JP6008600B2 - 4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、自動車用塗料、建材用塗料、電子材料用コーティング剤、感光性樹脂組成物などの原料として有用な4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法に関する。
4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造する方法として、硫酸、パラトルエンスルホン酸などの触媒を用いて1,4−ブタンジオールとアクリル酸とを脱水エステル化反応させることによって4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記方法には、副反応生成物の生成量が多く、さらに触媒として酸が使用されているため、煩雑な中和工程を必要とするとともに、中和によって生成した多量の塩が廃棄物となるという欠点がある。
そこで、前記方法が有する技術的課題を解決する方法として、触媒としてジスタノキサンまたはスタノキサンを用いて1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとをエステル交換反応させることによって4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。しかし、触媒として用いられるジスタノキサンおよびスタノキサンは、いずれも高価であるとともに工業的に入手が困難である。
また、エステル交換触媒としてジブチル錫オキシド、ジ−n−ブチル錫酸化物などのジアルキル錫酸化物を用いることが知られている(例えば、特許文献3の段落[0004]、特許文献6の特許請求の範囲第1項参照)。当該ジアルキル錫酸化物は、その使用量が少量であっても触媒活性に優れており、比較的安価であることから、魅力のある触媒である。しかし、1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとをエステル交換反応させることによって4−ヒドロキシブチルアクリレートを調製する際に、触媒としてジアルキル錫酸化物を用いた場合には、抽出操作によってジアルキル錫酸化物を分離することが困難であるため、触媒として使用することが困難とされている(例えば、特許文献2の段落[0079]および特許文献3の段落[0007]参照)。
独国特許第1518572号明細書 特開平11−43466号公報 特開2000−128831号公報 特開2003−155263号公報 特開2007−161636号公報 特公昭46−39848号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを効率よく製造することができ、しかも当該エステル交換反応の際に使用されるエステル交換触媒を効率よく回収することができる4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法を提供することを課題とする。
従来、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に、エステル交換触媒としてジアルキルスズオキシドを用いた場合には、生成する4−ヒドロキシブチルアクリレートから当該ジアルキルスズオキシドを抽出操作によって分離することが困難であるため、ジアルキルスズオキシドは、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際のエステル交換触媒に適していないと考えられている(例えば、前記特許文献2の段落[0079]および前記特許文献3の段落[0007]参照)。
本発明者らは、従来、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際のエステル交換触媒に適していないと考えられているジアルキルスズオキシドに着目し、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応について鋭意研究を重ねたところ、意外なことに、ジアルキルスズオキシドの存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとを反応させた場合であっても、両者を効率よく反応させることができるのみならず、生成する4−ヒドロキシブチルアクリレートから当該ジアルキルスズオキシドを容易に除去することができるとともに、回収されたジアルキルスズオキシドを1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応の際に再利用することができるというまったく新しい4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法が見出された。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、
(1) 1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造する方法であって、ジオクチルスズオキシドおよびジラウリルスズオキシドから選ばれたエステル交換触媒を用い、当該エステル交換触媒の存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に、アクリル酸アルキルエステル1モルあたりの当該エステル交換触媒の量を0.00001〜0.01モルに調整し、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって得られた反応混合物と水およびシクロヘキサンを含有する抽出溶媒とを混合し、4−ヒドロキシブチルアクリレートを水層に抽出させた後、当該水層と芳香族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒とを混合し、当該水層に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを芳香族炭化水素化合物に抽出させることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを回収することを特徴とする4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法、
) 1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって得られた4−ヒドロキシブチルアクリレートを含有する反応混合物からエステル交換触媒を回収し、当該回収されたエステル交換触媒を1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際にエステル交換触媒として再利用する前記(1)に記載の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法、および
) アクリル酸アルキルエステルが式(I):
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされるアクリル酸アルキルエステルである前記(1)または2)に記載の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法
に関する。
本発明の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法によれば、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを効率よく製造することができ、さらに当該エステル交換反応の際に使用されるエステル交換触媒を効率よく回収することができるという優れた効果が奏される。
本発明の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法は、前記したように、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造する方法であり、アルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドを含有するエステル交換触媒を用い、当該ジアルキルスズオキシドの存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に、アクリル酸アルキルエステル1モルあたりの当該アルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドの量を0.00001〜0.01モルに調整することを特徴とする。
本発明においては、まず、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる。
アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチルなどが挙げられ、これらのアクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アクリル酸アルキルエステルのなかでは、生成する4−ヒドロキシブチルアクリレートとアクリル酸アルキルエステルとを効率よく分離する観点から、式(I):
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされるアクリル酸アルキルエステルが好ましく、R1が炭素数1〜3のアルキル基であるアクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アクリル酸メチルがさらに好ましい。
1,4−ブタンジオール1モルあたりのアクリル酸アルキルエステルの量は、反応速度を高める観点から、好ましくは0.5モル以上であり、未反応のアクリル酸アルキルエステルの量を低減させる観点から、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下である。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に、炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドを含有するエステル交換触媒が用いられる。本発明においては、このように炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドを含有するエステル交換触媒が用いられる点に1つの大きな特徴がある。
ジアルキルスズオキシドを含有するエステル交換触媒を用いた場合、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートからジブチルスズオキシドを除去することが困難であるとされている従来技術の予想に反し、本発明では、ジアルキルスズオキシドの一種である炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドが用いられているにもかかわらず、4−ヒドロキシブチルアクリレートを効率よく製造することができ、しかも当該エステル交換反応の際に使用されるエステル交換触媒を効率よく回収することができるという優れた効果が発現される。
本発明においては、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応を促進させるとともに、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートからエステル交換触媒を容易に除去することができるようにする観点から、当該エステル交換触媒として、炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドが用いられる。
炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、アルキル基2個を有するが、当該アルキル基は、それぞれ同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドとしては、例えば、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジラウリルスズオキシドなどのアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジアルキルスズオキシドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドのなかでは、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応を促進させるとともに、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートから当該炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドを容易に除去することができるようにする観点から、アルキル基の炭素数が4〜12のジアルキルスズオキシドが好ましく、ジオクチルスズオキシドおよびジラウリルスズオキシドがより好ましい。
アクリル酸アルキルエステル1モルあたりの炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドの量は、4−ヒドロキシブチルアクリレートを効率よく製造する観点から、0.00001モル以上、好ましくは0.0001モル以上であり、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートからジブチルスズオキシドを効率よく除去し、炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドを効率よく回収する観点から、0.01モル以下、好ましくは0.005モル以下である。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとを反応させる際には、アクリル酸アルキルエステルが重合することを抑制する観点から、重合防止剤の存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとを反応させることが好ましい。
重合防止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物;パラメトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルカテコール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;メトキノン、ハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、ベンゾキノンなどのキノン系化合物;塩化第一銅;ジメチルジチオカルバミン酸銅などのジアルキルジチオカルバミン酸銅;フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン,N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミノ化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシアミン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合禁止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アクリル酸アルキルエステル100質量部あたりの重合防止剤の量は、アクリル酸アルキルエステルの重合を抑制する観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上であり、4−ヒドロキシブチルアクリレートの純度を高める観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
なお、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際には、有機溶媒を用いることができる。
有機溶媒は、エステル交換反応の反応系内で不活性な有機溶媒であることが好ましい。好適な有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタンなどの有機塩素化合物、ニトロベンゼンなどの芳香族ニトロ化合物、トリエチルホスフェートなどの有機リン化合物、ジメチルスルホキシドなどの有機硫黄化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機溶媒の量は、特に限定されないが、通常、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとの合計量100質量部あたり5〜200質量部程度であればよい。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応を行なう際の反応温度は、反応速度を高める観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、生成する4−ヒドロキシブチルアクリレートの重合を防止する観点から、好ましくは150℃以下である。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応を行なう際の雰囲気は、アクリル酸アルキルエステルの重合を防止する観点から、好ましくは酸素を含有する雰囲気であり、安全性を高める観点から、より好ましくは酸素濃度が5体積%〜大気濃度のガスである。また、その雰囲気の圧力は、通常、大気圧であればよいが、加圧または減圧であってもよい。例えば、その雰囲気の圧力を減圧させた場合には、反応温度を低下させることができるので、副反応を抑制することができるという利点がある。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応を行なう際の反応時間は、1,4−ブタンジオールおよびアクリル酸アルキルエステルの量、反応温度などによって異なるので一概には決定することができないことから、通常、エステル交換反応が完了するまでの時間が選択される。エステル交換反応の終点は、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーなどによって確認することができる。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応は、例えば、精留塔、流動床、固定床、反応蒸留塔などを用いて行なうことかできるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応は、流通式および回分式のいずれの方式によって行なってもよい。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応の進行とともにアルコールが副生する。副生するアルコールは、通常、反応を進行させるために反応系外に除去することが好ましい。副生するアルコールは、例えば、アクリル酸エステルまたは適当な溶媒との共沸混合物として反応系外に除去することができる。
炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドの存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応を行なった後、エステル交換触媒として使用された炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、例えば、濾過などの手段により、生成した反応混合物から回収することができる。
また、目的化合物である4−ヒドロキシブチルアクリレートは、生成した反応混合物から有機溶媒、未反応のアクリル酸エステルおよびアルコールを留去することにより、回収することができる。反応混合物からの未反応のアクリル酸エステルおよびアルコールの除去は、例えば、蒸留、抽出処理などによって行なうことができる。
より具体的には、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートは、例えば、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって得られた反応混合物と水および脂肪族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒とを混合し、4−ヒドロキシブチルアクリレートを水層に抽出させた後、当該水層と芳香族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒とを混合し、当該水層に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを芳香族炭化水素化合物に抽出させることにより、回収することができる。
反応混合物と水および脂肪族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒とを混合した場合には、反応混合物に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを水層に抽出させ、副生した1,4−ブタンジオールジアクリレートなどを脂肪族炭化水素化合物層に抽出させることができるので、当該水層を脂肪族炭化水素化合物層と分離することにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを含有する水層を回収することができる。
脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、イソヘキサン、イソオクタン、イソデカンなどの炭素数が6〜12の脂肪族炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、本願明細書において、脂肪族炭化水素化合物は、例えば、シクロヘキサンなどの脂環構造を有する炭化水素化合物を含む概念のものである。水および脂肪族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒には、本発明の目的を阻害しない範囲内で芳香族炭化水素化合物が含まれていてもよい。
脂肪族炭化水素化合物および水の量は、反応混合物の量などによって異なるので一概には決定することができないことから、反応混合物に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを水層に抽出させ、脂肪族炭化水素化合物層と水層とを分離するのに適した量となるように適宜調整することが好ましい。また、前記抽出操作を行なう際の温度は、特に限定されないが、通常、5〜50℃程度であることが好ましい。
次に、4−ヒドロキシブチルアクリレートが抽出された水層と、芳香族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒とを混合することにより、当該水層に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを芳香族炭化水素化合物層に抽出させ、当該芳香族炭化水素化合物層を水層と分離することにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを含有する芳香族炭化水素化合物層を回収することができる。
芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、芳香族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒には、本発明の目的を阻害しない範囲内で脂肪族炭化水素化合物、水などが含まれていてもよい。
芳香族炭化水素化合物の量は、前記脂肪族炭化水素化合物層と分離された水層の量などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該水層に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを芳香族炭化水素化合物層に抽出させ、芳香族炭化水素化合物層と水層とを分離するのに適した量となるように適宜調整することが好ましい。前記抽出操作を行なう際の温度は、特に限定されないが、通常、5〜50℃程度であることが好ましい。
前記芳香族炭化水素化合物層に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートは、例えば、芳香族炭化水素化合物を蒸発させるなどの方法によって除去することにより、回収することができる。芳香族炭化水素化合物層に含まれている芳香族炭化水素化合物を除去する際の温度は、特に限定されないが、通常、20〜150℃程度であることが好ましい。以上のようにして回収された4−ヒドロキシブチルアクリレートは、必要により、蒸留精製、洗浄などにより、高純度化させてもよい。
一方、脂肪族炭化水素化合物層には、副生した1,4−ブタンジオールジアクリレートが含まれているが、当該1,4−ブタンジオールジアクリレート以外にもアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドが含まれている。したがって、アルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドの有効活用を図る観点から、蒸留、濃縮、洗浄などの方法により、脂肪族炭化水素化合物層から当該アルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドを回収してもよい。
本発明においては、回収されたアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、触媒活性があまり失活せずに維持されているので、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際にエステル交換触媒として再利用することができる。したがって、回収されたアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際にエステル交換触媒として再利用し、当該回収されたアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドの存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることができる。その際、回収されたアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、触媒活性を維持する観点から、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる反応系内の含水率が1000ppm以下となるように乾燥させた後に、再利用することが好ましい。
このように本発明の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法によれば、回収されたアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、その触媒活性が失活するまで繰り返して使用することができるので、本発明の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法は、工業的生産性に優れている。
以上のようにして本発明の製造方法によって得られた4−ヒドロキシブチルアクリレートは、例えば、自動車用塗料、建材用塗料、電子材料用コーティング剤、感光性樹脂組成物などの原料として有用である。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダショウ20段、還流冷却器および気体導入管を取り付け、1,4−ブタンジオール675g(7.5モル)、アクリル酸メチル430g(5.0モル)、シクロヘキサン101.39gおよび重合防止剤としてフェノチアジン0.72gを仕込んだ後、ジオクチルスズオキシド3.6gをフラスコ内に添加し、酸素ガスを7体積%含有する窒素ガスを20mL/minの流量で吹き込みながら1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとを85℃の温度で10時間反応させた。
生成したメタノールとシクロヘキサンとの共沸混合物をデカンター内に入れた後、水50mLをデカンター内に連続添加し、分離したメタノール水溶液をデカンターから除去しながらメタノールの留出がほとんどなくなるまで1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとを85℃の温度で反応させた。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとの反応終了後、得られた反応液を88℃に加熱し、未反応のアクリル酸メチルをシクロヘキサンとの共沸によって留去することにより、反応混合物1109gを得た。
連続抽出(第1抽出)として、脈動型連続抽出塔(直径25mm、長さ1.4mの充填塔)の上部から前記で得られた反応混合物1109gを50mL/hrの流量で、また純水を29.5mL/hrの流量で供給し、連続抽出塔の下部からシクロヘキサンを87.8mL/hrの流量で供給し、塔内を20〜25℃に加熱し、連続抽出することにより、副生した1,4−ブタンジオールジアクリレートを含むシクロヘキサン層と、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび未反応の1,4−ブタンジオールを含む水層とを得た。なお、シクロヘキサン層および水層には、不溶物は存在していなかった。
連続抽出(第2抽出)として、前記で得られた水層1200mLを連続抽出塔の上部から50mL/hrの流量で供給し、連続抽出塔の下部から抽出溶媒としてトルエンを87.5mL/hrの流量で24時間かけて供給した。塔内を35〜40℃に加熱し、連続抽出することにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを含むトルエン層と1,4−ブタンジオールを含む水層とを得た。
前記トルエン層に含まれているトルエン以外の成分をガスクロマトグラフィーによって調べたところ、当該成分には、4−ヒドロキシブチルアクリレート97.68質量%、1,4−ブタンジオール2.01質量%、1,4−ブタンジオールジアクリレート0.11質量%が含まれていた。
以上の結果から、エステル交換触媒としてジオクチルスズオキシドを用いることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを収率よく製造することができる。
実施例2
2L容のガラス製の4口フラスコにオールダショウ20段、還流冷却器および気体導入管を取り付け、1,4−ブタンジオール675g(7.5モル)、アクリル酸メチル430g(5.0モル)、シクロヘキサン67.59gおよび重合防止剤としてフェノチアジン3.60gを仕込んだ後、ジラウリルスズオキシド4.73gをフラスコ内に添加し、酸素ガスを7体積%含有する窒素ガスを吹き込みながら1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとを85℃の温度で10時間反応させた。
生成したメタノールとシクロヘキサンとの共沸混合物をデカンター内に入れ、水50mLをデカンター内に連続添加し、分離したメタノール水溶液をデカンターから除去しながらメタノールの留出がほとんどなくなるまで1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとを85℃の温度で反応させた。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとの反応終了後、得られた反応液を88℃に加熱し、未反応のアクリル酸メチルをシクロヘキサンとの共沸によって留去することにより、反応混合物1156gを得た。
連続抽出(第1抽出)として、脈動型連続抽出塔の上部から前記で得られた反応混合物1128gを50mL/hrの流量で、純水を29.5mL/hrの流量で供給し、連続抽出塔の下部からシクロヘキサンを89.8mL/hrの流量で24時間かけて供給し、塔内を30〜35℃に加熱し、連続抽出することにより、副生した1,4−ブタンジオールジアクリレートを含むシクロヘキサン層と、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび未反応の1,4−ブタンジオールを含む水層とを得た。
連続抽出(第2抽出)として、前記で得られた水層1230mLを連続抽出塔の上部から50mL/hrの流量で供給し、連続抽出塔の下部から抽出溶媒としてトルエンを87.5mL/hrの流量で24時間かけて供給した。塔内を35〜40℃に加熱し、連続抽出することにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを含むトルエン層と1,4−ブタンジオールを含む水層とを得た。前記トルエン層に含まれているトルエン以外の成分における1,4−ブタンジオールジアクリレートの含有率をガスクロマトグラフィーによって調べたところ、その含有率は0.12質量%であった。
以上の結果から、エステル交換触媒としてジラウリルスズオキシドを用いることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを収率よく製造することができ、しかも4−ヒドロキシブチルアクリレートを加熱によって濃縮させても1,4−ブタンジオールがほとんど生成していないことがわかる。
実施例3
2L容のガラス製の4口フラスコ内にオールダショウ20段、還流冷却器および気体導入管を取り付け、1,4−ブタンジオール675g(7.5モル)、アクリル酸メチル430g(5.0モル)、シクロヘキサン67.59gおよび重合防止剤としてフェノチアジン3.60gを仕込んだ後、ジブチルスズオキシド2.49gをフラスコ内に添加し、空気を吹き込みながら1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとを85℃の温度で反応させた。
生成したメタノールとシクロヘキサンとの共沸混合物をデカンター内に入れ、水50mLをデカンター内に連続添加し、分離したメタノール水溶液をデカンターから除去しながらメタノールの留出がほとんどなくなるまで1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとを85℃の温度で反応させた。
1,4−ブタンジオールとアクリル酸メチルとの反応終了後、得られた反応液を88℃に加熱し、未反応のアクリル酸メチルをシクロヘキサンとの共沸によって留去することにより、反応混合物1138gを得た。
連続抽出(第1抽出)として、脈動型連続抽出塔の上部から前記で得られた反応混合物1115gを50mL/hrの流量で、また純水を29.5mL/hrの流量で供給し、連続抽出塔の下部からシクロヘキサンを89.8mL/hrの流量で24時間かけて供給し、塔内を30〜35℃に加熱し、連続抽出することにより、副生した1,4−ブタンジオールジアクリレートを含むシクロヘキサン層と、生成した4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび未反応の1,4−ブタンジオールを含む水層とを得た。
連続抽出(第2抽出)として、前記で得られた水層1210mLを連続抽出塔の上部から50mL/hrの流量で供給し、連続抽出塔の下部から抽出溶媒としてトルエンを87.5mL/hrの流量で24時間かけて供給した。塔内を35〜40℃に加熱し、連続抽出することにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを含むトルエン層と1,4−ブタンジオールを含む水層とを得た。前記トルエン層に含まれているトルエン以外の成分における1,4−ブタンジオールジアクリレートの含有率をガスクロマトグラフィーによって調べたところ、その含有率は0.11質量%であった。
実施例4
実施例1において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例1で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は53.3質量%であった。
実施例5
実施例4において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例4で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例4と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートとの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は52.8質量%であった。
実施例6
実施例5において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例5で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は54.3質量%であった。
実施例7
実施例6において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例6で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例6と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は52.5質量%であった。
実施例8
実施例7において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例7で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例7と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は52.6質量%であった。
実施例9
実施例8において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例8で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例8と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は52.8質量%であった。
実施例10
実施例9において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例9で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例9と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は53.8質量%であった。
実施例11
実施例10において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例10で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例10と同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は53.0質量%であった。
実施例12
実施例11において、ジオクチルスズオキシド2.36gの代わりに実施例11で回収したジオクチルスズオキシド2.36g(含水率:1000ppm以下)を用いたこと以外は、実施例11同様の操作を行ない、反応開始から10時間経過した時点で反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率は52.1質量%であった。
実施例4〜12の結果から、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応の際に使用されたアルキル基の炭素数が4〜18のジアルキルスズオキシドは、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応後に回収し、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際にエステル交換触媒として繰り返して使用した場合であっても触媒活性を持続しているので、再利用することができることがわかる。
したがって、本発明の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法は、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に、エステル交換触媒としてアルキル基の炭素数が4〜18のアルキルスズオキシドを繰り返して使用することができるので、触媒の有効活用を図ることができるという利点を有する。
実施例13
実施例1において、ジアルキルスズオキシドへの水分の影響を調べるために、ジオクチルスズオキシド9gと水6g(反応系内における含水率:0.5質量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率が48質量%に到達するのに要する時間を測定したところ、9時間であった。
実施例14
実施例1において、ジアルキルスズオキシドへの水分の影響を調べるために、ジオクチルスズオキシド9gと水12g(反応系内における含水率:1.0質量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率が48質量%に到達するのに要する時間を測定したところ、10.5時間であった。
実施例15
実施例1において、ジアルキルスズオキシドへの水分の影響を調べるために、ジオクチルスズオキシド9gと水24g(反応系内における含水率:2.0質量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率が48質量%に到達するのに要する時間を測定したところ、12.5時間であった。
実施例16
実施例1において、ジアルキルスズオキシドへの水分の影響を調べるために、ジオクチルスズオキシド9gと水36g(反応系内における含水率:3.0質量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率が48質量%に到達するのに要する時間を測定したところ、15時間であった。
実施例17
実施例1において、ジアルキルスズオキシドへの水分の影響を調べるために、ジオクチルスズオキシド9gと水1.2g(反応系内における含水率:0.1質量%)を添加したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、4−ヒドロキシブチルアクリレートと1,4−ブタンジオールと1,4−ブタンジオールジアクリレートの3成分中に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートの含有率が48質量%に到達するのに要する時間を測定したところ、7時間であった。
実施例13〜17の結果から、ジアルキルスズオキサイドの存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に水分が存在する場合には、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとのエステル交換反応が阻害されることから、当該1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる反応系内における含水率は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%(1000ppm)以下であることがわかる。
実施例18
実施例1において、エステル交換触媒の添加量による影響を調べるために、ジオクチルスズオキシドの量を0.18gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行なった。その結果、実施例1で得られた4−ヒドロキシブチルアクリレートと同量で4−ヒドロキシブチルアクリレートを調製するのに要する反応時間は40時間であった。
以上の結果から、本発明の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法によれば、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを効率よく製造することができ、さらに当該エステル交換反応の際に使用されるエステル交換触媒を効率よく回収することができることがわかる。

Claims (3)

  1. 1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造する方法であって、ジオクチルスズオキシドおよびジラウリルスズオキシドから選ばれたエステル交換触媒を用い、当該エステル交換触媒の存在下で1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際に、アクリル酸アルキルエステル1モルあたりの当該エステル交換触媒の量を0.00001〜0.01モルに調整し、1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって得られた反応混合物と水およびシクロヘキサンを含有する抽出溶媒とを混合し、4−ヒドロキシブチルアクリレートを水層に抽出させた後、当該水層と芳香族炭化水素化合物を含有する抽出溶媒とを混合し、当該水層に含まれている4−ヒドロキシブチルアクリレートを芳香族炭化水素化合物に抽出させることにより、4−ヒドロキシブチルアクリレートを回収することを特徴とする4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法。
  2. 1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させることによって得られた4−ヒドロキシブチルアクリレートを含有する反応混合物からエステル交換触媒を回収し、当該回収されたエステル交換触媒を1,4−ブタンジオールとアクリル酸アルキルエステルとをエステル交換反応させる際にエステル交換触媒として再利用する請求項1に記載の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法。
  3. アクリル酸アルキルエステルが式(I):
    (式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表わされるアクリル酸アルキルエステルである請求項1または2に記載の4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法。
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