以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態は、油を伴った空気を圧縮した後に圧縮空気から油を分離して圧縮空気を生成する空気圧縮装置において広く適用することができる。また、本実施形態の空気圧縮装置は、例えば、鉄道車両に設置されてこの鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用の空気圧縮装置として用いられる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る空気圧縮装置1の構成を模式的に示すブロック図である。また、図2は、空気圧縮装置1の構成に関し、センサの設置構成についても模式的に示すブロック図である。図1及び図2に示す空気圧縮装置1は、例えば、図示しない鉄道車両に設置される。そして、この空気圧縮装置1において生成された圧縮空気は、鉄道車両において制動機器等の空圧機器を作動させるために用いられる。尚、この空気圧縮装置1は、例えば、鉄道車両の編成における各車両に設置される。
図1及び図2に示す空気圧縮装置1は、収容ケース11、吸込みフィルタ12、吸込弁13、圧縮機14、モータ15、ファン16、油回収器17、油分離フィルタ18、エアクーラ19、除湿器20、切替弁21、圧縮空気送出部22、空気溜め23、オイルフィルタ24、オイルクーラ25、制御部26、油温センサ27、タンク温度センサ28、圧縮機温度センサ29、吐出空気温度センサ30、外気温センサ31、湿度センサ32、圧力センサ33、油供給経路34、連通経路35、等を備えて構成されている。
そして、空気圧縮装置1は、吸込みフィルタ12を介して吸込み弁13から吸い込んだ空気を圧縮機14で圧縮し、エアクーラ19で冷却した後に、圧縮空気送出部22から送出して空気溜め23に圧縮空気として蓄積する装置として構成されている。また、空気圧縮装置1は、油供給経路34、油回収器17、油分離フィルタ18、オイルフィルタ24、オイルクーラ25、等を備えることで、油を伴った空気を圧縮した後に圧縮空気から油を分離して圧縮空気を生成する装置として構成されている。これにより、圧縮熱の除去、油膜によるシール機能及び潤滑機能を果たすことができるように構成されている。以下、空気圧縮装置1における各構成要素について、詳しく説明する。
収容ケース11は、圧縮機14、モータ15、ファン16、油回収器17、油分離フィルタ18、エアクーラ19、除湿器20、切替弁21、オイルフィルタ24、オイルクーラ25、制御部26、等を収容する箱状の筐体として設けられている。そして、この収容ケース11には、例えば、その壁部或いは壁部近傍において、吸込みフィルタ12及び吸込み弁13と、圧縮空気送出部22と、が設置されている。
圧縮機14で圧縮される空気(外気)は、収容ケース11に設置された吸込みフィルタ12及び吸込み弁13を介して吸い込まれる。吸込みフィルタ12及び吸込み弁13は、圧縮機14の吸込み側に連通するように設けられている。尚、図1及び図2では、吸い込まれる外気の流れ、乾燥した状態の空気が流動する経路、油滴、水滴、或いは水蒸気を含む空気が流動する経路、油が流動する経路について、実線の矢印で示されている。
吸込みフィルタ12は、吸い込まれる空気が通過する際に砂塵等の粉塵の通過を抑制するためのフィルタとして設けられている。吸込み弁13は、例えば、圧縮機14の本体に一体に形成された弁として設けられている。吸込み弁13は、弁体と、この弁体が着座及び離座が可能な弁座と、弁体を弁座に着座させる方向に付勢するバネと、を備えて構成されている。そして、圧縮機14が作動して圧縮機14側が負圧となることで外気の圧力によって弁体がバネのバネ力に抗して弁座から離座し、圧縮機14内に空気が吸い込まれることになる。
また、収容ケース11の外部には、空気溜め23が設置されている。空気溜め23は、圧縮機14で圧縮された後に油回収器17を通過して油が分離されて更にエアクーラ19で冷却された圧縮空気を蓄積するエアタンクを有して構成されている。この空気溜め23には、圧力センサ33が設置されている。圧力センサ33は、空気溜め23における空気圧(即ち、空気溜め23に蓄積されている圧縮空気の圧力)を検知するセンサとして設けられている。そして、圧力センサ33は、制御部26に対して信号を出力可能に接続されている。即ち、圧力センサ33で検知される圧力値の信号が制御部26に入力される。
また、空気溜め23に対しては、圧縮空気送出部22から圧縮空気が送出される。圧縮空気送出部22は、空気溜め23に対して、後述する除湿器20によって除湿が行われた圧縮空気を送出する機構として設けられている。そして、圧縮空気送出部22は、逆止弁22aが備えられた配管系統として設けられている。除湿器20を経て圧縮空気送出部22に流入した圧縮空気は、逆止弁22aによって、空気溜め23に向かう方向の流れのみが許容され、空気溜め23に送出される。そして、空気溜め23に送出された圧縮空気が圧縮空気送出部22を介して除湿器20側へ戻ることが逆止弁22aによって規制される。尚、逆止弁22aは、所定の圧力以上の圧縮空気の空気溜め23側への通過を許容するように構成されている。
圧縮機14は、吸込みフィルタ12及び吸込み弁13を介して外部から吸い込んだ空気を圧縮するように構成されている。圧縮機14は、例えば、互いに逆方向に回転して空気を圧縮する一対のスクリューを有するスクリュー式の空気圧縮機として設けられている。スクリューが配置される圧縮機本体の内部では、吸込み弁13に連通する部分から油回収器17に連通する部分にかけて空気の圧力が上昇することになる。
尚、本実施形態では、圧縮機14が、スクリュー式の空気圧縮機として設けられる場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。圧縮機14が、スクロール式の空気圧縮機、或いは、モータ15からの回転駆動力がクランク軸を介して往復駆動力に変換されて伝達されて駆動されるレシプロ式の空気圧縮機、等として設けられていてもよい。
モータ15は、電動モータとして構成され、圧縮機14を回転駆動する駆動機構として設けられている。モータ15は、制御部26からの指令信号に基づいて、例えば、図示しないドライバによって回転速度及び供給電流が制御されて作動するように構成されている。また、モータ15の回転軸は、カップリングを介して圧縮機14の回転軸に連結されている。
尚、本実施形態では、モータ15と圧縮機14との間に減速機が設けられておらず、モータ15が圧縮機14に直結されている形態を例示したが、この通りでなくてもよい。即ち、モータ15と圧縮機14との間にモータ15の回転駆動力を減速して伝達する減速機が設けられた形態が実施されてもよい。また、モータ15が、減速機付モータとして構成されてもよい。
ファン16は、エアクーラ19及びオイルクーラ25を介して圧縮空気及び油を冷却するための冷却空気を発生させる冷却ファンとして設けられている。ファン16は、モータ15に対して、圧縮機14が連結される側と反対側の端部において取り付けられている。このファン16は、軸流ファンとして設けられ、プロペラ部(図示省略)を備えて構成されている。そして、ファン16は、モータ15の回転軸の駆動力が圧縮機14側と反対側でプロペラ部に伝達されるように設置されている。
上記のように、ファン16は、モータ15からの駆動力によって回転駆動され、これにより、冷却空気の流れを発生させるように構成されている。また、収容ケース11には、ファン16によって発生する冷却空気の流れの上流側に位置する壁部において、フィルタ(図示省略)が設置されている。このフィルタは、例えば、収容ケース11に取り付けられた金網として設けられている。そして、ファン16が回転することで、冷却空気となる外気がフィルタを介して吸い込まれることになる。尚、本実施形態では、ファン16が軸流ファンである場合を例示しているが、この通りでなくてもよく、シロッコファン等の他の形態のファンを用いることもできる。
エアクーラ19は、圧縮機14で圧縮されて圧縮熱が残っている圧縮空気を冷却する熱交換器として設けられている。このエアクーラ19は、ファン16に対して、このファン16によって発生する冷却空気の流れの上流側或いは下流側に配置されている(尚、図1及び図2は、模式的に示す図であり、収容ケース11内でのエアクーラ19の配置を特定するものではない)。これにより、エアクーラ19がファン16によって発生する冷却空気によって外部から冷却され、更に、エアクーラ19の内部を通過する圧縮空気が冷却されることになる。尚、エアクーラ19は、例えば、後述するオイルクーラ25と一体的に結合されて形成されている。
油回収器17は、油タンク17aを備えて構成されている。油タンク17aと圧縮機14との間には、圧縮機14と油タンク17aとを連通する油入り圧縮空気吐出経路36が設けられている。圧縮機14において油を伴って圧縮された圧縮空気は、油入り圧縮空気吐出経路36を介して油タンク17aに誘導される。そして、圧縮空気とともに油入り圧縮空気吐出経路36から油タンク17a内に吐出された油が、油タンク17aに回収されることになる。
また、図1及び図2では図示が省略されているが、油入り圧縮空気吐出経路36における油タンク17a内での吐出部分には、大きな油滴を分離するための分離機が設置されている。油を伴った圧縮空気が油入り圧縮空気吐出経路36を通過して誘導されてその吐出部分から吐出されると、上記の分離機によって圧縮空気から油が分離される。その分離された油は、油タンク17a内で飛散しながら重力で落下して油タンク17a内に回収されることになる。そして、油タンク17a内は、回収された油が貯留された状態となる。
油供給経路34は、油回収器17の油タンク17aと圧縮機14とに連通するように設置されており、圧縮機14に油タンク17aから油を供給する経路として設けられている。油供給経路34は、圧縮機14の圧縮機本体に対して、吸込み弁13に連通する吸い込み側であって圧力が低い低圧側に連通している。また、油供給経路34は、油タンク17aに対して、油タンク17a内の油の油面よりも低い位置で連通するように構成されている。このように油供給経路34が圧縮機14及び油タンク17aに連通しているため、油入り圧縮空気吐出経路36から吐出された圧縮空気が油タンク17a内の油の油面を押し下げることで、油供給経路34を介して圧縮機14に油が供給されることになる。
油分離フィルタ18は、油回収器17の油タンク17aとエアクーラ19とを連通する経路に設置されている。そして、油分離フィルタ18は、圧縮機14において油を伴って圧縮されて油回収器17を通過した圧縮空気から更に油を分離するフィルタを備えて構成されている。この油分離フィルタ18では、油回収器17において回収されなかった細かい油滴が圧縮空気から分離されることになる。
また、油分離フィルタ18と、圧縮機14又は吸込み弁13とは、例えば、圧縮空気の通過量を抑制するための絞りが設けられた連通路(図示省略)を介して連通している。この連通路は、油分離フィルタ18のハウジング部分の内部における下部と圧縮機14とを連通するように設置されている。そして、油分離フィルタ18で分離された油が圧縮空気によって押し上げられて圧縮機14に供給される。
また、油分離フィルタ18とエアクーラ19とを連通する経路には、保圧逆止弁(図示省略)及び安全弁(図示省略)が設けられていてもよい。この場合、上記の保圧逆止弁は、所定の圧力以上の圧縮空気のエアクーラ19側への通過を許容する弁として設けられる。また、安全弁は、圧縮空気の圧力が所定の過大な圧力以上になったときに外部に対して圧縮空気を逃がす弁として設けられる。
オイルクーラ25は、油タンク17a内の油を冷却して油供給経路34に供給可能な熱交換器として設けられている。そして、図1及び図2では図示が一部省略されているが、オイルクーラ25は、油供給経路34に対して、油経路37を介して油タンク17a側で連通し、油経路38を介して圧縮機14側で連通するように設けられている。
上記により、オイルクーラ25は、油タンク17aから油供給経路34に流入した油の一部を油経路37を経て取り込んで冷却し、その冷却した油を油経路38を経て油供給経路34に戻すように構成されている。即ち、圧縮機14による空気の圧縮によって発生する熱によって高温になった油が、油経路37を経てオイルクーラ25に流入し、オイルクーラ25で冷却された低温の油が、油経路38を経て油供給経路34に戻されることになる。尚、油入り圧縮空気吐出経路36から吐出された圧縮空気が油タンク17a内の油の油面を押し下げることにより、油タンク17aとオイルクーラ25との間で、上記の油の流動が生じることになる。
尚、図1及び図2では図示が省略されているが、油供給経路34と油経路37とが連通する箇所には、油経路37への油の流入口を連通状態とする連通位置と遮断状態とする遮断位置とにおいて切り替え可能な油温調整弁が設置されている。この油温調整弁は、例えば、温度により体積変化するワックス或いはバイメタル機構によって作動する自立式の弁として構成されている。そして、この構成により、この油温調整弁は、後述する制御部26による制御に基づかずに油タンク17a内の油温に応じて独立して作動するように構成されている。即ち、この油温調整弁は、油タンク17a内の油温に応じて独立して上記の連通位置と遮断位置とのいずれかの位置に切り替わるように構成されている。
上記により、上記の油温調整弁は、油タンク17a内の油温に応じてオイルクーラ25に油を循環させる状態と油を循環させない状態とのいずれかに切り替わって油タンク17a内の油温を調整するように構成されている。尚、この油温調整弁の作動により、油タンク17a内の油温が所定の温度を超えない範囲に収まるように制御され、油温が高すぎることによる油の酸化が防止されることになる。
また、オイルクーラ25は、前述のように、エアクーラ19と一体的に結合されて形成されている。そして、オイルクーラ25は、ファン16に対して冷却空気の流れの上流側又は下流側に配置されている(尚、図1及び図2は、模式的に示す図であり、収容ケース11内でのオイルクーラ25の配置を特定するものではない)。オイルクーラ25がファン16によって発生する冷却空気によって外部から冷却されることで、オイルクーラ25の内部を通過する油が冷却されることになる。
また、油経路38には、その経路の途中において、オイルフィルタ24が設置されている。オイルフィルタ24は、油中に生じた又は油中に混入した異物が圧縮機14内に供給されてしまうことを防止するフィルタとして設けられている。尚、上記の異物としては、例えば、劣化した油が凝集したスカム状の物質等が挙げられる。
除湿器20は、エアクーラ19と後述の切替弁21とを連通する経路に設置され、油分離フィルタ18にて油が分離された圧縮空気に対して除湿を行う機構として設けられている。即ち、除湿器20において、空気溜め23へと送出される圧縮空気に対する除湿が行われることになる。この除湿器20には、乾燥剤が含まれたフィルタ或いは中空糸膜方式の除湿を行うフィルタが備えられている。
尚、除湿器20には、乾燥剤を含むフィルタ或いは中空糸膜方式のフィルタに加え、このフィルタに対するエアクーラ19側である上流側に、水分と油分離フィルタ18にて分離されなかった微量の油分とを圧縮空気から分離する上流側フィルタが更に備えられていてもよい。尚、上記の上流側フィルタで分離された水分及び油分は、例えば、除湿器20に設けられたドレン弁から排出される。また、除湿器20には、エアクーラ19を通過した圧縮空気を外部へ放出可能な排気弁が設けられていてもよい。この排気弁は、例えば、制御部26からの指令信号に基づいて作動する電磁弁として設けられる。
切替弁21は、除湿器20と圧縮空気送出部22とを連通する経路に設けられ、後述する制御部26からの指令信号に基づいて作動するように構成されている。例えば、切替弁21は、制御部26からの指令信号に基づいて駆動されるスプールの変位によって切替動作が行われる電磁弁として構成されている。連通経路35は、切替弁21と圧縮機14の吸込み側とを連通させる経路として設けられている。本実施形態では、連通経路35は、切替弁21と吸込み弁13とを連通する配管経路として設けられている。
また、切替弁21は、除湿器20にて除湿が行われた圧縮空気の全てを圧縮空気送出部22及び連通経路35のいずれか一方に供給可能なように切り替えられる。即ち、切替弁21は、制御部26からの指令信号に基づいて、除湿が行われた圧縮空気の全てを圧縮空気送出部22へ供給する状態から、除湿が行われた圧縮空気の全てを連通経路35へ供給する状態へと切り替えられる。また、切替弁21は、制御部26からの指令信号に基づいて、除湿が行われた圧縮空気の全てを連通経路35へ供給する状態から、除湿が行われた圧縮空気の全てを圧縮空気送出部22へ供給する状態へと切り替えられる。
除湿が行われた圧縮空気の全てを圧縮空気送出部22へ供給する状態では、切替弁21は、除湿器20と圧縮空気送出部22とを連通させるとともに、除湿器20と連通経路35とを遮断し、更に、圧縮空気送出部22と連通経路35とを遮断する。一方、除湿が行われた圧縮空気の全てを連通経路35へ供給する状態では、切替弁21は、除湿器20と連通経路35とを連通させるとともに、除湿器20と圧縮空気送出部22とを遮断し、更に、連通経路35と圧縮空気送出部22とを遮断する。
制御部26は、空気圧縮装置1の運転状態を制御する制御装置として設けられている。そして、この制御部26は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路、等を備えて構成され、上位のコントローラ(図示せず)との間で信号の送受信が可能に構成されている。
また、制御部26は、空気溜め23における空気圧を検知する圧力センサ33からの信号と、後述する油温センサ27、タンク温度センサ28、圧縮機温度センサ29、吐出空気温度センサ30、外気温センサ31、及び湿度センサ32の各センサからの信号とを受信可能に構成されている。また、制御部26は、モータ15の運転を制御することで圧縮機14の作動を制御するように構成されている。更に、制御部26は、切替弁21の作動を制御するように構成されている。
また、制御部26は、後述する通常運転モードと暖気水分除去運転モードとに運転モードの設定が可能であって、それらのうちのいずれかの運転モードに基づいて空気圧縮装置1の運転状態を制御するように構成されている。運転モードは、制御部26において、通常運転モードに対応するフラグ及び暖気水分除去運転モードに対応するフラグのいずれかのフラグとして、相互に変更して切替可能に設定されている。尚、運転モードの設定の切り替え、即ち、上記のフラグの設定の切り替えは、制御部26において、センサ(27、28、29、30、31、32、33)からの信号に基づいて、行われる。運転モードの設定の切り替えの形態としては、少なくとも、通常運転モードから暖気水分除去運転モードへの運転モードの設定の切り替えと、暖気水分除去運転モードから通常運転モードへの運転モードの設定の切り替えとがある。
また、制御部26は、運転モードが通常運転モードに設定されたときは、除湿器20にて除湿が行われた圧縮空気の全てを圧縮空気送出部22へ供給するように切替弁21を切り替えるよう制御する。即ち、制御部26は、運転モードが通常運転モードに設定されたときは、除湿器20と圧縮空気送出部22とを連通させて除湿器20及び圧縮空気送出部22の両方に対して連通経路35側を遮断するスプール位置となるように、電磁弁である切替弁21を制御する。
一方、制御部26は、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されたときは、除湿器20にて除湿が行われた圧縮空気の全てを連通経路35へ供給するように切替弁21を切り替えるよう制御する。即ち、制御部26は、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されたときは、除湿器20と連通経路35とを連通させて除湿器20及び連通経路35の両方に対して圧縮空気送出部22側を遮断するスプール位置となるように、電磁弁である切替弁21を制御する。
通常運転モードは、空気溜め23に圧縮空気を蓄積させることが必要なときに、モータ15を駆動して圧縮機14を作動させ、空気溜め23に圧縮空気を蓄積する運転モードとして構成されている。より具体的には、運転モードが通常運転モードに設定されている場合、後述の蓄圧条件が成立したときには、制御部26の制御によって、切替弁21が除湿器20と圧縮空気送出部22とを連通させるように切り替えられるとともに、モータ15が駆動されて圧縮機14が作動し、空気溜め23に圧縮空気が蓄積される。
上記の蓄圧条件は、空気溜め23に圧縮空気を蓄積させて空気溜め23内の圧縮空気の圧力を蓄えるための条件として構成される。そして、制御部26において、圧力センサ33で検知される圧力値(空気溜め23における空気圧の圧力値)に基づいて、蓄圧条件の成立の有無が判定される。
また、運転モードが通常運転モードに設定されている場合において、空気溜め23への圧縮空気の蓄積が不要なとき、即ち、蓄圧条件が成立していないときには、モータ15の駆動が停止されて圧縮機14の作動が停止する。これにより、運転モードが通常運転モードに設定されていて蓄圧条件が不成立のときには、空気溜め23への圧縮空気の送出が行われない。
尚、上記の蓄圧条件としては、例えば、圧力センサ33での検出圧力値(即ち、空気溜め23の空気圧)が所定の第1の圧力値未満となったときに成立し、その後、第1の圧力値よりも高い所定の第2の圧力値以上となったときに解除される条件として構成されてもよい。この場合、運転モードが通常運転モードに設定されている状態において、圧力センサ33での検出圧力値が、予め定められている第1圧力値未満となったときに、制御部26からの指令信号に基づいて、モータ15の運転が開始されて圧縮機14が作動し、圧縮空気の生成が行われる。このとき、切替弁21は、除湿器20及び圧縮空気送出部22のみを連通しており、生成された圧縮空気は空気溜め23に送出されて蓄積されることになる。そして、圧力センサ33での検出圧力値が、上昇し、予め定められている第2の圧力値以上となったときに、制御部26からの指令信号に基づいて、モータ15の運転が停止されて圧縮機14の作動が停止され、圧縮空気の空気溜め23への圧縮空気の蓄積が停止される。
鉄道車両における制動機器等の空圧機器の作動によって空気溜め23に蓄積された圧縮空気が消費されて空気溜め23内の空気圧が低下した場合には、上記のように通常運転モードでの空気圧縮装置1の運転が行われて圧縮機14が作動する。これにより、空気溜め23への圧縮空気の蓄積が行われることになる。そして、運転モードが通常運転モードに設定されている状態では、空気溜め23での空気圧低下の状況に応じて圧縮機14が間欠的に繰り返し作動して、空気溜め23の空気圧の回復が随時図られることになる。
一方、暖気水分除去運転モードは、暖気しながら空気圧縮装置1内の油中の水分を除去することが必要なときに、モータ15を駆動して圧縮機14を作動させ、除湿が行われた圧縮空気を連通経路35及び吸込み弁13を介して圧縮機14に供給する運転モードとして構成されている。より具体的には、運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件である暖気水分除去運転条件が成立している場合であって、前述の蓄圧条件が成立していない場合に、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定された状態が維持される。そして、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定された状態では、制御部26の制御によって、切替弁21が除湿器20と連通経路35とを連通させるように切り替えられているとともに、モータ15が駆動されて圧縮機14が作動し、除湿が行われた圧縮空気の全てが連通経路35に供給される。
上記のように暖気水分除去運転モードでの運転が行われると、除湿が行われた圧縮空気の全てが連通経路35を介して圧縮機14の吸込み側に供給される。これにより、除湿された圧縮空気が、連通経路35で膨張した後、その大部分が圧縮機14に吸い込まれて圧縮され、再び除湿される状態が、繰り返し行われることになる。このため、暖気水分除去運転モードでは、空気圧縮装置1内の油中に混入した水分が除去されることになる。
尚、除湿されて乾燥した空気が切替弁21及び連通経路35を経て圧縮機14の吸込み側に戻った状態では、その空気の圧力は、外気の圧力(大気圧)相当となっている。そして、この状態は、暖気水分除去運転モードでの運転が継続された場合であっても変化しない。このため、暖気水分除去運転モードでの空気圧縮装置1の運転中には、騒音の問題が発生することがない。
また、鉄道車両に設置されてその鉄道車両において用いられる空気圧縮装置は、一般的に稼働率が低く、稼働時間が短い傾向にあり、空気圧縮装置内の油中に水分が混入した状態になり易い。しかし、油タンク17a内の油温が低い状態であっても、暖気水分除去運転モードでの運転が行われると、圧縮機14による空気の圧縮によって発生する熱によって油温が上昇し、油の乳化(エマルジョン化)の発生が回避されることになる。更に、暖気水分除去運転モードでの運転が行われることで、空気圧縮装置1内の油中に混入した水分が速やかに除去されることになる。
また、制御部26は、上述の暖気水分除去運転条件が成立している場合であっても、蓄圧条件が成立している場合は、運転モードを通常運転モードに設定する。例えば、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されている状態で蓄圧条件が成立すると、運転モードが暖気水分除去運転モードから通常運転モードに切り替えられて設定される。また、運転モードが通常運転モードに設定されていて且つ蓄圧条件が成立している状態で暖気水分除去運転条件が成立しても、運転モードは通常運転モードの設定のまま維持される。
また、空気圧縮装置1においては、運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件である暖気水分除去運転条件を検知する検知部が複数種類備えられている。本実施形態では、上記の検知部として、油温センサ27、タンク温度センサ28、圧縮機温度センサ29、吐出空気温度センサ30、外気温センサ31、及び湿度センサ32、が備えられた空気圧縮装置1を例示している。
油温センサ27は、油回収器17の油タンク17a内に設置され、油タンク17a内の油の温度を検知する検知部として設けられている。タンク温度センサ28は、油タンク17aの温度を検知する検知部として設けられる。タンク温度センサ28は、例えば、油タンク17aの内壁部に設置される。圧縮機温度センサ29は、圧縮機14の温度を検知する検知部として設けられる、圧縮機温度センサ29は、例えば、圧縮機14の圧縮機本体の内壁部に設置される。
吐出空気温度センサ30は、油回収器17から吐出された圧縮空気の温度を検知する検知部として設けられる。また、吐出空気温度センサ30は、油が分離された圧縮空気の温度を検知するように設置される。例えば、吐出空気温度センサ30は、油分離フィルタ18とエアクーラ19とを連通する経路に対してこの経路を流動する圧縮空気の温度を検知可能なように設置される。外気温センサ31は、外部の空気の温度を検知する検知部として設けられる。外気温センサ31は、例えば、収容ケース11の外壁部に設置される。湿度センサ32は、外部の湿度を検知する検知部として設けられる。湿度センサ32は、例えば、収容ケース11の外壁部に設置される。
尚、油温センサ27、タンク温度センサ28、圧縮機温度センサ29、吐出空気温度センサ30、及び外気温センサ31は、対象の温度として検知される検知温度が所定の温度以下の場合と所定の温度を超える場合とで制御部26に対してオンオフ信号を出力する温度スイッチとして構成されている。また、上記のセンサ(27、28、29、30、31)においては、所定の温度の近傍でのチャタリングの発生を抑制するため、オン信号出力温度とオフ信号出力温度との間のディファレンシャルが適宜設定されていてもよい。
また、上記のセンサ(27、28、29、30、31)として、温度スイッチ以外の形態として構成された温度センサが用いられてもよい。例えば、上記のセンサ(27、28、29、30、31)として、検知温度の信号を制御部26に対して出力するように構成された温度センサが用いられ、制御部26において、この検知温度の信号に基づいて所定の温度以下の状態であるか否かが判断される形態が実施されてもよい。
検知部としての上記の各センサ(27、28、29、30、31、32)での検知結果として、暖気水分除去運転条件が検知されることになる。そして、制御部26においては、上記の各センサ(27〜32)における少なくともいずれかの検知結果に基づいて、暖気水分除去運転条件の成立の有無が判定され、運転モードの設定が行われる。
上記の各センサ(27〜32)での検知結果に基づいて成立の有無が判定される暖気水分除去運転条件としては、例えば、低温高湿度の条件が挙げられる。具体的には、油温センサ27での検知温度が所定の温度以下の条件が挙げられる。また、タンク温度センサ28での検知温度が所定の温度以下の条件が挙げられる。また、圧縮機温度センサ29での検知温度が所定の温度以下の条件が挙げられる。また、吐出空気温度センサ30での検知温度が所定の温度以下の条件が挙げられる。また、外気温センサ31での検知温度が所定の温度以下の条件が挙げられる。また、湿度センサ32で検知された外部の湿度が所定の湿度以上の条件が挙げられる。
尚、暖気水分除去運転条件は、上述した各条件の少なくともいずれかとして構成されてもよい。また、暖気水分除去運転条件は、上述した各条件の任意の組み合わせとして構成されてもよい。また、暖気水分除去運転条件は、上述した各条件の任意の組み合わせとして構成される場合、更に、それらのAND条件及びOR条件の任意の組み合わせとして構成されてもよい。
次に、上述した空気圧縮装置1の作動について説明する。まず、空気圧縮装置1において、運転モードが通常運転モードに設定されて圧縮空気が生成される運転が行われている状態について説明する。この状態では、まず、外気である空気が、圧縮機14の作動によって発生する負圧によって、吸込みフィルタ12及び吸込み弁13を介して吸い込まれる。そして、吸い込まれた空気の圧力によって開いた状態の吸込み弁13をこの吸い込まれた空気が通過し、圧縮機14内に流入する。このとき、圧縮機14には、前述したように、油供給経路34から油が供給されており、圧縮機14内において、吸い込まれた空気が油を伴って圧縮されることになる。
油を伴って圧縮された圧縮空気は、油入り圧縮空気吐出経路36を通過し、更に、大きな油滴を分離する前述の分離機(図示省略)を経て、油タンク17a内に吐出される。また、分離機で圧縮空気から分離された油は、油タンク17a内に回収されることになる。この回収された油は、油供給経路34を経て圧縮機14に対して供給されることになる。即ち、油は、油回収器17と圧縮機14との間を循環することになる。また、油タンク17a内の油温が上昇して所定の高温の状態になると、前述の油温調整弁(図示省略)が遮断位置から連通位置に切り替わり、オイルクーラー25による油の冷却が行われることになる。
油タンク17a内に吐出された圧縮空気は、油分離フィルタ18を通過し、更に油が分離されることになる。そして、油分離フィルタ18を通過した圧縮空気は、エアクーラ19へ誘導され、エアクーラ19において冷却される。更に、エアクーラ19で冷却された圧縮空気は、除湿器20において除湿が行われる。そして、運転モードが通常運転モードに設定されている状態では、切替弁21は、圧縮空気送出部22側に切り替えられているため、除湿器20及び圧縮空気送出部22のみが連通され、連通経路35側が遮断されている。これにより、除湿が行われた圧縮空気の全てが圧縮空気送出部22を経て空気溜め23に送出されて蓄積されることになる。
一方、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されている状態では、空気が吸込み弁13から吸い込まれてから圧縮機14等を経て圧縮空気として切替弁21に至るまでの形態は、上記と同様となる。しかし、暖気水分除去運転モードでの運転のときには、切替弁21は、連通経路35側に切り替えられているため、除湿器20及び連通経路35のみが連通され、圧縮空気送出部22側が遮断されている。これにより、除湿が行われた圧縮空気の全てが連通経路35を介して圧縮機14の吸込み側に供給される。そして、連通経路35を流動する際に膨張した空気が、圧縮機14に吸い込まれて圧縮され、再び除湿される状態が、繰り返し行われることになる。これにより、空気圧縮装置1内の油中に混入した水分が除去されることになる。
次に、制御部26によって運転状態が制御される空気圧縮装置1の運転モードの切り替えフローについて、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、図3は、空気圧縮装置1の作動を説明するフローチャートの一例である。上位のコントローラから受信した運転開始の指令信号に基づいて空気圧縮装置1の運転が開始されると、制御部26においては、運転モードがまず通常運転モードに設定される(ステップS101)。
最初に運転モードが通常運転モードに設定されると(ステップS101)、次いで、前述した暖気水分除去運転条件が成立しているか否かが判定される(ステップS102)。暖気水分除去運転条件が成立していると判定されると(ステップS102、YES)、運転モードが通常運転モードから暖気水分除去運転モードに切り替えられて設定される(ステップS103)。
上記のように、暖気水分除去運転モードに設定されると、次いで、前述した蓄圧条件が成立しているか否かが判定される(ステップS104)。蓄圧条件が成立していないと判定されると(ステップS104、NO)、運転モードの設定に基づいて、切替弁21が切り替えられる。即ち、運転モードが暖気水分除去運転モードであるため、切替弁21が連通経路35側に切り替えられる(ステップS105)。尚、既に、切替弁21が連通経路35側に切り替えられた状態であれば、その状態が維持される。
上記に対し、蓄圧条件が成立していると判定されると(ステップS104、YES)、運転モードが暖気水分除去運転モードから通常運転モードに切り替えられて設定される(ステップS106)。そして、運転モードの設定に基づいて、切替弁21が切り替えられる。即ち、運転モードが通常運転モードであるため、切替弁21が圧縮空気送出部22側に切り替えられる(ステップS107)。尚、既に、切替弁21が圧縮空気送出部22側に切り替えられた状態であれば、その状態が維持される。
切替弁21が連通経路35側或いは圧縮空気送出部22側に切り替えられると(ステップS105、107)、次いで、モータ15の駆動が開始される(ステップS108)。これにより、圧縮機14の作動が開始され、圧縮空気の生成が行われ、空気溜め23への圧縮空気の送出、或いは、圧縮機14の吸込み側への圧縮空気の送出がおこなわれる。
モータ15の駆動が開始されると、次いで、空気圧縮装置1の運転停止の指令信号が上位のコントローラから受信されているか否かが判定される(ステップS109)。空気圧縮装置1の運転停止の指令信号が受信されていなければ(ステップS109、NO)、再び、ステップS102以降の処理が繰り返される。そして、上記の停止信号が受信されていない状態では、暖気水分除去運転条件が成立しているとともに蓄圧条件が成立していないときは、モータ15の駆動が継続され、生成された圧縮空気の圧縮機14の吸込み側への送出が継続される。また、上記の停止信号が受信されていない状態では、暖気水分除去運転条件が成立しているとともに蓄圧条件が成立しているときは、モータ15の駆動が継続され、生成された圧縮空気の空気溜め23への送出が継続される。
ステップS109において、空気圧縮装置1の運転停止の指令信号が受信されていると判定されると(ステップS109、YES)、モータ15の駆動が停止される。そして、空気圧縮装置1の運転が停止して終了することになる。
一方、ステップS101にて運転モードが通常運転モードに設定された後、暖気水分除去運転条件が成立していないと判定されると(ステップS102、NO)、運転モードの設定に基づいて、切替弁21が切り替えられる。即ち、運転モードが通常運転モードであるため、切替弁21が圧縮空気送出部22側に切り替えられる(ステップS111)。尚、既に、切替弁21が圧縮空気送出部22側に切り替えられた状態であれば、その状態が維持される。
切替弁21が切り替えられると(ステップS111)、次いで、蓄圧条件が成立しているか否かが判定される(ステップS112)。蓄圧条件が成立していると判定されると(ステップS112、YES)、モータ15の駆動が開始される(ステップS108)。これにより、圧縮機14の作動が開始され、圧縮空気の生成が行われ、空気溜め23への圧縮空気の送出が行われる。尚、ステップS108以降の処理については、前述の処理と同様となる。
上記に対し、蓄圧条件が成立していないと判定されると(ステップS112、NO)、モータ15の駆動が停止される(ステップS113)。既に、モータ15の駆動が停止されている状態であれば、その状態が維持される。そして、空気圧縮装置1の運転停止の指令信号が上位のコントローラから受信されているか否かが判定される(ステップS109)。尚、ステップS109以降の処理については、前述の処理と同様となる。
以上説明したように、本実施形態によると、空気圧縮装置1が、切替弁21が除湿器20の下流側と連通経路35とを連通させるように切り替えられた状態のときは、除湿が行われた圧縮空気の全てが、連通経路35を介して圧縮機14の吸込み側に供給される。これにより、除湿された圧縮空気が、連通経路35で膨張した後、その大部分が圧縮機14に吸い込まれて圧縮され、再び除湿される状態が、繰り返し行われることになる。このため、切替弁21を適宜切り替えて運転するだけで、空気圧縮装置1内の油中に混入した水分を容易に除去することができる。よって、空気圧縮装置1が多湿環境下で使用される場合であっても、油の乳化(エマルジョン化)が生じてしまうような事態を容易に回避することができる。そして、空気圧縮装置1内の油中に余分な水分が混入して残留し、その水分の残留が長期化してしまうことも防止できる。これにより、空気圧縮装置1が多湿環境下で使用される場合であっても、潤滑油としての油の劣化を招いてしまうことを抑制でき、更に、金属製の機器の腐食が生じてしまうことも抑制できる。よって、多湿環境下でも安定した稼働を実現することができる。
一方、空気圧縮装置1が、切替弁21が除湿器20の下流側と圧縮空気送出部22とを連通させるように切り替えられた状態のときは、除湿が行われた圧縮空気の全てが圧縮空気送出部22を介して空気溜め23に送出される。このため、空気溜め23に圧縮空気を蓄積する運転状態のときは、圧縮空気を生成する際の効率が低下してしまうことが防止される。即ち、空気溜め23に対して圧縮空気を蓄積するために要する時間の増大、及び、空気溜めに蓄積可能な圧縮空気の最大圧力の低下を招いてしまうことがない。よって、空気溜め23に対して圧縮空気を蓄積する能力が低下してしまうことのない空気圧縮装置1を提供することができる。
従って、本実施形態によると、油の劣化を抑制でき、多湿環境下でも安定した稼働を実現でき、更に、圧縮空気を生成する際の効率の低下も防止することができる、空気圧縮装置1を提供することができる。
また、空気圧縮装置1によると、運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件が成立している場合であっても、空気溜めに圧縮空気を蓄積させるための条件が成立している場合は、運転モードが通常運転モードに設定される。このため、空気溜め23内の圧縮空気の圧力を上昇或いは維持させることが必要な場合には、確実に、圧縮空気が空気溜め23へ送出されることになる。一方、上記の運転が行われることで、一時的に、空気圧縮装置1内に水分が浸入したとしても、空気溜め23に圧縮空気を蓄積させるための条件が解除された時点で、暖気水分除去運転モードに設定させるための条件が成立していれば、速やかに、暖気水分除去運転モードでの運転が行われる。これにより、空気圧縮装置1内に一時的に侵入した水分も、すぐに除去されることになる。よって、多湿環境下でも安定した稼働を実現できるとともに圧縮空気を生成する際の効率の低下も防止することができる空気圧縮装置1において、更に、空気溜め23内の圧縮空気の圧力の上昇或いは維持が必要な場合に、確実に、空気溜め23内の圧縮空気の圧力の低下を防止することができる。
また、空気圧縮装置1によると、運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件を検知する検知部(27、28、29、30、31、32)が複数種類設けられているため、運転モードの暖気水分除去運転モードへの切り替えタイミングを複数種類の条件に基づいて判定することができる。このため、運転モードの暖気水分除去運転モードへの切り替えタイミングの判定に関する柔軟性を向上させることができる。例えば、複数種類の条件のいずれかが成立した場合に運転モードを暖気水分除去運転モードに移行させる設定であれば、暖気水分除去運転モードに設定されるチャンスを確保し易くなる。これにより、油の劣化を招いてしまうことを更に効率よく抑制でき、信頼性の更なる向上を図ることができる。また、複数の種類の条件の全てが成立した場合に運転モードを暖気水分除去運転モードに移行させる設定であれば、暖気水分除去運転モードに設定されるチャンスをより厳密に選択することができる。これにより、暖気水分除去運転モードへの切り替えの必要性が低い場合に運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されてしまうことを抑制でき、エネルギー消費を抑制することができる。
また、空気圧縮装置1によると、運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件について、油回収器17内の油の温度、油回収器17から吐出された圧縮空気の温度、圧縮機14の温度、油タンク17aの温度、外部の空気の温度、或いは、外部の湿度に基づいて、判定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
(1)前述の実施形態では、ファン、エアクーラ、オイルクーラ、を備えた構成を例にとって説明したが、これらの構成については、必ずしも備えられていなくてもよい。また、前述の実施形態では、圧縮機、モータ、油回収器、等の各機器が収容ケースに収容された形態を例にとって説明したが、必ずしもこの形態でなくてもよい。
(2)運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件を検知する検知部については、前述の実施形態で例示した検知部に限られなくてもよい。即ち、前述の実施形態で例示した検知部以外の検知部が設けられた空気圧縮装置が実施されてもよい。
図4は、変形例に係る空気圧縮装置2の構成を模式的に示すブロック図である。図4に示す空気圧縮装置2は、前述の実施形態の空気圧縮装置1と同様に構成される。但し、空気圧縮装置2は、検知部の構成において、空気圧縮装置1とは異なっている。以下、空気圧縮装置2の説明においては、前述の実施形態の空気圧縮装置1と異なる構成について説明する。そして、前述の実施形態と同様に構成される要素についての説明は、前述の実施形態と同一の符号を図面に付すことで、又は、前述の実施形態と同一の用語或いは符号を引用することで、省略する。
図4に示す空気圧縮装置2は、検知部として、空気圧縮装置1と同様に、油温センサ27、タンク温度センサ28、圧縮機温度センサ29、吐出空気温度センサ30、外気温センサ31、及び、湿度センサ32を備えている。そして、空気圧縮装置2は、暖気水分除去運転条件を検知する検知部として、更に、タイマ40、稼働時間検知部41、稼働回数検知部42を備えている。
空気圧縮装置2では、タイマ40、稼働時間検知部41、及び、稼働回数検知部42は、制御部39に設けられている。制御部39は、前述の実施形態の制御部26と同様に構成されている。即ち、制御部39は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路、等を備えて構成され、上位のコントローラ(図示せず)との間で信号の送受信が可能に構成されている。そして、制御部39は、各センサ(27〜33)からの信号を受信可能に構成されている。更に、制御部39は、通常運転モードと暖気水分除去運転モードとに運転モードの設定が可能であって、それらのうちのいずれかの運転モードに基づいて空気圧縮装置2の運転状態を制御するように構成されている。
タイマ40は、制御部39に組み込まれ、時刻を検知する時計として設けられている。タイマ40での検知結果に基づいて成立の有無が判定される暖気水分除去運転条件としては、例えば、あらかじめ設定された所定の時刻の条件が挙げられる。例えば、毎日、定められた時刻になると、暖気水分除去運転条件が検知され、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されてもよい。
稼働時間検知部41及び稼働回数検知部42は、制御部39におけるプロセッサによって構成される。そして、稼働時間検知部41及び稼働回数検知部42は、制御部39のメモリに記憶されたプログラムがプロセッサによって読み出されて実行されることで実現される。
また、稼働時間検知部41は、タイマ40にて計測される時間に基づいて、所定の期間における圧縮機14の稼働時間を検知するように構成されている。例えば、稼働時間検知部41は、上記の所定の期間としての直近の所定時間(例えば、24時間)における圧縮機14の稼働時間を検知するように構成されている。そして、稼働時間検知部41での検知結果に基づいて成立の有無が判定される暖気水分除去運転条件としては、例えば、直近の所定時間において圧縮機14の稼働時間が0時間である条件が挙げられる。
また、稼働回数検知部42は、タイマ40にて計測される時間に基づいて、所定の期間における圧縮機14の稼働回数を検知するように構成されている。例えば、稼働回数検知部42は、上記の所定の期間としての直近の所定時間(例えば、24時間)における圧縮機14の稼働回数を検知するように構成されている。そして、稼働回数検知部42での検知結果に基づいて成立の有無が判定される暖気水分除去運転条件としては、例えば、直近の所定時間において圧縮機14の稼働回数が0回である条件が挙げられる。
上述した空気圧縮装置2によると、運転モードを暖気水分除去運転モードに設定させるための条件について、油回収器内の油の温度、油回収器から吐出された圧縮空気の温度、圧縮機の温度、油タンクの温度、外部の空気の温度、外部の湿度に加え、更に、時刻、圧縮機の稼働時間、及び、圧縮機の稼働回数にも基づいて、判定することができる。
また、空気圧縮装置2は、図3に示す空気圧縮装置1の作動のフローチャートと同様のフローチャートに沿って、作動する。空気圧縮装置2が、図3に示すフローチャートに沿って作動する場合、ステップS102においては、タイマ40、稼働時間検知部41、及び、稼働回数検知部42での検知結果にも基づいて、暖気水分除去運転条件の成立の有無が判定される。
また、空気圧縮装置2は、図3に示すフローチャート以外のフローチャートに沿って作動することもできる。図5は、空気圧縮装置2の作動を説明するフローチャートの一例である。図5に示すフローチャートは、ステップS201及びステップS202が設けられている点において、図3に示すフローチャートとは異なっている。以下、図5に示すフローチャートについて、図3に示すフローチャートと異なるステップについてのみ説明する。
空気圧縮装置2が、図5に示すフローチャートに沿って作動する場合は、ステップS103にて運転モードが暖気水分除去運転モードに設定されると、次いで、制御部39にて、タイマ40で計測される時間に基づいて、暖気水分除去運転条件成立から予め設定された一定時間が経過したか否かが判定される(ステップS201)。
上記の一定時間が経過していると判定されると(ステップS201、YES)、運転モードが暖気水分除去運転モードから通常運転モードに切り替えられて設定される(ステップS202)。運転モードが通常運転モードに設定された(ステップS202)後は、ステップS111以降の処理が繰り返される。一方、上記の一定時間が経過していないと判定されると(ステップS201、NO)、運転モードは暖気水分除去運転モードに設定されたまま、ステップS104以降の処理が繰り返される。
上記のように、運転モードが暖気水分除去運転モードに設定された状態で、暖気水分除去運転条件成立から一定時間が経過した際に、通常運転モードに切り替えられることで、過度に長時間に亘って暖気水分除去運転モードでの運転が継続されてしまうことを防止することができる。