JP5564326B2 - 強化熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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本発明は、ノート型のパーソナルコンピュータ、携帯電話、カメラ、液晶プロジェクタ等の電子機器筐体等の樹脂材料として使用される強化熱可塑性樹脂組成物および成形品に関する。
ノート型のパーソナルコンピュータや携帯電話、カメラ、液晶プロジェクタなど電子機器筐体の樹脂材料として、ABS樹脂やポリカーボネート樹脂/ABS樹脂等の熱可塑性樹脂組成物、あるいはその熱可塑性樹脂組成物を無機充填剤で強化した強化熱可塑性樹脂組成物が広く使用されている。一般に、筐体を製造する方法としては、上記樹脂組成物を、ある程度任意の形状で成形できる射出成形法が採られている。
近年、電子機器においては、より一層の軽量化や薄型化、高耐久化が要求されている。しかし、従来使用されている電子機器筐体用樹脂材料のうち、無機充填剤によって強化されていないABS樹脂やポリカーボネート樹脂/ABS樹脂では剛性が低く、電子機器筐体の薄肉化の要求に対応できなかった。
電子機器筐体用樹脂材料として、ガラス繊維で強化された樹脂組成物が使用されることもあるが、剛性と質量とのバランスが不充分であり、剛性を高めると軽量化が困難になった。
また、電子機器筐体用樹脂材料においては難燃性が要求されることがある。難燃性を付与するための難燃剤としては、近年、環境面への配慮から環境負荷の少ない燐系難燃剤が多用されている。燐系難燃剤としては、レゾルシノール誘導体やビスフェノールA誘導体の燐酸エステル系難燃剤などが知られている。しかし、上記燐酸エステル系難燃剤とABS樹脂との組み合わせでは、耐熱性や耐衝撃性が低く、薄型電子機器筐体用材料に対しては必ずしも適していなかった。一方、上記燐酸エステル系難燃剤とポリカーボネート樹脂/ABS樹脂との組み合わせでは、耐熱性の低下や長期使用を想定した環境促進試験(例えば、高温高湿環境下での試験)で大幅な物性低下を生じることがあった。筐体としての品質は耐久性が高い程よいから、環境促進試験での物性低下は少しでも抑制されているものがよい。
特許文献1では、ポリカーボネート樹脂と、ABS樹脂と、AS樹脂と、燐酸エステル系難燃剤と、フッ素化ポリオレフィンを含み、難燃性、耐衝撃性、成形性に優れた樹脂組成物が提案されている。
特許文献1には、グラフトポリマーは、ブタジエン群を含むブタジエンポリマーであることが望ましい旨が記載されているが、これらのグラフトポリマーでは充分な難燃性が得られず、しかも環境促進試験での物性低下も大きかった。さらに、特許文献1では、耐熱性の低下を抑制するために、ジフェニル誘導体の燐酸エステル系難燃剤を使用しているが、耐久性の改善は図っていなかった。
特許第4257688号公報
本発明は、難燃性および高温高湿下での耐久性に優れた強化熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、難燃性および高温高湿下での耐久性に優れた成形品を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)50〜90質量%と、グラフト共重合体(B)10〜50質量%(ただし、(A)成分と(B)成分との合計が100質量%である。)と、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)との合計100質量部に対して、無機充填材(D)0.1〜50質量部と、下記式(I)で表される燐酸エステル系難燃剤(E)0.1〜40質量部とを含有し、グラフト共重合体(B)は、シリコーン−アクリル複合ゴムのゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有するグラフトポリマー(B2)がグラフト重合したものであることを特徴とする強化熱可塑性樹脂組成物。
(式中、R、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
Figure 0005564326
[2]グリシジルエーテル単位を有する重合体(F)を含有し、グリシジルエーテル単位を有する重合体(F)が、ヒドロキシ基を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂であることを特徴とする[1]に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
[3]無機充填材(D)が、炭素繊維であることを特徴とする[1]または[2]に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれか1項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたことを特徴とする成形品。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物および成形品は、難燃性および高温高湿下での耐久性に優れている。
また、本発明の成形品は、難燃性および高温高湿下での耐久性に優れている。
「強化熱可塑性樹脂組成物」
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、グラフト共重合体(B)と、無機充填材(D)と、上記式(I)で表される燐酸エステル系難燃剤(E)とを必須成分として含有する。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
ポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシジアリールアルカンから得られる樹脂であり、任意に枝別れしていてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は公知の方法により製造される。例えば、ジヒドロキシまたはポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させる方法や溶融重合法により製造される。また、コンパクトディスク等からリサイクルしたものも使用できる。
ジヒドロキシジアリールアルカンとしては、例えば、ヒドロキシ基に対してオルトの位置にアルキル基を有するものが使用される。ジヒドロキシジアリールアルカンの好ましい具体例としては、4,4−ジヒドロキシ2,2−ジフェニルプロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールAおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
また、分岐したポリカーボネートは、例えば、ジヒドロキシ化合物の一部、例えば0.2〜2モル%をポリヒドロキシで置換することにより製造される。ポリヒドロキシ化合物の具体例としては、フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は15,000〜35,000であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が15,000以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより高くなり、35,000以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性がより高くなる。
また、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、機械的強度、落球試験による面衝撃強度、流動性のバランスが特に優れることから、17,000〜25,000であることがより好ましい。
[ポリカーボネート樹脂(A)の含有量]
ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量(以下、(A)成分と(B)成分とからなるものを「樹脂主成分(C)」という。)を100質量%とした際の、50〜90質量%であり、80〜90質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が50質量%未満であると、強化熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、90質量%を超えると、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性が低下する。
<グラフト共重合体(B)>
グラフト共重合体(B)はシリコーン−アクリル複合ゴムのゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有するグラフトポリマー(B2)がグラフト重合したものである。
ゴム質重合体がシリコーン−アクリル複合ゴム質重合体であることにより、難燃性や高温高湿下での耐久性が良好になる。
[ゴム質重合体(B1)]
シリコーン−アクリル複合ゴムのシリコーン成分は、ポリオルガノシロキサンを主成分とするものであり、中でも、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましい。シリコーン−アクリル複合ゴムにおけるアクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレート(f)と多官能性単量体(g)とが重合されたものである。
ここで、アルキル(メタ)アクリレート(f)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性単量体(g)としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン−アクリル複合ゴムの複合化構造としては、ポリオルガノシロキサンゴムのコア層の周囲がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムで覆われたコアシェル構造、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムのコア層の周囲がポリオルガノシロキサンゴムで覆われたコアシェル構造、ポリオルガノシロキサンゴムとアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが相互に絡み合っている構造、ポリオルガノシロキサンのセグメントとポリアルキル(メタ)アクリレートのセグメントが互いに直線的および立体的に結合しあって網目状のゴム構造となっている構造等が挙げられる。
シリコーン−アクリル複合ゴム質重合体(B1)は、例えば、シリコーン−アクリル複合ゴム質重合体(B1)を形成する単量体に、ラジカル重合開始剤を作用させて乳化重合することによって調製される。乳化重合法による調製方法によれば、シリコーン−アクリル複合ゴム質重合体(B1)の粒子径を制御しやすい。
シリコーン−アクリル複合ゴム質重合体(B1)の平均粒子径は、強化熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより高くできることから、0.1〜0.6μmであることが好ましい。
また、シリコーン−アクリル複合ゴム質重合体(B1)の含有量は、樹脂主成分(C)を100質量%とした際の5〜25質量%であることが好ましい。シリコーン−アクリル複合ゴム質重合体(B1)の含有量が5質量%以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性をより高くでき、25質量%以下であれば、成形性がより高くなり、成形品の外観が良好になる。
[グラフトポリマー(B2)]
グラフトポリマー(B2)は、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位と、シアン化ビニル化合物単量体(b)単位とを必須成分として有し、これらと共重合可能な単量体(c)単位を任意成分として有する。これらの組成比には特に制限はないが、耐衝撃性と成形性のバランスに優れることから、好ましくは芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位が50〜90質量%、シアン化ビニル化合物単量体(b)単位が10〜50質量%で、単量体(c)単位が0〜40質量%である(ただし、(a)と(b)と(c)の合計が100質量%)。
芳香族アルケニル化合物単量体(a)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。
シアン化ビニル化合物単量体(b)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。
これらと共重合可能な単量体(c)としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。
グラフト共重合体(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[グラフト共重合体(B)のアセトン不溶分、アセトン可溶分]
グラフト共重合体(B)は、アセトン溶媒に対する不溶分を70〜99質量%含み、かつ、アセトン可溶分の0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.3〜0.7dl/gであることが好ましい。アセトン溶媒に対する不溶分が70質量%以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形外観および成形性がより向上し、一方、99質量%以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の引き裂き強度が向上する。
また、アセトン可溶分の上記還元粘度が0.3dl/g以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の引き裂き強度が向上し、0.7dl/g以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形外観および成形性がより向上する。
なお、アセトン可溶分の測定方法は以下のとおりである。
グラフト共重合体2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱後、遠心分離機を用い1500rpmにて30分間遠心分離する。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤する。その質量差分([グラフト共重合体2.5g]−[乾燥後の試料の質量])より、グラフト共重合体に対するアセトン可溶分の含有比率(%)を求めることができる。
還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定する。
ここで、アセトン溶媒に対する可溶分は、グラフトポリマー(B2)と同様の重合体であって、ゴム質重合体(B1)にグラフトしていない重合体である。アセトン溶媒に対する可溶分は、ゴム質重合体(B1)にグラフトポリマー(B2)をグラフト重合させる際に同時に生成することが多い。
[グラフト共重合体(B)の製造方法]
グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)と、シアン化ビニル化合物単量体(b)と、必要に応じて、他の単量体(c)とをグラフト重合させることにより得られる。
グラフト共重合体(B)の重合方法には制限はないが、乳化重合法が好ましい。また、グラフト重合時には、グラフト共重合体(B)の分子量やグラフト率を調整するために、各種連鎖移動剤を添加してもよい。
[グラフト共重合体(B)の含有量]
樹脂主成分(C)中のグラフト共重合体(B)の含有量は10〜50質量%であり、10〜20質量%であることが好ましい(ただし、(A)成分と(B)成分との合計が100質量%である。)。樹脂主成分(C)中のグラフト共重合体(B)の含有量が10質量%未満であると、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性は充分なものではなく、50質量%を超えると、強化熱可塑性樹脂組成物の難燃性が低下する。
<無機充填材(D)>
無機充填材(D)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、無機繊維に金属コーティングしたもの、ウオラストナイト、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の無機物、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属や合金、及びそれらの酸化物の繊維、粉末等が挙げられる。未処理の無機充填材の好ましい形態としては繊維状のものが挙げられ、これらの中でも、少ない配合で高い剛性が得られる炭素繊維が好ましい。無機充填材(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記無機充填材(D)は、その表面をカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤)などの表面処理剤で処理して用いることもできる。
また、ガラス繊維、炭素繊維は、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆或いは集束されていてもよい。
無機充填材(D)の含有量は、樹脂主成分(C)100質量部に対して0.1〜50質量部であり、好ましくは5〜30質量部である。無機充填材(D)の含有量が0.1質量部未満であると、強化熱可塑性樹脂組成物の剛性等を充分に向上させることができず、50質量部を超えると、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性が低下する。
<燐酸エステル系難燃剤(E)>
燐酸エステル系難燃剤は、上記式(I)で表される化合物であり、R、Rは両方が水素原子であってもよいし、両方がメチル基であってもよいし、一方が水素原子で他方がメチル基であってもよい。
燐酸エステル系難燃剤(E)の含有量は、樹脂主成分(C)100質量部に対して0.1〜40質量部であり、15〜25質量部であることが好ましい。燐酸エステル系難燃剤(E)の含有量が0.1質量部未満であると、難燃性が得られず、40質量部を超えても、難燃性が低下するおそれがある上に、耐熱性が低下する傾向にある。
<その他の難燃剤>
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物には、燐酸エステル系難燃剤(E)の他に、公知の非ハロゲン系難燃剤を配合して、燐酸エステル系難燃剤(E)と併用しても構わない。非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、赤燐、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤が挙げられる。
赤燐系難燃剤としては、熱硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂及び金属水酸化物で被覆されて安定化されたものが使用される。赤燐系難燃剤は、単独では発火性があるため、あらかじめ樹脂主成分(C)の少なくとも一部またはポリカーボネート樹脂(A)に混合してマスターバッチ化してもよい。
<難燃助剤>
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物には、燃焼時のドリップを防止するための難燃助剤(G)が含まれてもよい。難燃助剤として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンを含有する化合物、シリコーン系重合体などが挙げられる。
難燃助剤(G)として、ポリテトラフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレンを含有する化合物を配合する場合、その配合量は、表面外観の点から、樹脂主成分(C)100質量部に対して0.5質量部以下であることが好ましい。
<グリシジルエーテル単位含有重合体(F)>
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、グリシジルエーテル単位含有重合体(F)を含有してもよい。グリシジルエーテル単位含有重合体(F)としては、例えば、ヒドロキシ基を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂などの高分子量体であって、さらに下記式(II)で表される繰り返し単位を持つポリマーを有するもの(例えば、エポキシ基含有フェノキシ樹脂)等が挙げられる。
Figure 0005564326
(mは1以上の整数を表す。)
さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとビスフェノールFの構造を持つエポキシ樹脂などが挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、例えば、アルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)、グリセリントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
これらグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
好ましいグリシジルエーテル単位含有重合体(F)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとビスフェノールFの構造を持つエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂である。これら好ましい重合体を用いれば、高温高湿下での耐久性がより向上する。
グリシジルエーテル単位含有重合体(F)としては、常温(20℃)で液状のもの、半固形状のもの、固形状のものが使用できるが、押出し加工時の作業性などを考えると固形状のものが好ましい。
グリシジルエーテル単位含有重合体(F)は、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER」シリーズ、東都化成(株)製「エポトート」シリーズ、「フェノトート」シリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製「AER」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン」シリーズなどが市販されている。
強化熱可塑性樹脂組成物におけるグリシジルエーテル単位含有重合体(F)の含有量は、樹脂主成分(C)100質量部に対して1〜12質量部であることが好ましく、3〜9質量部であることがより好ましい。グリシジルエーテル単位含有重合体(F)の含有量が1質量部以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物から得た成形品の高温高湿下での耐久性を充分に向上させることができ、12質量部以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性を確保できる。また、グリシジルエーテル単位含有重合体(F)の含有量が上記範囲であれば、式(I)で表される燐酸エステル系難燃剤(E)との相乗効果により高温高湿下での耐久性をより高く出来る。
<その他の成分>
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、帯電防止剤、染料、顔料等を含有してもよい。
<製造方法>
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、グラフト共重合体(B)と、無機充填材(D)と、燐酸エステル系難燃剤(E)と、必要に応じて他の成分とを、混合装置(例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、ナウターミキサー等)を用いて混合することにより得られる。さらに、混練装置(例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、コニーダ等)を用いて混練してもよい。
<作用効果>
上記のように、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)と無機充填材(D)と燐酸エステル系難燃剤(E)とを含有する本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、難燃性および高温高湿下での耐久性に優れている。
「成形品」
本発明の成形品は、上記強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたものである。
強化熱可塑性樹脂組成物の成形加工法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の成形品は、例えば、パーソナルコンピュータ(ノート型も含む)、プロジェクタ(液晶プロジェクタを含む)、テレビジョン、プリンタ、ファクシミリ、複写機、オーディオ機器、ゲーム機、カメラ(ビデオカメラ、デジタルカメラ等を含む)、ビデオ等の映像機器、楽器、モバイル機器(電子手帳、情報携帯端末(PDA)など)、照明機器、電話(携帯電話を含む)等の通信機器などの筐体、釣具、パチンコ物品等の遊具、車両用製品、家具用製品、サニタリー製品、建材用製品などに適用できる。これら用途の中でも、本発明の効果がとりわけ発揮されることから、ノート型のパーソナルコンピュータまたは携帯機器、カメラ等の電子部品の筐体に適している。
以下、具体的に実施例を示す。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、以下に記載の「部」および「%」は各々「質量部」および「質量%」を意味する。
以下の例では、下記の成分を用いた。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂(A)として、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバレックス7021PJ」を使用した。
[グラフト共重合体(B−1)の製造]
ポリシロキサンゴム/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体とするグラフト共重合体(B−1)を下記の方法により得た。
オクタメチルテトラシクロシロキサン96部、γ−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部及びエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
また、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部と蒸留水98部とを注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)を得た。ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)の一部を170℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、17.3%であった。
次いで、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)119.5部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.8部を仕込み、蒸留水203部を添加し、混合した。その後、n−ブチルアクリレート53.2部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。反応器の内部の温度が60℃になった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部及びロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させて、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムの複合ゴムラテックスを得た。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル11.1部、スチレン33.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムからなる複合ゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体のラテックスを得た。
次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B−1)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B−1)のアセトン可溶分は26%であった。また、そのアセトン可溶分の還元粘度は0.60dl/gであった。
[グラフト共重合体(B−2)の製造]
固形分濃度が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス100部(固形分として)に、n−ブチルアクリレート単位85%、メタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス2部(固形分として)を攪拌しながら添加した。次いで、30分間攪拌を続けて、平均粒子径0.28μmの肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを得た。
得られた肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを反応器に仕込み、更に蒸留水100部、ウッドロジン乳化剤4部、デモールN(商品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.4部、水酸化ナトリウム0.04部、デキストローズ0.7部を添加した。次いで、攪拌しながら昇温させ、内温60℃の時点で、硫酸第一鉄0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.4部、亜ジチオン酸ナトリウム0.06部を添加した後、下記成分を含む混合物を90分間にわたり連続的に滴下し、その後1時間保持して冷却した。
アクリロニトリル 30部
スチレン 70部
クメンハイドロパーオキサイド 0.4部
tert−ドデシルメルカプタン 1部
これにより得られたグラフト共重合体ラテックスを希硫酸で凝固したのち、洗浄、濾過、乾燥して、グラフト共重合体(B−2)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B−2)のアセトン可溶分は27%であった。また、そのアセトン可溶分の還元粘度は0.3dl/gであった。
なお、アセトン可溶分の測定方法は以下の通りである。
グラフト共重合体2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱後、遠心分離機を用い1500rpmにて30分間遠心分離した。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤した。その質量差分([グラフト共重合体2.5g]−[乾燥後の試料の質量])より、グラフト共重合体に対するアセトン可溶分の含有比率(%)を求めた。
還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定した。
[グラフト共重合体(B−3)の製造]
反応器に下記のような割合で原料を仕込み、窒素置換下50℃で4時間攪拌しながら重合させて、ゴムラテックスを得た。
n−ブチルアクリレート 98部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 1部
アリルメタクリレート 1部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 2.0部
脱イオン水 300部
過硫酸カリウム 0.3部
リン酸二ナトリウム12水塩 0.5部
リン酸水素ナトリウム12水塩 0.3部
これにより得られたゴムラテックス100部(固形分換算)を、別の反応器に仕込み、イオン交換水280部を加えて希釈し、70℃に昇温した。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物100部に、ベンゾイルパーオキサイド0.7部を溶解し、窒素置換した後、その単量体混合物を30部/時間の速度で、上記のゴムラテックスが入った反応器に、定量ポンプにより添加した。全モノマーを添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間攪拌を続けて、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
上記グラフト共重合体ラテックスを、全ラテックスの3倍量の塩化アルミニウム(AlCl.6HO)0.15%水溶液(90℃)を仕込んだ凝固槽中に、撹拌しながら投入して、凝固させた。全ラテックスを添加した後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、そのまま5分間放置した。これを冷却後、遠心分離機により脱液、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B−3)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B−3)のアセトン可溶分は21%であった。また、そのアセトン可溶分の還元粘度は0.70dl/gであった。
[グラフト共重合体(B−4)の製造]
ポリブタジエン/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体とするグラフト共重合体(B−4)を下記の方法により得た。
固形分濃度が35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス20部(固形分として)に、n−ブチルアクリレート単位82%、メタクリル酸単位18%からなる平均粒子径0.10μmの共重合ラテックス0.4部(固形分として)を攪拌しながら添加した。次いで、30分間攪拌を続けて、平均粒子径0.36μmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。
得られた肥大化ジエン系ゴムラテックス20部(固形分換算)を反応器に仕込み、不均化ロジン酸カリウム1部、イオン交換水150部及び下記組成の単量体混合物を添加し、窒素置換し、50℃(内温)に昇温した。さらに、反応器に、10部のイオン交換水に硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部を溶解した溶液を添加して、反応させた。
n−ブチルアクリレート 80部
アリルメタクリレート 0.32部
エチレングリコールジメタクリレート 0.16部
反応終了時の内温は75℃であったが、更に80℃に昇温し、1時間反応を続けて、肥大化ジエン系ゴムとポリブチルアクリレート系ゴムの複合ゴムを得た。重合率は98.8%であった。
次いで、肥大化ジエン系ゴムとポリブチルアクリレート系ゴムの複合ゴムラテックス50部(固形分換算)を反応器に仕込み、イオン交換水140部を加えて希釈し、70℃に昇温した。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物50部に、ベンゾイルパーオキサイド0.35部を溶解し、窒素置換した。その単量体混合物を15部/時間の速度で、上記のゴムラテックスが入った反応器に、定量ポンプにより添加した。全モノマーを添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間攪拌を続けて、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合率は99%であった。
上記グラフト共重合体ラテックスを、全ラテックスの3倍量の硫酸0.5%水溶液(90℃)を仕込んだ凝固槽中に、撹拌しながら投入して、凝固させた。全ラテックスを添加した後、凝固槽内の温度を93℃に昇温し、そのまま5分間放置した。これを冷却後、遠心分離機により脱液、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B−4)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(B−4)のアセトン可溶分は20%であった。また、そのアセトン可溶分の還元粘度は0.7dl/gであった。
[無機充填材(D)]
無機充填材(D)として、東邦テナックス(株)製 炭素繊維、「HTA−C6−U」を用いた。
[燐酸エステル系難燃剤(E)および難燃助剤(G)]
燐酸エステル系難燃剤(E−1)として、ADEKA(株)製「FP−800」(ビフェニル誘導体、常温で固体)を使用した。
燐酸エステル系難燃剤(E−2)として、大八化学(株)製「PX−200」(レゾルシノール誘導体、常温で固体)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(E−3)として、大八化学(株)製「CR−741」(ビスフェノールA誘導体、常温で液体)を用いた。
難燃助剤(G)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた。
[その他の成分]
下記実施例2、比較例2,4については、グリシジルエーテル単位含有重合体(F)として、ジャパンエポキシレジン(株)製「1256」を配合した。
上述した各成分を、表1に示すように配合して、強化熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた強化熱可塑性樹脂組成物の高温高湿処理前後の引張強度、難燃性を、以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
[高温高湿処理後の引張強度保持率]
温度80℃、相対湿度95%の高温高湿雰囲気下で試験片を800時間放置し、取り出した試験片を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間放置した後、引張強度をISO527に準じて、測定した。保持率は以下の様に算出した。
保持率(%)=(高温高湿処理後の引張強度×100)/高温高湿処理前の引張強度
[難燃性]
強化熱可塑性樹脂組成物を射出成形して試験片(幅12.7mm、長さ127mm、厚さ1.0mm)を作製し、UL94に準拠した以下の垂直燃焼試験を行った。
・垂直燃焼試験
垂直に支持した上記試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により判定を行った。UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。
V−0:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−1:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−2:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物があった。
表1の実施例1,2、比較例1〜7の難燃性は、以下の記号で表す。
○;V−0レベルの難燃性を有していた。
×;V−1レベルの難燃性を有していた。
Figure 0005564326
実施例1と比較例1,3の比較から、ビフェニル誘導体の燐酸エステル系難燃剤を含有する実施例1の強化熱可塑性樹脂組成物は、ビフェニル誘導体以外の燐酸エステル系難燃剤を含有する比較例1,3の強化熱可塑性樹脂組成物よりも引張強度に優れ、高温高湿試験後の引張強度保持率も高いことがわかった。また、実施例1と比較例1,3において、高温高湿試験後の引張強度が、比較例8の非強化熱可塑性樹脂組成物の高温高湿試験前の引張強度よりも高かったのは実施例1の強化熱可塑性樹脂組成物のみであった。
また、実施例1と比較例5,6,7の比較から、ポリシロキサンゴム/ポリブチルアクリレートの複合ゴム質重合体を含有する実施例1の強化熱可塑性樹脂組成物は、ポリシロキサンゴム/ポリブチルアクリレートの複合ゴム質重合体以外のゴム質重合体を含有する比較例5,6,7強化熱可塑性樹脂組成物よりも難燃性や高温高湿試験前後の引張強度に優れ、特に高温高湿試験後の引張強度保持率が高いことがわかった。
更に、実施例2と比較例2,4の比較から、ビフェニル誘導体の燐酸エステル系難燃剤とグリシジルエーテル単位含有重合体とを含有する実施例2の強化熱可塑性樹脂組成物は、ビフェニル誘導体以外の燐酸エステル系難燃剤とグリシジルエーテル単位含有重合体を含有する比較例2,4の強化熱可塑性樹脂組成物よりも引張強度に優れ、特に高温高湿試験後の引張強度保持率が高いことがわかった。したがって、優れた高温高湿下での耐久性は、ビフェニル誘導体の燐酸エステル系難燃剤を用いただけでも得られるが、グリシジルエーテル単位含有重合体とビフェニル誘導体の燐酸エステル系難燃剤を用いたことによる相乗効果で更に優れることは明らかである。

Claims (4)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)50〜90質量%と、グラフト共重合体(B)10〜50質量%(ただし、(A)成分と(B)成分との合計が100質量%である。)と、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)との合計100質量部に対して、無機充填材(D)0.1〜50質量部と、下記式(I)で表される燐酸エステル系難燃剤(E)0.1〜40質量部とを含有し、
    グラフト共重合体(B)は、シリコーン−アクリル複合ゴムのゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有するグラフトポリマー(B2)がグラフト重合したものであることを特徴とする強化熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 0005564326
    (式中、R、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
  2. グリシジルエーテル単位を有する重合体(F)を含有し、グリシジルエーテル単位を有する重合体(F)が、ヒドロキシ基を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  3. 無機充填材(D)が、炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたことを特徴とする成形品。
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