JP7173516B2 - 形状保持型軟化食品の製造方法 - Google Patents
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Description
(1) 塊状の食材又は元の形状を保持する食材に酵素を導入し、酵素反応を行って、形状保持型軟化食品を製造する方法であって、
食材の表面に酵素を接触させない状態で、食材の最大氷結晶生成帯の通過時間が30分以上となるように食材の凍結処理を行うことと、
炭水化物、タンパク質、または脂質を分解する酵素活性を有する酵素と、低分子糖類および多糖類から選択される少なくとも1種の酵素拡散促進剤とを含む酵素混合粉末または酵素液を凍結させた食材の表面に接触させた状態で、0℃以上30℃以下の解凍処理を行いながら、圧力処理ではなく融解時の拡散作用によって食材内に前記酵素を導入することと、
前記酵素を導入した食材の酵素反応を行い、元の形状を保持したまま食材の硬さを1.0×103N/m2以上2.0×105N/m2以下の範囲に調節することと、
を含むことを特徴とする、形状保持型軟化食品の製造方法。
(2) 前記低分子糖類が、オリゴ糖または糖アルコールであり、前記多糖類が、β型でんぷん、化工でんぷん、またはカードランである、(1)に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(3) 凍結前の食材に事前加熱処理を行うことを含む、(1)または(2)に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(4) 前記事前加熱処理として、食材の中心部の温度が85℃で5分以上となるように加熱することを含む、請求項3に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(5) 前記解凍処理の温度が0℃超10℃以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(6) 前記酵素液を用い、
前記酵素液が、有機酸及びその塩を用いてpH3~pH10の範囲内に調整され、
前記酵素液が、食塩、アミノ酸、油脂、増粘剤、栄養成分、グルタミン酸ナトリウムおよび重曹からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、(1)~(5)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(7) 前記酵素混合粉末を用い、
前記酵素混合粉末が、pH調整剤、単糖類、二糖類、および調味料からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、(1)~(6)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(8) 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させた状態で、酵素反応および酵素失活を行う、(1)~(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(9) 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させない状態で、酵素反応および酵素失活を行う、(1)~(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(10) 酵素を導入した食材を包装容器に収納し、
包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、(1)~(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(11) 凍結した食材と前記酵素混合粉末または酵素液を包装容器に収納し、
包装容器内で凍結した食材の解凍処理を行いながら、食材内に酵素を導入し、
包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、(1)~(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(12) 乾燥食品の製造方法であって、
(1)~(11)のいずれか項に記載の製造方法により得られた形状保持型軟化食品を乾燥させることを含む、乾燥食品の製造方法。
(食材)
本発明の方法に用いる食材としては、植物性、動物性のいずれのものであってもよい。具体的には、植物性の食材としては、大根、人参、牛蒡、筍、キャベツ、白菜、セロリ、アスパラガス、ほうれん草、小松菜、青梗菜等の野菜、ジャガイモ、薩摩芋、里芋等の芋類、大豆、小豆、蚕豆、エンドウ豆等の豆類、穀類、パイナップル等の果実類、椎茸、シメジ、エノキ、ナメコ、松茸等のきのこ類、若布、昆布、ひじき等の海藻を挙げることができる。また、動物性の食材としては、牛肉、豚肉、鳥肉の他に、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉、山羊肉、兎肉、鯨肉、それらの内臓等の肉類や、鯵、鮎、鰯、鰹、鮭、鯖、鮪等の魚類、鮑、牡蠣、帆立、蛤等の貝類、その他エビ、カニ、イカ、タコ、ナマコ等の魚介類を例示することができる。
本発明の方法において、用いる食材の前処理として、食材に水分を付与し、また組織の一部を損傷させる事前加熱処理を行うことできる。特に、植物系食材は加熱処理を行うことが好ましい。食肉や魚介類などのたんぱく質を主成分とする動物系食材の場合、事前加熱を省略することができる。植物系食材は加熱処理することで、酵素の拡散速度を速めることができる。とりわけ、後述の通り、事前加熱後の硬さと酵素失活後の硬さは関係性が認められることから、事前加熱温度が高いほど、事前加熱時間が長いほど、食材は酵素反応後軟化する傾向が認められた。すなわち、事前加熱を過度に行うことで、食材はより軟化し、より酵素の使用量は少なくて済む。
凍結処理では、酵素に接触させない状態で凍結させることにより凍結した食材の表面には酵素が存在しないため、食材表面での酵素の過度な反応を防ぐことができる。例えば、分解酵素に接触させた状態で凍結処理を行った場合、その後の酵素反応処理で食材表面での酵素反応が過剰に進行し、内部よりも表面で軟化が進行し、型崩れの原因となる。
解凍処理では、凍結した食材の表面に接触させた酵素が、融解時の拡散作用により、食材表面から食材内部への酵素導入が進行する。そのため、食材全体が凍結した状態での解凍処理が好ましく、食材表面も凍結している状態が、酵素は食材内部へ効率的に導入される。凍結した食材に接触させる酵素は、酵素液の形態でも良いし、酵素粉末の形態でも良い。なお、半解凍後浸漬の場合、完全解凍後の浸漬より酵素の拡散量は減少するため、1.0×105N/m2以下に軟化するためには、高濃度の酵素と長時間の酵素反応が必要になり、かつ中心部まで均一に軟化することは困難な場合がある。
酵素反応は、0℃~65℃の範囲で行うことができる。10℃以下の場合、6時間以上行うことが好ましく、酵素の至適温度と微生物増殖域から、45℃~65℃の範囲、より好ましくは55℃~65℃の範囲で60分以内の条件で酵素反応を行わせることが好ましい。その場合、酵素失活条件である85℃に温度を連続的な加温で温度上昇させることが好ましい。酵素反応と酵素失活については、連続的な湯加温と茹で加熱、連続的なスチーム加温とスチーム加熱、連続的なマイクロ波加温とマイクロ波加熱が好ましい。また、冷蔵庫で酵素反応を行う場合は、茹で加熱、スチーム加熱、マイクロ波加熱、いずれの加熱処理で酵素失活して良い。本発明においては、酵素失活のための加熱処理によって、酵素拡散促進剤として加えた糖類のゲル化(例えば、でんぷんの糊化)により食材表面に膜を形成し、食材の離水防止と誤嚥防止を行うことができる。
本発明における形状保持型軟化食品の硬さは、1.0×103N/m2以上2.0×105N/m2以下であり、特に1.0×103N/m2以上1.0×105N/m2以下の範囲に軟化することが好ましく、咀嚼・嚥下困難者食として考えれば、1.0×103N/m2以上5.0×104N/m2以下の範囲に軟化することがより好ましい。いずれも元の食材の硬さの2分の1以下に軟化することができる。
凍結から解凍、浸漬に至る各工程において、酵素等の高分子物質の食材内への拡散作用を確認するための試験を行った。本試験では、拡散作用を視覚的に確認し易くするために、高分子物質としてブルーデキストランを用いた。なお、ブルーデキストランと酵素では、分子組成、分子構造、分子量のいずれも異なるが、同様の拡散作用を生じると考えられる。食材としてダイコン、ジャガイモを用い、直径2cm、厚さ1cmの円柱状に成形したものを試料として用いた。事前加熱処理した試料1~3について、それぞれ下記の試験1-1~1-3を行った。
(試験区分)
・試験1-1. 試料1をブルーデキストランに浸漬した状態で凍結し、凍結した状態のまま切断した。
・試験1-2. 試料2を凍結し、ブルーデキストラン溶液に浸漬して10分間で解凍した後に切断した。
・試験1-3. 試料3を凍結し、解凍後、ブルーデキストラン溶液に10分間浸漬した後に切断した。
(試験条件)
・試料:ジャガイモ(直径2cm、厚さ1cm、円柱状)
・試料:ダイコン(直径2cm、厚さ1cm、円柱状)
・事前加熱処理:10分茹で加熱
・凍結処理:-18℃(ハイアールJF-NC145F)
・解凍処理:15℃)、20分
上記の参考例の実験結果から、食材内への高分子物質の拡散は、主として解凍時に生じることがわかったので、酵素液を用いて事前加熱処理した食材について下記の試験2-1~2-4を行った。
(試験区分)
・試験2-1(浸漬同時凍結).事前加熱処理した食材を酵素液に浸漬して凍結・解凍した。
・試験2-2(解凍同時浸漬).事前加熱処理した食材を凍結し、解凍時に酵素液に浸漬した。
・試験2-3(解凍後浸漬).事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した。
・試験2-4(コントロール).事前加熱処理した食材をそのまま酵素液に浸漬した。
(試験条件)
・試料:ニンジン(直径4cm、厚さ1cm、円柱状)
・試料:レンコン(輪切り、厚さ1cm)
・ニンジンを浸漬した酵素液:0.5%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・レンコンを浸漬した酵素液:1%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・事前加熱処理:20分煮沸(ニンジン)、30分煮沸(レンコン)
・凍結処理:-18℃(ハイアールJF-NC145F)
・解凍処理:15℃、20分
・浸漬処理:20分
・酵素反応処理:50℃、60分、スチーム加熱(スチームコンベクションオーブン:スチームモード)
実際に、様々な食材について、特許文献8の方法と本発明の方法を比較し、食材表面を観察した。実験は、下記の試験条件で各食材(ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、レンコン、豚肉)を5×105N/m2以下に軟化させて、その表面形状を観察した。その結果を表1に示した。特許文献8の方法、すなわち、食材を酵素液に浸漬し、凍結・解凍・酵素反応、酵素失活を行った場合、明らかに食材のエッジが喪失し、食材表面の滑らかさは失われていた。一方、本発明の方法で処理した食材は、すべて処理前の形状を保持し、エッジも良好に残存していた。
(試験区分)
・試験4-1(浸漬同時凍結).事前加熱処理した食材を酵素液に浸漬して凍結・解凍した。
・試験4-2(解凍同時浸漬).事前加熱処理した食材を凍結し、解凍時に酵素液に浸漬した。
・試験4-3(解凍後浸漬).事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した。
・試験4-4(コントロール).事前加熱処理した食材をそのまま酵素液に浸漬した。
(試験条件)
・試料:ニンジン(直径4cm、厚さ1cm、円柱状)
・試料:レンコン(輪切り、厚さ1cm)
・ニンジンを浸漬した酵素液:0.5%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・レンコンを浸漬した酵素液:1%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・事前加熱処理:20分煮沸(ニンジン)、30分煮沸(レンコン)
・凍結処理:-18℃(ハイアールJF-NC145F)
・解凍処理:15℃、20分
・酵素反応処理:50℃、60分、湯中
・酵素失活処理:85℃、5分
事前加熱処理の影響を調べるため事前加熱処理時間と軟化の関係を調べた。
(試験区分)
・試験5-1(○):事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した状態で解凍し、酵素反応を50℃で30分間行った。
・試験5-2(△):事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した状態で解凍し、酵素反応を50℃で60分間行った。
・試験5-3(□):事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した状態で解凍し、酵素反応を3℃で14時間行った。
(試験条件)
・試料:ニンジン(直径4cm、厚さ1cm、円柱状)
・酵素液:0.5%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(ペクチナーゼ2A、ヤクルト薬品社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・事前加熱処理:5分~30分煮沸
・凍結処理:-18℃(ハイアールJF-NC145F)
・解凍処理:15℃、20分
・浸漬処理:20分
・酵素失活処理:85℃、5分
一口大の食材としてニンジン、タケノコ、ゴボウ、シイタケ、レンコン、エンドウを準備し、出し汁、醤油、みりん、砂糖を加え、20分間茹で煮しめを調理した後、食材と少量の汁を混ぜ、-18℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:-0.65℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:100分)。食材を切断する場合は繊維を断ち切るように切断した。凍結した食材をフィルムに入れ、スクラーゼSおよびスクラーゼX(アマノエンザイム製)を等量含む酵素混合粉末(デキストリン、有機酸とその塩、調味料と酵素粉末を混ぜ、10.0質量%の酵素を添加した酵素混合粉末)を混ぜ、少量の水を加えて、3℃の冷蔵庫で3時間解凍した。食材を解凍後、そのまま冷蔵庫で14時間酵素反応を行い、沸騰水で殺菌した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、いずれの食材も硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼困難者用として十分な軟らかさになった。その後、かたくり粉を溶かした増粘剤を添加したところ、形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい食品になった。
厚さ10mmで20mm×20mmに切断したニンジン及び、厚さ10mmに切断したレンコン、ゴボウにクエン酸ナトリウムを0.1%加えた沸騰水で10分間茹でた。この時の食材の水分量はいずれも85%以上であった。その後、食材を取り出し、ブラストチラー(福島工業QXF-006SFLT1)で、設定温度-7℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:-1.0℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:35分)。冷凍した食材に、1.0質量%酵素(ペクチナーゼ2A、ヤクルト薬品製)と、デキストリン(1質量%)、アミノ酸調味料(3質量%)、食塩(1質量%)、じゃがいも生でんぷん(10質量%)を溶かした5℃の水溶液に浸漬し、20分間で解凍させた。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。
厚さ10mm、一口大に切断したレンコン、イカ、サトイモ、鶏肉、絹さやにだし汁、醤油、砂糖、みりん、酒、砂糖を加え、スチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)を用いて95℃で30分間加熱した。なお、鶏肉はむね肉を使用し、テンダラーザーで穴を開けた。この時の食材の水分量は植物素材で82%以上、鶏肉で77%であった。その後、ブラストチラー(ホシザキ電機製HBC-6TA3)を用いて-15℃で緩慢凍結(冷却速度:-2℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:30分)させた。5.0質量%の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90及びパパイン(天野エンザイム製)及び、ラフィノース(20質量%)、じゃがいも生でんぷん(70.1質量%)、市販調味料(2質量%)、PH調整剤(クエン酸0.1質量%及びそのナトリウム塩0.8質量%)、食塩(2質量%)を混ぜた粉末を凍結した食材の3質量%を均一に噴霧・塗布した。その後、30分間冷水解凍(3℃)を行った。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。得られた食材の離水も防止でき、歩留まりも向上した。
厚さ10mm、一口大に切断したレンコン、ゴボウ、ニンジンをスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)を用いて95℃で加熱し、水分含量を85%以上に調整した。鶏むね肉、豚もも肉は生でテンダライズ処理した状態で使用した。家庭用冷蔵庫を用いて-18℃で緩慢凍結させた。凍結食材を1.0質量%の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90及びパパイン(天野エンザイム製))及び、デキストリン(1質量%)、カードラン(5質量%)、市販調味料(2質量%)、pH調整剤(クエン酸0.1質量%及びそのナトリウム塩0.8質量%)、食塩(2質量%)を溶かした水溶液をポリエチレン-アルミを主構成成分とするフィルムで熱圧着して密封し、3℃で20分間解凍した。60℃で30分間加温後、レトルト殺菌装置(サムソン製SGC)で125℃、45分の設定で加圧加熱殺菌を行った。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
一口大に切断したゴボウ、ニンジン、ジャガイモを100℃で茹で加熱し、水分含量を85%以上に調整した。家庭用冷蔵庫を用いて-18℃で緩慢凍結させた。5.0質量%の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90)及び、じゃがいも生でんぷん(60.1質量%)、ラフィノース(30質量%)、市販調味料(2質量%)、pH調整剤(クエン酸0.1質量%、及びそのナトリウム塩0.8質量%)、食塩(2質量%)の混合粉末を凍結食材に対し5%塗布し、3℃で20分間解凍した。3℃で15時間酵素反応後、減圧乾燥(40℃)した。湯戻しして得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
一口大の食材としてニンジン、タケノコ、ゴボウ、シイタケ、レンコン、エンドウを準備し、出し汁、醤油、みりん、砂糖を加え、20分間茹で煮しめを調理した。また、スクラーゼSおよびスクラーゼX(アマノエンザイム製)を等量含む酵素混合粉末(デキストリン、有機酸とその塩、調味料と酵素粉末を混ぜ、10.0質量%の酵素を添加した酵素混合粉末)を混ぜ、少量の水を加えて分解酵素液を準備した。準備した分解酵素液に少量の汁を加え、調理した食材を浸漬し、-18℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:-0.65℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:100分)。食材を切断する場合は繊維を断ち切るように切断した。凍結した食材を5℃の冷蔵庫で3時間解凍した。食材を解凍後、そのまま冷蔵庫で14時間酵素反応を行い、沸騰水で殺菌した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、いずれの食材も硬さは5×104N/m2以下となり、咀嚼困難者用として十分な軟らかさになった。しかし、食材のエッジが明らかに喪失し、食材表面の滑らかさは失われており、実施例1で得られた食材に比べて、形状保持の点で劣っていた。また、離水も生じていた。
厚さ10mmで20mm×20mmに切断したニンジン及び、厚さ10mmに切断したレンコン、ゴボウにクエン酸ナトリウムを0.1%加えた沸騰水で5分間茹でた。その後、食材を取り出し、ブラストチラー(福島工業QXF-006SFLT1)で、設定温度-7℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:-1.0℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:35分)。冷凍した食材に、1.0質量%酵素(ペクチナーゼ2A、ヤクルト薬品製)と、アミノ酸調味料(3質量%)、食塩(1質量%)を溶かした5℃の水溶液に浸漬し、20分間で解凍させた。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは2.0×105N/m2を超えており、咀嚼・嚥下困難者用として不十分な軟らかさになった。実施例2で得られた食材に比べて、離水、軟化度の点で劣っていた。
厚さ10mm、一口大に切断したレンコン、イカ、サトイモ、鶏肉、絹さやにだし汁、醤油、砂糖、みりん、酒、砂糖を加え、スチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)を用いて95℃で30分間加熱した。なお、鶏肉はむね肉を使用し、テンダラーザーで穴を開けた。この時の食材の水分量は植物素材で82%以上、鶏肉で77%であった。その後、ブラストチラー(ホシザキ電機製HBC-6TA3)を用いて-15℃で緩慢凍結(冷却速度:-2℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:30分)させた。5.0質量部の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90及びパパイン(天野エンザイム製)及び市販調味料(2質量部)、PH調整剤(クエン酸0.1質量部及びそのナトリウム塩0.8質量部)、食塩(2質量部)を混ぜた粉末を食材に対して3質量%の量で凍結した食材に均一に噴霧・塗布した。その後、55℃で10分間温水解凍を行った。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB-VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは2.0×105N/m2を超えており、咀嚼・嚥下困難者用として不十分な軟らかさになった。得られた食材の離水も生じ、歩留まりも低下した。
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウ、豚もも肉を使用した。ニンジン、ゴボウは20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(-18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、ブロメライン(天野エンザイム)、酵素拡散促進剤としてデキストリン(パインデックス(松谷化学)、じゃがいもでんぷんを準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液中で解凍する場合は、この粉末を10倍水希釈した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態で耐熱容器に入れ、3℃の冷水で20分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材に調味液と水を加え、60℃で1時間酵素反応を行い、そのまま加圧加熱処理(122℃、30分)した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さはいずれも5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウを使用した。20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(-18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、酵素拡散促進剤としてβ型でんぷん(馬鈴薯でんぷん、ホクレン製)を準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液として使用する場合は、酵素液中の酵素濃度が0.5%になるよう調製して使用した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態でフィルムに入れ、3℃の冷水で20分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材を3℃で15時間酵素反応を行い、沸騰水中で5分間酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウを使用した。20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(-18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、酵素拡散促進剤としてラフィノース(ニチガ製)を準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液として使用する場合は、酵素液中の酵素濃度が0.5%になるよう調製して使用した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態でフィルムに入れ、3℃の冷水で20分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材を3℃で15時間酵素反応を行い、沸騰水中で5分間酵素を失活させ、120℃、20分加圧加熱した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×104N/m2以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウを使用した。20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(-18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、酵素拡散促進剤としてラフィノース(ニチガ製)を準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液として使用する場合は、酵素液中の酵素濃度が0.5%になるよう調製して使用した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態でフィルムに入れ、70℃の温水で2分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材を55℃で60分間酵素反応を行い、沸騰水中で5分間酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2-33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは2.0×105N/m2を超えており、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさにならなかった。
Claims (12)
- 塊状の食材又は元の形状を保持する食材に酵素を導入し、酵素反応を行って、形状保持型軟化食品を製造する方法であって、
食材の表面に酵素を接触させない状態で、食材の最大氷結晶生成帯の通過時間が30分以上となるように食材の凍結処理を行うことと、
炭水化物、タンパク質、または脂質を分解する酵素活性を有する酵素と、低分子糖類としてオリゴ糖および多糖類から選択される少なくとも1種の酵素拡散促進剤とを含む酵素混合粉末または酵素液(糖アルコールを含むものを除く)を凍結させた食材の表面に接触させた状態で、0℃超10℃以下の解凍処理を行いながら、圧力処理ではなく融解時の拡散作用によって食材内に前記酵素を導入することと、
前記酵素を導入した食材の酵素反応を行い、元の形状を保持したまま食材の硬さを1.0×103N/m2以上2.0×105N/m2以下の範囲に調節することと、
を含むことを特徴とする、形状保持型軟化食品の製造方法(但し、圧力処理によって食材内に前記酵素を導入する方法を除く)。 - 前記酵素拡散促進剤が、多糖類である、請求項1に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
- 前記多糖類が、β型でんぷん、化工でんぷん、カードラン、およびデキストリンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
- 凍結前の食材に事前加熱処理を行うことを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
- 前記事前加熱処理として、食材の中心部の温度が85℃で5分以上となるように加熱することを含む、請求項4に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
- 前記酵素液を用い、
前記酵素液が、有機酸及びその塩を用いてpH3~pH10の範囲内に調整され、
前記酵素液が、食塩、アミノ酸、油脂、増粘剤、栄養成分、グルタミン酸ナトリウムおよび重曹からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。 - 前記酵素混合粉末を用い、
前記酵素混合粉末が、pH調整剤、単糖類、二糖類、および調味料からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。 - 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させた状態で、酵素反応および酵素失活を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
- 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させない状態で、酵素反応および酵素失活を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
- 酵素を導入した食材を包装容器に収納し、
包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。 - 凍結した食材と前記酵素混合粉末または酵素液を包装容器に収納し、
包装容器内で凍結した食材の解凍処理を行いながら、食材内に酵素を導入し、
包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。 - 乾燥食品の製造方法であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法により得られた形状保持型軟化食品を乾燥させることを含む、乾燥食品の製造方法。
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