JP2018121630A - 形状保持型軟化食品の製造方法 - Google Patents

形状保持型軟化食品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特別な装置を必要とせず、簡易かつ安価な方法で、塊状の食材又は元の形状を保持する食材に酵素を効率的に導入する工程を含む形状保持型軟化食品の製造方法の提供。【解決手段】塊状の食材又は元の形状を保持する食材に酵素を導入し、酵素反応を行って、形状保持型軟化食品を製造する方法であって、酵素に接触させない状態で緩慢凍結させた食材の表面に、酵素を接触させた状態で緩慢解凍処理を行いながら、圧力処理ではなく融解時の拡散作用によって食材内に酵素を導入することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、圧力処理ではなく物質の拡散によって、高分子化合物である酵素を形状のある食材の塊の内部に急速かつ簡易に導入する酵素含浸技術を利用した形状保持型軟化食品の製造方法に関する発明である。
熱に不安定で高分子物質である酵素を食材内に急速導入する技術、すなわち酵素含浸技術を利用した軟らか介護食の発明として、これまで圧力や真空、インジェクション法、タンブリング装置など物理的な方法で酵素を導入する発明が行われてきた。これらの方法は、いずれも圧力装置や真空装置、注入装置など高価な機器を必要とするため、小規模な調理施設や家庭での調理には不向きで、主に食品企業や大手の給食事業者で使用されている。
一方、食材の表面に付着させた分解酵素や調味料を氷結晶の生成を利用して食材の内部に均一に含有させる簡易かつ特別な装置を必要としない発明として、食材の表面に付着させた分解酵素を氷結晶の生成エネルギーを利用して食材の内部に均一に含有させる方法がある。本発明は、酵素液または酵素粉末と食材を予め接触させた後、凍結する必要がある。本発明を小規模施設や在宅介護食調理に利用する場合、1.購入した冷凍食品をそのまま利用できないこと、2.酵素粉末は食材に均一にまぶすことが難しいこと、3.さらに酵素液を使用する場合、食材と一緒に凍結する必要があるため、酵素液の再利用ができないこと、4.酵素液と食材が長時間接触していることによる食材表面の酵素反応による崩壊がおこりやすいこと、等の問題がある。
食材内に酵素を導入する方法に関し、これまでに、植物性食品素材の組織内へ酵素を導入し、元の食品素材の形状を保ったまま、軟化する食材の製造方法(特許文献1)や、調味液の塩分濃度等を調整し凍結及び解凍した植物性食品を酵素液に浸漬して減圧操作して酵素を組織に導入し、型崩れなく調味及び加圧加熱殺菌する方法(特許文献2)がある。また、この酵素導入技術を厨房施設等の現場で簡便に実施でき、また軟化させた食品素材の製造工程・搬送・流通過程での型崩れが防止でき、あるいは衛生面の配慮から、食品素材への酵素導入、酵素反応、加熱工程を同一の包装容器の中で実施できる調理食品の製造方法(特許文献3)がある。さらに、飽和水蒸気で加熱した後、酵素液中で減圧処理する方法(特許文献4)(特許文献5)などもある。
動物性食品素材では、食品素材を酵素液に浸漬する方法(特許文献6)や、食品素材に酵素含有液をインジェクションしてタンブリングする方法(特許文献7)、食品素材に酵素液を塗布・浸漬して真空包装または加圧処理して酵素を浸透させる方法(特許文献8)等が提案されている。
氷結晶を利用して酵素を食材内に導入する方法として、酵素と食材を同時の凍結する方法がある(特許文献9)。本発明は、簡易かつ特別な装置を使用せずに酵素を食材内に効率的に導入する方法として優れた方法であるが、小規模施設や在宅調理を考慮すると、予め酵素と食材を一緒に凍結処理する点で様々な課題がある。類似した発明として、(特許文献10)がある。本文献も調味料と食材を同時に凍結または食材を解凍後に調味料等に浸漬することで調味料を効率的に染み込ませようとした発明である。本文献は食材を冷凍することで調味料が染み込みやすくなることが記載されている。その方法と同じ原理で食材を軟化する発明として(特許文献11)がある。その記載も食材と調味料の同時冷凍または解凍後に調味料又は酵素液に浸漬することに要点がある。染み込みがいつ行われるかが本発明と決定的に異なる。酵素のような高分子物質の拡散と調味料のような低分子物質の拡散では、拡散係数が全く異なるが、それでも食材の解凍中に染み込むことを全く想定していない。すなわち、解凍後の酵素液への浸漬では酵素の含浸量は少なく、軟化度合が本発明と比べ小さい。結論として、本発明と染み込みの原理が異なり、酵素含浸量、軟化度や操作性が大きく劣る。
糖類を混在させ、食材内の酵素を含浸させる方法(特許文献12)がある。この場合、酵素の食材内への含浸量が課題で介護食レベルの軟化は困難である。冷凍・浸漬・減圧を一連の工程で行う方法(特許文献13)が提案されているが、減圧により酵素含浸を行っており、拡散を利用した本特許と原理及び操作方法が異なる。
特許第3686912号公報 特開2006−223122号公報 特開2008−11794号公報 特開2010−115164号公報 特開2015−023800公報 特開平7−31421号公報 特開2005−503172号公報 特開2004−89181号公報 特開2013−34467公報 特開2003−61620公報 特開2013−220043公報 特開2013−198481公報 特開2010−239935公報
本発明の課題は、簡易かつ特別な装置を必要とせず、物質の効率的な拡散反応を利用して酵素を食材内部に導入することで、在宅調理を可能とし、食感や呈味性を変え、安価で食べやすく、おいしい軟化食品を調理または製造することにある。特に、酵素液を調理工程ですぐに再利用しやすい点が低コスト化に重要である。また、要介護者や高齢者に摂取する食品が何であるかを認識し満足感をもって摂取することができるように、食材中心部まで均一に分解酵素を導入し、食材の本来の形状を保持して軟化させた食品を低コストで誰でも容易に製造することができる食材の製造方法を提供することにある。さらに、嚥下困難者の嚥下を補助し、安全性、おいしさ、輸送性等を付与し、要介護者や高齢者に必須の栄養成分やカロリーを強化した食品の製造方法を提供することにある。
高分子化合物で拡散しにくい酵素を特別な装置を使用せず、凍結・解凍工程を利用して食材内に拡散浸透させる方法に関し、酵素は凍結・拡散の各処理過程のうち、いつの時点で拡散浸透しているかを発見することで新たな発明に至ることができた。すなわち、本発明者は、従来の圧力やインジェクション法などの物理的なエネルギーを利用して酵素を食材内部へ導入する方法に代わり、特別な装置を使用せず、家庭用冷蔵庫等の簡便な装置と加温のみで、簡易にかつ安価に食材の内部に均一に分解酵素を導入し、食材に含まれる酵素基質を分解し、高齢者や咀嚼・嚥下困難者であっても容易に摂取することができる形状保持型軟化食品(軟らか介護食)を製造する技術の開発に取り組んだ。その際に、拡散しにくい高分子化合物の分解酵素が食材内の拡散していく様子を観察した。その結果、酵素が食材内に急速に拡散していく現象として、凍結した食材が解凍している過程で、酵素が食材内に急速拡散していくことを発見した。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
その結果、本発明者らは、酵素に接触させない状態で凍結した食材(例えば、通常の冷凍食材)を、酵素に接触させた状態で解凍することで、酵素は食材内に拡散し、食材内で細胞間隙物質であるペクチンや細胞壁成分であるセルロース、ヘミセルロースを分解することができることを知見した。その際、酵素の拡散は食材に含まれる水分を通じて生じること、事前加熱と水分の付与が重要であること、酵素拡散促進剤として低分子糖類および多糖類が拡散を促進することを発見した。その結果、食材は内部で組織崩壊が起こり、形状を保持したまま咀嚼・嚥下困難者でも喫食可能な軟らかさの食材を調製することができる。本発明は、家庭用冷蔵庫のみで酵素含浸が可能となる。また、同時に嚥下困難者の誤嚥の原因となる離水を防止し、輸送中の型崩れを防止できることも発見に至った。本発明は、家庭用冷蔵庫を用いることで、酵素含浸と形状保持型介護食の簡便な製造が可能となる。
本発明は、特許文献8に記載された予め酵素と食材を混ぜて凍結する発明と異なり、操作上多くのメリットが生じる。特許文献8は凍結濃縮の原理を想定しており、氷結晶が食材表面から食材内部に向かって生成され、氷結晶の生成に伴い、酵素や調味料などの溶質を含む水は濃縮によって凝固点降下が起こり、そのため氷結晶に押され、次第に食材内部に浸透していく現象が記載されている。この凍結過程では、通常家庭用冷蔵庫で凍結処理すると完全凍結まで5時間〜10時間要するため、食材と酵素液が長時間表面で接触し、酵素反応が進む。そのため、食材表面では過剰な酵素分解が生じ、見た目の形状が損なわれる。
本発明者らは、氷結晶生成と酵素の拡散について、鋭意検討した結果、食材内への酵素の拡散は、凍結処理における氷結晶生成時よりも、氷結晶が食材表面から溶けていく過程の方がはるかに早く、その過程で多くの酵素液が食材中心部に拡散することを発見した。その際、低分子糖類および多糖類は酵素の拡散を促進し、特に多糖類(例えば60℃以下の水不溶性の多糖類)は加熱工程(例えば、酵素失活工程)で食材表面に糖の膜を形成し、離水防止と誤嚥防止を行えることが明らかとなった。その結果、凍結した食材を酵素と接触した状態で解凍する方法が、多くの操作上のメリットを有する酵素の拡散法であることを見出し、圧力処理を用いない簡便で効率的な形状保持型軟化食品の製造方法の発明に至った。
すなわち、本発明によれば、以下の(1)〜(12)の発明が提供される。
(1) 塊状の食材又は元の形状を保持する食材に酵素を導入し、酵素反応を行って、形状保持型軟化食品を製造する方法であって、
食材の表面に酵素を接触させない状態で、食材の最大氷結晶生成帯の通過時間が30分以上となるように食材の凍結処理を行うことと、
炭水化物、タンパク質、または脂質を分解する酵素活性を有する酵素と、低分子糖類および多糖類から選択される少なくとも1種の酵素拡散促進剤とを含む酵素混合粉末または酵素液を凍結させた食材の表面に接触させた状態で、0℃以上30℃以下の解凍処理を行いながら、圧力処理ではなく融解時の拡散作用によって食材内に前記酵素を導入することと、
前記酵素を導入した食材の酵素反応を行い、元の形状を保持したまま食材の硬さを1.0×10N/m以上2.0×10N/m以下の範囲に調節することと、
を含むことを特徴とする、形状保持型軟化食品の製造方法。
(2) 前記低分子糖類が、オリゴ糖または糖アルコールであり、前記多糖類が、β型でんぷん、化工でんぷん、またはカードランである、(1)に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(3) 凍結前の食材に事前加熱処理を行うことを含む、(1)または(2)に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(4) 前記事前加熱処理として、食材の中心部の温度が85℃で5分以上となるように加熱することを含む、請求項3に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(5) 前記解凍処理の温度が0℃超10℃以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(6) 前記酵素液を用い、
前記酵素液が、有機酸及びその塩を用いてpH3〜pH10の範囲内に調整され、
前記酵素液が、食塩、アミノ酸、油脂、増粘剤、栄養成分、グルタミン酸ナトリウムおよび重曹からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(7) 前記酵素混合粉末を用い、
前記酵素混合粉末が、pH調整剤、単糖類、二糖類、および調味料からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(8) 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させた状態で、酵素反応および酵素失活を行う、(1)〜(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(9) 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させない状態で、酵素反応および酵素失活を行う、(1)〜(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(10) 酵素を導入した食材を包装容器に収納し、
包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、(1)〜(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(11) 凍結した食材と前記酵素混合粉末または酵素液を包装容器に収納し、
包装容器内で凍結した食材の解凍処理を行いながら、食材内に酵素を導入し、
包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、(1)〜(7)のいずれかに記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
(12) 乾燥食品の製造方法であって、
(1)〜(11)のいずれか項に記載の製造方法により得られた形状保持型軟化食品を乾燥させることを含む、乾燥食品の製造方法。
本発明の形状保持型軟化食品の製造方法においては、圧力処理ではなく融解時の物質の拡散によって食材内に効率的に酵素を導入することができる。本発明の方法を用いることで、普通の食事と変わらない見た目の形状保持型軟化食品を製造することができ、介護食等として摂食・嚥下困難者や高齢者のQOL(生活の質)の向上に寄与し、在宅介護調理においても食のバリアフリー化をもたらすことができる。これまでの形状保持型軟化食材の製造方法と異なり、簡便な装置(冷凍庫等)のみで、その他特別な加工機械や調理器械を必要としないため、病院・介護施設の厨房、レストラン、家庭でも安価かつ簡単に形状保持型軟化食を調理することができる。そのため、本発明は、高齢社会の進展とともに、増大する病院・社会福祉法人の介護食調理及び厨房の労務作業を大幅に改善するとともに、在宅介護を行っている家庭での介護食調理の簡易化とその介護食を喫食することで要介護者のQOL向上にも寄与する発明である。その結果、咀嚼困難者や嚥下困難者にとって食欲増進効果が高く、購入または調理加工しやすくなるため、社会的貢献度においても高い効果を有する。さらに、含浸する酵素を変えることで、簡易かつ特別な装置を使用せず、新規な機能性を付加した食品の製造も可能となる。
さらに、特許文献8に比較して、本発明の優れた効果として次のことが挙げられる。1.購入した冷凍食材または冷凍調理済み食材を解凍・再凍結を必要とせず、そのまま利用可能、2.食材を酵素液中で解凍した後、酵素液を直ちに他の食材処理に再利用することが可能、3.酵素液中で食材を解凍後、酵素液から食材を回収することで、食材の表面の過剰な酵素反応を防止可能で、見た目の優れた軟らか食材を調理することができる。4.解凍後、そのまま食材を取り出して酵素反応できるため、至適温度への加温設定が早く、スチームコンベクションオーブン、電子レンジ、乾熱加温、フィルム包装しての湯加熱などそのような酵素反応処理でも利用できる。
食材内部へのブルーデキストランの拡散の様子を示す写真である。 解凍と酵素液浸漬による食材内酵素拡散の効果(ニンジン)を示す図である。 解凍と酵素液浸漬による食材内酵素拡散の効果(レンコン)を示す図である。 解凍と酵素液浸漬による食材内酵素拡散の効果(ニンジン)を示す図である。 解凍と酵素液浸漬による食材内酵素拡散の効果(レンコン)を示す図である。 事前加熱後の硬さと反応後の硬さの関係を示す図である。
[食材への酵素導入方法]
(食材)
本発明の方法に用いる食材としては、植物性、動物性のいずれのものであってもよい。具体的には、植物性の食材としては、大根、人参、牛蒡、筍、キャベツ、白菜、セロリ、アスパラガス、ほうれん草、小松菜、青梗菜等の野菜、ジャガイモ、薩摩芋、里芋等の芋類、大豆、小豆、蚕豆、エンドウ豆等の豆類、穀類、パイナップル等の果実類、椎茸、シメジ、エノキ、ナメコ、松茸等のきのこ類、若布、昆布、ひじき等の海藻を挙げることができる。また、動物性の食材としては、牛肉、豚肉、鳥肉の他に、羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉、山羊肉、兎肉、鯨肉、それらの内臓等の肉類や、鯵、鮎、鰯、鰹、鮭、鯖、鮪等の魚類、鮑、牡蠣、帆立、蛤等の貝類、その他エビ、カニ、イカ、タコ、ナマコ等の魚介類を例示することができる。
これらの食材のうち、植物系食材は煮る、焼く、蒸す、揚げるなどの加熱・調理が重要であり、加熱する場合の温度は、中心部が85℃〜125℃程度が望ましい。さらに、植物系食材は水分含量を80%以上に調整することが望ましい。それ以上の温度でも製造することは可能であるが、品質が少し劣化する場合がある。また、蒲鉾等の練製品や、漬物等の加工食品であってもよい。また、動物系食材は加熱しても生の状態でも用いることができる。さらに、動物系食材は水分含量を75%以上に調整することが望ましい。また、これらの食材は、事前に凍結及び解凍処理をしたもの、加圧や減圧などの圧力処理、テンダライズ処理やタンブリング処理、インジェクション処理したものを用いることができる。さらに、これらの食材は、直径2mm以下の穴を2か所/cm以上空ける処理を行ってもよい。また、食材を食塩、クエン酸などの有機酸およびその塩を溶解した水溶液で茹でる、蒸すなどの操作を行なっても良い。また、市販の冷凍食品や市販の調理済み冷凍食材、家庭での調理済み食材などの利用することができる。
食材の形状は、いずれの形状であってもよいが、食材の大きさは適宜選択することができ、塊でも一口大でもよいが、元の食材の形状を保持し、かつ喫食者や咀嚼・嚥下困難者の食欲をそそるものでなければならず、本発明の対象は、厚み5mm以上で体積500mm以上の食材塊が好ましいが、緑色野菜や豆類などはその限りでない。
(事前加熱処理)
本発明の方法において、用いる食材の前処理として、食材に水分を付与し、また組織の一部を損傷させる事前加熱処理を行うことできる。特に、植物系食材は加熱処理を行うことが好ましい。食肉や魚介類などのたんぱく質を主成分とする動物系食材の場合、事前加熱を省略することができる。植物系食材は加熱処理することで、酵素の拡散速度を速めることができる。とりわけ、後述の通り、事前加熱後の硬さと酵素失活後の硬さは関係性が認められることから、事前加熱温度が高いほど、事前加熱時間が長いほど、食材は酵素反応後軟化する傾向が認められた。すなわち、事前加熱を過度に行うことで、食材はより軟化し、より酵素の使用量は少なくて済む。
事前加熱処理は、食材の中心部の温度が好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上125℃以下で、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上120分以下となるように行うことが好ましい。咀嚼・嚥下困難者用レベルである硬さ5.0×10N/m以下にするためには20分以上、より好ましくは25分以上行うことがより好ましい。加熱処理として、焼く、揚げ物、茹で加熱、スチーム加熱、マイクロ波加熱、飽和水蒸気加熱などが好ましいが、食材中心部を上記条件で加熱することができれば、この限りでない。本発明において、下記の解凍処理における酵素拡散は、氷結晶融解時の結晶再構成メカニズムに由来しており、食材の含水率が酵素拡散に大きく寄与しているため、加熱処理として茹で加熱やスチーム加熱等の湿式加熱により食材の含水率を高めることが好ましい。なお、事前加熱処理前後に真空や加圧処理、テンダライズ処理、タンブリング処理をすることもできるが、これらの物理的処理は酵素の食材への拡散を早める効果は認められる。
(凍結処理)
凍結処理では、酵素に接触させない状態で凍結させることにより凍結した食材の表面には酵素が存在しないため、食材表面での酵素の過度な反応を防ぐことができる。例えば、分解酵素に接触させた状態で凍結処理を行った場合、その後の酵素反応処理で食材表面での酵素反応が過剰に進行し、内部よりも表面で軟化が進行し、型崩れの原因となる。
また、この凍結処理では、食材の組織の損傷が生じる。氷結晶の最大生成温度帯が30分以上であれば氷結晶が増大し、細胞壁または細胞膜の一部損傷が生じ、組織の緩みが生じる。そのため、凍結処理は氷結晶の最大生成温度帯が好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上48時間以内となるように緩慢凍結を行うのが良い。例えば、緩慢凍結の冷凍速度は、−0.1℃/min以上−2.5℃/min以下であることが好ましく、−0.5℃/min以上−2.0℃/min以下であることがより好ましい。また、食材の凍結温度は氷結晶が生成する温度帯であれば良く、例えば、−5℃以下であることが好ましい。品質を長期に保つ場合は、好ましくは−15℃以下、より好ましくは−18℃以下に食材を凍結することが良いが、より早い解凍を考慮すると、好ましくは−15℃超−5℃以下、より好ましくは−10℃以上−5℃以下の範囲に食材を凍結することがより好ましい。
(解凍処理)
解凍処理では、凍結した食材の表面に接触させた酵素が、融解時の拡散作用により、食材表面から食材内部への酵素導入が進行する。そのため、食材全体が凍結した状態での解凍処理が好ましく、食材表面も凍結している状態が、酵素は食材内部へ効率的に導入される。凍結した食材に接触させる酵素は、酵素液の形態でも良いし、酵素粉末の形態でも良い。なお、半解凍後浸漬の場合、完全解凍後の浸漬より酵素の拡散量は減少するため、1.0×10N/m以下に軟化するためには、高濃度の酵素と長時間の酵素反応が必要になり、かつ中心部まで均一に軟化することは困難な場合がある。
この解凍工程においては、氷結晶の再結晶化が生じるため、細胞壁などの組織損傷も生じる。すなわち、解凍時にも最大氷結晶生成帯を通過するため、融解中に氷結晶の集中と増大が起こり、組織破壊につながる。この解凍中における氷結晶の再結晶化による大きな氷結晶の生成、組織の損傷と食材表面から氷が溶けることが、食材表面に存在する酵素の拡散を促進していると考えられる。この場合、食材の解凍中の温度のバラツキ、不均一性と含水率が重要である。さらに、アインシュタインの拡散式から、酵素拡散速度は温度に比例することから、解凍時の温度も重要である。緩慢解凍では、食材内部の温度分布が大きいため、氷結晶の再結晶化が拡大し、かつ酵素の拡散時間も延長されるため、より酵素の含浸と酵素反応は促進され、食材の軟化には好都合である。
解凍処理は、0℃以上30℃以下の温度で緩慢解凍を行う。酵素の拡散効果を高める解凍は0℃以上の低い温度ほど良好である。例えば、緩慢解凍の設定温度は、下限値が0℃以上、0℃超、0.5℃以上、または1℃以上であることが好ましく、上限値が25℃以下、20℃以下、18℃以下、15℃以下、12℃以下、または10℃以下であることが好ましい。例えば、解凍処理時間は、下限値が1分以上、3分以上、5分以上、10分以上、30分以上、または60分以上であることが好ましく、上限値が48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、または3時間以下であることが好ましい。緩慢解凍では、品質と微生物的な側面を考慮して、例えば、氷水中解凍、水中解凍、または冷蔵庫解凍により行うことができる。ドリップ流出を抑制する場合、10℃超25℃以下での水中解凍や、0℃超10℃以下での冷蔵庫解凍が好ましい。なお、解凍処理した後、そのままの条件で酵素反応処理を行ってもよい。
(酵素反応処理)
酵素反応は、0℃〜65℃の範囲で行うことができる。10℃以下の場合、6時間以上行うことが好ましく、酵素の至適温度と微生物増殖域から、45℃〜65℃の範囲、より好ましくは55℃〜65℃の範囲で60分以内の条件で酵素反応を行わせることが好ましい。その場合、酵素失活条件である85℃に温度を連続的な加温で温度上昇させることが好ましい。酵素反応と酵素失活については、連続的な湯加温と茹で加熱、連続的なスチーム加温とスチーム加熱、連続的なマイクロ波加温とマイクロ波加熱が好ましい。また、冷蔵庫で酵素反応を行う場合は、茹で加熱、スチーム加熱、マイクロ波加熱、いずれの加熱処理で酵素失活して良い。本発明においては、酵素失活のための加熱処理によって、酵素拡散促進剤として加えた糖類のゲル化(例えば、でんぷんの糊化)により食材表面に膜を形成し、食材の離水防止と誤嚥防止を行うことができる。
酵素反応を酵素液中で行うか、酵素液から取り出して行うかは、品質と目的により好ましい方法が選択できる。見た目の優れた形状保持型軟化食品(例えば介護食)を調製する、あるいは酵素液の再利用を行う、あるいは冷凍食品をそのまま使用する、あるいは調理後の食品をそのまま冷凍した食品を使用する場合などは、解凍工程で使用した酵素液から食材を取り出し、酵素反応を行うことがより好ましい。製造または調理工程上連続的な処理、より酵素を多く含浸する場合は、酵素液中でそのまま酵素反応、酵素失活を行う。その場合は、表面における過剰な酵素反応が生じることを考慮しなければならない。
本発明に用いる分解酵素としては、形状保持型軟化食品調理には、タンパク質、炭水化物、脂肪の分解酵素であればいずれも用いることができ、摂取者の状態や、食材の種類等分解する基質等によって適宜選択することができる。主に、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、グルカナーゼ、キシラーゼ、ヘミセルラーゼまたはセルラーゼのいずれかの酵素活性を含む酵素液が使用される。具体的にはプロテアーゼ、ペプチダーゼ等タンパク質をアミノ酸及びペプタイドに分解する酵素、アミラーゼ、グルカナーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルコシダーゼ、マンナーゼ、キシラナーゼ、アルギン酸リアーゼ、キトサナーゼ、イヌリナーゼ、キチナーゼ等でんぷん、セルロース、イヌリン、グルコマンナン、キシラン、アルギン酸、フコイダン等の多糖類をオリゴ糖に分解する酵素、リパーゼ等脂肪を分解する酵素などを挙げることができる。これらは1種又は相互に阻害しないものを2種以上組み合わせて使用することもできる。特に、食材として動物性食材を用いる場合、プロテアーゼやペプチターゼを用いることが、アミノ酸やペプチドを生成し、呈味性を向上させることができる。また、食感を改善するためにトランスグルタミナーゼも使用可能である。これら分解酵素の起源は問わず、植物由来、動物由来、微生物由来のものを使用することができる。分解酵素の形態としては、液状や粉末状であってもよいし、分散液に含有されていてもよい。
本発明の方法において、上記の分解酵素に加えて、酵素拡散促進剤を用いることで、食材内への分解酵素の導入効率を向上させることができる。酵素拡散促進剤としては、低分子糖類および多糖類から選択される少なくとも1種を用いることができる。低分子糖類としては、オリゴ糖や糖アルコールが挙げられる。好適な3糖以上のオリゴ糖としては、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、アカルボース、およびスタキオース等が挙げられる。好適な糖アルコールとしては、例えば、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、およびソルビトールが挙げられる。このような低分子糖類は浸透圧を高める作用があり、酵素拡散を促進し、食材内への酵素の導入効率を向上させることができる。また、好適な多糖類としては、β型でんぷん、化工でんぷん、カードラン、デキストリンが挙げられる。特に、多糖類を併用することで、咀嚼時に食材からの離水を防止し、誤嚥を防止できるため、咀嚼・嚥下困難者用食材として好適に用いることができる。物質の拡散のし易さは、アインシュタインの拡散式から、粘度と分子量に反比例することから、これらの中でもデキストリン以外の高分子多糖類を利用する場合は、β型でんぷん状態のでんぷん懸濁液や低温でのカードランの利用など粘度の低い条件下で酵素液に添加することが好ましい。
本発明は、形状保持型軟化食品調理以外にも利用可能である。アミラーゼを含浸することで食材内のでんぷんを分解し、オリゴ糖や甘味性の糖類を生成可能で、形状を保持したまま機能性食品や呈味性改善をすることができる。また、大豆や食肉にプロテアーゼ含浸によることで抗高血圧ペプチドの生成や、大豆へのβ−グルコシダーゼ含浸によりイソフラボンのアグリコン化が可能となる。さらに、グルタミナーゼ含浸によりたんぱく質系食材の物性を変化させることで、歯ごたえや組織化しやすい、口当たりの良い食感に改善を行うことも可能となる。
本発明では、酵素に加え、低分子物質を同時に含浸することができる。例えば、食塩やアミノ酸(旨み調味料)、食酢、酒、しょうゆ、単糖類、二糖類、グルタミン酸ナトリウム、重曹などの調味料や食品添加物は調味用である。更に、これらの物質の他、食材に含浸させる物質として、油脂、ビタミン、ミネラルなど栄養価を高める物質が好まれる。特に、油脂はカロリー強化に有効で、乳化して利用すると導入濃度を高めることができる。また、β−カロテンやレスベラトールなど疎水性成分の含浸には、シクロデキストリン包接物が好ましい。さらに、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸や照りなどの改善に役立つソルビトール、マルトールなどの糖アルコールも酵素液に加えることでより良い物性を有する調理食材を調製することができる。
酵素液への食材の浸漬は、食材内に氷結晶が生成している状態で、酵素を含有する酵素液に浸漬し、酵素液中で解凍する。酵素液のpHは、pH3〜pH10の範囲で、特にpH4〜pH9であることが好ましく、特に、食材と同じpHに調整することが効果的である。酵素液のpHの調整には、有機酸類とその塩類やリン酸塩等のpH調整剤等を用いることができ、またpH調整された調味液等を使うこともできる。冷凍後の衛生面や取り扱い、流通上のことを考えれば、食材に酵素液などを付着させた後、フィルムなどの軟包材で包装または真空包装して、その後凍結処理を行う。
酵素の使用量としては、凍結後の酵素反応温度や反応時間によって変えることができる。軟化の程度や呈味成分の生成の度合いによって適宜選択することができ、溶媒液に対して0.01〜5.0質量%の範囲で分解酵素を溶解あるいは分散させて使用することが好ましい。
他方、アインシュタインの拡散式(D=RT/6πNηr、Dは拡散係数,Rは気体定数,Nはアヴォガドロ定数,Tは絶対温度であるが,ηは媒質の粘性,rはコロイド粒子を球と見なした場合の半径)によると、酵素拡散速度は酵素濃度と温度に比例することから、食材内外の酵素の濃度勾配と加温が必要で、粘度は拡散を阻害する。そのため、拡散速度を高めるためには酵素濃度を高く、可能であれば加温し、かつコスト面から酵素使用量は少なくすることが望ましい。十分な溶媒がある状態では、最大5質量%の酵素濃度が好ましいが、溶媒量を極限まで少なくすることで、酵素濃度を極限まで高める方法もある。その場合は、5質量%超える高濃度で使用することが可能である。それを考慮すると、酵素混合粉末中の酵素の含有量は、好ましくは0.5%質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上10.0質量%以下であり、酵素拡散促進剤の含有量は、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは50質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上97質量%以下である。酵素混合粉末は、酵素および酵素拡散促進剤以外にも、pH調整剤、単糖類、二糖類、および調味料等を含んでもよい。酵素の塗布方法としては、酵素混合粉末をそのまま食材表面へ塗布した後に食材表面の水分の溶出を利用して溶解させてもよいし、酵素混合粉末をそのまま食材表面へ塗布した後に水を添加してもよいし、あるいは、酵素混合粉末を少量の水で液状にした酵素液の状態で塗布させてもよい。いずれの方法であっても、酵素混合粉末または酵素液を凍結させた食材の表面に接触させた状態にした後、解凍処理を行うことで、圧力処理ではなく融解時の拡散作用によって食材内に酵素を導入する。
[形状保持型軟化食品]
本発明における形状保持型軟化食品の硬さは、1.0×10N/m以上2.0×10N/m以下であり、特に1.0×10N/m以上1.0×10N/m以下の範囲に軟化することが好ましく、咀嚼・嚥下困難者食として考えれば、1.0×10N/m以上5.0×10N/m以下の範囲に軟化することがより好ましい。いずれも元の食材の硬さの2分の1以下に軟化することができる。
上記形状保持型軟化食品は通常の食材と同様の方法で調理して摂取することができる。チルド惣菜、レトルト食品、冷凍食品、缶詰食品、乾燥食品等種々の加工食品に応用できる。特に、咀嚼・嚥下困難者用として利用する場合、増粘剤を酵素反応後に添加することが好ましい。また、医療用造影剤であるバリウム、ヨード系造影剤などを酵素液に共存させることで、形状保持型の造影検査食として利用することもできる。
本発明は、加圧加熱殺菌済み形状保持型軟化食品の加圧加熱殺菌用包装容器はパウチや缶詰、プラスチック容器製品などにも応用可能で、その工程として、1.事前加熱、2.食材の凍結、3.食材の調味液入り酵素液中で解凍、4.酵素反応、5.酵素失活の各工程または全工程を容器中でそのまま行うことが可能となり、極めて低コストのレトルト介護食を製造することができる。密封工程は、食材の酵素液への浸漬後であればいつでも可能である。
本発明の乾燥食品は、酵素反応後、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥などを行うことで、元の形状を保持しつつ食材の物性を変化させた乾燥食品が製造可能で、湯戻りの優れた軟らか乾燥食材が製造できる。お茶づけやふりかけ製品に応用可能である。
本発明における在宅介護調理や給食調理で介護食を想定した場合、酵素を適切な配合に調製し、使用することは困難な場合があり、酵素を予め取扱いやすい形態にしておくことが好ましい。そのためには、酵素、酵素拡散促進剤、およびその他の添加剤(pH調整剤、単糖類、二糖類、、調味料等)を最適な条件で予め調製した水溶性の酵素混合粉末を提供することが好ましい。この場合、水に溶かしやすく、ダマになりにくく、溶解した状態でpH、酵素濃度、イオン強度が最適化された酵素混合粉末を調製するのが良い。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定解釈されるものではない。
[参考例1]
凍結から解凍、浸漬に至る各工程において、酵素等の高分子物質の食材内への拡散作用を確認するための試験を行った。本試験では、拡散作用を視覚的に確認し易くするために、高分子物質としてブルーデキストランを用いた。なお、ブルーデキストランと酵素では、分子組成、分子構造、分子量のいずれも異なるが、同様の拡散作用を生じると考えられる。食材としてダイコン、ジャガイモを用い、直径2cm、厚さ1cmの円柱状に成形したものを試料として用いた。事前加熱処理した試料1〜3について、それぞれ下記の試験1−1〜1−3を行った。
(試験区分)
・試験1−1. 試料1をブルーデキストランに浸漬した状態で凍結し、凍結した状態のまま切断した。
・試験1−2. 試料2を凍結し、ブルーデキストラン溶液に浸漬して10分間で解凍した後に切断した。
・試験1−3. 試料3を凍結し、解凍後、ブルーデキストラン溶液に10分間浸漬した後に切断した。
(試験条件)
・試料:ジャガイモ(直径2cm、厚さ1cm、円柱状)
・試料:ダイコン(直径2cm、厚さ1cm、円柱状)
・事前加熱処理:10分茹で加熱
・凍結処理:−18℃(ハイアールJF−NC145F)
・解凍処理:15℃)、20分
上記の試験1〜3を行った各試料1〜3の断面の様子を観察した。図1に各試料1〜3の断面におけるブルーデキストランの拡散の様子を示す。試料2においては、ブルーデキストランの食材内部への拡散が観察された。試料1および3においては、ブルーデキストランの食材内部への拡散は観察されなかった。
上記の実験結果は、凍結中にはブルーデキストランは食材内部へ拡散しないこと、また、凍結・解凍後にブルーデキストラン浸漬した場合でも食材内部へほとんど拡散しないことを示している。すなわち、ブルーデキストランのような高分子物質は、食材の解凍時に内部へ拡散することがわかった。特許文献8における食材との同時凍結・解凍によっても同様の現象が認められたが、上記の観察結果から、凍結時に食材内にブルーデキストランが拡散したものではなく、解凍時の拡散現象であることが明確となった。ブルーデキストランの浸透実験の結果から、高分子化合物である酵素も同様の現象が推察される。
[参考例2]
上記の参考例の実験結果から、食材内への高分子物質の拡散は、主として解凍時に生じることがわかったので、酵素液を用いて事前加熱処理した食材について下記の試験2−1〜2−4を行った。
(試験区分)
・試験2−1(浸漬同時凍結).事前加熱処理した食材を酵素液に浸漬して凍結・解凍した。
・試験2−2(解凍同時浸漬).事前加熱処理した食材を凍結し、解凍時に酵素液に浸漬した。
・試験2−3(解凍後浸漬).事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した。
・試験2−4(コントロール).事前加熱処理した食材をそのまま酵素液に浸漬した。
(試験条件)
・試料:ニンジン(直径4cm、厚さ1cm、円柱状)
・試料:レンコン(輪切り、厚さ1cm)
・ニンジンを浸漬した酵素液:0.5%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・レンコンを浸漬した酵素液:1%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・事前加熱処理:20分煮沸(ニンジン)、30分煮沸(レンコン)
・凍結処理:−18℃(ハイアールJF−NC145F)
・解凍処理:15℃、20分
・浸漬処理:20分
・酵素反応処理:50℃、60分、スチーム加熱(スチームコンベクションオーブン:スチームモード)
上記の各試験を行った食材の硬さについて、クリープメーター(山電製、RE2−33005B)を使用し、プランジャー直径3mm、70%歪での破断強度を測定した。測定部位でのバラツキを抑えるため、各試料とも周辺部での硬さ測定を行った。ニンジンとレンコンの測定結果をそれぞれ図2および図3に示す。ニンジン、レンコンとも同じ傾向を示した。すなわち、試験2−1と、試験2−2の2処理でいずれも5.0×10N/m以下まで軟化したが、試験2−3では、2.0×10N/mが軟化の限界であった。試験2−1及び試験2−2の処理いずれもほぼ同程度に軟化しており、酵素の拡散による浸透は、凍結時ではなく解凍時に進んだことが明らかとなった。
以上の結果、凍結食材を酵素液に浸漬した状態で解凍する場合に、酵素の拡散が大きく、食材の内部に酵素を浸透させ、食材を軟化するためには、解凍時に酵素と接触しておくことが重要である。その場合、特許文献8に対する本発明の優位性の一つである食材の形状保持性について調べた。形状保持で重要な項目は、食材表面の滑らかさとエッジ(食材の角面)の残存である。酵素液に浸漬した場合、食材表面が最も酵素濃度は高く、かつ最も長い時間酵素と接触しているため、食材表面の崩れが生じやすく、商品性を損なう一因となる。特許文献8の方法(浸漬同時凍結)は、本発明の方法に比べて、明らかに長時間酵素と接触することになる。家庭用冷蔵庫などの緩慢凍結において、食材が完全に凍結するまで少なくとも、10時間程度必要である。それほど長時間酵素と接触していると、食材表面は酵素による過分解による崩壊を生じる。
[参考例3]
実際に、様々な食材について、特許文献8の方法と本発明の方法を比較し、食材表面を観察した。実験は、下記の試験条件で各食材(ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、レンコン、豚肉)を5×10N/m以下に軟化させて、その表面形状を観察した。その結果を表1に示した。特許文献8の方法、すなわち、食材を酵素液に浸漬し、凍結・解凍・酵素反応、酵素失活を行った場合、明らかに食材のエッジが喪失し、食材表面の滑らかさは失われていた。一方、本発明の方法で処理した食材は、すべて処理前の形状を保持し、エッジも良好に残存していた。
次に、解凍時に酵素液に浸漬したまま酵素反応まで行う処理を、下記の通り、ニンジンとレンコンで行った。また、この時の酵素反応は60℃の湯中で60分行った。
(試験区分)
・試験4−1(浸漬同時凍結).事前加熱処理した食材を酵素液に浸漬して凍結・解凍した。
・試験4−2(解凍同時浸漬).事前加熱処理した食材を凍結し、解凍時に酵素液に浸漬した。
・試験4−3(解凍後浸漬).事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した。
・試験4−4(コントロール).事前加熱処理した食材をそのまま酵素液に浸漬した。
(試験条件)
・試料:ニンジン(直径4cm、厚さ1cm、円柱状)
・試料:レンコン(輪切り、厚さ1cm)
・ニンジンを浸漬した酵素液:0.5%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・レンコンを浸漬した酵素液:1%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(スミチームSPG、新日本化学社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・事前加熱処理:20分煮沸(ニンジン)、30分煮沸(レンコン)
・凍結処理:−18℃(ハイアールJF−NC145F)
・解凍処理:15℃、20分
・酵素反応処理:50℃、60分、湯中
・酵素失活処理:85℃、5分
上記の各試験を行った食材の硬さについて、クリープメーター(山電製、RE2−33005B)を使用し、プランジャー直径3mm、70%歪での破断強度を測定した。測定部位でのバラツキを抑えるため、各試料とも周辺部での硬さ測定を行った。ニンジンとレンコンの測定結果をそれぞれ図4および図5に示す。図4および図5から明らかなように、酵素反応を酵素液に浸漬したまま行っても、酵素液をから取り出して酵素反応した時と同様の傾向を示した。すなわち、5.0×10N/m以下まで軟化するためには、試験4−1または試験4−2の2処理が必要で、解凍後に酵素液に浸漬しても5.0×10N/m以下まで軟化させることはできない。なお、試験4−3の場合、酵素液に浸漬した状態で酵素反応する方が、酵素液から取り出して酵素反応するよりも若干軟化が進む傾向が見られた。これは、酵素液と接触する時間が長くなったため、その間の酵素拡散と酵素反応が進んだものと思われた。一方、外観をみると、酵素液に浸漬した状態で酵素反応させた方が食材表面の軟化に伴う崩壊が一部見られた。
[参考例5]
事前加熱処理の影響を調べるため事前加熱処理時間と軟化の関係を調べた。
(試験区分)
・試験5−1(○):事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した状態で解凍し、酵素反応を50℃で30分間行った。
・試験5−2(△):事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した状態で解凍し、酵素反応を50℃で60分間行った。
・試験5−3(□):事前加熱処理した食材を解凍後、酵素液に浸漬した状態で解凍し、酵素反応を3℃で14時間行った。
(試験条件)
・試料:ニンジン(直径4cm、厚さ1cm、円柱状)
・酵素液:0.5%混合酵素液(クエン酸緩衝液、ペクチナーゼ(ペクチナーゼ2A、ヤクルト薬品社製)、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)
・事前加熱処理:5分〜30分煮沸
・凍結処理:−18℃(ハイアールJF−NC145F)
・解凍処理:15℃、20分
・浸漬処理:20分
・酵素失活処理:85℃、5分
上記の各試験を行った食材の硬さについて、クリープメーター(山電製、RE2−33005B)を使用し、プランジャー直径3mm、70%歪での破断強度を測定した。測定部位でのバラツキを抑えるため、各試料とも周辺部での硬さ測定を行った。その結果を図6に示す。本発明における酵素の拡散を効率的かつ迅速に行い、咀嚼・嚥下困難者レベルまで軟化するためには、事前加熱を行うことが好ましく、事前加熱後の硬さと酵素反応後の硬さは関係性があった。すなわち、事前加熱の条件と酵素反応条件は互いに重要で、食材ごとに、目的とする硬さごとに最適条件を設定することが重要である。事前加熱を過度に行うと酵素使用量を減らせることができる。コスト面を考慮すれば、通常の浸漬では5質量%程度が限界であるが、実用的な面を考慮すると2質量%、より好ましく1質量%であるが、事前加熱条件により酵素濃度はこの限りでないことがわかる。また、酵素液量を少なくすることで、酵素使用量を少なくすることができるので、酵素濃度を5質量%以上に設定することは容易である。
[実施例1]
一口大の食材としてニンジン、タケノコ、ゴボウ、シイタケ、レンコン、エンドウを準備し、出し汁、醤油、みりん、砂糖を加え、20分間茹で煮しめを調理した後、食材と少量の汁を混ぜ、−18℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:−0.65℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:100分)。食材を切断する場合は繊維を断ち切るように切断した。凍結した食材をフィルムに入れ、スクラーゼSおよびスクラーゼX(アマノエンザイム製)を等量含む酵素混合粉末(デキストリン、有機酸とその塩、調味料と酵素粉末を混ぜ、10.0質量%の酵素を添加した酵素混合粉末)を混ぜ、少量の水を加えて、3℃の冷蔵庫で3時間解凍した。食材を解凍後、そのまま冷蔵庫で14時間酵素反応を行い、沸騰水で殺菌した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、いずれの食材も硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼困難者用として十分な軟らかさになった。その後、かたくり粉を溶かした増粘剤を添加したところ、形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい食品になった。
[実施例2]
厚さ10mmで20mm×20mmに切断したニンジン及び、厚さ10mmに切断したレンコン、ゴボウにクエン酸ナトリウムを0.1%加えた沸騰水で10分間茹でた。この時の食材の水分量はいずれも85%以上であった。その後、食材を取り出し、ブラストチラー(福島工業QXF-006SFLT1)で、設定温度−7℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:−1.0℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:35分)。冷凍した食材に、1.0質量%酵素(ペクチナーゼ2A、ヤクルト薬品製)と、デキストリン(1質量%)、アミノ酸調味料(3質量%)、食塩(1質量%)、じゃがいも生でんぷん(10質量%)を溶かした5℃の水溶液に浸漬し、20分間で解凍させた。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。
[実施例3]
厚さ10mm、一口大に切断したレンコン、イカ、サトイモ、鶏肉、絹さやにだし汁、醤油、砂糖、みりん、酒、砂糖を加え、スチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)を用いて95℃で30分間加熱した。なお、鶏肉はむね肉を使用し、テンダラーザーで穴を開けた。この時の食材の水分量は植物素材で82%以上、鶏肉で77%であった。その後、ブラストチラー(ホシザキ電機製HBC−6TA3)を用いて−15℃で緩慢凍結(冷却速度:−2℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:30分)させた。5.0質量%の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90及びパパイン(天野エンザイム製)及び、ラフィノース(20質量%)、じゃがいも生でんぷん(70.1質量%)、市販調味料(2質量%)、PH調整剤(クエン酸0.1質量%及びそのナトリウム塩0.8質量%)、食塩(2質量%)を混ぜた粉末を凍結した食材の3質量%を均一に噴霧・塗布した。その後、30分間冷水解凍(3℃)を行った。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。得られた食材の離水も防止でき、歩留まりも向上した。
[実施例4]
厚さ10mm、一口大に切断したレンコン、ゴボウ、ニンジンをスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)を用いて95℃で加熱し、水分含量を85%以上に調整した。鶏むね肉、豚もも肉は生でテンダライズ処理した状態で使用した。家庭用冷蔵庫を用いて−18℃で緩慢凍結させた。凍結食材を1.0質量%の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90及びパパイン(天野エンザイム製))及び、デキストリン(1質量%)、カードラン(5質量%)、市販調味料(2質量%)、pH調整剤(クエン酸0.1質量%及びそのナトリウム塩0.8質量%)、食塩(2質量%)を溶かした水溶液をポリエチレン−アルミを主構成成分とするフィルムで熱圧着して密封し、3℃で20分間解凍した。60℃で30分間加温後、レトルト殺菌装置(サムソン製SGC)で125℃、45分の設定で加圧加熱殺菌を行った。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
[実施例5]
一口大に切断したゴボウ、ニンジン、ジャガイモを100℃で茹で加熱し、水分含量を85%以上に調整した。家庭用冷蔵庫を用いて−18℃で緩慢凍結させた。5.0質量%の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90)及び、じゃがいも生でんぷん(60.1質量%)、ラフィノース(30質量%)、市販調味料(2質量%)、pH調整剤(クエン酸0.1質量%、及びそのナトリウム塩0.8質量%)、食塩(2質量%)の混合粉末を凍結食材に対し5%塗布し、3℃で20分間解凍した。3℃で15時間酵素反応後、減圧乾燥(40℃)した。湯戻しして得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
[比較例1]
一口大の食材としてニンジン、タケノコ、ゴボウ、シイタケ、レンコン、エンドウを準備し、出し汁、醤油、みりん、砂糖を加え、20分間茹で煮しめを調理した。また、スクラーゼSおよびスクラーゼX(アマノエンザイム製)を等量含む酵素混合粉末(デキストリン、有機酸とその塩、調味料と酵素粉末を混ぜ、10.0質量%の酵素を添加した酵素混合粉末)を混ぜ、少量の水を加えて分解酵素液を準備した。準備した分解酵素液に少量の汁を加え、調理した食材を浸漬し、−18℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:−0.65℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:100分)。食材を切断する場合は繊維を断ち切るように切断した。凍結した食材を5℃の冷蔵庫で3時間解凍した。食材を解凍後、そのまま冷蔵庫で14時間酵素反応を行い、沸騰水で殺菌した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、いずれの食材も硬さは5×10N/m以下となり、咀嚼困難者用として十分な軟らかさになった。しかし、食材のエッジが明らかに喪失し、食材表面の滑らかさは失われており、実施例1で得られた食材に比べて、形状保持の点で劣っていた。また、離水も生じていた。
[比較例2]
厚さ10mmで20mm×20mmに切断したニンジン及び、厚さ10mmに切断したレンコン、ゴボウにクエン酸ナトリウムを0.1%加えた沸騰水で5分間茹でた。その後、食材を取り出し、ブラストチラー(福島工業QXF−006SFLT1)で、設定温度−7℃で緩慢冷凍した(冷凍速度:−1.0℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:35分)。冷凍した食材に、1.0質量%酵素(ペクチナーゼ2A、ヤクルト薬品製)と、アミノ酸調味料(3質量%)、食塩(1質量%)を溶かした5℃の水溶液に浸漬し、20分間で解凍させた。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは2.0×10N/mを超えており、咀嚼・嚥下困難者用として不十分な軟らかさになった。実施例2で得られた食材に比べて、離水、軟化度の点で劣っていた。
[比較例3]
厚さ10mm、一口大に切断したレンコン、イカ、サトイモ、鶏肉、絹さやにだし汁、醤油、砂糖、みりん、酒、砂糖を加え、スチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)を用いて95℃で30分間加熱した。なお、鶏肉はむね肉を使用し、テンダラーザーで穴を開けた。この時の食材の水分量は植物素材で82%以上、鶏肉で77%であった。その後、ブラストチラー(ホシザキ電機製HBC−6TA3)を用いて−15℃で緩慢凍結(冷却速度:−2℃/min(中心部が25℃から氷点下になるまでの速度)、最大氷結晶生成帯の通過時間:30分)させた。5.0質量部の酵素(ヘミセルラーゼ「アマノ」90及びパパイン(天野エンザイム製)及び市販調味料(2質量部)、PH調整剤(クエン酸0.1質量部及びそのナトリウム塩0.8質量部)、食塩(2質量部)を混ぜた粉末を食材に対して3質量%の量で凍結した食材に均一に噴霧・塗布した。その後、55℃で10分間温水解凍を行った。その後、55℃のスチームコンベクション(三洋電機(株)製SOB−VS10)で1.0時間加温後、そのまま90℃に加熱して酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは2.0×10N/mを超えており、咀嚼・嚥下困難者用として不十分な軟らかさになった。得られた食材の離水も生じ、歩留まりも低下した。
[実施例6]
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウ、豚もも肉を使用した。ニンジン、ゴボウは20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(−18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、ブロメライン(天野エンザイム)、酵素拡散促進剤としてデキストリン(パインデックス(松谷化学)、じゃがいもでんぷんを準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液中で解凍する場合は、この粉末を10倍水希釈した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態で耐熱容器に入れ、3℃の冷水で20分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材に調味液と水を加え、60℃で1時間酵素反応を行い、そのまま加圧加熱処理(122℃、30分)した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さはいずれも5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
[実施例7]
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウを使用した。20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(−18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、酵素拡散促進剤としてβ型でんぷん(馬鈴薯でんぷん、ホクレン製)を準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液として使用する場合は、酵素液中の酵素濃度が0.5%になるよう調製して使用した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態でフィルムに入れ、3℃の冷水で20分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材を3℃で15時間酵素反応を行い、沸騰水中で5分間酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
[実施例8]
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウを使用した。20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(−18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、酵素拡散促進剤としてラフィノース(ニチガ製)を準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液として使用する場合は、酵素液中の酵素濃度が0.5%になるよう調製して使用した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態でフィルムに入れ、3℃の冷水で20分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材を3℃で15時間酵素反応を行い、沸騰水中で5分間酵素を失活させ、120℃、20分加圧加熱した。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは5.0×10N/m以下となり、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさになった。形状はそのままで風味が良好で要介護者にとって食べやすい常温流通食品になった。振動による型崩れは生じなかった。
実施例6〜8で得られた食材の硬さの詳細を表2に示した。
[比較例4]
食材として剥皮後繊維に直角に1cm厚で切断したニンジン、ゴボウを使用した。20分間茹で加熱した後、家庭用冷蔵庫(−18℃)で15時間冷凍した。また、酵素として、ヘミセルラーゼ(アマノ90、天野エンザイム社製)、植物組織崩壊酵素(マセロチームA、ヤクルト薬品社製)を1:1の割合で混合し、酵素拡散促進剤としてラフィノース(ニチガ製)を準備した。酵素混合粉末中の酵素の濃度は5質量%であり、酵素拡散促進剤の濃度は95%であった。酵素液として使用する場合は、酵素液中の酵素濃度が0.5%になるよう調製して使用した。
食材量に対して3質量%の上記酵素混合粉末を凍結した食材表面に均一に付着させた状態でフィルムに入れ、70℃の温水で2分間解凍した。また、酵素液の状態で食材に塗布した以外は同様にして食材を解凍した。これらの解凍した食材を55℃で60分間酵素反応を行い、沸騰水中で5分間酵素を失活させた。得られた食材について硬さ(クリープメーターRE2−33005Bで破断強度)を測定した結果、硬さは2.0×10N/mを超えており、咀嚼・嚥下困難者用として十分な軟らかさにならなかった。

Claims (12)

  1. 塊状の食材又は元の形状を保持する食材に酵素を導入し、酵素反応を行って、形状保持型軟化食品を製造する方法であって、
    食材の表面に酵素を接触させない状態で、食材の最大氷結晶生成帯の通過時間が30分以上となるように食材の凍結処理を行うことと、
    炭水化物、タンパク質、または脂質を分解する酵素活性を有する酵素と、低分子糖類および多糖類から選択される少なくとも1種の酵素拡散促進剤とを含む酵素混合粉末または酵素液を凍結させた食材の表面に接触させた状態で、0℃以上30℃以下の解凍処理を行いながら、圧力処理ではなく融解時の拡散作用によって食材内に前記酵素を導入することと、
    前記酵素を導入した食材の酵素反応を行い、元の形状を保持したまま食材の硬さを1.0×10N/m以上2.0×10N/m以下の範囲に調節することと、
    を含むことを特徴とする、形状保持型軟化食品の製造方法。
  2. 前記低分子糖類が、オリゴ糖または糖アルコールであり、前記多糖類が、β型でんぷん、化工でんぷん、またはカードランである、請求項1に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  3. 凍結前の食材に事前加熱処理を行うことを含む、請求項1または2に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  4. 前記事前加熱処理として、食材の中心部の温度が85℃で5分以上となるように加熱することを含む、請求項3に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  5. 前記解凍処理の温度が0℃超10℃以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  6. 前記酵素液を用い、
    前記酵素液が、有機酸及びその塩を用いてpH3〜pH10の範囲内に調整され、
    前記酵素液が、食塩、アミノ酸、油脂、増粘剤、栄養成分、グルタミン酸ナトリウムおよび重曹からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  7. 前記酵素混合粉末を用い、
    前記酵素混合粉末が、pH調整剤、単糖類、二糖類、および調味料からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  8. 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させた状態で、酵素反応および酵素失活を行う、請求項1〜7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  9. 酵素を導入した食材の表面に酵素を接触させない状態で、酵素反応および酵素失活を行う、請求項1〜7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  10. 酵素を導入した食材を包装容器に収納し、
    包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  11. 凍結した食材と前記酵素混合粉末または酵素液を包装容器に収納し、
    包装容器内で凍結した食材の解凍処理を行いながら、食材内に酵素を導入し、
    包装容器内で酵素を導入した食材の酵素反応、酵素失活、および加圧加熱殺菌することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の形状保持型軟化食品の製造方法。
  12. 乾燥食品の製造方法であって、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法により得られた形状保持型軟化食品を乾燥させることを含む、乾燥食品の製造方法。
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