JP5875747B2 - ポリカーボネート原料用ジヒドロキシ化合物の保存方法 - Google Patents
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Description
また、従来のポリカーボネートは、石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。
このような特殊な構造を有するジヒドロキシ化合物は、一般的に安定性が高くなく、水分や酸素と反応することにより品質が悪化しやすいが、特許文献1〜7には長時間にわたる安定性についての具体的な記載はない。
一方、特許文献8には、代表的なジヒドロキシ化合物であるイソソルビドについて、50mLのガラス容器に20gのイソソルビドを保管し、3%水蒸気存在下、40℃での1ヶ月にわたる長期安定性の評価を行ったことが開示されている。
上記ジヒドロキシ化合物が塊状になってしまうと、特にスケールが大きくなった場合、ハンドリングが困難になるだけでなく、種々の装置トラブルの原因となる。
更にエステル交換法でポリカーボネートを得ようとする場合には、重合速度を維持し、品質に影響を及ぼす末端基濃度を所定の値に制御することが重要であり、そのためにはモノマーである原料ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのモル比を正確に制御してやる必要があるが、塊状物や融着物となったジヒドロキシ化合物をそのまま原料として使用すると、秤量が不正確となり、得られるポリカーボネートの品質が安定しなくなるという問題がある。また、一旦塊状になってしまった上記ジヒドロキシ化合物は、しばしば重合を阻害する物質の発生を招き、重合速度が低下してしまうという問題があった。
一方、特許文献10には、水素化糖の内部脱水生成物であるジヒドロキシ化合物の安定性の改善のため、ジヒドロキシ化合物を蒸留精製後、安定性改善剤と接触させる方法が記載されている。また、特許文献11には、特定の構造を有するジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物を原料とする高い耐熱性と透明性を兼ね備えたポリカーボネートにつき記載されており、その中でジヒドロキシ化合物の保管や製造時の取扱いの際に酸化で発生する蟻酸等の分解物により、得られるポリカーボネートの着色や物性の劣化が問題とされている。
(a)ある特定の固体状態のジヒドロキシ化合物を、該ジヒドロキシ化合物に含まれる水分量、容器内の温度、及び該ジヒドロキシ化合物にかかる圧力を制御することで、該ジヒドロキシ化合物を品質劣化、圧密の問題を解決し、長期間安定的に保存できる。
(b)分子内に特定の構造を有する25℃で固体であるジヒドロキシ化合物と、溶融した炭酸ジエステルとを特定の圧力のもと、一定時間混合してポリカーボネートの原料として用いれば、透明性、色調、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ優れた光学特性を有するポリカーボネートを、安定的に製造できる。
(c)分子内に特定の構造を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物成分と炭酸ジエステルとを特定の温度、圧力のもと、一定時間混合することにより該ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとが均一に混合する。さらに、該ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルに脂肪族および/または脂環式ジヒドロキシ化合物を加えることにより、該ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合がさらに促進し、特に透明性の高いポリカーボネートを製造できる。
(d)ジヒドロキシ化合物およびそれから得られる製品としてのポリカーボネートの着色の原因の一つが該ジヒドロキシ化合物中の不純物として含有される金属原子にあり、重合反応に供するポリカーボネートの原料として、金属原子含有量が1ppm未満の特定の構造を有するジヒドロキシ化合物を用いた場合、透明性の高いポリカーボネートを製造できる。さらに、該ジヒドロキシ化合物中に含有するアルデヒド化合物の量を低減することにより、特に透明性の高いポリカーボネートを製造できる。
そして、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
(1) 分子内に下記式(1)で表される構造を有する固体状態のジヒドロキシ化合物を容器に充填して保存する方法において、前記ジヒドロキシ化合物の水分含有量が1.0重量%以下、前記容器内の温度が60℃以下、かつ、前記容器の底面にかかる圧力が0.005kgf/cm2以上0.5kgf/cm2以下の条件下で保存することを特徴とするポリカーボネート原料用ジヒドロキシ化合物の保存方法。
(2) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物が、複素環式構造を有することを特徴とする(1)に記載の保存方法。
(3) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする(1)または(2)に記載の保存方法。
(5) 好ましくは、前記容器が、金属製コンテナ、樹脂製コンテナ、ファイバードラム、フレキシブルコンテナ、または紙袋であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の保存方法。
(6) 好ましくは、前記容器が、樹脂製フィルムからなる内袋を有する容器であることを特徴とする(5)に記載の保存方法。
(7) 好ましくは、前記樹脂製フィルムが、ガスバリア性を有する無機層が形成された樹脂製フィルムであることを特徴とする(6)に記載の保存方法。
(8) 好ましくは、前記固体状態のジヒドロキシ化合物と、脱酸素剤とを、前記容器中で非接触的に共存させることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の保存方法。
(9) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物の平均嵩密度が、200kg/m3以上1000kg/m3であることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の保存方法。
(10) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量が、20重量ppm以下であることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の保存方法。
(12) 分子内に下記式(1)で表される構造を有し、25℃において固体であるジヒドロキシ化合物と、溶融した炭酸ジエステルとを、圧力0.06MPa以上0.20MPa以下で、0.5時間以上30時間以下の条件下で混合して、ポリカーボネートの原料として用いることを特徴とするポリカーボネート原料の調製方法。
(13) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物を、溶融液、溶液、または懸濁液にした後、溶融した炭酸ジエステルと混合して、ポリカーボネートの原料として用いることを特徴とする(12)に記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(14) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物の溶融、溶解または懸濁を、酸素濃度0.0001vol%以上10vol%以下の雰囲気下で行うことを特徴とする(13)に記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(15) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物を、溶融液または溶液にした後、蒸留精製を行い、続いて溶融した炭酸ジエステルと混合して、ポリカーボネートの原料として用いることを特徴とする(12)から(14)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(16) 好ましくは、蒸留精製前の前記ジヒドロキシ化合物が、塩基性安定剤を含有することを特徴とする(15)に記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(17) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物の融点が220℃以下であることを特徴とする(12)から(16)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(18) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物を、溶融した炭酸ジエステルと混合する操作を、酸素濃度0.0001vol%以上10vol%以下の雰囲気下で行うことを特徴とする(12)から(17)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(19) 好ましくは、溶融した炭酸ジエステルの液の重量をA重量部、前記ジヒドロキシ化合物の供給速度をB重量部/hとした時、B≦6Aであることを特徴とする(12)から(18)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(21) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物を溶融させた液の重量をC重量部、固体状態の前記ジヒドロキシ化合物の供給速度をD重量部/hとした時、D≦6Cであることを特徴とする(20)に記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(22) 好ましくは、固体状態の前記ジヒドロキシ化合物の平均嵩密度が200kg/m3以上1000kg/m3以下であることを特徴とする(12)から(21)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(23) 好ましくは、固体状態の前記ジヒドロキシ化合物を底部コーン角が120度以下である受器に受け入れることを特徴とする(12)から(22)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(24) 好ましくは、炭酸ジエステルと混合する際の前記ジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量が20重量ppm以下であることを特徴とする(12)から(23)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(25) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする(12)から(24)のいずれかに記載のポリカーボネート原料の調製方法。
(28) 少なくとも分子内に下記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物成分と炭酸ジエステルからポリカーボネートを製造する方法において、前記分子内に下記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と、溶融状態の炭酸ジエステルとを、温度70℃以上240℃以下、圧力0.06MPa以上0.20MPa以下で、0.5時間以上30時間以下混合した後、連続的に圧力0.06MPa未満に保持された反応槽に供給して、エステル交換反応を進めて、ポリカーボネートを製造することを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
(29) 好ましくは、前記分子内に式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と、溶融状態の炭酸ジエステルとの混合を攪拌機を具備した槽中で行い、撹拌翼の先端速度が0.05m/s以上10m/s以下であることを特徴とする(27)または(28)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(31) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物成分として、少なくとも前記分子内に式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族および/または脂環式ジヒドロキシ化合物とを用い、前記脂肪族および/または脂環式ジヒドロキシ化合物が、炭酸ジエステル1モルに対し、0.01モル以上の比率であることを特徴とする(27)から(30)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
(32) 好ましくは、脂肪族ジヒドロキシ化合物が、1,3−プロパンジオールであることを特徴とする(31)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(33) 好ましくは、脂環式ジヒドロキシ化合物が、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/またはトリシクロデカンジメタノールであることを特徴とする(31)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(34) 好ましくは、前記分子内に式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、複素環式ジヒドロキシ化合物であることを特徴とする(27)から(33)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
(35) 好ましくは、前記複素環式ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする(34)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(37) 好ましくは、ジヒドロキシ化合物成分と、溶融した炭酸ジエステルとを80℃以上120℃以下で混合することを特徴とする(27)から(36)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
(38) 好ましくは、前記分子内に式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応させるポリカーボネートの製造方法において、前記ジヒドロキシ化合物の金属原子含有量が、1ppm未満であることを特徴とする(27)または(28)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(39) 好ましくは、前記ジヒドロキシ化合物の金属原子含有量が、0.5ppm未満であることを特徴とする(38)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(41) 好ましくは、前記アルデヒド化合物含有量が、0.008重量%未満であることを特徴とする(40)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(42) 好ましくは、反応前に前記分子内に下記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物を蒸留することを特徴とする(38)から(41)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
(43) 好ましくは、蒸留時の初留が2重量%以上であり、釜残が8重量%以上(蒸留仕込み量を100重量%とする。)であることを特徴とする(42)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(44) 好ましくは、前記分子内に下記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物を蒸留する際に用いる蒸留装置において、該ジヒドロキシ化合物の接触する部分がモリブデン含有合金からなる蒸留装置であることを特徴とする、(42)または(43)に記載のポリカーボネートの製造方法。
(45) 好ましくは、(38)から(44)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法において、前記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行う反応容器が、モリブデン含有合金からなることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
(46) 好ましくは、(11)に記載の解砕したジヒドロキシ化合物をポリカーボネートの原料に用いることを特徴とする(27)から(45)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
(47) 好ましくは、(1)から(15)のいずれかに記載の方法で調製された原料を用いることを特徴とする(27)から(45)のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
また、本発明の調製方法、製造方法によれば、透明性、色調、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ優れた光学特性(特に高い透明性)を有するポリカーボネートを安定的に得ることができる。
本発明のポリカーボネート原料用ジヒドロキシ化合物の保存方法(以下、単に「本発明の保存方法」と称する場合がある。)は、分子内に下記式(1)で表される構造を有する固体状態のジヒドロキシ化合物(以下、「本発明に係る固体ジヒドロキシ化合物」と称する場合がある。)を容器に充填して保存する方法において、前記ジヒドロキシ化合物の水分含有量が1.0重量%以下、前記容器内の温度が60℃以下、かつ、前記容器の底面にかかる圧力が0.005kgf/cm2以上0.5kgf/cm2以下の条件下で保存するジヒドロキシ化合物の保存方法に係るものである。
また、「固体状態のジヒドロキシ化合物」とは、「保存」する際において一時的であっても固体状態でさえあれば固体状態のジヒドロキシ化合物を保存するものとみなし、当該化合物の融点によらない。すなわち、例えば融点が常温以下であったとしても、保存する際の温度が融点以下であれば、固体状態のジヒドロキシ化合物を容器に充填して保存する方法である。そして、本発明においては、当該ジヒドロキシ化合物を本発明に係る固体ジヒドロキシ化合物と称する。
また、これらの塩基性安定剤は、除去せずにそのままポリカーボネートの原料として用いると、それ自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるので、使用前にイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
ガスバリア性を有する無機層として、具体的には、蒸着などにより形成したアルミニウムなどの金属膜や、ゾルゲル法や蒸着法などにより形成したシリカ、アルミナなどの金属酸化物膜などが挙げられる。
ガスバリア性を有する無機物を蒸着処理した樹脂フィルムは、耐久性が優れるのに加え、母体となる樹脂製フィルムとして、ガスバリア性を有さない樹脂も使用できるため、材料選択の幅が広がるという利点もある。
樹脂製フィルムの厚さは、ガスバリア性が十分確保できる厚さであればよく、通常5μm〜10mm、好ましくは10μm〜1000μm、特に好ましくは30μm〜500μmである。
本発明の保存方法において、本発明に係る固体ジヒドロキシ化合物の水分含有量、容器内温度及び本発明に係る固体ジヒドロキシ化合物にかかる最大圧力を所定の範囲になるように制御することが必須である。
保存温度の下限は特に制限はないが、温度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利であるため、通常、−10℃以上、好適には0℃以上である。
脱酸素剤としては、例えば、鉄粉等に代表される金属成分を用いたもの、アスコルビン酸及びその塩(アスコルビン酸の異性体であるエリソルビン酸及びその塩を含む)、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、没食子酸、カテコール、ピロガロール等の多価フェノール類、不飽和炭素、水添ゴム等の不飽和二重結合その他の易酸化性部位を有する物質等を使用することができるが、取り扱いのし易さから、鉄粉、アスコルビン酸を成分として含むものが好ましい。脱酸素剤を包装する材料は、酸素が十分に透過できるものであれば特に制限なく、酸素透過性の樹脂フィルムや網目状に空隙部が設けられた樹脂フィルムなどを使用することができる。
本発明のポリカーボネート原料の調製方法(以下、「本発明の調製方法」と称する場合がある。)について説明する。
本発明の調製方法は、分子内に下記式(1)で表される構造を有し、25℃において固体である本発明に係るジヒドロキシ化合物と、溶融した炭酸ジエステルと、圧力0.06MPa以上0.20MPa以下で、0.5時間以上30時間以下の条件下で混合して、ポリカーボネートの原料として用いる。
なお、25℃において固体であるジヒドロキシ化合物とは、融点が少なくとも25℃より高いジヒドロキシ化合物を意味し、該ジヒドロキシ化合物を使用する際に固体である必要はなく、例えば、融点以上の温度で使用したり、適当な溶媒を使用することによって、溶融液、溶液または懸濁液として使用してもよい。
そのため、上述の本発明の保存方法で説明した式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物(本発明に係る固体ジヒドロキシ化合物)のうち、25℃において固体であるものを好適に使用することができる。
また、これらの塩基性安定剤は、除去せずにそのままポリカーボネートの原料として用いると、それ自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるので、使用前にイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明に係るジヒドロキシ化合物は、固体のまま溶融した炭酸ジエステルと混合しても良いし、溶融液、溶液、懸濁液とした後、溶融した炭酸ジエステルと混合しても良いが、操作性、供給安定性の点から、溶融液、溶液、または懸濁液にした後、溶融した炭酸ジエステルと混合されることが好ましく、定量性の観点からは、溶融液として混合されることが好ましい。
なお、本発明に係るジヒドロキシ化合物を、溶融、溶解または懸濁する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001〜10vol%、中でも0.0001〜5vol%、特には0.0001〜1vol%の雰囲気下で行うことが、劣化防止の観点から好ましい。
代表的な炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネートの融点は約80℃であり、本発明に係るジヒドロキシ化合物のように熱安定性に劣る原料であっても、溶融した炭酸ジエステルに溶解させることにより、比較的低温での原料調製が可能となり、熱劣化による重合性の悪化や、最終製品であるポリカーボネートの着色を抑制することができる。また、予め炭酸ジエステルと融点の低いジヒドロキシ化合物を混合しておくと混合物の融点を更に下げることも可能であり、該混合物と本発明に係るジヒドロキシ化合物とを混合することも熱履歴低減の観点からは有効である。
本発明に係るジヒドロキシ化合物を溶融した炭酸ジエステルと混合させる時の速度は特に制限はないが、溶融した炭酸ジエステルの液の重量をA重量部、本発明に係るジヒドロキシ化合物の供給速度をB重量部/hとした場合、B≦6Aであることが好ましく、更にはB≦4A、特にはB≦3Aであることが好ましい。前記において、Aは炭酸ジエステルが他のモノマー等と混合されている場合には、炭酸ジエステルのみの重量部とし、本発明に係るジヒドロキシ化合物を溶液または懸濁液にした場合には、溶媒や分散媒を除いたジヒドロキシ化合物正味の供給速度をB重量部/hとする。
該供給速度は連続的に供給する場合は、その平均の供給速度、間欠的に供給する場合には、先の供給で供給したジヒドロキシ化合物の重量を、先の供給を開始してから次の供給を開始するまでの時間で除することによって求めることとする。
本発明に係るジヒドロキシ化合物を溶融した炭酸ジエステルに直接供給する場合には、供給速度が大きすぎると本発明に係るジヒドロキシ化合物が容易には溶解せず、原料の不均一を招き、不必要な熱履歴を与える原因になり、本発明に係るジヒドロキシ化合物を溶融液、溶液、懸濁液で供給する場合でも、炭酸ジエステルとの混合時に吸熱し、内容物が固化して装置トラブルの原因となる。一方、小さすぎると装置が過大になったり、熱履歴が大きくなったりする。
該供給速度は連続的に供給する場合は、その平均の供給速度、間欠的に供給する場合には、先の供給で供給した固体状態のジヒドロキシ化合物の重量を、先の供給を開始してから次の供給を開始するまでの時間で除することによって求めることとする。
一般的に、本発明に係るジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを混合した場合には吸熱現象が起こるため、供給速度が大きすぎると内容物の析出や固化を招くことがある。
図1において、1は固体状態のジヒドロキシ化合物の受入ホッパー、2は定量フィーダー、3はジャケットを具備した撹拌槽、4は抜出用ラインである。
固体状態のジヒドロキシ化合物は、必要に応じて粉砕され、受入ホッパー(1)に供給される。受入ホッパー(1)の底部コーン角は好ましくは120度以下であり、内部を減圧にし、窒素置換する設備が付帯され(図示せず。)、固体状態のジヒドロキシ化合物を受け入れた後、減圧と窒素置換を繰り返し、ホッパー内部の酸素濃度を低下させる。撹拌槽(3)内部は、予め窒素置換して酸素濃度を1vol%以下に保った上で加温し、溶融したジヒドロキシ化合物を敷液しておく。次に、撹拌槽(3)を一定温度幅に制御しながら、定量フィーダー(2)で固体状態のジヒドロキシ化合物を供給する。この時、必要に応じ撹拌や窒素バブリングを実施し、内部を均一に溶融させる。溶融が終了した後、抜出用ライン(4)を通じて、次の工程、好ましくは蒸留精製工程に供給する。ジヒドロキシ化合物の溶融速度が十分大きい場合には、連続して固体状態のジヒドロキシ化合物を供給しながら、連続的に抜き出すこともできる。
重合触媒は原料調製槽(9)、原料貯槽(10)に添加することもできるし、重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からはライン(10A)の途中に触媒供給ライン(図示せず。)を設置し供給することが好ましい。
以下、本発明のポリカーボネートの製造方法について説明する。
本発明のポリカーボネートの製造方法においては、原料として、少なくとも分子内に下記式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物成分と炭酸ジエステルをエステル交換させてポリカーボネートを製造する。
ポリカーボネートの原料として、上述した(A)本発明の保存方法で得られるジヒドロキシ化合物や、(B)本発明のポリカーボネート原料の調製方法で得られるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとからなる原料を使用することが好ましいが、これらの原料に限定されない。
以下、本発明のポリカーボネートの製造方法における特に好適な方法として、少なくとも式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物を必須成分として使用し、特定の温度、圧力のもと、一定時間混合することを特徴とする本発明のポリカーボネートの製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されない。
なお、本発明の製造方法において、「ジヒドロキシ化合物成分」とは、ポリカーボネートの原料となるすべてのジヒドロキシ化合物の合計を意味する。また、「溶融状態」とは、それぞれの融点以上で、溶融した原料モノマーの状態を指すが、特に熱処理を必要とするわけではなく、例えば、炭酸ジエステルのうち、常温で液体のものについては、熱処理を行うことなくそのまま使用される。さらに、本発明の製造方法において、「圧力」とは、真空を基準に表した、いわゆる絶対圧力を指す。
さらに、混合する際の槽内の圧力(以下、「混合圧力」と称する場合がある。)は、通常0.06〜0.20MPaであり、好ましくは、0.09〜0.12MPaである。混合圧力が、0.06MPa未満であると、モノマーの揮散を招き、原料のモル比がずれて十分な分子量のポリマーが得られなかったり、ベント部等への閉塞を招いたりする。一方、0.20MPaを超えると、原料調製槽のみならず、付帯設備を含めた設備に耐圧構造が要求されるため、装置が過大になったり、操作が煩雑になったりする。
また、原料モノマーが均一に混合するための混合時間は0.5時間以上30時間以下であり、好ましくは1.0〜20時間、特に好ましくは、1.0〜10時間である。本発明における混合時間とは、モノマーの混合をバッチ式で行う場合には、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを攪拌機を具備した槽に供給して、該槽から抜き出すまでの時間をいい、連続式で行う場合には、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを攪拌機を具備した槽に供給して、該槽から抜き出すまでの平均滞留時間をいう。
また、これらの塩基性安定剤は、除去せずにそのままポリカーボネートの原料として用いると、それ自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるので、使用前にイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
ジヒドロキシ化合物(II)は、本発明におけるポリカーボネート原料の他の原料である、ジヒドロキシ化合物(I)及び炭酸ジエステルと相溶性があるため、ジヒドロキシ化合物(II)が界面活性剤的働きをすることで、すべてのポリカーボネート原料の混合を促進する効果がある。
ジヒドロキシ化合物(I)と同様に上述の塩基性安定剤を含む場合は、通常、ジヒドロキシ化合物(II)に対して、0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%である。
なお、その他のジヒドロキシ化合物を用いる場合には、その他のジヒドロキシ化合物が相溶化剤として働くため、ジヒドロキシ化合物(II)が存在しなくても、原料の均一化を図ることができるが、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の含有割合が多過ぎると、本来の光学特性の性能の低下や、耐熱性の低下を招くことがあるため、ジヒドロキシ化合物成分(ジヒドロキシ化合物(I)とジヒドロキシ化合物(II)とその他のジヒドロキシ化合物の合計)に対するジヒドロキシ化合物(I)の割合が、20モル%以上、好ましくは30モル%以上、特には50モル%以上であることが好ましい。
その他のジヒドロキシ化合物としては、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
なお、金属原子含有量とは、前記ジヒドロキシ化合物に含まれる金属原子の総量(合計値)を意味し、ICP発光分析により測定された各元素量の和をもって金属原子含有量とする。すなわち、本発明に係るポリカーボネートは、ジヒドロキシ化合物成分の全重量に対する金属原子含有量の重量比率が、1ppm未満である。
これらの金属原子を総量で1ppm以上含有すると、合成されるポリカーボネートが着色する原因となる場合がある。ジヒドロキシ化合物成分に含有する金属原子の総量は1ppm未満であり、好ましくは0.5ppm未満、更に好ましくは0.1ppm未満である。
かかる安定剤としては、通常、還元剤や制酸剤が用いられ、このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられる。制酸剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、メタホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのリン酸塩などが挙げられる。このような安定剤に含まれるアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は、ポリカーボネートの重合反応での触媒ともなるため、供給原料中に残存すると重合反応に影響するおそれがあるため、好ましくない。
そのため、本発明に係るジヒドロキシ化合物(I)が接触する部分は、モリブデン含有合金からなることが好ましい。ジヒドロキシ化合物が接触する部分としては、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行う反応容器が典型的だが、ジヒドロキシ化合物を貯蔵する容器がモリブデン含有合金からなることも好ましい。ジヒドロキシ化合物を反応に用いる前に予め蒸留する場合には、当該蒸留に用いる蒸留装置がモリブデン含有合金からなることが好ましい。より好ましくは、70℃以上のジヒドロキシ化合物が接触する部分がモリブデン含有合金からなることが好ましく、更に好ましくは、70℃以上のジヒドロキシ化合物が接触する部分全てがモリブデン含有合金からなることが好ましい。
モリブデン含有合金としては、モリブデンを含有するものであればどのようなものであっても構わないが、モリブデン含有ステンレス鋼を使用することが好ましい。ステンレス鋼は、鉄に少なくとも10.5重量%以上のクロムを含有した合金鋼のことである。モリブデンの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。一方、通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは4重量%以下である。この値が小さすぎると、透明性に優れ、しかも粘度の充分に高い良質なポリカーボネート得る効果が小さくなる。一方、過剰に含有していたとしても、本発明に係る効果がそれ以上認められない傾向となり、しかも合金の価格が高価となってポリカーボネートを安価に製造することが困難になる。モリブデン含有合金の含有するモリブデン以外の含有金属としては、クロム、ニッケルが挙げられる。
クロムの含有量は、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上である。一方、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下である。ニッケルの含有量は、好ましくは3重量%以上、更に好ましくは8重量%以上である。一方、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
モリブデン含有合金の具体的な例としては、JIS G 4304に示されるステンレス鋼のうち、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS317、SUS329、SUS436等があげられる。
ジヒドロキシ化合物成分は、固体状態で、溶融状態の炭酸ジエステルと混合しても良いし、溶融状態で、炭酸ジエステルと混合しても良いが、操作性、供給安定性、定量性の観点からは、ジヒドロキシ化合物成分は、溶融状態で炭酸ジエステルと混合されることが好ましい。
攪拌機の攪拌翼の形状には特に制限はなく、攪拌速度は、撹拌翼の先端速度が、0.05m/s以上10m/s以下であることが好ましく、中でも0.1m/s以上5m/s以下であることが好ましい。撹拌翼の先端速度が0.1m/sより小さいと、撹拌の効果が小さく、原料の均一化が進みにくくなり、10m/sより大きいと、撹拌翼に付帯する電動機の消費電力が大きくなったり、飛沫が飛び散り槽の上部等に付着し、異物の原因となったりすることがある。なお、先端速度とは、前記撹拌翼の撹拌軸から最も遠い部分の速度を意味する。また、原料調製槽に耐圧性を持たせることにより、次の段階のエステル交換反応用反応槽を兼ねることもできる。
ジヒドロキシ化合物(I)を溶融させる際には、熱による劣化を最小限に抑えるために、あらかじめ少量のジヒドロキシ化合物の溶融液を調製しておき、そこに固体状態のジヒドロキシ化合物を順次供給することが好ましい。
このポリカーボネートの還元粘度が低すぎると成形材料として用いた時の機械的強度が小さく、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品の複屈折率が大きくなり易い傾向がある。
固体のジヒドロキシ化合物(I)の調製は、(B)ポリカーボネート原料の調製方法において説明した操作と同様である。すなわち、図1に示す溶融用撹拌槽を用いて、同様な操作で固体のジヒドロキシ化合物(I)を溶融すればよい。また、ジヒドロキシ化合物(II)やその他のジヒドロキシ化合物が固体の場合には、同様な設備を使用して溶融される。
貯槽は、複数設けてその他のジヒドロキシ化合物を供給することもできる。調製が終わった原料は必要に応じ、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を分析した後、ライン(9Ax)を通じて、第1反応槽(9x)(図4参照)へ供給される。
ライン(5Ax)、(5Bx)、(6Ax)、(6Bx)、(7Ax)、(7Bx)、(9Ax)は、内容物が固化しない程度に保温または加温しておき、ライン(9Ax)には必要に応じ異物を除去するためのフィルターを設置する。溶融した炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物の混合はバッチ式で行うこともできるし、連続的に行うこともできる。また、払い出し(反応槽への供給)もバッチ式で行うこともできるし、連続的に行うこともできるが、特に連続的に払い出す場合に、本発明の効果が大きい。
重合触媒は原料調製槽(8x)に添加することもできるし、第1反応槽(9x)に添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からはライン(9Ax)の途中に触媒供給ラインを設置し(図示せず。)供給することが好ましい。なお、本実施形態では、原料を均一混合するための原料調製槽(8x)を設けたが、必ずしも必要でなく、原料モノマーの量が少なく相溶性の高い場合などには第1反応槽(9x)に直接原料を供給し、上記温度、圧力条件で撹拌混合後、上記圧力でエステル交換反応を行わせてもよい。
具体的には、第1段目の反応は140〜280℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃、好ましくは220〜260℃の温度範囲のもとで重合反応を行う。発生したフェノールは、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
一例として、図4に本発明の重合反応の好ましい形態を示す。図3の原料調製槽(8x)で混合された原料は、必要に応じ原料貯槽(図示せず。)で一旦ストックされた後、図4に示すライン(9Ax)を経て、好ましくは連続的に、第1反応槽(9x)に送られる。第1反応槽(9x)は、ベント管(9Bx)を経て真空ポンプ(図示せず。)に接続され、圧力が0.06MPa未満、好ましくは、0.005〜0.05MPaに保持されており、エステル交換反応が進行する。第1反応槽(9x)の内部温度は150〜270℃、好ましくは200〜240℃、平均滞留時間が0.2〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間になるよう制御する。第1反応槽(9x)で生成したプレポリマーは、ライン(10Ax)を経て、好ましくは連続的に第2反応槽(10x)に送られる。第2反応槽(10x)の圧力は通常、第1反応槽(9x)より低くなるよう、好ましくは、1〜5kPaに制御する。第2反応槽(10x)の内部温度は200〜270℃、好ましくは210〜250℃、平均滞留時間が0.2〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間になるよう制御する。第2反応槽(10x)で得られたプレポリマーは、同様にライン(11Ax)を経て、第3反応槽(11x)に送られ、通常第2反応槽(10x)より低い圧力、好ましくは、0.5kPa未満、内部温度200〜270℃、好ましくは210〜250℃、平均滞留時間0.2〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間でさらに重合反応を進行させる。第3反応槽で得られたプレポリマーは、抜出用ギヤポンプ(図示せず。)を用いて、ライン(12Ax)から第4反応槽(12x)に供給される。第4反応槽(12x)は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。第4反応槽(12x)に導入されたプレポリマーは、好ましくは0.3kPa未満の圧力で、内部温度200〜280℃、好ましくは210〜250℃、平均滞留時間0.2〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間で、更に重縮合反応が進められた後、ライン(12Cx)より抜出用ギヤポンプ(図示せず。)を用いて、ダイスヘッド(図示せず。)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(図示せず。)で切断されてペレットとなる。図4中の9Bx、10Bx、11Bx、12Bxはベント管であり、必要に応じコンデンサ(図示せず。)を経て、真空ポンプ(図示せず。)に接続されている。初期の反応が行われる例えば第1、第2反応槽には、モノマーの揮散を抑制し、重合反応における原料モル比を安定させるために還流冷却器を設置することが好ましい。
熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
また、本発明のポリカーボネートは例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
以下において、ポリカーボネート原料及びポリカーボネートの物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
酸素計(AMI社製:1000RS)を使用し、測定した。
ICP発光分光分析装置VISTA−PRO(Varian社製)を使用して測定した。
メスシリンダーを用いて容積を測定し、サンプル重量を当該容積で除することにより算出した。
カールフィッシャー式水分計(三菱化学(株)製CA−200)を用いて測定した。
<カラー(b*値)の測定方法>
カラーメーター(日本電色社製「300A」)を用いて、チップカラーを測定した。ガラスセルに、チップを所定量入れ、反射測定で測定し、国際照明委員会(CIE)で規定されたb*値を測定した。
この数値が小さいほど、黄色みが小さく色調に優れる。
<カラー(APHA)の測定方法>
下記装置を用い、カラー(APHA)の測定を実施した。
測色色差計: ZE2000(日本電色社製)
イソソルビドを水希釈(サンプル濃度20重量%)とし、透過測定にてAPHA値を測定した。なお、この数値が小さいほど、黄色みが小さい。
中央理化製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比1:1混合溶媒を用い、温度30.0℃±0.1℃で測定した。濃度は1.00g/dLになるように、精密に調製した。
サンプルは120℃で攪拌しながら、30分で溶解し、冷却後測定に用いた。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度ηrelから、下記式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、下記式より還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。
ηred=ηsp/c
なお、この数値が高いほど分子量が大きい。
イソソルビドを純水で100倍希釈してイオンクロマトグラフ Dionexy社製 DX−500型で測定した。
なお、イソソルビドはロケットフルーレ社製、1,4−シクロヘキサンジメタノールはイーストマン社製、炭酸セシウムは和光純薬社製、ジフェニルカーボネートは三菱化学(株)製、トリシクロデカンジメタノールはオルセア社製、1,4−ブタンジオールは三菱化学社製、9,9−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンは大阪ガスケミカル社製のものを用いた。
下記装置を用い、イソソルビドの純度の測定を実施した。
ガスクロマトグラフ:HP6890(ヒューレット・パッカード社製)
カラム:DB−1(J&W Scientific社製)
測定サンプルは試薬特級アセトニトリルにて、20〜100倍に希釈した。
下記装置を用い、イソソルビドの金属原子含有量(ppm、重量比率)を測定した。
ICP発光装置:VISTA−PRO(Varian社製)
ISB:イソソルビド
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール
TCDDM:トリシクロデカンジメタノール
BD:1,4−ブタンジオール
BHEPF:9,9−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン
DPC:ジフェニルカーボネート
安定剤としてリン酸水素2Naを30重量ppm含む嵩密度750kg/m3のイソソルビド(ISB:融点66℃)フレークをポリエチレン製のフィルムにアルミ蒸着を施した100μmフィルムを内袋として有する紙袋に入れ、窒素置換を実施し、内部の酸素濃度を1〜2%にした後、ヒートシールを行い密封した。この紙袋を10℃の恒温槽に入れ、上から荷重をかけて底面での圧力が0.029kgf/cm2になるようにした。この状態で60日間保管した後、内容物を確認したところ、フレークは仕込んだ状態を保持しており、塊とはなっていなかった。この時の水分含有率は0.2重量%、蟻酸含有率は5重量ppm以下であった。このISBフレーク100重量部をあらかじめ窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器に仕込み、熱媒で加熱した。溶融が始まり撹拌が可能になった時点で撹拌を開始し、全量を均一に溶融させ、内温を80℃にした。次に定量フィーダーのホッパーに上記と同じISBフレークを入れ、ホッパー内で十分窒素置換を行った後、容器内の溶融したISBに、前記フレーク状態のISBを200重量部/hで供給し、連続的に溶融させた。ISBフレーク供給中は容器内を撹拌し、ISBフレークを合計400重量部供給した時点で供給を止めた。ISBフレーク供給中は若干の内温低下が見られたが固化には至らず、供給停止後は速やかに内温80℃に回復した。続いて、該容器の圧力を徐々に下げ、加温を行った。内圧133〜266Pa、内温160℃になった時点で溜出が始まり、初留を25.5重量部採取した後、主留として403.5重量部、後留として28.5重量部採取し、残りは釜残として容器中に残した。この精製ISB中の蟻酸濃度は5重量ppm以下、Na濃度は0.1重量ppmであった。
撹拌翼を具備した重合装置にトリシクロデカンジメタノール(TCDDM、粘調液体)27.2重量部を仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)後、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)を窒素雰囲気下、100℃で保持したまま液体の状態で、該重合装置に100重量部仕込んだ。続いて撹拌しながら、TCDDMとDPCの混合物を均一にし、熱媒で加温を行い内温を100℃に保った。次に、窒素気流下、前記の方法で蒸留精製したISBの主留を、窒素雰囲気下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、80℃で液体のまま保持したものを、300重量部/hで、連続的に供給した。該ISB供給中は撹拌を行い、該ISBを47.3重量部供給した時点で供給を止めた。該ISB供給中は若干の内温低下が見られたが、終始均一で、供給停止後は速やかに内温100℃に回復した。このように調製したポリカーボネート原料に、重合触媒として炭酸セシウム0.00019重量部を添加し、反応器内の圧力を常圧から13.3kPaに下げ、熱媒温度を1時間かけて190℃に上昇させて重合反応を開始させた。この状態で15分間保持した後、反応器内の圧力を6.67kPaとし、熱媒温度を230℃まで15分で上昇させた。その後、8分かけて熱媒温度を250℃に上昇させると同時に反応器内の圧力を0.2kPa以下に下げ、120分間保持した後、得られたポリマーをストランド状に抜き出して、水冷固化後、カッティングし、ペレットを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.58dL/g、b*値は6.5であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存温度を20℃で行った他は、実施例1と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.55dL/g、b*値は6.9であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存の際に、鉄系脱酸素剤(商品名エージレスSA100:三菱瓦斯化学社製)を10袋共存させた他は、実施例2と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.58dL/g、b*値は6.3であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存温度を45℃とした他は、実施例1と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.53dL/g、b*値は7.4であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存温度を45℃として、内袋としてアルミ蒸着処理を施していない厚さ100μmのポリエチレン製フィルムを用いた他は、実施例1と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。ISBの保管後の水分量は0.3重量%であった。得られたポリマーの還元粘度は0.50dL/g、b*値は9.0であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存温度を45℃とした他は、実施例3と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.57dL/g、b*値は6.6であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存温度を45℃、荷重を0.232kgf/cm2とした他は、実施例1と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。ISB保管後に一部圧密によると考えられる塊状物が見られたため、窒素下で解砕し、ほぼ元のフレークに近い状態にした後、実施例1と同様にISBの溶融、蒸留、重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.52dL/g、b*値は8.3であった。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存温度を65℃にした以外は、実施例5と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。ISBの保管後の水分量は0.4重量%であった。ISB保管後は、圧密または融着によると考えられる塊状物となっており、包材の形に一体化して、わずかにフレークの痕跡が見られただけであった。これを窒素下で解砕し、ほぼ元のフレークを同じ粒径にした後、実施例5と同様にISBの溶融、蒸留、重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.40dL/gと小さく、b*値は12.5で、色調が悪化した。これらの結果を表1に示す。
ISBの保存後の水分含有率が1.5重量%になるようにした他は、実施例5と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。ISB保管後は、圧密または融着によると考えられる塊状物が見られたため、窒素下で解砕し、ほぼ元のフレークを同じ粒径にした後、実施例5と同様にISBの溶融、蒸留、重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.40dL/gと小さく、b*値は10.5で、色調が悪化した。これらの結果を表1に示す。
ISBにかける荷重を0.600kgf/cm2になるようにした他は、実施例5と同様の方法でISBの保管及び重合を行った。ISB保管後は、圧密によると考えられる塊状物が見られたため、窒素下で解砕し、ほぼ元のフレークを同じ粒径にした後、実施例5と同様にISBの溶融、蒸留、重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.47dL/gと小さく、b*値は10.0で、色調が悪化した。これらの結果を表1に示す。
安定剤としてリン酸水素2Naを30重量ppm含むイソソルビド(ISB:融点66℃)100重量部を予め窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器に仕込み、熱媒で加熱した。溶融が始まり撹拌が可能になった時点で撹拌を開始し、全量を均一に溶融させ、内温を80℃にした。次に定量フィーダーのホッパーに上記と同じ固体状態のISBを入れ、ホッパー内で十分窒素置換を行った後、容器内の溶融したISBに、前記固体状態のISBを200重量部/hで供給し、連続的に溶融させた。固体ISB供給中は容器内を撹拌し、固体ISBを合計400重量部供給した時点で供給を止めた。固体ISB供給中は若干の内温低下が見られたが固化には至らず、供給停止後は速やかに内温80℃に回復した。続いて、該容器の圧力を徐々に下げ、加温を行った。内圧133〜266Pa、内温160℃になった時点で溜出が始まり、初留を25.5重量部採取した後、主留として403.5重量部、後留として28.5重量部採取し、残りは釜残として容器中に残した。蒸留終了後、窒素で復圧し、得られた主留分を窒素雰囲気下で冷却固化させ、粉砕して嵩密度750kg/m3の精製ISBを得た。該精製固体ISBは、アルミラミネート袋に窒素下でヒートシールし、保管した。この精製ISB中の蟻酸濃度は5重量ppm以下、Na濃度は0.1重量ppmであった。
撹拌翼を具備した重合装置にトリシクロデカンジメタノール(TCDDM、粘調液体)27.2重量部を仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)後、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)を窒素雰囲気下、100℃で保持したまま液体の状態で、該重合装置に100重量部仕込んだ。続いて撹拌しながら、TCDDMとDPCの混合物を均一にし、熱媒で加温を行い内温を100℃に保った。次に、窒素気流下、上記精製固体ISBを定量フィーダーを用いて、300重量部/hで、DPCとTCDDMの溶融混合物に連続的に供給し、精製固体ISBを溶融させた。該ISB供給中は撹拌を行い、該ISBを47.3重量部供給した時点で供給を止めた。該ISB供給中は若干の内温低下が見られたが固化には至らず、供給停止後は速やかに内温100℃に回復した。
上記で調製したポリカーボネート原料に、重合触媒として炭酸セシウム0.00019重量部を添加し、反応器内の圧力を常圧から13.3kPaに下げ、熱媒温度を1時間かけて190℃に上昇させて重合反応を開始させた。この状態で15分間保持した後、反応器内の圧力を6.67kPaとし、熱媒温度を230℃まで15分で上昇させた。その後、8分かけて熱媒温度を250℃に上昇させると同時に反応器内の圧力を0.2kPa以下に下げ、120分間保持した後、得られたポリマーをストランド状に抜き出して、水冷固化後、カッティングし、ペレットを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.57dL/g、b*値は7.3であった。これらの結果を表2に示す。
実施例8と同様の方法でDPCとTCDDMの溶融混合物を調製し、内温100℃に保持した。そこに、実施例8と同様の方法で蒸留精製したISBの主留を、窒素雰囲気下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、80℃で液体のまま保持したものを、300重量部/hで、連続的に供給した。該ISB供給中は撹拌を行い、該ISBを47.3重量部供給した時点で供給を止めた。該ISB供給中は若干の内温低下が見られたが、終始均一で、供給停止後は速やかに内温100℃に回復した。このように調製したポリカーボネート原料を実施例8と同様の方法で重合させた。得られたポリマーの還元粘度は0.58dL/g、b*値は6.3であった。これらの結果を表2に示す。
安定剤としてリン酸水素2Naを30重量ppm含むイソソルビド(ISB:融点66℃)100重量部を予め窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器に仕込み、熱媒で加熱した。溶融が始まり撹拌が可能になった時点で撹拌を開始し、全量を均一に溶融させ、内温を80℃にした。次に定量フィーダーのホッパーに上記と同じ固体状態のISBを入れ、ホッパー内で十分窒素置換を行った後、容器内の溶融したISBに1000重量部/hで供給し、合計400重量部供給した時点で供給を止めた。固体ISB供給中は容器内を撹拌したが、内温の低下により途中で内容物が固化し、撹拌不能になったため、撹拌を停止し、内温が上昇して内容物が溶融するまで加熱を続けた。続いて、実施例8と同様の方法でISBの蒸留精製を行った。得られた蒸留精製ISBは、実施例8と同様の方法で冷却固化、粉砕、保管し、実施例8と同様の方法でTCDDMとDPCの溶融混合物と混合し、ポリカーボネート原料を調製した。その後、実施例8と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.57dL/g、b*値は8.2であった。これらの結果を表2に示す。
TCDDMとDPCの溶融混合物に、精製固体ISBを1000重量部/hで供給した他は、実施例8と同様にポリカーボネート原料を調製した。精製固体ISB供給中は、撹拌を行ったが、内温の低下と溶融速度の不足により途中で内容物が固化し、撹拌不能になったため、撹拌を停止し、内温が上昇して内容物が溶融するまで加熱を続けた。内温が100℃になって内容物が均一になったのを確かめてから、撹拌を開始し、実施例8と同様に重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.56dL/g、b*値は9.2であった。これらの結果を表2に示す。
TCDDM(27.0重量部)とDPC(100重量部)の溶融混合物に、精製固体ISBを300重量部/hで合計26.8重量部供給した後に、同様の方法で、固体状態の9,9−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BHEPF:融点160〜164℃、嵩密度550kg/m3)を、200重量部/hで、合計60.2重量部供給し、炭酸セシウムの添加量を0.00134重量部にした他は実施例8と同様にポリカーボネート原料を調製した。原料調製操作中の混合液は、終始固化は起こらず、BHEPFは速やかに溶解した。この原料を用いて実施例8と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.65dL/g、b*値は13.0であった。これらの結果を表2に示す。
実施例9において、TCDDMの代わりに1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM、融点32〜62℃)を20.2重量部用いた以外は実施例9と同様に行った。得られたポリマーの還元粘度は0.57dL/g、b*値は8.6であった。これらの結果を表2に示す。
実施例9において、ISBを59.5重量部、TCDDMの代わりに1,4−ブタンジオール(BD、融点16℃)を8.4重量部用いた以外は実施例9と同様に行った。得られたポリマーの還元粘度は0.53dL/g、b*値は9.2であった。これらの結果を表2に示す。
TCDDMと、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCをフレーク状に固化させたもの、実施例8の方法で得られた精製固体ISBを、常温で実施例8と同様の重量になるように重合装置に仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)。この混合物に実施例8と同じ重量の炭酸セシウムを添加し、続いて内温100℃になるように加熱を開始し、内容物が部分的に溶融し、撹拌可能になってからは撹拌を行いながら溶融操作を行った。全体が均一になるまでこの状態を保持した後、反応器内の圧力を常圧から13.3kPaに下げ、熱媒温度を1時間かけて190℃に上昇させて重合反応を開始させ、実施例8と同様の方法でポリマーを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.52dL/gと実施例8に比べて小さく、b*値は12.0であり、色調が悪化した。これらの結果を表2に示す。
TCDDMと、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCをフレーク状に固化させたもの、実施例8の方法で得られた精製固体ISBと、固体状態のBHEPFを、常温で、実施例12と同様の重量になるように重合装置に仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)。この混合物に実施例12と同じ重量の炭酸セシウムを添加し、続いて内温100℃になるように加熱を開始し、内容物が部分的に溶融し、撹拌可能になってからは撹拌を行いながら溶融操作を行った。全体が均一になるまでこの状態を保持した後、反応器内の圧力を常圧から13.3kPaに下げ、熱媒温度を1時間かけて190℃に上昇させて重合反応を開始させ、実施例8と同様の方法でポリマーを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.60dL/gで実施例12に比べ小さく、b*値は14.6であり、実施例12に比べ色調が悪化した。これらの結果を表2に示す。
安定剤としてリン酸水素2Naを30重量ppm含むイソソルビド(ISB:融点66℃)100重量部をあらかじめ窒素気流下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、撹拌翼を具備した容器に仕込み、熱媒で加熱した。溶融が始まり撹拌が可能になった時点で撹拌を開始し、全量を均一に溶融させ、内温を80℃にした。次に定量フィーダーのホッパーに上記と同じ固体状態のISBを入れ、ホッパー内で十分窒素置換を行った後、容器内の溶融したISBに、前記固体状態のISBを200重量部/hで供給し、連続的に溶融させた。固体ISB供給中は容器内を撹拌し、固体ISBを合計400重量部供給した時点で供給を止めた。固体ISB供給中は若干の内温低下が見られたが固化には至らず、供給停止後は速やかに内温80℃に回復した。続いて、該容器の圧力を徐々に下げ、加温を行った。内圧133〜266Pa、内温160℃になった時点で溜出が始まり、初留を25.5重量部採取した後、主留として403.5重量部、後留として28.5重量部採取し、残りは釜残として容器中に残した。
撹拌翼を具備し、内部の圧力を0.10MPa(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)に制御した原料調製槽(図3の8x)に、窒素下、100℃に加温した貯槽(7x)のトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)27.2重量部をライン(7Bx)を通じて仕込んだ後、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)を、貯槽(6x)から、100℃で保持したまま液体の状態で、原料調製槽(8x)に100重量部仕込んだ。続いて撹拌翼の先端速度が、2.51m/sになるように撹拌しながら、TCDDMとDPCの混合物を均一にし、内温を100℃に保った。次に、上記の方法で蒸留精製したISBの主留を、窒素雰囲気下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、80℃で、液体のまま貯槽(5x)に保持したものを、300重量部/hで、原料調製槽(8x)に連続的に供給した。該ISB供給中も撹拌翼の先端速度が2.51m/sになるよう撹拌を行い、該ISBを47.3重量部供給した時点で供給を止めた。該ISB供給中は10℃未満の内温低下が見られたが、供給停止後は速やかに内温100℃に回復した。
このように調製したポリカーボネート原料を、上記と同条件で撹拌しながら、ISB供給終了後1時間混合した。次に該ポリカーボネート原料をライン(9Ax)を通して、一定量、連続的に第1反応槽(9x)に供給した。ライン(9Ax)には、触媒供給用配管を接続させ、重合触媒として全ジヒドロキシ化合物1モルに対し、セシウム金属量として2.5μモルとなるように、連続的に炭酸セシウムの水溶液を添加した。第1反応槽の圧力は、13.3kPa(0.0133MPa)、内温220℃に保ち、平均滞留時間が1.0時間になるよう液面を制御した。重合反応で副生したフェノール蒸気と少量揮発したモノマー成分は、ベント管(9Bx)を通じて120℃の熱媒で温度制御したコンデンサで凝縮させ、凝縮した液は第1反応槽(9x)に還流させ、凝縮しなかったガスはさらにベント管の下流側にある45℃の熱媒で温度制御したコンデンサで凝縮させ回収した。第1反応槽から連続的にプレポリマーを抜き出し、第2反応槽(10x)、第3反応槽(11x)、第4反応槽(12x)の順に送った。第2反応槽(10x)の圧力は2kPa、内温230℃、平均滞留時間1.0時間とし、重合反応で副生したフェノール蒸気と少量揮発したモノマー成分は、ベント管(10Bx)を通じて120℃の熱媒で温度制御したコンデンサで凝縮させ、凝縮した液は第2反応槽(10x)に還流させ、凝縮しなかったガスはさらにベント管の下流側にある45℃の熱媒で温度制御したコンデンサで凝縮させ回収した。第3反応槽(11x)の圧力は0.2kPa、内温240℃、平均滞留時間1.0時間、第4反応槽(12x)の圧力は0.2kPa、内温240℃、平均滞留時間1.5時間とした。第4反応槽(12x)からストランド状に抜き出したポリマーは、水槽で冷却固化させ、回転式カッターでペレットにした。得られたポリマーを十分乾燥させ測定した還元粘度は0.64dL/g、b*値は3.3であった。これらの結果を表3に示す。
原料調製時の撹拌翼先端速度を0.03m/sになるようにした他は、実施例15と同様の方法でポリマーを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.51dL/g、b*値は4.0であった。これらの結果を表3に示す。
TCDDMを用いず、原料調製槽に供給するISBを66.2重量部とし、原料調製時の温度を120℃とした他は、実施例15と同様の方法でポリマーを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.55dL/g、b*値は4.5であった。これらの結果を表3に示す。
原料調製時の温度を180℃にした他は実施例17と同様の方法でポリマーを得た。得られたポリマーの還元粘度は0.40dL/g、b*値は10.5であった。これらの結果を表3に示す。
原料調製槽(7x)に実施例15と同様の方法で、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)27.0重量部をライン(7Bx)を通じて仕込んだ後、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)を、貯槽(6x)から、100℃で保持したまま液体の状態で、原料調製槽(8x)に100重量部仕込んだ。続いて撹拌翼の先端速度が、2.51m/sになるように撹拌しながら、TCDDMとDPCの混合物を均一にし、内温を100℃に保った。
次に、撹拌翼の先端速度が2.51m/sになるように撹拌を続けながら、窒素気流下、固体状態の9,9−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BHEPF:融点160〜164℃、嵩密度550kg/m3)を、定量フィーダーを用いて200重量部/hで、合計60.2重量部供給した。
続いて、実施例15と同様の方法で蒸留精製したISBの主留を、窒素雰囲気下(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)、80℃で、液体のまま貯槽(5x)に保持したものを、300重量部/hで、原料調製槽(8x)に連続的に供給した。該ISB供給中も撹拌翼の先端速度が2.51m/sになるよう撹拌を行い、該ISBを26.8重量部供給した時点で供給を止めた。該ISB供給中は5℃未満の内温低下が見られたが、供給停止後は速やかに内温100℃に回復した。
このように調製したポリカーボネート原料を、炭酸セシウムの供給量を全ジヒドロキシ化合物1モルに対し、セシウム金属量として17.6μモルとなるようにした他は、実施例15と同様の方法で重合反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.71dL/g、b*値は5.5であった。これらの結果を表3に示す。
実施例15において、TCDDMの代わりに1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を20.2重量部用い、ISBの供給量を47.5重量部とした以外は実施例15と同様の方法で原料調製及び重合反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.60dL/g、b*値は4.5であった。これらの結果を表3に示す。
実施例15において、ISBを59.5重量部、TCDDMの代わりに1,4−ブタンジオール(BD)を8.4重量部用いた以外は実施例15と同様の方法で原料調製及び重合反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は0.57dL/g、b*値は5.0であった。これらの結果を表3に示す。
原料の調製時間を0.3時間とし、撹拌を行わなかった他は、実施例17と同様の方法で、原料調製と重合反応を行った。重合反応はほとんど進行せず、ポリマーが得られなかった。
原料調製槽の圧力を0.05MPaとした他は、実施例15と同様の方法で原料調製及び重合反応を行った。重合反応は少し進行したが、還元粘度は0.10dL/g未満で、ストランド状態では抜き出せなかった。
ト字管、測温管、磁気回転子を備えた1Lの丸底フラスコに、窒素気流下で固体のイソソルビド500gを入れた。留出側にはリービッヒ冷却器と受器を設置し、留出したイソソルビドが固化しないように、リービッヒ冷却器へは80℃の温水を流すとともに、留出側各部には保温を実施した。窒素気流下、オイルバスにて100℃に加温し、イソソルビドを溶融し撹拌を開始した。その後、減圧を開始し700Paに到達するまでに、発泡(低沸物:水、ギ酸、フルフラールなどの蒸発)が見られた。発泡が治まってから除々に加温するとともに、減圧度を400Paに制御した。バス温を約170℃に設定し、内温155℃にて留出が開始した。この時の塔頂温度は150.5℃であった。20gを初留とした後、受器を切り替え、主留分として400g取得した。この時の内温は155℃から158℃で、塔頂温度は150.5℃から151℃であった。釜残液は褐色に着色していたが、得られる留出液は無色透明であった。
蒸留終了後、内温を100℃まで下げ、窒素を入れ常圧に戻した。得られた主留分は固化する前に、乾燥窒素で置換されたドライボックス内で冷却固化させ粉砕した。得られたイソソルビドの純度は表1に示す通りであった。蒸留前のイソソルビドに微量含有する、水、ギ酸、フルフラールなどの低沸点化合物は減圧ポンプ前に設置したコールドトラップ(ドライアイス−エタノール)にて捕集された。
ト字管に変えてビグリュー管を取り付けたほかは、実施例22と同様な装置を用い、実施例22と同様な操作を行い、蒸留精製を実施した。得られたイソソルビドの純度は、表4に示す通りであった。得られたイソソルビドを使用し、実施例22と同様な操作を行った。得られたポリカーボネートの評価結果を表4に示す。
実施例23の蒸留精製で得られたイソソルビド100gを80℃で溶融し、SUS316の金属片(15mm×50mm、厚さ2mm)を浸漬後に、減圧脱気−窒素復圧による窒素置換を行った。窒素下、80℃にて、1週間撹拌保持した。1週間後、窒素下にて冷却固化及び粉砕し、実施例22と同様な重合にてポリカーボネートのペレットを得た。得られたポリカーボネートの評価結果を表4に示す。
浸漬する金属片をSUS304としたほかは、実施例24と同じ操作にて熱保持を行ったイソソルビドを使用して、実施例22と同様な重合操作を行った。得られたポリカーボネートの評価結果を表4に示す。
表4に示す純度の未蒸留イソソルビドを使用し、実施例22と同様な操作を行った。得られたポリカーボネートの評価結果を表4に示す。
表4に示す純度の未蒸留イソソルビドを使用し、実施例22と同様な操作を行った。得られたポリカーボネートの評価結果を表4に示す。
本出願は、2008年11月28日出願の日本国特許出願(特願2008−305723)、2008年11月28日出願の日本国特許出願(特願2008−305724)、2008年11月28日出願の日本国特許出願(特願2008−305725)、及び2008年11月28日出願の日本国特許出願(特願2008−305726)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
また、本発明の調製方法で調製されたポリカーボネートは、透明性、色調、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ優れた光学特性を有するポリカーボネートを安定的に製造できる。
また、本発明の調製方法の製造方法にて製造されたポリカーボネートは、透明性、色調、耐熱性、成形性、及び機械的強度に優れ、かつ優れた光学特性を有するため、電気及び/または電子部品、自動車用部品等の射出成形分野、フィルム、シート分野、耐熱性が必要な、ボトル、容器分野、さらには、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ用途、液晶やプラズマディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどのフィルム、シート、光ディスク、光学材料、光学部品、色素、電荷移動剤等を固定化するバインダー用途といった幅広い分野への材料提供が可能であるため、工業的に極めて有望である。
2 定量フィーダー
3 ジャケットを具備した撹拌槽
4 抜出用ライン
5,6 貯槽
7 ホッパー
8 定量フィーダー
9 原料調製槽
10 原料貯槽
5A、5B、6A、6B、7A、9A、10A ライン
5x,6x,7x 貯槽
8x 原料調製槽
9x 第1反応槽
10x 第2反応槽
11x 第3反応槽
12x 第4反応槽
5Ax、5Bx、6Ax、6Bx、7Ax、7Bx、9Ax、10Ax、11Ax、12Ax、12Cx ライン
9Bx、10Bx、11Bx、12Bx ベント管
Claims (8)
- 分子内に下記一般式(2)で表される構造を有する固体状態のジヒドロキシ化合物を容器に充填して保存する方法において、
前記ジヒドロキシ化合物の水分含有量が1.0重量%以下、
前記容器内の温度が60℃以下、
かつ、前記容器の底面にかかる圧力が0.02kgf/cm2以上0.5kgf/cm2以下の条件下で保存することを特徴とするポリカーボネート原料用ジヒドロキシ化合物の保存方法。
- 前記容器内の酸素濃度が、0.0001vol%以上10vol%以下であることを特徴とする請求項1に記載の保存方法。
- 前記容器が、金属製コンテナ、樹脂製コンテナ、ファイバードラム、フレキシブルコンテナ、または紙袋であることを特徴とする請求項1または2に記載の保存方法。
- 前記容器が、樹脂製フィルムからなる内袋を有する容器であることを特徴とする請求項3に記載の保存方法。
- 前記樹脂製フィルムが、ガスバリア性を有する無機層が形成された樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項4に記載の保存方法。
- 前記固体状態のジヒドロキシ化合物と、脱酸素剤とを、前記容器中で非接触的に共存させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の保存方法。
- 前記ジヒドロキシ化合物の平均嵩密度が、200kg/m3以上1000kg/m3であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の保存方法。
- 前記ジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量が、20重量ppm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の保存方法。
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