JP5750402B2 - 強化熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
一般に、筐体を製造する方法としては、上記樹脂組成物を、形状をある程度自由に成形できる射出成形により成形する方法が採られている。
その欠点を克服する手段として、繊維強化ポリカーボネート樹脂に、カルボキシ基を有するオレフィン系ワックス等を配合する方法が提案されている(特許文献1)。
また、機械的強度を向上させる目的で、シランカップリング剤とエポキシ樹脂で表面処理されたガラス繊維を用いる方法(特許文献2)や、ナイロン系収束剤で収束された炭素繊維を用いる方法(特許文献3)が提案されている。
さらに、強化樹脂組成物のめっき外観を向上させる目的で、0.1〜60質量部の無機充填材と、グリシジルエーテル単位含有重合体を配合する方法(特許文献4)が提案されている。
特許文献2,3に記載の方法では、成形品の耐衝撃性を充分に向上させることはできなかった。
特許文献4に記載の方法では、必ずしも成形品の剛性を満足することはできず、近年のモバイル機器筐体の薄型化の要求には充分に対応できない。これは、無機充填材の配合量が60重量部以下と少ないことが原因であると考えられるが、配合量を60質量部よりも増やすと、強化樹脂組成物の成形性が低下するという問題があった。
また、本発明は、剛性、耐衝撃性、機械的強度、難燃性のいずれもが高い成形品を提供することを目的とする。
[1] ポリカーボネート樹脂(A)50〜90質量%と、ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有するグラフトポリマー(B2)がグラフト重合したグラフト共重合体(B)10〜50質量%(ただし、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)との合計が100質量%である。)と、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)との合計100質量部に対して、水溶性ポリウレタンで表面処理されたガラス繊維(D)61〜129質量部と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)0.5〜20質量部と、燐酸エステル系難燃剤(F)10〜40質量部とを含有することを特徴とする強化熱可塑性樹脂組成物。
[2] 燐酸エステル系難燃剤(F)の質量平均分子量が326を超え、686以下であることを特徴とする[1]に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
[3] [1]または[2]に記載の強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたことを特徴とする成形品。
[4] 少なくとも一部の表面に、JIS B 0601で定義される十点平均粗さが0.5〜40μmである凹凸形状を有し、かつ、JIS Z 8741で定義される、入射角60°における表面の光沢度(60°)が0.5〜20%であることを特徴とする[3]に記載の成形品。
本発明の成形品は、剛性、耐衝撃性、機械的強度、難燃性のいずれもが高い。
「強化熱可塑性樹脂組成物」
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、グラフト共重合体(B)と、水溶性ポリウレタンで表面処理されたガラス繊維(D)と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)とを必須成分として含有する。
なお、本明細書においては、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)とからなる成分を、樹脂主成分(C)という。また、以下において、「成形品」とは、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
ポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシジアリールアルカンから得られる樹脂であり、任意に枝別れしていてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は公知の方法により製造される。例えば、ジヒドロキシまたはポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させる方法や、溶融重合法により製造される。また、コンパクトディスク等からリサイクルしたものも使用できる。
ジヒドロキシジアリールアルカンとしては、例えば、ヒドロキシ基に対してオルトの位置にアルキル基を有するものが使用される。ジヒドロキシジアリールアルカンの好ましい具体例としては、4,4−ジヒドロキシ2,2−ジフェニルプロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、およびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、成形品の機械的強度や耐衝撃性、強化熱可塑性樹脂組成物の流動性のバランスが特に優れることから、17,000〜25,000であることがより好ましい。
樹脂主成分(C)中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)と後述するグラフト共重合体(B)の合計量を100質量%とした際の、50〜90質量%であり、80〜90質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が50質量%未満であると、成形品の難燃性や耐衝撃性が低下し、90質量%を超えると、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性が低下する。特に、ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が80〜90質量%であれば、表面外観やウエルド外観が良好な成形品が得られやすくなる。
グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有するグラフトポリマー(B2)がグラフト重合したものである。
グラフト共重合体(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト共重合体(B)におけるゴム質重合体(B1)としては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン(ポリシロキサン)−アクリル複合ゴムなどが挙げられる。これらの中では、成形品のめっき性能が良好であることから、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン−アクリル複合ゴムが好ましい。また、成形品の難燃性が良好であることから、シリコーン−アクリル複合ゴムがより好ましい。
ジエン−アクリル複合ゴムにおけるアクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレート(f)と多官能性単量体(g)とが重合されたものである。
ここで、アルキル(メタ)アクリレート(f)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性単量体(g)としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴム質重合体(B1)の平均粒子径は、成形品の耐衝撃性をより高くできることから、0.1〜0.6μmであることが好ましい。
グラフトポリマー(B2)は、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位と、シアン化ビニル化合物単量体(b)単位とを必須成分として有し、これらと共重合可能な単量体(c)単位を任意成分として有する。これらの組成比には特に制限はないが、成形品の耐衝撃性と強化熱可塑性樹脂組成物の成形性のバランスに優れることから、好ましくは芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位が50〜90質量%、シアン化ビニル化合物単量体(b)単位が10〜50質量%で、単量体(c)単位が0〜40質量%である(ただし、(a)と(b)と(c)の合計が100質量%)。
シアン化ビニル化合物単量体(b)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。
これらと共重合可能な単量体(c)としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。
グラフト共重合体(B)は、アセトン溶媒に対する不溶分を70〜99質量%含み、かつ、アセトン可溶分の0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.3〜0.7dl/gであることが好ましい。アセトン溶媒に対する不溶分が70質量%以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性および成形品の表面外観がより向上し、一方、99質量%以下であれば、成形品の引き裂き強度が向上する。
また、アセトン可溶分の上記還元粘度が0.3dl/g以上であれば、成形品の引き裂き強度が向上し、0.7dl/g以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性および成形品の表面外観がより向上する。
グラフト共重合体2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱後、遠心分離機を用い1500rpmにて30分間遠心分離する。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤する。その質量差分([グラフト共重合体2.5g]−[乾燥後の試料の質量])より、グラフト共重合体に対するアセトン可溶分の含有比率(%)を求めることができる。
還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定する。
ここで、アセトン溶媒に対する可溶分は、グラフトポリマー(B2)と同様の重合体であって、ゴム質重合体(B1)にグラフトしていない重合体である。アセトン溶媒に対する可溶分は、ゴム質重合体(B1)にグラフトポリマー(B2)をグラフト重合させる際に同時に生成することが多い。
グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)と、シアン化ビニル化合物単量体(b)と、必要に応じて、他の単量体(c)とをグラフト重合させることにより得られる。
グラフト共重合体(B)の重合方法には制限はないが、乳化重合法が好ましい。また、グラフト重合時には、グラフト共重合体(B)の分子量やグラフト率を調整するために、各種連鎖移動剤を添加してもよい。
樹脂主成分(C)中のグラフト共重合体(B)の含有量は10〜50質量%であり、10〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい(ただし、(A)成分と(B)成分との合計が100質量%である。)。樹脂主成分(C)中のグラフト共重合体(B)の含有量が10質量%未満であると、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性は充分なものではなく、50質量%を超えると、強化熱可塑性樹脂組成物の成形品の難燃性や耐衝撃性が低下する。特に、グラフト共重合体(B)の含有量が10〜20質量%であれば、表面外観やウエルド外観が良好な成形品が得られやすくなる。
水溶性ポリウレタンで表面処理されたガラス繊維(D)は、未処理のガラス繊維の表面を水溶性ポリウレタンで処理されて得られる。また、水溶性ポリウレタンで処理する前に、カップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤)などの表面処理剤で前処理してもよい。
なお、水溶性ポリウレタン以外の処理剤で表面処理したガラス繊維を用いた場合、成形品の耐衝撃性や機械的強度が低い。
ガラス繊維(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)は、グリシジルエーテル単位を有する重合体である。このような重合体としては、例えば、ヒドロキシ基を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂などの高分子量体であって、下記式(1)で表される繰り返し単位を持つポリマーを有するもの(例えば、エポキシ基含有フェノキシ樹脂)等が挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、例えば、アルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、グリセリントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
これらグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
燐酸エステル系難燃剤(F)は、下記式(2)で表される化合物である。
また、2価以上の有機基とは、上記有機基から、炭素原子に結合している水素原子の2個以上を除いて得られる2価以上の官能基を意味する。例えば、アルキレン基、(置換)フェニレン基が挙げられる。炭素原子から取り除く水素原子の位置は任意である。
また、ビスフェノールAビスフォスフェート、ヒドロキノンビスフォスフェート、レゾルシンビスフォスフェート、トリオキシベンゼントリフォスフェート等であるところのビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジトリルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)等のポリフォスフェートが挙げられる。
上記具体例のうち、好ましい燐酸エステル系難燃剤(F)は、トリキシルフォスフェート、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)、フェニレンビス(ジトリルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジクレジルフォスフェート)であり、より好ましいものは、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)である。
燐酸エステル系難燃剤(F)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、燐酸エステル系難燃剤(F)の質量平均分子量は、質量分析法により求めることができるが、市販の燐酸エステル系難燃剤(F)を用いる場合は、カタログ値を使用してもよい。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物には、燐酸エステル系難燃剤(F)の他に、公知の非ハロゲン系難燃剤を配合して、燐酸エステル系難燃剤(F)と併用しても構わない。非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、赤燐、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤が挙げられる。
赤燐系難燃剤としては、熱硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂及び金属水酸化物で被覆されて安定化されたもの使用される。赤燐系難燃剤は、単独では発火性があるため、あらかじめ樹脂主成分(C)の少なくとも一部またはポリカーボネート樹脂(A)に混合してマスターバッチ化してもよい。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物には、燃焼時のドリップを防止するための難燃助剤(G)が含まれてもよい。難燃助剤(G)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンを含有する化合物、シリコーン系重合体などが挙げられる。
難燃助剤(G)として、ポリテトラフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレンを含有する化合物を配合する場合、その配合量は、成形品の表面外観の点から、樹脂主成分(C)100質量部に対して0.5質量部以下であることが好ましい。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、帯電防止剤、染料、顔料等を含有してもよい。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、グラフト共重合体(B)と、水溶性ポリウレタンで表面処理されたガラス繊維(D)と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)と、必要に応じて等の他の成分とを、混合装置(例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、ナウターミキサー等)を用いて混合することにより得られる。さらに、混練装置(例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、コニーダ等)を用いて混練してもよい。
本発明の成形品は、上記強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたものである。
強化熱可塑性樹脂組成物の成形加工法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
凹凸形状としては特に制限されないが、例えばシボ、梨地、皮模様、ヘアライン模様、木目模様、幾何学模様などの形状が挙げられる。
このような金型は、少なくとも成形品の意匠性が必要となる部分の金型表面が所望の形状となるように、例えばエッチング、ブラスト、研磨、切削、放電、電鋳、イオンプーティングなどの加工を1種類以上組み合わせて施すことで得られる。これらの加工法の中でも、成形品のRzの調整はエッチング加工が優れ、成形品のGs(60°)の調整はブラスト加工が優れている。ただし、成形品の製造に用いたときに、RzやGs(60°)が上記範囲内となる成形品が得られれば、金型表面の加工法について制限はない。
高い剛性と表面外観のバランスが取れた成形品を得るには、少ない添加量で高い剛性を付与できる炭素繊維を無機充填剤として配合することが有効である。炭素繊維を配合した炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は薄肉成形品を得るための材料として適しているが、炭素繊維が黒色であることから成形品への着色に制限があり、また、均一な着色外観を得ることが困難である。さらに、近年のモバイル機器には、無線LANなどの通信機能が付与されており、導電性を有する炭素繊維を配合した炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物では電波透過性を損なうことから、筐体を一体部品として得ることも困難である。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂(A)として、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバレックス7021PJ」を使用した。
固形分濃度が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス100部(固形分として)に、n−ブチルアクリレート単位85%、メタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス2部(固形分として)を攪拌しながら添加した。次いで、30分間攪拌を続けて、平均粒子径0.28μmの肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを得た。
得られた肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを反応器に仕込み、更に蒸留水100部、ウッドロジン乳化剤4部、デモールN(商品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.4部、水酸化ナトリウム0.04部、デキストローズ0.7部を添加した。次いで、攪拌しながら昇温させ、内温60℃の時点で、硫酸第一鉄0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.4部、亜ジチオン酸ナトリウム0.06部を添加した後、下記成分を含む混合物を90分間にわたり連続的に滴下し、その後1時間保持して冷却した。
アクリロニトリル 30部
スチレン 70部
クメンハイドロパーオキサイド 0.4部
tert−ドデシルメルカプタン 1部
これにより得られたグラフト共重合体ラテックスを希硫酸で凝固したのち、洗浄、濾過、乾燥して、グラフト共重合体(B1−1)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B1−1)のアセトン可溶分は27%であった。また、かかるアセトン可溶分の還元粘度は0.3dl/gであった。
グラフト共重合体2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱後、遠心分離機を用い1500rpmにて30分間遠心分離した。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤した。その質量差分([グラフト共重合体2.5g]−[乾燥後の試料の質量])より、グラフト共重合体に対するアセトン可溶分の含有比率(%)を求めた。
還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定した。
反応器に下記のような割合で原料を仕込み、窒素置換下50℃で4時間攪拌しながら重合させて、ゴムラテックスを得た。
n−ブチルアクリレート 98部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 1部
アリルメタクリレート 1部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 2.0部
脱イオン水 300部
過硫酸カリウム 0.3部
リン酸二ナトリウム12水塩 0.5部
リン酸水素ナトリウム12水塩 0.3部
これにより得られたゴムラテックス100部(固形分換算)を、別の反応器に仕込み、イオン交換水280部を加えて希釈し、70℃に昇温した。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物100部に、ベンゾイルパーオキサイド0.7部を溶解し、窒素置換した後、その単量体混合物を30部/時間の速度で、上記のゴムラテックスが入った反応器に、定量ポンプにより添加した。全モノマーを添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間攪拌を続けて、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
上記グラフト共重合体ラテックスを、全ラテックスの3倍量の塩化アルミニウム(AlCl3.6H2O)0.15%水溶液(90℃)を仕込んだ凝固槽中に、撹拌しながら投入して、凝固させた。全ラテックスを添加した後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、そのまま5分間放置した。これを冷却後、遠心分離機により脱液、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B1−2)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B1−2)のアセトン可溶分は21%であった。また、かかるアセトン可溶分の還元粘度は0.70dl/gであった。
ポリブタジエン/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体とするグラフト共重合体(B1−3)を下記の方法により得た。
固形分濃度が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス20部(固形分として)に、n−ブチルアクリレート単位82%、メタクリル酸単位18%からなる平均粒子径0.10μmの共重合ラテックス0.4部(固形分として)を攪拌しながら添加した。次いで、30分間攪拌を続けて、平均粒子径0.36μmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化ジエン系ゴムラテックス20部(固形分換算)を反応器に仕込み、不均化ロジン酸カリウム1部、イオン交換水150部及び下記組成の単量体混合物を添加し、窒素置換し、50℃(内温)に昇温した。さらに、反応器に、10部のイオン交換水に硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を溶解した溶液を添加して、反応させた。
n−ブチルアクリレート 80部
アリルメタクリレート 0.32部
エチレングリコールジメタクリレート 0.16部
反応終了時の内温は75℃であったが、更に80℃に昇温し、1時間反応を続けて、肥大化ジエン系ゴムとポリブチルアクリレート系ゴムの複合ゴムを得た。重合率は98.8%であった。
次いで、肥大化ジエン系ゴムとポリブチルアクリレート系ゴムの複合ゴムラテックス50部(固形分換算)を反応器に仕込み、イオン交換水140部を加えて希釈し、70℃に昇温した。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物50部に、ベンゾイルパーオキサイド0.35部を溶解し、窒素置換した。その単量体混合物を15部/時間の速度で、上記のゴムラテックスが入った反応器に、定量ポンプにより添加した。全モノマーを添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間攪拌を続けて、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
上記グラフト共重合体ラテックスを、全ラテックスの3倍量の硫酸0.5%水溶液(90℃)を仕込んだ凝固槽中に、撹拌しながら投入して、凝固させた。全ラテックスを添加した後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、そのまま5分間放置した。これを冷却後、遠心分離機により脱液、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B1−3)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B1−3)のアセトン可溶分は20%であった。また、かかるアセトン可溶分の還元粘度は0.7dl/gであった。
ポリシロキサンゴム/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体とするグラフト共重合体(B1−4)を下記の方法により得た。
オクタメチルテトラシクロシロキサン96部、γ−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部及びエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
また、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部と蒸留水98部とを注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)を得た。ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)の一部を170℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、17.3%であった。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル11.1部、スチレン33.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムからなる複合ゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体のラテックスを得た。
次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B1−4)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B1−4)のアセトン可溶分は26%であった。また、かかるアセトン可溶分の還元粘度は0.60dl/gであった。
ガラス繊維(D−1)として、日東紡績(株)製ガラス繊維チョップドファイバー、「CS 3PE−455」(表面処理剤:水溶性ポリウレタン、長径/短径の比=1)を用いた。
ガラス繊維(D−2)として、日東紡績(株)製ガラス繊維チョップドファイバー、「CSG 3PA−820」(表面処理剤:水溶性ポリウレタン、長径/短径の比=4)を用いた。
ガラス繊維(D−3)として、日東紡績(株)製 ガラス繊維チョップドファイバー、「CS 3PE−937」(表面処理剤:水溶性エポキシ、長径/短径の比=1)を用いた。
ガラス繊維(D−4)として、日東紡績(株)製 ガラス繊維チョップドファイバー、「CSF3PE−957」(表面処理剤:水溶性ポリオレフィン、長径/短径の比=1)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−1)として、三菱化学(株)製「jER 4250」(質量平均分子量;60,000)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−2)として、三菱化学(株)製「jER 1256」(質量平均分子量;50,000)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−3)として、三菱化学(株)製「jER 1010」(質量平均分子量;5,500)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−4)として、三菱化学(株)製「jER 1009」(質量平均分子量;3,800)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−5)として、三菱化学(株)製「jER 1004」(質量平均分子量;1,650)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(F−1)として、大八化学(株)製「PX−200」(質量平均分子量686、カタログ値)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(F−2)として、大八化学(株)製「CR−733S」(質量平均分子量574、カタログ値)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(F−3)として、大八化学(株)製「TPP」(質量平均分子量326、カタログ値)を使用した。
燐酸エステル系難燃剤(F−4)として、味の素ファインテクノ(株)製「BAPP」(質量平均分子量692、カタログ値)を使用した。
難燃助剤(G)として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた。
さらに、下記比較例6では、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の代わりに、カルボキシ基を有するオレフィン系ワックス(三菱化学(株)製「ダイヤカルナ−30」)を配合した。
上述した各成分を、表1〜3に示すように配合して、強化熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた強化熱可塑性樹脂組成物について、シャルピー衝撃強度、曲げ強度、曲げ弾性率、難燃性、成形性、および成形品の表面状態(十点平均粗さ、光沢度、表面外観、およびウエルド外観)を、以下の方法により評価した。評価結果を表1〜3に示す。
ISO 179に準じて、シャルピー衝撃強度を測定した。
ISO 178に準じて、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。なお、曲げ強度は機械的強度の指標であり、曲げ弾性率は剛性の指標である。
強化熱可塑性樹脂組成物を成形して試験片(幅12.7mm、長さ127mm、厚さ1.0mm)を作製し、UL94に準拠した以下の垂直燃焼試験を行い、難燃性を評価した。
垂直に支持した前記試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により判定を行った。UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。
・V−0:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であり、燃焼落下物がない。
・V−1:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がない。
・V−2:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がある。
表1〜3の実施例1〜25、比較例1〜11の難燃性は、以下の記号で表す。
◎:V−0レベルの難燃性を有していた。
○:V−1レベルの難燃性を有していた。
△:V−2レベルの難燃性を有していた。
×:V−2レベルの難燃性を有していなかった。
80×125×5mmの概略箱形状で開口部を有する液晶ディスプレイ枠(厚み1.0mm)金型を使用し、射出成形機((株)日本製鋼所製「J75EIIP」、75tアキュームレーター付き)により、成形温度280℃、射出速度99%、金型温度80℃の成形条件で成形品を作製した。その成形の際のショートショット(未充填部分)の有無およびガスやけの有無により、成形性を評価した。
○:未充填の部分はなかった。
△:一部に未充填の部分が見られた。
×:未充填であるか、ガスやけが見られた。
また、成形品は十字(プラス)形に配置された4点ピンゲートで成形され、成形品の4つのコーナー付近にウエルドラインを生じる。
さらに、同金型はゲート部痕と突き出しピン痕が1つの面になるような固定側突き出し方式を採用している。
金型表面の凹凸形状を以下に示す。M−1は金型表面を#400で研磨して半光沢面に仕上げたもの、M−2〜M−4は金型表面に(株)モールドテック社の以下のシボ加工を施したもの、M−5は金型表面を#800で研磨して鏡面に仕上げたものである。
・金型表面形状1(M−1):半光沢(深さ0.5μm)
・金型表面形状2(M−2):MTJ−101(深さ3μm)
・金型表面形状3(M−3):MTJ−106(深さ16μm)
・金型表面形状4(M−4):MTJ−204(深さ30μm)
・金型表面形状5(M−5):光沢(鏡面)
成形性の評価で作製した成形品のうち、結果が「○」であったものについて、以下の方法により十点平均粗さおよび光沢度を測定し、表面外観およびウエルド外観を評価した。
成形品の表面形状をレーザー顕微鏡(KEYENCE社製「VK−8500」)で撮影した測定画像を取り込み、VK形状解析アプリケーションを使用して、成形品の表面についてJIS B 0601で定義される十点平均粗さ(Rz)を測定した。
デジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製「UGV−5D」)を使用して、JIS Z 8741で定義される、入射角60°における成形品の表面の光沢度(Gs)を測定した。
成形品の表面外観を目視にて観察し、以下の評価基準により評価した。
○:ガラス繊維浮き出しなど、表面の転写ムラがない。
×:ガラス繊維浮き出しなど、表面の転写ムラがある。
成形品のウエルド外観を目視にて観察し、以下の評価基準により評価した。
○:非ウエルド部とウエルド部で表面外観の差異がない。
×:非ウエルド部とウエルド部で表面外観の差異がある。
特に、質量平均分子量が3,000以上のグリシジルエーテル単位含有重合体(E−1)〜(E−4)を用いた実施例1,10〜12の強化熱可塑性樹脂組成物は、質量平均分子量が3,000未満のグリシジルエーテル単位含有重合体(E−5)を用いた実施例13の強化熱可塑性樹脂組成物よりも、成形品のシャルピー衝撃強度および機械的強度が高かった。
また、質量平均分子量が686以下の燐酸エステル系難燃剤(F−1)〜(F−3)を用いた実施例6、21、22の強化熱可塑性樹脂組成物は、質量平均分子量が686を超える燐酸エステル系難燃剤(F−4)を用いた実施例23の強化熱可塑性樹脂組成物よりも、成形品の難燃性が高かった。また、質量平均分子量が326を超える燐酸エステル系難燃剤(F−1)、(F−2)、(F−4)を用いた実施例6,21,23の強化熱可塑性樹脂組成物は、質量平均分子量が326である燐酸エステル系難燃剤(F−3)を用いた実施例22の強化熱可塑性樹脂組成物よりも、成形性が高かった。
また、繊維断面における長径と短径の比(長径/短径)が4であるガラス繊維(D−2)を用いた実施例25の強化熱可塑性樹脂組成物は、長径と短径の比が1であるガラス繊維(D−1)を用いた実施例3の強化熱可塑性樹脂組成物よりも、成形品のシャルピー衝撃強度、機械的強度、および剛性が高かった。
なお、実施例5で得られた成形品は、金型表面形状5(M−5)の金型を用いたため、表面のRzが0.3μm、Gs(60°)が43.0%であり、ウエルド外観に劣るものであった。また、実施例7、8で得られた成形品は、樹脂主成分(C)中のグラフト共重合体(B)の含有量が比較的多かったため、表面外観やウエルド外観に劣るものであった。
樹脂主成分(C)中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量が45%と少なく、グラフト共重合体(B)の含有量が55%と多い比較例2の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品のシャルピー衝撃強度や難燃性が低かった。また、表面外観やウエルド外観に劣るものであった。
樹脂主成分(C)中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量が95%と多く、グラフト共重合体(B)の含有量が5%と少ない比較例3の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形性に劣っていた。そのため、成形品の表面状態については評価しなかった。
燐酸エステル系難燃剤(F)の含有量が45部と多い比較例4の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品のシャルピー衝撃強度や難燃性が低かった。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の含有量が21部と多い比較例5の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形性に劣っていた。そのため、成形品の表面状態については評価しなかった。
ガラス繊維(D)の含有量が160部と多い比較例7の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形性に劣っていた。そのため、成形品の表面状態については評価しなかった。また、成形品の難燃性が低かった。
水溶性エポキシまたは水溶性ポリオレフィンで表面処理されたガラス繊維を用いた比較例8〜10の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品のシャルピー衝撃強度や機械的強度が低かった。
ガラス繊維(D)の含有量が55部と少ない比較例11の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品の剛性が低かった。
Claims (4)
- ポリカーボネート樹脂(A)50〜90質量%と、
ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有するグラフトポリマー(B2)がグラフト重合したグラフト共重合体(B)10〜50質量%(ただし、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)との合計が100質量%である。)と、
ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)との合計100質量部に対して、水溶性ポリウレタンで表面処理されたガラス繊維(D)61〜129質量部と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)0.5〜20質量部と、燐酸エステル系難燃剤(F)10〜40質量部とを含有することを特徴とする強化熱可塑性樹脂組成物。 - 燐酸エステル系難燃剤(F)の質量平均分子量が326を超え、686以下であることを特徴とする請求項1に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたことを特徴とする成形品。
- 少なくとも一部の表面に、JIS B 0601で定義される十点平均粗さが0.5〜40μmである凹凸形状を有し、
かつ、JIS Z 8741で定義される、入射角60°における表面の光沢度(60°)が0.5〜20%であることを特徴とする請求項3に記載の成形品。
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