JP4214013B2 - 油冷式空気圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油冷式空気圧縮機に係わり、特に圧縮機本体の吐出側に油分離器を備える油冷式空気圧縮機に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の油冷式空気圧縮機としては、特開平9−222087号公報(特許文献1)に示されるものがある。この容積形の油冷式空気圧縮機は、圧縮機本体内部に形成した圧縮室に、大気から吸い込んだ空気を閉じ込めて、圧縮室の容積を縮小することで空気を圧縮する。圧縮過程で圧縮室に油を注入するようにしている。この注入する油は、圧縮熱を吸収すると共に、圧縮室外に連通する隙間を通る空気漏洩を低減し、圧縮効率を向上する。圧縮が完了した空気は、圧縮室壁の一部が下流側に開くことにより、その開口部を通り圧縮機本体から出る。そして、下流に連なる油分離器に入り、圧縮空気に混入している油を分離する。油を分離した圧縮空気は、熱交換器であるアフタクーラで冷却され、エアドライヤで除湿されて所定箇所に送り出される。一方、分離された油は、油分離器の下部に形成された油溜りに一旦滞留され、そこから油冷却手段であり熱交換器の一種であるオイルクーラで冷却されてから、再び圧縮機本体の圧縮室に戻され循環する。油は圧縮室に供給されるほか、分岐して軸受や軸シール等にも供給され、それら機械要素の潤滑をも担っている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−222087号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
大気は水蒸気を含んでおり、空気圧縮機にも水蒸気を含んだ空気が吸い込まれる。湿度の高い時には圧縮機本体を出た後で温度が下がるに従い、空気中に含まれる水蒸気が凝縮してドレンと呼ばれる凝縮水になり、油溜りの底に滞留する。凝縮水が増えると油に混入して潤滑状態を悪化させる懸念がある。また、油の劣化や発錆の促進原因となるため、定期的な凝縮水の除去作業を必要とする。
【0005】
煩わしい凝縮水の除去作業を省く方法として、圧縮室へ油を供給する際の油冷却能力を制限して給油温度を上げ、吐出される圧縮空気の温度を上昇させて油分離器の内部の温度も高くすることにより、油分離器の内部での水蒸気の凝縮を防止することが考えられる。しかし、この方法では、水蒸気が油分離器内部で凝縮しないだけで、圧縮空気に含有したまま下流に流れ、アフタクーラやエアドライヤで凝縮し、そこでの処理が必要になると共に、次のことが懸念される。
【0006】
圧縮により空気の温度が上昇するので、その熱を吸収して温度上昇を抑制すれば所要動力が低減する。給油の目的のひとつである圧縮熱の吸収は給油温度が低いほど効果的であり、給油温度を上げることはエネルギ効率を低下させる懸念がある。また、給油温度の上昇は油の粘性の低下をもたらし、圧縮室隙間から漏洩防止能力も低下し、内部漏洩の増加による性能低下の懸念が生じる。更には、給油温度を高く設定すると、吐出空気温度、油分離器内部に滞留する油の温度まで、油の循環流路すべての温度が高くなるので、油の品質劣化が促進され、油交換作業の頻繁化あるいは油質劣化放置による潤滑障害が懸念される。
【0007】
本発明の目的は、凝縮水を取り除く作業が無用で使い勝手が良く、高性能で高信頼性の油冷式空気圧縮機を実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、空気を吸入口から吸入して圧縮室で圧縮して吐出口から吐出する圧縮機本体と、前記吐出口から吐出された圧縮空気中の油を分離して下部の油溜りに滞留する油分離器と、前記油溜りに滞留された油を油冷却手段を介して前記圧縮室に供給する給油手段とを備える油冷式空気圧縮機において、前記油分離器内に吐出された空気中から凝縮して前記油溜りに滞留された凝縮水を自動的に蒸発させる蒸発手段を備え、前記蒸発手段は、大気圧環境に露出して大気との空気交換が可能な蒸発皿と、前記油溜りの底部から前記蒸発皿に至る凝縮水管路と、前記油溜りの凝縮水を検出する水分センサと、前記水分センサでの検出信号に基づいて前記凝縮水管路を開閉する開閉弁とを備え、前記蒸発皿の底部と前記圧縮機本体の吸込み流路の大気より低い部分とを連通して前記蒸発皿の残留油を圧力差により供給する油戻し管を備えたことにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複数の実施例について図を用いて説明する。各実施例の図における同一符号は同一物または相当物を示す。本発明は、各実施例に開示した形態に限られるものではなく、公知技術に基づく変更を許容するものである。
【0010】
まず、本発明の第1実施例を図1を用いて説明する。図1は本発明の第1実施例の油冷式空気圧縮機を示す構成図である。本発明はスクリュー式或いはスクロール式圧縮機で代表される容積型の油冷式空気圧縮機に適用されるものであるが、本実施例ではスクリュー式で説明する。
【0011】
油冷式空気圧縮機50は、概略的には、空気を圧縮する圧縮機本体1と、圧縮機本体1で圧縮された空気から油を分離する油分離器12と、油分離器12で油を分離された圧縮空気から水分を除去するドライヤ18と、油分離器12に滞留された油14を圧縮機本体1に供給する給油手段20と、油分離器12に滞留された凝縮水15を蒸発させて処理する凝縮水処理手段30と、圧縮機本体1に吸入する空気を濾過する吸込みフィルター40と、を備えて構成されている。
【0012】
圧縮機本体1はケーシング1a内に雌雄1対で互いに噛み合い回転するロータ2を備えている。それらロータ2の歯溝は相手ロータと本体内面ボアとに囲まれて圧縮室5を形成する。圧縮機本体1のケーシング1aは、複数の部材で構成されており、ロータ2の一側端部において容積拡大中の圧縮室5に連通する吸入口3と、ロータ2の他側端部において容積縮小が進んだ圧縮室5に連通する吐出口4と、ロータ2の回転に伴って吸入口3との連通を断った直後に相当する圧縮室5に連通する注油口6と、を有している。
【0013】
一方のロータ2は圧縮機本体1外より動力入力軸7を介して回転駆動され、これによって他方のロータ2が回転駆動される。雌雄ロータ間の回転伝達は歯車のようにロータ歯面相互の接触によってなされる。ロータ2は両側の回転軸が軸受8によって回転可能に支持されている。なお、軸受8には、油管21からの分岐配管(図示せず)が至り、注油口6への注油と同様に注油されるようになっている。
【0014】
油分離器12は、縦長の円筒状をしており、圧縮機本体1の吐出口4に吐出管11を介して連通されている。油分離器12の入口12aは、油分離器12の上部側面に設けられ、その流入方向が油分離器12の円筒面に沿う方向となるように設けられている。油分離器12は、遠心分離作用により、圧縮空気に混入している油を分離して重力で落下させる機能を有している。なお、濾過作用を有するフィルターを更に内蔵させるようにしてもよい。
【0015】
油分離器12の下部は油溜り13となっており、油14の収納部として機能する。油出口17は油溜り13の上部に位置して油分離器12の側面に設けられている。油分離器12に流入した圧縮空気が冷却されて凝縮水15が発生した場合には、水の密度が油より大きいため、その凝縮水15は油分離器12の底部、つまり油溜り13の下部に油14と分離して滞留する。
【0016】
油分離器12の上部には空気出口16が設けられている。圧縮空気は、空気出口16からドライヤ18に吐出され、ドライヤ18で乾燥されてから所要箇所に送り出される。
【0017】
給油手段20は、油管21、油冷却器22及びファン23を備えて構成されている。油管21は、油分離器12の側面に設けた油出口17と、圧縮機本体1の注油口6とを連通するように設けられている。ここで、油出口17の圧力(高圧)と注油口6の圧力(低圧)との圧力差により、油分離器12内の油14は圧縮機本体1の圧縮室5へ油管21を通して供給される。油配管21の途中には、空冷式の熱交換器である油冷却器22が設けられている。この油冷却器22はファン23による送風で冷却され、これにより油冷却器22を通過する油が冷却される。ファン23は回転数を制御してその風量を調節できるようになっている。
【0018】
凝縮水処理手段30は、凝縮水管32、蒸発皿33、残留油調整弁36、水分センサ37、水分情報信号線38及び電磁開閉弁39を備えて構成されている。
【0019】
凝縮水管32は、油分離器12の凝縮水出口31と蒸発皿33の凝縮水入口33aとを連通するように設けられている。凝縮水出口31は、油出口17より下方に位置し、油分離器12の底面に開口して設けられている。
【0020】
水分センサ37は、水分の有無を検出するセンサであり、油出口17より下方で底面より上方に位置して設けられている。水分センサ37の検出部は油分離器12の内部に露出し、水分センサ37の信号線接続部は油分離器12の外部に露出している。水分センサ37は水分情報信号線38を介して電磁開閉弁39と接続されている。電磁開閉弁39は、水分センサ37からの水分情報に基づいて凝縮水管32を開閉するように、凝縮水管32の途中に設けられている。電磁開閉弁39は水分の存在を示す信号により開き、水分を検出しない時には閉じるよう設定されており、開閉するに要する動力源や電源については説明及び図示を省略する。
【0021】
蒸発皿33は、上面が開口され、大気に開放されている。そして、蒸発皿33の上面から粉塵が侵入するのを防止するため、気体の出入が自由な防塵カバー34で蒸発皿33の上面が覆われている。従って、凝縮水管32及び電磁開閉弁39を通して蒸発皿33に流入した凝縮水は、蒸発皿33で大気中に蒸発される。
【0022】
このようにして、凝縮水を取り除く作業が不要となり、使い勝手の優れたものとすることができる。また、油分離器12内の滞留が過剰にならないように蒸発させることができる。従って、油分離器12から油14を油管21を通して確実に圧縮室5に供給することができ、圧縮機本体1におけるロータ2及び軸受8の潤滑を確実に行なうことができるので、圧縮機の信頼性を高いものとすることができる。
【0023】
残留油調整弁36は、蒸発皿33の側面下部に設けた残留油出口33bと、圧縮機本体1の吸込側に設けた残留油注入口1bとを連通するように設けられている。換言すれば、蒸発皿33は圧縮機本体1の吸込み側に残留油調整弁36を介して連通されている。ここで、残留油出口33bの圧力(大気圧)と残留油注入口1bの圧力(大気圧より低い圧力)との圧力差により、蒸発皿33内の残留油35は圧縮機本体1の吸込み側へ残留油調整弁36を通して供給される。残留油調整弁36の途中には、残留油調整弁36aが設けられている。残留油調整弁36aは、電磁開閉弁39が閉路してから所定時間経過すると、電磁開閉弁39の開路時間に応じた所定時間だけ開路し、残留油35を圧縮機本体1の吸込み側に供給する。従って、残留油35が生ずる度に残留油調整弁36aが開路して残留油35を圧縮室5に戻すことができる。
【0024】
次に、かかる構成の油冷式空気圧縮機の動作を説明する。
【0025】
油冷式空気圧縮機50を運転すると、大気中から吸込みフィルター40を通して塵埃等が濾過された空気が吸入口3に吸込まれ、吸込みフィルター40を通る際の圧損によって大気より若干圧力が低下する。吸入口3に吸込まれる空気は圧縮室5に閉じ込められ、そこへ注油口6を通して油が注入される。ロータ2の回転により圧縮室5は軸方向に移動しながら内容積を縮小し、圧縮室5内の空気は圧縮される。圧縮により空気の体積は縮小し同時に温度が上昇する。所定の値まで空気の圧力が上昇し、圧縮が完了する位置まで移動してきた圧縮室5は吐出口4に連通する。これによって、圧縮空気は、油を伴ったまま吐出口4から吐出管11を通り油分離器12に送られる。
【0026】
油分離器12に入った空気と油は旋回しながら遠心分離され、比重の軽い空気は中心部に集まって上方の空気出口16から吐出される。そして、吐出された空気は、ドライヤ18を通ることで水蒸気を十分なまで取り除かれ、所定箇所に送り出される。油分離器12内に入った空気中の比重の重い油は、遠心力で外周の壁面に付着され、重力で落ちて油溜り13に油14として溜る。
【0027】
油溜り13の油14は、油管21を通り、油冷却器22で冷却されてから圧縮機本体1の注油口6に送られ、圧縮室5内に供給される。このようにして油14は循環され、圧縮された空気から熱を吸収し、油冷却器22で放熱することを繰り返し、熱を運ぶ働きをしていることになる。
【0028】
大気には水蒸気が溶け込んでおり、空気の圧力が上がるに伴い水蒸気の分圧も上昇する。圧縮完了直後は空気温度が最も高く、吐出管11を通り油分離器12内で旋回する過程で若干空気温度が低下する。油分離器12内で水蒸気の温度が露点以下となると、空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水15(ドレンと呼ばれる水)となって油溜り13の下部に溜る。特に高温多湿時期の運転では空気に含有する水蒸気が多く、露点が高いために、凝縮しやすく、その量も多い。凝縮水15は油14よりも密度(比重)が大きいため、油溜り13の下に沈み滞留する。
【0029】
凝縮水15が水分センサ37で検知されると、その情報は水分情報通信線38を介し電磁開閉弁39に伝達され、凝縮水管32の途中を閉じていた電磁開閉弁39が開かれる。凝縮水管32は油分離器12の底に設けた凝縮水出口31を起点とするため、油溜り13の中から水分を選択的に導き出すことができる。水分センサ37ならびに電磁開閉弁39は電力で機能するが、電源の説明及び図示は省略する。
【0030】
凝縮水管32から蒸発皿33に流入した凝縮水は、圧力も大気圧まで降下するため露点が下がり、その上、大気の温度に比較して高い温度であるため、盛んに蒸発する。蒸発皿33は防塵カバー34に覆われているが、気体は自由に通過できるため、水蒸気は外部に散逸される。
【0031】
油溜り13の下部の凝縮水15が出て行くことで油14と凝縮水15との境界面が次第に下がり、水分センサ37では水分が無いと検知するに至る。その情報は水分情報通信線38を経て電磁開閉弁39に伝わり、電磁開閉弁39が閉じられて凝縮水15の抽出が停止される。
【0032】
油分離器12内部は静かな状態ではなく、激しい波立ちがあり、油14と凝縮水15は完全に分離していない。そのため、油溜り13下部から凝縮水15に混じって凝縮水管32を通して抽出されてしまう油がある。この油は、凝縮水のように蒸発皿33で蒸発しないため、蒸発皿33に残留油35として残ってしまう。
【0033】
この残留油35は、残留油調整弁36aが開路されることにより、油戻し管36により圧縮機本体1の吸入口3近くに戻される。吸入口3に戻された残留油35は、圧縮室5に吸込まれ、前述した注油口6から戻される油の循環経路に合流される。吸入口3の内圧は上流側の圧損のため大気圧より若干低く、残留油出口33bの圧力は大気圧であるため、その圧力差により残留油35は蒸発皿33から吸入口3に吸引される。特に吸気閉塞式アンローダを備えている機種においては、アンロード中の吸入口3内圧が非常に下がるため油の吸引に好適である。
【0034】
本実施例においては、凝縮水15の発生時においてのみ、発生しただけの凝縮水を抽出し蒸散できる。よって気温や湿度が変化し凝縮水の発生量が変化しても必要最低限の抽出で済み、無駄なエネルギを浪費せずにすむ利点がある。
【0035】
本実施例によれば、油溜り13に滞留する凝縮水15を一定量以上に増加しないように、通常運転と高温運転とを間欠的に行なうことにより、手間のかかる凝縮水排出作業を省き、給油への凝縮水の混入による潤滑障害を防止し、同時にエネルギ効率を高く維持することができる油冷式空気圧縮機を実現することにある。
【0036】
次に、本発明の第2実施例を図2及び図3を用いて説明する。図2は本発明の第2実施例の油冷式空気圧縮機を示す構成図、図3は図2の油冷式空気圧縮機の動作を説明するタイムチャート図である。なお、第2実施例の説明において、第1実施例と共通する部分の重複する説明は省略する。この第2実施例のものにおいて、第1実施例と共通する構成においては同じ効果を奏するものである。
【0037】
油冷却器22の手前で油管21から分岐し、油冷却器22をバイパスして油冷却器22の下流側に設けた温度調整弁52で再び合流するバイパス管53を備えている。温度調整弁52は、制御装置51の指示に基づいて、油冷却器22を通る主流の油とバイパス管53を通る副流の油の割合を調整し、圧縮機本体1の注油口6に油を送るようになっている。したがって、圧縮機本体1の注油口6に送る油は、全量を主流とする条件から、副流を徐々に増やし、全量を副流とする条件まで選択できる。
【0038】
油分離器12の内部には吐出温度センサ55が備えられている。吐出温度センサ55は温度情報信号線56を介して制御装置51に接続されている。制御装置51には制御アルゴリズム(ソフトウェア)が内蔵され、制御装置51は得られた情報に基づいて温度調整弁52に指示を出す機能を備える。
【0039】
次に、かかる第2実施例の構成の油冷式空気圧縮機の動作の一例を、図3を参照しながら説明する。
【0040】
制御装置51は、通常の運転の時に(図3の時間t1〜t2の時に)、温度調整弁52に主流を増やす指示を出し、圧縮室5に注入する油温を比較的低い温度T1に抑えるように制御する。温度の低い油の注入により冷却能力が増すと共に、注入する油の粘性増によるシール効果も増えるため、圧縮機はエネルギ効率の高い運転を行なうことができる。
【0041】
かかる通常運転を続けると、油溜り13の底に凝縮水15が溜りはじめる。湿度が高い時期には凝縮水15が特に溜り易い。時間の経過により溜る凝縮水量が次第に多くなり、所定の凝縮水量Q2になったことを水分センサ37が検知すると、その情報は制御装置51に伝達される。これに基づいて制御装置51は主流を絞って副流を増す指示を温度調整弁52に出力し、温度調整弁52から供給する油の温度を上昇させる。ここで、注油温度を上げ過ぎると、圧縮機効率を落とすのみならず、各部品の寿命や信頼性に影響を与えることとなる。そこで、吐出温度センサ55で圧縮室5から吐出される空気の温度(油分離器12に流入される温度)を監視し、圧縮室5に注入する油の温度が所定温度T2を超えないように制御装置51で温度調整弁52を制御する高温運転(図3の時間t2〜t3参照)を行なう。
【0042】
この高温運転によって、吐出温度や油溜り13に滞在する油14の温度など全体の温度上昇をもたらし、油溜り13の底にある凝縮水15の温度も高くなり、凝縮水15が次第に蒸発する。蒸発した水分は水蒸気として圧縮空気とともに空気出口16から出てドライヤ18で捕捉されることになる。
【0043】
そして、高温運転によって、図3の時間t2〜t3に示すように、凝縮水は蒸発により次第に減少し、水分センサ37で検知できない凝縮水量Q1までになると、制御装置51はその情報を水分センサ37から得て注油温度を下げるべく温度調整弁52に主流を増やすよう指示する。その結果、通常の運転(図3の時間t3〜t4参照)に戻り、圧縮機のエネルギ効率は高く維持される。
【0044】
凝縮水を蒸発させるための高温運転時におけるエネルギ効率は低下するものの、その時間割合は比較的小さく、時間平均として見た場合のエネルギ効率は、凝縮水の発生しない温度設定による運転のみを行なう場合と比較すれば格段に良くなる。
【0045】
第2実施例によれば、第1実施例と比較して蒸発皿が不要であるなど構成部材が少なくてすむため、比較的簡単に実施することができる。
【0046】
なお、寒冷地の冬季における起動時には、油温が過度に低く油粘性が高くなりすぎ、その攪拌損失が過大となることがある。その場合には、副流を増大して(例えば全部を副流として)、起動後に油温が上昇してきたら主流を増大し、通常運転を行なうように制御することが望ましい。
【0047】
第2実施例における制御装置51は凝縮水の制御のみ特化して説明したが、圧縮機本体1の起動停止や変速など他の制御を併せて司るものであってもかまわない。また、水分センサ37以外の油温等の情報も判断の材料とするアルゴリズムであってもかまわない。
【0048】
次に、本発明の第3実施例を図4及び図5を用いて説明する。図4は本発明の第3実施例の油冷式空気圧縮機を示す構成図、図5は図4の油冷式空気圧縮機の動作を説明するタイムチャート図である。なお、第3実施例の説明において、第1及び第2実施例と共通する部分の重複する説明は省略する。この第3実施例のものにおいて、第1及び第2実施例と共通する構成においては同じ効果を奏するものである。
【0049】
この第3実施例では、圧縮機本体1の吸入口3の上流側に吸気センサ54が備えられている。給気センサ54は、通過する空気の温度と湿度の両方を検出するセンサである。吸気潜さ4の構成は、温度と湿度の両方を検出する一体のセンサでも、温度と湿度各々のセンサを組み合わせたセンサでもかまわない。吸気センサ54は吸気情報信号線57を介して制御装置51に接続されている。吸気情報信号線57は吸気センサ54の出力である温度と湿度の情報の制御装置51へ伝達する手段を構成している。この第3実施例には第2実施例のような水分センサ37及び温度情報信号線56を備えておらず、第3実施例では吸気センサ54及び吸気情報信号線57がその代わりをするようになっている。
【0050】
次に、かかる第3実施例の構成の油冷式空気圧縮機の動作を、図5を参照しながら説明する。
【0051】
制御装置51は、通常の運転の時に(図5の時間t1〜t2の時に)、温度調整弁52に主流を増やす指示を出し、圧縮室5に注入する油温を比較的低い温度T1に抑えるように制御する。温度の低い油の注入により冷却能力が増すと共に、注入する油の粘性増によるシール効果も増えるため、圧縮機はエネルギ効率の高い運転を行なうことができる。
【0052】
かかる通常運転を続けると、油溜り13の底に凝縮水15が溜りはじめる。時間の経過により溜る凝縮水量が次第に多くなるので、その凝縮水量の増加を制御装置51で常に計算して監視する。即ち、制御装置51は、吸入する空気の温度と湿度の情報に基づいて、油分離器12における凝縮水の発生量を計算する。計算された凝縮水量がQ2になると、制御装置51は主流を絞って副流を増す指示を温度調整弁52に出力し、温度調整弁52から供給する油の温度をT2に上昇させて高温運転を行なう(図5の時間t2〜t4参照)。
【0053】
この高温運転によって、吐出温度や油溜り13に滞在する油14の温度など全体の温度上昇をもたらし、油溜り13の底にある凝縮水15の温度も高くなり、凝縮水15が次第に蒸発する。蒸発した水分は水蒸気として圧縮空気とともに空気出口16から出てドライヤ18で捕捉されることになる。ここで、制御装置51は、主に吐出温度センサ55で検出する空気温度に基づいて、油分離器12における凝縮水の蒸発量を計算する。
【0054】
この第3実施例では、凝縮水15の滞留量も蒸発量も推定値であるため、蒸発させるための高温運転時間は計算される値よりも余裕をもって長く設定してある(図5の時間t3〜t4参照)。これによって、油分離器12に滞留された凝縮水を確実に蒸発させることができる。その後、通常運転に戻し(図5の時間t4〜t5参照)、以下これを繰返す。
【0055】
この第3実施例によれば、高温高圧の容器である油分離器12の底近くという厳しい環境にセンサを付ける必要が無くなるため、高価なセンサやそれを取り付ける手間を省くことができる。また、吸気センサ54は、大気環境へ設置されているので、不具合があった場合には交換作業が簡単である。
【0056】
なお、第2本実施例と第3の実施例とを組み合わせて用いてもよい。凝縮水の有無の検知と吸入空気の温湿度の検知の2つの系統を備えることとなり、互いの情報を相互検証することができる。これによって、一方のセンサの異常などがあっても、その判別をすることができるので、空気圧縮機としてより高い信頼性を得ることができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、凝縮水を取り除く作業が無用で使い勝手が良く、高性能で高信頼性の油冷式空気圧縮機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の油冷式空気圧縮機を示す構成図である。
【図2】本発明の第2実施例の油冷式空気圧縮機を示す構成図である。
【図3】図2の油冷式空気圧縮機の動作を説明するタイムチャート図である。
【図4】本発明の第3実施例の油冷式空気圧縮機を示す構成図である。
【図5】図4の油冷式空気圧縮機の動作を説明するタイムチャート図である。
【符号の説明】
1…圧縮機本体、1a…ケーシング、1b…残留油注入口、2…スクリューロータ、3…吸入口、4…吐出口、5…圧縮室、6…注油口、7…動力入力軸、8…軸受、11…吐出管、12…油分離器、13…油溜り、14…油、15…凝縮水(ドレン)、16…空気出口、17…油出口、18…ドライヤ、20…給油手段、21…油管、22…油冷却器、23…ファン、30…凝縮水処理手段、31…凝縮水出口、32…凝縮水管、33…蒸発皿、33a…凝縮水入口、33b…残留油出口、34…防塵カバー、35…残留油、36…油戻し管、36a…残留油調整弁、37…水分センサ、38…水分情報信号線、39…電磁開閉弁、40…吸込みフィルター、51…制御装置、52…温度調整弁、53…バイパス管、54…吸気センサ、55…吐出温度センサ、56…温度情報信号線、57…吸気情報信号線。
Claims (1)
- 空気を吸入口から吸入して圧縮室で圧縮して吐出口から吐出する圧縮機本体と、
前記吐出口から吐出された圧縮空気中の油を分離して下部の油溜りに滞留する油分離器と、
前記油溜りに滞留された油を油冷却手段を介して前記圧縮室に供給する給油手段とを備える油冷式空気圧縮機において、
前記油分離器内に吐出された空気中から凝縮して前記油溜りに滞留された凝縮水を自動的に蒸発させる蒸発手段を備え、
前記蒸発手段は、大気圧環境に露出して大気との空気交換が可能な蒸発皿と、前記油溜りの底部から前記蒸発皿に至る凝縮水管路と、前記油溜りの凝縮水を検出する水分センサと、前記水分センサでの検出信号に基づいて前記凝縮水管路を開閉する開閉弁とを備え、
前記蒸発皿の底部と前記圧縮機本体の吸込み流路の大気より低い部分とを連通して前記蒸発皿の残留油を圧力差により供給する油戻し管を備えたことを特徴とする油冷式空気圧縮機。
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