JP2023155633A - 酸性軟化改質剤、並びにこれを用いた食品の軟化改質方法及び軟化食品の製造方法 - Google Patents

酸性軟化改質剤、並びにこれを用いた食品の軟化改質方法及び軟化食品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 pHを酸性側に変動させ、調味料や日持ち向上剤との併用による双方の効果の低下を引き起こすことなく、歩留まりの向上、食感の改良などを可能とする酸性軟化改質剤を提供することを目的とする。【解決手段】 本開示は、(1)酵素、(2)穀類のぬか、(3)麹、及び(4)酢を含む食品の酸性軟化改質剤に関する。本開示は、(1)酵素、(2)穀類のぬか、(3)麹、(4)酢及び(5)こんにゃく粉を含む食品の酸性軟化改質剤に関する。本開示は、当該酸性軟化改質剤を用いたタンパク質食材の軟化方法、及び前記酸性軟化改質剤を含むタンパク質食材の製造方法に関する。【選択図】 図1-1

Description

本開示は、タンパク質食品の酸性軟化改質剤、並びにこれを用いた食品の軟化改質方法及び軟化食品の製造方法に関する。特に、本開示は、酵素、穀類のぬか、麹及び酢を含む酸性軟化改良剤、当該酸性軟化改良剤を用いた食品の軟化改質方法、及び当該酸性軟質改良剤を用いた食品の製造方法に関する。
肉、魚介類等の食品を対象とする、食感の改良のための品質改良剤があるが、これらはアルカリ性のものが多い。例えば、畜肉などの肉類を軟らかく仕上げるために、肉類の保水性を高めことが行われるが、肉類の保水性は、筋タンパク質の等電点に相当するpH5付近で最小を示し、これよりアルカリ性では筋繊維が大きく広がり、保水性が大きく改善する。この現象は、アルカリ性におけるよりは効果が弱まるが、等電点より酸性側でも起こる。酸性側にpHを変化するためには、酢、ワインなどを使用することが考えられるが、酢又はワインのみでは保水性が十分でなく、実用性に欠けるという問題がある。また、pHが低すぎる(酸性側に大きくpHを変化させる)と、肉類の軟化(品質改良)が進む前に肉類の表面のタンパク質が変性し、表面が白色に変化し、歩留まりが低下して食感の改良が困難となるという問題もある。また、低pHによる肉類への影響は味の面でも現れ、低pHにより食品の腐敗を連想させる酸味が発生してしまうという課題もある。
肉類の品質の改良に、酵素を使用することも知られている。酵素を酸性の肉類の改質剤に添加すると、肉類の繊維の破壊が更に促進され、保水性が低下することに繋がる。これは、肉類の食品の歩留まりを悪化する。このため、酸性の品質改良剤と酵素との併用は、歩留まりを大きく低下させる場合があるため、困難であるといわれている。
例えば、酸性の品質改良剤ではないが、畜肉の品質を改善する添加剤として、酵素を含む改質剤が知られている。例えば、特開2001-000148号公報(特許文献1)には、軟らかく、ジューシー感のある畜肉加工食品を歩留まりよく製造することが可能な畜肉用品質改良剤及びこれを用いた畜肉加工食品の製造法及び得られる畜肉加工食品が開示されている。この文献には、膨張剤と食物繊維及び/又はグルコン酸塩とが有効成分として含有されること、食物繊維がグアーガム酵素分解物、水溶性大豆繊維、難消化性デキストリン及び水溶性ヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種であることが開示されている。
食品、特に畜肉、魚介類向けの品質改良剤は、調味料、日持ち向上剤などと併用されるが、これらは酸性のものも存在する。このような調味料、日持ち向上剤などをアルカリ性の品質改良剤と組み合わせると、双方の効果が低下することになる。
肉の軟化改質剤を開示するものとして、例えば、国際公開第2010/126165号(特許文献2)がある。この文献の軟化改質剤は、乳酸カルシウム、有機酸、アミノ酸及び糖質を含む。この文献は、牛肉などの肉類の軟化改良剤として上記構成を開示するが、酸性にpHを変動させた、食感を改良するための軟化改良剤の記載はない。
特開2001-000148号公報 国際公開第2010/126165号
本開示は、食材を軟化せることにより、食感などを改善するための品質改良剤であって、当該改良剤のpHを酸性側に変動させ、調味料や日持ち向上剤との併用による双方の効果の低下を引き起こすことなく、歩留まりの向上、食感の改良などを可能とする酸性軟化改質剤を提供することを目的とする。
本開示の第1は、食材の酸性軟化改質剤である。第1の態様では、この酸性軟化改質剤は、
(1)酵素、
(2)穀類のぬか、
(3)麹、及び
(4)酢
を含む。
本開示の酸性軟化改質剤の第2の態様では、酸性軟化改質剤は、
(1)酵素、
(2)穀類のぬか、
(3)麹、
(4)酢、及び
(5)こんにゃく粉
を含む。
本開示の酸性軟化改質剤の(1)酵素はプロテアーゼであることが好ましい。
本開示の酸性軟化改質剤の(2)穀類のぬかは米ぬかであることが好ましい。
本開示の酸性軟化改質剤の(3)麹は米麹であることが好ましい。
本開示の酸性軟化改質剤の(4)酢は穀類の酢であることが好ましい。
本開示の第2は、タンパク質食材を軟化させる方法である。この方法は、
(a)本開示の酸性軟化改質剤を提供する工程と、
(b)工程(a)の前記酸性軟化改質剤と、タンパク質食材を混合する工程と
を含む。
本開示の第3は、本開示の酸性軟化改質剤を含むタンパク質食材の製造方法である。この製造方法は、
(a)本開示の酸性軟化改質剤を提供する工程と、
(b)工程(a)の酸性軟化改質剤と、タンパク質食材を混合する工程と
を含む。
本開示は、上記本開示の酸性軟化改質剤を含むタンパク質食材を包含する。
本開示の酸性軟化改良剤は、調味料や日持ち向上剤との併用による双方の効果の低下を引き起こすことなく、歩留まりの向上、食感の改良などを実現する。
本開示の第1の態様の一実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定の結果を示すグラフである。 本開示の第1の態様の一実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定(かみ応え)の結果を示すグラフである。 本開示の第1の態様の別の実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定の結果を示すグラフである。 本開示の第1の態様の別の実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定の結果を示すグラフである。 本開示の第1の態様の別の実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定の結果を示すグラフである。 本開示の第1の態様の別の実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定の結果を示すグラフである。 本開示の第2の態様の一実施形態の酸性軟化改質剤の物性測定の結果を示すグラフである。
本開示は、動物性タンパク質食材など(例えば、畜肉、獣肉、魚介類など)のタンパク質食材(以下、単にタンパク質食材又は食材とも称する)、特に、畜肉を軟化する酸性軟化改質剤に関する。本開示の酸性軟化改質剤は、タンパク質食材の歩留まりを改善することができる。更に、本開示は、当該酸性軟化改質剤を使用したタンパク質食材を軟化する方法、並びに、当該酸性軟化改質剤を使用したタンパク質食材の製造方法に関する。また、本開示は、タンパク質食材を本開示の酸性軟化改質剤で処理したタンパク質食材に関する。
本開示の第1は、タンパク質食材の酸性軟化改質剤である。本開示の第1の態様の酸性軟化改質剤は、
(1)酵素、
(2)穀類のぬか、
(3)麹、及び
(4)酢
を含む。
以下に各成分について説明する。
(1)酵素(プロテアーゼ)
本開示の酸性軟化改質剤は酵素を含む。酵素は、本開示の酸性軟化改質剤の成分(2)~(4)と共に使用することで、タンパク質食材(好ましくは畜肉、獣肉、魚介類など)を軟化し、タンパク質食材の食感、及び歩留まりを改善することができる。本開示では、酵素はこのような目的を実現できるものであれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、酵素は、タンパク質食材、例えば、畜肉、獣肉、魚介類などの食材、好ましくは畜肉に使用しうるものであれば、特に限定されない。本開示では、酵素は、プロテアーゼを含む。プロテアーゼは、動物由来、植物由来又は菌由来のものであってよい。
プロテアーゼの例としては、コラゲナーゼ、エラスチナーゼ、ペプチダーゼ、カルボキシプロテアーゼなどを挙げることができる。その他、菌由来のプロテアーゼの例としては、バチルス属細菌に由来するプロテアーゼ(中性及びアルカリ性プロテアーゼ)、アスペルギルス属真菌に由来するプロテアーゼ(酸性、中性及びアルカリ性プロテアーゼ)などを挙げることができる。菌由来のプロテアーゼの具体例は、例えば特許第6756333号などに開示されているものがある。プロテアーゼは、単独又は2種以上を用いることができる。
酵素は、製剤(例えば複数の酵素を組み合わせたもの)の形態であってよい。例えば、酵素製剤はプロテアーゼを含むものであればよい。酵素は単体の形態であってもよい。
酵素製剤及び単体の酵素は、市販品を使用することができる。
本開示の酸性軟化改質剤では、酵素は、使用に際して、酸性軟化改質剤が300U/g~2500U/g、好ましくは500U/g~1500U/g、より好ましくは700U/g~1000U/gの活性値を有するように配合されることが好ましい。また、本開示の酸性軟化改質剤に使用される酵素自体の活性は、10000U/g~50000U/g、好ましくは20000U/g~40000U/gである。
本開示の酸性軟化改質剤における酵素(プロテアーゼ)の含有量は、上記の好ましい活性範囲を有する場合、酸性軟化改質剤の全重量(溶媒を含む)を基準として0.1重量%~1重量%、好ましくは0.1重量%~0.5重量%である。また、溶媒を含まない酸性軟化改質剤を基準(固形分)にした場合、酵素(プロテアーゼ)の含有量は、上記の好ましい活性範囲を有する場合、1重量%~15重量%、好ましくは、2重量%~10重量%である。
(2)ぬか
本開示の酸性軟化改質剤はぬかを含む。ぬかは、pH緩衝能が大きいと考えられ、本開示の酸性軟化改質剤においてpH緩衝能を発揮すると考えられる。理論に拘束されることを意図しないが、ぬかは有機酸及びその塩類が含まれており、これらの有機酸類によって酸味を低減させながらpHを低下させることが期待でき、緩衝能の維持に効果を発揮していると考えられる。加えて、ぬかは、食物繊維も豊富であり、食物繊維は保水性に効果を発揮すると考えられ、歩留まりの低下を抑制する効果が期待できる。結果的に、歩留まりのサポート及びタンパク質の繊維を広げることによる食感改良に効果が期待できる。本開示では、ぬかは、本開示の他の成分と共に畜肉、魚介類などのタンパク質食材の軟化に寄与できるものであれば、特に限定されない。本開示の酸性軟化改質剤の目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ぬかは、米、麦、粟、きび、ひえ等の穀類のぬかが好ましく、米ぬかが特に好ましい。
ぬかは、1種類で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ぬかは、穀類を精製(例えば米であれば精米)する際に生産されるもの、米ぬか抽出物、その他、市販品などを好適に使用することができる。
本開示の酸性軟化改質剤では、成分(1)、(3)及び(4)に加え、ぬかを含むことで、畜肉、魚介類などの食材に対して、特に優れた軟化効果を実現し、食感及び歩留まりを改善することができる。
本開示の酸性軟化改質剤おけるぬかの含有量は、酸性軟化改質剤を基準(固形分)にした場合、ぬかの含有量は、5重量%~40重量%、好ましくは、5重量%~30重量%である。
(3)麹
本開示の酸性軟化改質剤は麹を含む。理論に拘束されることを意図しないが、麹、特に米麹は麹菌の培養工程において産生されるクエン酸などの有機酸類を含む。ミネラルやアミノ酸が豊富に含まれており、このアミノ酸は保水性に効果を発揮することもあるため歩留まり低下を防止する効果が期待できる。なお、これらのクエン酸を代表とする有機酸類とアミノ酸などの成分の割合によって過度な酸味の低減、肉の酸変性を抑える効果も期待できる。また、麹由来のプロテアーゼ類などの活性物質が含まれている場合もあり、これらの効果で肉質の軟化効果が期待できる。本開示では、麹は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、麹は、米、麦、豆類(例えば大豆、エンドウ豆等)などに由来するものが好ましく、米麹が特に好ましい。
麹は、1種類で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本開示の酸性軟化改質剤は、上述した成分(1)~(3)に加え、後述する成分(4)酢を含むが、これらの成分を併せて含むことで、畜肉、魚介類などの食材に対して、特に優れた軟化効果を実現し、食感及び歩留まりを改善することができる。醸造酢などの酢を含めた本開示の酸性軟化改質剤において、酸性成分が多くなると酸っぱさが増加することがある。このため、麹以外の成分による影響を抑えつつ、麹以外の成分と共に、酸性軟化改質剤自体を酸性にするために、麹を添加することが好ましい。
本開示の酸性軟化改質剤おける麹の含有量は、酸性軟化改質剤を基準(固形分)にした場合、麹の含有量は、1重量%~30重量%、好ましくは、5重量%~30重量%である。
(4)酢
本開示の酸性軟化改質剤は、酢を含む。酢は、酢酸を中心とした有機酸によってpHを低下させる効果があり、pHを肉の等電点から酸性側にずらすことでタンパク繊維を広げ、タンパク質食材を軟化させる効果が期待できる。酢は、食酢、例えば醸造酢、果物由来の果実酢などを含むことができる。食酢は、本開示の他の成分と共に畜肉、魚介類などのタンパク質の軟化に寄与できるものであれば、特に限定されない。また、食品に用いることができる食酢であれば、特に限定されない。食酢は、醸造酢及び合成酢のいずれを用いることができる。醸造酢は特に限定されないが、例えば、米酢、玄米酢、粕酢、麦芽酢及びはと麦酢等の穀物酢、りんご酢、ぶどう酢、シェリー酢、バルサミコ酢、ザクロ酢、パイナップル酢等の果実酢、並びに醸造アルコールを原料に製造されるアルコール酢を挙げることができる。また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸の希釈液に砂糖類、酸味料、調味料、甘味料及び食塩等を加えたもの、或いはそれらに醸造酢を加えたものを挙げることができる。本開示の酸性軟化改質剤の酢、特に食酢としては、醸造酢が好ましく、醸造酢のなかでも穀類の酢がより好ましい。特に好ましい酢は米酢である。
本開示の酸性軟化改質剤に使用される食酢は、溶液などの液体状のものであってよく、粉末状のものであってもよい。液体状の酢としては、特に限定されないが、4~5%程度の酸度(酢酸を初めとする酸成分全体の重量%)を含む食酢を挙げることができる。なお、より酸度の高い酢を、酸度が当該範囲となるように希釈して使用することもできる。また、粉末状の酢としては、液体状の酢を噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥(フリーズドライ)、真空減圧乾燥又はドラム乾燥法などで粉末化したものを挙げることができる。
本開示の酸性軟化改質剤においては、酢を多量に使用すると酸っぱさが増強され、タンパク質食材の風味が保てず、好ましくない。また、酢を単体で使用すると酸による酸味及びタンパクの酸変性がタンパク質食材の改質よりも先に起こることがある。これを防止する観点から、上記のぬか及び/又は麹と共に酢を用いることが好ましい。本開示の酸性軟化改質剤において、酢の含有量は酸性軟化改質剤を基準(固形分)にした場合、酢の含有量は、1重量%~10重量%、好ましくは、1重量%~8重量%である。
本開示の酸性軟化改質剤では、成分(1)~(3)に加え、酢を含むことで、畜肉、魚介類などの食材に対して、特に優れた軟化効果を実現し、食感及び歩留まりを改善することができる。
本開示の酸性軟化改質剤の第2の態様では、酸性軟化改質剤は、
(1)酵素、
(2)穀類のぬか、
(3)麹、
(4)酢、及び
(5)こんにゃく粉
を含む。
第2の態様の酸性軟化改質剤の成分(1)~(4)は、先に説明したとおりである。
第2の態様の酸性軟化改質剤では、上記成分(1)~(4)に加えて、(5)こんにゃく粉を更に含む。こんにゃく粉は、コンニャクイモ由来の増粘多糖類(グルコマンナンを中心とする多糖類)が含まれており、タンパク質食材、例えば畜肉等のタンパク質の表面で水分を保持しながら、タンパク質同士の吸着及び多糖類による皮膜の形成が期待でき、タンパク質食材内の水分の流出を防止し、歩留まりの向上及び食感の改善が期待できる。本開示では、ぬか、麹及び酢と併用することが歩留まりの改善及び食感の改善のために、特に好ましい。
本開示の第2の態様の酸性軟化改質剤において、こんにゃく粉の含有量は、酸性軟化改質剤を基準(固形分)にした場合、5重量%~20重量%、好ましくは、8重量%~20重量%である。
本開示の酸性軟化改質剤は、水などの溶媒に溶解した処理液(以下単に処理液とも称する)の状態で、pH値を3~6、好ましくは3.5~5、より好ましくは4~5に調整されることが望ましい。また、本開示の酸性軟化改質剤の各成分のpHは、処理液のpH値が、上記の範囲となるように各成分(1)~(4)のpHを選択すればよく、各成分(1)~(4)のpH範囲は特に限定されない。
<酸性軟化改質剤の調製方法>
本開示の酸性軟化改質剤は、上記成分(1)~(4)、又は成分(1)~(5)を、水などの溶媒中に溶解し、混合することにより、処理液に調製することができる。得られた処理液のpHは、上述の範囲に調整されることが好ましい。pHを上記範囲に調整することで、歩留まり及びタンパク質食材の軟化を改善することができる。
上記成分(1)~(4)、又は成分(1)~(5)により、本開示の酸性軟化改質剤を酸性にすることができ、タンパク質食材を含む食品を軟化して、当該食品の歩留まり及び食感を改善することができる。
本開示の酸性軟化改質剤は、粉末状の上記各成分を使用し、他の任意成分と混合することで粉末として調製することもできる。また、本開示の酸性軟化改質剤は、上述のように調製した溶液状の酸性軟化改質剤を準備し、得られた溶液を噴霧乾燥等により乾燥して粉末として調製することもできる。粉末の酸性軟化改質剤は、使用に際してそのまま食材に添加することができる。あるいは、粉末の酸性軟化改質剤を水などに溶解し、適切な濃度の水溶液として食材に添加又はタンブリングすることができる。
本開示の酸性軟化改質剤を溶液として使用する場合は、酸性軟化改質剤は、使用する食材に対して10重量%以上、好ましくは30重量%以上の量で加えることができる。本開示の酸性軟化改質剤を溶液とする場合、溶媒は、好ましくは水である。本開示の酸性軟化改質剤を粉末として使用する場合は、酸性軟化改質剤は、使用する食材に対して0.05重量%~15重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは1~5重量%の濃度で使用することができる。
本開示の酸性軟化改質剤には、食感を調整する目的で種々の追加の添加剤を含んでいてもよい。例えば、本開示の酸性軟化改質剤には調味料、日持ち向上剤などを混合することができる。これらの添加剤は特に限定されない。食材に一般的に使用できるものであれば制限なく使用できる。また、調味料、日持ち向上剤などの濃度は、本開示の酸性軟化改質剤を使用した製品の食感、風味などに影響しない範囲であればよい。本開示の酸性軟化改質剤は、上記のとおり酸性領域のpHを有するので、調味料や日持ち向上剤との併用による双方の効果を低下させることなく食材を軟化させ、歩留まりの向上、食感の改良などを実現できる。
他の添加剤として、ジューシーさ、しなやかさ、歯ごたえ、弾力といった食感を調整するために、乳化剤、乳タンパク、ゼラチン及び卵白から選ばれる少なくとも1つの成分を本開示の酸性軟化改質剤に添加することができる。ここで、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチン等を挙げることができる。その他の添加剤成分としては、ショ糖、ぶどう糖、果糖、各種糖アルコール等の糖類;澱粉や穀粉;ステビア、アスパルテーム等の甘味料;デキストリン;有機酸やその塩(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、これらの塩など)、グリシンやDL-アラニン等の制菌作用がある成分;調味及び/又は呈味成分;香料;色素;フェルラ酸、茶抽出物等を挙げることができる。これらの添加剤は、添加剤の使用目的に応じて適宜選択することができる。
これらの追加の添加剤は、上述した各成分(1)~(4)又は成分(1)~(5)を混合する際に一緒に混合してもよく、別々に混合してもよい。追加の添加剤の添加量は特に限定されない。添加剤の使用目的に応じて適宜選択することができる。
上述のように構成される本開示の酸性軟化改質剤は、これを添加する食材に対して当該食材を軟化させ、タンパク質食材の食感を改善する効果を示す。
2. 酸性軟化改質剤を用いた、タンパク質食材を軟化する方法
本開示の第2は、上記本開示の酸性軟化改質剤を用いた、タンパク質食材、例えば、畜肉、獣肉、魚介類などを軟化させる方法である。本開示の方法は、以下の工程を含む。
(a)本開示の酸性軟化改質剤を提供する工程と、
(b)工程(a)で得た前記酸性軟化改質剤とタンパク質食材を混合する工程。
<工程(a)>
工程(a)は、本開示の酸性軟化改質剤を提供する工程である。この工程における酸性軟化改質剤は、上述した酸性軟化改質剤の調製方法で説明した手順に従って調製することができる。本工程(a)は、上記の酸性軟化改質剤の調製手順に従った酸性軟化改質剤の調製工程を含んだ工程としてもよく、又は上記の酸性軟化改質剤の調製手順若しくはその他の手順に従って、既に調製済みの酸性軟化改質剤を提供する工程であってもよい。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で提供された酸性軟化改質剤でタンパク質食材、例えば、畜肉、獣肉、魚介類などを処理する。
タンパク質食材を処理する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、工程(1)の酸性軟化改質剤を溶液にして使用する場合には、この溶液に食材を加えて混合する方法、食材を前記溶液にタンブリングする方法、食材に前記溶液を散布又は塗布する方法などが挙げられる。これらの混合方法は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。食材の別の処理方法としては、粉末の酸性軟化改質剤を用いる場合、直接食材に添加して混合する方法などがある。
より具体的には、本開示において、本開示の酸性軟化改質剤を溶液にして使用する場合、これを食材に添加して、揉み込み、手こね、単純混合、三本ロール機、タンブラーなどの混合器等により混合する方法がある。その他、食材を、酸性軟化改質剤を含む溶液に所定時間(例えば0.5時間~2時間)タンブリングし、食材に溶液を浸透させる方法などがある。更には、溶液を食材に散布、塗布又は浸漬して、所定時間(0.5時間~24時間)放置するなどの方法がある。また、上記の方法を組み合わせた混合方法により混合することもできる。
本開示の方法では、本開示の酸性軟化改質剤と食材を混合し、タンパク質食材を処理した後、調理処理(例えば、焼く、煮込む、蒸すなどの加熱処理)を行うことができる。調理処理は、本開示の酸性軟化改質剤と食材を混合したものを、調理器具に入れ、例えば加熱等を実施すればよい。加熱処理を行う場合、処理温度及び処理時間は、通常の処理温度及び処理時間の範囲で実施することができる。
また、本開示の酸性軟化改質剤が粉末状の場合、酸性軟化改質剤を食材に直接混合することができる。混合は、例えば、揉み込み、手こね、単純混合、三本ロール機、タンブラー等による混合方法などを挙げることができる。このようにして食材を軟化させ、食材の食感を改善することができる。
本開示の酸性軟化改質剤を添加しうる食材の種類は、特に限定されず、食品として利用できる如何なるものも使用することができる。例えば、食材として、牛肉、豚肉、羊肉、馬肉、鶏肉などの畜肉を挙げることができる。また、本開示の酸性軟化改質剤は、畜肉以外にも、鹿肉、猪肉、熊肉や鯨肉等の獣肉類にも使用することができる。本開示の酸性軟化改質剤は、上記の肉類に加えて、魚介類の肉(魚介肉)にも使用することができる。魚介肉としては、すけとうだら、ほっけ、あじ、まいわし、きんときだい、いとよりだい、しろぐち、たちうお、はも、ほしざめ、よしきりざめ、れんこだい及びくろかじき等の魚類、いか、ほたて等の貝類を挙げることができる。加えて、本開示の酸性軟化改質剤は、例えば、エビ、カニ等の甲殻類にも適用できる。エビの種類としては、例えば、ウシエビ、クルマエビ、アマエビ、クマエビ、ブラックタイガー、バナメイエビ、アカエビ、シロエビ、ヨシエビ、コウライエビ、シバエビ、ボタンエビ、ホワイトシュリンプ、イセエビ、タイショウエビ、ロブスター、セミエビなどを挙げることができる。また、カニの種類としては、例えば、タラバガニ、ズワイガニ、毛ガニ、ハナサキガニ、紅ズワイガニ、ワタリガニ、クリガニ、アブラガ二、タカアシガニ、イシガニ、イバラガニ、アサヒガニ、モクズガニ、サワガニ、スナガニ、イソガニ、イチョウガニ、上海ガニなどを挙げることができる。
上記の食材は、上述した具体的な食材を単独で使用する、又は複数種類組み合わせて使用することができる。
本開示の酸性軟化改質剤を食材と混合する場合の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本開示では、酸性軟化改質剤の添加量(溶媒を含まない)は、0.05重量%~15重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは1重量~5重量%である。なお、本開示の酸性軟化改質剤を溶液として食材に添加する場合、前記重量割合に基づいて、本開示の酸性軟化改質剤の成分(1)~(4)又は成分(1)~(5)を含む溶液(処理液)を調製して、食材に添加すればよい。具体的には、例えば本開示の酸性軟化改質剤の水溶液を、食材に対して10重量%以上、好ましくは30重量%以上の量で添加することができる。
3. 酸性軟化改質剤を含むタンパク質食材の製造方法
本開示の第3は、上記本開示の酸性軟化改質剤を用いるタンパク質食材の製造方法である。本開示の製造方法は、以下の工程を含む。
(a)本開示の酸性化改質剤を提供する工程と、
(b)工程(a)で得た前記酸性軟化改質剤とタンパク質食材を混合する工程。
<工程(a)>
工程(a)は、本開示の酸性軟化改質剤を提供する工程である。この工程における酸性軟化改質剤は、上述した酸性軟化改質剤の調製方法で説明した手順に従って調製することができる。本工程(a)は、上記の酸性軟化改質剤の調製手順に従った酸性軟化改質剤の調製工程を含んだ工程としてもよく、又は上記の酸性軟化改質剤の調製手順若しくはその他の手順に従って既に調製済みの酸性軟化改質剤を提供する工程であってもよい。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で提供された酸性軟化改質剤でタンパク質食材、例えば畜肉、獣肉、魚介類などを処理する。
食材を混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本工程は、上述した酸性軟化改質剤を用いた食材の軟化方法の工程(b)と同様の手順を用いることができる。
本開示の食感を改善する方法、及び、タンパク質食材含有食品の製造方法では、更に追加の工程を含むことができる。
追加の工程としては、本開示の効果を損なわない限り制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、上記工程(b)において本開示の酸性軟化改質剤と食材を混合した後、調理処理を施し、調理済みのタンパク質食材を含む食品を調製する工程を含むことができる。調理処理には、例えば、焼く、煮込む、蒸すなどの加熱処理が含まれる。調理処理は、本開示の酸性軟化改質剤と食材を混合したものを、調理器具に入れ、例えば加熱処理などを実施すればよい。加熱処理を行う場合、処理温度及び処理時間は、通常の処理温度及び処理時間の範囲で実施することができる。この調理処理の工程は、上記工程(b)に含めてもよく、別の工程(例えば工程(c))としてもよい。
また、調理処理には、加圧加熱殺菌処理、冷凍処理などの工程を含むことができる。これら処理は、当技術分野において知られる一般的な条件及び手順を用いることができる。
食材として冷凍されているものを使用する場合、上記工程(b)の前に冷凍食材を解凍する解凍工程を含むことができる。
本開示の酸性軟化改質剤を含有したタンパク質食材を含む食品は、どのような食品であってもよい。例えば、缶詰、凍結乾燥品、冷凍食品などを挙げることができる。食品が缶詰である場合は、本開示の酸性軟化改質剤においてで処理したタンパク質食材を調理し、この調理済みのタンパク質食材を缶詰容器に封入すればよい。また、凍結乾燥品、冷凍食品などは、工程(b)の後に、上述した手順で得られた食品を、凍結乾燥、冷凍処理などの各種工程にかけることで、得ることができる。これらの工程は、当分野で周知の方法を適用することができる。
本開示の酸性軟化改質剤を用いたタンパク質食材の製造方法によれば、上述した食材を軟化させ、当該食材の食感を改善できるとともに、当該食材を含む食品の食感を改善することができる。より具体的には、本開示の酸性軟化改質剤を用いた、タンパク質食材の軟化方法、及び、タンパク質食材の製造方法によれば、上述したタンパク質食材を軟化して、歯ごたえ(硬さ)及び弾力性が優れた、独特の食感を達成することができる。なお、食品の評価は、官能評価によって行うことができる。官能評価は、例えば、トレーニングを積んだパネラー(例えば5名)によって食材を評点法官能検査により評価することができる。
実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例において使用した原材料及び機器を以下に示す。
<食材>
・食用畜肉:豚ロース肉(厚さ5mm。産地:カナダ)
<各種原料>
・酵素(プロテアーゼ)
・米ぬか(粉末)
品名:RICEO-EX(築野食品工業社製)
・米麹(粉末)
品名:アスペルパウダーPro(コーセーフーズ社製)
・醸造酢(粉末)
品名:粉末米酢(佐藤食品工業社製)
・こんにゃく粉
品名:イナゲルウルトラマンナンG2(伊那食品工業社製)
<機器>
・オーブン
スチームコンベクションオーブン(ニチワ電気社製)
・テクスチャーアナライザ
テクスチャーアナライザEZ-S型(島津製作所社製)
以下の実施例において、各数値のパーセンテージは重量%である。
<酸性軟化改質剤及び試験品の調製>
上記表1に示す各原材料を混合し、各酸性軟化改質剤(4%水溶液)を調製した。得られた酸性軟化改質剤に畜肉を浸漬して試験品を調製した。浸漬には、畜肉と同液体量(体畜肉100%)の酸性軟化改質剤を使用した。試験品の調製は以下の手順に従った。
1. 酵素(プロテアーゼ)、米ぬか抽出物[RICEO-EX(築野食品工業社製)]、米麹[アスペルパウダーPro(コーセーフーズ社製)]、粉末醸造酢[粉末米酢(佐藤食品工業社製)]、その他の添加剤を含む実施例及び比較例の各組成に従って、各原材料を混合し、各酸性軟化改質剤の混合物を得た。得られた混合物を水に溶解して酸性軟化改質剤水溶液(4%水溶液)(処理液)を調製した。
2. 豚ロース肉(予め重量(g)測定を行っておく)に対して、実施例及び比較例の4%水溶液を、当該肉の100%液量の酸性軟化改質剤水溶液に浸漬し、2時間冷蔵庫で静置した。
3. 水切りを行った。
4. スチームコンベクションオーブンに水切りを行った豚ロース肉を入れ、スチームオーブンモードにおいて、温度200℃、湿度90%に予熱したオーブンで8分間焼成し、試験品を得た。
5. 得られた試験品(調理済み豚ロース肉)について重量(g)を測定した。
上記手順に従って得られた試験品について、歩留まり及び官能検査を実施した。
<調理済み豚ロース肉(試験品)の評価>
(ア)歩留りの評価
酸性軟化改質剤で処理する前の豚ロース肉と調理後の重量(g)を測定し、歩留まり率(%)を求めた。以下の計算式より歩留まり率(%)を求めた。
歩留まり率(%)=(B/A)×100
A:酸性軟化改質剤で処理する前の豚ロース肉の重さ(g)
B:調理後の豚ロース肉の重さ(g)
調理済み豚ロース肉試験品について測定した歩留りとは、焼成処理によって流出した肉の水分や油分等の量を評価している。歩留りの数値が高い試験品ほど、優れた食感を有することとなる。
(イ)官能検査方法
官能評価は、トレーニングを積んだパネラー5名によって調理後の豚ロース肉(試験品)のジューシー感、軟らかさ、弾力、味、酸味、香り、及び総合的な評価についての評点法官能検査を行うことで実施した。この評点法官能検査では、対照(酸性軟化改質剤を未使用)の豚ロース肉試験品の「ジューシー感」、「軟らかさ」、「弾力」、「味」、「酸味」、「香り」及び「総合評価」を4.0とした上で、残りの試験品に関する「ジューシー感」、「軟らかさ」、「弾力」、「味」、「酸味」、「香り」及び「総合評価」について1(非常に悪い)~4(普通)~7(非常に良い)で評価した。
ジューシー感は、パサついた食感を非常に悪い(1点)とし、肉汁を感じる食感を非常によい(7点)とした。軟らかさは、硬い食感を非常に悪い(1点)とし、軟らかい食感を非常に良い(7点)とした。弾力については、食肉として好ましくない弾力を非常に悪い(1点)とし、食肉として好ましい弾力を非常に良い(7点)とした。味は、美味しくない、食べにくい食味(食べ物の味)を非常に悪い(1点)とし、美味しい、食べやすい食味を非常によい(7点)とした。酸味は、酸っぱい食味を非常に悪い(1点)とし、酸味がないを非常に良い(7点)とし、香りは、臭みがある風味を非常に悪い(1点)とし、臭みがない風味を非常によい(7点)とした。
調理後の豚ロース肉試験品について、軟らかさは、試験品を変形させるのに必要な力であり、試験品の軟化性の評価(豚ロースを食べたときの歯ごたえを示す指標)となりうる。
試験品について、弾力は調理済み豚ロース肉を食べたときの弾力感を示す指標となる。
また、本実施例における総合評価とは、ジューシー感、軟らかさ、弾力、味、酸味及び香りを加味した全体の食感が豚ロース肉として好ましいかどうかに関する評価であり、ジューシー感、軟らかさ、弾力、味、酸味及び香りについて総合的に評価したものである。
試験品について、pH値を測定し、酸性軟化改質剤の酸性度を評価した。pHはガラス電極法により測定した。
試験品について、テクスチャーアナライザにより、硬さ(軟らかさ)の評価、及びかみ応えを評価した。硬さの測定は、調理後の豚ロース肉を1cm×2cmにカットし、肉の線維を破断するように置き、テクスチャーアナライザで破断測定(n=10)を行った。測定値は複数回(n=10)の測定結果の平均である。また、かみ応えは、上記硬さの測定方法と同様に測定した。測定値は複数回(n=10)の測定結果の平均である。
(実施例1、比較例1~4)
酵素、米麹、米ぬか、及び米酢を含む酸性軟化改質剤とこれを使用した豚ロース肉の調製
本実施例は、酸性軟化改質剤において、本開示の成分(1)~(4)が重要成分であることを示す。本実施例の酸性軟化改質剤を、以下の表1に示す各実施例及び比較例の組成に従って調製した。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、表1の実施例1及び比較例1~4の酸性軟化改質剤を調製し、調理済み豚ロース肉試験品を作製した。
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例1及び比較例1~4の歩留まりの評価結果を表2に示した。
表2に示すように、本開示の酸性軟化改質剤を使用して作製した試験品では、比較例1~4の酸性軟化改質剤を使用した場合と比較して歩留まりの低下を抑え、優れた食感(軟化性)を有することがわかった。
(ii)官能検査の結果
実施例1及び比較例1~4の官能検査の評価結果を表3に示した。
(iii)pH測定の結果
表1に従って調製した各酸性軟化改質剤について、酸性軟化改質剤水溶液(4%水溶液)(処理液)と豚ロース肉を浸漬した後の酸性軟化改質剤のpHを測定した。結果を表4に示す。
酸性軟化改質剤の処理後のpHは酸性領域を保持していた。
(iv)軟らかさ及びかみ応えの結果
実施例1及び比較例1~4の試験品について、軟らかさ(破断時の最大荷重(N)及びかみ応え(J)をテクスチャーアナライザにより測定した。結果を表5に併せて示す。また、図1-1及び図1-2にそれぞれの測定結果をグラフに示した。なお、対照は、本実施例と同様の条件下で、対照として新たに調製した豚ロース肉を測定した結果である。
かみ応えは、数値が低い方が好ましい。また、軟らかさ(最大荷重(N))は、数値が低い方が好ましい。
表3~表5に示したとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、比較例1~4の酸性軟化改質剤に比較して、各官能評価、物性評価などで優れた結果を示した。
特に、本開示の成分(1)~(4)を必須成分とする、本開示の酸性軟化改質剤は、歩留まりの低下を抑え、官能検査及び物性評価では、比較例1~4と比較しても有意な結果を示した。このことから、本開示の酸性軟化改質剤は、酸性領域において優れた軟化性能を有することが明らかとなった。
(実施例2~6)
本実施例は、本開示の酸性軟化改質剤水溶液(処理液)の有効な濃度範囲を検討するものである。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、下記表6に示した組成を有する酸性軟化改質剤を調製した。
上記表6の組成で調製した酸性軟化改質剤を下記表7の濃度の水溶液(処理液)として調製した。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、表7の実施例2~6の濃度の酸性軟化改質剤水溶液(処理液)を調製し、調理済み豚ロース肉試験品を作製した。
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例2~6の歩留まりの評価結果を表8に示した。
表8に示すように、本開示の酸性軟化改質剤を使用して作製した試験品では、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上できることがわかった。
(ii)官能検査の結果
実施例2~6の官能検査の評価結果を表9に示した。
(iii)pH測定の結果
実施例2~6の各酸性軟化改質剤水溶液を用いて豚ロース肉を浸漬した後の酸性軟化改質剤のpHを測定した。結果を表10に示す。
酸性軟化改質剤の処理後のpHは酸性領域を保持していた。
(iv)軟らかさの結果
実施例2~6の試験品について、軟らかさ(破断時の最大荷重(N))をテクスチャーアナライザにより測定した。結果を表11に示す。また、図2に測定結果をグラフに示した。なお、対照は、本実施例と同様の条件下で、対照として新たに調製した豚ロース肉を測定した結果である。
軟らかさは、低い値であることが好ましい。
表8~表11に示したとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上でき、官能検査及び軟らかさの評価において、対照及と比べて、有意な結果を示した。
以上のとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、優れた軟化性能を有することが明らかとなった。
(実施例7~11)
本実施例は、本開示の酸性軟化改質剤において、酢の有効な濃度範囲を検討するものである。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、下記表12に示すような粉末醸造酢(米酢)の濃度を変化させた酸性軟化改質剤を調製した。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、表12の実施例7~11の酸性軟化改質剤を調製し、調理済み豚ロース肉試験品を作製した。
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例7~11の歩留まりの評価結果を表13に示した。
表13に示すように、本開示の酸性軟化改質剤を使用して作製した試験品では、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上できることがわかった。
(ii)官能検査の結果
実施例7~11の官能検査の評価結果を表14に示した。
(iii)pH測定の結果
表12に従って調製した各酸性軟化改質剤について、酸性軟化改質剤水溶液(4%水溶液)と豚ロース肉を浸漬した後の酸性軟化改質剤のpHを測定した。結果を表15に示す。
酸性軟化改質剤の処理後のpHは、酸性領域を保持していた。
(iv)軟らかさの結果
実施例7~11の試験品について、軟らかさ(破断時の最大荷重(N))をテクスチャーアナライザにより測定した。結果を表16に示す。また、図3にそれぞれの測定結果をグラフに示した。なお、対照は、本実施例と同様の条件下で、対照として新たに調製した豚ロース肉を測定した結果である。
軟らかさは、低い値であることが好ましい。
表13~表16に示したとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上でき、官能検査及び軟らかさの評価において、対照と比べて、有意な結果を示した。以上のとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、優れた軟化性能を有することが明らかとなった。
(実施例12~16)
本実施例は、本開示の酸性軟化改質剤において、米ぬかの有効な濃度範囲を検討するものである。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、下記表17に示すような米ぬか粉末の濃度を変化させた酸性軟化改質剤を調製した。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、表17の実施例12~16の酸性軟化改質剤を調製し、調理済み豚ロース肉試験品を作製した。
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例12~17の歩留まりの評価結果を表18に示した。
表18に示すように、本開示の酸性軟化改質剤を使用して作製した試験品では、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上できることがわかった。
(ii)官能検査の結果
実施例12~16の官能検査の評価結果を表19に示した。
(iii)pH測定の結果
表19に従って調製した各酸性軟化改質剤について、酸性軟化改質剤水溶液(4%水溶液)と豚ロース肉を浸漬した後の酸性軟化改質剤のpHを測定した。結果を表20に示す。
酸性軟化改質剤の処理後のpHは、酸性領域を保持していた。
(iv)軟らかさの結果
実施例7~11の試験品について、軟らかさ(破断時の最大荷重(N)をテクスチャーアナライザにより測定した。結果を表21に示す。また、図4にそれぞれの測定結果をグラフに示した。なお、対照は、本実施例と同様の条件下で、対照として新たに調製した豚ロース肉を測定した結果である。
軟らかさは、低い値であることが好ましい。
表18~表21に示したとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上でき、官能検査及び軟らかさの評価において、対照と比べて、有意な結果を示した。以上のとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、優れた軟化性能を有することが明らかとなった。
(実施例17~21)
本実施例は、本開示の酸性軟化改質剤において、麹(米麹)の有効な濃度範囲を検討するものである。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、下記表22に示すような米麹粉末の濃度を変化させた酸性軟化改質剤を調製した。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、表22の実施例17~21の酸性軟化改質剤を調製し、調理済み豚ロース肉試験品を作製した。
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例17~21の歩留まりの評価結果を表23に示した。
表23に示すように、本開示の酸性軟化改質剤を使用して作製した試験品は、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上できることがわかった。
(ii)官能検査の結果
実施例17~21の官能検査の評価結果を表24に示した。
(iii)pH測定の結果
表24に従って調製した各酸性軟化改質剤について、酸性軟化改質剤水溶液(4%水溶液)と豚ロース肉を浸漬した後の酸性軟化改質剤のpHを測定した。結果を表25に示す。
酸性軟化改質剤の処理後のpHは、酸性領域を保持していた。
(iv)軟らかさの結果
実施例17~21の試験品について、軟らかさ(破断時の最大荷重(N))をテクスチャーアナライザにより測定した。結果を表21に示す。また、図5にそれぞれの測定結果をグラフに示した。なお、対照は、本実施例と同様の条件下で、対照として新たに調製した豚ロース肉を測定した結果である。
軟らかさは、低い値であることが好ましい。
表23~表26に示したとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、対照と比較して歩留まりの低下を抑え、食感(軟化性)を向上でき、官能検査及び軟らかさの評価において、対照及と比べて、有意な結果を示した。以上のとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、優れた軟化性能を有することが明らかとなった。
(実施例22~25)
本実施例は、本開示の酸性軟化改質剤において、こんにゃく粉を更に含む場合の実施例と、その有効な濃度範囲を検討するものである。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、下記表27に示すようなこんにゃく粉の濃度を変化させた酸性軟化改質剤を調製した。
上記「酸性軟化改質剤及び試験品の調製」に従い、表27の実施例20及び実施例22~25の酸性軟化改質剤を調製し、調理済み豚ロース肉試験品を作製した。
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例20及び実施例22~25の歩留まり率(%)の評価結果を表28に示した。
表28に示すように、本開示の酸性軟化改質剤を使用して作製した試験品は、対照と比較して歩留まりを改善し、食感(軟化性)を向上できることがわかった。
(ii)官能検査の結果
実施例20及び実施例22~25の官能検査の評価結果を表29に示した。
(iii)pH測定の結果
表27に従って調製した各酸性軟化改質剤について、酸性軟化改質剤水溶液(4%水溶液)と豚ロース肉を浸漬した後の酸性軟化改質剤のpHを測定した。結果を表30に示す。
酸性軟化改質剤の処理後のpHは、酸性領域を保持していた。
(iv)軟らかさの結果
実施例20及び実施例22~25の試験品について、軟らかさ(破断時の最大荷重(N))をテクスチャーアナライザにより測定した。結果を表31に示す。また、図6にそれぞれの測定結果をグラフに示した。なお、対照及び実施例20は、本実施例と同様の条件下で、対照として新たに調製した豚ロース肉を測定した結果である。
軟らかさは、低い値であることが好ましい。
表28~表31に示したとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、対照と比較して対照と比べて、優れた結果を示した。以上のとおり、本開示の酸性軟化改質剤は、優れた軟化性能を有することが明らかとなった。

Claims (9)

  1. (1)酵素、
    (2)穀類のぬか、
    (3)麹、及び
    (4)酢
    を含む食品の酸性軟化改質剤。
  2. (1)酵素、
    (2)穀類のぬか、
    (3)麹、
    (4)酢、及び
    (5)こんにゃく粉
    を含む食品の酸性軟化改質剤。
  3. 前記(1)酵素がプロテアーゼである、請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤。
  4. 前記(2)穀類のぬかが米ぬかである、請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤。
  5. 前記(3)麹が米麹である、請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤。
  6. 前記(4)酢が穀類の酢である、請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤。
  7. (a)請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤を提供する工程と、
    (b)工程(a)で得た前記酸性軟化改質剤と、タンパク質食材を混合する工程と
    を含む、タンパク質食材を軟化する方法。
  8. (a)請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤を提供する工程と、
    (b)工程(a)で得た前記酸性軟化改質剤と、タンパク質食材を混合する工程と
    を含む、酸性軟化改質剤を含むタンパク質食材の製造方法。
  9. 請求項1又は2に記載の酸性軟化改質剤を含むタンパク質食材。
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