JP6920706B1 - 食材への物質導入方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】食材内に導入する物質の導入量及び/又は導入深度を簡便な方法で制御することができる方法の提供。【解決手段】本発明による食材への物質導入方法は、食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を導入する方法であって、食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を引き起こし、続いて、常圧下で、食材を導入物質に接触させることで降温させ、食材内水蒸気の凝集及び食材内気体の体積収縮を引き起こすことにより発生する導入駆動力を調節して、食材内への物質の導入量及び/又は導入深度を制御することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を導入する方法に関する。
超高齢化社会を背景として、高齢者用食品の需要が高まっている。これまでの高齢者用食品として主流であった刻み食や流動食、成型食に加えて、近年では、形状保持軟化食品が注目を集めている。形状保持軟化食品は、見た目が自然で、食べ応えがある大きさであるにもかかわらず、その色や形、味や香りが楽しめ、食材本来の素材感を残したまま軟らかいものである。
従来、食材を軟らかく加工する方法として、常圧下で長時間加熱して軟らかく煮込む方法や、加圧状態で加熱する加圧加熱法が用いられてきた。しかし、近年、従来法では成し得なかった軟らかさを形状保持したまま実現する方法として、食材に食品用分解酵素を含浸し、食材内の組織接着物質を分解して軟らかく調製する方法が用いられている。
これまでに、本発明者らは、凍結食材を酵素液中で解凍して減圧し、減圧下に5〜60分間保持して酵素を食材内に含浸する方法を発明した(特許文献1参照)。この方法は凍結含浸法とよばれ、食材を凍結解凍して細胞間隙を緩和する前処理と、食材内細胞間隙の空気及び水分と食材外の酵素とを急速置換する減圧圧力処理が必須工程となっている。本発明者らは、凍結含浸法を発展させ、さらに短時間に効率よく食材内に酵素を急速含浸する方法も発明した(特許文献2参照)。この方法は、食材を加温状態で減圧処理する方法で、食材内で気化して発生する水蒸気及び水と食材外の酵素とを急速置換することができる。このように、通常、食材への酵素の含浸には、浸漬処理ではなく減圧含浸処理が利用される。減圧含浸処理は短時間に分解酵素を食材中心部まで導入できるため、厚みがある形状保持食材においても食材内部の組織接着物質を偏りなく分解でき、食材をムラなく均一に軟化できる。
凍結含浸法は、物質を食材に浸み込ませる、いわゆる「物質含浸技術」の1つである。これまでに、物質含浸技術は、塩漬け、味噌漬け、かす漬けなどの調味漬けに代表される浸漬法が古くから用いられてきた。食材を調味料に浸けるだけでよく、調味成分等の物質は浸透拡散により浸み込む。食材に調味成分が浸み込み、美味しく加工できる。しかし、浸漬法は食材内部に物質が浸み込むまでに時間がかかるという課題がある(特許文献3参照)。そこで食材を浸漬した状態で煮込む加熱法や、加圧状態で加熱する加圧加熱法などが考えられ普及しているが、これらの方法は加熱エネルギーを用いて物質の浸透を促進するため、過剰な熱エネルギーを与えられることで食材の型崩れや硬化など品質劣化が起き易い。さらに、酵素のように加熱変性しやすい物質を含浸することはできない。
特開2003−284522号公報 国際公開第2016−199766号 特開2010−213651号公報
近年、高齢者・要介護者用の食品開発が進み、形状保持軟化食品が注目されている。特に酵素を食材に含浸することで、加熱法および加圧加熱法以上に軟らかく形状に優れた食材を得ることができる。酵素は熱に弱く加熱法及び加圧加熱法での含浸が困難であること、浸漬法では食材内部まで十分に酵素を浸透させることが難しいことから、現在酵素含浸の方法として減圧含浸法が主流となっている。一方で減圧含浸法では食材を減圧できる減圧装置の導入が必須であり、大がかりな装置導入が必要となることが課題となる。また減圧処理では目標真空度までの到達及び常圧復帰に一定の時間が必要とするため、処理工程において律速となり大量生産における課題といえる。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、減圧装置などの圧力制御装置を用いることなく、低分子物質、高分子物質及び粘性物質等の物質を食材に短時間で大量に導入できる簡便かつ新規な方法を提供することにある。
本発明者らは、物質導入方法について鋭意検討した結果、食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して強力な導入駆動力を発生させることにより、高価な圧力装置を用いることなく、簡便かつ有用な物質導入方法が実現できるとの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を導入する方法であって、
食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を引き起こし、
続いて、常圧下で、食材を導入物質に接触させることで降温させ、
食材内水蒸気の凝集及び食材内気体の体積収縮を引き起こすことにより発生する導入駆動力を調節して、食材内への物質の導入量及び/又は導入深度を制御することを特徴とする、食材への物質導入方法。
[2] 前記食材が動物性素材であり、下記数式で定義される導入駆動力S1を233以上に調節する、[1]に記載の食材への物質導入方法。
Figure 0006920706
(式中、S1:導入駆動力、E1:食材(動物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
[3] 前記食材が植物性素材であり、下記数式で定義される導入駆動力S2を216以上に調節する、[1]に記載の食材への物質導入方法。
Figure 0006920706
(式中、S2:導入駆動力、E2:食材(植物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
[4] 前記食材の昇温後の温度が、40℃以上100℃以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[5] 前記食材の昇温後の温度と前記導入物質の温度の差が、10℃以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[6] 前記導入物質が、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、澱粉、及び微生物からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]〜[5]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[7] 前記食材の昇温方法として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、焼成加熱、及びジュール加熱からなる群から選択される少なくとも一種を利用する、[1]〜[6]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[8] 前記食材の前処理工程として、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、筋切り、タンブリング、脱水、脱脂、乾燥、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、誘電処理、超音波処理、重曹処理、アルコール浸漬からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、[1]〜[7]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[9] 前記導入物質の提供方法が、浸漬、噴霧、塗布、及び物質保持基材との接触からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]〜[8]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[10] 前記食材内に2種類以上の導入物質を層状に導入する、[1]〜[9]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[11] 食材の温度及び導入物質の温度を制御できる加熱装置を用いる、[1]〜[10]のいずれかに記載の食材への物質導入方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の食材への物質導入方法を用いる、物質導入食材の製造方法。
[13] [12]に記載の方法により製造された物質導入食材を用いる、加工食品の製造方法。
本発明の物質導入方法は、食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化(膨張・収縮現象)を利用した導入法であり、物質の浸透拡散現象を利用して物質導入する従来の浸漬法と比べ、大きい導入駆動力が得られる。そのため、同一形状の食材においては、飛躍的な物質導入時間の短縮と導入量の増加が見られる。例えば、食材中心部まで調味料を導入して加工食品を製造する工程において、従来1時間以上かかった味付け工程が、数分に短縮できる。
また、本発明の物質導入方法は減圧含浸法や加圧含浸法と異なり、高価な圧力装置を必要とせず、簡便な方法で多量な物質導入を実現できる。すなわち、減圧含浸法や加圧含浸法において律速となる圧力制御工程が必要なく、大量・連続生産が可能となるため、従来法と比べ導入コスト及び製造コストを抑えられる。
さらに、本発明の物質導入方法は、食材及び導入物質の接触時の温度を調整することで、食材内気体の膨張・収縮の程度を調整することができ、発現する導入駆動力を任意に制御できる。すなわち、食材内に導入する物質の導入量及び/又は導入深度を任意に制御できる。食材の降温工程中は前述した導入駆動力が継続して発現するため、降温工程中に複数の導入物質に別途接触させることで、食材内部に物質を段階的(層状)に導入することもできる。導入物質に粘性などの性質をもたせることで、導入後の物質の拡散を抑制することも可能である。この性質を利用し、複数物質を段階的に導入した新規食品の製造が可能である。
本発明の物質導入方法で導入可能な物質は塩類や単糖類などの低分子物質に限らず、多糖類や酵素などの高分子物質も導入可能である。さらに加熱法や加圧加熱法と異なり、導入物質に熱を加える工程がないため、加熱分解を受けやすいビタミン類等の栄養成分なども導入できる。さらに減圧法と異なり、導入物質を減圧処理する工程がないため、減圧下で揮発しやすい香気成分や、発泡しやすい重曹液、粘性物質なども導入できる。すなわち、機能性成分や香気成分などこれまでに食材に多量に導入することが困難だった物質を高含有する新規食品も製造できる。
[物質導入方法]
本発明は、外観で認識可能な形状を保持した食材内への物質導入方法を提供するものであり、食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させる物質導入方法である。
(1)食材
本発明に用いられる外観で認識可能な形状を保持した食材とは、外観から食材そのものが何の食材であるかを十分認識できる形状を保持した食材である。このような形状保持食材は、元の組織構造を有するものであり、ミキサーなどですり潰し、食材組織が崩壊した流動食やペースト食は対象としない。通常の食事で食する形状ある食材を利用でき、食材をそのまま利用することもできるし、切断して利用することもできる。切断して調製する場合は、例えば、銀杏切り、輪切り、半月切り、短冊切り、スライス切り、乱切りなどで調製された食材とすることができる。
このような食材の種類としては動物性素材および植物性素材のいずれであってもよく、生の状態の食材や、煮る、焼く、蒸す、揚げるなどの加熱や調理した食材も用いることかができる。具体的には、動物性素材としては、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉、羊肉、猪肉などの肉類、鯛、鮪、鯵、鯖、鰯、鱈、鰤、鮭、赤魚、ホッケ、イカ、タコ、ホタテ、アサリ、ハマグリなどの魚介類等が挙げられる。また、植物性素材としては、ダイコン、ニンジン、牛蒡、筍、生姜、キャベツ、白菜、アスパラガス、葱、玉葱、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、胡瓜、茄子、インゲンなどの野菜類、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、カボチャなどの芋類、大豆、小豆、金時豆、黒豆、エンドウ豆、ひよこ豆などの豆類、米、小麦、粟などの穀類、みかん、りんご、もも、サクランボ、梨、パイナップル、バナナ、イチゴ、梅、栗などの果実類、椎茸、シメジ、エノキ、ナメコ、松茸、エリンギなどのキノコ類、コンブ、海苔、ヒジキなどの藻類等が挙げられる。さらに上記食材を加工した加工食品であってもよい。加工食品としては、肉団子、ハンバーグ、焼売などの畜肉練製品、卵焼き、オムレツ、ゆで卵などの卵製品、蒲鉾、竹輪などの水産練製品、漬物、総菜、麺類、各種菓子など、いずれの加工食品であってもよい。また、肉じゃが、筑前煮などの総菜でもよい。これら加工食品は、再成型によって本発明の組織構造を持った外観で認識可能な形状保持食材とすることができる。
(2)食材の前処理
食材には、物質の導入処理に先立って組織間隙を緩和する前処理を施すことができる。組織間隙を緩和することにより、後述する加熱処理による食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化及び食材内気体の膨張が可能となり、食材内に強力な物質導入駆動力が発生する。前処理により、食材の中心部まで物質を効率的に導入することができる。組織緩和の前処理方法としては、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、筋切り(テンダライズ)、タンブリング(圧延)、脱水、脱脂、乾燥、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、誘電処理、超音波処理、重曹処理、アルコール浸漬等が挙げられ、これら群から選ばれる1または2以上を組合せて処理することができる。ここで組織間隙とは、例えば、植物性食材であれば細胞と細胞が接着している細胞間隙、動物性食材であれば筋繊維タンパク質や筋原繊維タンパク質、結合繊維タンパク質などのタンパク質繊維間隙や、脂肪細胞間隙などとすることができる。
冷凍や解凍処理は食材内の水分の氷結晶生成及び融解現象により組織を緩和できる。冷凍には、一般的な冷凍装置が使用でき、−18℃などの緩慢冷凍から、−40℃などの急速冷凍も利用できる。急速冷凍では氷結晶が成長しにくく、食材によっては十分な組織緩和効果が得られない場合もあるが、加熱などの他の組織緩和方法と組み合わせることにより利用することができる。
解凍方法は、自然解凍、流水中解凍、冷蔵庫解凍や、加熱解凍、誘電加熱解凍などを用いることができる。ただし、食材からのドリップを最小限にとどめる方法が品質の面から好ましく、食材に応じて適宜選択する。
加熱処理を利用した組織緩和方法は、加熱分解による軟化によって、組織を緩和できる。とりわけ誘電加熱と過熱水蒸気加熱では、加熱による軟化とともに、食材表面の乾燥により空隙が生成されることから、相乗的に組織緩和に効果的である。肉類のように動物性食材の場合には、タンパク質を例えば65℃以上に加熱して熱変性させて収縮させることにより、組織間に空隙を設けて緩和させることができる。また一方では、例えば65℃以下の低温で加熱することにより、組織の柔軟性を残すことで組織をより緩和させることもできる。
テンダライズ、タンブリング、圧延処理は、食材の物理的破壊により組織を緩和できる。特に肉類や魚介類などの食材に用いられ、テンダライズによる筋切りにより組織の柔軟性を高めることによって組織緩和できる。テンダライザーとして、突き刺し型、ロール回転型のいずれも利用することができ、刃の密度やピッチ幅は、形状が崩壊しないように食材の大きさや厚みによって適宜選択するとよい。タンブリング処理では、食材の形状が崩壊しないように回転数を設定して処理することができる。タンブリング処理では食材への味付けなどを同時に行うこともでき、真空タンブリングを利用することもできる。圧延処理では、ミートハンマーなどを利用して食材を処理することにより組織を一部破壊して柔軟化し、組織を緩和させることができる。
脱水は、食材内の一部水分を取り除くことにより、組織内に空隙ができることから組織緩和できる。脱水方法として、遠心分離機のような装置を用いてもよく、吸水紙などの吸水作用をもつ素材に接触させて脱水しても良い。また食塩などの塩類を利用して浸透圧効果で脱水してもよい。
乾燥は食材の水分減少により空隙を生成させることで組織を緩和することができる。乾燥方法は熱風や冷風などの送風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥などが利用できる。本発明では食材内の水の相転移を利用するため、過度に乾燥させることなく、食材内の一部水分を乾燥させたのち、保管して食材内の水分分布を均質化させると食材内に空隙が増えて組織が緩和される。
酸、アルカリ処理は食材組織を変性させることにより組織緩和できる。酸処理としてはクエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸などの食品添加物が使用でき、アルカリ処理としては、炭酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの食品添加物が使用できる。酵素処理は食材表面の組織を分解することにより、食材組織を緩和する。肉類や魚類などの動物性食材では予めプロテアーゼ酵素液に浸漬し、野菜や果実類の植物性食材では予めペクチナーゼやセルラーゼ酵素液などに浸漬し、食材表面を分解することにより組織が緩和される。
(3)導入物質
食材に導入する物質は、低分子物質、高分子物質、粘性物質、及び微生物のいずれからも選択が可能で、1種または2種以上を組合せて導入することもできる。具体的には、一般的に食品の調理や加工に使用されるタンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、及び澱粉等の高分子物質及び粘性物質とともに、食用色素、ビタミン類や、鉄、カルシウム、亜鉛、ヨウ素等のミネラル類、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸などの各種アミノ酸、あるいは医療用検査食に使用されるヨード造影剤(イオパミドールなど)、バリウム造影剤(硫酸バリウムなど)等の医療用造影剤などの低分子物質も導入できる。
例えば、形状保持軟化食品を製造するためには酵素を導入し、さらに離水抑制機能を付与する場合は増粘剤や加工澱粉を導入する。また、ミネラルやビタミン類などの栄養強化食品とする場合には、それらの物質を導入する。また食材の調味も同時に行う場合には、調味料やアミノ酸等を導入する。新食感食品、機能性食品、および造影検査用食品の製造においても同様に、適宜、導入物質を選択して作製することができる。
酵素としては、例えば、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどタンパク質をアミノ酸及びペプタイドに分解する酵素、アミラーゼ、グルカナーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ、ヘミセルラーゼ、β−グルコシダーゼ、マンナーゼ、キシラナーゼ、アルギン酸リアーゼ、キトサナーゼ、イヌリナーゼ、キチナーゼなどデンプン、セルロース、イヌリン、グルコマンナン、キシラン、アルギン酸、フコイダンなどの多糖類をオリゴ糖に分解する酵素、リパーゼなど脂肪を分解する酵素、パンクレアチン、ペプシンなど食材の消化・分解作用のある酵素、タンパク質を接着するトランスグルタミナーゼなどを例示することができる。これらは1種または相互に作用を阻害しない範囲で2種以上を組み合わせて使用することもできる。
油脂としてはサラダ油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油、米油、綿実油、パーム油、豚油、牛脂、乳脂など一般的に食品として用いられる油脂を例示することができる。油脂は単独で使用しても良いし、乳化油脂として用いることもできる。あるいは乳化剤のみを導入しても良い。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルや、レシチン、カゼインナトリウムなど、食品加工に用いられる乳化剤を利用できる。
増粘剤及び澱粉としては、例えば、小麦デンプン、米デンプン、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、サツマイモデンプン、カードラン、寒天、ゼラチン、ペクチン、CMC、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガムなどを例示することができる。デンプンは加工デンプンとして利用することもできる。澱粉は未糊化状態あるいは糊化状態のいずれでも使用することができる。これらの物質を食材内に導入することで、物質の拡散を防止することもできる。これにより2種類以上の導入物質を食材内で層状に維持することもできる。
微生物としては、例えば乳酸菌、枯草菌(納豆菌)、酢酸菌、カビ(コウジカビ、アオカビなど)、酵母(ビール酵母、清酒酵母、パン酵母など)の発酵食品等で利用されている微生物を例示することができる。
導入物質を2種以上組合せて使用する場合には、複数の物質が相互に阻害しない範囲で使用する。導入物質は、食材に液体でも粉体でもどちらの状態でも提供できる。導入物質の提供方法は、食材に浸漬する、噴霧する、塗布するなどの方法で接触させてもよいし、食材に、物質を保持させた基材と接触させることでもよい。なお、導入物質を溶媒に溶解して接触する場合には、導入物質の性質に合わせて、pHを調整することもできる。酵素などのタンパク質を導入する場合には、タンパク質が変性しないようにリン酸やクエン酸、あるいはその塩類等を用いて、pH3〜10の範囲で調整するとよい。
(4)物質導入方法
本発明の物質導入方法は、(i)食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を引き起こす工程、(ii)常圧下で、食材を導入物質に接触させることで降温させる工程、(iii)食材の降温により、食材内水蒸気の凝集及び食材内気体の体積収縮を引き起こし、導入駆動力を発生させて、食材組織内に物質を導入する工程、を実施することを特徴とする。発生する導入駆動力は、既存の浸漬法で発生する浸透・拡散現象を利用した含浸駆動力よりも著しく大きい。さらに組織緩和した食材を用いることで、その食材の柔軟性を利用でき、食材内気体の体積変化が確実に起こり、物質の速やかな導入と十分な導入量を確保できる。
(i)食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を起こす工程
導入前にあらかじめ食材を加温することにより、食材内水分の気化と食材内気体の膨張が起こる。加熱時の食材内気体の体積はボイル・シャルルの法則(1)に従う。
Figure 0006920706
(式中 P:圧力 T:温度(K) V:気体体積)
すなわち、常圧下においては食材内気体の体積は温度に比例して大きくなる。理論上、食材温度(食材の中心温度)が10℃(283K)のときと比べて、食材内気体の体積は70℃(343K)のとき約1.21倍、80℃(353K)のとき約1.25倍、90℃(363K)のとき約1.28倍に膨張することになる。
さらに食材の加熱時には食材内溶存気体の気化及び食材内水分の気化が起こる。食材内の水分は気化により理論上1、700倍に体積膨張することから、加熱エネルギーによる食材内水分の気化が進む加熱条件を実施した場合には、ボイル・シャルルの法則により増加する食材内気体の膨張に加えて、更に強力な気体膨脹が起こり、強力な導入駆動力が発現する。また、食材温度の上昇に伴って起こる食材内成分の相変化(油脂の溶解など)や加熱変性(タンパク質変性)等による食材構造の軟化(柔軟性増加)は、食材の昇温による食材内気体の体積膨張をより促進する作用として働き、好都合である。
食材の昇温は、特に限定されず、食材の調理加工に用いられる従来公知の昇温方法によって行うことができる。食材の昇温後の温度は、通常40℃以上100℃以下であり、下限値は好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。食材の昇温方法としては、例えば、煮る、焼く、蒸す、揚げる等の加熱処理が挙げられる。加熱処理には、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、焼成加熱、及びジュール加熱が例示でき、伝導、輻射、対流によるいずれの加熱原理を用いても良い。
(ii)食材に導入物質を接触させて、降温させる工程
導入物質と食材の接触は、塗布、噴霧、浸漬などの方法が用いられ、導入物質は粉末状でも水などの溶媒に溶解させた溶液状態でも、あるいは溶媒に分散させた状態でも、乳化剤で乳化させた状態でも用いることができる。液体状で接触させる場合は、接触後に食材を液体から取り出してその後の処理を実施しても良く、液体に浸漬したままその後の処理を実施しても良い。
(iii)食材の降温により導入駆動力を発生させて食材組織内に物質を導入する工程
昇温後の食材を導入物質に接触させることで食材を降温させる。食材の降温温度は特に限定されないが、十分な導入駆動力を発生させるために、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。また、昇温後の食材の温度と導入物質の温度の差は、食材の温度を十分に降温させるために、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上である。なお、導入物質の温度は、食材の昇温後の温度に応じて適宜調節することができるが、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
導入駆動力の発生原理からすれば、導入駆動力をもっとも効果的に発生させる方法として、昇温した食材に対し、別途用意した食材温度より低温の導入物質を直接接触させることにより、昇温食材内で発生している膨張気体を急激に収縮させる方法とすることができ、強力な導入駆動力を得ることができる。
食材を調味液等の溶液中で加熱して昇温させる場合、食材を加熱した後、食材を溶液から取り出して、食材温度より低温の導入物質溶液に漬けかえて強力な導入駆動力を発生させる方法をとることができる。更には、溶液中で加熱して昇温した食材に、より低温の導入物質溶液を注いで溶液ごと急冷し、昇温食材と溶液の温度差を生じさせて導入駆動力を発生させることもできる。
(i)で述べたとおり、食材内気体の体積はボイル・シャルルの法則に従うため、導入物質に接触した状態で食材温度が降温するほど、食材内物質導入量は多くなる。一方で、冷却すると固化する動物性油脂や糖類などを導入物質とするときは、導入物質が溶液状態を保持できるように適宜、30〜50℃などの温度帯に調整して食材と接触する方がよい。
以上の(i)から(iii)の工程を実施することにより、高価な圧力装置を必要とすることなく、強力な物質導入駆動力を得て、短時間で物質を食材に導入することができる。
(5)導入駆動力の調整
食材が動物性素材の場合、下記数式で定義される導入駆動力S1を、好ましくは233以上、より好ましくは405以上、さらに好ましくは789以上に調節することで、食材への強力な物質導入を実施することができる。
Figure 0006920706
(式中、S1:導入駆動力、E1:食材(動物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
なお、係数a、b、cは各食材の膨張率の実測値から求められる。膨張率の実測値は式(IV)を用いて、10℃から90℃まで10℃間隔で算出する。算出した膨張率の実測値と加熱温度の関係から、最小二乗法を用いて求められる指数近似式を算出し、係数a、b、cの値を決定する。このとき、基準温度(10℃)における膨張率は100%とし、近似式はこの点を通るものとする。
=H1/H2×100 ・・・(IV)
(式中、E:食材(動物性素材)の膨張率の実測値(%)、H1:降温後の食材の硬さ、H2:昇温後の食材の硬さとする)
ここで、食材の昇温による膨張率は食材体積変化の実測値から求めることもできるが、食材の膨張は食材内気体の膨張や収縮と連動しており、気体からなる食材内空隙が変動していることから、食材の物性測定による硬さ変化で求めることができる。
食材が植物性素材の場合、下記数式で定義される導入駆動力S2を、好ましくは216以上、より好ましくは401以上、さらに好ましくは764以上に調節することで、強力な物質導入駆動力を得ることができる。
Figure 0006920706
(式中、S2:導入駆動力、E2:食材(植物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
なお、係数a、b、cは各食材の膨張率の実測値から求められる。膨張率の実測値は式(VIII)を用いて、10℃から90℃まで10℃間隔で算出する。算出した膨張率の実測値と加熱温度の関係から、最小二乗法を用いて求められる指数近似式を算出し、係数a、b、cの値を決定する。このとき、基準温度(10℃)における膨張率は100%とし、近似式はこの点を通るものとする。
=H3/H4×100 ・・・(VIII)
(式中、E:食材(植物性素材)の膨張率の実測値(%)、H3:昇温前の食材の硬さ、H4:昇温後の食材の硬さとする)
ここで、食材の昇温による膨張率は食材体積変化の実測値から求めることもできるが、食材の膨張は食材内気体の膨張や収縮と連動しており、気体からなる食材内空隙が変動していることから、食材の物性測定による硬さ変化で求めることができる。
(6)物質導入食材及び加工食品の製造方法
本発明の物質導入食材の製造方法によれば、上記の物質導入方法を用いて、食材内に、速やかにかつ大量に物質を導入できる。物質を導入した食材あるいは食品は、さらに加工処理して加工食品とすることができる。例えば、加熱、冷凍、乾燥などを行い、日持ちのよい加工食品を製造することもできるし、導入食品を加工原料として、新たな加工食品を製造することもできる。
(7)加熱装置
本発明の物質導入方法においては、食材の温度制御や導入物質の温度制御を行える加熱装置を用いることが好ましい。加熱装置としては、市販の装置を用いてもよい。例えば、家庭用の電子レンジオーブンやホットプレート、スチーマー等が挙げられる。これら加熱装置は、導入物質を保持できる溶液タンク等を具備し、食材の加熱に続いて導入物質を食材と自動で接触させ、食材への物質導入を自動で実施する装置とすることもでき、簡便に利用することもできる。
本発明の物質導入方法について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用したダイコンへの物質(色素)導入
[実施例1]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<食材の温度調製>
試料を沸騰水中で5分ボイルした。そのときの食材温度は92℃だった。食材温度とは食材の中心温度(芯温)を示し、ニードル型温度センサ(アズワン(株)製、H9631−02型)を接続した温度ロガー(アズワン(株)製、TL3663型)を使用して測定した。
<導入溶液の調製>
導入物質として食用赤色101号(三栄化学工業(株)製)を使用した。精製水に溶解して0.01%(w/v)に調製した。
<物質導入処理>
加熱直後の試料を4℃に冷却した導入溶液に5分間浸漬した。浸漬後、試料を導入溶液から取り出した。浸漬終了後の食材温度は10℃だった。
[実施例2]
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)を用いて97℃10分加温した以外は、実施例1と同様に処理した。加熱後の食材温度は95℃、浸漬後の食材温度は10℃だった。
[実施例3]
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)のコンビネーションモードを用いて120℃7分加温した以外は、実施例1と同様に処理した。加熱後の食材温度は97℃、浸漬後の食材温度は10℃だった。
[実施例4]
試料を電子レンジ(松下電器産業(株)製、NE−SU30HA)のあたためモードを用いて加熱した以外は、実施例1と同様に処理した。加熱後の食材温度は95℃、浸漬後の食材温度は10℃だった。
[実施例5]
試料を電気フライヤー(象印マホービン(株)製、EFK−A10−TJ)を用いて180℃3分加熱した以外は、実施例1と同様に処理した。フライ油はサラダ油(日清オイリオグループ(株)製)を用いた。そのときの加熱温度は97℃、浸漬後の食材温度は10℃だった。
[実施例6]
加熱直後の試料を、4℃に冷却した導入溶液を染み込ませた不織布2枚に挟み込み、5分間接触させた以外は、実施例1と同様に処理した。加熱後の食材温度は92℃、不織布に接触させた後の食材温度は30℃だった。不織布は天然パルプ製のものを10cm×10cmに成型して使用した。
[実施例7]
加熱直後の試料の表面に、4℃に冷却した導入溶液を塗布した以外は、実施例1と同様に処理した。加熱後の食材温度は92℃、導入液を塗布して5分後の試料温度は35℃だった。
[比較例1]
試料を加熱後10℃まで冷却し、4℃に冷却した導入溶液に5分間浸漬した以外は、実施例1と同様に処理した。
<物質導入の確認>
上記の実施例1〜7および比較例1で得られた試料の赤道面を2分割した。断面を写真撮影し、解析ソフトPopImaging4.0を用いて色相−10〜10、彩度65〜190、明度80〜150の色領域抽出を行って、赤色色素の導入を確認した。断面積全体に対する抽出された赤色領域面積の割合を算出し、算出結果を表1に示した。表1の結果より、食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用することで、食材の昇温方法及び物質の接触方法に依らず、ダイコンに物質を急速かつ大量に導入できることが確認された。
Figure 0006920706
(2)導入駆動力S1の調節による各種動物性素材への物質(酵素)導入
[実施例8]
<食材調製>
市販のサバの切り身(60g、1.5cm厚、冷凍)を解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズしたものを2cm幅にカットし、食材を調製した。試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)を用いて90℃で15分加熱した。室温で放熱したものを試験に用いた。
<導入物質溶液調製>
導入物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。1%食塩水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<食材の温度調製>
事前加熱済みの試料を所定の温度(92℃、82℃、72℃、62℃、52℃)のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分加熱した。40℃及び30℃は42℃及び32℃に設定した恒温器(三洋電機(株)製、MOV−212S)で試料を1時間あたためて調製した。20℃は室温、10℃は冷蔵庫で温度調製した。食材温度が各温度(90、80、70、60、50、40、30、20及び10℃)に達温したことを確認し、試験に使用した。
<導入駆動力S1の算出>
温度調製した試料を、クリープメータ((株)山電製)を用いて硬さを測定した。硬さは直径3mmのプランジャーを速度10mm/secで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とし、5個以上の試料について各2か所測定した平均値とした。硬さ測定後の試料は10℃まで冷却し、再度冷却後の硬さを測定した。これらの降温後の食材の硬さ(H1)と昇温後の食材の硬さ(H2)の測定値から食材の膨張率(E)を算出した。算出した値に基づき、下記の数式で定義される導入駆動力S1を算出した。
Figure 0006920706
(式中、S1:導入駆動力、E1:食材(動物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
なお、係数a、b、cは各食材の膨張率の実測値から求められる。膨張率の実測値は式(IV)を用いて、10℃から90℃まで10℃間隔で算出する。算出した膨張率の実測値と加熱温度の関係から、最小二乗法を用いて求められる指数近似式を算出し、係数a、b、cの値を決定する。このとき、基準温度(10℃)における膨張率は100%とし、近似式はこの点を通るものとする。
=H1/H2×100 ・・・(IV)
(式中、E:食材(動物性素材)の膨張率の実測値(%)、H1:降温後の食材の硬さ、H2:昇温後の食材の硬さとする)
本実施例の指数近似式は、E1=17.4×exp(0.0162×t)+79.6であった。導入駆動力S1の算出結果を表2に示した。
<物質導入処理>
温度調製した試料を4℃に調製した酵素液に5分浸漬し、酵素液を導入した。浸漬後の食材温度はそれぞれ10℃だった。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で16時間酵素反応した。続いて80℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
[実施例9]
試料として、市販の豚ヒレ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後に3×3×1cmにカットしたものを用いた以外は、実施例8と同様にして、導入駆動力S1の算出を行った。本実施例の指数近似式は、E1=18.2×exp(0.0171×t)+78.4であった。導入駆動力S1の算出結果を表2に示した。さらに、実施例8と同様にして、試料に物質導入処理を行った後、酵素反応及び酵素失活処理を行った。
[実施例10]
試料として、市販のトリムネ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後に2cm角にカットしたものを用いた以外は、実施例8と同様にして、導入駆動力S1の算出を行った。本実施例の指数近似式は、E1=2085×exp(0.000359×t)−1993であった。導入駆動力S1の算出結果を表2に示した。さらに、実施例8と同様にして、試料に物質導入処理を行った後、酵素反応及び酵素失活処理を行った。
[実施例11]
試料として、市販のタラの切り身(60g、1.5cm厚、冷凍)を解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後に2cm幅にカットしたものを用いた以外は、実施例8と同様にして、導入駆動力S1の算出を行った。本実施例の指数近似式は、E1=12.1×exp(0.0253×t)+84.4であった。導入駆動力S1の算出結果を表2に示した。さらに、実施例8と同様にして、試料に物質導入処理を行った後、酵素反応及び酵素失活処理を行った。
[実施例12]
試料として、市販の牛モモ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後に3×3×1cmにカットしたものを用いた以外は、実施例8と同様にして、導入駆動力S1の算出を行った。本実施例の指数近似式は、E1=138×exp(0.00539×t)−45.6であった。導入駆動力S1の算出結果を表2に示した。さらに、実施例8と同様にして、試料に物質導入処理を行った後、酵素反応及び酵素失活処理を行った。
[実施例13]
食材調製時の事前加熱を行わなかった以外は、実施例12と同様にして、導入駆動力S1の算出を行った。本実施例の指数近似式は、E1=13.0×exp(0.0225×t)+83.7であった。導入駆動力S1の算出結果を表2に示した。さらに、実施例8と同様にして、試料に物質導入処理を行った後、酵素反応及び酵素失活処理を行った。
<結果>
酵素反応及び酵素失活処理後の各試料を、訓練されたパネラーにより、下記の評価基準で官能評価を行った。評価結果を表2に示した。各動物性素材について、導入駆動力S1を調節することで、物質(酵素)を食材内部に十分導入させ、食材を十分に軟化させることができた。また、導入駆動力S1を調節することで、物質導入量を調節して、食材の軟化度合いを調節することができた。
[評価基準]
〇:10℃処理区に比べて十分に軟化していた。
△:10℃処理区に比べて軟化していた。
×:10℃処理区との差がほとんどなかった。
Figure 0006920706
(3)導入駆動力S2の調節による各種植物性素材への物質(酵素)導入
[実施例14]
<食材調製>
市販のニンジンを購入し、皮を厚めに剥いて1cm厚の銀杏切りにカットした。95℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱した。放熱後は冷凍庫で1晩冷凍し、使用時は流水で解凍して試験に用いた。
<導入物質溶液調製>
導入物質として植物組織分解酵素(カビ由来、ヤクルト薬品工業(株)製)を使用し、精製水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<試料の温度調製>
試料を所定の温度(92℃、82℃、72℃、62℃、52℃)のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分加熱した。40℃及び30℃は42℃及び32℃に設定した恒温器(三洋電機(株)製、MOV−212S)で、20℃及び10℃は恒温水槽(ヤマト科学(株)製、BB600)で温度調製した。食材温度が各温度(90、80、70、60、50、40、30、20及び10℃)に達温したことを確認し、試験に用いた。
<導入駆動力S2の算出>
温度調製した試料を、クリープメータ((株)山電製)を用いて硬さを測定した。硬さは直径3mmのプランジャーを速度10mm/secで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とし、10個以上の試料について各1か所測定した平均値とした。同様に昇温前の試料の硬さを測定した。これらの昇温前の食材の硬さ(H3)と昇温後の食材の硬さ(H4)の測定値から食材の膨張率(E)を算出した。算出した値に基づき、下記の数式で定義される導入駆動力S2を算出した。
Figure 0006920706
(式中、S2:導入駆動力、E2:食材(植物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
なお、係数a、b、cは各食材の膨張率の実測値から求められる。膨張率の実測値は式(VIII)を用いて、10℃から90℃まで10℃間隔で算出する。算出した膨張率の実測値と加熱温度の関係から、最小二乗法を用いて求められる指数近似式を算出し、係数a、b、cの値を決定する。このとき、基準温度(10℃)における膨張率は100%とし、近似式はこの点を通るものとする。
=H3/H4×100 ・・・(VIII)
(式中、E:食材(植物性素材)の膨張率の実測値(%)、H3:昇温前の食材の硬さ、H4:昇温後の食材の硬さとする)
本実施例の指数近似式は、E2=0.579×exp(0.0549×t)+99.0であった。導入駆動力S2の算出結果を表3に示した。
<物質導入処理>
温度調製した試料を4℃に調製した酵素液に5分浸漬し、酵素液を導入した。浸漬後の食材温度はそれぞれ10℃だった。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で16時間酵素反応した。続いて95℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
[実施例15]
試料として、市販のタケノコ(水煮)を1cm厚の銀杏切りにカットし30分沸騰水中でボイル後に1晩冷凍庫で冷凍し、流水解凍したものを用いた以外は、実施例14と同様にして、導入駆動力S2の算出を行った。本実施例の指数近似式は、E2=11.3×exp(0.0245×t)+85.6であった。導入駆動力S2の算出結果を表3に示した。さらに、実施例14と同様にして、試料に物質導入処理を行った後、酵素反応及び酵素失活処理を行った。
<結果>
酵素反応及び酵素失活処理後の各試料を、訓練されたパネラーにより、下記の評価基準で官能評価を行った。評価結果を表3に示した。各植物性素材について、導入駆動力S2を調節することで、物質(酵素)を食材内部に十分導入させ、食材を十分に軟化させることができた。また、導入駆動力S2を調節することで、物質導入量を調節して、食材の軟化度合いを調節することができた。
[評価基準]
〇:10℃処理区に比べて十分に軟化していた。
△:10℃処理区に比べて軟化していた。
×:10℃処理区との差がほとんどなかった。
Figure 0006920706
(4)昇温温度及び降温温度の調節によるサバへの物質(酵素)導入
[実施例16〜18]
<食材調製>
市販のサバの切り身(60g、1.5cm厚、冷凍)を解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズしたものを2cm幅にカットし、食材を調製した。試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で90℃15分加熱した。室温で放熱したものを試験に用いた。
<導入溶液調製>
導入物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。1%食塩水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<食材の温度調製>
事前加熱後の試料を所定の温度(82℃もしくは52℃)のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分加熱した。食材温度が各温度(80及び50℃)に達温したことを確認し、試験に用いた。
<食材降温履歴の測定>
80℃もしくは50℃に加熱した試料を4℃に調製した水に5分浸漬し、そのときの食材温度を記録した。食材温度とは食材の中心温度(芯温)を示し、ニードル型温度センサ(アズワン(株)製、H9631−02型)を接続した温度ロガー(アズワン(株)製、TL3663型)を使用し、センサを食材中心部まで差し込んで5秒間隔で計測した。
<浸漬時間の決定>
測定した温度履歴から、試料が80℃から60℃に降温するまでに1分20秒、80℃から30℃に降温するまでに3分40秒、50℃から30℃に降温するまでに1分50秒必要だった。
<物質導入処理>
80℃もしくは50℃に温度調製した試料を4℃に調製した酵素液にそれぞれ前記の浸漬時間に従って浸漬した。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で16時間酵素反応した。続いて80℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
<コントロール作製>
92℃のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分事前加熱した試料を、10℃まで冷却した後、4℃に調製した酵素液に所定の時間(1分20秒、1分50秒及び3分40秒)浸漬した。浸漬後は前記のとおり酵素反応及び酵素失活処理を行った。
<物性測定>
酵素反応後のサバを室温(25℃)まで冷却した後、クリープメータ((株)山電製)を用いて硬さを測定した。硬さは直径3mmのプランジャーを速度10mm/secで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とし、5個以上の試料について各2か所測定した平均値とした。各試料の硬さのコントロールの硬さに対する割合を軟化率(%)とし、表4に示した。
<結果>
各実施例において、表2に示す値から算出した導入駆動力S1の値を示した。実施例16及び17はコントロールと比べて非常に軟らかく、内部まで滑らかに軟化していた。実施例18はコントロールと比較して表面全体に渡り表面から深度3mm程度の内部が軟化しており、食感が異なった。したがって、サバの昇温温度及び降温温度を調節することで、物質導入量及び導入深度を調節することができた。
Figure 0006920706
(5)昇温温度の調節によるトリムネ肉への物質(酵素)導入
[実施例19〜22]
市販のトリムネ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後2cm角にカットし、食材を調製した。試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で90℃15分加熱した。室温で放熱したものを試験に用いた。
<導入溶液調製>
導入物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。1%食塩水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<食材の温度調製>
事前加熱後の試料を所定の温度(92℃、82℃、72℃、または62℃)のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分加熱した。食材温度が各温度(90、80、70及び60℃)に達温したことを確認し、試験に用いた。
<物質導入処理>
90℃、80℃、70℃、または60℃に加熱した試料をそれぞれ、4℃に調製した酵素液に5分間浸漬した。浸漬後の食材温度はそれぞれ10℃だった。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で16時間酵素反応した。続いて80℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
<コントロール作製>
90℃、80℃、70℃、または60℃に加熱した試料をそれぞれ、10℃に冷却した後、4℃に調製した酵素液に5分間浸漬した以外は、各実施例と同様にして酵素反応及び酵素失活処理を行った。
<物性測定>
酵素反応後のトリムネ肉を室温(25℃)まで冷却した後、クリープメータ((株)山電製)を用いて硬さを測定した。硬さは直径3mmのプランジャーを速度10mm/secで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とし、5個以上の試料について各2か所測定した平均値とした。各試料の硬さのコントロールの硬さに対する割合を軟化率(%)とし、表5に示した。
<結果>
各実施例において、表2に示す値から算出した導入駆動力S1の値を示した。実施例19〜22では、食材の昇温温度、及び食材の昇温温度と降温温度の温度差を調節することで、物質導入量を調節することができた。
Figure 0006920706
(6)降温温度の調節によるトリムネ肉への物質(酵素)導入
[実施例23〜25]
市販のトリムネ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後2cm角にカットし、食材を調製した。試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で90℃15分加熱した。室温で放熱したものを試験に用いた。
<導入溶液調製>
導入物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。1%食塩水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<食材の温度調製>
事前加熱後の試料を92℃のスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<物質導入処理>
90℃に加熱した試料を、50℃、40℃、30℃に保温した酵素液に5分間浸漬した。浸漬後の食材温度はそれぞれ50、40、30℃だった。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で16時間酵素反応した。続いて80℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
<コントロール作製>
90℃に加熱した試料を10℃に冷却した後、4℃に調製した酵素液に5分間浸漬した以外は、各実施例と同様にして酵素反応及び酵素失活処理を行った。
<物性測定>
酵素反応後のトリムネ肉を室温(25℃)まで冷却した後、クリープメータ((株)山電製)を用いて硬さを測定した。硬さは直径3mmのプランジャーを速度10mm/secで70%貫入して得られる最大応力(N/m)の値とし、5個以上の試料について各2か所測定した平均値とした。各試料の硬さのコントロールの硬さに対する割合を軟化率(%)とし、表6に示した。
<結果>
各実施例において、表2に示す値から算出した導入駆動力S1の値を示した。また、実施例19の結果を併記した。実施例23〜25では、食材の降温温度、及び食材の昇温温度と降温温度の温度差を調節することで、物質導入量を調節することができた。
Figure 0006920706
(7)昇温後の温度と導入物質の温度差及び降温温度の調節によるダイコンへの物質(調味料)導入
[実施例26]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し試験に用いた。
<導入溶液の調製>
導入溶液として濃口醤油(キッコーマン(株)製)を精製水で2倍希釈した。
<導入駆動力S2の算出>
実施例14及び15に記載の方法に従って、導入駆動力S2を算出した。
<試料の温度調製>
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で92℃10分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<物質導入処理>
加熱直後、試料を75℃に保温した導入溶液に3分浸漬した。浸漬後の品温は78℃だった。浸漬後、液を除去し、試料表面の醤油をふき取った。
[実施例27]
導入液の液温を80℃とした以外は実施例26と同様に物質導入処理を行った。浸漬後の品温は85℃だった。
[実施例28]
導入液の液温を80℃とし、浸漬時間を5分とした以外は実施例26と同様に物質導入処理を行った。浸漬後の品温は81℃だった。
<物質導入の確認>
上記の実施例26〜28で得られた試料の赤道面を2分割した。断面を写真撮影し、画像解析ソフトPopImaging4.0を用いて色相0〜23、彩度58〜180、明度0〜160の色領域抽出を行いて、醤油の導入を確認した。分割面全体に対する物質の導入面積割合を算出し、算出結果を表7に示した。昇温後の温度と導入物質の温度差及び降温温度を調節することで、ダイコンへの物質(醤油)導入量を調節できることが確認された。
Figure 0006920706
(8)ダイコンへの物質(香気成分)導入
[実施例29]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<導入溶液の調製>
導入溶液として穀物酢((株)ミツカン製)を精製水で10倍希釈した。
<試料の温度調製>
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で92℃10分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<物質導入処理>
加熱直後、試料を4℃に冷却した導入溶液に5分浸漬した。浸漬後の試料温度は10℃だった。浸漬後は液を除去し、試料表面を水洗いして軽くふき取った後、バット上に並べてラップをかけて冷蔵庫で1晩静置して、試料表面の香気成分を揮発させた。
[比較例2]
温度調製後の試料を10℃まで冷却して用いた以外は、実施例29と同様にして、試料に物質導入処理を行った。
<官能評価>
試料の表面5mmをそぎ落とし、中心部のみを評価した。6名の訓練されたパネラーA〜Fによって行い、試料から穀物酢の香りを感じるか否かを下記の基準により評価した。評価結果を表8に示した。
[評価基準]
◎:穀物酢の香りを強く感じた。
○:穀物酢の香りを感じた。
△:穀物酢の香りを微かに感じた。
×:穀物酢の香りを感じなかった。
<結果>
実施例29では6名中4名のパネラーが強い穀物酢の香りがすると評価し、2名が穀物酢の香りがすると評価した。実施例では試料の中心部まで導入液が導入しており、保存後も香気成分が保持できたと考えられた。一方、比較例2では6名中1名のパネラーが微かに穀物酢の香りを感じると評価し、5名が穀物酢の香りを感じないと評価した。比較例2では試料の中心部に導入液が導入できていなかったと考えられた。
Figure 0006920706
(9)ダイコンへの粘性物質(醤油)導入
[実施例30]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<塩分濃度の測定>
試料表面を水で洗った後、表面の水をふき取り、中心部を1.5×1.5cmの型抜きでくり抜き、1.5×1.5×2cmに成型した。成型後の試料の重量を測定し、等重量の精製水を加え、粉砕機(ミルサー800DG−C、イワタニ(株)製)で粉砕した。粉砕後の試料の塩分濃度を塩分計((株)アタゴ製、SALTMATAR)で測定し、試料中心部の塩分濃度を求めた。塩分濃度は未処理の試料(blank)の測定値との差とした。
<導入溶液の調製>
導入溶液として濃口醤油(キッコーマン(株)製)にキサンタンガム(三菱商事フードテック(株)製)を1%溶解し、粘性溶液を作製した。
<試料の温度調製>
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で92℃10分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<物質導入処理>
加熱直後、試料を4℃に冷却した導入溶液に5分浸漬した。浸漬後、液を除去し、試料中心部の塩分濃度を測定した。浸漬後の食材温度は10℃だった。
[比較例3]
温度調製後の試料を10℃まで冷却して用いた以外は、実施例30と同様にして、試料に物質導入処理を行った。
<結果>
実施例30及び比較例3の試料中心部の塩分濃度を表9に示す。実施例30では、粘性がある溶液でも、比較例と比べて中心部まで導入することができた。
Figure 0006920706
(10)ジャガイモへの物質(油脂)導入
[実施例31]
<食材調製>
市販のジャガイモ(メークイン)を2cm幅に輪切りにした後、直径2cm、厚さ2cmの円柱型に型抜きした。スチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で100℃、10分加熱した。加熱後に室温で粗熱を取ったあと、冷凍庫中で一晩冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<着色乳化油脂調整>
キャノーラ油(日清オイリオグループ(株)製)60gに対して、油脂を着色するために、0.006gズダンIII(関東化学(株)製)を添加して溶解し、着色油脂を得た。乳化剤(ポエムJ−0381V、理研ビタミン(株)製)2gを精製水140mlに溶かした乳化剤溶液を、着色油脂に加えて、粉砕機(ミルサー800DG−C、イワタニ(株)製)で30秒間攪拌し、油脂含量30%の着色乳化油脂を調製した。調製した着色乳化油脂は4℃に冷却した。
<試料の温度調製>
試料を97℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で15分間加温した。食材温度が95℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<物質導入処理>
加温したジャガイモを4℃に冷却した着色乳化油脂液に浸漬し、5分後に溶液から取り出した。浸漬後の食材温度は10℃だった。
<断面観察>
着色乳化油脂を用いて導入処理を行ったジャガイモを、周りの油をふき取った後に赤道面で輪切りにして、ジャガイモの断面を観察した。ジャガイモの断面を写真撮影し、画像解析ソフトPopImaging4.0を用いて色相0−20、彩度55−150、明度100−200の色領域抽出を行い、試料断面積における抽出領域面積の割合を算出した。
[比較例4]
温度調製後の試料を10℃まで冷却した以外は、実施例31と同様にして、試料に物質導入処理を行った。
<結果>
実施例31及び比較例4で作成したジャガイモの断面について、画像解析を行った結果を表10に示した。実施例31の95℃で加温したジャガイモでは内部まで着色油脂が導入されたが、比較例4の加温していないジャガイモでは、内部に油脂が導入されなかった。
Figure 0006920706
(11)物質の分散濃度を調節したダイコンへの物質導入
[実施例32]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<食材の温度調製>
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で92℃10分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<導入溶液の調製>
導入物質として食用赤色101号(三栄化学工業(株)製を使用した。精製水に溶解して0.01%(w/v)に調製した。さらに、導入溶液に米澱粉(松谷化学工業(株)製を分散させて澱粉濃度0.1%(w/v)に調製した。
<物質導入処理>
加熱直後の試料を4℃に冷却した導入溶液に5分間浸漬した。浸漬後、試料を導入溶液から取り出した。浸漬後の食材温度は10℃だった。
[実施例33]
導入溶液に澱粉を分散させて澱粉濃度0.3%(w/v)に調製した以外は、実施例32と同様にして物質導入処理を行った。
<物質導入の確認>
上記の実施例32及び33で得られた試料の赤道面を2分割した。断面を写真撮影し、実施例1と同様にして画像解析を行って、赤色色素の導入を確認した。分割面全体に対する物質の導入面積割合を算出し、算出結果を表11に示した。また、導入溶液に澱粉を加えていない実施例1の結果を対照として併記した。澱粉濃度を変えることで、ダイコンへの物質(色素)導入量を調節できることが確認された。
Figure 0006920706
(12)物質の分散粒度を調節したダイコンへの物質導入
[実施例34]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<食材の温度調製>
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で92℃10分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<導入溶液の調製>
導入物質として食用赤色101号(三栄化学工業(株)製を使用した。精製水に溶解して0.01%(w/v)に調製した。さらに、導入溶液に米澱粉(松谷化学工業(株)製、粒子径:2〜5μm)を分散させて澱粉濃度0.1%(w/v)に調製した。
<物質導入処理>
加熱直後の試料を4℃に冷却した導入溶液に5分間浸漬した。浸漬後、試料を導入溶液から取り出した。浸漬後の食材温度は10℃だった。
[実施例35]
導入溶液に馬鈴薯澱粉(アルドリッチジャパン(株)製、粒子径:30〜40μm)を分散させて澱粉濃度0.1%(w/v)に調製した以外は、実施例34と同様にして物質導入処理を行った。
<物質導入の確認>
上記の実施例34及び35で得られた試料の赤道面を2分割した。断面を写真撮影し、解析ソフトPopImaging4.0を用いて色相−10〜10、彩度80〜190、明度80〜150の色領域抽出を行って、赤色色素の導入を確認した。分割面全体に対する物質の導入面積割合を算出し、算出結果を表12に示した。異なる種類の澱粉を用いて粒度を調節することで、ダイコンへの物質(色素)導入量を調節できることが確認された。
Figure 0006920706
(13)ダイコンへの2種類の物質導入
[実施例36]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試験に用いた。
<食材の温度調製>
試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で92℃10分加熱した。食材温度が90℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<導入溶液の調製>
導入物質としてクチナシ色素 緑(共立食品(株)製)を精製水に溶解して0.03%(w/v)に調製して、緑色導入溶液を得た。また、導入物質として食用赤色101号(三栄化学工業(株)製)を精製水に溶解して0.01%(w/v)に調製して、赤色導入溶液Aを得た。さらに、導入物質として食用赤色101号(三栄化学工業(株)製)0.01%及びとろみ調整剤((株)サナス製)1.5%を精製水に溶解して、粘性を有する赤色導入溶液Bを得た。
<物質導入処理>
加熱直後の試料を4℃に冷却した緑色導入溶液に3分間浸漬した後、4℃に冷却した赤色導入溶液Aに1分間浸漬した。浸漬後、赤色試料を導入溶液から取り出した。緑色導入溶液に浸漬後の食材温度は50℃、赤色導入溶液Aに浸漬後の食材温度は30℃だった。
[実施例37]
加熱直後の試料を4℃に冷却した緑色導入溶液に3.5分間浸漬した後、4℃に冷却した赤色導入溶液Aに0.5分間浸漬した以外は、実施例36と同様にして物質導入処理を行った。緑色導入溶液に浸漬後の食材温度は45℃、赤色導入溶液Aに浸漬後の食材温度は30℃だった。
[実施例38]
加熱直後の試料を4℃に冷却した緑色導入溶液に3.5分間浸漬した後、4℃に冷却した赤色導入溶液Bに0.5分間浸漬した以外は、実施例36と同様にして物質導入処理を行った。緑色導入溶液に浸漬後の食材温度は45℃、赤色導入溶液Bに浸漬後の食材温度は30℃だった。
<物質導入の確認>
上記の実施例36〜38で得られた試料の赤道面を2分割した。断面を写真撮影し、実施例1と同様にして画像解析を行って、各色素の導入を確認した。分割面全体に対する物質(赤色色素)の導入面積割合を算出し、算出結果を表13に示した。2種類の色素を時間差で段階的に導入することで、断面の着色度合いを調節できることが確認された。また、赤色色素とともに粘性を有する物質を導入することで、食材内で赤色色素が拡散せずに側面のみを赤色に着色できることが確認された。
Figure 0006920706
(14)ダイコンからの成分除去
[実施例39]
<食材調製>
市販のダイコンを2cm厚の輪切りした後、中心部を3.5×3.5cmの型抜きでくり抜き、3.5×3.5×2cmに成型した。成型後の試料はスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃20分加熱した。加熱後は荒熱をとり、1晩冷凍庫で冷凍した。冷凍後の試料を流水で解凍し、試料重量に対し、8%の食塩を添加し、さらに8%の食塩水を加えて1晩塩漬した。後述の塩分濃度の測定方法に従い、試料中心部の塩分濃度を測定した結果、4.98%だった。
<塩分濃度の測定>
試料表面を水で洗った後、表面の水をふき取り、中心部を1.5×1.5cmの型抜きでくり抜き、1.5×1.5×2cmに成型した。成型後の試料の重量を測定し、等重量の精製水を加え、粉砕機(ミルサー800DG−C、イワタニ(株)製)で粉砕した。粉砕後の試料の塩分濃度を塩分計((株)アタゴ、SALTMATAR)で測定し、試料中心部の塩分濃度を求めた。
<導入溶液の調製>
導入物質として植物組織分解酵素(カビ由来、ヤクルト薬品工業(株)製)を使用した。精製水に溶解して0.1%(w/v)に調製した。
<試料の温度調製>
塩漬後の試料をスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で95℃10分加熱した。食材温度が93℃に達温したことを確認し、試験に用いた。
<酵素液導入処理>
加熱直後、試料を4℃に冷却した導入溶液に5分浸漬した。浸漬後の食材温度は10℃だった。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で1時間酵素反応した。続いて95℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で10分加熱して、酵素を完全に失活させた。
<成分除去工程>
失活直後の試料を4℃に冷却した精製水に5分浸漬した。その後前述の方法に従って中心部の塩分濃度を測定した。
[比較例5]
温度調製後の導入溶液を精製水として、酵素を導入しなかった以外は、実施例39と同様に処理した。
[比較例6]
温度調製後及び再加熱後に試料を10℃まで冷却した以外は、比較例5と同様に処理した。
<結果>
実施例39、比較例5及び6の試料中心部の塩分濃度を表14に示す。試料に酵素液を導入することで、塩分除去を促進できた。
Figure 0006920706
(15)市販の加熱機器を用いたトリムネ肉への物質(酵素)導入
[実施例40〜42]
<試料調製>
市販のトリムネ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後2cm角にカットし、食材を調製した。
<加熱機器1>
実施例40において電子レンジ((株)東芝製、T−E17B)を用いた。本電子レンジは、冷却した導入物質溶液を供給できる物質溶液タンクが備わり、加熱終了後に食材容器内に導入物質溶液が供給される仕組みとなっている。
<加熱機器2>
実施例41においてホットプレート(パナソニック(株)製、KZ−HP2000)を用いた。本ホットプレートは、冷却した導入物質溶液を供給できる物質溶液タンクが備わり、加熱終了後に食材容器内に導入物質溶液が供給される仕組みとなっている。
<加熱機器3>
実施例42において蒸し器(アカオアルミ(株)製、角型蒸器26cm)を用いた。本蒸し器は、冷却した導入物質溶液を供給できる物質溶液タンクが備わり、加熱終了後に食材容器内に導入物質溶液が供給される仕組みとなっている。
<導入物質溶液調製>
導入物質としてタンパク質分解酵素(植物由来プロテアーゼ、新日本化学工業(株)製)を使用した。1%食塩水に溶解して0.05%(w/v)に調製した。
<食材の温度調製>
加熱機器1〜3を使用してトリムネを加熱した。加熱機器1では500Wで1分マイクロ波加熱し、加熱機器2ではホットプレート上に設置したアルミ容器内で10分(表面5分、裏面5分)焼成加熱し、加熱機器3では硬質容器内で10分蒸煮加熱して、トリムネ温度を90℃に昇温した。
<物質導入処理>
加熱処理後、付属した物質溶液タンクから自動で導入物質溶液(10℃に調整した酵素液)を食材容器内に注入して食材に接触させ、トリムネを急速に降温させて導入駆動力を発生させた。導入した酵素液中に5分浸漬して、トリムネ内部まで酵素液を導入した。5分後のトリムネ温度は、いずれも20℃に降温した。
<酵素反応及び酵素失活処理>
酵素液を導入後、試料を酵素液から取り出して、4℃に設定した冷蔵庫内で16時間酵素反応した。続いて80℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱して、酵素を完全に失活させた。
<結果>
加熱機器1〜3で加熱処理したあと冷酵素液に浸漬して酵素導入したトリムネは、酵素処理しなかったトリムネと比較して、いずれも約3分の1の軟らかさに調整された。市販の加熱機器を用いても物質を導入できることが分かった。
(16)食材への物質(微生物)導入
[実施例43]
<食材調製>
市販のトリムネ肉を1晩冷凍庫で冷凍したものを解凍し、筋切機(JACCARD製)でテンダライズした後3×3×1cmにカットし、食材を調製した。
<導入溶液の調製>
導入溶液として、芽胞菌液(Bacillus subtilis、1.9×10cfu/ml)1mlを滅菌生理食塩水で10倍希釈し、80℃10分加温して加熱活性化した後、滅菌生理食塩水で30倍に希釈して6.3×10cfu/mlの芽胞菌液を調製した。
<試料の温度調製>
試料を沸騰水中で5分加熱した。食材温度が90℃以上になっていることを確認し、試験に用いた。
<導入溶液導入処理>
加熱直後、試料を4℃に冷却した導入溶液に5分浸漬した。浸漬後の食材温度は10℃だった。浸漬後、液を除去し、試料表面を滅菌生理食塩水で洗浄した後、試料中に導入した芽胞菌数を測定した。
<コントロール作製>
温度調製後の試料を4℃の滅菌生理食塩水に5分浸漬した。
<芽胞菌数測定方法>
導入処理後の試料をストマッカー袋に採取し、全体重量が試料の10倍となるよう滅菌生理食塩水を加えた後、ストマッカー(オルガノ(株)製)で2分間破砕処理した。破砕処理後の試料液を滅菌生理食塩水を用いて段階希釈した後、希釈した試料液1mlを標準寒天培地(日本製薬(株))を用いて混釈培養(30℃、48時間)し、発現したコロニー数を計測した。
[実施例44]
試料にニンジンを使用した以外は実施例43と同様に処理した。ニンジンは、皮を厚めに剥いて1cm厚の銀杏切りにカットした。95℃に設定したスチームコンベクションオーブン((株)マルゼン製、SSC−04MSC型)で20分加熱した。放熱後は冷凍庫で1晩冷凍し、使用時は流水で解凍して試験に用いた。
<結果>
実施例及びコントロールの菌数測定の結果を表15に示す。実施例43及び44において、多量の微生物を食材内に導入できた。
Figure 0006920706

Claims (13)

  1. 食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を導入する方法(但し、減圧処理により導入駆動力を発生させる方法を除く)であって、
    食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を引き起こし、
    続いて、常圧下で、食材を導入物質に接触させることで降温させ、
    食材内水蒸気の凝集及び食材内気体の体積収縮を引き起こすことにより発生する導入駆動力を調節して、食材内への物質の導入量及び/又は導入深度を制御することを特徴とする、食材への物質導入方法。
  2. 食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を導入する方法であって、
    前記食材が動物性素材であり、
    食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を引き起こし、
    続いて、常圧下で、食材を導入物質に接触させることで降温させ、
    食材内水蒸気の凝集及び食材内気体の体積収縮を引き起こすことにより発生する下記数式で定義される導入駆動力S1を233以上に調節して、食材内への物質の導入量及び/又は導入深度を制御することを特徴とする、食材への物質導入方法。
    Figure 0006920706
    (式中、S1:導入駆動力、E1:食材(動物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
  3. 食材の温度昇降による食材内の気体の体積変化を利用して導入駆動力を発生させて、外観で認識可能な形状を保持した食材内に物質を導入する方法であって、
    前記食材が植物性素材であり、
    食材を昇温させ、食材内溶存気体の気化、食材内水分の気化、及びこれらを含む食材内気体の体積膨張を引き起こし、
    続いて、常圧下で、食材を導入物質に接触させることで降温させ、
    食材内水蒸気の凝集及び食材内気体の体積収縮を引き起こすことにより発生する下記数式で定義される導入駆動力S2を216以上に調節して、食材内への物質の導入量及び/又は導入深度を制御することを特徴とする、食材への物質導入方法。
    Figure 0006920706
    (式中、S2:導入駆動力、E2:食材(植物性素材)の理論上の膨張率(%)、t:降温後の温度(℃)、t:昇温後の温度(℃)、a、b、cは係数とする。)
  4. 前記食材の昇温後の温度が、40℃以上100℃以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  5. 前記食材の昇温後の温度と前記導入物質の温度の差が、10℃以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  6. 前記導入物質が、タンパク質、油脂、酵素、多糖類、増粘剤、乳化剤、澱粉、及び微生物からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  7. 前記食材の昇温方法として、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、焼成加熱、及びジュール加熱からなる群から選択される少なくとも一種を利用する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  8. 前記食材の前処理工程として、冷凍、湿熱加熱、誘電加熱、飽和水蒸気加熱、過熱水蒸気加熱、加圧加熱、焼成加熱、ジュール加熱、筋切り、タンブリング、脱水、脱脂、乾燥、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、誘電処理、超音波処理、重曹処理、アルコール浸漬からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  9. 前記導入物質の提供方法が、浸漬、噴霧、塗布、及び物質保持基材との接触からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  10. 前記食材内に2種類以上の導入物質を層状に導入する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  11. 食材の温度及び導入物質の温度を制御できる加熱装置を用いる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の食材への物質導入方法を用いる、物質導入食材の製造方法。
  13. 請求項12に記載の方法により製造された物質導入食材を用いる、加工食品の製造方法。
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