を直並列に接続することでSN比を増大することができる。
図14では、歪検知素子100を複数配置しているが、1つでもよい。図15(a)には、円形の膜部上への配置のバリエーションを示している。
図15(a)および図15(b)に表した圧力センサ200aは、第1歪検知素子部101と、第2歪検知素子部102と、第3歪検知素子部103と、第4歪検知素子部104と、を含む。第1歪検知素子部101、第2歪検知素子部102、第3歪検知素子部103および第4歪検知素子部104は、複数の歪検知素子100を含む。複数の歪検知素子100で圧力に対して同等の電気抵抗Rの変化を得ることは、後述するように、複数の歪検知素子100を直並列に接続することでSN比を増大することができる。
歪検知素子100は、極めて小さいサイズで十分である。
そのため、歪検知素子100の面積は、圧力によって撓む基板210の面積よりも十分に小さくできる。例えば、歪検知素子100の面積は、基板210の面積の1/5以下とすることができる。
例えば、基板210の直径寸法が60μm程度の場合には、歪検知素子100の寸法は、12μm以下とすることができる。例えば、基板210の直径寸法が600μm程度の場合には、歪検知素子100の寸法は、120μm以下とすることができる。
この場合、歪検知素子100の加工精度などを考慮すると、歪検知素子100の寸法をそれぞれを過度に小さくする必要はない。そのため、歪検知素子100の寸法は、例えば、0.05μm以上、30μm以下とすることができる。
図14において例示をしたものは、基板210の平面形状が円の場合であるが、基板210の平面形状は円に限定されるわけではない。基板210の平面形状は、例えば、楕円、正方形や長方形などの正多角形などとすることができる。
基板210上に設けられた複数の歪検知素子100は、直列に接続することができる。複数の歪検知素子100が直列に接続されている歪検知素子100の数をNとしたとき、得られる電気信号は、歪検知素子100の数が1である場合のN倍となる。その一方で、熱ノイズ及びショットキーノイズは、N1/2倍になる。すなわち、SN比(signal-noise ratio:SNR)は、N1/2倍になる。直列の接続する歪検知素子100の数Nを増やすことで、基板210のサイズを大きくすることなく、SN比を改善することができる。
1つの歪検知素子に加えられるバイアス電圧は、例えば、50ミリボルト(mV)以上150mV以下である。N個の歪検知素子100を直列に接続した場合は、バイアス電圧は、50mV×N以上150mV×N以下となる。例えば、直列に接続されている歪検知素子100の数Nが25である場合には、バイアス電圧は、1V以上3.75V以下となる。
バイアス電圧の値が1V以上であると、歪検知素子100から得られる電気信号を処理する電気回路の設計は容易になり、実用的に好ましい。
バイアス電圧(端子間電圧)が10Vを超えると、歪検知素子100から得られる電気信号を処理する電気回路においては、望ましくない。実施形態においては、適切な電圧範囲になるように、直列に接続される歪検知素子100の数N、及び、バイアス電圧が設定される。
例えば、複数の歪検知素子100を電気的に直列に接続したときの電圧は、1V以上10V以下となるのが好ましい。例えば、電気的に直列に接続された複数の歪検知素子100の端子間(一方の端の端子と、他方の端の端子と、の間)に印加される電圧は、1V以上10V以下である。
この電圧を発生させるためには、1つの歪検知素子100に印加されるバイアス電圧が50mVである場合、直列に接続される歪検知素子100の数Nは、20以上200以下が好ましい。1つの歪検知素子100に印加されるバイアス電圧が150mVである場合、直列に接続される歪検知素子100の数Nは、7以上66以下であることが好ましい。
複数の歪検知素子100の少なくとも一部は、電気的に並列に接続されても良い。
図15(b)に示すように、複数の歪検知素子100がホイートストンブリッジ回路を形成するように、複数の歪検知素子100を接続しても良い。これにより、例えば、検出特性の温度補償を行うことができる。
図16(a)〜図16(c)は、基板に圧力を加えた場合に基板の表面に生ずる歪について説明する模式図である。
基板210の平面形状は、図14に例示した圧力センサ200と同じく円形の場合を例にとり説明している。
図16(b)および図16(c)は、圧力センサ200の特性のシミュレーション結果を例示している。
図16(a)は、実施形態の基板の模式的斜視図である。
図16(b)は、圧力が加わった基板210において生じる歪εを例示している。図16(b)における縦軸は、歪ε(無単位)である。図16(b)の横軸は、中心からの距離を半径で規格化した値rx/rである。
図16(b)においては、引張歪において、歪εは正であり、圧縮歪において、歪εは負である。図16(b)には、半径方向の歪である第1歪εrと、周方向の歪である第2歪εθと、第1歪εrと第2歪εθとの差(異方歪Δε=εr−εθ)と、が示されている。異方歪Δεは、第1歪εrと第2歪εθとの差である。異方歪Δεが、歪検知素子100の磁化自由層20の磁化の方向の変化に寄与する。
図16(c)は、基板210に生じる異方歪ΔεのX−Y面内分布を例示している。
図16(a)に表したように、この例では、基板210の平面形状は、円形である。この例では、基板210の直径L1(直径L2)は、500μmである。基板210の厚さLtは、2μmである。
この例では、基板210の外縁210rを完全拘束の固定端としている。この例では、有限要素法解析によって、基板210の表面に生じる歪εの解析が行われる。有限要素法で分割した各要素において、フックの法則を適用して解析が行われている。
シミュレーションにおいて、基板210の材料は、シリコンが想定されている。基板210のヤング率は165GPaであり、ポアソン比は、0.22である。シミュレーションにおいては、基板210の裏面から、13.33kPaの均一な圧力が加えられたときの、基板210の表面の歪εが求められる。有限要素法においては、X−Y平面において、平面メッシュサイズは5μmとされ、厚み方向のメッシュサイズは、2μmある。
図16(b)に示したように、基板210の中心付近凸状においては、第1歪εr及び第2歪εθは、引張歪である。中心付近では、基板210は凸状に撓んでいる。外縁210r付近では、第1歪εr及び第2歪εθは、圧縮歪である。外縁210r付近では、基板210は凹状に撓んでいる。中心付近において、異方歪Δεはゼロであり、等方歪となっている。外縁210r付近では、異方歪Δεは圧縮の値を示しており、外縁210r直近で最も大きい異方歪が得られる。円形の基板210では、この異方歪Δεが中心からの放射線方向に対して常に同様に得られる。本実施形態の歪検知素子100は異方歪が得られる基板210の外縁210r付近に配置することが望ましい。
図16(c)は、図16(b)に示した極座標系での異方歪Δε(Δεr−θ)をデカルト座標系での異方歪Δε(ΔεX−Y)に変換して、基板210の全面において解析した結果が例示されている。
図16(c)に示したコンター図において、「90%」〜「10%」の文字で示されている線は、外縁210r直近における最も大きい異方歪ΔεX−Yの値(絶対値)の、それぞれ90%〜10%の異方歪Δεが得られる位置を示している。図16(c)から分かるように、同様の異方歪ΔεX−Yは限られた領域で得られる。
図3にて説明したような磁化固定層を含む歪検知素子を基板210上に複数に配置する場合、磁化固定層の磁化方向はピン固着を目的とした磁界中アニール方向に揃うため、同一方向をむく。よって、歪検知素子を基板210上に複数配置して、同様な圧力に対する電気抵抗変化(例えば極性など)を得ようとする場合、図16(c)に示すように同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁210r付近の領域に近接して配置することが好ましい。
本願明細書において「近接」とは、例えば、隣り合う歪検知素子同士の間の距離が10μm以下のことをいう。
あるいは、本願明細書において「近接」とは、複数の歪検知素子が次のような場合のことをいう。
図17(a)〜図17(f)は、基板上の歪検知素子の配置の例を示す模式図である。 これらの図は、複数の歪検知素子が近接して配置される場合の素子配置領域を例示している。
図17(a)に表したように、基板210を基板210に対して平行な面(例えばX−Y平面)に投影したときに、外接矩形が形成可能である。外接矩形210crは、基板210の形状に外接する。基板210の形状は、例えば、基板210の外縁210rを基板210に対して平行な面に投影した形状である。この例では、基板210の平面形状は、円形である。外接矩形210crは正方形となる。
外接矩形210crは、第1辺210s1、第2辺210s2、第3辺210s3及び第4辺210s4を有する。第2辺210s2は、第1辺210s1と離間する。第3辺210s3は、第1辺210s1の一端210s11と、第2辺210s2の一端210s21と、に接続される。第4辺210s4は、第1辺210s1の他端210s12と、第2辺210s2の他端210s22と、に接続され、第3辺210s3と離間する。
外接矩形210crは、重心210crdを有する。例えば、重心210crdは、基板210の重心210dcと重なる。
外接矩形210crは、第1領域218a、第2領域218b、第3領域218c及び第4領域218dを有する。
第1領域218aは、重心210crdと第1辺210s1の一端210s11とを結ぶ線分と、重心210crdと第1辺210s1の他端210s12とを結ぶ線分と、第1辺210s1と、で囲まれた領域である。
第2領域218bは、重心210crdと第2辺210s2の一端210s21とを結ぶ線分と、重心210crdと第2辺210s2の他端210s22とを結ぶ線分と、第2辺210s2と、で囲まれた領域である。
第3領域218cは、重心210crdと第1辺210s1の一端210s11とを結ぶ線分と、重心210crdと第2辺210s2の一端210s21とを結ぶ線分と、第3辺210s3と、で囲まれた領域である。
第4領域218dは、重心210crdと第1辺210s1の他端210s12とを結ぶ線分と、重心210crdと第2辺210s2の他端210s22とを結ぶ線分と、第4辺210s4と、で囲まれた領域である。
図17(a)に表したように、基板210のうちの第1領域218aと重なる部分の上に、複数の検知素子100が設けられる。例えば、膜面210fsのうちの第1領域218aと重なる領域に設けられた、複数の検知素子100の少なくとも2つの外接矩形210crの第1辺210s1に平行な方向におけるそれぞれの位置は、互いに異なる。言い換えれば、膜面210fsのうちの第1領域218aと重なる領域に設けられた、複数の検知素子100の少なくとも2つのそれぞれの位置は、外接矩形210crの第1辺210s1に平行な方向において互いに異なる。このように配置することで、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁210r付近の領域に、数多くの歪検知素子100を配置することが可能となる。
図17(b)のように、基板210の平面形状が扁平円である場合も、外接矩形210crが定義できる。図17(c)のように、基板210の平面形状が正方形の場合においても、外接矩形210crが定義できる。この場合、外接矩形210crの平面形状は基板210と同じ正方形となる。図17(d)のように、基板210の平面形状が正方形の場合において、基板210が曲線状(または直線状)のコーナー部210scが設けられる場合も、外接矩形210crが定義できる。図17(e)のように、基板210の平面形状が長方形の場合においても、外接矩形210crが定義できる。この場合、外接矩形210crの平面形状は基板210と同じ長方形となる。図17(f)のように、基板210の平面形状が正方形の場合において、基板210が曲線状(または直線状)のコーナー部210scが設けられる場合も、外接矩形210crが定義できる。そして、第1領域218a〜第4領域218dが定義できる。
上述したような領域に素子を近接して配置することによって、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁210r付近の領域に、数多くの歪検知素子100を配置することが可能となる。
本実施形態のように、磁気結合層23を介して互いに反平行に磁気結合した第1磁性層21と第2磁性層22とを含む磁化自由層20を用いることによって、第1磁性層21の磁化21mと第2磁性層22の磁化22mとが互いに逆の極性となって結合することで、素子端部における磁性層の反磁界が低減される。磁化自由層20の反磁界が低減されることによって、小さい素子寸法においても高い歪検知感度を実現することができる。ひいては、高分解能と高感度を両立した歪検知素子100を提供することができる。よって、図16(c)に示す同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁210r付近の領域に、小さい素子寸法と高い歪感度を両立した歪検知素子100を十分な数で配置することができる。
また、本実施形態の歪検知素子100は、磁気結合層23を介して互いに反平行に磁気結合した第1磁性層21と第2磁性層21とを含む磁化自由層20を用いているため、磁化自由層20からの漏洩磁界が少ない、もしくは無い。よって、図16(c)に示す同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁210r付近の領域に、近接して数多く歪検知素子100を配置した場合においても、歪検知素子100の磁化自由層20からの漏洩磁界が少ない、もしくは無いため、歪検知素子100の磁化自由層20からの漏洩磁界による干渉を低減し、複数の歪検知素子100の歪に対する電気抵抗変化を正常に得ることができる。
図18は、実施形態に係る歪検知素子の別の例を表す模式的斜視図である。
図18では、これまで説明した実施形態の歪検知素子が積層方向に複数配置されている例である。このように積層方向に複数配置することによって、図16(c)に示す同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁210r付近の領域に、数多くの歪検知素子100を配置することが可能となる。本実施形態の歪検知素子100では、磁化自由層20からの漏洩磁界が少ない、もしくは無いため、歪検知素子100の磁化自由層20からの漏洩磁界による干渉を低減し、複数の歪検知素子100の歪に対する電気抵抗変化を正常に得ることができる。
図18に表した歪検知素子100jは、第1電極E1と、第1素子部160aと、第2素子部160bと、第2電極E2と、を含む。第1電極E1と第2電極E2との間に、第1素子部160aが設けられる。第1素子部160aと第2電極E2との間に、第2素子部160bが設けられる。
第1素子部160aは、第1下地層50aと、第1ピニング層60aと、第1参照層10aと、第1中間層30aと、第1磁化自由層20aと、介在層85と、を含む。第1参照層10aは、第2磁化固定層12aと、第1磁化固定層11aと、磁気結合層13aと、を含む。第1磁化自由層20aは、第1磁性層21aと、第2磁性層22aと、第1磁気結合層23aと、を含む。
第1電極E1と第2電極E2との間に、第1下地層50aが設けられる。第1下地層50aと第2電極E2との間に、第1ピニング層60aが設けられる。第1ピニング層60aと第2電極E2との間に、第2磁化固定層12aが設けられる。第2磁化固定層12aと第2電極E2との間に、磁気結合層13aが設けられる。磁気結合層13aと第2電極E2の間に、第1磁化固定層11aが設けられる。第1磁化固定層11aと第2電極E2との間に、第1中間層30aが設けられる。第1中間層30aと第2電極E2との間に、第1磁性層21aが設けられる。第1磁性層21aと第2電極E2との間に、第1磁気結合層23aが設けられる。第1磁気結合層23aと第2電極E2との間に、第2磁性層22aが設けられる。第2磁性層22aと第2電極E2との間に、介在層85が設けられる。
第2素子部160bは、第2下地層50bと、第2ピニング層60bと、第2参照層10bと、第2中間層30bと、第2磁化自由層20bと、キャップ層70と、を含む。第2参照層10bは、第2磁化固定層12bと、第1磁化固定層11bと、磁気結合層13bと、を含む。第2磁化自由層20bは、第1磁性層21bと、第2磁性層22bと、第2磁気結合層23bと、を含む。
介在層85と第2電極E2との間に、第2下地層50bが設けられる。第2下地層50bと第2電極E2との間に、第2ピニング層60bが設けられる。第2ピニング層60bと第2電極E2との間に、第2磁化固定層12bが設けられる。第2磁化固定層12bと第2電極E2との間に、磁気結合層13bが設けられる。磁気結合層13bと第2電極E2の間に、第1磁化固定層11bが設けられる。第1磁化固定層11bと第2電極E2との間に、第2中間層30bが設けられる。第2中間層30bと第2電極E2との間に、第1磁性層21bが設けられる。第1磁性層21bと第2電極E2との間に、第2磁気結合層23bが設けられる。第2磁気結合層23bと第2電極E2との間に、第2磁性層22bが設けられる。第2磁性層22bと第2電極E2との間に、キャップ層70が設けられる。
歪検知素子100jに含まれる層のそれぞれには、例えば、歪検知素子100aに関して説明した材料を用いることができる。介在層85には、例えば、非磁性材料を用いることができる。介在層85には、例えば、金属材料を用いることができる。介在層85には、第1電極E1や第2電極E2と同様の材料を用いることができる。
図19(a)〜図19(c)は、実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
図19(a)〜図19(c)は、複数の歪検知素子100の接続の例を示している。
図19(a)に表したように、複数の歪検知素子100が電気的に直列に接続される場合において、第1電極E1(例えば第1配線221)と、第2電極E2(例えば第2配線222)と、の間に歪検知素子100及びビアコンタクト230を設ける。これにより、通電方向は、一方向となる。複数の歪検知素子100に通電される電流は、下向き、または、上向きである。この接続においては、複数の歪検知素子100のそれぞれのシグナル・ノイズ特性を互いに近い特性にできる。
図19(b)に表したように、ビアコンタクト230が設けられずに、第1電極E1と、第2電極E2と、の間に歪検知素子100が配置されている。この例では、隣り合う2つの歪検知素子100のそれぞれに通電される電流の方向は、互いに逆である。この接続においては、複数の歪検知素子100の配置の密度が高い。
図19(c)に表したように、1つの第1電極E1と、1つの第2電極E2と、の間に、複数の歪検知素子100が設けられている。複数の歪検知素子100は、並列に接続されている。
以下、実施形態に係る圧力センサの製造方法の例について説明する。以下は、圧力センサの製造方法の例である。
図20(a)〜図20(e)は、実施形態に係る圧力センサの製造方向を例示する工程順模式的断面図である。
図20(a)に表したように、基体241(例えばSi基板)の上に薄膜242を形成する。基体241は、支持部201となる。薄膜242は、基板210となる。
例えば、Si基板上に、SiOx/Siの薄膜242をスパッタにより形成する。薄膜242として、SiOx単層、SiN単層、または、Alなどの金属層を用いても良い。また、薄膜242として、ポリイミドまたはパラキシリレン系ポリマーなどのフレキシブルプラスティック材料を用いても良い。SOI(Silicon On Insulator)基板を、基体241及び薄膜242として用いても良い。SOIにおいては、例えば、基板の貼り合わせによってSi基板上にSiO2/Siの積層膜が形成される。
図20(b)に表したように、第2配線222を形成する。この工程においては、第2配線222となる導電膜を形成し、その導電膜を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。第2配線222の周辺を絶縁膜で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理においては、例えば、第2配線222のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図20(c)に表したように、歪検知素子100を形成する。この工程においては、歪検知素子100となる積層体を形成し、その積層体を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。歪検知素子100の積層体の側壁を絶縁層81で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理において、例えば、積層体の加工後、レジストを剥離する前、絶縁層81を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図20(d)に表したように、第1配線221を形成する。この工程においては、第1配線221となる導電膜を形成し、その導電膜を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。第1配線221の周辺を絶縁膜で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理において、第1配線221の加工後、レジストを剥離する前に、絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図20(e)に表したように、基体241の裏面からエッチングを行い、空洞部201aを形成する。これにより、基板210及び支持部201が形成される。例えば、基板210となる薄膜242として、SiOx/Siの積層膜を用いる場合は、薄膜242の裏面(下面)から表面(上面)へ向かって、基体241の深堀加工を行う。これにより、空洞部201aが形成される。空洞部201aを形成においては、例えば両面アライナー露光装置を用いることができる。これにより、表面の歪検知素子100の位置に合わせて、レジストのホールパターンを裏面にパターニングできる。
Si基板のエッチングにおいて、例えばRIEを用いたボッシュプロセスが用いることができる。ボッシュプロセスでは、例えば、SF6ガスを用いたエッチング工程と、C4F8ガスを用いた堆積工程と、を繰り返す。これにより、基体241の側壁のエッチングを抑制しつつ、基体241の深さ方向(Z軸方向)に選択的にエッチングが行われる。エッチングのエンドポイントとして、例えば、SiOx層が用いられる。すなわち、エッチングの選択比がSiとは異なるSiOx層を用いてエッチングを終了させる。エッチングストッパ層として機能するSiOx層は、基板210の一部として用いられても良い。SiOx層は、エッチングの後に、例えば、無水フッ化水素及びアルコールなどの処理などで除去されても良い。
このようにして、実施形態に係る圧力センサ200が形成される。実施形態に係る他の圧力センサも同様の方法により製造できる。
(第3の実施形態)
図21(a)〜図21(c)は、実施形態に係る圧力センサを例示する模式図である。 図21(a)は、模式的斜視図であり、図21(b)及び図21(c)は、圧力センサ640を例示するブロック図である。
図21(a)及び図21(b)に示すように、圧力センサ640には、基部671、検知部650、半導体回路部630、アンテナ615、電気配線616、送信回路617、及び、受信回路617rが設けられている。
アンテナ615は、電気配線616を介して、半導体回路部630と電気的に接続されている。
送信回路617は、検知部650に流れる電気信号に基づくデータを無線で送信する。送信回路617の少なくとも一部は、半導体回路部630に設けることができる。
受信回路617rは、電子機器618dからの制御信号を受信する。受信回路617rの少なくとも一部は、半導体回路部430に設けることができる。受信回路617rを設けるようにすれば、例えば、電子機器618dを操作することで、圧力センサ640の動作を制御することができる。
図21(b)に示すように、送信回路617には、例えば、検知部650に接続されたADコンバータ617aと、マンチェスター符号化部617bと、を設けることができる。切替部617cを設け、送信と受信を切り替えるようにすることができる。この場合、タイミングコントローラ617dを設け、タイミングコントローラ617dにより切替部617cにおける切り替えを制御することができる。またさらに、データ訂正部617e、同期部617f、判定部617g、電圧制御発振器617h(VCO;Voltage Controlled Oscillator)を設けることができる。
図21(c)に示すように、圧力センサ640と組み合わせて用いられる電子機器618dには、受信部618が設けられる。電子機器618dとしては、例えば、携帯端末などの電子装置を例示することができる。
この場合、送信回路617を有する圧力センサ640と、受信部618を有する電子機器618dと、を組み合わせて用いることができる。
電子機器618dには、マンチェスター符号化部617b、切替部617c、タイミングコントローラ617d、データ訂正部617e、同期部617f、判定部617g、電圧制御発振器617h、記憶部618a、中央演算部618b(CPU;Central Processing Unit)を設けることができる。
この例では、圧力センサ640は、固定部667をさらに含んでいる。固定部667は、膜部664を基部671に固定する。固定部667は、外部圧力が印加されたときであっても撓みにくいように、膜部664よりも厚み寸法を厚くすることができる。
固定部667は、例えば、膜部664の周縁に等間隔に設けることができる。
膜部664の周囲をすべて連続的に取り囲むように固定部667を設けることもできる。
固定部667は、例えば、基部671の材料と同じ材料から形成することができる。この場合、固定部667は、例えば、シリコンなどから形成することができる。
固定部667は、例えば、膜部664の材料と同じ材料から形成することもできる。
実施形態に係る圧力センサの製造方法の例について説明する。
図22(a)、図22(b)、図23(a)、図23(b)、図24(a)、図24(b)、図25(a)、図25(b)、図26(a)、図26(b)、図27(a)、図27(b)、図28(a)、図28(b)、図29(a)、図29(b)、図30(a)、図30(b)、図31(a)、図31(b)、図32(a)、図32(b)、図33(a)及び図33(b)は、実施形態に係る圧力センサの製造方法を例示する模式図である。
なお、図22(a)〜図33(a)は、模式的平面図であり、図22(b)〜図33(b)は、模式的断面図である。
図22(a)及び図22(b)に示すように、半導体基板531の表面部分に半導体層512Mを形成する。続いて、半導体層512Mの上面に素子分離絶縁層512Iを形成する。続いて、半導体層512Mの上に、図示しない絶縁層を介して、ゲート512Gを形成する。続いて、ゲート512Gの両側に、ソース512Sとドレイン512Dとを形成することで、トランジスタ532が形成される。続いて、この上に層間絶縁膜514aを形成し、さらに層間絶縁膜514bを形成する。
続いて、非空洞部となる領域において、層間絶縁膜514a、514bの一部に、トレンチ及び孔を形成する。続いて、孔に導電材料を埋め込んで、接続ピラー514c〜514eを形成する。この場合、例えば、接続ピラー514cは、1つのトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続され、接続ピラー514dはドレイン512Dに電気的に接続される。例えば、接続ピラー514eは、別のトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続される。続いて、トレンチに導電材料を埋め込んで、配線部514f、514gを形成する。配線部514fは、接続ピラー514c及び接続ピラー514dに電気的に接続される。配線部514gは、接続ピラー514eに電気的に接続される。続いて、層間絶縁膜514bの上に、層間絶縁膜514hを形成する。
図23(a)及び図23(b)に示すように、層間絶縁膜514hの上に、酸化シリコン(SiO2)からなる層間絶縁膜514iを、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法を用いて形成する。続いて、層間絶縁膜514iの所定の位置に孔を形成し、導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて平坦化する。これにより、配線部514fに接続された接続ピラー514jと、配線部514gに接続された接続ピラー514kと、が形成される。
図24(a)及び図24(b)に示すように、層間絶縁膜514iの空洞部570となる領域に凹部を形成し、その凹部に犠牲層514lを埋め込む。犠牲層514lは、例えば、低温で成膜できる材料を用いて形成することができる。低温で成膜できる材料は、例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)などである。
図25(a)及び図25(b)に示すように、層間絶縁膜514i及び犠牲層514lの上に、膜部564となる絶縁膜561bfを形成する。絶縁膜561bfは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。絶縁膜561bfに複数の孔を設け、複数の孔に導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、接続ピラー561fa、接続ピラー562faを形成する。接続ピラー561faは、接続ピラー514kと電気的に接続され、接続ピラー562faは、接続ピラー514jと電気的に接続される。
図26(a)及び図26(b)に示すように、絶縁膜561bf、接続ピラー561fa、接続ピラー562faの上に、配線557となる導電層561fを形成する。
図27(a)及び図27(b)に示すように、導電層561fの上に、積層膜550fを形成する。
図28(a)及び図28(b)に示すように、積層膜550fを所定の形状に加工し、その上に、絶縁層565となる絶縁膜565fを形成する。絶縁膜565fは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。
図29(a)及び図29(b)に示すように、絶縁膜565fの一部を除去し、導電層561fを所定の形状に加工する。これにより、配線557が形成される。このとき、導電層561fの一部は、接続ピラー562faに電気的に接続される接続ピラー562fbとなる。さらに、この上に、絶縁層566となる絶縁膜566fを形成する。
図30(a)及び図30(b)に示すように、絶縁膜566fに開口部566pを形成する。これにより、接続ピラー562fbが露出する。
図31(a)及び図31(b)に示すように、上面に、配線558となる導電層562fを形成する。導電層562fの一部は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図32(a)及び図32(b)に示すように、導電層562fを所定の形状に加工する。これにより、配線558が形成される。配線558は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図33(a)及び図33(b)に示すように、絶縁膜566fに所定の形状の開口部566oを形成する。開口部566oを介して、絶縁膜561bfを加工し、さらに開口部566oを介して、犠牲層514lを除去する。これにより、空洞部570が形成される。犠牲層514lの除去は、例えば、ウェットエッチング法を用いて行うことができる。
なお、固定部567をリング状とする場合には、例えば、空洞部570の上方における非空洞部の縁と、膜部564と、の間を絶縁膜で埋める。
以上の様にして圧力センサが形成される。
(第4の実施形態)
図34は、第4の実施形態に係るマイクロフォンを例示する模式的平面図である。
図34に示すように、マイクロフォン410は、前述した各実施形態に係る任意の圧力センサ(例えば、圧力センサ200)や、それらの変形に係る圧力センサを有する。以下においては、一例として、圧力センサ200を有するマイクロフォン410について例示をする。
マイクロフォン410は、携帯情報端末420の端部に組み込まれている。マイクロフォン410に設けられた圧力センサ200の基板210は、例えば、携帯情報端末420の表示部421が設けられた面に対して実質的に平行とすることができる。なお、基板210の配置は例示をしたものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
マイクロフォン410は、圧力センサ200などを備えているので、広域の周波数に対して高感度とすることができる。
なお、マイクロフォン410が携帯情報端末420に組み込まれている場合を例示したがこれに限定されるわけではない。マイクロフォン410は、例えば、ICレコーダーやピンマイクロフォンなどにも組み込むことができる。
(第5の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた音響マイクに係る。
図35は、第5の実施形態に係る音響マイクを例示する模式的断面図である。
実施形態に係る音響マイク430は、プリント基板431と、カバー433と、圧力センサ200と、を含む。プリント基板431は、例えばアンプなどの回路を含む。カバー433には、アコースティックホール435が設けられる。音439は、アコースティックホール435を通って、カバー433の内部に進入する。
圧力センサ200として、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
音響マイク430は、音圧に対して感応する。高感度な圧力センサ200を用いることにより、高感度な音響マイク430が得られる。例えば、圧力センサ200をプリント基板431の上に搭載し、電気信号線を設ける。圧力センサ200を覆うように、プリント基板431の上にカバー433を設ける。
実施形態によれば、高感度な音響マイクを提供することができる。
(第6の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた血圧センサに係る。
図36(a)及び図36(b)は、第6の実施形態に係る血圧センサを例示する模式図である。
図36(a)は、ヒトの動脈血管の上の皮膚を例示する模式的平面図である。図36(b)は、図36(a)のH1−H2線断面図である。
実施形態においては、圧力センサ200は、血圧センサ440として応用される。この圧力センサ200には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
これにより、小さいサイズの圧力センサで高感度な圧力検知が可能となる。圧力センサ200を動脈血管441の上の皮膚443に押し当てることで、血圧センサ440は、連続的に血圧測定を行うことができる。
本実施形態によれば、高感度な血圧センサを提供することができる。
(第7の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いたタッチパネルに係る。
図37は、第7の実施形態に係るタッチパネルを例示する模式的平面図である。
実施形態においては、圧力センサ200が、タッチパネル450として用いられる。この圧力センサ200には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。タッチパネル450においては、圧力センサ200が、ディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
例えば、タッチパネル450は、複数の第1配線451と、複数の第2配線452と、複数の圧力センサ200と、制御部453と、を含む。
この例では、複数の第1配線451は、Y軸方向に沿って並ぶ。複数の第1配線451のそれぞれは、X軸方向に沿って延びる。複数の第2配線452は、X軸方向に沿って並ぶ。複数の第2配線452のそれぞれは、Y軸方向に沿って延びる。
複数の圧力センサ200のそれぞれは、複数の第1配線451と複数の第2配線452とのそれぞれの交差部に設けられる。圧力センサ200の1つは、検出のための検出要素200eの1つとなる。ここで、交差部は、第1配線451と第2配線452とが交差する位置及びその周辺の領域を含む。
複数の圧力センサ200のそれぞれの一端251は、複数の第1配線451のそれぞれと接続される。複数の圧力センサ200のそれぞれの他端252は、複数の第2配線452のそれぞれと接続される。
制御部453は、複数の第1配線451と複数の第2配線452とに接続される。
例えば、制御部453は、複数の第1配線451に接続された第1配線用回路453aと、複数の第2配線452に接続された第2配線用回路453bと、第1配線用回路453aと第2配線用回路453bとに接続された制御回路455と、を含む。
圧力センサ200は、小型で高感度な圧力センシングが可能である。そのため、高精細なタッチパネルを実現することが可能である。
上記の各実施形態に係る圧力センサは、上記の応用の他に、気圧センサ、または、タイヤの空気圧センサなどのように、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
実施形態によれば、高感度の歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを提供することができる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルに含まれる基板、歪検知素子、第1磁性層、第2磁性層および中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。