JP4042227B2 - 4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法 - Google Patents

4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法に関するものであり、詳しくは、未反応の原料1,4−ブタンジオールを効率的に回収再使用して生産効率を高めた工業的に有利な製造方法に関する。
【0002】
4−ヒドロキシブチルアクリレートは、分子内に疎水性のアルキル単位と親水性のヒドロキシル基を共有するため、柔軟性や親水性を適当に備えた実用上興味深い物性をする重合体または共重合体の原料として有用であり、また、そのヒドロキシル基が反応性に富むため、架橋性重合体または共重合体として塗料関係の用途に期待されている。
【0003】
【従来の技術】
4−ヒドロキシブチルアクリレート(以下4−HBAと略す)は、1,4−ブタンジオール(以下1,4−BGと略す)とアクリル酸のモノエステル体であり、一般的には、例えば、ドイツ特許第1,518,572号公報、日本特許公開平4−69359号公報、日本特許公開平7−126214号公報に記載されている様に、アクリル酸と1,4−BGの酸触媒直接エステル化反応によって製造される。
【0004】
また、エステルの一般的な製造法としてエステル交換法が知られており、この方法は、触媒の選択によって副反応を抑制し易い特徴を有する。特にアクリル酸エステルの様に官能基をもつ重合性の化合物の場合は、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、ジブチル錫オキシド等の錫系触媒の様な中性に近い触媒の使用により、反応選択性が向上することが期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の公知文献には未反応の原料1,4−BGの処理に関する記載はないが、工業的観点からは、未反応の1,4−BGを効率的に回収再使用して生産効率を高めるべきである。しかしながら、未反応の1,4−BGを回収せんとした場合は、次の様な種々の問題がある。
【0006】
すなわち、酸触媒直接エステル化反応の場合、未反応の1,4−BGは、触媒や未反応のアクリル酸またはそれらを中和した塩類と共に洗浄液中に含有されているが、斯かる洗浄液からの1,4−BGの回収は極めて困難である。また、酸触媒として硫酸やp−トルエンスルホン酸などの強酸をが使用されるため、マイケル付加体などの高沸生成物やエーテル体(テトラヒドロフラン)等の軽沸生成物が生成し、未反応の1,4−BGを回収再使用する際の不純物として蓄積し、回収プロセスの不安定化を惹起する。
【0007】
また、例えばチタンアルコラート触媒を使用したエステル交換法の場合は、チタンアルコラートが水に弱く、加水分解によって難溶性の微粒子が生成するため、未反応の1,4−BGの回収プロセスとして工業的に有利な水系液液抽出を採用する場合は、予め触媒を除去しておく必要があり、これには煩雑な操作が必要である。更に、水を含んだ原料の再使用により触媒が失活するため、反応系での水の存在量を例えば0.1重量%以下程度に管理する必要がある。また、錫系触媒、例えばジブチル錫オキシドの場合は、水系液液抽出で触媒が沈殿析出するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、未反応の原料1,4−ブタンジオールを効率的に回収再使用して生産効率を高めた工業的に有利な4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく種々検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。すなわち、本出願人は、特願平10−152175号において、ヒドロキシモノアクリレートの新規な製造方法として、ジスタノキサン触媒を使用したエステル交換法を包含する方法を提案したが、斯かる方法の場合は、不純物の生成が非常に少なく、また、触媒が有機溶媒に可溶で抽出により分離できるため、水系液液抽出によって水相側に抽出された1,4−BGの中に夾雑物が非常に少なく且つ容易に回収でき、しかも、触媒の水に対する安定性が高いため、水を蒸留除去した1,4−BGを特別な精製を経ずに反応に再使用しても反応活性に大きな影響がなく、再使用による系内の不純物の蓄積が少ない。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、1,4−ブタンジオールと下記一般式(I)又は(II)で表されるアクリル酸エステルとをエステル交換反応して4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造するに際し、反応触媒として下記一般式(III)で示されるジスタノキサン化合物を使用し、反応液の精製工程において水と非水溶性有機溶媒との液液抽出により未反応の1,4−ブタンジオールを水相側に抽出し、その水相から1,4−ブタンジオールを回収してエステル交換反応に再使用することを特徴とする4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法に存する。
【0011】
【化2】
Figure 0004042227
【0012】
〔一般式(III)中、R1、R2、R3及びR4は、アルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表わし、これらは互いに異なっていてもよく、X及びYは、互いに異なっていてもよい、−OH、−O(CH2nOH、−O(CH2nOCOCH=CH2、−OR、−OCOR、−OCOCH=CH2(nは1〜10の整数を表わし、Rはアルキルを表わす)及びハロゲン原子から成る群から選ばれる基を表す。〕
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を各工程毎に詳細に説明する。
【0014】
<反応工程>
本発明におけるエステル交換反応の1つの原料物質は、1,4−BGでり、他の1つの原料物質は、前記一般式(I)又は(II)で表されるアクリル酸エステルである。
【0015】
一般式(I)中、Rで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、好ましくはメチル基である。一般式(I)で表されるアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0016】
一般式(II)で表されるアクリル酸エステル(1,4−ブタンジオールジアクリレート:以下1,4−BDAと略す)は、反応原料であると同時に、例えばアクリル酸メチルと1,4−BGの反応による4−HBA製造時の副生物として反応系に存在する。
【0017】
本発明における反応触媒は、一般式(III)で表されるスタノキサン化合物である。一般式(III)中、R1、R2、R3及びR4で表されるアルキル基は、通常、炭素数1〜20のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基などが挙げられる。また、置換基を有していてもよいフェニル基における置換基は、通常、アルキル基であり、その具体例としては、上記と同様のアルキル基が挙げられる。R1〜R4におけるアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基は、互いに異なっていてもよい。R1〜R4としては、特に、反応後工程の抽出分離での触媒抽出回収率および触媒溶解性の観点から、炭素数C4〜C12のアルキル基およびフェニル基が好ましく、中でも工業的な入手のし易さから炭素数8のアルキル基が特に好ましい。
【0018】
また、一般式(III)中、X及びYは、−OH、−O(CH2nOH、−O(CH2nOCOCH=CH2、−OR、−OCOR、−OCOCH=CH2(nは1〜10の整数を表わし、Rはアルキルを表わす)及びハロゲン原子から成る群から選ばれる基を表す。中でも、触媒の耐加水分解性が良く、抽出効率が高いという点で、−OCOR又は−OCOCH=CH2が好ましい。上記のnは2〜6が好ましく、Rは炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。また、上記のハロゲン原子としては、Cl、Br等が挙げられる。
【0019】
上記のスタノキサン化合物は、例えば、アドバンシス イン オルガノメタリック ケミストリー(Advance in Organometallic Chemistry)第5巻第159ページ(1967年)等に記載された方法により容易に得ることが出来る。
【0020】
1,4−BGと一般式(I)及び(II)で表されるアクリル酸エステル(以下、両者をまとめてとアクリル酸誘導体と略記する)との使用割合は、特に制限されない。
【0021】
1,4−BG、4−HBA、1,4−BDAの3成分の組成はある平衡関係にあると考えられ、反応に使用した1,4−BGの転化率を制御することによりこの3成分の組成分布が変化する。
【0022】
本発明において、1,4−BG1モルに対するアクリル酸誘導体の使用割合としては、アクリル基換算として、通常0.5〜5モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲である。この範囲の使用割合により、1,4−BGを適度に転化せしめて反応生成物中の4−HBAの割合を最大限にすることが出来、生産性を上げ、全体の抽出効率を高めることが出来る。
【0023】
一方、反応触媒であるスタノキサン化合物の使用割合は、原料に対し、通常0.01〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%である。
【0024】
本発明において、必要であれば、反応溶媒として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、テトラクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の含酸素有機化合物を使用してもよい。
【0025】
反応に際しては、原料および生成物の重合防止のため、反応系に重合防止剤を添加するのが好ましい。重合防止剤としては、フェノチアジン、ハイドロキノン類、ジアルキルジチオカルバミン酸の銅塩などの銅化合物が挙げられる。更に、反応系内に分子状酸素を存在させることにより、通常は、空気を直接または窒素などの不活性ガスで希釈して反応系に連続的に導入することにより、重合防止効果がより高められる場合が多い。
【0026】
本発明においては、温和な条件下で高いエステル交換活性で反応を進行させることが出来る。従って、反応温度は、通常60〜150℃、好ましくは70〜130℃である。反応温度が60℃未満の場合は、十分な反応活性が得られず、逆に、150℃を超える場合は、重合などの副反応が起こり易くなる。反応時間は、通常2〜15時間であり、斯かる反応時間により、反応は平衡に達する。平衡反応に達した後、未反応原料の他、溶媒などの軽沸成分を減圧蒸留などにより留去した後、次の抽出工程に供給する。
【0027】
また、この反応は平衡反応であるため、副生物である低級アルコールの存在によって反応転化率が抑制される。よって、低級アルコールを蒸留により系外に留去しつつ反応を行う反応蒸留形式を採用すると、転化率が更に向上する点で好ましい。
【0028】
低級アルコールは、常圧または減圧下で蒸留により除去される。また、他の不活性溶剤(共沸溶媒)を添加して共沸により除去することも出来る。原料の低級アクリル酸エステルと低級アルコールとの沸点差が近いため、共沸溶媒を添加して共沸により除去する方がより有利になる場合が多い。この場合も、必要に応じて共沸溶媒を除去した後、次の抽出工程に供給する。共沸溶媒として抽出溶剤と同じものを使用した場合には、そのまま抽出工程に供給しても何ら影響ない。蒸留温度は、生成物の熱安定性を考慮し、130℃以下とするのが好ましい。
【0029】
<液液抽出>
先ず、本発明における液液抽出の概要について説明する。反応終了後、反応液を抽出工程に供給し、1,4−BDAと4−HBA/未反応1,4−BGとを分離する。本発明においては、抽出溶剤として、水と非水溶性有機溶媒から成る2成分系抽出溶剤を使用する。抽出操作により、1,4−BDA及び触媒は有機相に抽出され、1,4−BGは水相に抽出され、抽出に使用する非水溶性有機溶媒の種類により4−HBAは有機相または水相に抽出される。4−HBAを1,4−BGと共に水相に抽出する場合は、更に、水相から非水溶性有機溶媒により4−HBAを抽出する必要があり、4−HBAを1,4−BDA及び触媒と共に有機相に抽出する場合は、更に、有機相から水により4−HBAを抽出する必要がある。何れの場合も1,4−BGは水相に抽出される。
【0030】
非水溶性有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、i−オクタン、i−デカン等の脂肪族炭化水素類、または、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が使用される。中でも、最初に脂肪族または脂環式炭化水素によって1,4−BDA及び触媒を有機相に、4−HBA及び1,4−BGを水相に抽出し、次に、当該水相から、芳香族炭化水素、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、塩素系溶媒などを使用し、4−HBAを有機相に、1,4−BGを水相に抽出する、二段抽出法は、4−HBAの精製を考慮に入れた場合、特に好ましい方法である。以下、上記の二段抽出法を中心に説明する。
【0031】
<1,4−BDA及び触媒の抽出>
二段抽出法においては、反応終了後、反応液を抽出工程に供給し、1,4−BDA及び触媒を有機相に、4−HBA及び1,4−BGを水相に抽出する。非水溶性有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、i−オクタン、i−デカン等の脂肪族炭化水素類、または、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が使用される。中でも、脂環式炭化水素または脂肪族炭化水素が抽出効率を高めるという点で好ましい。特に、n−ヘプタン又はn−ヘキサンから選ばれる有機相と水相とによる液液抽出法は、1,4−BGの高い分配係数と比選択度を示すという点で好ましい。
【0032】
水の使用量は、合計全量として、抽出する4−HBAに対して1〜10重量倍使用するのが好ましい。また、非水溶性有機溶剤の使用量は、合計全量として、抽出する4−HBAに対して5〜100重量倍使用するのが好ましい。
【0033】
抽出は、一般的には常圧で5〜70℃で実施される。抽出装置は特に制約がなく、回分操作での繰り返し抽出(混合、静置、分液の繰り返し)、連続抽出の何れでもよいが、少ない抽出溶剤の使用量で効率的に抽出を実施するためには、向流接触型連続抽出塔を使用するが好ましい。連続抽出の場合の液液接触形式としは、充填塔、回転円盤形、往復動型、ミキサーセトラー等の種々の形式を使用することが出来る。
【0034】
本発明において、1,4−BDA及び触媒を含む有機相は、次の様に再使用することが出来る。(1)後処理することなく、そのままの状態で直接にエステル化/エステル交換反応系に循環する。(2)低温減圧蒸留などで有機溶剤が除去された後の残渣をそのままエステル化/エステル交換反応系に循環する。
【0035】
例えば、本発明における前述のエステル交換反応系に1,4−BDA及び触媒を循環した場合、1,4−BDAは、1,4−BGとのエステル交換反応により4−HBAに再変換される。この際、触媒の活性低下は殆どない。しかしながら、触媒の抽出分離操作の際に遊離の酸を存在させるならば、触媒の安定性が増す結果、長期間の使用による触媒の形態変化が防止され触媒の有機相への抽出効率が高められる。特に触媒としてアシルオキシジスタノキサン誘導体を使用する場合は、その配位子であるカルボン酸を使用するのが好ましい。特にアクリル酸または酢酸が好ましい。
【0036】
<4−HBAの抽出>
前工程で分離された水相には、4−HBAと1,4−BGが主成分として含まれている。この水溶液から、抽出溶剤として非水溶性の有機溶媒を使用し、4−HBAを有機相に抽出し、水相に1,4−BGを残す。抽出溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素、酢酸n−ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒、ジクロロメタン等の塩素系溶媒などが挙げられる。抽出条件および装置は、前工程と同様に選択される。
【0037】
有機溶剤の使用量は、その種類にもよるが、合計全量として、抽出する4−HBAに対して2〜50重量倍が好ましい。水の量は、合計全量として、抽出する1,4−BGに対して1〜20重量倍となる様に調節するのが好ましい。水の合計量には、前工程で使用した水の他、1,4−BGを効率的に水相に残すために追加的に使用される少量の水が含まれる。連続抽出塔を使用する場合、塔の中間段から1,4−BGと4−HBAを含む水溶液を供給し、上段と下段から水と有機溶媒を向流接触させることにより、1,4−BGの分離効率が向上する。4−HBAを含む有機相は、回収した後、更に、蒸留などの精製工程を経て製品とされる。
【0038】
<1,4−BGの回収と再使用>
前工程で得られる1,4−BGを含む水相(水溶液)には、夾雑物が少なく、通常は少量のヒドロキシアルキルアクリレートのみが含まれ、触媒、オリゴマー、その他の副生物は含まれない。ここに本発明の特徴がある。そして、水と1,4−BGは、沸点差が大きく、単蒸留操作によっても容易に分離することが出来る。蒸留圧力は常圧から減圧とされ、蒸留温度は、50〜150℃が好適である。また、上記の水溶液中に抽出残として含まれている4−HBA等のアクリル酸誘導体の蒸留時の劣化を防ぐため、エステル交換反応で使用している様な重合禁止剤の添加、酸素の導入、蒸留温度の制御を行うことが好ましい。
【0039】
水を除去した1,4−BGは、更に高度に精製してもよいが、夾雑物が少ないため、水を除去した1,4−BGを缶出液としてそのまま反応工程に再使用することが可能である。この際の1,4−BG中の水の含有量は、ジスタノキサン触媒が水に対して比較的安定であるため許容度が大きいが、液中の濃度として5重量%以下にすることが好ましい。これにより、反応仕込み液中の水分量は、使用する原料の割合にもよるが1重量%以下に保たれる。
【0040】
反応液中の水の含有量が多くなると、ジスタノキサンの活性が低下し、反応速度が遅くなり生産性の低下を惹起する。反応に先立ち、反応仕込み液に含まれる水分を溶媒との共沸により除去することも出来、この場合は、更に高い反応速度を保つことが出来る。
【0041】
本発明に従い、未反応1,4−BGの回収再使用が簡便に可能となることにより、再使用も含めた1,4−BG基準の収率が高められ、より経済的に4−HBAを製造することが可能になる。また、蒸留によって回収され多少の有機物を含む水は、廃棄せずに、抽出の際に再使用することが出来る。これにより、更にに廃棄物が少ない工業的に有利なプロセスを構築することが出来る。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例においては、特に断りがない限り、反応には、精留塔、温度測定管、空気導入管、溶媒導入管およびジャケット(スチーム加熱対応)を備え、上記の精留塔(70φ)には1/4インチ マクマホンパッキンが60cm高さで充填されている、20Lのステンレス製反応器を使用し、抽出には、向流接触型液液抽出塔(住友重機械工業製:カールカラム25φ×1.5m)を使用した。
【0043】
参考例1(フレッシュ反応→14BGの回収▲1▼)
反応器に、アクリル酸メチル:4700g(54mol)、1,4−BG:5410g(60mol)、ジアクリロイルオキシジスタノキサン:160g、ヘキサン:300g、フェノチアジン:60gを仕込んだ。
【0044】
空気導入管から、750ml/minで6体積%酸素/窒素を吹き込んだ。反応器のジャケットに蒸気を流通して加熱を開始した。約80℃の液温で沸騰が開始した。全還流を1Hr行い、精留塔の塔頂およ塔中段の温度が50℃で安定した後、1L/Hrで留出を開始した。留出開始後、反応液の温度が85〜95℃になる様にヘキサンを反応系に供給した。塔頂からヘキサン/メタノールの共沸混合物が留出し、反応が進行するにつれメタノールの生成速度が小さくなると過剰のアクリル酸メチルがヘキサンと共に留出した。
【0045】
反応液のアクリル酸メチル濃度が0.5重量%以下となった時点で反応を終了して冷却し、反応液8500kgを得た。ガスクロマトグラフィーにて反応液の組成を分析したところ、反応液には、1,4−BG:1980g、4−HBA:4170g、1,4−BDA:1780gが含まれていた。触媒の安定性を高めるため、反応液にアクリル酸を添加した。
【0046】
ジャケットにより45℃に保った抽出塔の上端から1.5L/Hrの反応液と1.5L/Hrの水を供給すると共に下端から5.5L/Hrのn−ヘキサンを供給し、ヘキサン側にジエステル及び触媒を抽出した。ジエステルの抽出率は99.5重量%以上であった。
【0047】
上記で得られたヘキサン抽出液を減圧蒸留し、n−ヘキサンを回収すると共に缶出液として2800gのジエステル含有液を得た。この中には、1,4−BDA:1750g、4−HBA:300gの他、触媒、フェノチアジン及びヘキサンが含まれていた。一方、上記で得られた重液(4−HBA水溶液)は14700gであり、この中には、1,4−BG:1970g及び4−HBA:3850gが含まれていた。
【0048】
次いで、ジャケットにより45℃に保った抽出塔の上端から1.8L/Hrの上記の4−HBA水溶液を供給すると共に下端から3.2L/Hrのトルエンを供給し、トルエン側に4−HBAを抽出した。得られたトルエン抽出液は27500gであり、この中には、4−HBA:3810g及び1,4−BG:50gが含まれていた。トルエン抽出液を濃縮した後に減圧下で薄膜蒸発器で精製し、留出液として4−HBA:3550gを得た。一方、回収した重液(1,4−BG水溶液)は10300gであり、この中には、1,4−BG:1910g及び4−HBA:40gが含まれていた。
【0049】
10Lステンレス製濃縮釜にp−メトキシフェノール0.2gを添加し、内圧を150mmHgに保ち、上記の1,4−BG水溶液を導入し、50〜70℃で水を粗回収した後、20mmHgまで減圧し釜温度を120℃まで上げて水を回収した。得られた缶出液は1900gであり、この中には、1,4−BG:1850g及び水:10gが含まれていた。結果を表1に示す。
【0050】
実施例1(1回目回収反応→回収その▲2▼)
反応器に、アクリル酸メチル:2520g、1,4−BG(新品):2720g、フェノチアジン:5g及び参考例1で回収した1,4−BG:1700g、参考例1で回収した1,4−BDA:2560gを仕込み、参考例1と同様にn−ヘキサンを連続的に供給しながら常圧で反応蒸留を行った。以降、参考例1に準じて後処理を行い、製品4−HBA、回収1,4−BDA、回収1,4−BGをそれぞれ3840g、2640g、1810g得た。結果を表1に示す。
【0051】
実施例2(回収その▲3▼)
実施例2で得られた回収1,4−BDA及び回収1,4BGを使用し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例3(回収その▲4▼)
実施例2で得られた回収1,4−BDA及び回収1,4−BGを使用し、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004042227
【0054】
以上4回の反応を通じて、1,4−BG使用量は12750g、4−HBA生成量は15180gであり、1,4−BG基準の4−HBA収率は74.4重量%であった。特にリサイクル1〜3回の合計3回の反応を通じては、1,4−BG使用量は8050g、4−HBA生成量は11630gであり、1,4−BG基準の4−HBA収率は90.3重量%であった。
【0055】
因に、エステル交換法における比較ケースとして、未反応1,4−BGを回収せずにフレッシュで補う場合を試算すると、リサイクル1〜3回の反応を通じて1,4−BG使用量は13150g、4−HBA生成量は11630gであり、1,4−BG基準の4−HBA収率は55重量%であった。
【0056】
比較例1(硫酸触媒直接エステル化反応による例)
温度測定管、空気導入管、溶媒還流槽およびジャケット(スチーム加熱対応)を備えた20Lのステンレス製反応器に、アクリル酸:3670g(51mol)、1,4−BG:5410g(60mol)、硫酸:41g(0.42mol)、n−ヘプタン:1700g、フェノチアジン:60gを仕込んだ。
【0057】
反応液を加熱し、直接エステル化反応で生成する水を、n−ヘプタンとの共沸混合物として蒸留で系外に留出させ、凝縮させた後に分液し、ヘプタン相だけを反応系に戻して反応を進行させた。反応液の組成をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1,4−BG:1590g、4−HBA:3960g、1,4−BDA:1930gであった。
【0058】
反応液を水で希釈し、水酸化ナトリウムで過剰の酸を中和した。以降、参考例1に準じて後処理を行い、製品4−HBA:3460g及び回収1,4−BDA:2370g得た。抽出で得られた水相(水溶液)には、1,4−BG:1500gの他に、推定組成として、硫酸ナトリウム:59g、アクリル酸ナトリウム:52g、ガスクロマトグラフィーで観察される高沸成分が含まれていた。
【0059】
減圧蒸留により、上記の水溶液から水を留去したところ、塩類が結晶として析出し、蒸留塔壁にもスケーリングした。更に温度を上げて1,4−BGの回収を試みたところ、蒸留塔壁への付着が激しくなった。蒸留により、80重量%の1,4−BGを留出液として回収した。蒸留後の釜液に水を添加したが、一部はポリマー化して溶解せずにべとべとし、完全に除去するのは困難であった。
【0060】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、未反応の1,4−BGを簡便に再使用できることにより、1,4−BG基準の収率を高くすることが出来、廃棄物が減少する。これによりプロセスの高い経済性が得られる。

Claims (3)

  1. 1,4−ブタンジオールと下記一般式(I)又は(II)で表されるアクリル酸エステルとをエステル交換反応して4−ヒドロキシブチルアクリレートを製造するに際し、反応触媒として下記一般式(III)で示されるジスタノキサン化合物を使用し、反応液の精製工程において水と非水溶性有機溶媒との液液抽出により未反応の1,4−ブタンジオールを水相側に抽出し、その水相から1,4−ブタンジオールを回収してエステル交換反応に再使用することを特徴とする4−ヒドロキシブチルアクリレートの製造方法。
    Figure 0004042227
    〔一般式(III)中、R1、R2、R3及びR4は、アルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表わし、これらは互いに異なっていてもよく、X及びYは、互いに異なっていてもよい、−OH、−O(CH2nOH、−O(CH2nOCOCH=CH2、−OR、−OCOR、−OCOCH=CH2(nは1〜10の整数を表わし、Rはアルキルを表わす)及びハロゲン原子から成る群から選ばれる基を表す。〕
  2. 1,4−ブタンジオールを含む水相から1、4−ブタンジオールを回収するに際し、蒸留によって水を留去し、得られる缶出液をエステル交換反応に再使用する請求項1に記載の製造方法。
  3. エステル交換反応に再使用する1,4−ブタンジオール中の水分を5重量%以下にすること請求項1又は2に記載の製造方法。
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