JP6079067B2 - 共重合ポリカーボネート - Google Patents

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Description

本発明は、バイオマス資源であるデンプンなどの糖質から誘導することができる糖由来アルコールに由来する構造単位を含有し、かつ成形性、機械強度、光弾性係数に優れた共重合ポリカーボネートに関する。
ポリカーボネートは一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートの提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が気候変動などをもたらすことからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が求められている。植物由来モノマーとして、イソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換反応により、ポリカーボネートを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
イソソルビドから得られるポリカーボネートは光学歪みが小さいなどの優れた光学特性を有することが知られているが、一方でその剛直な構造のために、ガラス転移温度や溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難であることや、機械強度が低いという問題を抱えている。そこで、様々なジヒドロキシ化合物との共重合により成形加工性、機械強度を向上させることが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)が、高分子量のジヒドロキシ化合物との共重合(例えば、特許文献4参照)を行うと、非相溶のため、得られるポリカーボネートの透明性が低くなる問題がある。
英国特許第1079686号明細書 国際公開第04/111106号パンフレット 特開2008−024919号公報 特表2006−518803号公報
以上のように優れた機械強度と成形加工性、透明性とを併せ持つ植物由来モノマーを用いたポリカーボネートの開発が望まれているにも関わらず、そのようなポリカーボネートは報告されていない。
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解消し、優れた機械強度(なかでも耐面衝撃性)と成形加工性、透明性とを併せ持つ植物由来モノマーを用いた共重合ポリカーボネートを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、糖由来アルコールに由来する構造単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む共重合ポリカーボネートが、優れた機械強度と成形加工性、透明性とを併せ持つことを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、次の〔1〕〜〔8〕に存する。
〔1〕少なくとも、糖由来アルコールに由来する構造単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物
に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことを特徴とする共重合ポリカーボネート。
〔2〕糖由来アルコールに由来する構造単位が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位である、〔1〕に記載の共重合ポリカーボネート。
Figure 0006079067
〔3〕脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、トリシクロデカンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジオール類、デカリンジオール類、トリシクロテトラデカンジオール類、トリシクロデカンジメタノール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類、シクロヘキサンジオール類、シクロへキセンジオール類、ノルボルナンジオール類、アダマンタンジオール類、シクロへキサンジメタノール類、シクロヘキセンジメタノール類、ノルボルナンジメタノール類およびアダマンタンジメタノール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である、〔1〕または〔2〕に記載の共重合ポリカーボネート。
〔4〕脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、エチレングリコール、プロパンジオール類、ブタンジオール類、ヘプタンジオール類、ヘキサンジオール類、デカンジオール類、ドデカンジオール類、ネオペンチルグリコールおよびヘキシレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート。
〔5〕共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、糖由来アルコールに由来する構造単位の割合が、10mol%以上90mol%以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート。
〔6〕共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が、0.5mol%以上80mol%以下である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート。
〔7〕共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が、0.5mol%以上80mol%以下である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート。
〔8〕パンクチャー衝撃試験機を用いて、温度23℃の雰囲気下でポンチ径20mm、サポート径40mm、試験速度4.4m/sの試験条件で、形状100mm×100mm×2mmの成形平板を、錘で打ち抜いた時の破壊点エネルギーが25J以上300J以下である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の共重合ポリカーボネート。
〔9〕〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の共重合ポリカーボネートを成形してなることを特徴とする成形品。
本発明の共重合ポリカーボネートは、機械強度と透明性に優れ、さらに光学歪みが小さく、耐光性に優れ、表面硬度が高く、耐溶剤性に優れるなどの特性を持つ。このことから、外壁、屋根、自動車用内・外装、フィルム、シート、ボトル、容器、メガネレンズ、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ用途、液晶やプラズマディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルム、光ディスク、色素、電荷移動剤等を固定化するバインダー用途等、建築材料分野、電気・電
子分野、自動車分野、光学部品分野等、幅広い分野への材料提供が可能である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されず適宜変形して実施することができる。
本発明の共重合ポリカーボネートは、上記のとおり、少なくとも、糖由来アルコールに由来する構造単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことに特徴をもつものである。
<糖由来アルコール>
本発明の共重合ポリカーボネートは、糖由来アルコールに由来する構造単位を有するが、本発明における糖由来アルコールとは、共重合ポリカーボネートを構成することができるものであれば、如何なるものも使用することが可能であって、糖そのものでも良く、アルドースやケトースを還元したものでも良く、更に分子内脱水環化したものでも良い。
また、複数種の糖由来アルコールを使用しても良い。当該糖由来アルコールは、共重合ポリカーボネートを構成するために、通常2価のアルコールが用いられるが、3価もしくはそれ以上の水酸基を有する糖由来アルコールであっても構わない。
本発明における糖由来アルコールに特に制限は無いが、共重合ポリカーボネートの熱安定性を向上させる観点から環構造を有するものが好ましく、より好ましくは2以上4以下の環構造を有するものが用いられる。また、同様の理由から分子量が800以下であるものが好ましく、より好ましくは分子量が350以下のもの、特に好ましくは分子量が300以下のものである。
中でも共重合ポリカーボネートの光学特性、機械物性、耐熱性の観点からは、下記式(1)で表される化合物に代表される無水糖アルコールが好ましい。
Figure 0006079067
上記式(1)で表される化合物としては、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物の中でも、植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手および製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
糖由来アルコール、特に、上記式(1)で表される無水糖アルコールは、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良く、無水糖アルコールは特に酸性下で変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物、ジ−(tert−ブチル)アミン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
これらの塩基性安定剤の中でも安定化の効果からはナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、モルホリン、ジエタノールアミン、ジ−tert−ブチルアミンが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これら塩基性安定剤の糖由来アルコール中の含有量に特に制限はないが、糖由来アルコールは酸性状態で分解が促進されるため、上記の塩基性安定剤を含む糖由来アルコールの水溶液のpHが7〜8となるように塩基性安定剤を添加することが好ましい。
塩基性安定剤の含有量が少なすぎると糖由来アルコールの変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると糖由来アルコールの変性を招く場合がある。通常、塩基性安定剤の含有量は、糖由来アルコールに対して、好ましくは0.0001重量%〜1重量%、特に好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
これらの塩基性安定剤を含有した糖由来アルコールを共重合ポリカーボネートの製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、得られる共重合ポリカーボネートの色相の悪化を招くため、共重合ポリカーボネートの製造原料として使用する前に糖由来アルコール中の塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
また、糖由来アルコールがイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。これら分解物を含むイソソルビドを共重合ポリカーボネートの製造原料として使用すると、得られる共重合ポリカーボネートの着色を招く可能性があり、また、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の共重合ポリカーボネートが得られない場合もある。
上記酸化分解物を含まない糖由来アルコールを得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するためには、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっ
ても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このように、糖由来アルコールを適切な条件下で取り扱うことで、糖由来アルコールを含む化合物を共重合ポリカーボネートの製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れた共重合ポリカーボネートの製造がより容易になる。
本発明の共重合ポリカーボネートを構成する、少なくとも糖由来アルコールと脂環式ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物(以下、「全ジヒドロキシ化合物」と略称することがある。)に由来する構造単位に対する、糖由来アルコールに由来する構造単位の割合は、好ましくは10mol%以上、より好ましくは20mol%以上、特に好ましくは30mol%以上、最も好ましくは50mol%以上である。また上限は、好ましくは90mol%以下、より好ましくは80mol%以下、特に好ましくは70mol%以下である。
10mol%より低いと耐熱性(ガラス転移温度)が低くなる恐れがあり、90mol%を超えると破壊点エネルギーや脆性破壊率等の耐面衝撃性が低くなる恐れがある。
糖由来アルコールに由来する構造単位が少ないと、ガラス転移温度が低くなり、耐熱性が低下する傾向がある。一方、糖由来アルコール由来の構造単位が多すぎると、機械強度が悪化する傾向がある。
<脂環式ジヒドロキシ化合物>
脂環式ジヒドロキシ化合物は、環状構造の炭化水素骨格と2つのヒドロキシ基を有する化合物であり、ヒドロキシ基は、環状構造に直接結合していてもよいし、アルキレン基のような置換基を介して環状構造に結合していてもよい。また、環状構造は単環であっても多環であってもよい。
脂環式ジヒドロキシ化合物の好適なものとしては、以下に挙げる5員環構造を有する脂環式ジヒドロキシ化合物、6員環構造を有する脂環式ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
脂環式ジヒドロキシ化合物として、5員環構造を有する脂環式ジヒドロキシ化合物又は6員環構造を有する脂環式ジヒドロキシ化合物を用い、これらに由来する構造単位を共重合ポリカーボネートに導入することにより、得られる共重合ポリカーボネートの耐熱性を高めることができる。
脂環式ジヒドロキシ化合物の炭素数は、通常70以下であり、好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。この炭素数が多いほど、精製が困難になったり、コストが高くなることがある。一方、脂環式ジヒドロキシ化合物の炭素数が少ないほど、精製しやすく、原料調達が容易である。
5員環構造を有する脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、トリシクロデカンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジオール類、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール等のデカリンジオール類、トリシクロテトラデカンジオール類、トリシクロデカンジメタノール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類等が挙げられる。
6員環構造を有する脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオ
ール等のシクロヘキサンジオール類、4−シクロヘキセン−1,2−ジオール等のシクロへキセンジオール類、2,3−ノルボルナンジオール、2,5−ノルボルナンジオール等のノルボルナンジオール類、1,3−アダマンタンジオール、2,2−アダマンタンジオール等のアダマンタンジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のシクロへキサンジメタノール類、4−シクロヘキセン−1,2−ジオール等のシクロヘキセンジメタノール類、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール等のノルボルナンジメタノール類、1,3−アダマンタンジメタノール、2,2−アダマンタンジメタノール等のアダマンタンジメタノール類等が挙げられる。
以上に挙げた脂環式ジヒドロキシ化合物の中でも、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が好ましく、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。
シクロヘキサンジメタノール類及び/又はトリシクロデカンジメタノール類を用いると、得られる共重合ポリカーボネート組成物の面衝撃性が優れたものとなる。シクロヘキサンジメタノール類の中では1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
これらの脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種のみで使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上、さらに好ましくは2mol%以上、特に好ましくは5mol%以上、最も好ましくは10mol%以上である。また上限は、好ましくは80mol%以下、より好ましくは60mol%以下、特に好ましくは50mol%以下、最も好ましくは25mol%以下である。
0.5mol%より低くくても、80mol%を超えても破壊点エネルギーや脆性破壊率等の耐面衝撃性が低くなる恐れがある。
<脂肪族ジヒドロキシ化合物>
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物、分岐脂肪族ジヒドロキシ化合物等が挙げられ、これらの中でも直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物が好ましい。
以下に脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例を挙げるが、以下の脂肪族ジヒドロキシ化合物は1種のみで使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール等のプロパンジオール類、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール等のブタンジオール類、1,5−ヘプタンジオール等のヘプタンジオール類、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のヘキサンジオール類、1,10−デカンジオール等のデカンジオール類、1,12−ドデカンジオール等のドデカンジオール類等が挙げられる。
分岐脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
本発明の共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上、特に好ましくは2mol%以上、さらに好ましくは3mol%以上、最も好ましくは5mol%以上である。また上限は、好ましくは80mol%以下、より好ましくは60mol%以下、特に好ましくは50mol%以
下、最も好ましくは30mol%以下である。
0.5mol%より低いと破壊点エネルギーや脆性破壊率等の耐面衝撃性が低くなる恐れがあり、80mol%を超えると耐熱性(ガラス転移温度)が低くなる恐れがある。
<その他のジヒドロキシ化合物>
本発明の共重合ポリカーボネートは、上記糖由来アルコールと脂環式ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいても良い。
その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレングリコール類、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン等のビス(ヒドロキシアルコキシ)アリール類、下記式(2)や下記式(3)で表されるスピログリコール等が挙げられる。
Figure 0006079067
これらのその他のジヒドロキシ化合物は、1種のみで使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は、好ましくは80mol%以下、より好ましくは60mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。
<共重合ポリカーボネートの製造条件>
本発明の共重合ポリカーボネートは、上述した全ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
(炭酸ジエステル)
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(4)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 0006079067
上記式(4)において、A及びAは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である。A及びAは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
前記式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオン等の不純物を含む場合があり、これらの不純物が重合反応を阻害したり、得られる共重合ポリカーボネートの色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留等により精製したものを使用することが好ましい。炭酸ジエステル中の塩化物イオン濃度は、通常1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下である。
(エステル交換反応触媒)
本発明の共重合ポリカーボネートは、通常、全ジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルとをエステル交換反応させて製造される。より詳細には、全ジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合し、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
本発明の共重合ポリカーボネートの製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある)は、特に透明性や色相に影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造された共重合ポリカーボネートの耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度のうち、とりわけて耐光性を満足させ得るものであれば、限定されないが、長周期型周期表における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用す
ることも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては、通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られる共重合ポリカーボネートの色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、カルシウム化合物が最も好ましい。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニル
アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記の中でも、リチウム化合物及び2族金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を触媒として用いるのが、得られる共重合ポリカーボネートの透明性、色相、耐光性等の種々の物性を優れたものとするために好ましい。
また、本発明の共重合ポリカーボネートの透明性、色相、耐光性を特に優れたものとするために、触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であるのが好ましい。
上記重合触媒の使用量は、好ましくは、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、更に好ましくは0.5μmol〜100μmolである。中でもリチウム及び2族金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、好ましくは0.1μmol以上、更に好ましくは0.5μmol以上である。また上限は、好ましくは20μmol以下、更に好ましくは10μmol以下である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため結果的に所望の分子量の共重合ポリカーボネートを得ようとすると、重合温度を高くせざるを得なくなり、得られた共重合ポリカーボネートの色相や耐光性が悪化したり、未反応の原料が重合途中で揮発して全ジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルのmol比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られる共重合ポリカーボネートの色相の悪化を招き、共重合ポリカーボネートの耐光性が悪化する可能性がある。
(製造条件等)
本発明の共重合ポリカーボネートは、上述した全ジヒドロキシ化合物と前記式(4)の炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも95℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招く場合がある。混合の温度が高すぎるとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られる共重合ポリカーボネートの色相が悪化し、耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、全ジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルとを混合する操作は、酸素濃度10体積%以下、更には0.0001体積%〜10体積%、中でも0.0001体積%〜5体積%、特には0.0001体積%〜1体積%の雰囲気下で行うことが、得られる共重合ポリカーボネートの色相悪化防止の観点から好ましい。
前記式(4)で表される炭酸ジエステルは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のmol比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは0.95〜1.10のmol比率である。
このmol比率が小さ過ぎると、製造された共重合ポリカーボネートの末端水酸基が増加して、共重合ポリカーボネートの熱安定性が悪化し、成形時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
また、このmol比率が大き過ぎると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量の共重合ポリカーボネートの製造が困難となる場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られた共重合ポリカーボネートの色相や耐光性を悪化させる可能性がある。
更には、全ジヒドロキシ化合物に対する、前記式(4)で表される炭酸ジエステルのmol比率が増大すると、得られる共重合ポリカーボネート中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収して共重合ポリカーボネートの耐光性を悪化させる場合がある。本発明の共重合ポリカーボネートに残存する炭酸ジエステルの濃度は、好ましくは200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは60重量ppm以下、中でも30重量ppm以下が好適である。ただし、現実的に共重合ポリカーボネートは未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、共重合ポリカーボネート中の未反応の炭酸ジエステル濃度の下限値は通常1重量ppmである。
本発明において、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
重合条件としては、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが、得られる共重合ポリカーボネートの色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのmol比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は、使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、該還流冷却器の入口において、通常45℃〜180℃、好ましくは80℃〜150℃、特に好ましくは100℃〜130℃である。還流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎると本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。
冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的に得られる共重合ポリカーボネートの色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明の共重合ポリカーボネートは、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ
、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明の共重合ポリカーボネートの製造に好適に使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率等の観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは4つである。本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていく等してもよい。
本発明において、重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、重合槽に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、得られる共重合ポリカーボネートの分解や着色を助長する可能性がある。
重合反応は、具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは180℃〜240℃、更に好ましくは200℃〜230℃、圧力は絶対圧力として、110kPa〜10kPa、好ましくは70kPa〜5kPa、更に好ましくは30kPa〜1kPa、反応時間は0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間で、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、重合反応器の内温の最高温度210℃〜270℃、好ましくは220℃〜250℃で、通常0.1時間〜10時間、好ましくは1時間〜6時間、特に好ましくは0.5時間〜3時間行う。
特に、得られる共重合ポリカーボネートの着色や熱劣化を抑制し、色相や耐光性の良好な共重合ポリカーボネートを得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満、特に225℃〜245℃であることが好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
得られる共重合ポリカーボネートの高分子量化を図るために、重合温度を高く、重合時間を長くし過ぎると、透明性や色相が悪くなる傾向にある。
また、副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
なお、前記式(4)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用いて共重合ポリカーボネートを製造する場合は、フェノール、置換フェノールが副生し、共重合ポリカーボネート中に残存することは避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有することから紫外線を吸収し、耐光性の悪化要因になる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原因となる場合がある。
共重合ポリカーボネート中には、通常のバッチ反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香環を有する芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や
臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、共重合ポリカーボネート中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を、好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特に好ましくは300重量ppm以下にすることが適当である。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、共重合ポリカーボネート中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1重量ppmである。尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基等を有していてもよい。
また、1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、特にはナトリウム、カリウム、セシウムは、使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるが、これらの金属が共重合ポリカーボネート中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があるため、本発明の共重合ポリカーボネート中のこれらの化合物の合計量は、少ない方が好ましく、共重合ポリカーボネート中の金属量として、通常5重量ppm以下、好ましくは3重量ppm以下、より好ましくは2重量ppm以下である。
共重合ポリカーボネート中の金属量は、従来公知の種々の方法により測定可能であるが、湿式灰化等の方法で共重合ポリカーボネート中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明の共重合ポリカーボネートは、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機に供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸又は二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存モノマーの減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、共重合ポリカーボネートのガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、共重合ポリカーボネートの溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、共重合ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招くことがある。
本発明の共重合ポリカーボネートを製造する際には、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、濾過精度40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。
本発明の共重合ポリカーボネートの押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出された共重合ポリカーボネートを冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐことが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルター
にて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
更に本発明の共重合ポリカーボネート中の下記式(5)で表される末端基の濃度の下限量は、通常20μeq/g以上、好ましくは40μeq/g以上、特に好ましくは50μeq/g以上であり、また上限は、通常160μeq/g以下、好ましくは140μeq/g以下、特に好ましくは100μeq/g以下である。
Figure 0006079067
共重合ポリカーボネート中の上記式(5)で表される末端基の濃度が高すぎると、重合直後や成形時の色相が良好であっても、紫外線曝露後の色相の悪化を招く可能性があり、逆に低すぎると熱安定性が低下する虞がある。
上記式(5)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である全ジヒドロキシ化合物と前記式(4)で表される炭酸ジエステルのmol比率を制御する他、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重合圧力や重合温度を制御する方法等が挙げられる。
なお、上記末端基の濃度は、H−NMRにより定量することができる。
<共重合ポリカーボネートの物性>
(還元粘度)
本発明の共重合ポリカーボネートの分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、好ましくは0.2dL/g以上、より好ましくは0.3dL/g以上である。還元粘度の上限は、好ましくは1.2dL/g以下、より好ましくは1.0dL/g以下である。
共重合ポリカーボネートの還元粘度が低すぎると成形品の機械強度が小さい可能性があり、高すぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
(ガラス転移温度(Tig))
本発明の共重合ポリカーボネートのガラス転移温度(Tig)は、耐熱性や成形性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上である。ガラス転移温度の上限は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
共重合ポリカーボネートのガラス転移温度(Tig)が低いと、その共重合ポリカーボネートは耐熱性が低くなる傾向がある。また、ガラス転移温度が高すぎると成形性が低くなる傾向がある。
(全光線透過率)
本発明の共重合ポリカーボネートの全光線透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
共重合ポリカーボネートの全光線透過率が低すぎると、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることが困難になる場合がある。
(ヘーズ)
本発明の共重合ポリカーボネートのヘーズは、厚さ3mmの成形片において、好ましく
は10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。
共重合ポリカーボネートのヘーズが高すぎると、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることが困難になる場合がある。
(破壊点エネルギー)
本発明の共重合ポリカーボネートの破壊点エネルギーは、好ましくは25J以上、より好ましくは30J以上、特に好ましくは50J以上、最も好ましくは60J以上である。破壊点エネルギーの上限に特に制限はないが、通常300J以下である。
共重合ポリカーボネートの破壊点エネルギーが低すぎると、耐面衝撃性が低く脆く割れやすい材料になる。そのため、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることが困難になる場合がある。特に自動車分野では、衝撃に対して脆く割れやすい材料を使用することは、安全上の観点から困難になる場合が多い。
(脆性破壊率)
本発明の共重合ポリカーボネートの脆性破壊率は、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
共重合ポリカーボネートの脆性破壊率が高すぎると、耐面衝撃性が低いことになり、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等において好適に用いることが困難になる場合がある。
(鉛筆硬度)
本発明の共重合ポリカーボネートの鉛筆硬度は、好ましくはHB以上、より好ましくはF以上である。
共重合ポリカーボネートの鉛筆硬度が低いと、表面硬度が低いことになり、成形品表面の耐傷付き性が低くなる傾向がある。
なお、共重合ポリカーボネートの還元粘度、ガラス転移温度(Tig)、全光線透過率、ヘーズ、破壊点エネルギー、脆性破壊率、鉛筆硬度の測定方法等は、後述の[実施例]の項で示すとおりである。
<成形物(成形品)>
本発明の共重合ポリカーボネートは、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物(成形品)とすることができる。
また、本発明の共重合ポリカーボネートは、種々の成形を行う前に、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤、充填剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することもできる。
また、本発明の共重合ポリカーボネートには、成形加工性や諸物性のさらなる向上・調整を目的として、本発明の共重合ポリカーボネート以外の樹脂(以下、単に「その他の樹脂」と称することがある。)を添加することも出来る。
その他の樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤などが挙げられる。
本発明の共重合ポリカーボネートを成形してなる成形品は、特に全光線透過率、ヘーズ、耐面衝撃、表面高度等に優れることから、建築材料分野、電気・電子分野、自動車分野、光学部品分野等に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。また、以下の例において、共重合ポリカーボネートの物性評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度の共重合ポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを
求め、
ηrel=t/t
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。
この値が高いほど分子量が大きい。
(2)ガラス転移温度(Tig)
ガラス転移温度は、JIS K7121に規定される方法に準拠して求めた。より具体的には、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定を行い、測定条件としては、共重合ポリカーボネート約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で室温から250℃まで昇温し、3分間温度を保持した後、0℃まで20℃/分の速度で冷却する。0℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温し、2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分における曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である補外ガラス転移開始温度を求め、これをガラス転移温度(Tig)とした。
(3)全光線透過率およびヘーズ
全光線透過率ならびにヘーズは、JIS K7105に準拠し共重合ポリカーボネートの幅60mm×長さ60mm×厚さ3mmの成形片を用い、日本電色工業社製ヘーズメーター(1001DP)にて測定した。
(4)パンクチャー衝撃試験(打ち抜き試験)
島津製作所社製高速パンクチャー衝撃試験機ハイドロショットHITS−P10を用いて、温度23℃の雰囲気下でポンチ径20mm、サポート径40mm、試験速度4.4m/sの試験条件で、形状100mm×100mm×2mm、試験片数n=5にて成形平板を錘で打ち抜き、破壊エネルギー(J)および破壊点変位(mm)を測定した。
試験片の破壊形態を確認し、割れ形状が錘の大きさよりも広がったものを「脆性破壊」として判断し、試験片枚数5枚中何枚が「脆性破壊」したかで脆性破壊率(%)を求めた。脆性破壊率は値が小さいほど優れているものと評価される。
(5)鉛筆硬度
前述のヘーズ測定と同じ試験片を使用し、東洋精機社製鉛筆引掻塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4に記載の方法で鉛筆硬度を測定した。
<略号>
以下の実施例および比較例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
ISB:イソソルビド
TCDDM:トリシクロデカンジメタノール
HD:1,6−ヘキサンジオール
PDO:1,3−プロパンジオール
DPC:ジフェニルカーボネート
参考例1]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとTCDDMとHD、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPC、および酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.635/0.115/0.250/1.000/3.0×10−6になるように仕込み、充分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が140℃になった時点で撹拌を開始した。昇温を開始後40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに30分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで窒素にて復圧させた後、撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、50分で内温230℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で窒素にて復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。
得られた共重合ポリカーボネートについて、還元粘度、ガラス転移温度(Tig)、全光線透過率、ヘーズ、破壊点エネルギー、破壊点変位、脆性破壊率、鉛筆硬度などの測定を実施し、物性評価を行った。これらの結果を表1に示す。
参考例2]
ISB、TCDDM、HD、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.60/0.15/0.25/1.00/3.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表1に示す。
[実施例3]
ISB、TCDDM、HD、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.60/0.20/0.20/1.00/3.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表1に示す。
参考例4]
ISB、TCDDM、HD、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.651/0.282/0.067/1.000/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表1に示す。
参考例5]
ISB、TCDDM、HD、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.634/0.235/0.131/1.000/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表1に示す。
[実施例6]
ISB、TCDDM、HD、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.618/0.190/0.192/1.000/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表1に示す。
[比較例1]
ISB、TCDDM、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表2に示す。
[比較例2]
ISB、TCDDM、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/TCDDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.50/0.50/1.00/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表2に示す。
[比較例3]
ISB、HD、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/HD/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.85/0.15/1.00/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表2に示す。
[比較例4]
ISB、PDO、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/PDO/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表2に示す。
[比較例5]
ISB、PDO、DPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/PDO/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.60/0.40/1.00/2.0×10−6になるように仕込んだ他は参考例1と同様に実施した。得られた共重合ポリカーボネートの物性評価の結果を表2に示す。
Figure 0006079067
Figure 0006079067
これらの結果より、糖由来アルコールに由来する構造単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位からなる共重合ポリカーボネート(本発明の共重合ポリカーボネート)は、糖由来アルコールに由来する構造単位と、脂環式または脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位からなる共重合ポリカーボネート(比較例の共重合ポリカーボネート)に比べ、全光線透過率、ヘーズ、破壊点エネルギー、破壊点変位、脆性破壊率、鉛筆硬度が良好であり、特に、パンクチャー衝撃試験における破壊点エネルギーが大きく、脆性破壊率が小さく、耐面衝撃性に優れていることが分かる。

Claims (7)

  1. 少なくとも、糖由来アルコールに由来する構造単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含み、
    前記糖由来アルコールに由来する構造単位が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位であり、
    前記脂肪族ジヒドロキシ化合物が、直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物、分岐脂肪族ジヒドロキシ化合物の少なくとも一方であり、
    前記共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は0.5mol%以上20mol%以下であり、
    前記共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は0.5mol%以上20mol%以下であることを特徴とする共重合ポリカーボネート。
    Figure 0006079067
  2. 前記共重合ポリカーボネート中のリチウム及び2族金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、金属量として、前記ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1mol以上、20mol以下含む、請求項1に記載の共重合ポリカーボネート。
  3. 脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、トリシクロデカンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジオール類、デカリンジオール類、トリシクロテトラデカンジオール類、トリシクロデカンジメタノール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類、シクロヘキサンジオール類、シクロへキセンジオール類、ノルボルナンジオール類、アダマンタンジオール類、シクロへキサンジメタノール類、シクロヘキセンジメタノール類、ノルボルナンジメタノール類およびアダマンタンジメタノール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である、請求項1または2に記載の共重合ポリ
    カーボネート。
  4. 脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が、エチレングリコール、プロパンジオール類、ブタンジオール類、ヘプタンジオール類、ヘキサンジオール類、デカンジオール類、ドデカンジオール類、ネオペンチルグリコールおよびヘキシレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構造単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合ポリカーボネート。
  5. 共重合ポリカーボネートを構成する全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、糖由来アルコールに由来する構造単位の割合が、10mol%以上90mol%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合ポリカーボネート。
  6. パンクチャー衝撃試験機を用いて、温度23℃の雰囲気下でポンチ径20mm、サポート径40mm、試験速度4.4m/sの試験条件で、形状100mm×100mm×2mmの成形平板を、錘で打ち抜いた時の破壊点エネルギーが25J以上300J以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の共重合ポリカーボネート。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の共重合ポリカーボネートを成形してなることを特徴とする成形品。
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