JP2018082186A - センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネル - Google Patents

センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネル Download PDF

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慶彦 藤
福澤 英明
Hideaki Fukuzawa
英明 福澤
昭男 堀
Akio Hori
昭男 堀
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Shiori Kaji
志織 加治
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Abstract

【課題】高感度なセンサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを提供する。
【解決手段】実施の形態に係るセンサは、支持部と、前記支持部に支持され変形可能な膜部と、前記膜部に設けられた検出素子と、を含む。前記検出素子は、Cu及びAgを含む合金を含む金属層と、第1の磁性層と、前記金属層と前記第1の磁性層との間に設けられ、Ta、Ti及びTiNよりなる群から選択された少なくとも1つを含む金属含有層と、前記金属含有層と前記第1の磁性層との間に設けられた第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた中間層と、を含む。前記金属層の前記金属含有層に対向する第1面は、前記金属含有層の前記第2の磁性層に対向する第2面よりも粗い。
【選択図】図8

Description

本実施の形態は、センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルに関する。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた圧力センサには、例えば、ピエゾ抵抗変化型と静電容量型とがある。一方、スピン技術を用いた圧力センサが提案されている。スピン技術を用いた圧力センサにおいては、歪に応じた抵抗変化が検知される。スピン技術を用いた圧力センサにおいて、高感度の圧力センサが望まれる。
M. Lohndorf et al., "Highly sensitive strain sensors based on magnetic tunneling junctions"Appl. Phys. Lett., 81, 313, (2002). D. Meyners et al., "Pressure sensor based on magnetic tunnel junctions", J. Appl. Phys. 105, 07C914 (2009).
本実施の形態は、高感度なセンサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを提供する。
実施の形態に係るセンサは、支持部と、前記支持部に支持され変形可能な膜部と、前記膜部に設けられた検出素子と、を含む。前記検出素子は、Cu及びAgを含む合金を含む金属層と、第1の磁性層と、前記金属層と前記第1の磁性層との間に設けられ、Ta、Ti及びTiNよりなる群から選択された少なくとも1つを含む金属含有層と、前記金属含有層と前記第1の磁性層との間に設けられた第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた中間層と、を含む。前記金属層の前記金属含有層に対向する第1面は、前記金属含有層の前記第2の磁性層に対向する第2面よりも粗い。
また、前記Cu−Ag合金からなる金属層の結晶粒径は、50nm以下でも良い。
前記金属層は、Cu1−XAg合金(1at.%≦x≦20at.%)からなるものでも良い。
別の実施の形態に係る歪検出素子は、変形可能な膜部の上に設けられる。また、この歪検出素子は、電極と、この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体とを備え、前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、前記金属層の結晶粒径は、50nm以下である。
尚、上に例示した各実施の形態において、例えば前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1の界面のRa値は、0.3nmよりも小さくても良い。
式(1)

式(2)

但し、Zは、前記高さ方向における前記第1の界面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置である。
第1の実施の形態に係る圧力センサの動作を説明するための模式的な断面図である。 同実施の形態に係る歪検出素子の構成を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の動作を説明するための模式的な図である。 同歪検出素子の構成例を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の他の構成例を示す模式的な平面図である。 同歪検出素子の特性を説明するための模式的な断面図である。 同歪検出素子の特性を説明するための模式的な断面図である。 同歪検出素子の構成を示す模式的な断面図である。 同歪検出素子の構成を説明するための模式的な図である。 一の実験の環境を説明するための模式的な側面図である。 同実験の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の他の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示す図である。 同実験の他の結果を示す図である。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 別の実験の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の他の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 別の実験の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示す模式的な図である。 別の実験の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の結果を示す図である。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 別の実験の実験試料の構成を示す模式的な側面図である。 同実験の他の実験試料の構成を示す模式的な側面図である。 同実験の他の実験試料の構成を示す模式的な側面図である。 同実験の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示す図である。 同実験の他の結果を示す図である。 同実験の他の結果を示す図である。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 別の実験の実験試料の構成を示す模式的な側面図である。 同実験の他の実験試料の構成を示す模式的な側面図である。 同実験の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 同歪検出素子の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 同歪検出素子の他の構成例の動作を説明するための模式的な図である。 同歪検出素子の構成例を示す模式的な斜視図である。 第2の実施の形態に係る歪検出素子の構成を示す模式的な断面図である。 第3の実施の形態に係る歪検出素子の構成を示す模式的な断面図である。 一の実験の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の他の実験試料の構成を示す模式的な斜視図である。 同実験の結果を示すグラフである。 同実験の他の結果を示すグラフである。 第4の実施の形態に係る圧力センサの構成を示す模式的な斜視図である。 同圧力センサの構成を示す模式的な断面図である。 同圧力センサの構成を示す模式的な平面図である。 同圧力センサの構成を説明するための模式的な斜視図である。 同圧力センサの構成を説明するためのグラフである。 同圧力センサの構成を説明するためのコンター図である。 同圧力センサの構成を示す模式的な平面図である。 同圧力センサの構成を示す模式的な回路図である。 同圧力センサの製造方法を示す模式的な斜視図である。 同圧力センサの構成例を示す模式的な斜視図である。 同圧力センサの構成例を示す機能ブロック図である。 同圧力センサの一部の構成例を示す機能ブロック図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 同圧力センサの製造方法を示す図である。 第5の実施の形態に係るマイクロフォンの構成を示す模式的な断面図である。 第6の実施の形態に係る血圧センサの構成を示す模式図である。 同血圧センサのH1−H2から見た模式的な断面図である。 第7の実施の形態に係るタッチパネルの構成を示す模式的な回路図である。
以下、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。尚、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、本願明細書において、「上に設けられる」状態は、直接接して設けられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて設けられる状態も含む。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.第1の実施の形態に係る歪検出素子及びこれを搭載した圧力センサの構成]
まず、図1を参照して、第1の実施の形態に係る歪検出素子及びこれを搭載した圧力センサの動作を説明する。図1は、第1の実施の形態に係る圧力センサの動作を説明するための模式的な断面図である。
図1に示す通り、圧力センサ100は、膜部120と、膜部120の上に設けられた歪検出素子200を備える。膜部120は、外部からの圧力に応じて撓む。歪検出素子200は、膜部120の撓みに応じて歪み、この歪に応じて電気抵抗値を変化させる。従って、歪検出素子の電気抵抗値の変化を検出することにより、外部からの圧力が検出される。尚、歪検出素子200は、膜部120の上に直接的に取り付けても良く、図示しない他の要素によって間接的に取り付けても良く、歪検出素子200と膜部120との位置関係が固定できれば良い。
次に、図2を参照して、歪検出素子200の構成を説明する。図2は、第1の実施の形態に係る歪検出素子200の構成を示す模式的な斜視図である。以下、第1の磁性層201及び第2の磁性層202が積層された方向をZ方向(積層方向)とする。また、このZ方向に対して垂直な所定の方向をX方向とし、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向とする。
図2に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に設けられた中間層203を有する。後述の通り、第1の磁性層201及び第2の磁性層202には、それぞれ図示しない電極が接続されている。また、歪検出素子200には、これら電極を介して、例えばZ方向(積層方向)に電流を流すことが出来る。ここで、歪検出素子200に歪みが生じると、磁性層201及び202の相対的な磁化方向が変化する。これに伴い、磁性層201及び202の間の電気抵抗値が変化する。従って、この電気抵抗値の変化を検出することによって、歪検出素子200に生じた歪を検出する事が出来る。
本実施の形態において、第1の磁性層201は強磁性体からなり、例えば磁化自由層として機能する。また、第2の磁性層202も強磁性体からなり、例えば参照層として機能する。第2の磁性層202は、磁化固定層であっても良いし、磁化自由層であっても良い。第2の磁性層202が磁化固定層である場合、第1の磁性層201の磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向と比較して容易に変化する。
次に、図3を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の動作について説明する。図3(a),(b)及び(c)は、それぞれ歪検出素子200に引張歪が生じている状態、歪が生じていない状態及び圧縮歪が生じている状態の様子を表す模式的な斜視図である。尚、以下の説明において、歪検出素子200の第2の磁性層202の磁化方向は−Y方向であるものとし、歪検出素子200に生じる歪の方向はX方向であるものとする。また、第2の磁性層202は、磁化固定層として機能するものとする。
図3(b)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200に歪が生じていない状態(無歪状態)である場合、第1の磁性層201の磁化方向と第2の磁性層202の磁化方向との相対的な角度は、お互いに交差する所定の角度に設定されている。この所定の角度は、0°よりも大きく180°よりも小さくすることができる。図3(b)に示す例においては、第1の磁性層201の磁化方向は、第2の磁性層202の磁化方向に対して135°であり、歪が生じる方向に対しては45°(135°)であるが、ここでの135°と言う角度はあくまで一例であり、他の角度とすることも可能である。以下、図3(b)に示すように、歪が生じていない場合における第1の磁性層201の磁化方向を「初期磁化方向」と呼ぶ。尚、第1の磁性層201の初期磁化方向は、ハードバイアス、または、第1の磁性層201の形状磁気異方性などによって設定される。
ここで、図3(a)及び図3(c)に示す通り、歪検出素子200にX方向に歪が生じた場合、第1の磁性層201に、「逆磁歪効果」が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が相対的に変化する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化方向が、歪によって変化する現象である。例えば、磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合、磁化自由層の磁化の方向は、引張歪の方向に対しては平行に近づき、圧縮歪の方向に対しては垂直に近付く。一方、磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合、同磁化の方向は、引張歪の方向に対しては垂直に近付き、圧縮歪の方向に対しては平行に近付く。
図3に示す例において、歪検出素子200の第1の磁性層201には、正の磁歪定数を有する強磁性体が用いられている。従って、図3(a)に示す通り、第1の磁性層201の磁化方向は、引張歪の方向に対して平行に近付き、圧縮歪の方向に対して垂直に近付く。尚、第1の磁性層201の磁歪定数は、負であっても良い。
図3(d)及び図3(e)は、歪検出素子200の電気抵抗と、歪検出素子200に生じた歪との関係を示す概略的なグラフである。尚、図3(d)及び図3(e)においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪とする。更に、図3(d)においては、第1の磁性層201の磁歪定数をλ1、保磁力をHc1、後述するゲージファクタをGF1としており、図3(e)においては、第1の磁性層201の磁歪定数をλ2(>λ1)、保磁力をHc2(<Hc1)、後述するゲージファクタをGF2(>GF1)としている。
図3(a)及び図3(c)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が相対的に変化すると、図3(d)に示す通り、「磁気抵抗効果(MR効果)」によって第1の磁性層201と第2の磁性層202との間の電気抵抗値が変化する。
MR効果は、磁性層同士の間で磁化方向が相対的に変化すると、これら磁性層間の電気抵抗が変化する現象である。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。また、MR効果は、例えば、第1の磁性層201、中間層203及び第2の磁性層202からなる積層膜において発現する。
尚、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203が正の磁気抵抗効果を有する場合、第1の磁性層201と第2の磁性層202との相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。一方、負の磁気抵抗効果を有する場合、相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
歪検出素子200は、例えば正の磁気抵抗効果を有する。従って、図3(a)に示す様に、歪検出素子200に引張歪が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が135°から90°に近付いた場合、図3(d)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗は小さくなる。一方、図3(c)に示す様に、歪検出素子200に圧縮歪が生じ、第1の磁性層201と第2の磁性層202の磁化方向が135°から180°に近付いた場合、図3(d)に示す通り、第1の磁性層201と第2の磁性層202の間の電気抵抗は大きくなる。尚、歪検出素子200は、負の磁気抵抗効果を有していても良い。
ここで、図3(d)に示す通り、例えば微小歪をΔε1と、歪検出素子200に微小歪Δε1を加えた時の歪検出素子200における抵抗変化をΔr1とする。更に、単位歪あたりの電気抵抗値の変化量を、ゲージファクタ(GF: Gauge Factor)と呼ぶ。高感度な歪検出素子200を製造する場合、ゲージファクタを高くすることが望ましい。ゲージファクタGFは(dR/R)/deで表される。
図3(e)に示す通り、第1の磁性層201の磁歪定数がより大きく、保磁力がより小さい場合には、第1の磁性層201においてより顕著に逆磁歪効果が発現し、ゲージファクタが増大する。これは、磁歪定数が、歪に対して磁化方向を回転させる力の大きさを表しており、保磁力が、磁化方向を維持しようとする力の大きさを表しているからである。従って、ゲージファクタを大きくするためには、第1の磁性層201の磁歪定数をより大きく、保磁力をより小さくすることが考えられる。
次に、図4及び図5を参照して、本実施の形態に係る歪検出素子200の構成例200Aについて説明する。尚、以下において、「材料A/材料B」の記載は、材料Aの層の上に、材料Bの層が設けられている状態を示す。
図4は、歪検出素子200の一の構成例200Aを示す模式的な斜視図である。図4に示す通り、歪検出素子200Aは、下部電極204と、この下部電極204上に設けられた積層体と、この積層体上に設けられた上部電極212からなる。この積層体は、下部電極204に近い方から、下地層205と、ピニング層206と、第2磁化固定層207と、磁気結合層208と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe4020層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。下部電極204及び上部電極212には、例えば、金属が用いられる。
下部電極204及び上部電極212には、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む金属を用いることができる。これらの元素を含む金属は電気抵抗率が比較的小さい。例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銅銀合金(Cu−Ag)、銀(Ag)、及び、金(Au)、ニッケル鉄合金(Ni−Fe)などを用いることができる。下部電極204及び上部電極212として、このような電気抵抗率が比較的小さい材料を用いることで、歪検出素子200Aに効率的に電流を流すことができる。下部電極204及び上部電極212には、非磁性材料を用いることができる。
下部電極204は、例えば、下部電極204用の下地層(図示せず)と、下部電極204用のキャップ層(図示せず)と、それらの間に設けられた、Al、Al−Cu、Cu、Ag、Cu−Ag、Au及び、ニッケル鉄合金(Ni−Fe)などの金属層と、を含んでも良い。例えば、下部電極204には、タンタル(Ta)/銅銀合金(Cu―Ag)/タンタル(Ta)などが用いられる。下部電極204用の下地層としてTaを用いることで、例えば、膜部120と下部電極204との密着性が向上する。下部電極204用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いても良い。
下部電極204のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下のアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む金属層の酸化を防ぐことができる。下部電極204用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。また、キャップ層として、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化チタン(Ti−N)などのバリアメタルを用いることによって、その上に形成される歪検出素子の積層体との元素拡散を抑制することができる。歪検出素子の積層体に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)などが拡散すると、ゲージファクタの劣化が引き起こされることがあるので、キャップ層として、バリアメタルを用いることが好ましい。バリアメタルとして、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化チタン(Ti−N)以外に、一般的に高融点金属や、高融点金属の窒化物や単化物を用いることができる。
本実施の形態において、下部電極の上面の凹凸を小さくすることができる。下部電極の上面の凹凸を小さくするために、下部電極に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層の上面の凹凸の平均粗さ(詳しくは、後述する。)は、2ナノメートル以下とすることができる。また、下部電極に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む金属層の上面の凹凸の最大粗さ(詳しくは、後述する。)は、10ナノメートル以下とすることができる。また、本実施形態の別の例では、下部電極に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む金属層の結晶粒径は、50ナノメートル以下とすることができる。また、下部電極を特に低抵抗としたい場合は、前述した元素群の中でも特に低抵抗率なアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層を用いることが好ましい。上述した小さい結晶粒径を有する下部電極204を実現する観点で、下部電極204は、低抵抗率金属層としてCu−Ag合金を含むことが望ましい。CuにAgを添加することで、結晶粒径を小さくすることができ、また、凹凸の平均粗さ及び最大粗さを低減する事ができる。Cu−Ag合金として、例えば、Cu100−xAg(1at.%≦x≦20at.%)を用いることができる。
製造方法において後述するように、下部電極204の上面の凹凸のRa値を小さくするために、下部電極204の表面にケミカルメカニカルプラネタリゼーション(CMP)処理を行うことが好ましい。ここで、低抵抗金属層のアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む金属層の酸化を避けるために、その上に形成されたキャップ層の表面にCMP処理を行うことが好ましい。
下地層205には、例えば、バッファ層(図示せず)と、シード層(図示せず)と、を含む積層構造を用いることができる。このバッファ層は、例えば、下部電極204や膜部120等の表面の荒れを緩和し、このバッファ層の上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層として、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。バッファ層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いてもよい。
下地層205のうちのバッファ層の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましい。バッファ層の厚さは、1nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎると、バッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎると、歪検出素子200の厚さが過度に厚くなる。バッファ層の上にシード層が形成され、そのシード層がバッファ効果を有することができる。この場合、バッファ層は省略してもよい。バッファ層には、例えば、3nmの厚さのTa層が用いられる。
下地層205のうちのシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶配向を制御する。このシード層は、このシード層の上に積層される層の結晶粒径を制御する。このシード層として、fcc構造(face-centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body-centered cubic structure:体心立方格子構造)の金属等が用いられる。
下地層205のうちのシード層として、hcp構造のルテニウム(Ru)、または、fcc構造のNiFe、または、fcc構造のCuを用いることにより、例えば、シード層の上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。シード層には、例えば、2nmの厚さのCu層、または、2nmの厚さのRu層が用いられる。シード層の上に形成される層の結晶配向性を高める場合には、シード層の厚さは、1nm以上5nm以下が好ましい。シード層の厚さは、1nm以上3nm以下がより好ましい。これにより、結晶配向を向上させるシード層としての機能が十分に発揮される。
一方、例えば、シード層の上に形成される層を結晶配向させる必要がない場合(例えば、アモルファスの磁化自由層を形成する場合など)には、シード層は省略してもよい。シード層としては、例えば、2nmの厚さのRu層が用いられる。
ピニング層206は、例えば、ピニング層206の上に形成される第2磁化固定層207(強磁性層)に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して、第2磁化固定層207の磁化を固定する。ピニング層206には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層206には、例えば、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Ru−Mn、Rh−Mn、Ru−Rh−Mn、Fe−Mn、Ni−Mn、Cr−Mn−PtおよびNi−Oよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn、Ru−Mn、Rh−Mn、Ru−Rh−Mn、Fe−Mn、Ni−Mn、Cr−Mn−PtおよびNi−Oにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層206の厚さは適切に設定される。
ピニング層206に接する強磁性層の磁化の固定を行うためには、磁場印加中での熱処理が行われる。熱処理時に印加されている磁場の方向にピニング層206に接する強磁性層の磁化が固定される。アニール温度は、例えば、ピニング層206に用いられる反強磁性材料の磁化固着温度以上とする。また、Mnを含む反強磁性層を用いる場合、ピニング層206以外の層にMnが拡散してMR変化率を低減する場合がある。よってMnの拡散が起こる温度以下に設定することが望ましい。例えば200度(℃)以上、500度(℃)以下とすることができる。好ましくは、250度(℃)以上、400度(℃)以下とすることができる。
ピニング層206として、PtMnまたはPdPtMnが用いられる場合には、ピニング層206の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。ピニング層206の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層206としてIrMnを用いる場合には、ピニング層206としてPtMnを用いる場合よりも薄い厚さで、一方向異方性を付与することができる。この場合には、ピニング層206の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。ピニング層206の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。
ピニング層206として、ハード磁性層を用いてもよい。ハード磁性層として、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoPt100−x100−yCr(xは、50at.%以上85at.%以下であり、yは、0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は、40at.%以上60at.%以下)などを用いてもよい。
第2磁化固定層207には、例えば、CoFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、NiFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層207として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層207として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。第2磁化固定層207として、(CoFe100−x100−y合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第2磁化固定層207として、(CoFe100−x100−yのアモルファス合金を用いることで、歪検出素子のサイズが小さい場合にも、歪検出素子200Aの特性のばらつきを抑えることができる。
第2磁化固定層207の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、ピニング層206による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層207の上に形成される磁気結合層を介して、第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間の反強磁性結合磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層207の磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第1磁化固定層209の磁気膜厚と、実質的に等しいことが好ましい。
薄膜でのCo40Fe4020の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)である。例えば、第1磁化固定層209として、3nmの厚さのCo40Fe4020層を用いると、第1磁化固定層209の磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。一方、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2磁化固定層207の厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2磁化固定層207には、約2.7nmの厚さのCo75Fe25層を用いることが好ましい。第2磁化固定層207として、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
歪検出素子200Aにおいては、第2磁化固定層207と磁気結合層208と第1磁化固定層209とにより、シンセティックピン構造が用いられている。その代わりに、1層の磁化固定層からなるシングルピン構造を用いても良い。シングルピン構造を用いる場合には、磁化固定層として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe4020層が用いられる。シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、上述した第2磁化固定層207の材料と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層208は、第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間において、反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層208は、シンセティックピン構造を形成する。磁気結合層208として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層208の厚さは、例えば、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第2磁化固定層207と第1磁化固定層209との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層208としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層208の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層208の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層208として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層209に用いられる磁性層は、MR効果に直接的に寄与する。第1磁化固定層209として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層209として、(CoFe100−x100−y合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第1磁化固定層209として、(CoFe100−x100−yのアモルファス合金を用いた場合には、例えば、歪検出素子200のサイズが小さい場合においても、結晶粒に起因した素子間のばらつきを抑えることができる。
第1磁化固定層209の上に形成される層(例えばトンネル絶縁層(図示せず))を平坦化することができる。トンネル絶縁層の平坦化により、トンネル絶縁層の欠陥密度を減らすことができる。これにより、より低い面積抵抗で、より大きいMR変化率が得られる。例えば、トンネル絶縁層の材料としてMg−Oを用いる場合には、第1磁化固定層209として、(CoFe100−x100−yのアモルファス合金を用いることで、トンネル絶縁層の上に形成されるMg−O層の(100)配向性を強めることができる。Mg−O層の(100)配向性をより高くすることで、より大きいMR変化率が得られる。(CoFe100−x100−y合金は、アニール時にMg−O層の(100)面をテンプレートとして結晶化する。このため、Mg−Oと(CoFe100−x100−y合金との良好な結晶整合が得られる。良好な結晶整合を得ることで、より大きいMR変化率が得られる。
第1磁化固定層209として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いてもよい。
第1磁化固定層209がより厚いと、より大きなMR変化率が得られる。より大きな固定磁界を得るためには、第1磁化固定層209は、薄いほうが好ましい。MR変化率と固定磁界との間には、第1磁化固定層209の厚さにおいてトレードオフの関係が存在する。第1磁化固定層209としてCo−Fe−B合金を用いる場合には、第1磁化固定層209の厚さは、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第1磁化固定層209の厚さは、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
第1磁化固定層209には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層209として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層209として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層209として、bcc構造のFeCo合金材料、50at.%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50at.%以上のNi組成の材料(Ni合金)を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。
第1磁化固定層209として、例えば、CoMnGe、CoFeGe、CoMnSi、CoFeSi、CoMnAl、CoFeAl、CoMnGa0.5Ge0.5、及び、CoFeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層209として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe4020層が用いられる。
中間層203は、例えば、第1の磁性層201と第2の磁性層202との磁気的な結合を分断する。中間層203には、例えば、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層203として金属を用いる場合、中間層の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(Mg−O等)、アルミニウム酸化物(Al等)、チタン酸化物(Ti−O等)、亜鉛酸化物(Zn−O等)、または、ガリウム酸化物(Ga−O)などが用いられる。中間層203として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層203の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。中間層203として、例えば、CCP(Current-Confined-Path)スペーサ層を用いてもよい。スペーサ層としてCCPスペーサ層を用いる場合には、例えば、酸化アルミニウム(Al)の絶縁層中に銅(Cu)メタルパスが形成された構造が用いられる。例えば、中間層として、1.6nmの厚さのMg−O層が用いられる。
磁化自由層210には、強磁性体材料が用いられる。また、本実施の形態においては、磁化自由層210として、アモルファス構造の強磁性材料を用いることで、高いゲージファクタを実現することができる。磁化自由層210には、例えば、Fe、Co、Niよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、アモルファス化促進元素(例えばホウ素(B))とを含む合金を用いることができる。例えば、磁化自由層210には、Co−Fe−B合金、Fe−B合金、又は、Fe−Co−Si−B合金等を用いることが出来る。例えば、磁化自由層210には、4nmの厚さのCo40Fe4020層を用いることができる。
磁化自由層210は、多層構造(例えば、2層構造)を有してもよい。中間層203としてMg−Oのトンネル絶縁層を用いる場合には、磁化自由層210のうちの中間層203に接する部分には、Co−Fe−B合金やFe−B合金の層を設けることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗効果が得られる。
例えば、磁化自由層210は、中間層203に接する、又は近接する第1の部分と、第1の部分に接する、又は近接する第2の部分と、を含む。第1の部分は、例えば、磁化自由層210のうちの中間層203に接する部分を含む。この第1の部分には、Co−Fe−B合金の層が用いられる。そして、第2の部分には、例えば、Fe−B合金が用いられる。すなわち、磁化自由層210として、例えば、Co−Fe−B/Fe−B合金が用いられる。このCo40Fe4020層の厚さは、例えば、0.5nmである。磁化自由層210として用いられる上記のFe−B合金層の厚さは、例えば、6nmである。
本実施の形態においては、磁化自由層210として、アモルファス部分を含む強磁性材料を用いることにより、高いゲージファクタを得ることができる。磁化自由層210に用いることのできる材料の例については、後述する。
キャップ層211は、キャップ層211の下に設けられる層を保護する。キャップ層211には、例えば、複数の金属層が用いられる。キャップ層211には、例えば、Ta層とRu層との2層構造(Ta/Ru)が用いられる。このTa層の厚さは、例えば1nmであり、このRu層の厚さは、例えば5nmである。キャップ層211として、Ta層やRu層の代わりに他の金属層を設けてもよい。キャップ層211の構成は、任意である。例えば、キャップ層211として、非磁性材料を用いることができる。キャップ層211の下に設けられる層を保護可能なものであれば、キャップ層211として、他の材料を用いても良い。
磁化自由層210の構成及び材料の例についてさらに説明する。磁化自由層210には、アモルファス部分を含む強磁性材料を用いることができる。例えば、Fe、Co及びNiから選択される少なくとも一つの元素と、アモルファス化促進元素(例えばホウ素(B))と、を含む合金を用いることができる。磁化自由層210には、例えば、Co−Fe−B合金、または、Fe−B合金などを用いることができる。磁化自由層210には、例えば、(CoFe100−x100−y合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%よりも大きく40at.%以下)を用いることができる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020層を用いることができる。
磁化自由層210に、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素と、ホウ素(B)と、を含む合金を用いる場合、大きい磁歪定数λを促進する元素として、Ga、Al、Si及びWの少なくともいずれかを添加しても良い。磁化自由層210として、例えば、Fe−Ga−B合金、Fe−Co−Ga−B合金、または、Fe−Co−Si−B合金を用いても良い。
磁化自由層210の少なくとも一部に、Fe1−y(0<y≦0.3)、または、(Fe1−a1−yBy(Xは、CoまたはNi、0.8≦a<1、0<y≦0.3)を用いる場合は、大きい磁歪定数λと低い保磁力を両立することが容易となるため、特に好ましい。例えば、4nmの厚さのFe8020層を用いることができる。
磁化自由層210は、上述した通り、アモルファス部分を含む。磁化自由層210のうちの一部は、結晶化していてもよい。磁化自由層210は、結晶化した部分を含みつつ、アモルファス部分を含んでも良い。
磁化自由層210における磁歪定数λ及び保磁力Hcは、磁化自由層210に含まれる強磁性材料の体積比に応じた加算可能な特性である。磁化自由層210中に結晶化している部分が存在している場合も、アモルファス部分の磁気特性が得られることで、小さい保磁力Hcを得ることができる。例えば、中間層203に絶縁体を用い、トンネル磁気抵抗効果を利用する場合、磁化自由層210の中間層203との界面を含む部分は、結晶化していることが好ましい。これにより、例えば、高いMR変化率が得られる。
磁化自由層210におけるホウ素濃度(例えば、ホウ素の組成比)は、5at.%(原子パーセント)以上が好ましい。これにより、アモルファス構造が得易くなる。磁化自由層210におけるホウ素濃度は、35at.%以下が好ましい。ホウ素濃度が高すぎると、例えば、磁歪定数が減少する。磁化自由層におけるホウ素濃度は、例えば、5at.%以上35at.%以下が好ましく、10at.%以上30at.%以下がさらに好ましい。
例えば、磁化自由層210は、中間層203に接する、又は近接する第1の部分と、第1の部分に接する、又は近接する第2の部分と、を含む。第1の部分は、例えば、磁化自由層210のうちの中間層30に接する部分を含む。この第1の部分には、Co−Fe−B合金の層が用いられる。そして、第2の部分には、例えば、Fe−Ga−B合金を用いる。すなわち、磁化自由層210として、例えば、Co−Fe−B/Fe−Ga−B合金が用いられる。このCo40Fe4020層の厚さは、例えば、2nmである。このFe−Ga−B層の厚さは、例えば、6nmである。また、Co−Fe−B/Fe−B合金を用いることができる。このCo40Fe4020の厚さは、例えば、0.5nmである。このFe−B厚さは、例えば、4nmである。既に説明したように、磁化自由層210として、例えば、Co−Fe−B/Fe−B合金を用いても良い。この場合、Co40Fe4020層の厚さは、例えば、0.5nmである。
このFe−B層の厚さは、例えば、4nmである。このように、中間層203側の第1の部分に、Co−Fe−B合金を用いることで高いMR変化率を得ることができる。
磁化自由層210のうちの中間層203との界面を含む第1の部分には、結晶化した、Fe50Co50(厚さ0.5nm)を用いても良い。磁化自由層210のうちの中間層203との界面を含む第1の部分には、結晶化した、Fe50Co50(厚さ0.5nm)/Co40Fe4020(厚さ2nm)のような2層構造を用いても良い。
磁化自由層210として、Fe50Co50(厚さ0.5nm)/Co40Fe4020(厚さ4nm)の積層膜を用いても良い。第2の磁性層20として、Fe50Co50(厚さ0.5nm)/Co40Fe4020(厚さ2nm)/Co35Fe3530(厚さ4nm)の積層膜を用いても良い。この積層膜においては、中間層30から離れるに従って、ホウ素濃度が上昇する。
図5は、歪検出素子200Aの他の構成例を示す模式的な斜視図である。図5に示す歪検出素子200Aは、図4に示す歪検出素子200Aとほぼ同様に構成されているが、磁化自由層210とキャップ層211との間に、拡散防止層216を有する点において異なっている。
磁化自由層210にアモルファス化促進元素(例えばホウ素)を含有する磁性材料を用いる場合、拡散防止層216は、アモルファス化促進元素の拡散を防止し、磁化自由層210のアモルファス構造を保つ。拡散防止層216は、酸化物や窒化物等からなる。拡散防止層216に用いる酸化物材料や窒化物材料として、具体的には、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Sn、Cd、Gaなどの元素を含む酸化物材料や窒化物材料を用いることができる。ここで、拡散防止層216は、磁気抵抗効果には寄与しない層のため、その面積抵抗は低いほうが好ましい。例えば、拡散防止層216の面積抵抗は、磁気抵抗効果に寄与する中間層203の面積抵抗よりも低く設定することが好ましい。拡散防止層の面積抵抗を下げる観点では、バリアハイトの低いMg、Ti、V、Zn、Sn、Cd、Gaの酸化物または窒化物が好ましい。ホウ素の拡散を抑制する機能としては、より化学結合の強い酸化物のほうが好ましい。例えば、1.5nmのMgOを用いることができる。また、酸窒化物は酸化物か窒化物のいずれかと見なすことができる。
拡散防止層216に酸化物材料、窒化物材料を用いる場合、拡散防止層216の膜厚は、ホウ素の拡散防止機能を十分に発揮する観点で0.5nm以上が好ましく、面積抵抗を低くする観点で5nm以下が好ましい。つまり、拡散防止層216の膜厚は、0.5nm以上5nm以下が好ましく、1nm以上3nm以下がより好ましい。
拡散防止層216として、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくともいずれかを用いることができる。拡散防止層216として、これらの軽元素を含む材料を用いることができる。これらの軽元素は、ホウ素と結合して化合物を生成する。拡散防止層216と磁化自由層210との界面を含む部分に、例えば、Mg−B化合物、Al−B化合物、及び、Si−B化合物の少なくともいずれかが形成される。これらの化合物が、ホウ素の拡散を抑制する。
拡散防止層216と磁化自由層210との間に他の金属層などが挿入されていてもよい。ただし、拡散防止層216と磁化自由層210との距離が離れすぎていると、その間でホウ素が拡散して磁化自由層210中のホウ素濃度が下がってしまうため、拡散防止層と磁化自由層210との間の距離は、10nm以下が好ましく3nm以下がさらに好ましい。
本実施の形態においては、拡散防止層216と磁化自由層210との間に図示しない磁性層を更に設けても良い。この図示しない磁性層は、磁化方向が可変である。この図示しない磁性層には、磁化自由層210に適用可能な材料と同様の材料を適用することが可能である。また、この図示しない磁性層は、磁化自由層210と磁気的に結合し、磁化自由層210と一体として機能しても良い。
拡散防止層216は、磁化自由層210中に設けても良い。この場合、磁化自由層210のうちの拡散防止層216と中間層203との間に位置する部分におけるホウ素の拡散(例えば、上述した第1の部分と第2の部分との間におけるホウ素の拡散)が抑制できる。これにより、小さい保磁力Hcが得られる。すなわち、磁化自由層210全体の保磁力Hcを小さく保つことができる。拡散防止層216を磁化自由層210中に設ける場合においては、複数の拡散防止層216を設けても良い。
次に、図6及び図7を参照して、下部電極204の凹凸と、磁化自由層210の保磁力Hcとの関係について説明する。図6及び図7は、下部電極204上面の凹凸と、磁化自由層210の保磁力Hcとの関係について説明するための模式的な断面図であり、図6には下部電極204上面の凹凸が小さい場合を、図7には下部電極204上面の凹凸が大きい場合を例示している。
図6に示す例においては、磁化自由層210がアモルファス化促進元素(図6においては、ホウ素(B))を含有しており、アモルファス状態となっている。ここで、発明者らの鋭意検討の結果、磁化自由層210がアモルファス状態である場合、磁化自由層210が結晶状態である場合と比較して、磁化自由層210の保磁力Hcが小さくなることが分かった。従って、磁化自由層210がアモルファス化促進元素(図6においては、ホウ素(B))を含有させ、アモルファス状態とすることにより、磁化自由層210の保磁力Hcを低減させ、ゲージファクタを大きくすることが出来る。
一方、図7に示すとおり、磁化自由層210にアモルファス化促進元素を含有させても、アニール処理時にこのアモルファス化促進元素が隣接層に拡散してしまい、これに伴って磁化自由層210の結晶化が進行し、磁化自由層210の保磁力Hcが増大してしまう事があった。発明者らの鋭意検討の結果、アモルファス化促進元素の拡散及びこれに伴う磁化自由層210の結晶化は、下部電極204上面の凹凸が大きい場合に生じやすい傾向があることが分かった。これは、以下の様な理由によるものと考えられる。
即ち、図6に示す通り、下部電極204上面の凹凸が小さい場合には、その上面に成膜される下地層205から第1磁化固定層209までの各層と、中間層203と、磁化自由層210と、拡散防止層216との凹凸も全て小さくなる。従って、アモルファス化促進元素の拡散を防止する中間層203や拡散防止層216の膜厚も比較的均一であり、アニール時におけるアモルファス化促進元素の拡散を好適に防止することが可能であると考えられる。
一方、図7に示す通り、下部電極204上面の凹凸が大きい場合には、その上面に成膜される下地層205から第1磁化固定層209までの各層と、中間層203と、磁化自由層210と、拡散防止層216との凹凸も全て大きくなる。従って、中間層203や拡散防止層216には、薄い部分が生じてしまう。従って、アモルファス化促進元素は、アニール時にこの薄い部分を介して拡散してしまうものと考えられる。
また、発明者らの検討の結果、このようなアモルファス化促進元素の拡散及びこれに伴う磁化自由層210の結晶化の進行は、下部電極204の材料の結晶粒径が小さい場合には比較的発生しづらく、下部電極204の材料の結晶粒径が大きい場合には比較的発生しやすいことが分かった。
次に、図8を参照して、本実施の形態に係る歪検出素子200の態様について説明する。図8は、本実施の形態に係る歪検出素子200の模式的な断面図である。
図8に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、中間層203と第1の磁性層201との界面の平均粗さRaが、所定の値Rac2以下である。この値Rac2は、例えば0.3nmである。Ra値は、所定の表面の凹凸の大きさを示す数値であり、平均粗さとも呼ばれる。Ra値の算出方法については、後で図9(a)及び図9(b)を参照して説明する。尚、平均粗さRaは、例えば、図9(a)及び図9(b)を参照して説明するRa値によって算出される。
また、図8に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、中間層203と第1の磁性層201との界面の最大粗さRmax2が、所定の値Rmaxc2以下である。この値Rmaxc2は、例えば2.5nmである。Rmax値は、所定の表面の凹凸の大きさを示す数値であり、最大粗さとも呼ばれる。Rmax値の算出方法については、後で図9(c)を参照して説明する。尚、最大粗さRmaxは、例えば、図9(c)を参照して説明するRmax値によって算出される。
また、図8に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、下部電極204に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率の金属層を有し、この金属層の上面のRa値Raが、所定の値Rac1以下である。また、所定の値Rac1は、例えば2nmである。
また、図8に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、下部電極204に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率の金属層を有し、この金属層の上面のRmax値Raが、所定の値Rmaxc1以下である。また、所定の値Rmaxc1は、例えば10nmである。
また、図8に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、下部電極204に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率の金属層を有し、この金属層の結晶粒径GS1が、所定の値GSc1以下である。この値GSc1は、例えば50nmである。
また、上述した通り、下部電極204は、低抵抗率の金属層として、Cu−Ag合金を含んでいても良い。これにより、下部電極204に含まれる低抵抗率の金属層の結晶粒径GS1を小さくする事が出来る。Cu−Ag合金として、例えば、Cu100−xAg(1at.%≦x≦20at.%)を用いることができる。
このような構成によれば、下部電極204上面の凹凸に起因する中間層203と第1の磁性層201との界面及び拡散防止層216と第1の磁性層201との界面の凹凸を低減し、中間層203及び拡散防止層216に薄い部分が出来ることを防止することが可能である。従って、アモルファス化促進元素の拡散及びこれに伴う第1の磁性層201の結晶化を抑制し、第1の磁性層201を低保磁力なアモルファス状態に維持しつつ、アニールによる高MRを実現し、圧力センサのゲージファクタを大きくして、高感度な歪検出素子200及びこれを搭載した圧力センサを提供することが可能となる。
次に、図9を参照して、凹凸の計算方法を説明する。図9は、本明細書における凹凸の計算方法を説明するための模式的な図である。
まず、図9(a)を参照して、所定の面中、高さ方向における位置の平均値Zの算出方法を説明する。図9(a)中の曲線は、歪検出素子200を側面から見た場合の、所定の面の高さ方向における位置を模式的に示したものである。また、図中の「i」は、高さ方向に直交する方向(xy平面に平行な所定の方向)における所定の位置を、「Z(i)」は、位置iにおける所定の面の高さ方向における位置(基準からの距離)を示している。更に、図中のZcは、全てのiにおけるZ(i)の平均値である。Zは、図9(a)に示す通り、下記式(1)によって表される。
式(1)
尚、例えば実際の歪検出素子200を切断し、TEM等によって断面を観察した場合には、取得した画像中の、例えば中間層203又は拡散防止層216と、第1の磁性層201又は第2の磁性層202との界面に対してフィッティング処理を行い、これによってZcを取得することも可能である。また、例えばこのような手段によってZcを取得した場合には、この線を図9中の「基準」として用いても良く、更にこの線と垂直な方向を高さ方向として規定しても良い。
次に、図9(b)を参照して、凹凸(Ra値、平均粗さ)の計算方法を説明する。図9(b)には、所定の面の高さ方向における位置Z(i)及びZ(i)の平均値Zcが点線で示されており、更にZ(i)及びZcの差の絶対値が実線で示されている。Ra値は、全てのiにおけるZ(i)及びZcの差の絶対値の平均値である。Z(i)は、図9(b)に示す通り、下記式(2)によって表される。
式(2)
次に、図9(c)を参照して、他の凹凸(最大高低差Rz(=Rmax))の計算方法を説明する。図9(c)中の曲線は、歪検出素子200を側面から見た場合の、所定の面の高さ方向における位置を模式的に示したものである。最大高低差Rz(=Rmax)は、図9(c)に示す通り、Z(i)の最大値max(Z(i))と、Z(i)の最小値min(Z(i))との差分である。Rzは、図9(c)に示す通り、下記式(3)によって表される。
式(3)
[1−2.磁化自由層の結晶構造と磁気的特性の関係の検討]
次に、発明者らが行った実験の結果について説明する。まずは、図10〜図35を参照して、磁化自由層210の結晶構造と磁気的特性の関係について説明する。
まず、図10及び図11を参照して、本実験の方法について説明する。図10及び図11は、本実験の方法について説明するための模式的な図である。本実験においては、基板610を湾曲させる基板ベンディング法によって、歪検出素子200と同様の構成を有する第1の試料S01又は第2の試料S02に歪を与え、この状態で第1の試料S01又は第2の試料S02に外部磁場Hを印加し、これら試料の抵抗値を測定した。
本実験に際しては、まず、図10に示す通り、基板610上に第1の試料S01又は第2の試料S02を作製し、次に基板610を短冊状にカットした。第1の試料S01及び第2の試料S02は、基板610上にドット状に形成した。第1の試料S01及び第2の試料S02のxy平面内におけるサイズは、20μm×20μmである。
次に、図11に示す通り、第1の試料S01又は第2の試料S02が作製された基板610を、第2の磁性層202の磁化方向(例えば、−Y方向)と直交する方向(例えば、X方向)に湾曲させ、これによって第1の試料S01又は第2の試料S02に歪を与えた。基板610の湾曲は、ナイフエッジ650及び660による4点ベンディング法(基板ベンディング法)によって行った。ナイフエッジ650及び660にはロードセル670が組み込まれており、このロードセル670によってナイフエッジ650及び660の荷重を計測することにより、第1の試料S01又は第2の試料S02に与えられた歪εを算出した。歪εの算出には、2辺支持梁に関する下記式1を用いた。
式(4)
上記式1において、「es」は、基板610のヤング率である。「L1」は、外側ナイフエッジ650のエッジ間長である。「L2」は、内側ナイフエッジ660のエッジ間長である。「W」は、基板610の幅である。「t」は、基板610の厚さである。「G」は、ナイフエッジ650及び660に加えられる荷重である。ナイフエッジ650及び660に加わる荷重は、図示しないモータにより、連続的に変更できる。なお、本明細書における実験では、基板厚みtが0.6mmのSi基板を用い、Si基板の(110)方向に基板曲げを行って、基板610のヤング率esは169GPaとした。
尚、図11においては、基板610を凸状に湾曲させている例について説明しているが、本実験においては、基板610を凹状にも湾曲させた。例えば図11に示す通り、基板610を凸状に湾曲させた場合には、第1の試料S01又は第2の試料S02には引張方向(正方向)の歪が発生する。一方、基板610を凹状に湾曲させた場合には、第1の試料S01又は第2の試料S02に圧縮方向(負方向)の歪が発生する。
また、図11に示す通り、外部磁場Hは、基板610を湾曲させる方向(第1の試料S01又は第2の試料S02に与えられる歪の方向)と直交する方向に印加した。この状態で、第1の試料S01又は第2の試料S02の垂直通電特性を評価した。尚、外部磁場Hの方向は、第2の磁性層202の磁化方向と反対の方向(例えば、Y方向)を正方向と、第2の磁性層202の磁化方向と同じ方向(例えば、−Y方向)を負方向とした。
次に、図12及び図13を参照して、本実験に使用した試料の説明を行う。図12は、第1の試料S01の構成を示す模式的な斜視図である。第1の試料S01は、図5に示した歪検出素子200Aと同様に構成されており、拡散防止層216を有している。
第1の試料S01においては、下部電極204としてTa(5nm)/Cu95Ag(240nm)/Ta(50nm)層が、下地層205としてTa(1nm)/Ru(2nm)が、ピニング層206として7nmの厚さのIr22Mn78層が、第2磁化固定層207として2.5nmの厚さのCo75Fe25層が、磁気結合層208として0.9nmの厚さのRu層が、第1磁化固定層209として3nmの厚さのCo40Fe4020層が、中間層203として1.6nmの厚さのMgO層が、磁化自由層210として4nmの厚さのCo40Fe4020が、拡散防止層216として1.5nmの厚さのMgO層が、キャップ層211としてCu(1nm)/Ta(20nm)/Ru(50nm)が、上部電極212としてTa(5nm)/Cu(200nm)/Ta(35nm)/Au(200nm)が用いられる。
中間層203及び拡散防止層216に用いられているMg−O層は、1.6nmの厚さのMg層を成膜した後に、IAO(Ion beam-assisted Oxidation)処理による表面酸化を行う事により形成されている。拡散防止層216用のMg−O層の作製時の酸化条件は、例えば、中間層203用のMg−O層の作製時の酸化条件よりも弱い。拡散防止層216用のMg−O層の面積抵抗は、中間層203用のMg−O層の面積抵抗よりも低い。拡散防止層216用のMg−O層の面積抵抗が、中間層203用のMg−O層の面積抵抗よりも高い場合は、その拡散防止層216により寄生抵抗が増え、MR変化率が低減し、ゲージファクタが低下する。拡散防止層216用のMg−O層の面積抵抗は、中間層203用のMg−O層の面積抵抗よりも低くすることで、寄生抵抗は小さくでき、高いMR変化率が得られ、高いゲージファクタが得られる。
図13は、第2の試料S02の構成を示す模式的な斜視図である。第2の試料S02は、図4に示した歪検出素子200Aと同様に構成されており、拡散防止層216を有していない。また、第2の試料S02は、それ以外の層については、第1の試料S01と同様に構成されている。
次に、図14〜17を参照して、本実験の結果について説明する。図14〜図17は、本実験の結果を説明するためのグラフである。図14及び図15は、基板610上に第1の試料S01を設けた場合の結果を示しており、それぞれ基板610を凸状に湾曲させて第1の試料S01に正方向(引張方向)の歪を与えた場合の結果と、基板610を凹状に湾曲させて第1の試料S01に負方向(圧縮方向)の歪を与えた場合の結果とを示している。一方、図16及び図17は、基板610上に第2の試料S02を設けた場合の結果を示しており、それぞれ基板610を凸状に湾曲させて第2の試料S02に正方向(引張方向)の歪を与えた場合の結果と、基板610を凹状に湾曲させて第2の試料S02に負方向(圧縮方向)の歪を与えた場合の結果とを表している。また、図14〜図17においては、横軸が外部磁場Hの大きさ(エルステッド:Oe)を、縦軸が下部電極204と上部電極212との間の電気抵抗値R(オーム:Ω)を示している。更に、図14〜図17においては、外部磁場Hと電気抵抗値Rとの関係を、第1の試料S01又は第2の試料S02に与えられた歪ε毎に示している。また、第1の試料S01および第2の試料S02の磁歪λおよび保磁力Hcの値は、素子加工を行わない連続膜の状態におけるM(磁化)−H(磁場)測定によって調べた。磁歪λは基板に歪を加えて磁化自由層の磁化困難軸方向の異方性磁界Hkの変化より算出した。なお、図14〜17に示す結果では、M−H測定は50Hzの磁場掃印を用いたループトレーサーにより行った。
図14及び図16には、歪εが、0.8×10−3、0.6×10−3、0.4×10−3、0.2×10−3、及び、0.0×10−3であるときの、電気抵抗の磁場依存性の測定結果を示している。また、図15及び図17には、歪εが、−0.2×10−3、−0.4×10−3、−0.6×10−3、及び、−0.8×10−3であるときの、電気抵抗の磁場依存性の測定結果を示している。図14〜17に示す通り、第1の試料S01及び第2の試料S02においては、歪εの値により、R−Hループ形状が変化している。これは、逆磁歪効果によって、第1の磁性層201(磁化自由層)の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図14及び図15に示すグラフ、および図示しないM−H測定の結果から第1の試料S01の特性を算出した所、MR比が149%、保磁力が3.2Oeとなった。一方、第2の試料S02の特性を算出した所、MR比が188%、保磁力が27Oeとなった。以上より、Mg−Oからなる拡散防止層216を有する第1の試料S01は、拡散防止層216を有しない第2の試料S02よりも保磁力HCが大幅に低減されることが確認された。
次に、図10及び図11に示した様な環境下において、第1の試料S01及び第2の試料S02における歪εと電気抵抗値Rとの関係を検討した。本検討においては、外部磁場Hの大きさを固定し、第1の試料S01及び第2の試料S02における歪εを、−0.8×10−3から0.8×10−3まで連続的に変化させ、続いて、歪εを、0.8×10−3から−0.8×10−3まで連続的に変化させた。
次に、図18及び図19を参照して、本実験の他の結果について説明する。図18及び図19は、それぞれ第1の試料S01及び第2の試料S02に与えられた歪と電気抵抗値Rとの関係を示しており、横軸は歪εを、縦軸は下部電極204と上部電極212との間の電気抵抗値Rを示している。また、これらの結果から第1の試料S01の特性を算出した所、磁歪定数λが20ppm、ゲージファクタ(GF=(dR/R)/dε)が4027となった。同様に、第2の試料S02の特性を算出した所、磁歪定数λが30ppm、ゲージファクタ(GF=(dR/R)/dε)が895となった。
以上より、第1の磁性層201として同じ材料(4nmの厚さCo40Fe4020層の磁化自由層)を用いる場合であっても、Mg−Oからなる拡散防止層216を有する第1の試料S01は、拡散防止層216を有しない第2の試料S02よりも大きなゲージファクタを得られることが確認された。このような拡散防止層216の有無によるゲージファクタの違いは、第1の磁性層(Co40Fe4020)の保磁力HCの違いに起因すると考えられる。
即ち、図3(d)及び(e)を参照して説明した通り、第1の磁性層201の磁歪定数がより大きく、保磁力がより小さい場合には、第1の磁性層201においてより顕著に逆磁歪効果が発現し、ゲージファクタが増大する。ここで、第1の試料S01は、第2の試料S02と比較して、MR変化率および磁歪定数λの値は低いが、保磁力HCが約1/10である。従って、第1の試料S01においては、保磁力HCの低減によるゲージファクタ増大への寄与が、MR変化率および磁歪定数λの低減によるゲージファクタ減少への寄与と比較して顕著に発現し、ゲージファクタを増大させているものと考えられる。
次に、図20〜図23に示す通り、第1の試料S01及び第2の試料S02に対し、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。まず、図20及び図21を参照して、第1の試料S01及び第2の試料S02の結晶構造について説明する。図20(a)及び図21(a)は、第1の試料S01及び第2の試料S02の断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)写真像である。図20(a)及び図21(a)に示す通り、図中には、ピニング層206からキャップ層211までの積層構造が撮影されている。
図20(b)〜図20(d)は、それぞれ図20(a)中の点P1(第1の試料S01の第1磁化固定層209中の1点)、点P2(第1の試料S01の中間層203中の1点)及び点P3(第1の試料S01の磁化自由層210中の1点)における電子線のナノディフラクションによる結晶格子回折像である。図に示す通り、図20(b)及び図20(c)には、規則的な原子配列が観察されている。これは、点P1及び点P2における部分が結晶状態であることを示している。これに対し、図20(d)には、規則的な原子配列が観察されておらず、リング状の回折像が観察されている。これは、点P3における部分がアモルファス状態であることを示している。
図21(b)〜図21(d)は、図21(a)中の点P4(第2の試料S02の第1磁化固定層209中の1点)、点P5(第2の試料S02の中間層203中の1点)及び点P6(第2の試料S02の磁化自由層210中の1点)における電子線のナノディフラクションによる結晶格子回折像である。図に示す通り、図21(b)〜図21(d)には、規則的な原子配列が観察されている。これは、点P4、点P5及び点P6における部分が結晶状態であることを示している。
以上より、拡散防止層216を有し、高いゲージファクタを示す第1の試料S01の磁化自由層210はアモルファス構造を含んでおり、拡散防止層216を有さず、低いゲージファクタを示す第2の試料S02の磁化自由層210は結晶構造を有していることが分かった。
次に、図22及び図23を参照して、第1の試料S01及び第2の試料S02の組成の説明を行う。図22(a)及び図23(a)は、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy:EELS)による、第1の試料S01及び第2の試料S02の元素のデプスプロファイルの評価結果である。また、図22(b)及び図23(b)は、それぞれ図20(a)及び図21(a)の一部を切り出したものであり、上記デプスプロファイルを行った部分L1及びL2を図示するものである。
図22(a)及び図23(a)中においては、縦軸が深さDpを、横軸が元素の検出の強度Int(任意単位)を表している。深さDpは、例えば、Z軸方向における距離に対応する。また、図22(a)及び図23(a)中には、ホウ素(B)が実線で、酸素(O)が一点鎖線で、鉄(Fe)が点線で示されている。
図23(a)に示すように、第2の試料S02においては、キャップ層211におけるホウ素の強度Intが、磁化自由層210(Co−Fe−B層)におけるホウ素の強度Intよりも高い。また、磁化自由層210において、キャップ層211側の部分におけるホウ素の強度Intは、磁化自由層210の中央部分におけるホウ素の強度Intよりも高い。従って、拡散防止層216を有しない第2の試料S02においては、ホウ素が、磁化自由層210からキャップ層211に拡散し、磁化自由層210におけるホウ素の濃度が低下していると考えられる。
一方、図22(a)に示す通り、第1の試料S01においては、磁化自由層210(Co−Fe−B層)の中央部分において、ホウ素のピークが生じている。そして、キャップ層211のホウ素含有量は少ない。即ち、磁化自由層210(Co−Fe−B層)のホウ素濃度は、他の層にほとんど拡散せずに成膜時の初期状態を維持している。これは、第1の試料S01は拡散防止層216を有しており、この拡散防止層216が磁化自由層210からのホウ素の拡散を抑制する拡散バリアの効果を有しているためと考えられる。
ここで、図20及び図21を参照して説明した通り、拡散防止層216を有する第1の試料S01においては、磁化自由層210がアモルファス状態の部分を含んでいた。これは、第1の試料S01においては、拡散防止層216によってアモルファス化促進元素であるホウ素の拡散を防止したためと考えられる。一方、拡散防止層216を有しない第2の試料S02においては、磁化自由層210の結晶化が進行していた。これは、第2の試料S02が拡散防止層216を有しておらず、アモルファス化促進元素であるホウ素が比較的容易に拡散してしまう事に起因するものと考えられる。
次に、X線回折を用い、Co40Fe4020層の結晶構造の評価を行った。結晶構造の評価は、図24及び図25に示す通り、第1の試料S01の一部と類似の構造を有する試料Sr1と、第2の試料S02の一部と類似の構造を有する試料Sr2に対して行った。
図24は、試料Sr1の構成を示す模式的な斜視図である。試料Sr1は、第1の試料S01と同様に、拡散防止層216を有している。即ち、試料Sr1は、Mg−O層からなる中間層203と、Co40Fe4020層からなる磁化自由層210と、Mg−O層からなる拡散防止層216と、Taからなるキャップ層211とを順に積層してなる。
図25は、試料Sr2の構成を示す模式的な斜視図である。試料Sr2は、第2の試料S02と同様に、拡散防止層216を有していない。即ち、試料Sr2は、Mg−O層からなる中間層203と、Co40Fe4020層からなる磁化自由層210と、Taからなるキャップ層211とを順に積層してなる。
次に、図26及び図27に示す通り、試料Sr1及び試料Sr2の磁化自由層210に、X線回折による評価を行った。結晶構造の評価に際しては、まず試料Sr1及び試料Sr2の製造直後に、X線回折による評価を行った。次に、320℃にて一時間アニール処理を行い、再びX線回折による評価を行った。
図26及び図27は、試料Sr1及び試料Sr2の磁化自由層210の、X線回折による評価結果を示している。これらの図の横軸は、回転角2θ(度)である。縦軸は、強度Intである。また、図中には、アニール処理前の評価結果が実線で、アニール処理後の評価結果が点線で示されている。
図26に示す通り、試料Sr1においては、アニール処理前後においてX線回折ピークが確認されなかった。従って、拡散防止層216を有する試料Sr1の磁化自由層210は、アニール処理の前後を通して、アモルファス状態であったと考えられる。
一方、図27に示す通り、試料Sr2においては、アニール処理前においてはX線回折ピークが確認されず、アニール処理後においてはCo50Fe50の回折ピークが確認された。従って、拡散防止層216を有しない試料Sr2の磁化自由層210においては、アニール処理によって結晶化が進行したものと考えられる。
次に、図28〜図31に示す通り、磁化自由層210の結晶性と磁化自由層210の磁気的特性について、更なる検討を行った。本検討においては、第1の試料S01(図12)及び第2の試料S02(図13)に加え、新たに図28に示す第3の試料S03を作製し、これら3つの試料について磁気的特性を測定した。磁気特性の評価(M−H測定)は50Hzの磁場掃印を用いたループトレーサーにより行った。
図28に示す通り、第3の試料S03は、第2の試料S02とほぼ同様に構成されているが、第3の試料S03においては、磁化自由層210にFe50Co50(厚さ4nm)が使用されている。即ち、第3の試料S03は、磁化自由層210にアモルファス化促進元素(例えばホウ素)を含んでいない。
図29及び図30は、第1の試料S01、第2の試料S02及び第3の試料S03の磁化自由層210の保磁力HC及び磁歪定数λを示すグラフである。尚、図中には、第1の試料S01及び第2の試料S02についてはアニール処理前後についての値が、第3の試料S03についてはアニール処理後についての値が示されている。
図29に示すとおり、アニール処理前においては、第1の試料S01及び第2の試料S02の保磁力HCは、どちらも3〜4Oe程度である。これに対し、アニール処理後においては、第1の試料S01の保磁力HCは4Oe程度であり、良好な軟磁性特性を示したのに対し、第2の試料S02及び第3の試料S03の保磁力HCは27Oeまで増大した。これは、第1の試料S01においては磁化自由層210がアモルファス状態を維持しているのに対し、第2の試料S02及び第3の試料S03においては磁化自由層210の結晶化が進行しているためであると考えられる。
図30に示すとおり、アニール処理前においては、第1の試料S01及び第2の試料S02の磁歪定数λは、どちらも20ppm程度である。アニール処理後においては、第1の試料S01の磁歪定数λは22ppm程度であり、アニール処理前の値を実質的に維持した。これに対し、第2の試料S02及び第3の試料S03の磁歪定数λは30〜35ppmまで増大した。
図31は、第1の試料S01、第2の試料S02及び第3の試料S03における磁化自由層210の結晶状態と、各状態における磁気的特性を示す模式的な図である。
図31に示す通り、第3の試料S03は、磁化自由層210がCo50Fe50からなり、アモルファス化促進元素であるホウ素を含んでいない。従って、第3の試料S03における磁化自由層210は、ほぼ結晶状態であると考えられる。尚、第3の試料S03における磁化自由層210は、保磁力HCが27(Oe)であり、磁歪定数λが35ppmである。
図31に示す通り、第2の試料S02の磁化自由層210は、アニール処理前においてはアモルファス状態であるものと考えられる。アニール処理前における第2の試料S02の磁化自由層210は、保磁力HCが4(Oe)であり、磁歪定数λが20ppmであり、MR比が9%である。
また、図31に示す通り、第2の試料S02は、磁化自由層210がCo40Fe40B20からなるものの、拡散防止層216を有していない。従って、アニール処理においては磁化自由層210からアモルファス化促進元素であるホウ素が比較的拡散しやすく、磁化自由層210の結晶化が比較的進行しやすいものと考えられる。尚、アニール処理後における第2の試料S02における磁化自由層210は、保磁力HCが27(Oe)であり、磁歪定数λが30ppmであり、MR比が188%である。
図31に示す通り、第1の試料S01の磁化自由層210は、アニール処理前においてはアモルファス状態であるものと考えられる。アニール処理前における第1の試料S01の磁化自由層210は、保磁力HCが3.2(Oe)であり、磁歪定数λが20ppmであり、MR比が8%である。
また、図31に示す通り、第1の試料S01は、磁化自由層210がCo40Fe4020からなり、拡散防止層216を有している。従って、アニール処理においては、磁化自由層210からホウ素が比較的拡散しづらく、磁化自由層210の結晶化も比較的進行しづらく、磁化自由層210をアモルファス状態に維持することが容易であると考えられる。尚、アニール処理後における第1の試料S01における磁化自由層210は、保磁力HCが3.3(Oe)であり、磁歪定数λが22ppmであり、MR比が149%である。
次に、図32〜図34に示す通り、第4の試料S04を作製し、この磁気的特性の評価を行った。図32の左図は、第4の試料S04の構成を示す模式的な斜視図である。また、図32の右図は、磁化自由層210中のホウ素濃度CBを示すグラフである。
第4の試料S04は、第1の試料S01とほぼ同様に構成されているが、磁化自由層210の構成が異なっている。即ち、第4の試料S04においては、磁化自由層210中のホウ素濃度CBが、拡散防止層216に近づくほど高く、中間層203に近づくほど低く設定されている。このような構成は、例えば磁化自由層210を、中間層203に接し、ホウ素濃度CBの低い第1の部分210bと、この第1の部分210bと拡散層216の間に設けられ、ホウ素濃度CBの高い第2の部分210aとから構成することによって実現することが可能である。第1の部分210bは、例えば0.5nmのCo50Fe50から形成することが可能である。また、第2の部分210aは、例えば8nmのCo40Fe4020から形成することが可能である。
上記第1の部分210bは、ホウ素濃度CBが低い。従って、第1の部分210bは、アニール処理によって結晶化が進行すると考えられる。ここで、MR比は、磁化自由層210のうち、中間層203近傍の部分(中間層203上面から約0.5nm程度の部分)
が結晶状態である場合に大きくなる。従って、第4の試料S04の様な構成によれば、高いMR比を確保できるものと考えられる。
また、上記第2の部分210aはホウ素濃度CBが高く、第4の試料S04は拡散防止層216を有している。従って、第2の部分210aは、アニール処理後においてもアモルファス状態を維持し、低い保磁力HCを確保するものと考えられる。ここで、磁化自由層210が積層膜である場合、磁歪定数や保磁力等の磁気特性は、積層膜に含まれる各層の厚さに応じて、例えば、最も厚い層の特徴が最も強く反映される。これは、磁化自由層に含まれる磁性材料の積層体が交換結合して磁気特性が平均化されるためである。従って、第4の試料S04の様な構成によれば、高いMR比を保持しつつ、保磁力HCを低減させることが可能となり、高いゲージファクタを有する歪検出素子を製造することが可能になるものと考えられる。
尚、第4の試料S04においては、第1の部分210bの膜厚を、第2の部分210aの膜厚よりも充分小さくする事が望ましい。これにより、例えば、小さい保磁力Hcを得ることが容易になる。第1の部分210bの厚さは、例えば、第2の部分210aの厚さの1/3以下である。
また、図32の右図に示す様なホウ素濃度CBの分布に関する情報は、例えば、SIMS分析(Secondary Ion Mass Spectrometry)や、断面TEMとEELSとの組み合わせ、EELS分析、3次元アトムプローブ分析等の手段によって得られる。
次に、図33及び図34に示す通り、第4の試料S04に対し、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。図33は、第4の試料S04の断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)写真像である。図33に示す通り、図中には、ピニング層206からキャップ層211までの積層構造が撮影されている。
次に、図34を参照して、第4の試料S04の組成の説明を行う。図34(a)は、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy:EELS)による、第4の試料S04の元素のデプスプロファイルの評価結果である。また、図34(b)は、図33の一部を切り出したものであり、上記デプスプロファイルを行った部分L3を図示するものである。
図34(a)中においては、縦軸が深さDpを、横軸が元素の検出の強度Int(任意単位)を表している。深さDpは、例えば、Z軸方向における距離に対応する。また、図34(a)中には、ホウ素(B)が実線で、酸素(O)が一点鎖線で、鉄(Fe)が点線で示されている。
図34(a)に示す通り、第4の試料S04においては、ホウ素Bが他の層に拡散せず、好適に磁化自由層210の範囲内にとどまっている。また、第1の部分210bにおけるホウ素のEELS強度は、第2の部分210aにおけるホウ素のEELS強度よりも低いことが分かる。
尚、第4の試料S04のMR比を測定した所、187%となり、第1の試料S01(MR比は149%)よりも高くなった。これは、結晶性を有する第1の部分210bが中間層203近傍に設けられていることに起因するものと考えられる。
また、第4の試料S04の保磁力HC及び磁歪定数λを測定した所、保磁力HCは3.8Oe、磁歪定数λは20ppmとなり、どちらも第1の試料S01(保磁力HCは3.3Oe、磁歪定数λは20ppm)とほぼ等しくなった。これは、保磁力HC及び磁歪定数λが第1の部分210bと第2の部分210aの特性の和によって与えられることと、第4の試料S04においては、アモルファス構造を有する第2の部分210aが、結晶構造を有する第1の部分210bと比較して、充分厚いことに起因するものと考えられる。
次に、図35に示す通り、磁化自由層210や拡散防止層216の構成を変えることにより、異なる保磁力HCを有する複数の試料を作製し、これら試料における保磁力HCとゲージファクタGFの関係を調べた。図35は、横軸が保磁力HCを、縦軸がゲージファクタGFを表している。図35に示す結果では、保磁力の評価はM−H測定は50Hzの磁場掃印を用いたループトレーサーにより行った。
図35に示す通り、保磁力HCが低いほど高いゲージファクタGFが得られることが分かる。また、保磁力HCが5Oe以下になると、ゲージファクタGFが急峻に増大していることが分かる。従って、高いゲージファクタGFを有する歪検出素子を製造するためには、磁化自由層210の保磁力HCを5Oe以下とすることが好ましい。なお、磁化自由層210の保磁力は、M−H測定の磁場掃印速度によって異なる値となり、磁場掃印速度が遅いほど低い値となる。例えば、Vibrating Sample Magnetometer(VSM)などで、磁場掃印速度40(Oe/min)で評価した場合に求められる保磁力の場合、HCが4Oe以下になると、ゲージファクタGFが急峻に増大する。磁場掃印速度10〜100(Oe/min)の範囲でM−H測定をする場合、特に高いゲージファクタGFとするには、保磁力を4Oe以下とすることが好ましい。
[1−3.下部電極上面の凹凸と磁化自由層の磁気的特性の関係の検討]
ここまでは、図10〜図35を参照して、磁化自由層210の結晶構造と磁気的特性の関係を示す実験の結果を説明した。ここからは、図36〜図48を参照して、下部電極204上面の凹凸と、磁化自由層210の磁気的特性の関係を示す実験の結果を説明する。
まず、図36〜図38を参照して、本実験に使用した第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07の説明を行う。図36は、第5の試料S05の構成を示す模式的な断面図である。図37は、第6の試料S06の構成を示す模式的な断面図である。図38は、第7の試料S07の構成を示す模式的な断面図である。
第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07は、図12に示した第1の試料S01と同様に構成されているが、お互いに下部電極204に含まれる材料及び作製プロセスが異なっており、上面の凹凸が異なる。その結果、その上に形成される積層体の第1の磁性層201と中間層203の界面の凹凸も異なる。
即ち、第5の試料S05の下部電極204は、Ta(5nm)/Cu95Ag(240nm)/Ta(50nm)からなる。また、第5の試料S05においては、下部電極204の成膜後に、CMP処理を行った。一方、第6の試料S06の下部電極204は、Ta(5nm)/Cu(240nm)/Ta(50nm)からなる。また、第6の試料S06においては、下部電極204の成膜後に、CMP処理を行った。また、第7の試料S07の下部電極204は、Ta(5nm)/Cu(240nm)/Ta(50nm)からなる。また、第7の試料S07においては、下部電極204の成膜後に、CMP処理は行わずに、Arイオン照射による表面平滑化処理を行った。
第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07は、積層体を成膜後、6500Oeの磁界中で320℃―1Hの熱処理を行い、その後、素子加工を行った。また、第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07について、素子加工をしない連続膜の状態における磁気特性・MR評価(CIPTによる)を行った。連続膜の試料では、320℃―1Hに加えて、成膜直後、低温アニール、高温アニールを行った場合の磁気特性・MR評価も行った。ここで、磁気特性の評価はVSMを用いて磁場掃印速度40(Oe/min)で評価した。
次に、図39に示す通り、第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07の下部電極204の表面凹凸を原子間力顕微鏡(AFM)により評価した。図39は、第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07における下部電極204上面の、平滑化処理前後における高さを示すグラフである。尚、図39(a)〜図39(f)において、横軸は下部電極204上面における位置を、縦軸は下部電極204上面の高さを表している。
図39(a)は、第5の試料S05の下部電極204の成膜直後における高さを示すグラフである。成膜直後において、第5の試料S05の下部電極204上面のRa値は1.09nm、Rmax値は6.89nmであった。また、図39(b)は、第5の試料S05の下部電極204の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第5の試料S05の下部電極204上面のRa値は0.14nm、Rmax値は0.84nmであった。従って、第5の試料S05の下部電極204のRa値及びRmax値は、CMP処理によって好適に低減されたことが分かる。
図39(c)は、第6の試料S06の下部電極204の成膜直後における高さを示すグラフである。成膜直後において、第6の試料S06の下部電極204上面のRa値は1.87nm、Rmax値は12.89nmであった。従って、下部電極204にCu−Ag合金を用いた場合、下部電極204にCuを用いた場合と比較して、Ra値及びRmax値を低減することが出来ることが分かった。また、図38(d)は、第6の試料S06の下部電極204の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第6の試料S06の下部電極204上面のRa値は0.26nm、Rmax値は1.78nmであった。従って、第6の試料S06の下部電極204のRa値及びRmax値は、CMP処理によって低減されたことが分かる。
図39(e)は、第7の試料S07の下部電極204の成膜直後における高さを示すグラフである。成膜直後において、第7の試料S07の下部電極204上面のRa値は2.03nm、Rmax値は12.16nmであった。従って、下部電極204にCu−Ag合金を用いた場合、下部電極204にCuを用いた場合と比較して、Ra値を低減することが出来ることが分かった。
また、図39(f)は、第7の試料S07の下部電極204の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第7の試料S07の下部電極204上面のRa値は0.61nm、Rmax値は4.76nmであった。従って、第7の試料S07の下部電極204のRa値及びRmax値は、Arイオン照射による表面平滑化処理によって低減されたことが分かる。
次に、図40、図41及び図42に示す通り、第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07の下部電極204と積層体の表面凹凸を透過型電子顕微鏡により撮影した。
図40に示す通り、第5の試料S05の第1の磁性層201と中間層203の界面凹凸は、Ra値にして0.20nmであり、Rmax値にして1.89nmであった。また、図40に示す通り、第5の試料S05の下部電極204に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層として形成されたCu−Ag層の界面凹凸はRa値にして1.42nmであり、Rmax値にして6.03nmであった。また、図40に示す通り、第5の試料S05の下部電極204に含まれる低抵抗率金属層として形成されたCu−Ag層の結晶粒径Gsは40nmであった。
図41に示す通り、第6の試料S06の第1の磁性層201と中間層203の界面凹凸は、Ra値にして0.36nmであり、Rmax値にして2.90nmであった。また、図41に示す通り、第6の試料S06の下部電極204に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層として形成されたCu層の界面凹凸はRa値にして3.19nmであり、Rmax値にして12.8nmであった。また、図40に示す通り、第6の試料S06の下部電極204に含まれる低抵抗率金属層として形成されたCu層の結晶粒径Gsは57nmであった。
図42に示す通り、第7の試料S07の第1の磁性層201と中間層203の界面凹凸は、Ra値にして0.83nmであり、Rmax値にして4.06nmであった。また、図42に示す通り、第7の試料S07の下部電極204に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層として形成されたCu層の界面凹凸はRa値にして2.65nmであり、Rmax値にして14.8nmであった。また、図42に示す通り、第7の試料S07の下部電極204に含まれる低抵抗率金属層として形成されたCu層の結晶粒径Gsは69nmであった。
次に、第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07に対して、素子加工をしていない連続膜の状態で、磁気的特性の評価を行った。ここで、磁気特性の評価はVSMを用いて磁場掃印速度40(Oe/min)で評価した。その結果、第5試料S05の保磁力は、3.2Oe、第6試料S06の保磁力は、4.5Oe、第7試料S07の保磁力は、5.0Oeであった。第5の試料S05、第6の試料S06及び第7の試料S07について、それぞれ複数の試料に断面TEM分析を行い、凹凸と保磁力の関係を解析した。
まず、図43を参照して、第1の磁性層201と中間層203の界面の凹凸と第1の磁性層201の保磁力Hcの関係についての結果を示す。図43(a)は平均粗さRaと保磁力Hcの関係を、図43(b)は最大粗さRmaxと保磁力Hcの関係を示すグラフである。図43(a)に示す通り、第1の磁性層201と中間層203の界面の平均粗さRaが0.3nm以下であるときに、4Oe以下の低い保磁力Hcを実現できることがわかった。また、図43(b)に示す通り、第1の磁性層201と中間層203の界面の最大粗さRmaxが2.5nm以下であるときに、4Oe以下の低い保磁力Hcを実現できることがわかった。4Oe以下の低い保磁力Hcを実現することによって後述するように高いゲージファクタGFを実現することができる。
次に、図44を参照して、下部電極204に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層の上面の凹凸と第1の磁性層201の保磁力Hcの関係についての結果を示す。図44(a)は平均粗さRaと保磁力Hcの関係を、図44(b)は最大粗さRmaxと保磁力Hcの関係を示すグラフである。図44(a)に示す通り、低抵抗率金属層の上面の平均粗さRaが2nm以下であるときに、4Oe以下の低い保磁力Hcを実現できることがわかった。また、図44(b)に示す通り、低抵抗率金属層の上面の最大粗さRmaxが10nm以下であるときに、4Oe以下の低い保磁力を実現できることがわかった。4Oe以下の低い保磁力Hcを実現することによって後述するように高いゲージファクタGFを実現することができる。
次に、図45を参照して、下部電極204に含まれるアルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む低抵抗率金属層の結晶粒径と保磁力Hcの関係についての結果を示す。図45に示す通り、低抵抗率金属層の結晶粒径Gsが50nm以下であるときに、4Oe以下の低い保磁力を実現できることがわかった。4Oe以下の低い保磁力Hcを実現することによって後述するように高いゲージファクタGFを実現することができる。
次に、下部電極の構成の違いによって確認された保磁力の違いの原因をより詳細に理解するために、図46及び図47に示す通り、第5の試料S05と第7の試料S07に対して、素子加工をしていない連続膜の状態で、保磁力およびMR変化率の熱処理温度依存性を調べた。本実験に際しては、第5の試料S05及び第7の試料S07を複数作製し、これら複数の試料に対して、異なる温度(220℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃)でアニール処理を行った。次に、これら試料の保磁力HC及びMR比を測定した。ここで、保磁力の評価は、VSMを用いて磁場掃印速度40(Oe/min)で評価した。
図46は、横軸がアニール処理の温度を、縦軸が磁化自由層210の保磁力HCを示している。図46に示す通り、熱処理前(as−depo)の状態における第5の試料S05および第7の試料S07の保磁力Hcは同等で3.3Oeである。また、図46に示す通り、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸が小さい第5の試料S05においては、アニール処理の温度が220℃から320℃まで上昇する間に、保磁力HCが2Oe〜3Oeの範囲で徐々に増大し、アニール処理の温度が340℃に到達した時点で、保磁力HCが6.5Oe程度にまで急峻に増大している。一方、図46に示す通り、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸が大きい第7の試料S07においては、アニール処理の温度が220℃から320℃まで上昇する間に、保磁力HCが3Oe〜5.5Oeの範囲で徐々に増大し、アニール処理の温度が280℃以上で、保磁力HCが4Oeを超えてしまっている。
図47は、横軸がアニール処理の温度を、縦軸がMR比の大きさを示している。図47に示す通り、第5の試料S05および第7の試料S07のMR比は、アニール処理の温度に対してほぼ同じ割合で増大している。
図46に示す通り、熱処理前の状態においては、磁化自由層210の保磁力HCが小さく、磁化自由層210がアモルファス状態を維持しているものと考えられる。しかしながら、図47に示す通り、熱処理前の状態においては、MR変化率が10%以下と極めて小さい値を取っており、高いゲージファクタを得ることが出来ない。
また、図47に示す通り、アニール処理の温度が上がるにつれて、MR比が大きくなっていることが分かる。これは、MgOからなる中間層203及びCo−Fe−Bからなる第1磁化固定層209の結晶化に起因するものと考えられる。
また、図47に示す通り、第5の試料S05と第7の試料S07のアニール処理の温度に対するMR変化率は同等であり、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸の違いがMR変化率には影響をあたえないことがわかる。一方で、図41より、熱処理を行った第5の試料S05と第7の試料S07のHcは明確に異なる値が確認され、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸が大きい第7の試料S07は、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸が小さい第5の試料S05と比較して、アニール処理によるHcの増大が顕著である事が分かる。
図46より、第5の試料S05では、熱処理温度320℃まで、Hcが3.2Oe以下を維持しており、第7の試料S07に比べて、より高温まで低いHcを維持している。換言すると、第5の試料S05は、第7の試料S07に比べて、より高温まで磁化自由層210のアモルファス構造を維持している。
図47に示すように、280℃以上の熱処理温度で、第5の試料S05および第7の試料S07ともに100%以上の高いMR変化率を得ることができ、第5の試料S05はこの高いMR変化率を得ることができる280℃以上の熱処理温度においても4Oe以下の低いHcを維持することができるため、高いゲージファクタを得ることができる。
このような第5の試料S05と第7の試料S07の比較で確認された、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸に起因した特性の違いは、図6を参照して説明したとおり、磁化自由層210中に含まれるホウ素(アモルファス化元素)が隣接層に拡散せずに、磁化自由層210中に留まりやすくなるため、磁化自由層210のアモルファス構造が維持されやすくなることに起因すると考えられる。
図48及び図49は、それぞれ第5の試料S05及び第7の試料S07に与えられた歪εと電気抵抗値Rとの関係を示しており、横軸は歪εを、縦軸は下部電極204と上部電極212との間の電気抵抗値Rを示している。図48及び図49においては、図40及び図42に断面TEM像を示した試料とそれぞれ同一の試料に対して320℃−1Hのアニール処理を行い、これら試料について測定を行った結果を示している。これらの結果から第5の試料S05の特性を算出した所、ゲージファクタ(GF=(dR/R)/dε)が3724となった。同様に、第7の試料S07の特性を算出した所、ゲージファクタ(GF=(dR/R)/dε)が1480となった。このようなゲージファクタの違いは、図41に示した通り、保磁力HCの大きさの違いに起因するものと考えられる。
次に、図50〜図53に示す通り、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の凹凸がお互いに異なり、拡散防止層216を有しない第8の試料S08及び第9の試料S09を作製し、これらの磁気的特性の評価を行った。
図50は、第8の試料S08の構成を示す模式的な断面図である。図51は、第9の試料S09の構成を示す模式的な断面図である。第8の試料S08は、第5の試料S05とほぼ同様に構成されているが、拡散防止層216を有していない。また、第9の試料S09は、第7の試料S07とほぼ同様に構成されているが、拡散防止層216を有していない。
次に、図52及び図53に示す通り、第8の試料S08と第9の試料S09に対して、素子加工をしていない連続膜の状態で、磁気的特性の評価を行った。本実験に際しては、第8の試料S08及び第9の試料S09を複数作製し、これら複数の試料に対して、異なる温度(220℃、260℃、280℃、300℃、320℃、340℃)でアニール処理を行った。次に、これら試料の保磁力HC及びMR比を測定した。ここで、保磁力の評価は、VSMを用いて磁場掃印速度40(Oe/min)で評価した。
図52は、横軸がアニール処理の温度を、縦軸が磁化自由層210の保磁力HCを示している。図52に示す通り、熱処理前(as−depo)の状態における第8の試料S08および第9の試料S09の保磁力Hcは同等で3.3Oeである。また、図52に示す通り、第8の試料S08及び第9の試料S09においては、アニール処理の温度が220℃から260℃まで上昇する間に、保磁力HCが徐々に増大し、アニール処理の温度が280℃に到達した時点で、保磁力HCが急峻に増大している。
図53は、横軸がアニール処理の温度を、縦軸がMR比の大きさを示している。図53に示す通り、第8の試料S08および第9の試料S09のMR比は、アニール処理の温度に対してほぼ同じ割合で増大している。
図52に示す通り、熱処理前の状態においては、磁化自由層210の保磁力HCが小さく、磁化自由層210がアモルファス状態を維持しているものと考えられる。しかしながら、図53に示す通り、熱処理前の状態においては、MR変化率が10%以下と極めて小さい値を取っており、高いゲージファクタを得ることが出来ない。
また、図53に示す通り、アニール処理の温度が上がるにつれて、MR比が大きくなっていることが分かる。これは、MgOからなる中間層203及びCo−Fe−Bからなる第1磁化固定層209の結晶化に起因するものと考えられる。
また、図53に示す通り、第8の試料S08と第9の試料S09のアニール処理の温度に対するMR変化率は同等であり、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸の違いがMR変化率には影響をあたえないことがわかる。一方で、図52より、熱処理を行った第8の試料S08と第9の試料S09のHcは明確に異なる値が確認され、第9の試料S09は第8の試料S08に対してHcが増大しやすいことがわかる。
図52より、第8の試料S08では、熱処理温度260℃まで、Hcが3Oe以下を維持しており、第9の試料S09に比べて、より高温まで低いHcを維持できる。換言すると、第8の試料S08は、第9の試料S09に比べて、より高温まで磁化自由層210のアモルファス構造を維持することができる。
図53に示すように、260℃以上の熱処理温度で、第8の試料S08および第9の試料S09ともに100%以上の高いMR変化率を得ることができ、第8の試料S08はこの高いMR変化率を得ることができる260℃以上の熱処理温度においても4Oe以下の低いHcを維持することができるため、高いゲージファクタを得ることができる。
このような第8の試料S08と第9の試料S09の比較で確認された、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸に起因した特性の違いは、図6を参照して説明したとおり、磁化自由層210中に含まれるホウ素(アモルファス化元素)が隣接層に拡散せずに、磁化自由層210中に留まりやすくなるため、磁化自由層210のアモルファス構造が維持されやすくなることに起因する。
以上より、拡散防止層216を設けない場合においても、磁化自由層210および下部電極204に含まれる低抵抗率金属層の表面凹凸を小さくすることによって、MR変化率と低い保磁力Hcを両立することができ、高いゲージファクタを実現することができることが分かった。
[1−4.第1の実施の形態に係る歪検出素子の他の構成例]
次に、第1の実施の形態に係る歪検出素子200の他の構成例について説明する。図54は、歪検出素子200Aの一の構成例を示す模式的な斜視図である。図54に例示したように、歪検出素子200Aは、下部電極204と上部電極212との間に充填された絶縁層(絶縁部分)213を備えていても良い。
絶縁層213には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層213により、歪検出素子200Aのリーク電流を抑制することができる。
図55は、歪検出素子200Aの他の構成例を示す模式的な斜視図である。図55に例示したように、歪検出素子200Aは、下部電極204と上部電極212との間に、互いに離間して設けられた2つのハードバイアス層(ハードバイアス部分)214と、下部電極204とハードバイアス層214の間に充填された絶縁層213を備えていても良い。
ハードバイアス層214は、ハードバイアス層214の磁化により、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定する。ハードバイアス層214により、外部からの圧力が膜部に印加されていない状態において、磁化自由層210(第1の磁性層201)の磁化方向を所望の方向に設定できる。
ハードバイアス層214には、例えば、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料が用いられる。また、Co−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdにさらに添加元素を加えた合金を用いても良い。例えば、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(CoPt100−x100−yCr(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、または、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)などが用いられてもよい。このような材料を用いる場合、ハードバイアス層214の磁化の方向は、ハードバイアス層214の保磁力よりも大きい外部磁界を加えることで、外部磁界を加えた方向に設定(固定)することができる。ハードバイアス層214の厚さ(例えば、下部電極204から上部電極212に向かう方向に沿った長さ)は、例えば5nm以上50nm以下である。
下部電極204と上部電極212の間に絶縁層213を配置する場合、絶縁層213の材料として、SiOxやAlOxを用いることができる。さらに、絶縁層213とハードバイアス層214の間に、図示しない下地層を設けてもよい。ハードバイアス層214にCo−Pt、Fe−Pt、Co−Pd、Fe−Pdなどの磁気異方性および保磁力が比較的高いハード磁性材料を用いる場合には、ハードバイアス層214用の下地層の材料として、CrやFe−Coなどを用いることができる。上記のハードバイアス層214は、後述するいずれの歪検出素子にも適用できる。
ハードバイアス層214は、図示しないハードバイアス層用ピニング層に積層された構造を有していてもよい。この場合、ハードバイアス層214とハードバイアス層用ピニング層の交換結合により、ハードバイアス層214の磁化の方向を設定(固定)できる。この場合、ハードバイアス層214には、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、これらの少なくとも1種を含む合金からなる強磁性材料を用いることができる。この場合、ハードバイアス層214には、例えば、CoFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、NiFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いることができる。ハードバイアス層214として、前述した第1磁化固定層209と同様の材料を用いることができる。また、ハードバイアス層用ピニング層には、前述した歪検出素子200A中のピニング層206と同様の材料を用いることができる。また、ハードバイアス層用ピニング層を設ける場合、下地層205に用いる材料と同様の下地層をハードバイアス層用ピニング層の下に設けても良い。また、ハードバイアス層用ピニング層は、ハードバイアス層の下部に設けても良いし、上部に設けても良い。この場合のハードバイアス層214の磁化方向は、ピニング層206と同様に、磁界中熱処理により決定することができる。
上記のハードバイアス層214及び絶縁層213は、本実施の形態に記載する歪検出素子200のいずれにも適用できる。また、上述したようなハードバイアス層214とハードバイアス層用ピニング層の積層構造を用いた場合、瞬間的に大きい外部磁界がハードバイアス層214に加わった場合においても、ハードバイアス層214の磁化の向きを容易に保持することが出来る。
図56は、歪検出素子200の他の構成例200Bを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Bは、歪検出素子200Aと異なり、トップスピンバルブ型の構造となっている。即ち、図56に示す通り、歪検出素子200Bは、下部電極204と、この下部電極204上に設けられた積層体と、この積層体上に設けられた上部電極212からなる。この積層体は、下部電極204に近い方から、下地層205と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、中間層203と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、磁気結合層208と、第2磁化固定層207と、ピニング層206と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。尚、下地層205と磁化自由層210の間には、図示しない拡散防止層を設けても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Cuが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このCu層の厚さは、例えば、5nmである。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、Co40Fe4020/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe4020層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。磁気結合層208には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。第2磁化固定層207には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
前述したボトムスピンバルブ型の歪検出素子200Aにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも下(−Z軸方向)に形成されている。これに対し、トップスピンバルブ型の歪検出素子200Bにおいては、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)が磁化自由層210(第1の磁性層201)よりも上(+Z軸方向)に形成されている。従って、歪検出素子200Bに含まれる各層の材料は、歪検出素子200Aに含まれる各層の材料を上下反転させて用いることができる。また、上述した拡散防止層を、歪検出素子200Bの下地層205と磁化自由層210の間に設けることができる。
図57は、歪検出素子200の他の構成例200Cを示す模式的な斜視図である。歪検出素子200Cは、単一の磁化固定層を用いたシングルピン構造が適用されている。即ち、図57に示す通り、歪検出素子200Cは、下部電極204と、この下部電極204上に設けられた積層体と、この積層体上に設けられた上部電極212からなる。この積層体は、下部電極204に近い方から、下地層205と、ピニング層206と、第1磁化固定層209(第2の磁性層202)と、中間層203と、磁化自由層210(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化固定層209は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層210は、第1の磁性層201に相当する。尚、磁化自由層210とキャップ層211の間には、図示しない拡散防止層を設けても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。ピニング層206には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第1磁化固定層209には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe4020層が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層210には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Cの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
図58は、歪検出素子200の他の構成例200Dを示す模式的な斜視図である。図58に示す通り、歪検出素子200Dは、下部電極204と、この下部電極204上に設けられた積層体と、この積層体上に設けられた上部電極212からなる。この積層体は、下部電極204に近い方から、下地層205と、下部ピニング層221と、下部第2磁化固定層222と、下部磁気結合層223と、下部第1磁化固定層224と、下部中間層225と、磁化自由層226と、上部中間層227と、上部第1磁化固定層228と、上部磁気結合層229と、上部第2磁化固定層230と、上部ピニング層231と、キャップ層211とを順に積層してなる。下部第1磁化固定層224及び上部第1磁化固定層228は、第2の磁性層202に相当する。磁化自由層226は、第1の磁性層201に相当する。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3ナノメートル(nm)である。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。下部ピニング層221には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。下部第2磁化固定層222には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。下部磁気結合層223には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。下部第1磁化固定層224には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe4020層が用いられる。下部中間層225には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層226には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020が用いられる。上部中間層227には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。上部第1磁化固定層228には、例えば、Co40Fe4020/Fe50Co50が用いられる。このCo40Fe4020層の厚さは、例えば2nmである。このFe50Co50層の厚さは、例えば1nmである。上部磁気結合層229には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。上部第2磁化固定層230には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。上部ピニング層231には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
歪検出素子200Dの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。
次に、図59を参照し、本実施の形態に係る歪検出素子200の他の態様について説明する。ここまでの説明においては、第2の磁性層202が磁化固定層である態様について説明したが、上述の通り、第2の磁性層202は磁化自由層であっても良い。以下、第2の磁性層202が磁化自由層であり、歪検出素子200がいわゆる2層フリー構造を有する場合について説明する。
図59(a),(b)及び(c)は、それぞれ歪検出素子200に引張歪が生じている状態、歪が生じていない状態及び圧縮歪が生じている状態の様子を表す模式的な斜視図である。また、図54(a),(b)及び(c)に示す例においては、第2の磁性層202が磁化自由層であるものとし、歪検出素子200に生じる歪の方向はX方向であるものとする。
図59(b)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200に歪が生じていない場合、第1の磁性層201の磁化方向と第2の磁性層202の磁化方向との相対的な角度は、0°よりも大きく180°よりも小さい。図59(b)に示す例においては、第1の磁性層201の初期磁化方向は、第2の磁性層202の初期磁化方向に対して90°である。また、これらの初期磁化方向は、歪が生じる方向に対してはそれぞれ45°(135°)である。
図59(a)に示す通り、歪検出素子200にX方向に引張歪が生じた場合、第1の磁性層201及び第2の磁性層202に、逆磁歪効果が生じ、これら磁性層の磁化方向は相対的に変化する。歪検出素子200の第1の磁性層201及び第2の磁性層202には、正の磁歪定数を有する強磁性体が用いられている。従って、図59(a)に示す通り、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の磁化方向は、それぞれ引張歪の方向に対して平行に近づく。尚、第1の磁性層201の磁歪定数は、負であっても良い。図59(a)に示す例においては、これら磁化方向は、お互いの間での角度差が小さくなるように変化する。
一方、図59(c)に示す通り、歪検出素子200にX方向に圧縮歪が生じた場合、第1の磁性層201及び第2の磁性層202に逆磁歪効果が生じ、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の磁化方向は、それぞれ圧縮歪の方向に対して垂直に近づく。図59(c)に示す例においては、これら磁化方向は、お互いの間での角度差が大きくなるように変化する。
図59(d)は、歪検出素子200の電気抵抗と、歪検出素子200に生じた歪との関係を示す概略的なグラフである。尚、図59(d)においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪とする。
図59(d)に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200の電気抵抗値は、正方向の歪(引張歪)が生じた場合には減少し、負方向の歪(圧縮歪)が生じた場合には増加する。従って、歪検出素子200は、例えば、マイクロフォンなど正負の圧力に感応するデバイスに直接用いることが出来る。
また、歪検出素子200の歪が0近傍であった場合、正方向(引張方向)に微小歪Δε1を加えた場合にも、負方向(圧縮方向)に微小歪Δε1を加えた場合にも、比較的大きい抵抗変化Δr2を得ることが出来る。即ち、本実施の形態に係る歪検出素子200は、歪が極めて微小である場合のゲージファクタが大きく、高感度な圧力センサの製造に適している。
次に、図60を参照して、第2の磁性層202を磁化自由層として使用する歪検出素子200の構成例について説明する。図60は、歪検出素子200の一の構成例200Eを示す模式的な斜視図である。図60に示す通り、歪検出素子200Eは、下部電極204と、この下部電極204上に設けられた積層体と、この積層体上に設けられた上部電極212からなる。この積層体は、下部電極204に近い方から、下地層205と、第1磁化自由層241(第2の磁性層202)と、中間層203と、第2磁化自由層242(第1の磁性層201)と、キャップ層211とを順に積層してなる。第1磁化自由層241は、第2の磁性層202に相当する。第2磁化自由層242は、第1の磁性層201に相当する。尚、下地層205と第1磁化自由層241の間及び第2磁化自由層242とキャップ層211の間の少なくとも一方には、図示しない拡散防止層を設けても良い。
下地層205には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。第1磁化自由層241には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020が用いられる。中間層203には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。第2磁化自由層242には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe4020が用いられる。キャップ層211には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。また、下地層205と第1磁化自由層241の間及び第2磁化自由層242とキャップ層211の間の少なくとも一方に拡散防止層を設ける場合、拡散防止層には、例えば、1.5nmの厚さのMgO層が用いられる。
歪検出素子200Eの各層の材料は、歪検出素子200Aの各層の材料と同様のものを用いることができる。また、第1磁化自由層241及び第2磁化自由層242の材料としては、例えば歪検出素子200A(図10)の磁化自由層210と同様のものを用いても良い。
[2.第2の実施の形態]
次に、図61を参照して、第2の実施の形態について説明する。図61は、第2の実施の形態に係る歪検出素子200の一部の模式的な断面図である。
本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の実施の形態に係る歪検出素子とほぼ同様に構成されているが、図61に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、中間層203と第1の磁性層201との界面の平均粗さRa又は最大粗さRmaxを、中間層203の膜厚Th203以下とすることができる。また、平均粗さRaは、例えば、図9(a)及び図9(b)を参照して説明したRa値によって算出される。また、最大粗さRmaxは、例えば、図9(c)を参照して説明したRmax値によって算出される。
即ち、第1の実施の形態においては、下部電極204の凹凸を低減することにより中間層203や拡散防止層216等の凹凸を低減し、これによって中間層203や拡散防止層216等に薄い部分が発生することを防止し、アモルファス化促進元素の拡散及びこれに伴う磁化自由層210の結晶化を抑制していた。しかしながら、中間層203や拡散防止層216等の凹凸を低減するためには、必ずしも下部電極204上面の凹凸を低減する必要は無い。本実施の形態においては、中間層203と第1の磁性層201との界面の平均粗さRa又は最大粗さRmaxを低減することにより、第1の実施の形態と同様の効果を実現している。
また、図6及び図7を参照して説明した通り、アモルファス化促進元素の拡散は、中間層203や拡散防止層216に薄い部分が発生してしまう事に起因するものと考えられる。従って、例えば中間層203や拡散防止層の膜厚が大きい場合には、許容される凹凸の大きさが大きくなるものと考えられる。従って、中間層203と第1の磁性層201との界面の凹凸を中間層203や拡散防止層の膜厚との関係から規定することは、アモルファス化促進元素の拡散防止に好適であると考えられる。
尚、図61には図示していないが、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、例えば中間層203上に拡散防止層を設けることも可能である。この場合には、拡散防止層と第1の磁性層201との界面の平均粗さ又は最大粗さを、拡散防止層の膜厚より小さくしても良い。また、この平均粗さは、例えば、図9を参照して説明したRa値であり、図9(a)及び(b)を参照して説明したRa値によって算出される。また、この最大粗さは、例えば、図9(c)を参照して説明したRmax値によって算出される。
[3.第3の実施の形態]
次に、図62〜図66を参照して、第3の実施の形態について説明する。図62は、第3の実施の形態に係る歪検出素子200の一部の模式的な断面図である。
本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1の実施の形態に係る歪検出素子とほぼ同様に構成されているが、図62に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、中間層203と第1の磁性層201との界面の凹凸が、膜部120上面の凹凸よりも小さい。例えば、中間層203と第1の磁性層201との界面の平均粗さRaが、膜部120上面の平均粗さRa120よりも小さい。例えば、中間層203と第1の磁性層201との界面の最大粗さRmaxが、膜部120上面の最大粗さRmax120よりも小さい。
また、図62に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面の凹凸を、膜部120上面の凹凸よりも小さくしても良い。例えば、下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面の平均粗さRaが、膜部120上面の平均粗さRa120よりも小さい。例えば、下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面の最大粗さRmaxが、膜部120上面の最大粗さRmax120よりも小さい。
また、図62に示す通り、本実施の形態に係る歪検出素子200においては、下部電極204上面の凹凸を、膜部120上面の凹凸よりも小さくしても良い。例えば、下部電極204上面の平均粗さRaが、膜部120上面の平均粗さRa120よりも小さい。例えば、下部電極204上面の最大粗さRmaxが、膜部120上面の最大粗さRmax120よりも小さい。
これら平均粗さRa、Ra、Ra及びRa120は、例えば、図9(a)及び図9(b)を参照して説明したRa値によって算出される。また、最大粗さRmax、Rmax及びRmax120は、例えば、図9(c)を参照して説明したRmax値によって算出される。
即ち、本実施の形態において、中間層203と第1の磁性層201との界面の凹凸や、拡散防止層216と第1の磁性層201との界面の凹凸は、膜部120上面の凹凸に影響されることもある。そこで、本実施の形態においては、膜部120上面の凹凸に起因する中間層203と第1の磁性層201との界面の凹凸及び拡散防止層216と第1の磁性層201との界面の凹凸を抑制し、これによって中間層203や拡散防止層216等に薄い部分が発生することを防止し、アモルファス化促進元素の拡散及びこれに伴う磁化自由層210の結晶化を抑制している。
次に、図63〜図66を参照して、膜部120上面の凹凸と、磁化自由層210の磁気的特性の関係を示す実験の結果を説明する。
まず、図63及び図64を参照して、本実験に使用した第10の試料S10及び第11の試料S11の説明を行う。図63は、第10の試料S10の構成を示す模式的な断面図である。図64は、第11の試料S11の構成を示す模式的な断面図である。
第10の試料S10及び第11の試料S11は、図12に示した第1の試料S01と同様に構成されているが、お互いに下部電極204上面(もしくは下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面)の凹凸が異なっている。即ち、第10の試料S10においては、下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面のRa値Ra5S10及びRmax値Rmax5S10、並びに、下部電極204上面のRa値Ra6S10及びRmax値Rmax6S10が、膜部120上面のRa値RaS10及びRmax値RmaxS10よりも小さい。一方、第11の試料S11においては、下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面のRa値Ra5S11及びRmax値Rmax5S11、並びに、下部電極204上面のRa値Ra6S11及びRmax値Rmax6S11が、膜部120上面のRa値RaS11及びRmax値RmaxS11よりも大きい。
第10の試料S10の膜部120は、SiOx(600nm)/a−Si(500nm)/AlOx(80nm)からなる。また、第10の試料S10の下部電極204は、Ta(5nm)/Cu95Ag(160nm)/Ta(50nm)からなる。更に、第10の試料S10においては、膜部120形成後にArイオン照射による表面平滑化処理を行い、下部電極204形成後にCMP処理を行った。一方、第11の試料S11の膜部120は、第10の試料S10と同様に、SiOx(600nm)/a−Si(500nm)/AlOx(80nm)からなる。また、第11の試料S11の下部電極204は、Ta(5nm)/Cu(160nm)/Ta(50nm)からなる。更に、第11の試料S11においては、膜部120形成後にArイオン照射による表面平滑化処理を行った。
次に、図65及び図66に示す通り、第10の試料S10と第11の試料S11の膜部120及び下部電極204の表面凹凸を原子間力顕微鏡により評価した。図65は、第10の試料S10における膜部120及び下部電極204上面の、平滑化処理前後における高さを示すグラフである。図66は、第11の試料S11における膜部120及び下部電極204上面の、平滑化処理前後における高さを示すグラフである。
図65(a)は、第10の試料S10の膜部120の成膜直後における高さを示すグラフである。成膜直後において、第10の試料S10の膜部120上面のRa値(RaS10)およびRmax値(RmaxS10)はそれぞれ2.46nm、16.47nmであった。また、図65(b)は、第10の試料S10の膜部120の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第10の試料S10の膜部120上面のRa値(RaS10)およびRmax値(RmaxS10)は、1.23nm、8.34nmであった。
図65(c)は、第10の試料S10の下部電極204の成膜直後における高さを示すグラフである。成膜直後において、第10の試料S10の下部電極204上面のRa値(Ra6S10)およびRmax値(Rmax6S10)は、1.74nm、9.60nmであった。また、図65(d)は、第10の試料S10の下部電極204の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第10の試料S10の下部電極204上面のRa値(Ra6S10)およびRmax値(Rmax6S10)は、は0.15nm、1.17nmであった。
以上より、第10の試料S10においては、下部電極204の材料にCu−Ag合金を用いたこと、および下部電極204表面にCMP処理を行ったことによって、膜部120表面よりも下部電極204表面(および下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面)のRa値およびRmax値が小さく抑えられていることが分かった。
図66(a)は、第11の試料S11の膜部120の成膜直後における高さを示すグラフである。成膜直後において、第11の試料S11の膜部120上面のRa値(RaS11)およびRmax値(RmaxS11)は、それぞれ2.75nm、17.45nmであった。また、図66(b)は、第11の試料S11の膜部120の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第11の試料S11の膜部120上面のRa値(RaS11)およびRmax値(RmaxS11)は、それぞれ1.59nm、7.68nmであった。
図66(c)は、第11の試料S11の下部電極204の成膜直後における高さを示すグラフである。第11の試料S11の下部電極204上面のRa値(Ra6S11)およびRmax値(Rmax6S11)は、成膜直後においてはそれぞれ2.00nm、12.23nmであった。また、図66(d)は、第11の試料S11の下部電極204の平滑化処理後における高さを示すグラフである。平滑化処理後において、第11の試料S11の下部電極204上面のRa値(Ra6S11)およびRmax値(Rmax6S11)は、それぞれ2.11nm、10.45nmであった。
以上より、第11の試料S11においては、下部電極204表面にArイオン照射による平滑化を行ったのにも拘らず、膜部120表面よりも下部電極204表面のRa値およびRmax値が大きくなることが分かった。
次に、第10の試料S10及び第11の試料S11について、保磁力HC及びゲージファクタGFの測定を行った。その結果、下部電極204上面(もしくは下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面)の凹凸が、膜部120上面の凹凸よりも小さい第10の試料S10では、3Oeと低い保磁力HC及び高いゲージファクタGFを確認することが出来た。一方で、下部電極204上面(もしくは下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面)の凹凸が、膜部120上面の凹凸よりも大きい第11の試料S11では、4.5Oeと比較的高い保磁力HC及び低いゲージファクタGFが確認された。これは、下記の様な理由によるものと考えられる。即ち、図65及び図66を参照して説明した通り、膜部120上面の凹凸の大きさは、下部電極204上面の凹凸の大きさに影響することがある。また、第1の実施の形態において説明した通り、下部電極204上面の凹凸の大きさは、中間層203と磁化自由層210との界面の凹凸の大きさに影響すると考えられる。従って、膜部120上の下部電極204上面(もしくは下部電極204に含まれる低抵抗金属層上面)の凹凸が大きい場合、中間層203と磁化自由層210との界面の凹凸も大きくなり、アモルファス化促進元素の拡散及びこれに伴う磁化自由層210の結晶化の促進を招いてしまうものと考えられる。第3の実施の形態においては、高いゲージファクタを有する歪検出素子200を得るため、膜部120の表面凹凸を、下部電極204によって抑制し、膜部120の凹凸が中間層203と磁化自由層210との界面の凹凸に与える影響を低減している。
[4.第4の実施の形態]
次に、第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサの構成例について説明する。図67は、本実施の形態に係る圧力センサ100の構成を示す模式的な斜視図、図68は図1のA−A’から見た模式的な断面図、図69は圧力センサ100の構成を示す模式的な平面図である。
図67に示す通り、圧力センサ100は、基板110と、基板110の一の面に設けられた膜部120と、膜部120上に設けられた歪検出素子200を備える。歪検出素子200は、第1または第2の実施の形態に係る歪検出素子200である。歪検出素子200は、膜部120上の一部に設けられる。また、膜部120上には、歪検出素子200に接続される配線131、パッド132、配線133及びパッド134が設けられている。
図68に示す通り、基板110は空洞部111を有する板状の基板であり、膜部120が外部の圧力に応じて撓むように膜部120を支持する支持部として機能する。本実施の形態において、空洞部111は基板110を貫通する円筒状の穴である。基板110は、例えばシリコンなどの半導体材料、金属などの導電材料、または、絶縁性材料からなる。また、基板110は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを含んでいても良い。
空洞部111の内部は、膜部120を撓ませることが出来るように設計されている。例えば、空洞部111の内部は減圧状態または真空状態であっても良い。また、空洞部111の内部には、空気などの気体または液体が充填されていても良い。更に、空洞部111は、外部と連通されていても良い。
図68に示す通り、膜部120は、基板110と比較して薄く形成されている。また、膜部120は、空洞部111の直上に位置し、外部の圧力に応じて撓む振動部121と、振動部121と一体形成され、基板111によって支持される被支持部122を有する。歪検出素子200は、振動部121の一部に設けられる。例えば図69(a)に示す通り、被支持部122は、振動部121を取り囲んでいる。以下、膜部120の空洞部111の直上に位置する領域を第1の領域R1と呼ぶ。
第1の領域R1は種々の形に形成する事が可能であり、例えば図69(a)に示す通り、略真円状に形成しても良いし、図69(b)に示す通り、楕円状(例えば、扁平円形状)に形成しても良いし、図69(c)に示す通り、略正方形状に形成しても良いし、図69(e)に示す通り、長方形状に形成しても良い。また、例えば第1の領域R1を略正方形状または略長方形状に形成した場合には、図69(d)または図69(f)に示す通り、4隅の部分を丸く形成する事も可能である。更に、第1の領域R1は、多角形や正多角形とすることも可能である。
膜部120の材料には、例えば、SiOxやSiNx、ポリイミドまたはパラキシリレン系ポリマーなどのフレキシブルプラスティック材料等の絶縁性材料を用いても良い。また、膜部120の材料には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの少なくともいずれかを含んでも良い。また、膜部120の材料には、例えば、シリコンなどの半導体材料を用いても良いし、Al等の金属材料を用いても良い。
膜部120は、基板110と比較して薄く形成される。膜部120の厚み(Z方向の幅)は、例えば、0.1マイクロメートル(μm)以上3μm以下である。膜部120の厚みは、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。膜部120には、例えば、厚さが0.2μmの酸化シリコン膜と、厚さが0.4μmのシリコン膜との積層体を用いても良い。膜部120の直径(平面寸法)は、50μm以上1000μmとすることができる。
図69に示す通り、歪検出素子200は、膜部120上の第1の領域R1内に複数配置することができる。また、歪検出素子200は、それぞれ第1の領域R1の外縁に沿って配置される。即ち、図69に示す例においては、複数の歪検出素子200のそれぞれと、第1の領域R1の外縁との間の距離(最短距離Lmin)は、互いに同じである。膜部120上の第1の領域R1内に配置する歪検出素子200の数は1でもよい。
例えば図69(a)及び図69(b)に示す通り、第1の領域R1の外縁が曲線である場合、歪検出素子200はその曲線に沿って配置される。また、例えば図69(c)及び(d)に示す通り、第1の領域R1の外縁が直線である場合、歪検出素子200はその直線に沿って直線状に配置される。
また、詳しくは後述するが、図69中には、膜部120に外接する矩形(図中の、第1辺〜第4辺によって構成される矩形。以下、「最小外接矩形」と呼ぶ。)と、この矩形の対角線を、一点鎖線で示している。この最小外接矩形及び一点鎖線によって分断された膜部120上における領域を、第1〜第4の平面領域と呼ぶ事とすると、歪検出素子200は、第1〜第4の平面領域内に、第1の領域R1の外縁に沿って、複数配置されている。
歪検出素子200は、図67に示す配線131を介してパッド132と、配線133を介してパッド134と接続されている。圧力センサ100によって圧力の検出を行う場合には、これらパッド132及び134を介して歪検出素子200に電圧が印加され、歪検出素子200の電気抵抗値が測定される。尚、配線131及び配線133の間には、層間絶縁層を設けても良い。
歪検出素子200として、例えば図4に示す歪検出素子200Aの様に、下部電極204及び上部電極212を備えた構成を採用する場合には、例えば下部電極204に配線131が接続され、上部電極212に配線133が接続される。一方、例えば上部電極を有さず、下部電極204を2つ有している構成や、下部電極を有さず、上部電極212を2つ有している構成を採用する場合には、一方の下部電極204または上部電極212に配線131が接続され、他方の下部電極204または上部電極212に配線133が接続される。尚、複数の歪検出素子200は、図示しない配線を介して直列または並列に接続されていても良い。これにより、SN比を増大することができる。
歪検出素子200のサイズは、極めて小さくても良い。歪検出素子200のXY平面における面積は、第1の領域R1の面積よりも十分に小さくできる。例えば、歪検出素子200の面積は、第1の領域R1の面積の1/5以下とすることができる。例えば、歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201の面積は、第1の領域R1の面積の1/5以下とすることができる。複数の歪検出素子200を直列または並列に接続することによって、第1の領域R1の面積よりも十分に小さい歪検出素子200を用いた場合でも、高いゲージファクタ、もしくは高いSN比を実現することができる。
例えば、第1の領域R1の直径が60μm程度の場合に、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の第1の寸法は、12μm以下とすることができる。例えば、第1の領域R1の直径が600μm程度の場合には、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の寸法は、120μm以下とすることができる。歪検出素子200の加工精度などを考慮すると、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の寸法を過度に小さくする必要はない。そのため、歪検出素子200(もしくは第1の磁性層201)の寸法は、例えば、0.05μm以上、30μm以下とすることができる。
尚、図67〜図69に示す例においては、基板110と膜部120を別体として構成しているが、膜部120を基板110と一体に形成しても良い。また、膜部120には、基板110と同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。膜部120を基板110と一体に形成する場合には、基板110のうちの薄く形成された部分が膜部120(振動部121)となる。更に、振動部121は、図67〜図69に示すように、第1の領域R1の外縁に沿って連続的に支持されていても良いし、第1の領域R1の外縁のうちの一部で支持されていても良い。
また、図69に示す例においては、膜部120の上に複数の歪検出素子200が設けられているが、例えば膜部120の上に歪検出素子200を一つだけ設けても良い。
次に、図70〜図72を参照して、圧力センサ100について行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、膜部120に圧力を加えた場合における、膜部120上の各位置での歪εを計算している。このシミュレーションは、有限要素法解析によって膜部120の表面を複数に分割し、分割された各要素にフックの法則を適用することによって行われている。
図70は、シミュレーションに用いたモデルについて説明するための模式的な斜視図である。図70に示す通り、シミュレーションにおいては、膜部120の振動部121を円形とした。また、振動部121の直径L1(直径L2)を500μmとし、膜部120の厚さLtは、2μmとした。更に、振動部121の外縁は、完全に拘束された固定端とした。
尚、シミュレーションにおいては、膜部120の材料としてシリコンを想定している。従って、膜部120のヤング率は165GPaとし、ポアソン比は、0.22とした。
更に、図70に示す通り、膜部120には下面から圧力が加わるものとし、圧力の大きさは13.33kPaとし、且つ振動部121に均一に加わるものとした。また、有限要素法においては、振動部121を、XY平面内においては5μmのメッシュサイズで分割し、Z方向においては、2μmの間隔で分割した。
次に、図71及び図72を参照し、シミュレーションの結果について説明する。図71は、シミュレーションの結果を示すグラフであり、縦軸は歪εを示しており、横軸は振動部121の中心からの距離rxを半径rで規格化した値rx/rを示している。尚、図71においては、引張方向の歪を正方向の歪とし、圧縮方向の歪を負方向の歪としている。
図71には、半径方向(X方向)の歪εrと、周方向の歪εθと、これら歪の差である異方歪Δε(=εr−εθ)とを示している。尚、図3を参照して説明した様な、逆磁歪効果による第1の磁性層201の磁化方向の変化には、この異方歪Δεが寄与する。
図71に示したように、凸状に撓んでいる振動部121の中心付近においては、半径方向の歪εr及び周方向の歪εθは引張歪である。これに対し、凹状に撓んでいる外縁付近では、半径方向の歪εr及び周方向の歪εθは圧縮歪である。中心付近において、異方歪Δεはゼロであり、等方歪となっている。外縁付近では、異方歪Δεは圧縮の値を示しており、外縁直近で最も大きい異方歪が得られる。円形の振動部121では、この異方歪Δεが中心からの放射線方向に対して常に同様に得られる。従って、歪検出素子200を、振動部121の外縁付近に配置することにより、歪の検出を感度良く行う事が出来る。このように、歪検出素子200を、振動部121の外縁付近の一部に配置することができる。
図72は、振動部121に生じる異方歪ΔεのXY面内分布を示すコンター図である。図72においては、図71に示した極座標系での異方歪Δε(Δεr−θ)をデカルト座標系での異方歪Δε(ΔεX−Y)に変換して、振動部121の全面において解析した結果が例示されている。
図72において、「90%」〜「10%」の文字で示されている線は、振動部121外縁の直近における最も大きい異方歪ΔεX−Yの値(絶対値)の、それぞれ90%〜10%の異方歪Δεが得られる位置を示している。図72に示す通り、同様の大きさの異方歪ΔεX−Yは限られた領域で得られる。
ここで、例えば図69(a)に示す通り、膜部120上に、複数の歪検出素子200を設ける場合、磁化固定層の磁化方向はピン固着を目的とした磁界中アニール方向に揃うため、同一方向をむく。従って、歪検出素子200は、ほぼ一様な大きさの異方歪が生じる範囲内に配置することが望ましい。
この点、第1の実施の形態に示した歪検出素子200は、比較的小さくしても高いゲージファクタ(歪検知感度)を実現することができる。従って、膜部120の寸法が小さい場合でも、ほぼ一様な大きさの異方歪が生じる範囲内に歪検出素子200を配置し、高いゲージファクタを得ることができる。また、歪検出素子200を膜部120上に複数配置して、同様な圧力に対する電気抵抗変化(例えば極性など)を得ようとする場合、図72に示すように同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に近接して配置することが好ましい。第1の実施の形態に示した歪検出素子200は比較的小さくしても高いゲージファクタ(歪検知感度)を実現することができるため、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に数多く配置することが可能となる。
第1の磁性層201/中間層203/第2の磁性層202からなる歪検出素子200の接合を複数とし、直列に接続することができる。複数の歪検出素子200が直列に接続されている歪検出素子200の数をNとしたとき、得られる電気信号は、歪検出素子200の数が1である場合のN倍となる。その一方で、熱ノイズ及びショットキーノイズは、N1/2倍になる。すなわち、SN比(signal-noise ratio:SNR)は、N1/2倍になる。直列に接続する歪検出素子200の数Nを増やすことで、膜部120の振動部121のサイズを大きくすることなく、SN比を改善することができる。膜部120上に第1の磁性層201/中間層203/第2の磁性層202からなる歪検出素子200の接合を複数配置して接続する場合、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に近接して配置することで、複数の歪検出素子200の圧力に対するシグナルをそろえることができるため、前述した効果からSN比の高い圧力センサを実現することができる。
ここで、図69を参照して説明した通り、本実施の形態に係る歪検出素子200は、第1〜第4の平面領域内に、第1の領域R1の外縁に沿って、複数配置されている。従って、第1〜第4の平面領域内に配置された複数の歪検出素子200によって一様な歪を検出する事が出来る。
また、本願明細書において、検出素子を「近接」させて配置する、とは次のような場合のことをいう。
図69(a)〜図69(f)は、膜部120上の歪検出素子200の配置の例を示す模式図であり、複数の歪検出素子200が近接して配置される場合の素子配置領域を例示している。
図69(a)に表したように、第1の領域R1を膜部120に対して平行な面(例えばX−Y平面)に投影したときに、上述した最小外接矩形が形成可能である。最小外接矩形は、振動部121の形状に外接する。第1の領域R1の形状は、例えば、図69中に点線で示した振動部121の外縁を膜部120に対して平行な面に投影した形状である。この例では、第1の領域R1の平面形状は、円形である。従って、最小外接矩形は正方形となる。
図69(a)に示す通り、最小外接矩形は、第1辺、第2辺、第3辺及び第4辺を有する。第2辺は、第1辺と離間する。第3辺は、第1辺の一端と、第2辺の一端と、に接続される。第4辺は、第1辺の他端と、第2辺の他端と、に接続され、第3辺と離間する。また、最小外接矩形は、重心を有する。例えば、重心は、振動部121の重心と重なる。
上述した通り、最小外接矩形は、第1の平面領域、第2の平面領域、第3の平面領域及び第4の平面領域を有する。第1の平面領域は、重心及び第1辺の一端を結ぶ線分、重心及び第1辺の他端を結ぶ線分、並びに、第1辺で囲まれた領域である。第2の平面領域は、重心及び第2辺の一端を結ぶ線分、重心及び第2辺の他端を結ぶ線分、並びに、第2辺で囲まれた領域である。第3の平面領域は、重心及び第3辺の一端を結ぶ線分と、重心及び第3辺の一端を結ぶ線分、並びに、第3辺で囲まれた領域である。第4の平面領域は、重心及び第4辺の他端を結ぶ線分、重心及び第4辺の他端を結ぶ線分、並びに、第4辺で囲まれた領域である。
図69(a)に表したように、第1の領域R1のうちの第1の平面領域と重なる部分(図中、斜線で示した部分)の上に、複数の歪検出素子200が設けられる。例えば、第1の領域R1のうちの第1の平面領域と重なる領域に設けられた、複数の歪検出素子200の少なくとも2つのそれぞれの位置は、最小外接矩形の第1辺に平行な方向において互いに異なる。このように配置することで、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁の領域に、数多くの歪検出素子200を配置することが可能となる。
図69(b)のように、振動部121の平面形状が扁平円である場合も、最小外接矩形が定義できる。図69(c)のように、振動部121の平面形状が正方形の場合においても、最小外接矩形が定義できる。この場合、最小外接矩形の平面形状は膜部と同じ正方形となる。図69(d)のように、振動部121の平面形状が正方形の場合において、振動部121に曲線状(または直線状)のコーナー部が設けられる場合も、最小外接矩形が定義できる。図69(e)のように、振動部121の平面形状が長方形の場合においても、最小外接矩形が定義できる。この場合、最小外接矩形の平面形状は被支持部122と同じ長方形となる。図69(f)のように、振動部121の平面形状が長方形の場合において、振動部121に曲線状(または直線状)のコーナー部が設けられる場合も、最小外接矩形が定義できる。そして、第1の平面領域〜第4の平面領域が定義できる。
上述したような領域に歪検出素子200を近接して配置することによって、同様の異方歪ΔεX−Yが得られる外縁付近の領域に、数多くの歪検出素子200を配置することが可能となる。
次に、図73を参照して、圧力センサ100の他の構成例について説明する。図73は、圧力センサ100の他の構成例を示す平面図である。図73に示した圧力センサ100は、図69に示す圧力センサ100とほぼ同様に構成されているが、歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201が、略正方形でなく、略長方形に形成されている点において異なる。
図73(a)には、膜部120の振動部121が略円形状である態様を、図73(b)には、膜部120の振動部121が略長円形状である態様を、図73(d)には、膜部120の振動部121が略正方形状である態様を、図73(e)には、膜部120の振動部121が略長方形状である態様を示している。また、図73(c)は、図73(b)の一部の拡大図である。
図73(c)に示す通り、膜部120には複数の歪検出素子200が、第1の領域R1の外縁に沿って配置されている。ここで、歪検出素子200の重心Gと、第1の領域R1の外縁とを最短距離で結ぶ直線を直線Lとすると、この直線Lの方向と歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201の長手方向との角度が、0°よりも大きく90°よりも小さくなるように設定されている。
上述した通り、歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201を、長方形状または長円形状等、形状磁気異方性を有する形状にした場合、磁化自由層201の初期磁化方向を、長手方向に設定する事が可能である。また、図73(c)に示した直線Lの方向は、歪検出素子200に生じる歪の方向を示している。従って、この直線Lの方向と歪検出素子200に含まれる第1の磁性層201の長手方向との角度を、0°よりも大きく90°よりも小さく設定することにより、磁化自由層201の初期磁化方向と歪検出素子200に生じる歪の方向を調整して、正負の圧力に対して感応する圧力センサを製造する事が出来る。尚、この角度は、30度以上60度以下がさらに好ましい。
また、上記角度の最大値と最小値との差が、例えば5度以下となる様に設定した場合、複数の歪検出素子200で同様の圧力―電気抵抗特性を得ることができる。
尚、図73に示す例においては、圧力センサ100が複数の歪検出素子200を備えていたが、1つのみ備えていても良い。
次に、図74を参照して、歪検出素子200の配線パターンについて説明する。図74(a)、図74(b)及び図74(d)は、歪検出素子200の配線パターンについて説明するための回路図である。また、図74(c)は、歪検出素子200の配線パターンについて説明するための概略的な平面図である。
圧力センサ100に、複数の歪検出素子200を設けた場合、例えば、図74(a)に示す通り、全ての歪検出素子200を直列に接続しても良い。ここで、歪検出素子200のバイアス電圧は、例えば、50ミリボルト(mV)以上150mV以下である。N個の歪検出素子200を直列に接続した場合、バイアス電圧は、50mV×N以上150mV×N以下となる。例えば、直列に接続されている歪検出素子の数Nが25である場合には、バイアス電圧は、1V以上3.75V以下となる。
バイアス電圧の値が1V以上であると、歪検出素子200から得られる電気信号を処理する電気回路の設計は容易になり、実用的に好ましい。一方、バイアス電圧(端子間電圧)が10Vを超えると、歪検出素子200から得られる電気信号を処理する電気回路においては、望ましくない。実施形態においては、適切な電圧範囲になるように、直列に接続される歪検出素子200の数N及びバイアス電圧が設定される。
例えば、複数の歪検出素子200を電気的に直列に接続したときの電圧は、1V以上10V以下となるのが好ましい。例えば、電気的に直列に接続された複数の歪検出素子200の端子間(一方の端の端子と、他方の端の端子との間)に印加される電圧は、1V以上10V以下である。
この電圧を発生させるためには、1つの歪検出素子200に印加されるバイアス電圧が50mVである場合、直列に接続される歪検出素子200の数Nは、20以上200以下が好ましい。1つの歪検出素子200に印加されるバイアス電圧が150mVである場合、直列に接続される歪検出素子200の数Nは、7以上66以下であることが好ましい。
尚、複数の歪検出素子200は、例えば、図74(b)に示す通り、全て並列に接続されていても良い。
また、例えば、図74(c)に示す通り、図69を参照して説明した第1〜第4の平面領域にそれぞれ複数の歪検出素子200を配置し、これを第1〜第4の歪検出素子群310,320,330及び340とした場合、図74(d)に示す通り、第1〜第4の歪検出素子群310,320,330及び340によってホイートストンブリッジ回路を構成しても良い。ここで、図74(d)に示す第1の歪検出素子群310と第3の歪検出素子群330は同極性の歪―電気抵抗特性が得られ、第2の歪検出素子群320と第4の歪検出素子群340は第1の歪検出素子群310と第3の歪検出素子群330とは逆極性の歪―電気抵抗特性を得ることができる。尚、第1〜第4の歪検出素子群310,320,330及び340に含まれる歪検出素子200の数は1でもよい。これにより、例えば、検出特性の温度補償を行うことができる。
次に、図75を参照して、本実施の形態に係る圧力センサ100の製造方法について説明する。図75は圧力センサ100の製造方法を示す模式的な斜視図である。
本実施の形態に係る圧力センサ100の製造方法においては、図75(a)に示す様に、基板110の一の面112に、膜部120を形成する。例えば基板110がSi基板であった場合、膜部120として、SiOx/Siの薄膜をスパッタによって成膜しても良い。
尚、例えば基板110としてSOI(Silicon On Insulator)基板を採用する場合には、Si基板上のSiO2/Siの積層膜を膜部120として採用する事も出来る。この場合、膜部120の形成は、Si基板とSiO2/Siの積層膜との貼り合わせである。
次に、図75(b)に示す通り、基板110の一の面112に、配線部131及びパッド132を形成する。即ち、配線部131及びパッド132となる導電膜を成膜し、その導電膜を、一部を残して除去する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、配線部131及びパッド132の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、配線部131及びパッド132のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図75(c)に示す通り、基板110の一の面112に、第1の磁性層201、第2の磁性層202、並びに、第1の磁性層201及び第2の磁性層202の間に位置する中間層203を成膜する。
次に、図75(d)に示す通り、第1の磁性層201、第2の磁性層202及び中間層203を、一部を残して除去し、歪検出素子200を形成する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、歪検出素子200の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、歪検出素子200のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図75(d)に示す通り、基板110の一の面112に、配線部133及びパッド134を形成する。即ち、配線部133及びパッド134となる導電膜を成膜し、その導電膜を、一部を残して除去する。本工程には、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いても良いし、リフトオフを用いても良い。
また、配線部133及びパッド134の周辺を、図示しない絶縁膜で埋め込んでも良い。この場合には、例えばリフトオフを用いても良い。リフトオフにおいては、例えば、配線部133及びパッド134のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、図示しない絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
次に、図75(e)に示す通り基板110の一部を、基板110の他の面113から除去して、基板110に空洞部111を形成する。この工程において除去する領域は、基板110の第1の領域R1に相当する部分である。尚、本実施の形態においては、基板110の第1の領域R1内に位置する部分を全て除去しているが、基板110の一部を残すことも可能である。例えば、膜部120と基板110を一体に形成する場合には、基板110の一部を除去して薄膜化し、この薄膜化された部分を膜部120としても良い。
本実施の形態において、図75(e)に示す工程にはエッチングが用いられる。例えば膜部120がSiO2/Siの積層膜である場合、本工程は、基板110の他の面113からの深堀加工によって行われても良い。また、本工程には、両面アライナー露光装置を用いることができる。これにより、歪検出素子200の位置に合わせて、レジストのホールパターンを他の面113にパターニングできる。
また、エッチングにおいては、例えばRIEを用いたボッシュプロセスが用いることができる。ボッシュプロセスでは、例えば、SF6ガスを用いたエッチング工程と、C4F8ガスを用いた堆積工程と、を繰り返す。これにより、基板110の側壁のエッチングを抑制しつつ、基板110の深さ方向(Z軸方向)に選択的にエッチングが行われる。エッチングのエンドポイントとして、例えば、SiOx層が用いられる。すなわち、エッチングの選択比がSiとは異なるSiOx層を用いてエッチングを終了させる。エッチングストッパ層として機能するSiOx層は、膜部110の一部として用いられても良い。SiOx層は、エッチングの後に、例えば、無水フッ化水素及びアルコールなどの処理などで除去されても良い。基板110のエッチングはボッシュプロセス以外にウェット工程による異方性エッチングや犠牲層を用いたエッチングを行っても良い。
次に、図76〜図78を参照して、本実施の形態に係る圧力センサ200の構成例440について説明する。
図76は、圧力センサ440の構成を示す模式的な斜視図である。図77及び図78は、圧力センサ440を例示するブロック図である。
図76及び図77に示すように、圧力センサ440には、基部471、検知部450、半導体回路部430、アンテナ415、電気配線416、送信回路417、及び、受信回路417rが設けられている。尚、本実施の形態に係る検知部450は、例えば第1または第2の実施の形態に係る歪検出素子200である。
アンテナ415は、電気配線416を介して、半導体回路部430と電気的に接続されている。
送信回路417は、検知部450に流れる電気信号に基づくデータを無線で送信する。送信回路417の少なくとも一部は、半導体回路部430に設けることができる。
受信回路417rは、電子機器418dからの制御信号を受信する。受信回路417rの少なくとも一部は、半導体回路部430に設けることができる。受信回路417rを設けるようにすれば、例えば、電子機器418dを操作することで、圧力センサ440の動作を制御することができる。
図77に示すように、送信回路417には、例えば、検知部450に接続されたADコンバータ417aと、マンチェスター符号化部417bと、を設けることができる。切替部417cを設け、送信と受信を切り替えるようにすることができる。この場合、タイミングコントローラ417dを設け、タイミングコントローラ417dにより切替部417cにおける切り替えを制御することができる。またさらに、データ訂正部417e、同期部417f、判定部417g、電圧制御発振器417h(VCO;Voltage Controlled Oscillator)を設けることができる。
図78に示すように、圧力センサ440と組み合わせて用いられる電子機器418dには、受信部418が設けられる。電子機器418dとしては、例えば、携帯端末などの電子装置を例示することができる。
この場合、送信回路417を有する圧力センサ440と、受信部418を有する電子機器418dと、を組み合わせて用いることができる。
電子機器418dには、マンチェスター符号化部417b、切替部417c、タイミングコントローラ417d、データ訂正部417e、同期部417f、判定部417g、電圧制御発振器417h、記憶部418a、中央演算部418b(CPU;Central Processing Unit)を設けることができる。
この例では、圧力センサ440は、固定部467をさらに含んでいる。固定部467は、膜部464(70d)を基部471に固定する。固定部467は、外部圧力が印加されたときであっても撓みにくいように、膜部464よりも厚み寸法を厚くすることができる。
固定部467は、例えば、膜部464の周縁に等間隔に設けることができる。膜部464(70d)の周囲をすべて連続的に取り囲むように固定部467を設けることもできる。固定部467は、例えば、基部471の材料と同じ材料から形成することができる。この場合、固定部467は、例えば、シリコンなどから形成することができる。固定部467は、例えば、膜部464(70d)の材料と同じ材料から形成することもできる。
次に、図79〜図90を参照して、圧力センサ440の製造方法を例示する。図79〜図90は、圧力センサ440の製造方法を例示する模式的な平面図及び断面図である。
図79(a)及び図79(b)に示すように、半導体基板531の表面部分に半導体層512Mを形成する。続いて、半導体層512Mの上面に素子分離絶縁層512Iを形成する。続いて、半導体層512Mの上に、図示しない絶縁層を介して、ゲート512Gを形成する。続いて、ゲート512Gの両側に、ソース512Sとドレイン512Dとを形成することで、トランジスタ532が形成される。続いて、この上に層間絶縁膜514aを形成し、さらに層間絶縁膜514bを形成する。
続いて、非空洞部となる領域において、層間絶縁膜514a、514bの一部に、トレンチ及び孔を形成する。続いて、孔に導電材料を埋め込んで、接続ピラー514c〜514eを形成する。この場合、例えば、接続ピラー514cは、1つのトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続され、接続ピラー514dはドレイン512Dに電気的に接続される。例えば、接続ピラー514eは、別のトランジスタ532のソース512Sに電気的に接続される。続いて、トレンチに導電材料を埋め込んで、配線部514f、514gを形成する。配線部514fは、接続ピラー514c及び接続ピラー514dに電気的に接続される。配線部514gは、接続ピラー514eに電気的に接続される。続いて、層間絶縁膜514bの上に、層間絶縁膜514hを形成する。
図80(a)及び図80(b)に示すように、層間絶縁膜514hの上に、酸化シリコン(SiO2)からなる層間絶縁膜514iを、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法を用いて形成する。続いて、層間絶縁膜514iの所定の位置に孔を形成し、導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて平坦化する。これにより、配線部514fに接続された接続ピラー514jと、配線部514gに接続された接続ピラー514kと、が形成される。
図81(a)及び図81(b)に示すように、層間絶縁膜514iの空洞部570となる領域に凹部を形成し、その凹部に犠牲層514lを埋め込む。犠牲層514lは、例えば、低温で成膜できる材料を用いて形成することができる。低温で成膜できる材料は、例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)などである。
図82(a)及び図82(b)に示すように、層間絶縁膜514i及び犠牲層514lの上に、膜部564(70d)となる絶縁膜561bfを形成する。絶縁膜561bfは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。絶縁膜561bfに複数の孔を設け、複数の孔に導電材料(例えば、金属材料)を埋め込み、接続ピラー561fa、接続ピラー562faを形成する。接続ピラー561faは、接続ピラー514kと電気的に接続され、接続ピラー562faは、接続ピラー514jと電気的に接続される。
図83(a)及び図83(b)に示すように、絶縁膜561bf、接続ピラー561fa、接続ピラー562faの上に、配線557となる導電層561fを形成する。
図84(a)及び図84(b)に示すように、導電層561fの上に、積層膜550fを形成する。
図85(a)及び図85(b)に示すように、積層膜550fを所定の形状に加工し、その上に、絶縁層565となる絶縁膜565fを形成する。絶縁膜565fは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などを用いて形成することができる。
図86(a)及び図86(b)に示すように、絶縁膜565fの一部を除去し、導電層561fを所定の形状に加工する。これにより、配線557が形成される。このとき、導電層561fの一部は、接続ピラー562faに電気的に接続される接続ピラー562fbとなる。さらに、この上に、絶縁層566となる絶縁膜566fを形成する。
図87(a)及び図87(b)に示すように、絶縁膜565fに開口部566pを形成する。これにより、接続ピラー562fbが露出する。
図88(a)及び図88(b)に示すように、上面に、配線558となる導電層562fを形成する。導電層562fの一部は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図89(a)及び図89(b)に示すように、導電層562fを所定の形状に加工する。これにより、配線558が形成される。配線558は、接続ピラー562fbと電気的に接続される。
図90(a)及び図90(b)に示すように、絶縁膜566fに所定の形状の開口部566oを形成する。開口部566oを介して、絶縁膜561bfを加工し、さらに開口部566oを介して、犠牲層514lを除去する。これにより、空洞部570が形成される。犠牲層514lの除去は、例えば、ウェットエッチング法を用いて行うことができる。
なお、固定部567をリング状とする場合には、例えば、空洞部570の上方における非空洞部の縁と、膜部564と、の間を絶縁膜で埋める。
以上の様にして圧力センサ440が形成される。
[5.第5の実施の形態]
次に、図91を参照して、第5の実施の形態について説明する。図91は、本実施の形態に係るマイクロフォン150の構成を示す模式的な断面図である。第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサ100は、例えば、マイクロフォンに搭載する事が出来る。
本実施の形態に係るマイクロフォン150は、圧力センサ100を搭載したプリント基板151と、プリント基板151を搭載した電子回路152と、プリント基板151と共に圧力センサ100と電子回路152とを覆うカバー153とを備える。圧力センサ100は、第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサである。
カバー153には、アコースティックホール154が設けられており、ここから音波155が入射する。音波155がカバー153内に入射すると、圧力センサ100によって音波155が検知される。電子回路152は、例えば、圧力センサ100に搭載された歪検出素子に電流を流し、圧力センサ100の抵抗値の変化を検出する。また、電子回路152は、増幅回路等によってこの電流値を増幅しても良い。
第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサは高感度であるため、これを搭載したマイクロフォン150は感度良く音波155の検出を行う事が可能である。
[6.第6の実施の形態]
次に、図92及び図93を参照して、第6の実施の形態について説明する。図92は、第6の実施の形態に係る血圧センサ160の構成を示す模式図である。図93は、同血圧センサ160のH1−H2から見た模式的な断面図である。第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサ100は、例えば、血圧センサ160に搭載する事が出来る。
図92に示す通り、血圧センサ160は、例えばヒトの腕165の動脈166上に貼り付けられる。また、図93に示す通り、血圧センサ160は第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサ100を搭載しており、これによって血圧を測定する事が可能である。
第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサ100は高感度であるため、これを搭載した血圧センサ160は感度良く連続的に血圧の検出を行う事が可能である。
[7.第7の実施の形態]
次に、図94を参照して、第7の実施の形態について説明する。図94は、第7の実施の形態に係るタッチパネル170の構成を示す模式的な回路図である。タッチパネル170は、図示しないディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
タッチパネル170は、マトリクス状に配置された複数の圧力センサ100と、Y方向に複数配置され、X方向に配置された複数の圧力センサ100の一端にそれぞれ接続された複数の第1の配線171と、X方向に複数配置され、Y方向に配置された複数の圧力センサ100の他端にそれぞれ接続された複数の第2の配線172と、複数の第1の配線171及び複数の第2の配線172を制御する制御部173とを備える。圧力センサ100は、第1〜第3の実施の形態に係る圧力センサである。
また、制御部173は、第1の配線171を制御する第1の制御回路174と、第2の配線172を制御する第2の制御回路175と、第1の制御回路174及び第2の制御回路175を制御する第3の制御回路176とを備える。
例えば、制御部173は、複数の第1の配線171及び複数の第2の配線172を介して圧力センサ100に電流を流す。ここで、図示しないタッチ面が押圧された場合、圧力センサ100はその圧力に応じて歪検出素子の抵抗値を変化させる。制御部173は、この抵抗値の変化を検出することにより、押圧による圧力を検出した圧力センサ100の位置を特定する。
第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサ100は高感度であるため、これを搭載したタッチパネル170は感度良く押圧による圧力を検出する事が可能である。また、圧力センサ100は小型であり、解像度の高いタッチパネル170を製造する事が可能である。
尚、タッチパネル170は、圧力センサ100の他にタッチを検出するための検出要素を備えていても良い。
[8.その他の応用例]
以上、具体例を参照しつつ、第1〜第3の実施の形態に係る歪検出素子200を搭載した圧力センサ100の応用例について説明した。しかし、圧力センサ100は、第4〜第7に示す実施の形態の他に、気圧センサやタイヤの空気圧センサ等、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
また、歪検出素子200、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170に含まれる膜部、歪検出素子、第1の磁性層、第2の磁性層及び中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての歪検出素子、圧力センサ100、マイクロフォン150、血圧センサ160及びタッチパネル170も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
[9.その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、下記の様な態様によっても実施することが可能である。
[態様1]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、この第1の磁性層及び第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu−Ag合金からなる金属層を含む
ことを特徴とする歪検出素子。
[態様2]
前記Cu−Ag合金からなる金属層の結晶粒径は、50nm以下である
ことを特徴とする態様1記載の歪検出素子。
[態様3]
前記電極は、Cu1−XAg合金(1at.%≦x≦20at.%)からなる前記金属層を含む
ことを特徴とする態様1または2に記載の歪検出素子。
[態様4]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、この第1の磁性層及び第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記金属層の結晶粒径は、50nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
[態様5]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1の界面のRa値が0.3nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)

(但し、Zは、前記高さ方向における前記第1の界面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置である)
[態様6]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(3)で表される前記第1の界面のRmax値が2.5nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様7]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、この第1の磁性層及び第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記金属層の前記積層体に対向する面を金属層上面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記金属層上面のRa値が2nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)

(但し、Zは、前記高さ方向における前記金属層上面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記金属層上面の位置である)
[態様8]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層及びこの第1の磁性層及び第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記金属層の前記積層体に対向する面を金属層上面とすると、下記式で表される前記金属層上面のRmax値が10nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記金属層上面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様9]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1の界面のRa値が前記中間層の膜厚よりも小さい
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)

(但し、Zは、前記高さ方向における前記第1の界面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置である)
[態様10]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(3)で表される前記第1の界面のRmax値が前記中間層の膜厚よりも小さい
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面又は前記膜部上面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様11]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面と、前記膜部の前記積層体に対向する面を膜部上面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1の界面のRa値が前記膜部上面のRa値よりも小さい
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)

(但し、Zは、前記高さ方向における前記第1の界面又は前記膜部上面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面又は前記膜部上面の位置である)
[態様12]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面と、前記膜部の前記積層体に対向する面を膜部上面とすると、下記式(3)で表される前記第1の界面のRmax値が前記膜部上面のRmax値よりも小さい
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面又は前記膜部上面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様13]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、この第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記金属層の前記積層体に対向する面を金属層上面とし、前記膜部の前記積層体に対向する面を膜部上面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記金属層上面のRa値が前記膜部上面のRa値よりも小さい
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)

(但し、Zは、前記高さ方向における前記金属層上面又は前記膜部上面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記金属層上面又は前記膜部上面の位置である)
[態様14]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、並びに、この第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記金属層の前記積層体に対向する面を金属層上面とし、前記膜部の前記積層体に対向する面を膜部上面とすると、下記式(3)で表される前記金属層上面のRmax値が前記膜部上面のRmax値よりも小さい
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記金属層上面又は前記膜部上面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様15]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と、
前記第1の磁性層の、前記中間層に対向する面とは逆の面に設けられた拡散防止層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1の界面のRa値が0.3nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)
(但し、Zは、前記高さ方向における前記第1の界面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置である)
[態様16]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層と、
第2の磁性層と、
前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層と、
前記第1の磁性層の、前記中間層に対向する面とは逆の面に設けられた拡散防止層と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記中間層と前記第1の磁性層との界面を第1の界面とすると、下記式(3)で表される前記第1の界面のRmax値が2.5nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様17]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
前記電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、この第1の磁性層及び第2の磁性層の間に設けられた中間層、並びに、前記第1の磁性層の、前記中間層に対向する面とは逆の面に設けられた拡散防止層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記金属層の前記積層体に対向する面を金属層上面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記金属層上面のRa値が2nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(1)

式(2)

(但し、Zは、前記高さ方向における前記金属層上面の位置の平均値、Z(i)は、前記高さ方向における前記金属層上面の位置である)
[態様18]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、この第1の磁性層及び第2の磁性層の間に設けられた中間層、並びに、前記第1の磁性層の、前記中間層に対向する面とは逆の面に設けられた拡散防止層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向と、前記金属層の前記積層体に対向する面を金属層上面とすると、下記式(3)で表される前記金属層上面のRmax値が10nm以下である
ことを特徴とする歪検出素子。
式(3)

(但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記金属層上面の位置、max(Z(i))は、Z(i)の最大値、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
[態様19]
変形可能な膜部の上に設けられる歪検出素子であって、
電極と、
この電極上に設けられ、前記膜部の変形に応じて磁化方向を変化させる第1の磁性層、第2の磁性層、前記第1の磁性層及び前記第2の磁性層の間に設けられた中間層、並びに、前記第1の磁性層の、前記中間層に対向する面とは逆の面に設けられた拡散防止層を有する積層体と
を備え、
前記第1の磁性層の少なくとも一部はアモルファスであり、
前記電極は、Cu、Al、Au、Ag、Ni,Fe、Coからなる群より選択される少なくとも一つの元素を含む金属層を含み、
前記電極は、Cu−Ag合金からなる金属層を含む
ことを特徴とする歪検出素子。
[態様20]
前記拡散防止層は、酸化物又は窒化物を含む
ことを特徴とする態様15〜19記載の歪検出素子。
[態様21]
前記拡散防止層は、酸化マグネシウムを含む
ことを特徴とする態様15〜19記載の歪検出素子。
[態様22]
支持部と、
前記支持部に支持され変形可能な膜部と、
前記膜部の上に設けられた態様1〜21のいずれか1つに記載の歪検出素子と、
を備えた圧力センサ。
[態様23]
前記歪検出素子は、前記基板の上に複数設けられた態様22記載の圧力センサ。
[態様24]
前記複数の歪検出素子のうちの少なくとも2つは、近接して設けられた態様23記載の圧力センサ。
[態様25]
前記膜部は、外部の圧力に応じて撓む振動部を有し、
前記振動部の形状に外接する最小外接矩形は、
第1辺と、
前記第1辺と離間する第2辺と、
前記第1辺の一端と、前記第2辺の一端と、に接続される第3辺と、
前記前記第1辺の他端と、前記第2辺の他端と、に接続される第4辺と、
前記最小外接矩形の重心と、
を含み、
前記最小外接矩形は、
前記重心及び前記第1辺の前記一端を結ぶ線分と、
前記重心及び前記第1辺の前記他端を結ぶ線分と、
前記第1辺と、
で囲まれた第1の平面領域を含み、
前記複数の歪検出素子のうちの少なくとも2つは、前記膜部のうちの前記第1の平面領域と重なる部分の上に設けられる
ことを特徴とする態様23記載の圧力センサ。
[態様26]
前記複数の検出素子の少なくとも2つのそれぞれの位置は、前記第1辺と平行な方向において互いに異なることを特徴とする態様25記載の圧力センサ。
[態様27]
前記膜部の平面寸法は50μm以上1000μm以下であることを特徴とする態様22〜26に記載の圧力センサ。
[態様28]
前記膜部の膜厚は0.1μm以上3μm以下であることを特徴とする態様22〜27に記載の圧力センサ。
[10.その他]
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
また、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100、100A…圧力センサ、110…基板、120…膜部、121…振動部、122…被支持部、131,133…配線、132,134…パッド、150…マイクロフォン、160…血圧センサ、170…タッチパネル、200…歪検出素子、201…第1の磁性層、202…第2の磁性層、203…中間層、204…下部電極、205…下地層、206…ピニング層、207…第2磁化固定層、208…磁気結合層、209…第1磁化固定層、210…磁化自由層、211…キャップ層、212…上部電極、213…絶縁層、214…ハードバイアス層、215…保護層、216…拡散防止層、221…下部ピニング層、222…下部第2磁化固定層、223…下部磁気結合層、224…下部第1磁化固定層、225…下部中間層、226…磁化自由層、227…上部中間層、228…上部第1磁化固定層、229…上部磁気結合層、230…上部第2磁化固定層、231…上部ピニング層、241…第2磁化自由層、242…第1磁化自由層。

Claims (16)

  1. 支持部と、
    前記支持部に支持され変形可能な膜部と、
    前記膜部に設けられた検出素子と、
    を備え、
    前記検出素子は、
    Cu及びAgを含む合金を含む金属層と、
    第1の磁性層と、
    前記金属層と前記第1の磁性層との間に設けられ、Ta、Ti及びTiNよりなる群から選択された少なくとも1つを含む金属含有層と、
    前記金属含有層と前記第1の磁性層との間に設けられた第2の磁性層と、
    前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた中間層と、
    を含み、
    前記金属層の前記金属含有層に対向する第1面は、前記金属含有層の前記第2の磁性層に対向する第2面よりも粗い、センサ。
  2. 前記金属層の結晶粒径は、50nm以下である、請求項1記載のセンサ。
  3. 前記合金は、Cu1−XAg合金(1at.%≦x≦20at.%)を含む、請求項1または2に記載のセンサ。
  4. 前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向とし、前記中間層の前記第1の磁性層に対向する面を第1の界面とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1の界面のRa値が0.3nm以下である、請求項1〜3に記載のセンサ。
    式(1)

    式(2)

    (但し、Zは、前記高さ方向における前記第1の界面の位置の平均値であり、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置である)
  5. 前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向とし、前記中間層の前記第1の磁性層に対向する面を第1の界面とすると、下記式(3)で表される前記第1の界面のRmax値が2.5nm以下である、請求項1〜3に記載のセンサ。
    式(3)

    (但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1の界面の位置であり、max(Z(i))は、Z(i)の最大値であり、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
  6. 前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向とすると、下記式(1)及び(2)で表される前記第1面のRa値が2nm以下である、請求項1〜3に記載のセンサ。
    式(1)

    式(2)

    (但し、Zは、前記高さ方向における前記第1面の位置の平均値であり、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1面の位置である)
  7. 前記第1の磁性層、前記第2の磁性層及び前記中間層が積層された方向を高さ方向とすると、下記式(3)で表される前記第1面のRmax値が10nm以下である、請求項1〜3に記載のセンサ。
    式(3)

    (但し、Z(i)は、前記高さ方向における前記第1面の位置であり、max(Z(i))は、Z(i)の最大値であり、min(Z(i))は、Z(i)の最小値である)
  8. 前記第1の磁性層はホウ素を含む、請求項1〜7記載のセンサ。
  9. 前記第1の磁性層の少なくとも一部におけるホウ素の濃度は5原子パーセント以上35原子パーセント以下である、請求項1〜8記載のセンサ。
  10. 前記第1の磁性層は、第1の部分と、第2の部分と、を含み、
    前記第1の部分は、前記中間層と前記第2の部分との間に位置し、
    前記第1の部分におけるホウ素の濃度は、前記第2の部分におけるホウ素の濃度よりも低い、請求項8記載のセンサ。
  11. 前記第1の磁性層は、第1の部分と、第2の部分と、を含み、
    前記第1の部分は、前記中間層層と前記第2の部分との間に位置し、
    前記第1の部分の少なくとも一部は結晶であり、
    前記第2の部分の少なくとも一部はアモルファスである、請求項1〜10記載のセンサ。
  12. 前記中間層は、酸化物及び窒化物の少なくともいずれかを含む、請求項1〜11記載のセンサ。
  13. 前記中間層は、酸化マグネシウムを含む、請求項1〜12記載のセンサ。
  14. 請求項1〜13のいずれか1つに記載されたセンサを備えたマイクロフォン。
  15. 請求項1〜13のいずれか1つに記載されたセンサを備えた血圧センサ。
  16. 請求項1〜13のいずれか1つに記載されたセンサを備えたタッチパネル。
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