JP6120412B2 - 乾燥動物性食品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、動物性食品を原材料とした乾燥動物性食品およびそれを復水させて喫食する乾燥食品ならびにそれらの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入させた後、前記動物性食品を構成する筋組織を湿潤状態で熱変性させ、さらに蒸発乾燥させることで前記筋組織を結着させた、浸漬処理により復水できる乾燥食品およびその製造方法に関する。
常温での保存が可能で、常温以上の水または水溶液への浸漬や煮沸調理といった簡便な調理で美味しく食べられるインスタント食品として知られる乾燥食品は、日本の食文化を担う食品形態の一つである。これまでにも、即席で喫食できる乾燥食品を高度化するための発明が様々な素材で行われており、動物性素材についても即席乾燥具材の製造法がいくつか提案されてきた。
例えば、特許文献1〜3には、カットした豚肉などの動物性素材を、凍結乾燥、減圧下でのマイクロ波誘電加熱乾燥、高周波乾燥といった、素材内部を膨張させて水分除去を行う乾燥法を用いることで、乾燥後の動物性素材に空隙を含ませ、復水性を持たせることが記載されている。
特許文献4〜6は、動物性素材を原材料としたとき、その乾燥品が湯戻りし難い特徴を持つことを解決するため、動物性素材を予めミンチ肉やすり身といった形態にして油揚げなど湯の浸透性の良い食品と交錯させて配置することや、繊維状構造の形成に優れる大豆蛋白質と混練すること、またボールカッターを用いて食品添加物と混合して気泡を分散させる処理を施すことが記載されている。この処理によって、乾燥後の動物性素材に空隙を含ませ、復水性を持たせることが記載されている。
特許文献7および8は、動物性素材にプロテアーゼ処理をした後、乾燥させて製造する乾燥食品の発明に関する。特許文献7には、筋肉タンパク質の繊維性の形状と食感を損なうことなく、噛み易いジャーキーやドライハムを製造するために、乾燥前にプロテアーゼを含む塩漬剤で処理することが記載されている。特許文献8には、サケ科魚類を原料とする節を製造するために、超音波をかけることで蛋白質分解酵素を魚肉内に均一に浸透させ、蒸煮または煮熟を行い、焙乾または乾燥処理することが記載されている。
特許文献9〜11は、圧力処理を用いて、カットした食品素材の内部に分解酵素を導入させる発明に関する。特許文献9では、筋繊維の長軸方向と異なる方向に切断した動物性素材の切断面と分解酵素を接触させ、減圧工程と圧縮工程で素材を膨張後圧縮させることで、筋繊維間にある結合組織タンパク質に対して優先的に分解酵素を作用させ、弾力性を低下できることが記載されている。特許文献10では、凍結または凍結後解凍した食品素材を軟質包材に入れ、その軟質包材内で圧力処理により分解酵素、栄養成分、増粘剤などを素材の内部に含有させ、分解酵素の作用により素材を柔軟にした後、65〜125℃の温度で加熱調理することで、軟質包材一つで旧厚生労働省の高齢者用食品の許可基準を満たす硬さの食品が製造できることが記載されている。さらに、調理食品を凍結乾燥、乾燥できることが記載されている。特許文献11では、魚介類を原材料として、圧力処理による分解酵素の導入後、分解酵素の作用によるタンパク質の分解し、水分の存在下での加熱によりタンパク質を穏やかな条件で変性することによって、中心部まで均質に柔軟させた加工食品が記載されている。さらに、加工食品には、分解酵素によるタンパク質の酵素分解後のいずれかの時期に天日乾燥、熱風または送風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、燻煙乾燥処理をしたものも含まれることが記載されている。
特開2012−75436号公報 特開平6−62801号公報 特開昭53−86050号公報 特開2005−52141号公報 特開2004−41041号公報 特開平7−147888号公報 特開平7−265013号公報 特許第4023744号公報 特許第5093658号公報 特許第4947630号公報 特許第4986188号公報
近年の我が国では、高品質な即席乾麺が次々に開発されており、このような社会的背景を受けて、本発明者らは、これに見合う高品質な乾燥即席具材の開発、特に付加価値の高い動物性食品を原材料とした即席乾燥動物性乾燥食品の開発を行った。しかしながら従来の上記方法では、単にカットしただけの非形成の動物性食品を原材料として、送風乾燥などの安価な乾燥法で、短時間の湯調理または湯浸漬により復水させて美味しく喫食できる乾燥動物性食品を製造することが困難であった。動物性食品は、植物性食品に比べて、乾燥過程で変性し易いタンパク質を多く含むため、乾燥による構造変化が大きく、水浸透性の不良や噛み応えのある食感が再現できない課題が残されたままとなっていた。よってこれまでに、見た目にボリューム感のある厚みにカットした魚肉、畜肉などの動物性食品に関して、商業ベースに乗るような、復水して喫食する即席乾燥具材は存在しなかった。
よって、本発明の課題は、動物性食品を原材料として、送風乾燥などの安価な乾燥法でも、優れた水浸透性を有し、かつ、復水後、通常食している肉のような噛み応えや繊維感または肉の粒感、肉特有の呈味性を兼ね備えた、乾燥動物性食品の製造方法を提供することにある。
特許文献1〜6は、復水可能な乾燥動物性食品の製造方法を提供することを課題にしている点では本発明と一致するが、その原材料の形態、乾燥前処理方法、乾燥方法、さらに製造される乾燥動物性食品の品質が異なる。
特許文献1〜3によると、カットやスライスといった非常にシンプルな処理を行った動物性素材を原材料として製造した乾燥動物性食品に復水性を持たせるためには、凍結乾燥、減圧下でのマイクロ波誘電加熱乾燥、高周波乾燥といった、コストが高く、特殊な水分除去方法を必要とすることがわかる。特許文献1の実施例3で記載のブロイラー胸肉は、復水性と復水後の品質の復元性が高いことで知られている凍結乾燥法で製造されているにも関わらず、ブロイラー胸肉は、厚み3mmでカットされている。このことからも、動物性素材は、乾燥過程での構造変化が大きく、その変化は、復水させて元の品質に戻すために好ましくなく、その乾燥品に対して、良好な復水性と復水後の良質な品質を持たせることが難しいことがわかる。
特許文献4および5では、動物性素材単独では、その乾燥品の復水性が悪い課題を解決するために、復水時に水の通り道となる食材を添加して成形する工程を必要とする。この方法では、原材料として使用可能な動物性食品の形態が、ミンチ肉か練肉に限定されてしまう。また、特許文献4では添加する食品として、油揚げ、高野豆腐、ホウレンソウ、海苔といった、動物性の食肉とは異質な素材を用いる必要がある。また、特許文献5でも、動物性の食肉とは異なる大豆タンパク質を混練することから、乾燥後の湯戻し肉は、その食肉が本来持っている食感や味とは異なってくる。また、特許文献5によると、このように復水性の改善をしても尚、熱風乾燥で乾燥させたものは湯戻り不良と記載されている。
特許文献6では、1〜10mmに切断された筋繊維を原料としており、これと食品添加物を混合して平均粒子径500μm以下の気泡をムラなく分散させたものを成形し、結束加熱することで乾燥させるための素材となる畜肉ゲルを得ている。しかし、得られた乾燥品の復水後は、ソフトな食感と記載されており、本発明における通常食している肉の噛みごたえや繊維感または肉の粒感を有する、復水させた乾燥品とは品質が全く異なる。
特許文献7では、分解酵素を作用させることにより、ジャーキーやドライハムの食感が改良できることが記載されている。しかし、特許文献7によって得られる乾燥品は、そのまま喫食する乾燥食品であり、復水性を必要としない。よって、復水性や復水後の品質を考慮した分解酵素の利用に関する技術的思想の記載はなく、特許文献7に記載の方法で、畜肉を酵素処理して乾燥させても、乾燥工程で変色し、内部に空隙を有しながら筋組織を結着させることができず、復水性を有する乾燥食品は製造できなかった。
特許文献8には、サケ科魚類を原料として、節全体に蛋白質分解酵素を作用させることで、節の中心部まで旨味を引き出すことが記載されている。しかし、特許文献8によって得られる乾燥品は、乾燥状態のまま削って利用するサケ節である。よって、特許文献8には、カットした形状のままで復水性を持たせるために必要な酵素によるタンパク質の分解や、乾燥過程での筋組織の結着制御に関する技術的思想がなく、特許文献8に記載の方法で酵素処理して作製した乾燥サケでは、本発明で目標としている復水性、食感、呈味性が得られなかった。
特許文献9には、中心部まで一様に酵素を作用させることで、噛み易く美味しい動物性食品が製造されることが記載されている。しかし、特許文献9の示す食品形態には、乾燥食品は含まれない。よって、特許文献9における筋タンパク質の分解に関する記述には、復水性の付加や復水後の食感や味に関して、全く示唆されていない。特許文献9の実施例1に記載の牛モモ肉を送風乾燥させても、復水性は不良であった。
特許文献10には、分解酵素を均一に含有させて作用させ、65〜125℃の温度で加熱調理後の乾燥方法として、凍結乾燥、乾燥することもできると記載されている。しかし、特許文献10には、凍結乾燥、あるいはその他の方法で乾燥を実施した例は無く、特に凍結乾燥以外の乾燥方法についての具体的な記述がない。特許文献10で得られる調理食品の特徴については、旧厚生労働省の高齢者用食品の許可基準を満たすことや、容易に噛める硬さであること、口腔内で纏まり易いこと、誤嚥のリスクを低下する離水の抑制ができることに言及されていることから、乾燥後、復水した調理食品においても、乾燥前の噛み易さや離水の少なさを復元できることを乾燥処理条件にしていると考えられる。その場合、動物性食品について、これらの特徴を復元できる乾燥方法は、凍結乾燥のみであった。その他の熱風乾燥、真空乾燥、マイクロ波乾燥では乾燥後、色が悪くなり、さらに中心部まで復水できなかった。
特許文献11の[0043]には、乾燥処理を施すことによって製造できる食品形態として、ふりかけ、フレーク、中間水分食品が記載されている。しかし、特許文献11には、乾燥方法の具体的な記載はない。さらに、これらの食品の復水性や復水後の食感や味に関しては、全く示唆されていない。特許文献11の実施例6には、タンパク質の分解工程後、冷風、熱風、燻煙乾燥を行った後、90℃でタンパク質の熱変性と酵素失活を行った鯵の干物が、元の鯵の硬さの約1/2になることが記載されている。しかし、この方法には、復水して喫食可能にすることを目的として、タンパク質を熱変性させる配慮が全く施されていないため、復水できなかった。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入させた後、前記動物性食品を構成する筋組織を湿潤状態で熱変性させ、さらに蒸発乾燥させることで、乾燥過程での過度な収縮を抑制しながら、適度に分解した筋組織を結着させつつ水を除去することができ、これらの処理によって、上記課題を解決できることを知見した。より詳細には、乾燥前、分解酵素の作用と湿潤状態における加熱により動物性食品に含まれる結合組織および筋繊維タンパク質を適度に分解・変性しておくことで、内在水分が蒸発する乾燥過程において、復水時に水が浸透していく空隙を収縮によって塞がれる現象を抑制しながらも、脆弱化した筋組織を結着させることができ、水を蒸発させた後の乾燥食品は、水浸透性を有しながらも、復水後、適度な噛み応えや繊維感または肉の粒感と旨味を有する特徴を得ることができるものである。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様によれば、以下の1〜15の発明が提供される。
1. 動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入させた後、前記動物性食品を構成する筋組織を湿潤状態で熱変性させ、さらに蒸発乾燥させることで前記筋組織を結着させた、湿量基準含水率が1〜30%質量であり、かつ浸漬処理により復水できる乾燥動物性食品(熱変性前に動物性食品の内部に油脂を導入したものを除く)。
2. 前記動物性食品を、前記分解酵素を導入させた後かつ前記熱変性させる前および/または前記熱変性させた後かつ前記蒸発乾燥させる前に、冷凍させるかまたは冷凍後に解凍させる、1に記載の乾燥動物性食品。
3. 前記乾燥動物性食品の内部に、調味料および/または塩基性塩類をさらに含有させる、1または2に記載の乾燥動物性食品。
4. 90〜100℃の水または水溶液で3分〜5分間の条件で浸漬処理した復水後の前記乾燥動物性食品の最大応力値が、0.5×10〜5.0×10N/mである、1〜3のいずれかに記載の乾燥動物性食品。
5. 1〜4のいずれかに記載の乾燥動物性食品を用いて得られた、乾燥食品。
6. 動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入する工程と、
前記動物性食品を構成する筋組織を湿潤状態で熱変性する工程と、
前記動物性食品を、湿量基準含水率が1〜30%質量となるように蒸発乾燥して、前記筋組織を結着させる工程と、
を含んでなる、浸漬処理により復水できる乾燥動物性食品の製造方法(熱変性前に動物性食品の内部に油脂を導入したものを除く)。
7. 前記分解酵素が、少なくともプロテアーゼを含む、6に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
8. 前記分解酵素を導入する工程として、圧力処理を行うことを特徴とする、6または7に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
9. 前記分解酵素を導入する工程として、インジェクション処理を行うことを特徴とする、6〜8のいずれかに記載の乾燥動物性食品の製造方法。
10. 前記分解酵素を導入する工程として、テンダライズ処理および/またはタンブリング処理を行うことを特徴とする、6〜9のいずれかに記載の乾燥動物性食品の製造方法。
11. 前記筋組織を湿潤状態で熱変性する工程として、50〜100℃の湿潤状態の雰囲気下で熱変性することを特徴とする、6〜10のいずれかに記載の乾燥動物性食品の製造方法。
12. 前記動物性食品を、前記分解酵素を導入する工程の後かつ前記熱変性する工程の前および/または前記熱変性する工程の後かつ前記蒸発乾燥する工程の前に、冷凍させるかまたは冷凍後に解凍させることを特徴とする、6〜11のいずれかに記載の乾燥動物性食品の製造方法。
13. 90〜100℃の水または水溶液で3分〜5分間の条件で浸漬処理した復水後の前記乾燥動物性食品の最大応力値が、0.5×10〜5.0×10N/m以下である、6〜12のいずれかに記載の乾燥動物性食品の製造方法。
14. 前記蒸発乾燥が、送風乾燥、真空乾燥、およびマイクロ波乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により行われる、6〜13のいずれかに記載の乾燥動物性食品の製造方法。
15. 6〜14のいずれかに記載の乾燥動物性食品を用いる、乾燥食品の製造方法。
本発明によって、常温での保存が可能で、常温以上の水または水溶液への浸漬や煮沸調理といった、簡便な調理で美味しく食べられるインスタント食品として利用できる乾燥動物性食品を製造することができる。乾燥状態で3mm以上の厚みを持たせることで、喫食者に対して、視覚的にも動物性食品の存在感を訴えることができ、食欲を刺激することができる。本発明で製造される乾燥動物性食品は、即席麺や汁物の具材として使用できるだけでなく、単独で復水させて調理食品として提供することもでき、タンパク質の供給源として非常時、防災時の備蓄食品としても利用できる。
本発明による乾燥動物性食品の原材料は、特に限定されないが、粉砕、混錬、再成形、およびその他の特殊な加工は不要であり、カット等の通常の加工だけで十分である。そのため、原材料としては、生肉、加熱肉、ハンバーグなどの挽肉調理品を含む幅広い動物性食品が対象となり、これらを適当な大きさにカットすれば、原材料として用いることができる。
従来、動物性食品に対して最も一般的な乾燥方法である送風乾燥を行うと、水を除去する過程での構造変化が激しく、乾燥後、水の浸透性が悪く、復水後、乾燥前の好ましい食感を復元できなかった。しかし、本発明では、乾燥前の動物性食品の筋組織を予め分解酵素と熱で適度に変性させることによって、送風乾燥過程で起こる、好ましくない筋組織の結着現象を適度な度合いに軽減させることができ、このことによって、特殊な乾燥方法を用いなくても、復水性を有し、復水後、外観良く、肉特有の噛みごたえと繊維感と呈味性を有する、乾燥動物性食品を製造することができる。
本発明において対象となる動物性の原材料は、分解酵素の作用と、その後の熱変性により、筋組織の分解および構造変化が起こる。変性を受けた原材料は、変性処理のない原材料と比較して、乾燥初期から後期までの全乾燥期間において、乾燥速度の値が終始大きいことから、本法は、乾燥効率の向上にも寄与することができ、乾燥工程にかかるコスト削減にも貢献することができる。
多重積算バイト解析法を説明する図である。 実施例1の乾燥前豚ロース肉と復水後豚ロース肉の多重積算バイト解析法で得られた波形データを示す図である。 比較例7の復水後豚ロース肉の多重積算バイト解析法で得られた波形データを示す図である。 実施例1の復水後豚ロース肉、比較例8の蒸豚ロース肉、および比較例9の熟成豚ロース肉の多重積算バイト解析法で得られた波形データを示す図である。 乾燥後および復水後の豚ロース肉を示す図(写真)である。 乾燥後および復水後の肉団子を示す図(写真)である。 復水後の牛モモ肉を示す図(写真)である。 乾燥後および復水後の無頭エビを示す図(写真)である。
<乾燥動物性食品>
本発明による乾燥動物性食品は、動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入させた後、動物性食品を構成する筋組織(結合組織および筋繊維)を湿潤状態で熱変性させ、さらに蒸発乾燥させることで筋組織を結着させた乾燥動物性食品である。このような乾燥動物性食品は、常温以上の水または水溶液への浸漬や煮沸調理といった簡便な調理で美味しく食べられるインスタント食品として利用できる。乾燥前の筋組織の分解・変性によって、乾燥工程での筋組織の収縮と結着を軽度なものに制御することができ、乾燥後に復水させると、肉特有の繊維感または肉団子の粒感、さらに呈味性を有するものとなる。
本発明による乾燥動物性食品は、特定の物性値となる組織構造を有するものが好ましい。本発明における物性値の定義は以下の通りである。
<定義>
(湿量基準含水率)
湿量基準含水率は、以下の方法で算出した。
湿量基準含水率(%)=乾燥動物性食品に含まれる水重量/乾燥動物性食品重量(乾燥動物性食品に含まれる水重量+完全乾固物の重量)×100
(最大応力)
最大応力は、クリープメーター(RE−33005B:株式会社山電製)を用いて、直径3mmの円筒型冶具により、圧縮速度10mm/秒、歪率70%の条件で、20℃±2℃に温度調整したサンプルを圧縮したときのもっとも大きい応力値を最大応力値(N/m)とした。
(乾燥速度)
乾燥速度は、乾燥過程における重量記録が可能な秤を用いて測定した。1分毎に重量を測定し、乾燥処理する材料について、任意の湿量基準含水率において、材料に含まれる完全乾固物1gあたり、一時間に蒸発する水重量として算出した。ここでは、材料の湿量含水率が50%質量のときの、材料の完全乾固物1gあたり、一時間に蒸発する水重量を乾燥速度(g/(時間×g))の値として採用した。
本発明による乾燥動物性食品の湿量基準含水率は、1〜30%質量であり、好ましくは2〜25%質量であり、より好ましくは3〜20%質量であり、さらに好ましくは3.5〜15%質量である。乾燥動物性食品の湿量基準含水率を上記数値範囲内に調節することで、乾燥動物性食品の復水性や復水後の食感を好ましく改変することができる。
本発明による乾燥動物性食品は、90〜100℃の水または水溶液で3分〜5分間の条件で浸漬処理した復水後の最大応力値が、好ましくは0.5×10〜5.0×10N/mであり、より好ましくは0.8×10〜1.2×10N/mであり、さらに好ましくは1.0×10〜1.0×10N/mであり、最も好ましくは1.1×10〜6.0×10N/mである。復水後の乾燥動物性食品の最大応力値を上記数値範囲内に調節することで、復水後の乾燥動物性食品の食感を好ましく改変することができる。
本発明に用いる原材料としては、動物性の食品である。具体的には、牛肉、豚肉、鳥肉、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉、山羊肉、兎肉、鯨肉、それらの内臓などの肉類や、鯵、鮎、鰯、鰹、鮭、鯖、鯛、鱈、鮪、鮑、牡蠣、帆立、蛤、エビ、カニ、イカ、タコ、ナマコなどの魚介類を例示することができる。これらの原材料は、カット等の通常の加工処理を施したものであってもよい。また、原材料としては、蒲ハム、肉団子、ソーセージなどの畜肉加工製品、鉾、竹輪などの魚肉練製品などの加工食品であってもよい。
本発明においては、原材料として植物性素材を極力添加・混合しないことで、動物性食品が本来有する食感や風味を損なうことなく、乾燥動物性食品を製造することができる。植物性素材は、動物性食品が本来有する食感や風味を損ない範囲で添加・混合してもよいが、植物性素材の添加・混合量は、原材料全体の25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、植物性素材を添加・混合しないことが最も好ましい。また、添加・混合する植物性素材は、最長辺が10mm以下の断片であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。ここで、植物性食品とは、例えば、大豆、エンドウ豆等の豆類、大根、人参、牛蒡、筍、蓮根等の根菜類、ジャガイモ、薩摩芋、里芋、南瓜等のイモ類、ブロッコリー、キャベツ、白菜、広島菜、アスパラガス、ホウレン草、小松菜、青梗菜、トマト等の緑黄色野菜などが挙げられる。
これらの原材料は、生の状態でも、煮る、焼く、蒸す、揚げるなどの加熱・調理をしたものを用いてもよい。電子レンジ加熱や過熱水蒸気処理でもよい。加熱する場合の温度は、特に問わないが、内在タンパク質を変性させる目的で、60℃以上、好ましくは65℃以上が望ましい。焼くなどの高温処理では、加熱による色や香りなどの品質変化を考慮して、加熱温度と加熱時間を決定する必要がある。また原材料を食塩などの調味料や、塩基性塩類を溶解した水溶液で浸漬、茹でるなどの処理を行なって用いてもよい。さらに、予めタンブリング処理やテンダライズ処理を行なうことで、分解酵素の接触効果をより高めることができる。
本発明においては、上記原材料を、冷凍して用いてもよいし、冷凍後に解凍して用いてもよい。冷凍処理としては、急速凍結および緩慢凍結のいずれも適用することができる。また、これらの処理後にタンブリング処理を行うこともできる。
原材料となる動物性食品のカットの形状は、塊でも一口サイズでもスライスでもいずれの形状であってもよく、適宜選択することができる。復水後の動物性食品が、外観からその原材料を認識できるカットサイズであることや、摂食者の食欲をそそるものであることが好ましい。本発明の対象となる原材料のサイズは、特に限定されないが、厚さ3mm以上で体積125mm以上の塊が好ましい。
本発明において、原材料の内部には、分解酵素を導入させる。接触させる物質は、原材料に応じて、塩類、増粘多糖類、乳化剤、調味料なども併せて導入することができる。
但し、本発明による乾燥動物性食品からは、原材料である動物性食品の熱変性前に動物性食品の内部に油脂を導入したものを除く。動物性食品の熱変性前に、動物性食品の内部に、分解酵素の導入と同時ないしその前後に油脂を導入すると、蒸発乾燥による筋組織の結着が好ましいものにならず、乾燥過程で褐変し易い。そのため、乾燥後の動物性食品には復水に適した空隙が少なくなる。復水後の動物性食品の色が悪くなる傾向にある。なお、導入する油脂としては、米油、大豆油、パーム油、なたね油、牛脂、ラード等の食用油脂およびそのエマルジョンが挙げられる。
原材料の内部に導入させる分解酵素は、少なくともプロテアーゼを含むことが好ましく、ペプチダーゼをさらに併用してもよい。これらを作用させることで、多くのペプタイドやアミノ酸を生成させ、呈味性を向上させることができる。さらに、乾燥工程に影響のない範囲で、多糖類を分解するアミラーゼ、グルカナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、β−グルコシダーゼ、マンナーゼ、キシラナーゼ、アルギン酸リアーゼ、キトサナーゼ、イヌリナーゼ、キチナーゼ、脂質を分解するリパーゼなどを併用することができる。これらの酵素は、相互に阻害しない範囲内で、2種以上を組み合わせて使用することもできる。分解酵素の形態としては、粉末、液体、あるいは分散液に含有されたものを使用してもよい。
本発明で用いる分解酵素以外の原材料の内部に導入させる物質として、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、重曹などのナトリウム塩、乳酸などのカルシウム塩、デンプン、ジェランガム、カラギーナン、寒天、ペクチン、アルギン酸などの増粘多糖類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどの食品用乳化剤、食塩、醤油、糖類、アミノ酸、核酸などの調味料を挙げることができる。
本発明で用いる導入物質は、液体である場合は、そのまま、もしくは希釈して利用でき、粉末である場合は、水親和性の高い溶質に溶解若しくは分散させた状態で用いることができる。液体の導入物質のpHは、具体的には、pH3〜pH10の範囲で利用でき、pH4〜pH8であることがより好ましい。pHを調製するために、有機酸とその塩類、調味液などを使うこともできる。また、酵素活性が高まる至適pHに調整する、あるいは食品素材と同じpHに調整して、分解酵素の作用を高めて使用することもできる。
分解酵素の導入量は、原材料により適宜選択することができる。具体的には、原材料100gに対して、0.0001〜1.0gの範囲であることが好ましく、0.001〜0.5gの範囲であることがより好ましい。
本発明において、原材料の内部への分解酵素などの導入物質の導入手段は、特に限定されない。例えば、その手段として、圧力処理やインジェクション処理、浸漬、噴霧、塗す等を挙げることができる。圧力処理の条件としては、例えば、10kPaに到達後、直ちに大気圧に戻したり、あるいは10kPaに到達後〜10分間程度減圧状態を維持した後大気圧に戻したりしてもよい。さらに、これらの導入手段の後にタンブリング処理を行なうことで、分解酵素の浸透効果をより高めることができる。
上記原材料への分解酵素などの導入物質の導入後、分解酵素が酵素基質と作用する温度と時間は、用いる分解酵素や原材料によって選択することが好ましく、また微生物の増殖を抑制する条件が必要で、例えば1〜65℃、好ましくは10℃以下で、0〜24時間静置する等の条件を挙げることができる。
本発明においては、原材料への分解酵素の導入、作用後、原材料の組織を構成する筋組織(結合組織および筋繊維)を湿潤状態で熱変性する。湿潤状態で熱変性する方法としては、例えばボイル、蒸す、飽和加熱水蒸気調理機を用いる方法等を挙げることができる。具体的には、原材料によって選択することが好ましく、50〜100℃の範囲であることが好ましく、55〜100℃であることがより好ましい。
ここまでの一連の工程で、筋組織の分解、熱変性を受けた、乾燥前の動物性の原材料の最大応力値は、好ましくは8.0×10N/m以下であり、より好ましくは0.6〜6.0×10N/mであり、さらに好ましくは0.8〜5.0×10N/mである。乾燥前の原材料の最大応力値を上記数値範囲内に調節することで、乾燥後、復水した動物性食品の食感を改変することができる。
本発明においては、動物性の原材料へ分解酵素を導入させた後かつ熱変性する前および/または原材料を熱変性させた後かつ蒸発乾燥させる前に、原材料を冷凍して用いてもよいし、冷凍後に解凍して用いてもよい。冷凍処理としては、急速凍結、緩慢凍結いずれも適用することができる。冷凍後の解凍処理としては、室温で放置する方法、誘電加熱による方法、恒温装置中で加温して行うこともできる。
動物性の原材料の乾燥は、原材料に含まれる液体状態の水を、気体にして蒸発除去する方法により行うことができる。蒸発乾燥工程として、送風乾燥、真空乾燥、マイクロ波乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により行われる、乾燥方法を挙げることができる。さらに、途中で乾燥を適宜中断して、原材料表面からの水の蒸発を抑え、内部の水分を表面に拡散させるあんじょう工程を入れてもよい。
蒸発乾燥工程における原材料に含まれる水を除去する乾燥速度としては、原材料の湿量含水率が50%質量のとき、前記原材料の完全乾固物1gあたり0.05〜2.5g/(時間×g)の水の蒸発速度であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0g/(時間×g)である。上記数値範囲内に乾燥速度を調節することで、原材料は、空隙を確保しつつも、筋組織を適度に結着させて乾燥することができ、復水処理においては、水の浸透性が良く、復水後は、肉の繊維感またはミンチ肉の粒感のある食感を有することができる。
動物性の原材料の熱変性後で、蒸発乾燥前、蒸発乾燥中、または蒸発乾燥後に、原材料に調味料を後添加してもよい。具体的には、食塩、糖類、醤油、有機酸およびその塩、アミノ酸、核酸、増粘多糖類などの増粘剤、ビタミン、ミネラルなど栄養価を高める物質、食品用乳化剤を利用することができる。また、蒸発乾燥後であれば、米油、大豆油、パーム油、なたね油、牛脂、ラード等の食用油脂およびそのエマルジョン等、その呈味性を高める物質を利用することができる。蒸発乾燥前または蒸発乾燥中に動物性食品に食用油脂およびそのエマルジョンを添加した場合、蒸発乾燥過程で存在する油脂の影響で、筋組織の結着が好ましいものにならず、乾燥過程で褐変し易いためである。調味料の形態としては、粉末、液体、あるいは分散液に含有されたものを使用してもよい。
<乾燥食品>
本発明による乾燥動物性食品は、上記の原材料を用いて製造することができる、復水性を有するものである。乾燥食品としては、即席茶漬け、即席麺、即席スープなどの具材、即席ステーキ、即席ハンバーグ、さらに、非常用、防災用の備蓄食品等を挙げることができる。
本発明について実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、60℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.4〜0.5g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、4.5〜5.0%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、薄茶〜灰色の肉らしい外観で、表面には水が浸透できるような空隙が認められた。
[実施例2]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、10倍質量に希釈した調味料(おたふくおいしい煮物、オタフク株式会社製)を含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に10分間浸漬後、タンブリング処理を行った。豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜90℃で10分間飽和水蒸気処理(CK−20EL、三浦工業株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、65℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.2〜0.3g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、5.5〜6.0%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、染み込んだ調味料の影響により薄茶色で、肉らしい外観を有し、表面には水が浸透できるような空隙が認められた。
[実施例3]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、0.01〜0.05%質量のペプチダーゼ(ペプチダーゼR、天野エンザイム会社製)を含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液を表面全体に噴霧し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態に到達後、大気圧に戻した。その後、再び表面全体に噴霧し、タンブリング処理を行った。豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で5〜16時間静置後、60〜90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、65℃で10時間真空乾燥(DP43、ヤマト科学株式会社製)を行った。乾燥後の湿量基準含水率は、5.8〜6.3%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、薄茶〜灰色の肉らしい外観で、表面には水が浸透できるような空隙が認められた。
[実施例4]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、0.01〜0.1%質量のリパーゼ(リパーゼAY「アマノ」30SD、天野エンザイム会社製)を含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(ブロメラインF、天野エンザイム会社製)水溶液をインジェクション処理し、タンブリング処理を行った。豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜80℃の湯浴で20分間加熱処理して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った。乾燥処理として、200Wで30秒を3回繰り返すマイクロ波乾燥(NE−SV30HA、パナソニック電工株式会社製)を行った後、70℃で3時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。乾燥後の湿量基準含水率は、4.8〜5.3%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、薄茶〜薄黄色の肉らしい外観で、表面には水が浸透できるような空隙が認められた。
[実施例5]
生の国産豚ロース肉ブロックを、軟質包材に入れて真空包装機で密封し、60〜90℃で30分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)後、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、−20℃で凍結させた。解凍後、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を用いて、0.05〜0.15%質量に調製したプロテアーゼ(ブロメラインF、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜90℃で10分間飽和水蒸気処理(CK−20EL、三浦工業株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、60℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.2〜0.4g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、5.5〜6.0%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、薄茶〜灰色の肉らしい外観で、表面には水が浸透できるような空隙が認められた。
[比較例1]
生の国産豚ロース肉を、実施例1と同じ方法で酵素処理まで行った後、スチーム加熱処理を行わずに、60℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。乾燥後の豚ロース肉は、手で曲げることができるが割ることができず、ゴムの様な感触で、表面には水が浸透できるような空隙が認められなかった。
[比較例2]
生の国産豚ロース肉を、実施例1と同じ方法でスチーム加熱処理まで行った後、20℃で15時間送風乾燥(ミニカン21、株式会社クールドライマシナリー社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.06〜0.10g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、32〜34%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、表面には水が浸透できるような空隙が認められず、手で割れるがボロボロとした壊れ方で、サクサク感がなかった。
[比較例3]
生の国産豚ロース肉を、実施例1と同じ方法でスチーム加熱処理まで行った後、60℃で1時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行い、4℃で15時間あんじょうを行った。乾燥後の湿量基準含水率は、34〜36%質量であった。得られた乾燥豚ロース肉は、手で割れるがボロボロとした壊れ方で、サクサク感がなかった。
[比較例4]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、60℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。乾燥後の豚ロース肉は、表面硬化が起きて全体的に褐変している様子が認められた。
[比較例5]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、60〜90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)後、−40℃の急速冷凍機(QXF−006SF5−E、福島工業株式会社製)で凍結し、凍結乾燥(FDU−830、東京理化器械株式会社製)を行った。得られた凍結乾燥豚ロース肉は、ほとんど収縮せず、細かな空隙を有し、白っぽい灰色であった。
[比較例6]
生の国産豚ロース肉を、実施例1と同じ方法でスチーム加熱処理まで行った後、−40℃の急速冷凍機(QXF−006SF5−E、福島工業株式会社製)で凍結し、凍結乾燥(FDU−830、東京理化器械株式会社製)を行った。得られた凍結乾燥豚ロース肉は、ほとんど収縮せず、もろく崩れ易く、白っぽい灰色であった。
実施例1〜5ならびに比較例4の乾燥処理前の豚ロース肉の最大応力値を表2に示す。実施例1〜5の方法で得られた乾燥処理前の豚ロース肉は、1.8〜3.9×10N/mであった。比較例4の方法で得られた乾燥処理前の豚ロース肉は、2.0×10N/mであり、実施例1〜5に比べて硬く、[0047]に記述されている乾燥前の動物性の原材料の最大応力値の適性範囲よりも高い値であった。
実施例1〜5ならびに比較例1〜6の乾燥豚ロース肉を、95℃の湯の中に3分間浸漬させ、復水性、外観、食感、呈味性、総合評価を5段階で官能評価した結果を表1に示す。各項目の評価点は、5:良好、4:やや良好、3:普通、2:やや悪い、1:悪いとし、10人のパネリストの評価点の平均値とした。実施例1〜5の復水した豚ロース肉は、いずれの評価項目においても、3:普通より高い評価であった。また、実施例1〜5の復水した豚ロース肉は、酵素分解過程でペプタイドやアミノ酸が生成され、さらには、乾燥過程において加熱香気が生成されるため、旨味や香りや旨味が増強された。実施例2は、調味料を併用処理しているため、実施例3は、ペプチダーゼを併用処理しているため、いずれも味や香りといった呈味性の評価が特に高かった。比較例1は、まったく復水せず、特に外観と食感の評価が低かった。比較例2および3についても水の浸水性が低く、中心部まで復水せず、蒸発乾燥による筋組織の結着が不十分であったために、噛んだときの歯への付着感が気になり、食感の評価が低くなった。比較例4は、プロテアーゼによる筋組織の分解が全くないため、復水不可能であった。比較例5は、復水性に優れる乾燥法である凍結乾燥によるものであったが、一辺36mmで厚さ8mmの大きさでは、中心部の水の浸透がやや不十分で、復水が不十分な箇所は、若干スポンジ様の食感となった。十分に復水した周辺部の食感は、やや筋張っていたが、肉らしいものであった。しかし、凍結乾燥処理しているため、実施例1〜5のように、加熱を伴う蒸発乾燥で得られる加熱香気が得られず、比較例5の呈味性の評価は、実施例1〜5に比べて低くなった。比較例6は、凍結乾燥の前に実施例1と同じ処理をしているため、分解酵素による組織の弛緩により、比較例5に比べて復水性には優れたが、復水中に崩れ易かった。復水後の肉は、紙を噛んでいる様な弾力性のない食感で、旨味が少なく、加熱香気もないため、呈味性の評価は、比較例1〜6の中で、最も低かった。
実施例1〜5ならびに比較例1〜6の乾燥豚ロース肉のうち、復水した豚ロース肉の最大応力値を表2に示す。実施例1〜5の方法で得られた復水後の豚ロース肉は、2.4〜5.0×10N/mであった。比較例5の方法で得られた復水後のロース肉は、1.3×10N/mであり、実施例1〜5の復水後の豚ロース肉に比べて噛みにくかった。比較例6の方法で得られた復水後のロース肉は、0.48×10N/mであり、実施例1〜5の復水後の豚ロース肉に比べて軟らかかった。実施例1〜5の方法で得られた復水後の豚ロース肉は、いずれも中心部まで水が浸透し、復水後、乾燥処理前にはほとんど有しなかった、弾力性や繊維感といった肉特有の力学特性が認められるようになった。
実施例1の熱変性を終えた乾燥処理前の豚ロース肉と、復水後の豚ロース肉について、テンシプレッサー(有限会社タケトモ電機製)を用いて、多重積算バイト解析法で、より詳細に肉の力学特性を評価した。図1に、多重積算バイト解析法の測定条件を示す。面積0.041cmの中空型プランジャーを用いて、圧縮速度2mm/秒、1バイト毎に0.1mmずつ深度を付加しながら、戻り距離0.5mmでクリアランス5mmに到達するまで、複数回圧縮していったときの陥入距離に対する応力の値を得た。図2に、得られた波形データを示す。復水後の豚ロース肉は、乾燥処理前の豚ロース肉に比べて、肉の噛み応えを示す破断応力曲線と、肉のしなやかさを示す背圧応力曲線が、プランジャーの深度が大きくなる圧縮後半において、カーブを描いて大きくなった。これは、復水後の豚ロース肉の食感が、乾燥処理前の豚ロース肉にはほとんどなかった、肉らしい食感を有するようになったことを示唆した。
[比較例7]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ8mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、乳化剤であるポエムJ0021(理研ビタミン株式会社製)で調整した10%質量の乳化油脂と0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、60℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。得られた乾燥豚ロース肉を、実施例1と同じく、95℃の湯の中に3分間浸漬させて復水処理した後、復水後の豚ロース肉ついて、テンシプレッサー(有限会社タケトモ電機製)を用いて、多重積算バイト解析法で、肉の力学特性を詳細に評価した。比較例7の豚ロース肉は、復水性が悪く、実施例1のような肉らしい弾力性を有さず、図3の復水後の豚ロース肉の波形が示すように、肉のしなやかさを示す背圧応力曲線の値が、ほぼゼロあるいはマイナスとなっており、噛むとボロボロとした粉っぽい食感であった。
[比較例8]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ10mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して、蒸豚ロース肉を作製した。
[比較例9]
生の国産豚ロース肉を、一辺36mmで厚さ10mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、0.02%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、豚ロース肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して、食べ易い熟成豚ロース肉を作製した。
実施例1で得られた乾燥肉を95℃の湯の中に3分間浸漬して復水させた肉と、比較例8および9の豚ロース肉とについて、テンシプレッサー(有限会社タケトモ電機製)を用いて、多重積算バイト解析法で、より詳細に肉の力学特性を評価した。測定条件は、(0068)に記載された条件を同じであった。得られた波形データを図4に示す。実施例1の復水した豚ロース肉の破断応力曲線と背圧応力曲線の値は、比較例8の蒸豚ロース肉のものに比べて、いずれの陥入距離においても値が小さかった。官能で評価しても、実施例1の復水した豚ロース肉の方が、適度な噛み応えはあるが噛み切り易く、食べ易い食感であった。また、実施例1の復水した豚ロース肉の破断応力曲線と背圧応力曲線の波形は、比較例9の熟成豚ロース肉と似ていた。官能で評価しても、それらの食感は似ていた。これらの結果から、実施例1の復水した豚ロース肉は、噛み易く、肉特有の美味しさを示す食感であるしなやかさも有するものであることが示された。
実施例1の方法で処理した豚ロース肉の乾燥後および復水後の様子を図5に示す。乾燥後には、崩壊しない程度の硬度を有しつつ、水の浸透する空隙が全体に存在する構造であり、復水後には、肉らしい外観を有している。
実施例1ならびに3、比較例5の方法で得られた乾燥豚ロース肉を、95℃の湯の中に3分間浸漬して復水させ、ホモジナイズし、肉中に含まれる水溶性タンパク質を水抽出した後、分子量1万Da以下のペプチド量を、ローリー法により分光光度計で測定した。実施例1の復水した豚ロース肉は、比較例5の復水した凍結乾燥の豚ロース肉に比べて、内在するペプチド量が約4.5倍であり、官能評価においても、呈味性の向上が認められた。実施例3の復水した豚ロース肉は、実施例1の復水した豚ロース肉さらに1.3倍と多く、ペプチダーゼを併用することで、さらに呈味性が向上することが示唆された。
[実施例6]
直径約25mmの冷凍肉団子 (イオン株式会社製)を解凍後、厚さ10mmにカットし、0.05〜0.1%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、肉団子を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜90℃で10分間飽和水蒸気処理(CK−20EL、三浦工業株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、65℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.3〜0.5g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、4.4〜4.6%質量であった。図6に、得られた乾燥肉団子とその断面、および復水後の肉団子の写真を示す。乾燥肉団子は、内部および表層部全体において、水が浸透できるような空隙が認められた。得られた乾燥肉団子を96℃の和風だし(白だし、株式会社ミツカン製)に3分間浸漬して復水させた肉団子は、中心部まで水が浸透しており、軟らかいミンチ肉の粒感を有する食感であった。また、和風だしで復水処理したことによって、乾燥過程で凝縮されたペプタイドやアミノ酸などの旨味成分との相乗効果で旨味が増幅され、食味全体において高評価を得た。
[実施例7]
生の国産鶏ムネ肉を一辺20mmで厚さ12mmにカットし、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を用いて、0.01〜0.05%質量のペプチダーゼ(ペプチダーゼR、天野エンザイム会社製)を含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液でインジェクション処理後、タンブリング処理を行った。鶏ムネ肉を網に並べて4〜10℃で5〜16時間静置後、60〜90℃で20分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った。乾燥処理として、200Wで30秒を3回繰り返すマイクロ波乾燥(NE−SV30HA、パナソニック電工株式会社製)を行った後、65℃で6時間真空乾燥(DP43、ヤマト科学株式会社製)を行った。乾燥後の湿量基準含水率は、4.8〜5.3%質量であった。得られた乾燥鶏ムネ肉を90℃の中華だし(味の素株式会社製)に5分間浸漬して復水させた鶏ムネ肉は、軟らかいが繊維感がしっかりある食感で、ペプチダーゼの併用と、中華だしによる復水処理によって充分な旨味を有した。
[実施例8]
生のオーストラリア産牛モモ肉を30×40mm×厚さ12.5mmにカットし、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を用いて、0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に10分間浸漬後、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態に到達後、大気圧に戻した。その後、タンブリング処理を行った。牛モモ肉を網に並べて4〜10℃で5〜16時間静置後、60〜90℃で10分間飽和水蒸気処理(CK−20EL、三浦工業株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、65℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.4〜0.6g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、4.9〜5.3%質量であった。得られた乾燥牛モモ肉を96℃の湯に3分間浸漬して復水させた牛モモ肉を図7に示す。復水した牛モモ肉は、箸で切れ、中心部まで水が浸透しており、断面には繊維状構造が認められた。また、適度な噛み応えと、牛肉の旨味とコクを有した。
[実施例9]
生の国産豚モモ肉を一辺36mmで厚さ7mmにカットし、−20℃で冷凍後、解凍して、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、1.0〜5.0%質量の醤油、1.0〜5.0%質量のトレハロースを含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(ブロメラインF、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、豚モモ肉を網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、60〜80℃の湯浴で20分間加熱処理して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った。その後、−15〜40℃の冷却冷凍加工機(QXF−006SF5−E、福島工業株式会社製)で冷凍し、16〜24時間冷凍庫に保管した。冷凍した豚モモ肉を50〜95℃で10分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)により解凍し、60℃で5時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.2〜0.4g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、6.3〜6.7%質量であった。得られた乾燥豚モモ肉を即席カップ麺の上に乗せ、沸騰直後の湯をかけて蓋をし、3分間浸漬させた豚モモ肉は、復水中に形が崩れることなく、中心部まで水が浸透した。復水豚モモ肉は、事前に調味付けされているため、肉のペプタイドやアミノ酸といった呈味性成分との相乗効果で、旨味が強くバランスが良かった。食感は、噛み易く、豚ロース肉に比べてやや弾力感があった。
[実施例10]
生の国産豚ヒレ肉を30×40mm×厚さ10mmにカットし、−20℃で冷凍後、解凍して、テンダライズ処理(TS−SA、ワタナベフーマック株式会社製)を行い、1.0〜3.0%の食塩を含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬後、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、−15〜40℃の冷却冷凍加工機(QXF−006SF5−E、福島工業株式会社製)で冷凍し、16〜24時間冷凍庫に保管した。冷凍した豚ヒレ肉を100〜200Wで誘電加熱処理(NE−SV30HA、松下電器産業社製)により解凍し、豚ヒレ肉を網に並べて4〜10℃で5〜16時間静置後、60〜90℃で10分間飽和水蒸気処理(CK−20EL、三浦工業株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った後、表面を約5秒間炙った。乾燥処理として、60℃で6時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.2〜0.4g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、5.5〜5.9%質量であった。湯が入った鍋の中で3分煮沸した乾燥豚ヒレ肉は、煮沸過程で形が崩れることなく、中心部まで水が浸透し、本炙り処理では復水性への影響は認められなかった。得られた復水豚ヒレ肉は、箸で切れ、断面には繊維状構造が認められ、適度な噛み応えを有した。
[実施例11]
外殻を除去した無頭エビ(バナメイ)を70〜90℃で10分加熱し、−20℃で凍結させた。解凍後、0.5〜2.5%の食塩を含む0.05〜0.15%質量のプロテアーゼ(パパインW−40、天野エンザイム会社製)水溶液に10分間浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態に到達後、大気圧に戻した。この無頭エビを70〜95℃の湯浴で20分間加熱処理して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った。このときの無頭エビの最大応力値は、0.9×10N/mであった。その後、60℃で8時間熱風乾燥(PV−210、タバイエスペック株式会社製)を行った。湿量含水率が50%質量のときの乾燥速度は、0.5〜0.6g/(時間×g)であり、乾燥後の湿量基準含水率は、3.8〜4.4%質量であった。湯が入った鍋の中で3分煮沸した乾燥無頭エビは、煮沸過程で形が崩れることなく、中心部まで水が浸透した。復水後の無頭エビの最大応力値は、2.6×10N/mであった。図8に、得られた乾燥無頭エビおよび復水後の無頭エビの写真を示す。得られた復水無頭エビは、紅色がきれいに発色し、繊維感と噛み応えのある食感と、エビ特有の旨味を有した。
[実施例12]
−20℃で凍結後、解凍した冷凍秋サケを一辺36mmで厚さ12mmにカットし、1.0〜3.0%の食塩を含む0.05〜0.10%質量のプロテアーゼ(ブロメラインF、天野エンザイム会社製)水溶液に浸漬し、真空チャンバーに入れて10kPaの減圧状態で1〜5分間維持した後、大気圧に戻した。その後、秋サケを網に並べて4〜10℃で1〜3時間静置後、70〜95℃で10分間スチーム加熱処理(TSCO−2EB、タニコー株式会社製)して、筋組織の分解・変性と酵素失活を行った。乾燥処理として、200Wで60秒を3回繰り返すマイクロ波乾燥(NE−SV30HA、パナソニック電工株式会社製)を行った後、3〜10時間10℃であんじょうして、再び200Wで60秒を3回繰り返すマイクロ波乾燥(NE−SV30HA、パナソニック電工株式会社製)を行った。乾燥後の湿量基準含水率は、11.0〜12.0%質量であった。得られた乾燥秋サケを炊飯した白米の上に乗せ、90℃の緑茶をかけて3分間浸漬すると、箸で切れ、断面には繊維状構造が認められ、適度な噛み応えと、魚のペプタイドやアミノ酸といった旨味成分と適度な塩分でバランスの良い呈味性を有した。
上記の実施例および比較例で作成した乾燥動物性食品の湿量基準含水率を表2に示す。また、乾燥処理前の動物性食品の最大応力値および復水後の乾燥動物性食品の最大応力値も表2に示す。さらに、乾燥動物性食品の復水性および復水後の品質特性(外観、食感、呈味性)について、下記の評価基準により評価した結果も表2に示す。
[復水性の評価基準]
〇:全体が復水良好であった。
△:一部が復水不良であった。
×:全体が復水不良であった。
[復水後の品質特性の評価基準]
○:良好であった。
△:一部の品質特性が不良であった。
×:不良であった。

Claims (12)

  1. 動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入させた後、前記動物性食品を構成する筋組織を湿潤状態で熱変性させ、さらに蒸発乾燥させることで前記筋組織を結着させた、湿量基準含水率が1〜30%質量であり、かつ浸漬処理により復水できる乾燥動物性食品(熱変性前に動物性食品の内部に油脂を導入したものを除く)であって、
    前記分解酵素が、少なくともプロテアーゼを含み、
    90〜100℃の水または水溶液で3分〜5分間の条件で浸漬処理した復水後の前記乾燥動物性食品の最大応力値が、1.0×10 〜5.0×10 N/m であり、
    前記乾燥動物性食品は、復水することにより、多重積算バイト解析法による力学特性解析において、測定深度が大きくなる圧縮後半で、破断応力曲線の応力値と背圧応力曲線の応力値とが大きくなる力学特性を有する、乾燥動物性食品。
  2. 前記動物性食品を、前記分解酵素を導入させた後かつ前記熱変性させる前および/または前記熱変性させた後かつ前記蒸発乾燥させる前に、冷凍させるかまたは冷凍後に解凍させる、請求項1に記載の乾燥動物性食品。
  3. 前記乾燥動物性食品の内部に、調味料および/または塩基性塩類をさらに含有させる、請求項1または2に記載の乾燥動物性食品。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の乾燥動物性食品を用いて得られた、乾燥食品。
  5. 動物性食品の少なくとも内部に分解酵素を導入する工程と、
    前記動物性食品を構成する筋組織を湿潤状態で熱変性する工程と、
    前記動物性食品を、湿量基準含水率が1〜30%質量となるように蒸発乾燥して、前記筋組織を結着させる工程と、
    を含んでなる、浸漬処理により復水できる乾燥動物性食品の製造方法(熱変性前に動物性食品の内部に油脂を導入したものを除く)であって、
    前記分解酵素が、少なくともプロテアーゼを含み、
    90〜100℃の水または水溶液で3分〜5分間の条件で浸漬処理した復水後の前記乾燥動物性食品の最大応力値が、1.0×10 〜5.0×10 N/m であり、
    前記乾燥動物性食品は、復水することにより、多重積算バイト解析法による力学特性解析において、測定深度が大きくなる圧縮後半で、破断応力曲線の応力値と背圧応力曲線の応力値とが大きくなる力学特性を有する、乾燥動物性食品の製造方法
  6. 前記分解酵素を導入する工程として、圧力処理を行うことを特徴とする、請求項に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
  7. 前記分解酵素を導入する工程として、インジェクション処理を行うことを特徴とする、請求項5または6に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
  8. 前記分解酵素を導入する工程として、テンダライズ処理および/またはタンブリング処理を行うことを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
  9. 前記筋組織を湿潤状態で熱変性する工程として、50〜100℃の湿潤状態の雰囲気下で熱変性することを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
  10. 前記動物性食品を、前記分解酵素を導入する工程の後かつ前記熱変性する工程の前および/または前記熱変性する工程の後かつ前記蒸発乾燥する工程の前に、冷凍させるかまたは冷凍後に解凍させることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
  11. 前記蒸発乾燥が、送風乾燥、真空乾燥、およびマイクロ波乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により行われる、請求項10のいずれか一項に記載の乾燥動物性食品の製造方法。
  12. 請求項11のいずれか一項に記載の乾燥動物性食品の製造方法を用いる、乾燥食品の製造方法。
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