JP4520310B2 - (メタ)アクリル酸n−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸n−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法 Download PDF

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Description

[0001] 本発明は(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法に関する。
[0002] (メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルは、高分子凝集剤、潤滑添加剤、紙力増強剤などの原料として幅広く用いられている。特に高分子凝集剤を製造する際、凝集剤の性能を向上させる目的で高分子量化する場合があるが、その時に、水に不溶性のゲル状物質を生じるという問題がある。このゲル状物質の生成メカニズムは詳しくは解明されていないが、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルに含まれる低沸点成分、特に、反応原料である(メタ)アクリル酸エステルやN−アルキルアミノアルキルアルコールが原因と推定されており、低沸点成分が少ない(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルが望まれている。例えば、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルに含まれる低沸点成分の濃度としては、使用目的により異なるため一概には言えないが、0.06質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、更に0.04質量%以下がより好ましいとされている。
[0003] したがって、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法として、(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールを触媒存在下でエステル交換反応させた後、反応液から蒸留操作により未反応の原料を留去し、その後目的生成物である(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを蒸留する方法が知られている。しかしながら、反応液中には原料である(メタ)アクリル酸エステルや目的生成物である(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの二重結合部に、原料であるN−アルキルアミノアルキルアルコールや反応で副生するアルキルアルコールが付加反応する、いわゆるマイケル付加反応による副反応生成物(以下、マイケル付加物と称する)が存在する。このマイケル付加反応は可逆反応であり、エステル交換反応中だけでなくその後の原料留去時や目的生成物の蒸留時にもマイケル付加物の分解反応が起こることから、目的生成物の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステル中に原料などの低沸点成分が混入してしまうという問題があった。これらの問題に対し様々な対策が講じられている。
[0004] 低沸点成分の少ない(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法として、特許文献1や特許文献2には、触媒の存在下でエステル交換反応を行った後の精製を行う際に、反応液から触媒を先に分離し、その後低沸点成分を除去し目的生成物を精製することで高純度の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを製造方法が記載されている。
[0005] また特許文献3や特許文献4には、副反応生成物を熱分解処理することにより(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステル中の低沸点成分を低減させる方法が記載されている。
[0006] また、特許文献5には、反応系に原料のN−アルキルアミノアルキルアルコールを経時的に添加することにより副反応を抑制する方法が記載されている。
特許文献1:特開平11−322680号公報
特許文献2:特開平3−112949号公報
特許文献3:特開平11−222469号公報
特許文献4:特開平10−279540号公報
特許文献5:特開平4−95054号公報
特許文献6:特開平8−268938号公報
[0007] 特許文献1や特許文献2に記載の方法では、反応液から触媒と(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを分離する工程が増え、コストが増大するという問題がある。
[0008] また、特許文献3や特許文献4に記載の方法では、副反応生成物を熱分解処理するための装置が別途必要となり装置コストが増大したり、熱分解処理に時間を要するために生産性の低下を招くなどの問題が生ずる。
[0009] 特許文献5に記載の方法では、おおよそ2000ppm(0.2質量%)もの不純物を含んでおり、十分に(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの純度を高めることができない。
[0010] 本発明はこれらの問題を鑑みてなされたものであり、煩雑な操作を行うことなく、また特別な装置を必要とせずに、低沸点成分、特に原料成分の少ない(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを製造する方法を提供することを目的とする。
[0011] 上記目的は、以下の本発明により達成できる。
[0012] すなわち、本発明は、
(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとの反応による(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法において、
(A)(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとを、触媒の存在下で反応させ、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを含む反応液を得る工程と、
(B)前記工程(A)で得られた反応液から前記(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルよりも沸点の低い成分を留去する工程と、
(C)前記(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを蒸留する工程と、
を有し、
さらに、
(D)前記工程(A)より後で前記工程(C)の前の反応液中の水の濃度を0.01〜1質量%に調整する工程
を有することを特徴とする(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法である。
[0013] このような本発明の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法によれば、煩雑な操作を行うことなく、また特別な装置を必要とせずに、低沸点成分、特に原料成分の少ない(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを製造することができる。
[0014] 本発明の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法において、
前記(メタ)アクリル酸エステルが、式(1)
CH=CRCOOR (1)
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
で表される化合物であることが好ましい。また、前記工程(D)において、前記工程(A)より後で前記工程(C)の前の反応液中に水を投入することが好ましい。また、前記工程(D)は前記工程(B)より前に行われることが好ましい。
[0015] これらの(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法における工程(C)の後に残存する残渣に含まれる触媒の少なくとも一部を、(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとの反応に再利用することも可能である。
[0016] なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」の表現は、メタクリル酸またはアクリル酸を意味するものとする。
[0017] 本発明によれば、煩雑な操作を行うことなく、また特別な装置を必要とせずに、低沸点成分、特に原料成分の少ない(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを得ることができる。
[0018][図1]本発明の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法に使用できる一例である製造装置の構成を示す概略図である。
[図2]本発明の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法に使用できる一例である製造装置の構成を示す概略図である。
[0019] 本発明における(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法は、
(A)(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとを、触媒の存在下でエステル交換反応させ、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを含む反応液を得る工程を有する。
[0020] 本発明において、原料として使用する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等を使用することができる。中でも、エステル交換反応のしやすさから、式(1)
CH=CRCOOR (1)
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
で表される化合物、すなわち、(メタ)アクリル酸メチルあるいは(メタ)アクリル酸エチルが好ましい。特に、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
[0021] 本発明において、原料として使用するN−アルキルアミノアルキルアルコールとしては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール等を挙げることができ、製造する(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルに対応したN−アルキルアミノアルキルアルコールを使用できる。
[0022] 本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールの仕込み比率は任意に設定することができるが、生産性の観点からN−アルキルアミノアルキルアルコール1モルに対して、通常(メタ)アクリル酸エステル0.1〜10モルであり、好ましくは0.5〜4モルである。更にエステル交換反応中に原料の(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはN−アルキルアミノアルキルアルコールを適宜反応系に添加しても良い。
[0023] 本発明で使用する触媒は、エステル交換反応に用いられる公知の触媒を用いればよく、例えば、アルカリ金属アルコラート、マグネシウムアルコラート、チタンアルコラート等の金属アルコラート触媒、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド等の錫含有触媒などが例示できる。本発明においては、反応活性および目的生成物の選択性の観点から、特に錫含有触媒が好ましい。反応に使用する触媒の量は、N−アルキルアミノアルキルアルコール1モルに対して通常0.0001〜0.1モルである。
[0024] 上記のエステル交換反応において、圧力は特に限定は無く、常圧、減圧、加圧のいずれによっても行うことができる。反応温度は通常60℃〜150℃で行うことができる。
[0025] 上記のエステル交換反応は平衡反応であるため、副生するアルキルアルコールを除去しながら反応を進行させることが望ましい。上記のエステル交換反応において溶媒は必ずしも必要ないが、副生するアルキルアルコールを共沸により除去する目的等で溶媒を用いることもできる。用いる溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンなどが挙げられる。溶媒を用いる場合には、例えば特許文献6に記載の次の方法等を利用できる。
[0026] すなわち、蒸留操作により、副生するアルキルアルコールを共沸溶媒と共に共沸物として抜出し、一部は塔頂へ還流し、残りは水と混合しデカンタにより二層分離し、主に共沸溶媒からなる上層は塔へ還流し、主に水およびアルキルアルコールからなる下層は系外へ抜出す方法等を利用できる。
[0027] 上記のようなエステル交換反応を行うに際しては、原料である(メタ)アクリル酸エステル、あるいは反応生成物である(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルが重合することを抑えるため、通常は重合防止剤を反応液中に共存させる。重合防止剤は特に限定されず公知のもの等を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−オキシル化合物等が挙げられる。重合防止剤の添加量は、反応液の質量に対して0.001〜2質量%が好ましい。
[0028] また、酸素、または酸素と不活性ガスの混合物、例えば、空気、酸素とアルゴンの混合ガス等を、エステル交換反応を行う反応系に導入することで、原料である(メタ)アクリル酸エステル、あるいは反応生成物である(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの重合防止の効果がさらに向上するため、好ましい。
[0029] このようなエステル交換反応を行うにあたっては、蒸留装置を用いることが好ましい。使用する蒸留装置は、特に限定されるものではなく公知のもの等を使用することができる。例えば、棚段塔型蒸留塔や充填塔型蒸留塔、薄膜型蒸留装置等が挙げられる。
[0030] 反応の形式は、例えば、回分式反応、連続式反応等一般に用いられる方法において実施することができる。
[0031] 副生するアルキルアルコールを反応系から除去するには、共沸溶媒または(メタ)アクリル酸エステルと、副生するアルキルアルコールとの共沸を利用することができる。原料の(メタ)アクリル酸エステルの過剰な留出によるロスを抑制するためには、塔頂を共沸温度に保つように温度制御することが好ましく、そのため還流液の組成は共沸組成であることが好ましい。しかし通常、共沸混合物は相互溶解性が低く、コンデンサーでの凝縮液は主に共沸溶媒からなる上層と主に副生するアルキルアルコールからなる下層に二層分離する場合がある。凝縮液が二層分離している場合、還流液の組成が上層組成あるいは下層組成に偏り共沸組成からずれてしまうため、凝縮液を共沸組成に近づけた後に還流することが好ましい。凝縮液を共沸組成に近づける方法としては、例えば、凝縮液にスタティックミキサーやポンプで機械的エネルギーを与え共沸組成に近づける方法、凝縮液をデカンタで二層分離させ、上層と下層を共沸組成になるように調整して還流する方法などが挙げられる。
[0032] このようなエステル交換反応を行った後の反応液には、反応生成物の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステル、及び使用した触媒が含まれるが、その他に原料などの低沸点の成分が残存している場合も多い。また、通常は、副反応であるマイケル付加反応により副生したマイケル付加物も含まれており、さらに、マイケル付加反応は可逆反応であるため、マイケル付加物の分解による成分も、工程(A)で得られた反応液中に存在する場合がある。
したがって、本発明では、上記の反応後に、
(B)工程(A)で得られた反応液から(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルよりも沸点の低い成分を留去する工程と
(C)(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを蒸留する工程と、
を有する。
[0033] 上記工程(B)及び工程(C)は、蒸留装置を用いて行うのが好ましい。使用する蒸留装置は、特に限定されるものではなく公知のもの等を使用することができる。例えば、棚段塔型蒸留塔や充填塔型蒸留塔、薄膜型蒸留装置等が挙げられる。前述の工程(A)に使用したものをそのまま用いても良いし、別の蒸留装置を用いても良い。形式は公知の方法であれば特に限定はなく、例えば、回分式、連続式等の一般に用いられる方法において実施することができる。
[0034] 上記工程(B)及び工程(C)の条件は、工程(C)において、できるだけ純度の高い(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルが得られるように適宜適切に選択すれば良い。通常は、工程(A)で得られた反応液に含まれる、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルよりも沸点の低い成分は、反応の原料がほとんどであるため、工程(B)では、反応の原料が留去可能な条件にして原料を回収し、工程(C)では(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルが蒸留される条件にすることが好ましい。圧力には特に限定は無く、常圧、減圧、加圧のいずれによっても実施することができるが、原料である(メタ)アクリル酸エステルや反応生成物である(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルが熱によって重合しやすいため、低い温度で回収可能である減圧下で行うことが好ましい。
[0035] また、工程(B)及び工程(C)を行う際に、残存する原料の(メタ)アクリル酸エステル、および(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルが重合することを抑えるため、工程(A)と同様に、重合防止剤を工程(B)及び工程(C)の反応液に共存させたり、酸素、または酸素と不活性ガスの混合物を導入したりするのが好ましい。工程(A)と、工程(B)及び工程(C)を同じ装置で行う際は、工程(A)で用いた重合防止剤によって、工程(B)及び工程(C)においても重合が抑制できるため、あらためて重合防止剤を添加しなくても良い。
[0036] 本発明においては、さらに、
(D)前記工程(A)より後で前記工程(C)の前の反応液中の水の濃度を0.01〜1質量%に調整する工程を有する。この工程(D)を行うことで、得られる(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルに含まれる低沸点成分、特に原料成分を大きく減らすことができる。このメカニズムについては、詳細は解明されていないが、水によってマイケル付加物の分解反応が抑制されているためと考えられる。
[0037] ここで、水の濃度を0.01〜1質量%とすることが重要である。0.01質量%以上とすることで低沸点成分を十分に減らすことができる。また、触媒の種類にもよるが、1質量%以下とすることで、工程(C)の後に残存する残渣中に含まれる触媒を、再度エステル交換反応の触媒として再利用することができる。水の濃度は0.015質量%〜0.5質量%が好ましく、0.015質量%〜0.2質量%がより好ましい。なお本発明において、水の濃度はカールフィッシャー法により測定したものである。
[0038] 工程(D)において、工程(A)より後で前記工程(C)の前の反応液中の水の濃度を調整する方法は、(i)反応液中に水を投入する、(ii)反応液を湿度の調整された雰囲気下におく、(iii)反応液中に水蒸気を導入する、(iv)エステル交換反応時の水分除去条件を調整する、等をとることができるが、濃度の調整が容易な(i)反応液中に水を投入する方法が好ましい。
[0039] また、工程(D)における水の濃度の調整は、工程(A)より後で工程(C)の前の反応液に対して行うことが重要である。すなわち、工程(A)より後で工程(C)より前に、反応液中の水の濃度が0.01〜1質量%となる状態を経ることが重要である。工程(D)を工程(B)よりも前に行うと、工程(B)において水を低沸点成分として除去できるため、好ましい。工程(D)における水の濃度の調整は、工程(A)より後で工程(C)の前の反応液に対して、複数回実施することもできる。さらに、工程(A)より後で工程(C)の前の反応液に対して、連続的に実施することもできる。また、工程(D)は、反応液の温度を例えば90℃以下に下げた状態で行うことが好ましい。
[0040] 図1および図2は、本発明の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法に使用できる製造装置の構成の例を示したものである。以下、この装置を用いた製造方法を一つの実施の態様として説明する。
[0041] 攪拌機2を備えた蒸留釜1で、原料となる(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールを触媒の存在下でエステル交換反応させる。副生したアルキルアルコールおよび共沸物は蒸留塔3を経てコンデンサー5で凝縮し、液分配器6により、その液の一部は還流ライン7により塔頂に還流される。残りの凝縮液は、図1に示す装置では留出ライン8から抜出される。一方、共沸溶媒として水と相溶性の低い溶媒を用いる場合には図2に示す装置を好適に用いることができる。図2の装置では、残りの凝縮液は留出ライン8において水供給ライン9からの水と混合され、デカンタ10へ導入される。デカンタ10では、上層は上層還流ライン11から蒸留塔3へ還流することができ、下層は下層抜出しライン12から抜出すことができる。反応系内には重合防止用の酸素含有ガスをガス導入口4から導入することもできる。
[0042] エステル交換反応終了後、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを含む反応液を、攪拌機14を備えた別の蒸留釜13へ移液し、未反応原料である(メタ)アクリル酸エステルやN−アルキルアミノアルキルアルコールを蒸留塔15の塔頂から留去させ、その後目的生成物である(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを蒸留する。塔頂から留出する蒸気はコンデンサー17で凝縮され、液分配器18により一部は還流ライン19により塔頂へ還流することができ、また留出ライン20により回収することができる。重合防止用の酸素含有ガスをガス導入口16から導入することもできる。また、水投入口21から水を投入して、反応液と水とを共存させることができる。本発明の方法では、前述したようにエステル交換反応後から(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを蒸留する前までに水を共存させることが望ましい。
[0043] 上記のような本発明の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法で用いた触媒は、工程(C)の後に残存する残渣の中に含まれるが、その少なくとも一部を(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとのエステル交換反応に再利用することも可能である。残渣は全量用いても良く、その一部を用いても良い。また、再利用する際に新しい触媒を追加しても何ら問題は無い。
[0044] また、上記のように触媒を再利用する際には、工程(C)の後に残存する残渣に、触媒を再利用するエステル交換反応の原料の少なくとも一部を混合し、その混合液として回収する方法が、取り扱い性が良くなるため好ましい。混合する原料は、(メタ)アクリル酸エステルでもN−アルキルアミノアルキルアルコールでも良いが、特に、(メタ)アクリル酸エステルを混合することがより好ましい。ただし、混合する原料は、再利用するエステル交換反応の原料であることが肝要である。先に行ったエステル交換反応の原料である必要は必ずしもないが、同じ原料によるエステル交換反応に再利用する方が、より高純度に生成物を得ることができるため好ましい。
[0045] 以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
[0046] [実施例1]
攪拌翼、温度計、20段のオールダーショウ型蒸留塔、冷却装置、液分配器、デカンタを備えた3Lの釜に2−ジメチルアミノエタノール688gおよびアクリル酸メチル1242g、触媒としてジブチル錫オキサイド28g、重合防止剤としてフェノチアジン2gを加え大気圧下で反応を行った。また、共沸溶媒としてはn−ヘキサンを300g投入した。反応装置内には、重合防止用として酸素濃度が8%の窒素/酸素混合ガスを10ml/minで導入した。反応温度は、反応の進行とともに85℃から100℃へとなった。副生するメタノールは塔頂からn−ヘキサンとの共沸で除去され、塔頂から5段目が50℃となるように凝縮液の一部は塔頂へ還流し、残りは137g/hで供給される水と混合しデカンタへ導入した。また、デカンタへ導入された凝縮液は二層分離され上層は塔頂から15段目へ還流され、下層はデカンタの界面が一定に保たれるように抜出した。反応中の塔頂温度は常に50℃であった。
[0047] 反応開始から6時間後に2−ジメチルアミノエタノールの転化率が95%に達した後、蒸留塔内のメタノールを系外へ追い出すために塔頂が60℃になるまで全留出操作を行った。なお、転化率は、反応液中に含まれる、原料の2−ジメチルアミノエタノールのモル数(M)と、目的生成物のアクリル酸2−ジメチルアミノエチルとのモル数(M)としたとき、以下の式で定義されるものであり、実際には、ガスクロマトグラフィー(検出器:FID)から求められる質量比と、分子量とから算出した。
[0048] 転化率(%)=[M/(M+M)]×100
次に、得られた反応液2007g(水分濃度は0.0066質量%)に、水2g(0.1質量%に相当)を投入し、低沸点成分の留去、目的生成物であるアクリル酸2−ジメチルアミノエチルの蒸留を行った。
[0049] 攪拌翼、温度計、20段のオールダーショウ型蒸留塔、冷却装置、液分配器、真空ポンプを備えた3Lの釜に上記の反応液を投入し、系内を3.5時間かけて1.3kPaまで徐々に減圧し、未反応のアクリル酸メチルおよび2−ジメチルアミノエタノールを塔頂より留出させた。最終的な蒸留釜の温度は87℃であり、塔頂の温度は65℃であった。引き続き1.3kPaでアクリル酸2−ジメチルアミノエチルを1時間かけて留出させた。そのときの蒸留釜の温度は87℃であり、塔頂の温度は65℃であった。
[0050] 得られたアクリル酸2−ジメチルアミノエチルは693gであり、アクリル酸メチル0.0122質量%、2−ジメチルアミノエタノール0.0134質量%の合計0.0256質量%を含んだ、原料成分の少ないアクリル酸2−ジメチルアミノエチルを得ることができた。なお、原料成分の濃度は、ガスクロマトグラフィー(検出器:TCD)により求めた。
[0051] [実施例2]
エステル交換反応後に投入する水の量を1g(0.05質量%に相当)とした以外は、実施例1と同様な操作を行った。
[0052] 得られたアクリル酸2−ジメチルアミノエチルは685gであり、アクリル酸メチル0.0128質量%、2−ジメチルアミノエタノール0.0185質量%の合計0.0313質量%を含んだ、原料成分の少ないアクリル酸2−ジメチルアミノエチルを得ることができた。
[0053] さらに、蒸留釜に残った残渣109gを触媒の代わりに使用し、実施例1と同様の方法でエステル交換反応を行った。エステル交換反応開始から6時間後に2−ジメチルアミノエタノールの転化率は95%に達しており触媒の反応性は同等であった。
[0054] その反応液(水分濃度は0.0055質量%)に、水を1g(0.05質量%相当)を投入した後、実施例1と同様の操作を行った。
[0055] 得られたアクリル酸2−ジメチルアミノエチルは716gであり、アクリル酸メチル0.0101質量%、2−ジメチルアミノエタノール0.0146質量%の合計0.0247質量%を含んだ、原料成分の少ないアクリル酸2−ジメチルアミノエチルを得ることができた。
[0056] [比較例1]
水を投入しない事以外は実施例1と同様な操作を行った。なお、エステル交換反応終了時の反応液の水分濃度は0.0070質量%であった。
[0057] 得られたアクリル酸2−ジメチルアミノエチルは680gであり、アクリル酸メチル0.0557質量%、2−ジメチルアミノエタノール0.0425質量%の合計0.0982質量%を含んでいた。
[0058] 本発明の方法は、高分子凝集剤、潤滑添加剤、紙力増強剤などの原料として利用可能な(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造に好適であり、安価で純度の高い製品を製造可能とするものである。
符号の説明
[0059]1 蒸留釜
2 攪拌機
3 蒸留塔
4 ガス導入口
5 コンデンサー
6 液分配器
7 還流ライン
8 留出ライン
9 水供給ライン
10 デカンタ
11 上層還流ライン
12 下層抜出しライン
13 蒸留釜
14 攪拌機
15 蒸留塔
16 ガス導入口
17 コンデンサー
18 液分配器
19 還流ライン
20 留出ライン
21 水投入口

Claims (5)

  1. (メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとの反応による(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法において、
    (A)(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとを、触媒の存在下で反応させ、(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを含む反応液を得る工程と、
    (B)前記工程(A)で得られた反応液から前記(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルよりも沸点の低い成分を留去する工程と、
    (C)前記(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルを蒸留する工程と、
    を有し、さらに、
    (D)前記工程(A)より後で前記工程(C)の前の反応液中の水の濃度を0.01〜1質量%に調整する工程
    を有することを特徴とする(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法。
  2. 前記(メタ)アクリル酸エステルが、式(1)
    CH=CRCOOR (1)
    (式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
    で表される化合物である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法。
  3. 前記工程(D)において、前記工程(A)より後で前記工程(C)の前の反応液中に水を投入する請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法。
  4. 前記工程(D)が前記工程(B)より前に行われる請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法における工程(C)の後に残存する残渣に含まれる触媒の少なくとも一部を、(メタ)アクリル酸エステルとN−アルキルアミノアルキルアルコールとの反応に再利用することを特徴とする(メタ)アクリル酸N−アルキルアミノアルキルエステルの製造方法。
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