JP6298844B2 - 車両のサイクリスト保護装置 - Google Patents

Description

本発明は、車両のサイクリスト保護装置に関する。

自動車といった車両では、車外を移動する歩行者と衝突する可能性がある。
特許文献１、２では、フード上で複数のエアバッグを平らに並べて展開する。
これにより、車両の前部に衝突した歩行者の上体とフードとの間にエアバッグを平らに展開させて、当たりを弱めることができる。

特開２０１０−０１２９６６号公報 特開平０９−０３０３６８号公報

ところで、自動車といった車両では、歩行者以外にも、たとえば自転車に乗車したサイクリストと衝突する可能性もある。
そして、サイクリストと自動車とが衝突した場合、サイクリストの腰位置が高いため、上記特許文献１、２の保護装置では、好適にサイクリストを保護することができない可能性がある。
サイクリストは、衝突後に自動車のフードに乗り上げ、腰部がフードに引っ掛かり、その後撓んだフードにより跳ね上げられることがある。このような衝突形態に対して、上記特許文献１、２の保護装置は十分に機能し得ない可能性がある。

このように、車両では、衝突したサイクリストの保護性能を向上させることが求められている。

本発明に係る車両のサイクリスト保護装置は、乗車部より前へ突出する前部を有する車両と、前記前部の前端部分に設けられるサイクリストエアバッグ装置と、を有し、前記サイクリストエアバッグ装置は、前記前部の上面において複数のエアバッグを前後方向に隣接させて上に立つように展開する。

好適には、前後方向に隣接して展開される複数の前記エアバッグは、前方からサイクリストの荷重が作用した場合に、後側のものの上に前側のものが乗る、とよい。

好適には、前後方向に隣接して展開される複数の前記エアバッグは、前側のものより後側のものが高く展開する、とよい。

好適には、前記エアバッグについての前後方向に隣接して展開される個数は、３以上である、とよい。

好適には、前記前部の前記上面には、前記前部の上面を形成するフードと、前記フードの前側に設けられるノーズコーンとが含まれる、とよい。

本発明では、車両の前部の前端部分にサイクリストエアバッグ装置が設けられ、サイクリストエアバッグ装置から、前部の上面において複数のエアバッグを前後方向に隣接させて展開する。よって、衝突後にサイクリストが車両の前部の上に乗り上げたとしても、その乗り上げた身体を複数のエアバッグで受け止めることができる。乗り上げたサイクリストは、その後に後側へ移動し難くなる。これにより、衝突したサイクリストの保護性能を向上させることができる。

図１は、本発明の実施形態に係る自動車の側面透視図である。 図２は、サイクリストとの衝突形態の一例の説明図である。 図３は、歩行者との衝突形態の一例の説明図である。 図４は、本実施形態でのサイクリスト保護装置の説明図である。 図５は、図４のサイクリスト保護装置の制御系のブロック図である。 図６は、サイクリストとの衝突時に図５の制御部により実施される制御のフローチャートである。 図７は、本実施形態でのサイクリストとの衝突形態の一例の説明図である。

以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。

図１は、本発明の実施形態に係る自動車１の側面透視図である。図１には、自動車１の側面が、その前を横切るサイクリストとともに図示されている。
自動車１は、車両の一例である。
図１の自動車１の車体は、前部２、乗車部３、および後部４を有する。

前部２は、乗車部３より前へ突出する部分である。前部２には、エンジン、電気モータ等の動力ユニットが配置される。前部２の上面には、フード５が開閉可能に設けられる。また、フード５の前側には、バンパーを含むノーズコーン６が設けられる。前部２の上面は、フード５とノーズコーン６の上面とにより構成される。
乗車部３には、乗車した乗員が着座するシートなどが設けられる。乗車部３の前面には、前部２の上面の上側となる位置にフロントガラス７が設けられる。
後部４は、乗車部３より後へ突出する部分である。後部４には、ラッゲージスペースが設けられる。

図２は、サイクリストとの衝突形態の一例の説明図である。
サイクリストが自動車１の前に衝突すると、サイクリストの腰位置が高いため、図２（Ａ）に示すように、サイクリストは衝突後に自動車１のフード５に乗り上げる。
そして、乗り上げたサイクリストの荷重により図２（Ｂ）に示すようにフード５か窪み変形し、その後に図２（Ｃ）に示すようにフード５がサイクリストを押し上げる。
このようにフード５で押し上げられたサイクリストは、自動車１とサイクリストの相対速度および相対移動方向に従って、図２（Ｄ）に示すようにたとえば後方へ移動する。この際、サイクリストの頭部がフロントガラス７に当たる可能性もある。

図３は、歩行者との衝突形態の一例の説明図である。
図３に示すように、歩行者が自動車１の前に衝突すると、歩行者の上体が腰位置を支点として自動車１のフード５へ向かって下へ回転する。こように、歩行者は、衝突後にフード５に乗り上げにくい。また、フード５の上を後方へ向かって移動することも起き難い。

このように、歩行者との衝突形態と、サイクリストとの衝突形態とは異なる。よって、歩行者の保護のために、フード５の上に平らにエアバッグを展開させたとしても、サイクリストを好適に保護することは難しい。
本実施形態では、衝突したサイクリストの保護性能を向上させる。

図４は、本実施形態でのサイクリスト保護装置１１の説明図である。図４（Ａ）は、車体の前部２の部分側面図である。図４（Ｂ）は、車体の前部２の上面図である。
図４のサイクリスト保護装置１１は、複数のサイクリストエアバッグ装置１２を有する。図４には、３個のサイクリストエアバッグ装置１２か図示されている。前後方向に配列されるサイクリストエアバッグ装置１２は、２個でも、４個以上でもよい。
サイクリストエアバッグ装置１２は、サイクリストエアバッグ１３と、これとともにインフレータを収容する本体１４と、を有する。

そして、複数のサイクリストエアバッグ装置１２は、自動車１の前部２の前端中央部分において前後方向に配列して設けられる。
各サイクリストエアバッグ１３は、前部２の上面を構成するフード５およびノーズコーン６の上面を突き破って、これらから上へ展開される。
そして、複数のサイクリストエアバッグ１３は、前後方向に隣接して展開する。
また、複数のサイクリストエアバッグ１３は、前側のものより真中のものが高く展開し、さらに真中のものより後側のものが高く展開する。後側のサイクリストエアバッグ１３は、前側に隣接するサイクリストエアバッグ１３より高く展開する。
また、複数のサイクリストエアバッグ１３は、前側のものより真中のものが車幅方向に広く展開し、さらに真中のものより後側のものが車幅方向に広く展開する。後側のサイクリストエアバッグ１３は、前側に隣接するサイクリストエアバッグ１３より車幅方向に広く展開する。

図５は、図４のサイクリスト保護装置１１の制御系のブロック図である。
図５の制御系には、撮像デバイス２１、レーダ２２、エアバッグ装置２３、およびこれらが接続される制御部２４、が図示されている。ここで、エアバッグ装置２３には、複数のサイクリストエアバッグ装置１２が含まれる。

制御部２４は、撮像デバイス２１やレーダ２２の検出に基づいて、衝突を予測し、衝突を検出する。そして、必要なタイミングで、エアバッグ装置２３へインフレータの点火信号を出力する。
たとえば、サイクリストの衝突を検出した場合、複数のサイクリストエアバッグ装置１２へ点火信号を出力する。これにより、複数のサイクリストエアバッグ１３が展開する。

撮像デバイス２１は、たとえば一対の撮像素子であり、図１に示すように乗車部３のルーフやフロントガラス７に前向きに設けられ、自動車１の前方の周辺状況を撮像により観測する。
レーダ２２は、たとえば自動車１の前部２の前面に配置される。レーダ２２は、超音波や電波を発し、その反射波の有無等に応じて自動車１の前方の周辺状況を観測する。
そして、制御部２４は、自動車１の前方を通過するサイクリストなどの障害物を特定し、該障害物の衝突の可能性を判断し得る。

図６は、サイクリストとの衝突時に図５の制御部２４により実施される制御のフローチャートである。
制御部２４は、図６のサイクリスト衝突制御を周期的に実施する。

図６に示すように、制御部２４は、サイクリストと衝突したか否かを判断する（ステップＳＴ１）。たとえばサイクリストとの衝突を検出した場合、サイクリストと衝突したと判断すればよい。

サイクリストと衝突した場合、制御部２４は、サイクリストを保護するための制御を実施する（ステップＳＴ２）。具体的には、複数のサイクリストエアバッグ装置１２へ点火信号を出力する。これにより、図４に示すように、複数のサイクリストエアバッグ１３が展開する。なお、この際、複数のサイクリストエアバッグ１３の展開順番を制御してもよい。たとえば前から順番に展開させてもよい。

図７は、本実施形態でのサイクリストとの衝突形態の一例の説明図である。
図６の制御が実施されることにより、自動車１の前部２の上面には、複数のサイクリストエアバッグ１３が前後方向に互いに隣接して展開する。
そして、衝突したサイクリストは、サイクリストの腰位置が高いため、図７（Ａ）に示すように、自動車１のフード５に乗り上げようとする。
ここで、本実施形態では、複数のサイクリストエアバッグ１３が前後方向に互いに隣接して密に展開されているため、最も前のサイクリストエアバッグ１３に対して、サイクリストの腰が当たり、その荷重が作用する。最も前のサイクリストエアバッグ１３は、後側で展開された他のサイクリストエアバッグ１３により支えられて、この荷重が作用している状態でも立った上体を維持し、荷重を吸収できる。
腰が最も前のサイクリストエアバッグ１３に当たったサイクリストは、図７（Ｂ）に示すように、上体が慣性により後へ移動するようにして、フード５へ向かって下へ回転する。
そして、フード５に向かって倒れ込むサイクリストの上体は、図７（Ｃ）に示すように、複数のサイクリストエアバッグ１３の上へ倒れ込む。

以上のように、本実施形態では、自動車１の前部２の前端部分にサイクリストエアバッグ装置１２が設けられ、サイクリストエアバッグ装置１２から、前部２の上面において複数のサイクリストエアバッグ１３を前後方向に隣接させて展開する。よって、衝突後にサイクリストが自動車１の前部２の上に乗り上げたとしても、その乗り上げた身体を複数のサイクリストエアバッグ１３で受け止めることができる。乗り上げたサイクリストは、その後に後側へ移動し難くなる。

また、本実施形態では、前後方向に隣接して展開される複数のサイクリストエアバッグ１３は、前方からサイクリストの荷重が作用した場合に、後側のものの上に前側のものが乗る。よって、後側のサイクリストエアバッグ１３に乗った前側のサイクリストエアバッグ１３は、荷重が前から作用したとしても後へ倒れ難くなる。倒れ難くなった前側のサイクリストエアバッグ１３により、前方からのサイクリストの荷重を好適に受け止めることができる。

また、本実施形態では、前後方向に隣接して展開される複数のサイクリストエアバッグ１３は、前側のものより後側のものが高く展開する。複数のサイクリストエアバッグ１３の上端により直線的な仮想面が形成される。よって、最も前のサイクリストエアバッグ１３に対して前から当たって受け止められたサイクリストの上体が、前部２の上面へ向かって下へ回転移動した場合に、その上体に沿った仮想面により上体の全体を支えることができる。
これに対して、上体の一部のみがサイクリストエアバッグ１３に当たった場合、その当たった部分に、倒れ込み荷重が集中的に作用し易くなる。

また、本実施形態では、サイクリストエアバッグ１３についての前後方向に隣接して展開される個数は、３である。このように、３つまたはそれ以上の個数のサイクリストエアバッグ１３を前後方向に隣接させることにより、一番前側のサイクリストエアバッグ１３は、前方から荷重が作用した場合でも、前部２の上面から上に立って展開した姿勢を維持し易くなる。

以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。

たとえば上記実施形態では、複数のサイクリストエアバッグ装置１２は、ノーズコーン６の上面からフード５にかけて前後方向に配列されている。
この他にもたとえば、複数のサイクリストエアバッグ装置１２は、フード５において前後方向に配列されてもよい。

１…自動車（車両）
２…前部
３…乗車部
４…後部
５…フード
６…ノーズコーン
７…フロントガラス
１１…サイクリスト保護装置
１２…サイクリストエアバッグ装置
１３…サイクリストエアバッグ（エアバッグ）
１４…本体
２１…撮像デバイス
２２…レーダ
２３…エアバッグ装置
２４…制御部

Claims (5)

1. 乗車部より前へ突出する前部を有する車両と、
   前記前部の前端部分に設けられるサイクリストエアバッグ装置と、
   を有し、
   前記サイクリストエアバッグ装置は、
   前記前部の上面において複数のエアバッグを前後方向に隣接させて上に立つように展開する、
   車両のサイクリスト保護装置。
2. 前後方向に隣接して展開される複数の前記エアバッグは、前方からサイクリストの荷重が作用した場合に、後側のものの上に前側のものが乗る、
   請求項１記載の車両のサイクリスト保護装置。
3. 前後方向に隣接して展開される複数の前記エアバッグは、前側のものより後側のものが高く展開する、
   請求項１または２記載の車両のサイクリスト保護装置。
4. 前記エアバッグについての前後方向に隣接して展開される個数は、３以上である、
   請求項１から３のいずれか一項記載の車両のサイクリスト保護装置。
5. 前記前部の前記上面には、前記前部の上面を形成するフードと、前記フードの前側に設けられるノーズコーンとが含まれる、
   請求項１から４のいずれか一項記載の車両のサイクリスト保護装置。

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