JP5582032B2 - (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて得た(メタ)アクリル酸無水物をアルコールと反応させる(メタ)アクリル酸エステルの製造法および精製法に関する。
(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法として、(メタ)アクリル酸無水物をアルコールと反応させる方法などが知られている。特許文献1には、(メタ)アクリル酸無水物と、第2級または第3級アルコール類とを、25℃の水中における酸性度(pKa)が11以下の塩基性化合物の共存下に反応させる方法が記載されている。通常、(メタ)アクリル酸無水物を利用した(メタ)アクリル酸エステルの製造には、精製された(メタ)アクリル酸無水物が使用される。(メタ)アクリル酸無水物の精製法としては(メタ)アクリル酸無水物を含有する反応液をpH7.5〜13.5のアルカリ水溶液で中和洗浄する方法が特許文献1に記載され、粗製生成物を分別蒸留する方法が特許文献2に記載されている。
しかし、(メタ)アクリル酸無水物を含有する液を中和洗浄する方法では、(メタ)アクリル酸無水物の一部が加水分解される点が問題であり、また大量の洗浄廃水が発生するので、その処理が必要となる。(メタ)アクリル酸無水物を含有する液を分別蒸留する方法では、(メタ)アクリル酸無水物の一部が初溜や釜残となって回収できない点が問題であり、蒸留時に重合が発生する危険性もある。以上のように(メタ)アクリル酸無水物を精製する方法では、(メタ)アクリル酸無水物の損失は避けられない。
特許文献3には、未精製の(メタ)アクリル酸無水物とフェノール類とを反応させることを特徴とするフェニル(メタ)アクリレートの製造方法が記載されている。しかし、本発明者らの検討によれば、未精製の(メタ)アクリル酸無水物には、(メタ)アクリル酸無水物の二重結合の一方または双方に酢酸または(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物が数%含まれていることが判明している。これらのマイケル付加した化合物にアルコールを反応させると、下記一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルに(メタ)アクリル酸がマイケル付加した構造の化合物が生成する。このため、特許文献3の製法では、アルコール基準の(メタ)アクリル酸エステルの収率が低下する点が問題であり、また、目的物である(メタ)アクリル酸エステルを蒸留する時に一般式(II)で表されるエステルが混入する点が問題である。
Figure 0005582032
(一般式(II)において、R、Rは水素またはメチル基を示し、Rは任意のアルコール残基を示す。)
本発明者らの検討によれば、一般式(II)で表される化合物は、高温で(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルに分解する事が判った。一般式(II)で表される化合物を含んだ(メタ)アクリル酸エステルを蒸留した場合、蒸留液温が高温になる蒸留後期において(メタ)アクリル酸が発生し、溜出した(メタ)アクリル酸エステルに混入して純度が低下する。
(メタ)アクリル酸無水物とアルコールを反応させる場合、精製のしやすさの観点から、どちらか一方を過剰量仕込み、他方を消失させる方法が行われる事がある。また、反応が完全に進行しない場合、(メタ)アクリル酸無水物とアルコールが両方とも残存する事がある。特に原料と目的生成物の沸点が近い場合、即ち、フェニルメタクリレートのように、その沸点が原料アルコールや(メタ)アクリル酸無水物の沸点に近い場合には、どちらの原料も極力少なくする方が好ましい。
特許文献1の製法では、(メタ)アクリル酸無水物を過剰量使用し、残存した(メタ)アクリル酸無水物をアルカリ水溶液で処理することにより、(メタ)アクリル酸無水物を加水分解させてメタクリル酸にし、アルカリ水溶液に溶解させている。しかし、フェノール性水酸基を持つアルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステルは、加水分解しやすいため、(メタ)アクリル酸無水物を加水分解する際に、一緒に加水分解する。そのため、(メタ)アクリル酸エステルの収率が大きく低下する。また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム水溶液などの弱アルカリ性水溶液による洗浄では、(メタ)アクリル酸無水物を効率よく加水分解する事は出来ない。さらに、これらの方法では多量の洗浄廃水が発生する。
特許文献4には、メタノールなどの反応性の高いアルコールを供給し、残存する(メタ)アクリル酸無水物と反応させる方法が記載されている。しかし、フェノール性水酸基を持つアルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステルは、メタノールとエステル交換反応を起こしやすく、メチルエステルとフェノール性水酸基を持つアルコールが生成する。そのため、(メタ)アクリル酸エステルの収率が大きく低下する。
特開2002−161068号公報 特開2002−275124号公報 特開2000−191590号公報 特開2002−088018号公報
本発明は、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて得た(メタ)アクリル酸無水物をアルコールと反応させて(メタ)アクリル酸エステルの製造する方法において、(メタ)アクリル酸無水物の損失が少なく、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを高収率で得ることを目的とする。さらに、副反応生成物を処理することにより、(メタ)アクリル酸を高収率で回収することを目的とする。また、反応後に残存した(メタ)アクリル酸無水物を効率的に加水分解することにより、(メタ)アクリル酸エステルの精製を容易にする事を目的とする。
前記課題を解決可能な第一の発明は、下記の工程(1)〜(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、工程(2)の反応を90℃以上の温度で行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
(1)下記一般式(I)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
Figure 0005582032
(一般式(I)において、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
(2)アルコールと前記工程(1)の反応で得られる未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る工程、
(3)(メタ)アクリル酸を蒸留により回収する工程。
第二の発明は、前記の工程(1)〜(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、工程(3)の蒸留を90℃以上の温度で行うことを特徴とする方法である。
第三の発明は、前記の工程(1)〜(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、更に前記工程(2)で得られた反応液を90℃以上の温度で加熱する工程(2’)を含む方法である。
第四の発明は、前記の工程(1)〜(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、更に前記工程(2)で得られた反応液を90℃以上の温度で蒸留する工程(2’’)を含む方法である。
第五の発明は、下記の工程(i)及び工程(ii)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
(i)アルコールと(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程、
(ii)前記工程(i)で製造した(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を添加して、残存する(メタ)アクリル酸無水物を加水分解する工程。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、生成した(メタ)アクリル酸無水物を精製せずに使用するので(メタ)アクリル酸無水物の損失を抑えることができる。また、マイケル付加物の分解によって生成した(メタ)アクリル酸の混入を抑制し、高純度、高収率で(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。そして、(メタ)アクリル酸を高収率で回収することができる。さらに、反応後に残存した(メタ)アクリル酸無水物を効率的に加水分解することにより、(メタ)アクリル酸エステルの精製を容易にする事が出来る。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリル酸無水物とは、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、またはアクリル酸とメタクリル酸との混合酸無水物を意味する。また、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを意味する。
第一、第二、第三、及び第四の発明は、工程(1)、工程(2)及び工程(3)を基本工程として含む。そして、第一及び第二の発明は、それぞれ工程(2)または工程(3)を特定の温度条件下で行うことを特徴とする。また、第三及び第四の発明は、工程(2)の後に、それぞれ特定の工程(2’)または工程(2’’)を更に行うことを特徴とする。更に、第五の発明は、工程(i)及び工程(ii)を基本工程として含む。以下、各工程を順次説明する。
[工程(1):下記一般式(I)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程]
Figure 0005582032
(一般式(I)において、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
工程(1)においては、脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とから(メタ)アクリル酸無水物が製造される。
<脂肪酸無水物>
原料として使用される脂肪酸無水物は、上記一般式(I)で表される化合物である。一般式(I)において、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などが挙げられる。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。(メタ)アクリル酸と反応して副生する脂肪酸と生成した(メタ)アクリル酸無水物との蒸留塔における分離性の点から、Rはメチル基、エチル基、ビニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。同様にRはメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。前記理由から、無水酢酸(酢酸同士の酸無水物)が最も好ましい。
脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸を反応させると、(メタ)アクリル酸無水物が製造されるとともに、脂肪酸が副生する。この脂肪酸は、当該脂肪酸無水物が加水分解されて生成する脂肪酸と同じものである。例えば、脂肪酸無水物が無水酢酸の場合、副生する脂肪酸は酢酸である。
また、(メタ)アクリル酸無水物を製造する際に中間体として、脂肪酸無水物に由来する脂肪酸と(メタ)アクリル酸との混合酸無水物(以下、「混合酸無水物」という。)が生成する場合がある。前記一般式(I)において、Rが反応させるアクリル酸から派生するビニル基又はメタクリル酸から派生するイソプロペニル基以外の場合に混合酸無水物が生成する。例えば、無水酢酸とアクリル酸の反応では、一般式(I)において、Rがビニル基、Rがメチル基の混合酸無水物が生成する。したがって、これら混合酸無水物は、更に(メタ)アクリル酸と反応し得るものである。
本発明においては、生成物である(メタ)アクリル酸無水物に対する原料である脂肪酸無水物のモル比が0.01以下になった時点を反応終了時とすることが好ましい。
しかし、脂肪酸無水物が検出限界以下の量となっても、混合酸無水物が残留しているため、反応は(メタ)アクリル酸無水物に対する混合酸無水物の量のモル比が0.02以下となった状態で終了することがより好ましい。例えば、酢酸と(メタ)アクリル酸との混合酸無水物が(メタ)アクリル酸無水物中に存在すると、アルコールと反応させたとき、酢酸エステルと(メタ)アクリル酸となり、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの収率、選択性が低下する。(メタ)アクリル酸無水物の収率、(メタ)アクリル酸エステルを製造する際の収率、選択性の点から、(メタ)アクリル酸無水物に対する混合酸無水物のモル比が0.01以下になった状態で反応を終了することがさらに好ましく、0.005以下になった状態で反応を終了することが特に好ましい。また、反応時間の長大化は副生成物の増加につながるため、(メタ)アクリル酸無水物に対する混合酸無水物のモル比が0.0001以上で反応を終了することが好ましく、0.001以上で反応を終了することがより好ましい。
<(メタ)アクリル酸>
(メタ)アクリル酸無水物の製造に際して、原料の(メタ)アクリル酸は、脂肪酸無水物に対しモル比1〜8倍で使用することが好ましい。脂肪酸無水物基準の(メタ)アクリル酸無水物収率の点から、このモル比は2倍以上であることが好ましく、2.2倍以上であることがより好ましい。また、反応終了時に反応液中の(メタ)アクリル酸量の回収負荷軽減の点から、このモル比は6倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましい。
最初に反応器に原料を仕込む方法としては、1)脂肪酸無水物及び(メタ)アクリル酸の両方を全て仕込む方法、2)いずれか一方の原料を全て反応器に仕込む方法、3)一方の原料の全てを仕込み他方の原料の一部を仕込む方法、又は、4)両方の原料の各一部を仕込む方法のいずれでもよい。2)〜4)の場合、残りの原料は反応開始後に分割又は連続のいずれの方法でも供給することができる。
<触媒>
本発明における(メタ)アクリル酸無水物の製造方法においては、触媒を用いた方が好ましい。(メタ)アクリル酸無水物の分解反応、二量化、三量化、メタクリル酸のマイケル付加などの好ましくない副反応は無触媒でも進行する。無触媒であると反応時間が長くなり、前記の副反応生成物が多くなる。触媒としては金属化合物、酸触媒、塩基触媒、不均一系触媒などが挙げられる。
前記金属化合物としては、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などの無機酸との塩;酢酸塩や(メタ)アクリル酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩;アセチルアセトナート、シクロペンタジエニル錯体などの錯塩などが挙げられる。
前記酸触媒としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩酸及びヘテロポリ酸などの無機酸;メタスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機酸などが挙げられる。また、塩基触媒としては、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。これらの中では、活性が高く、副反応生成物が少ないことから、無機酸や有機酸が好ましく、硫酸、スルホン酸がより好ましい。
前記不均一系触媒としては、塩基性イオン交換樹脂及び酸性イオン交換樹脂などのイオン交換樹脂、活性成分をシリカやアルミナ、チタニアなどの担体に固定した触媒が使用可能である。
また、前記触媒は、操作性の点から必要量の全てが反応系に溶解するものが好ましい。触媒は単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。触媒を反応器に仕込む方法としては、例えば、全量を最初に反応器に仕込む方法、最初に一部を仕込み、残りを後で供給する方法などが挙げられる。前記触媒の使用量は、反応全体を通して使用した前記一般式(I)で表される脂肪酸無水物の仕込み量に対し、モル比で0.000001〜0.5倍が好ましい。反応を円滑に進行させる点から、このモル比は0.000005倍以上が好ましく、0.00001倍以上がより好ましい。一方、触媒の除去や副反応の抑制の点から、このモル比は0.1倍以下が好ましく、0.05倍以下がより好ましい。
<反応条件>
反応は、生産性及び溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて反応に不活性な溶媒を用いることもできる。不活性な溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;ジエチルケトン、ジイソプロピルケトンなどのケトン類などが使用できる。副生する脂肪酸と共沸しやすい溶媒が好ましい。溶媒の使用量は、(メタ)アクリル酸1質量部に対して1〜30質量部が好ましい。
(メタ)アクリル酸無水物を製造する際の反応温度は、30〜120℃の範囲が好ましい。反応を円滑に進行することができる点から、反応温度は50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、反応温度は100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
反応方式としては、例えば、単一の反応器内に全ての原料を仕込んで反応を完結させる回分式、反応器内に原料を連続的に供給して連続的に反応させる連続式、反応器と配合タンクとを備え、反応器と配合タンクとの間で原料を循環させながら反応器で反応させる循環式などが挙げられる。副生する脂肪酸など(メタ)アクリル酸無水物よりも沸点の低い化合物をできるだけ除去するためには、回分式が好ましい。
<脂肪酸の除去>
反応は副生する脂肪酸を系外に除去しながら行う。副生する脂肪酸と他の化合物とを分離する方法としては、例えば、複数段の蒸留塔(精留塔)を用いて蒸留する方法が挙げられる。蒸留塔には、例えば、ステンレス鋼、ガラス、陶磁器製などのラシヒリング、レッシングリング、ディクソンパッキン、ポールリング、サドル、スルザーパッキンなどの形状を有する充填物を使用した充填塔、多孔板塔や泡鐘塔などの棚段塔などが使用できる。蒸留塔と反応器との接続は、反応器の上部に蒸留塔が連接された形態、反応器と接続された別容器の上部に蒸留塔が連接された形態、蒸留塔の上段から下段のいずれかの位置に反応器が接続された形態のいずれでも良い。いずれの接続形態においても、反応器と蒸留塔の間の経路は一つでも複数でも良く、途中に熱交換器などの装置が介在していてもよい。
蒸留塔の理論段数は、副生する脂肪酸と他の化合物との分離性の点から、3段以上が好ましく、5段以上がより好ましい。一方、差圧及び装置規模の点から30段以下が好ましく、20段以下がより好ましい。
蒸留では、還流器を使用しない内部還流方式や還流器を使用して還流比を制御する方式が使用できる。還流比は、装置の規模、生産性、分離性などを考慮し適宜決めることができるが、0.2〜10の範囲が好ましい。還流比は、分離性の点から0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。一方、生産性の点から6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。還流比は反応液の組成にあわせて、反応中に適宜調整することが好ましい。副生する脂肪酸を系外に除去するに際しては、当該脂肪酸と他の化合物とを完全に分離する必要はない。また、当該脂肪酸と共に脂肪酸無水物や混合酸無水物、(メタ)アクリル酸無水物が蒸留塔から溜出する場合は、この溜出液の一部又は全部を別の(メタ)アクリル酸無水物の製造に使用してもよい。
圧力は、反応温度や蒸留塔の段数などを考慮して適宜決めることができる。反応の進行とともに反応液の組成が変わり、全体の蒸気圧が低下するので、副生した脂肪酸を除去するためには精留が実施できる状態になるように圧力を下げていくことが好ましい。反応は蒸留塔内の圧力を調節しながら実施するが、反応温度や蒸留塔の段数などを考慮して塔頂の圧力を調整してもよい。このような方法としては、例えば、大気圧で反応温度80℃に調節して反応を開始した後、徐々に減圧にする方法が挙げられる。
<反応時間>
前記反応における反応時間は、反応器内の一般式(I)で表される脂肪酸無水物又は混合酸無水物の残量をもとに適宜決定できる。しかし、反応を12時間未満で終了させると、無水(メタ)アクリル酸の製造量に対して、精留塔などの設備が大きくなりすぎるという問題があるため、12時間以上とすることが好ましい。(メタ)アクリル酸無水物の収率及び精留塔設備の大きさの点から、反応時間は15時間以上が好ましく、18時間以上がより好ましい。一方、生産性の点から反応時間は72時間以下が好ましく、60時間以下がより好ましく、48時間以下がさらに好ましい。また、反応時間は短いほど副反応が抑制される。
なお、反応時間は、回分式、半回分式の反応装置において脂肪酸の除去を開始したときを反応開始時点として、前記反応終了時までの時間とする。反応の終了は、脂肪酸又は残った(メタ)アクリル酸の除去を停止することによって実施される。
<反応の終了>
本発明では、反応終了時に反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が0.3〜2の範囲になる条件で実施する事が好ましい。前記モル比を0.3以上することにより(メタ)アクリル酸の安定性が向上し、このモル比が大きいほど(メタ)アクリル酸無水物の安定性がより向上するため、0.5以上が好ましい。一方、(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸が多いほど、得られた反応液を使用して(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に反応器が大きくなること、また、後述するように、貯蔵時に容量の大きな容器が必要になること、得られた(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とを分離するための負荷が増大すること、などの理由により、前記モル比は2以下であることが好ましい。前記モル比は1以下がより好ましく、0.8以下が特に好ましい。なお、本発明では、反応全体を通して(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.3以上に維持することが好ましい。
<重合防止剤>
本発明においては、(メタ)アクリル酸無水物の製造に際して重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中に導入されるが、蒸留塔の塔頂や塔の途中にも導入することが好ましい。
重合防止剤としては、酸無水物及び(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン等のキノン系重合防止剤、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合防止剤、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合防止剤、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルや4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのヒンダートアミン系重合防止剤、金属銅、硫酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合防止剤などが挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤の添加量は、その種類や条件により影響されるが、反応液の質量に対して0.01〜10000ppmの範囲が好ましい。また、反応液に酸素を含む気体をバブリングさせることにより、重合防止効果が向上する場合がある。
[工程(2):アルコールと前記工程(1)の反応で得られる未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る工程]
工程(2)においては、前記の方法で得られた未精製の(メタ)アクリル酸無水物とアルコールとを反応させて(メタ)アクリル酸エステルが製造される。
<アルコール>
原料のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−へキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコール、アリルアルコール、ブチンジオール等の不飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1−アダマンタンメタノール等の環式アルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、さらには、これらのアルコールの少なくとも一つの位置がアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基等の置換基に置換されたアルコール、構造中にエーテル結合、エステル結合等を有したアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールの中でも、生成した(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸を蒸留精製する場合の分離性の点から、炭素数5以上のアルコールが好ましい。また、選択性の点から、アミノ基などの(メタ)アクリル酸無水物と反応する置換基を持たないアルコールが好ましい。
さらに、マイケル付加物の分解のしやすさから、フェノール性水酸基を有するアルコールが好ましい。
<(メタ)アクリル酸無水物>
(メタ)アクリル酸エステルを製造するに際して、(メタ)アクリル酸無水物は、アルコールに対しモル比0.5〜5倍で使用することが好ましい。アルコール基準の(メタ)アクリル酸エステル収率の点から、このモル比は0.8倍以上がより好ましく、0.9倍以上がさらに好ましい。また、反応後の(メタ)アクリル酸無水物の処理または回収負荷低減の点から、このモル比は1.2倍以下がより好ましく、1.1倍以下がさらに好ましい。アルコールと(メタ)アクリル酸無水物の比は、(メタ)アクリル酸エステル生成後の精製のしやすさ、アルコールの価格、アルコールの反応性などの観点から適宜決められる。
最初に反応器に原料を仕込む方法としては、1)(メタ)アクリル酸無水物およびアルコールの両方を全て仕込む方法、2)どちらか一方の原料を全て反応器に仕込む方法、3)一方の原料の全てを仕込み他方の原料の一部を仕込む方法、または、4)両方の原料の各一部を仕込む方法のいずれでもよい。分割して仕込む場合、残りの原料は反応開始後に分割または連続のいずれの方法で供給してもよい。
<触媒>
(メタ)アクリル酸エステルの製造においては触媒を用いることが好ましい。無触媒であると反応時間が長くなり、重合や副反応が進行する場合がある。触媒としては工程(1)で使用されるものと同様の金属化合物、酸触媒、塩基触媒、不均一触媒などが使用される。
触媒は単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。触媒を仕込む方法としては、例えば、全量を最初に反応器に仕込む方法、最初に一部を仕込み、残りを後で供給する方法などが挙げられる。触媒は、(メタ)アクリル酸無水物の製造方法と同じ物でも、異なった種類のものでも良い。(メタ)アクリル酸無水物の製造方法の際に使用したものをそのまま使用しても良く、新たに添加しても良い。触媒の使用量は、アルコールに対しモル比で0.0001〜0.3倍が好ましい。反応を円滑に進行させる点から、このモル比は0.001モル以上がより好ましく、0.01モル以上がさらに好ましい。一方、触媒の除去や副反応の抑制の点から、このモル比は0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましい。
<反応条件>
反応は、生産性および溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて反応に不活性な溶媒を用いることもできる。このような溶媒としては、工程(1)で使用されるものと同様の溶媒が挙げられる。溶媒は(メタ)アクリル酸と共沸しやすいものが好ましい。溶媒の使用量は(メタ)アクリル酸無水物の質量に対して1〜30倍が好ましい。
反応温度は、30〜150℃の範囲が好ましい。重合や副反応を抑制する点から、反応温度は120℃以下がより好ましい。一方、反応を円滑に進行させる点から、反応温度は50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。一般に、重合しやすい化合物を使用する反応は、重合防止のために出来るだけ低温で反応を行う事が好ましいとされている。しかし、反応温度を90℃以上とすることによって、(メタ)アクリル酸エステルに(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物を(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸に分解することができることから、重合などのトラブルが起きない範囲内で出来るだけ高い温度で反応をする事が好ましい。
反応方式としては、前記(メタ)アクリル酸無水物の製造の場合と同様の回分式、連続式、循環式などが採用できる。反応は副生する(メタ)アクリル酸を回収しながら行っても良い。圧力は、減圧した状態、大気圧、加圧した状態のいずれでも良い。
(メタ)アクリル酸エステルを製造する反応時間は反応器内の(メタ)アクリル酸無水物またはアルコールの残量を基に適宜決定できる。通常は、(メタ)アクリル酸エステルに対するアルコール及び/または(メタ)アクリル酸無水物のモル比が0.05以下になった時点で反応を終了する。回収した(メタ)アクリル酸中の(メタ)アクリル酸無水物及び/またはアルコール含有量を減らす面から、このモル比は0.03以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。反応時間は、仕込み比、反応温度から適宜決めればよいが通常0.5〜48時間である。収率の点から反応時間は1時間以上が好ましく、2時間以上がさらに好ましい。重合及び副反応抑制の点から反応時間は36時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましい。
<重合防止剤>
(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法においては、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中に導入されるが、蒸留塔の塔頂や塔の途中にも導入することが好ましい。重合防止剤は、アルコール、(メタ)アクリル酸無水物および(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。重合防止剤としては、工程(1)で使用されるものと同様の重合防止剤が挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合防止剤の添加量は、その種類や条件により影響されるので一概には言えないが、反応液の質量に対して0.01〜10000ppmの範囲が好ましい。また、反応液に酸素を含む気体をバブリングさせることにより、重合防止効果が向上することがある。
[(メタ)アクリル酸エステルの精製]
本発明においては、必要に応じて、前記工程(2)において、(メタ)アクリル酸無水物を過剰に仕込み、反応液中から原料アルコールを消失させ、(メタ)アクリル酸無水物を処理した後に精製することにより、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得る事が出来る。あるいは、原料アルコールと(メタ)アクリル酸無水物が残った状態で、(メタ)アクリル酸無水物を処理した後、反応液中の原料アルコールと(メタ)アクリル酸エステルを蒸留などの方法で分離することにより、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得る事が出来る。
<塩基性化合物>
(メタ)アクリル酸無水物の処理方法は、特に制限されないが、得られた反応液に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を添加することにより、残存する(メタ)アクリル酸無水物のみを加水分解処理することが好ましい。
アルカリ金属とアルカリ土類金属では、アルカリ土類金属を用いた場合にその(メタ)アクリル酸塩の溶解性が低く、析出する事があるため、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が好ましい。処理効率や(メタ)アクリル酸エステルが加水分解する可能性が低い点から、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。以上の化合物は結晶水や不純物としての水を含有していても良い。この処理は後記の工程(2’)の加熱と同時に実施しても良い。
塩基性化合物の使用量は反応液中に残存する(メタ)アクリル酸無水物1モルに対し、0.1〜20モルが使用できる。(メタ)アクリル酸無水物の処理効率の点から使用量は0.5モル以上が好ましく、1モル以上がより好ましい。塩基性化合物の残存量を減少させる点から、15モル以下が好ましく、10モル以下がより好ましい。前記工程(1)および(2)で触媒として酸性化合物を使用した場合、酸性化合物を中和する量の塩基性化合物を追加する必要がある。
<水>
この処理の際に残存する(メタ)アクリル酸無水物1モルに対し、0.1〜10モルの水を前記反応液に添加することにより、(メタ)アクリル酸無水物の処理効率がより向上する。処理効率の点から水の使用量は0.3モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましい。精製のしやすさの点から、水の使用量は5モル以下が好ましく、3モル以下がより好ましい。
塩基性化合物を反応器に仕込む方法としては、1)粉末または粒子のまま投入する方法、2)水、(メタ)アクリル酸または有機溶媒などとのスラリーとして導入する方法、3)粉末または粒子のまま投入した後、水を供給する方法、又は4)水を供給した後、粉末または粒子のまま投入する方法のいずれでもよく、分割又は連続供給などいずれの方法で実施してもよい。
<処理条件>
処理は、生産性及び溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要により反応に不活性な溶媒を用いることもできる。不活性な溶媒としては、前記工程(1)で使用されるものと同様な溶媒が使用できる。不活性な溶媒を使用する場合、その使用量としては、(メタ)アクリル酸エステルの質量に対して1〜30倍量が好ましい。溶媒としては、副生する脂肪酸と共沸しやすいものが好ましい。
処理温度は、30〜150℃の範囲が好ましい。反応を円滑に進行することができる点から、処理温度は50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、反応温度は140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
処理方式としては、例えば、回分式、連続式、循環式などが挙げられる。
処理時間は、(メタ)アクリル酸無水物量、仕込み量、反応温度から適宜決定することができるが、通常0.5〜48時間である。(メタ)アクリル酸無水物残量を減少させる観点から反応時間は1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。重合及び副反応抑制の観点から反応時間は36時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましい。
処理において、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤およびその使用方法は、工程(1)と同様のものが採用できる。
[工程(3):(メタ)アクリル酸を蒸留により回収する工程]
前記工程において(メタ)アクリル酸無水物とアルコールを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造すると、(メタ)アクリル酸エステルとほほ等モルの(メタ)アクリル酸が生成する。
<蒸留>
(メタ)アクリル酸を回収する方法としては、例えば、単蒸留、複数段の蒸留塔(精留塔)を用いて蒸留する方法などが挙げられる。蒸留塔には、例えば、ステンレス鋼、ガラス、陶磁器製などのラシヒリング、レッシングリング、ディクソンパッキン、ポールリング、サドル、スルザーパッキンなどの形状を有する充填物を使用した充填塔、多孔板塔や泡鐘塔などの棚段塔などが使用できる。蒸留塔と反応器との接続は、反応器の上部に蒸留塔が連接された形態、反応器と接続された別容器の上部に蒸留塔が連接された形態、蒸留塔の上段から下段のいずれかの位置に反応器が接続された形態のいずれでも良い。いずれの接続形態においても、反応器と蒸留塔の間の経路は一つでも複数でも良く、途中に熱交換器などの装置が介在していてもよい。
蒸留塔の理論段数は、回収される(メタ)アクリル酸の純度の点から、3段以上が好ましく、5段以上がより好ましい。一方、差圧及び装置規模の点から30段以下が好ましく、20段以下がより好ましい。蒸留では、還流器を使用しない内部還流方式や還流器を使用して還流比を制御する方式が使用できる。還流比は、装置の規模、生産性、分離性などを考慮し適宜決めることができるが、0.2〜10の範囲が好ましい。還流比は、(メタ)アクリル酸の純度の点から、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。一方、生産性の点から6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。還流比は反応液の組成にあわせて、反応中に適宜調整することが好ましい。
蒸留釜内の反応液の温度(以下「蒸留温度」という。)は10〜150℃程度が採用される。重合や副反応を抑制する点から蒸留温度は140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。一方、蒸気量を十分に維持する点から蒸留温度は30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。この前の工程でアルコールと未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを90℃未満で反応させた場合は、蒸留温度を初期又は途中から90℃以上にすることが好ましい。蒸留温度を90℃以上にすることによって、(メタ)アクリル酸エステルに(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物を(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸に分解することができる。
圧力は、温度や蒸留塔の段数などを考慮して適宜決めることができる。蒸留温度を低く出来る点から減圧下で蒸留することが好ましい。
<重合防止剤>
(メタ)アクリル酸の回収においては、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中だけでなく蒸留塔の塔頂や塔の途中にも導入することが好ましい。反応器に使用する重合防止剤は、(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。重合防止剤としては、工程(1)で使用されるものと同様の重合防止剤が挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸の回収量は、回収した(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量の低減の観点から、処理する反応液に含まれる(メタ)アクリル酸の96質量%以下にすることが好ましく、94質量%以下にすることがより好ましく、92質量%以下にすることがさらに好ましい。
回収した(メタ)アクリル酸は再度前記工程(1)あるいは別の反応で用いることが可能である。純度の高い(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸無水物以外の混入物の少ない(メタ)アクリル酸は、そのまま新たに工程(1)に使用する事が可能である。(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステルやアルコールなどが混入している(メタ)アクリル酸は、工程(2)に使用する事が可能である。混入物のある(メタ)アクリル酸は、再度蒸留しても良い。蒸留は本操作で得られた溜分のみで実施してもよく、新たに製造した(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液や溜分に混合しても良い。
回収した(メタ)アクリル酸を使用する際に、別途新たな(メタ)アクリル酸を追加使用してもよい。別途新たな(メタ)アクリル酸を追加使用する場合、回収した(メタ)アクリル酸と新たな(メタ)アクリル酸との比率は、回収した(メタ)アクリル酸100質量部に対し、新たな(メタ)アクリル酸を1〜99質量部混合させることが出来る。なお、以上の工程および回収(メタ)アクリル酸の使用は、1回でも複数回繰り返してもよい。
以上において、本発明群の基本工程である工程(1)、工程(2)及び工程(3)、並びに第一及び第二の発明が特徴とする工程(2)、工程(3)を特定の温度条件等について説明した。
続いて、工程(2)の後にそれぞれ特定の工程(2’)または工程(2’’)を行うことを特徴とする第三及び第四の発明について説明する。
[工程(2’):前記工程(2)で得られた反応液を90℃以上の温度で加熱する工程]
<加熱処理>
工程(2)の後に必要に応じて、前記の方法で得られた(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液を90℃以上の温度で加熱処理することにより、(メタ)アクリル酸エステルに(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物を(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸に分解することができる。加熱処理温度は、90〜150℃の範囲が好ましい。加熱処理時間の点から、加熱温度は100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、反応温度は140℃以下がより好ましく、130℃以下がより好ましい。
加熱処理は、前の工程の触媒が残留した状態で実施してもよく、触媒を吸着剤などで処理して除いた後に実施しても良い。酸触媒又は塩基触媒が存在する場合、塩基性化合物または酸性化合物で中和処理しても良い。重合や(メタ)アクリル酸エステル分解抑制の点から、酸触媒が存在する場合、塩基性化合物で中和処理することが好ましい。
塩基性化合物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩や(メタ)アクリル酸塩などのカルボン酸塩、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。酸性化合物としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩酸およびヘテロポリ酸などの無機酸、メタスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機酸などが挙げられる。
加熱処理は、生産性および溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要により反応に不活性な溶媒を用いることもできる。不活性な溶媒としては、工程(1)で使用する溶媒と同様のものが挙げられる。溶媒の使用量は(メタ)アクリル酸の質量に対して1〜30倍量が好ましい。溶媒は副生する(メタ)アクリル酸と共沸しやすいものが好ましい。圧力は、減圧した状態、大気圧、加圧した状態のいずれでも良い。
加熱処理時間は、(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物の量、加熱処理温度から適宜決めればよいが通常0.5〜48時間である。(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物の分解量の点から反応時間は1時間以上が好ましく、2時間以上がさらに好ましい。重合及び副反応抑制の点から反応時間は36時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましい。
加熱処理においては、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸に対して不活性なものが好ましい。重合防止剤の例としては、工程(1)の重合防止剤と同じものが挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合防止剤の添加量は、その種類や条件により影響されるので一概には言えないが、反応液質量に対して0.01〜10000ppmの範囲が好ましい。また、反応液に酸素を含む気体をバブリングさせることにより、重合防止効果が向上することがある。
[工程(2”):前記工程(2)で得られた反応液を90℃以上の温度で蒸留して(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液を得る工程]
第四の発明は、工程(2)と工程(3)の間に工程(2”)を行う(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
<蒸留>
本発明においては(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸を含む反応液を蒸留することにより、両成分を一緒に回収することができる。蒸留塔、蒸留塔と反応器との接続形態、蒸留塔の理論段数、還流器の有無、還流比、蒸留塔の圧力制御基準、重合防止剤の選択基準と添加箇所等は、工程(3)の場合と同様の条件を採用することができる。
蒸留温度は10〜200℃の範囲で実施できる。重合や副反応を抑制する点から蒸留温度は140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。蒸気量を十分に維持する点から蒸留温度は30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。蒸留温度を初期又は途中から90℃以上にすることによって、(メタ)アクリル酸エステルに(メタ)アクリル酸がマイケル付加した化合物を(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸に分解することができる。
回収した(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸は、再度蒸留することにより、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルを分離して回収することが出来る。蒸留は本操作で得られた溜分のみで実施してもよく、新たに製造した(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液や溜分に混合しても良い。また、抽出や洗浄、晶析などの操作により、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸を分離して、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸を回収しても良い。
(メタ)アクリル酸エステルの製造工程において得られた(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸等を含む反応液から、蒸留等によって(メタ)アクリル酸を回収・除去することによって、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする液が得られる。
本発明においては、必要に応じて、前記工程(2”)で得られた(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを含む溜出液に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を添加することにより、残存する(メタ)アクリル酸無水物のみを加水分解処理することが好ましい。この場合の(メタ)アクリル酸無水物の処理方法は、工程(2)において前述したとおりである。
[(メタ)アクリル酸エステルの精製]
本発明においては、工程(3)の後に、必要に応じて、工程(3)で回収した(メタ)アクリル酸を精製することにより、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。精製方法としては、特に制限されないが、蒸留、吸着処理、洗浄、晶析等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルを蒸留する方法としては、例えば、単蒸留、複数段の蒸留塔(精留塔)、薄膜蒸留などの方法が挙げられる。蒸留塔、蒸留塔と反応器との接続形態、蒸留塔の理論段数、還流器の有無、還流比、蒸留塔の圧力制御基準、重合防止剤の選択基準と添加箇所等は、工程(2”)と同様の条件を採用することができる。
<洗浄>
(メタ)アクリル酸エステルを洗浄する方法としては、水、食塩や硫酸ナトリウムなどの塩の水溶液、塩基性物質の水溶液によって洗浄する方法が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸水素塩;ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基等が挙げられる。また、これらの塩基性物質を2種類以上組み合わせて使用することも可能である。洗浄は1回でも複数回でも良い。更に、異なる塩基性物質の水溶液により複数回の洗浄を行うこともできる。塩基性物質で洗浄後は、有機層に残存する塩基性物質を除くために水による洗浄を行うことが好ましい。洗浄に使用する水は、蒸留水やイオン交換樹脂等で脱イオンされた純水を使用することが好ましい。
洗浄用水溶液中の塩や塩基性物質の濃度は1〜30質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。洗浄水の量が1質量%未満であると、十分に洗浄の効果が果たせず、また30質量%を超えると析出物が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸エステルを洗浄する際は有機溶媒を使用しなくても良いが、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル含む反応液に有機溶媒を加えて混和させてもよい。溶媒としては工程(2)で挙げたものと同じものが使用できる。溶媒の質量は、反応液に対し0.1〜10倍が好ましく、0.5〜5倍がより好ましい。この質量比が0.1倍未満であると、洗浄に使用する水や水溶液への(メタ)アクリル酸エステルの移動が起こる場合があり、また10倍を超えると溶媒を回収する際に時間がかかる。
<吸着処理>
(メタ)アクリル酸エステルを吸着処理する方法としては、カラムクロマトグラフィー、吸着剤を懸濁して不純物を吸着させた後吸着剤を分離する方法などが挙げられる。
吸着剤としては、活性白土、ハイドロタルサイト類、多孔質の重合体、イオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂)、活性炭、吸着樹脂、シリカゲル、シリカアルミナ系吸着剤、アルミナゲル、活性アルミナ、二酸化ケイ素、ゼオライト等が挙げられる。
吸着剤の使用量は(メタ)アクリル酸エステルに対し0.05〜20質量%である。特に0.5〜10質量%が好ましい。少ない場合は不純物の低減効果が充分に得られず、多い場合は吸着剤に対する(メタ)アクリル酸エステルの合計吸着量が多くなって、(メタ)アクリル酸エステルの吸着によるロスや吸着剤をろ過などにより分離する場合の負荷が大きくなる。
(メタ)アクリル酸エステルと吸着剤とを接触させる際の温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃である。処理時の副反応抑制の点から接触させる際の温度は、60℃以下、特に40℃以下が好ましい。反応液と吸着剤とを接触させる際の時間は、吸着剤の種類やその使用量などによって異なるが、通常、1〜120分間程度、特に3〜60分間程度が好ましい。
吸着剤によって吸着処理した後には、例えば、ろ過などの方法により、(メタ)アクリル酸エステルと吸着剤とを分離することができる。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂製メンブランフィルターなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルと吸着剤とを接触させる際は有機溶媒を使用しなくても良いが、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル含む反応液に有機溶媒を加えて混和させてもよい。溶媒としては工程(1)で挙げたものと同じものが使用できる。溶媒の質量は、反応液に対し0.1〜10倍が好ましく、0.5〜5倍がより好ましい。この質量比が0.1倍未満であると、洗浄に使用する水や水溶液への(メタ)アクリル酸エステルの移動が起こる場合があり、また10倍を超えると溶媒を回収する際に時間がかかる。
<晶析>
(メタ)アクリル酸エステルを晶析する方法としては、反応液の温度を下げて結晶を析出させる方法、反応液中の低沸物質を除くことによって濃縮して結晶を析出させる方法などが挙げられる。晶析を行う場合、溶媒を添加しても良い。溶媒は飽和炭化水素溶媒が好ましい。溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、イソオクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼンなどが挙げられる。またこれらの2種以上を混合して使用しても良い。(メタ)アクリル酸の回収率の点から精製は蒸留で実施することが最も好ましい。
第五の発明は、下記の工程(i)及び工程(ii)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
(i)アルコールと(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程
(ii)前記工程(i)で製造した(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を添加して、残存する(メタ)アクリル酸無水物を加水分解する工程。
[工程(i)]
工程(i)は前記の工程(2)と同様に実施することができる。
[工程(ii)]
<塩基性化合物>
工程(ii)においては塩基性化合物が使用される。アルカリ金属とアルカリ土類金属では、アルカリ土類金属を用いた場合にその(メタ)アクリル酸塩の溶解性が低く、析出する事があるため、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が好ましい。処理効率や(メタ)アクリル酸エステルが加水分解する可能性が低い点から、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。以上の化合物は結晶水や不純物としての水を含有していても良い。
塩基性化合物の使用量は残存(メタ)アクリル酸無水物1モルに対し、0.1〜20モルが使用できる。(メタ)アクリル酸無水物の処理量の点から使用量は0.5モル以上が好ましく、1モル以上がより好ましい。塩基性化合物の残存量の点から、15モル以下が好ましく、10モル以下がより好ましい。前記工程(i)等において触媒として酸性化合物を使用した場合、酸性化合物を中和する量の塩基性化合物を追加する必要がある。
<水>
この処理の際に残存する(メタ)アクリル酸無水物1モルに対し、0.1〜10モルの水を前記反応液に添加することにより、より(メタ)アクリル酸無水物の処理効率が向上する。処理効率の点から水の使用量は0.3モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましい。精製のしやすさの点から、水の使用量は5モル以下が好ましく、3モル以下がより好ましい。
塩基性化合物を反応器に仕込む方法としては、1)粉末または粒子のまま投入する方法、2)水、(メタ)アクリル酸または有機溶媒などとのスラリーとして導入する方法、3)粉末または粒子のまま投入した後、水を供給する方法、又は4)水を供給した後、粉末または粒子のまま投入する方法のいずれでもよく、分割又は連続供給などいずれの方法で実施してもよい。
<溶媒>
処理は、生産性及び溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要により反応に不活性な溶媒を用いることもできる。不活性な溶媒としては、前記工程(1)で使用されるものと同様な溶媒が使用できる。不活性な溶媒を使用する場合、その使用量としては、(メタ)アクリル酸エステルの質量に対して1〜30倍量が好ましい。溶媒としては、副生する脂肪酸と共沸しやすいものが好ましい。
<反応条件>
処理温度は、30〜150℃の範囲が好ましい。反応を円滑に進行することができる点から、処理温度は50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、反応温度は140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
処理方式としては、例えば、回分式、連続式、循環式などが挙げられる。
処理時間は、(メタ)アクリル酸無水物量、仕込み量、反応温度から適宜決定することができるが、通常0.5〜48時間である。(メタ)アクリル酸無水物残量の観点から反応時間は1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。重合及び副反応抑制の観点から反応時間は36時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましい。
処理において、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤およびその使用方法は、工程(1)と同様のものが採用できる。
本発明の方法は加水分解しやすいフェノール性水酸基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、特にフェノールや(メタ)アクリル酸などの原料と沸点が近いフェニル(メタ)アクリレートの精製に有効である。
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。実施例において、分析および定量はガスクロマトグラフィー(カラム:J&B Scientific社製 DB−5 長さ30m×内径0.53mm 膜厚3μm、インジェクション温度:200℃、ディテクター温度:250℃、カラム温度及び時間:60℃で1分間保持、10℃/分で昇温、250℃で保持)により行なった。
(製造例1)メタクリル酸無水物の製造:工程(1)の実施
精留塔(内径35mm、理論段数10段)、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を付した3Lの5つ口フラスコを準備した。無水酢酸918g(9.0mol)、メタクリル酸1705g(19.8mol)、触媒として炭酸ナトリウム9.5g(0.09mol)および重合防止剤としてフェノチアジン2.6gをこのフラスコ内に仕込んだ。フラスコの内液をエアーバブリングおよび攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温が80℃に達した後、1時間保持して反応原液の組成が平衡に達するようにした。さらに30分後、エアーバブリングした状態で真空ポンプを起動させて減圧を開始した。反応原液の温度70℃、フラスコ内の圧力6.4kPaで全還流状態とした。その後、還流比1.5で塔頂から溜出液を抜き出し、この時点を反応開始とした。8時間後に還流比を2.0に変えて、24時間かけて反応を行った。この間、塔の重合防止のためフェノチアジン192mgを溶解させたメタクリル酸96gを精留塔の上部に供給した。反応液の温度を徐々に83℃まで上げ、フラスコ内の圧力を徐々に2.1kPaに下げて行き、酢酸が主成分の溜出液を精留塔の塔頂から抜き出した。溜出液は15℃に冷却した冷却管および液体窒素につけたトラップで回収した。反応終了後、反応液を冷却した。
反応終了時の反応液の重量は1409gであり、組成はメタクリル酸無水物75.3質量%、混合酸無水物0.1質量%、無水酢酸0質量%、酢酸0質量%、メタクリル酸13.1質量%であり、メタクリル酸無水物の収率は76.5%であった。残りはマイケル付加物やガスクロマトグラフで検出されない高沸不純物などであった。
尚、メタクリル酸無水物の収率X(%)は、反応終了時の無水メタクリル酸のモル数Bと仕込んだ無水酢酸のモル数Aに基づいて、下記の式にて算出される値である。
X = B ÷ A × 100
メタアクリル酸無水物の二重結合に酢酸またはメタアクリル酸が一つ又は二つマイケル付加した化合物と思われるピークが複数検出されており、それらの面積の合計は、総面積の9.2%であった。
(実施例1):第一の発明の実施例
(1)メタクリル酸エステルの製造
製造例1で得た反応液205g(メタクリル酸無水物含有量1.0mol)およびフェノール104g(1.1mol)を攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を付した1Lの5つ口フラスコに入れ、120℃のオイルバスで加熱して5時間反応させた。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表1に示した。その他成分として、メタクリル酸の二重結合に酢酸またはメタクリル酸がマイケル付加した化合物(以下「MAマイケル付加物」という)と思われるピークが検出されており、それらの面積の合計は総面積の0.8%であった。
(2)メタクリル酸の回収
1Lのフラスコに精留塔(内径35mm、理論段数10段)、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を接続した。エアーバブリングした状態で真空ポンプを起動させて減圧を開始した。反応液の温度85℃、フラスコ内の圧力2.4kPaで全還流状態とした。その後、還流比1.5で塔頂から溜出液を抜き出した。溜出液は15℃に冷却した冷却管および液体窒素につけたトラップで回収した。反応液の温度を83〜88℃に維持するために、フラスコ内の圧力を0.7kPaまで下げて、溜出液が125g出たところで回収を終了した。この間、精留塔内での重合防止のためフェノチアジン48mgを溶解させたメタクリル酸24gを精留塔の上部に供給した。このときの溜出液(回収MAA)の組成とメタクリル酸の回収率を表1に示した。
尚、メタクリル酸の回収率Y(%)は、溜出液(回収MAA)中のメタクリル酸のモル数Dと反応液中のメタクリル酸のモル数Cに基づいて、下記の式にて算出される値である。
Y = D ÷ C × 100
(3)メタクリル酸エステルの精製
精留塔を長さ20cmのビグリュー管に付け替え、単蒸留を行った。真空ポンプ側の圧力を0.2〜0.6kPaに調整し、内温75〜125℃まで昇温して蒸留を実施した。その結果、表2に示す組成と量の初溜出液、溜出液2及び溜出液3を回収した。
(実施例2):第三の発明の実施例
(1)メタクリル酸エステルの製造
オイルバスの温度を80℃とし、また加熱時間を8時間とし、その他の条件は実施例1と同様にして、反応を行った。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表1に示した。その他成分として、フェニルメタクリレートの二重結合に酢酸またはメタクリル酸がマイケル付加した化合物(以下「PMマイケル付加物」という)およびMAマイケル付加物と思われるピークが複数検出されており、それらの面積の合計は総面積の8.2%であった。
(2)反応生成物の加熱処理
マイケル付加物の量が多かったので、反応液の温度を100℃に昇温し、4時間加熱処理した。加熱処理後の反応液の組成はフェニルメタクリレート54.1質量%、メタクリル酸38.4質量%、フェノール0.9質量%、メタクリル酸無水物0質量%であった。その他成分としてのMAマイケル付加物と思われるピーク面積の合計は総面積の0.9%であった。
(3)メタクリル酸の回収
次いで、実施例1と同様にして、溜出液125gを回収し、表1の結果を得た。
(4)メタクリル酸エステルの精製
更に、実施例1と同様にして、単蒸留を行い、表2の結果を得た。
(実施例3):第三の発明の実施例
反応液の加熱処理温度を100℃から120℃に変更した以外は、実施例2と同様に行い、表1および表2の結果を得た。
(実施例4):第二の発明の実施例
(1)メタクリル酸エステルの製造
実施例2と同様にして反応を行ったが、反応終了後の反応液の加熱処理は実施しなかった。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表1に示した。その他成分として、PMマイケル付加物及びMAマイケル付加物と思われるピークが複数検出されており、それらの面積の合計は総面積の8.3%であった。
(2)メタクリル酸の回収
次いで、溜出液を回収する際のフラスコ内の圧力と反応液の温度を下記条件に変更した以外は実施例2と同様にして、精留塔を用いて蒸留した。即ち、実施例2(実施例1)では、「反応液の温度を83〜88℃に維持するために、フラスコ内の圧力を0.7kPaまで下げて、溜出液が125g出たところで回収を終了した。」のに対して、実施例4では「反応液の温度を115℃まで昇温するために、フラスコ内の圧力を2〜3kPaに維持し、溜出液が125g出たところで回収を終了した。」に変更した。溜出液(回収MAA)の組成とメタクリル酸の回収率を表1に示した。
(3)メタクリル酸エステルの精製
更に、実施例2と同様にして、単蒸留を行い、表2の結果を得た。
(実施例5):第四の発明の実施例
(1)メタクリル酸エステルの製造
実施例2と同様にしてメタクリル酸エステルを製造した。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表1に示した。その他成分として、FMマイケル付加物及びMAマイケル付加物と思われるピークが複数検出されており、それらの面積の合計は総面積の8.2%であった。
(2)メタクリル酸とメタクリル酸エステルの回収
1Lのフラスコにクライゼン管、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を接続し、単蒸留を行った。真空ポンプ側の圧力を0.2〜0.6kPaに調整し、内温75〜125℃まで昇温して蒸留を実施した。メタクリル酸44.3質量%、フェノール0.8質量%、フェニルメタクリレート53.2質量%を含む初溜出液を274g得た。
(3)メタクリル酸の回収
実施例4と同様の精留塔のついたフラスコに、前記メタクリル酸エステル回収液274gを供給した。溜出液が117g出たところで回収を終了する以外の条件は実施例4と全く同様にして、蒸留し、表1の結果を得た。
(4)メタクリル酸エステルの精製
精留塔を長さ20cmのビグリュー管に付け替え、単蒸留を行った。真空ポンプ側の圧力を0.2〜0.6kPaに調整し、内温75〜125℃まで昇温して蒸留を実施した。溜出液について、表2の結果を得た。
(比較例1)
(1)メタクリル酸エステルの製造
オイルバスの温度を80℃とし、また加熱時間を8時間とした。その他の条件は実施例1と同様にして、反応を行った。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表1に示した。FMマイケル付加物及びMAマイケル付加物と思われるピークの面積の合計は総面積の8.3%であった。
(2)メタクリル酸エステルの精製
反応液をフラスコから取り出し、ヘキサン1Lに溶解して、純水1Lで1回洗浄した。17質量%の炭酸ナトリウム水溶液1Lで1回洗浄した後、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液1Lで1回洗浄し、純水1Lで2回洗浄した後、エバポレーターで濃縮した。1Lのフラスコに長さ20cmのビグリュー管、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を接続し、濃縮した液を入れて単蒸留を行った。真空ポンプ側の圧力を0.2〜0.6kPaに調整し、内温75〜125℃まで昇温して蒸留を実施し、表2の結果を得た。
実施例1〜4のように高温で反応を行った場合、あるいは高温での処理を行った場合、(メタ)アクリル酸エステルの量が増加することがわかる。この反応液を蒸留することによって高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得る事が出来る。さらに、マイケル付加物の分解によって(メタ)アクリル酸を生成させることにより、(メタ)アクリル酸を高収率で回収出来る。
低温で反応を行い、高温での処理や蒸留を行っていない比較例1では、蒸留温度が上がる後半の溜分中のメタクリル酸含有量が著しく増えて、純度が低下する。そのため、蒸留前の純度が高くても、99%以上の純度で得られる(メタ)アクリル酸エステル量は少なくなる。また、この方法では、メタクリル酸が回収できない。
同様に実施例5では、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの回収時の、蒸留温度を上げることにより、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸量が増加する。この回収液を蒸留することにより、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得る事が出来る。
(実施例6):第一の発明及び第五の発明の実施例
(1)メタクリル酸エステルの製造およびメタクリル酸無水物の処理
製造例1と同じ方法で得た反応液を使用し、メタクリル酸無水物量1.0mol、フェノール量1.0molにした以外は実施例1と同様の方法でメタクリル酸エステルの製造を行った。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表3に示した。反応後、フェノールは消失し、メタクリル酸無水物は0.03mol残っていた(フェノールの一部がメタクリル酸無水物のマイケル付加物と反応したため、メタクリル酸無水物が残っている)。
この反応液に0.12molの炭酸ナトリウムと0.24molの水を添加し、80℃で2時間攪拌しながら加熱した。加熱処理後、メタクリル酸無水物は消失し、フェノールが0.001mol検出された。反応前後のフェニルメタクリレートの分解はほとんど無かった。炭酸ナトリウムと水の添加により、全量が増加したため、濃度が低下した様に見えるが、フェニルメタクリレートはほとんど分解していない。
(2)メタクリル酸の回収
溜出液が100g出たところで回収を終了した以外は実施例1と同様の方法でメタクリル酸を回収した。溜出液の組成(回収MAA)とメタクリル酸の回収率を表3に示した。
(3)メタクリル酸エステルの精製
実施例1と同様の方法で蒸留を実施した。その結果、表4に示す組成と量の初溜出液、溜出液2及び溜出液3を回収した。
(実施例7):第三の発明及び第五の発明の実施例
(1)メタクリル酸エステルの製造
製造例1と同じ方法で得た反応液を使用し、メタクリル酸無水物量1.0mol、フェノール量1.0molにした以外は実施例2と同様の方法でメタクリル酸エステルの製造を行った。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表3に示した。反応後、フェノールは消失し、メタクリル酸無水物は0.03mol残っていた。
(2)反応生成物の加熱処理およびメタクリル酸無水物の処理
0.26molの水酸化リチウム・一水和物を添加した以外は実施例2と同様の方法で加熱処理を行った。処理後の反応液の主要成分の組成を表3に示した。水酸化リチウム・一水和物の添加により、全量が増加したため、濃度は変化していないが、フェニルメタクリレートの量は加熱処理前より増加している。
(3)メタクリル酸の回収
溜出液が100g出たところで回収を終了した以外は実施例2と同様の方法でメタクリル酸を回収した。溜出液(回収MAA)の組成とメタクリル酸の回収率を表3に示した。
(4)メタクリル酸エステルの精製
実施例2と同様の方法で蒸留を実施した。その結果、表4に示す組成と量の初溜出液、溜出液2及び溜出液3を回収した。
(比較例2)
(1)メタクリル酸エステルの製造
製造例1と同じ方法で得た反応液を使用し、オイルバスの温度を80℃とし、また加熱時間を8時間とした。そして、メタクリル酸無水物量1.1mol、フェノール量1.0molにした以外の条件は実施例2と同様にして、反応を行った。反応終了時の反応液の主要成分の組成を表3に示した。FMマイケル付加物及びMAマイケル付加物と思われるピークの面積の合計は総面積の8.3%であった。
(2)メタクリル酸エステルの精製
反応液をフラスコから取り出し、ヘキサン1Lに溶解して、純水1Lで1回洗浄した。17質量%の炭酸ナトリウム水溶液1Lで1回洗浄した後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.5Lを加え室温で2時間懸濁させた。メタクリル酸無水物は消失したが、フェニルメタクリレートが12質量%分解していた。加水分解により生成したメタクリル酸とフェノールは水酸化ナトリウム水溶液に溶解したため、ヘキサン相からは検出されなかった。ヘキサン相を回収し、純水1Lで2回洗浄した後、エバポレーターで濃縮した。1Lのフラスコに長さ20cmのビグリュー管、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を接続し、濃縮した液を入れて単蒸留を行った。真空ポンプ側の圧力を0.2〜0.6kPaに調整し、内温75〜125℃まで昇温して蒸留を実施し、表4の結果を得た。
実施例6、7に示すように、メタクリル酸無水物を過剰量使用することにより、反応液中のフェノールを無くす事が可能である。そして、フェニルメタクリレートを分解させること無く、メタクリル酸無水物を処理することが可能である。本法により、フェノール含有量の少ないフェニルメタクリレートが取得可能である。
比較例2ではアルカリ洗浄することにより、フェノールを除去する事が可能であるが、フェニルメタクリレートが10質量%以上分解する。また、メタクリル酸を回収できず、廃液として処分することになる。
(製造例2)
(1)メタクリル酸エステルの製造
製造例1と同じ方法で得た反応液を使用し、メタクリル酸無水物量1.1mol、フェノール量1.0molにした以外は実施例5と同様にしてメタクリル酸エステルを製造した。
(2)メタクリル酸無水物を含有したメタクリル酸とメタクリル酸エステル混合液の取得
実施例5と同様にして蒸留を実施し、メタクリル酸とメタクリル酸エステルを回収した。メタクリル酸42.1質量%、メタクリル酸無水物7.1質量%、フェニルメタクリレート50.7質量%を含む初溜出液を250g得た。
(実施例8):第五の発明の実施例
製造例2で取得した混合液10.9g(メタクリル酸無水物5mmol含有)に水酸化リチウム・一水和物を0.21g(5mmol)添加した。80℃で2時間攪拌しながら加熱処理を行った。
加熱処理後により、メタクリル酸無水物は92質量%が分解していた。加熱処理後のメタクリル酸無水物の分解率とフェニルメタクリレートの残存率(加熱処理前の含有量に対する加熱処理後の含有量の比)を表5に示す。
(実施例9〜17):第五の発明の実施例
表5に記載した化合物を使用し、表5に記載した量の水を使用した以外は、実施例8と同様に処理を行った。加熱処理後のメタクリル酸無水物の分解率とフェニルメタクリレートの残存率を表5に示す。
(比較例3〜4)
無添加または10mmolの水を使用した以外は、実施例8と同様に処理を行った。加熱処理後のメタクリル酸無水物の分解率とフェニルメタクリレートの残存率を表5に示す。
(比較例5)
炭酸ナトリウム0.53g(5mmol)とメタノール0.48g(15mmol)を添加した以外は、実施例8と同様に処理を行った。
加熱処理後により、メタクリル酸無水物は99質量%が分解していたが、フェニルメタクリレートは94.4質量%しか残存していなかった。
(比較例6)
製造例2で取得した混合液10.9g(メタクリル酸無水物5mmol含有)をヘキサン10gに溶解させた。5質量%水酸化ナトリウム水溶液8g(10mmol)を加えて、40℃で1時間懸濁させた。ヘキサン相を分析した結果、メタクリル酸無水物は98質量%が分解していたが、フェニルメタクリレートは93.5質量%しか残存していなかった。
(比較例7)
製造例2で取得した混合液10.9g(メタクリル酸無水物5mmol含有)をヘキサン10gに溶解させた。10質量%炭酸ナトリウム水溶液21.2g(20mmol)を加えて、80℃で2時間懸濁させた。ヘキサン相を分析した結果、メタクリル酸無水物は2質量%が分解していた。フェニルメタクリレートはほとんど分解していなかった。
(実施例18):第五の発明の実施例
製造例1と同じ方法で得た反応液を蒸留し、純度99.9質量%のメタクリル酸無水物を得た。攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を付した0.1Lの5つ口フラスコにメタクリル酸無水物16.3g(0.105mol)、フェノール9.4g(0.1mol)を入れ、フェノチアジン1000ppmを添加し、0.1gの濃硫酸を滴下した。80℃で5時間反応を実施した。反応後、フェノールは消失し、メタクリル酸無水物は0.04mol残っていた。この反応液に水酸化リチウム・一水和物を2.5g(0.06mol)添加し、80℃で2時間攪拌しながら加熱処理を行った。
加熱処理後により、メタクリル酸無水物は全て分解していた。フェニルメタクリレートは0.6質量%分解していた。
Figure 0005582032
Figure 0005582032
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Figure 0005582032
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Claims (6)

  1. 下記の工程(1)、(2)及び(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、工程(2)の反応を90℃以上、120℃以下の温度で行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
    (1)下記一般式(I)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
    Figure 0005582032
    (一般式(I)において、R1は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、R2は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
    (2)フェノールと前記工程(1)の反応で得られる未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る工程、
    (3)(メタ)アクリル酸を蒸留により回収する工程。
  2. 下記の工程(1)、(2)及び(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、工程(3)の蒸留を90℃以上、130℃以下の温度で行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
    (1)下記一般式(I)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
    Figure 0005582032
    (一般式(I)において、R1は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、R2は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
    (2)フェノールと前記工程(1)の反応で得られる未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る工程、
    (3)(メタ)アクリル酸を蒸留により回収する工程。
  3. 下記の工程(1)、(2)、(2')及び(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
    (1)下記一般式(I)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
    Figure 0005582032
    (一般式(I)において、R1は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、R2は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
    (2)フェノールと前記工程(1)の反応で得られる未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを90℃未満の温度で反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る工程、
    (2')前記工程(2)で得られた反応液を90℃以上、130℃以下の温度で加熱する工程、
    (3)(メタ)アクリル酸を蒸留により回収する工程。
  4. 下記の工程(1)、(2)、(2")及び(3)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
    (1)下記一般式(I)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
    Figure 0005582032
    (一般式(I)において、R1は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、R2は直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
    (2)フェノールと前記工程(1)の反応で得られる未精製の(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを得る工程、
    (2")前記工程(2)で得られた反応液を90℃以上、130℃以下の温度で蒸留して(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを含む反応液を得る工程、
    (3)(メタ)アクリル酸を蒸留により回収する工程。
  5. 前記工程(2)で得られた反応液に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を添加して、該反応液中に残存する(メタ)アクリル酸無水物を加水分解することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
  6. 前記反応液中に残存する(メタ)アクリル酸無水物1モルに対し、0.1〜10モルの水を該反応液に添加して、該(メタ)アクリル酸無水物を加水分解することを特徴とする請求項5に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
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