JP3626028B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性、滞留熱安定性、耐老化性、リサイクル性にすぐれた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝撃特性、耐熱性、電気的特性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車分野、建築分野など様々な分野において幅広く利用されている。ポリカーボネート樹脂は、一般的に自己消火性樹脂ではあるが、OA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器分野を中心として、さらなる難燃性の向上が要求されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上する方法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が難燃剤効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤とともに用いられてきた。しかし、近時安全性、廃棄・焼却時の環境への影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が市場より求められている。ノンハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物はすぐれた難燃性を示すとともに、可塑剤としての作用もあり、多くの方法が提案されている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂は、また、成形加工温度が高い、溶融流動性が悪いという問題点を有している。このため、成形温度が比較的高く、特に、各種添加剤を配合した場合に成形時の熱安定性が低下したり、その性能が十分生かされない場合がある。近時、成形品が複写機、ファックス、電話機などの電気・電子機器類の部品やハウジングなどの場合には、形状が複雑になること、リブやボスなどの凹凸や開口部が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、ボリカーボネート樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高めた組成物が求められている。この成形性の改善としては、耐衝撃性などの物性も考慮して、(ゴム変性)スチレン系樹脂との配合組成物が多く提案されている。
【0005】
ポリカーボネート樹脂にハロゲンを含まないリン酸エステル化合物を難燃剤として配合した組成物、さらには溶融流動性の改良のために、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)などの(ゴム変性)スチレン系樹脂を配合した組成物は、ポリマーアロイとして、その耐熱性、耐衝撃性の特性を生かし、多くの成形品分野に用いられてきている。
【0006】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂、あるいはポリカーボネート樹脂と(ゴム変性)スチレン系樹脂からなる良溶融流動性組成物において、リン酸エステル化合物を配合して難燃化する場合には、リン酸エステル化合物を比較的多量に配合する必要がある。また、リン酸エステル化合物は一般的に難燃性には寄与するものの、成形加工時の金型付着、成形品が加熱下に置かれたり、高温高湿度下に置かれたり、リサイクル使用の場合に、衝撃強度の低下、変色の発生などの問題点が指摘されている。
【0007】
ポリカーボネート樹脂のリン酸エステル化合物による難燃化にあっては、一般的には室温液状や低融点化合物が用いられてきた。しかしながら、これらのリン酸エステルは難燃化のための添加量が比較的多いこともあって、リン酸エステル化合物のブルーミングの問題、耐熱性、耐衝撃性が低下すると言う欠点があった。このリン酸エステル化合物のブルーミング、耐熱性を解決する方法として、例えば、特開平6−228426号公報には、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂と(B)特定構造のアルキル置換芳香族系の高粘度のリン酸エステル化合物および(C)トリフエニルホスフェートなどを併用する方法が開示されている。
【0008】
また、特開平7−179715号公報には、(A)ポリカーボネート樹脂1〜99重量部、(B)ゴム強化樹脂99〜1重量部からなる100重量部に対して、(C)融点が120℃以上の有機リン系化合物0.1〜30重量部からなる難燃性樹脂組成物が開示されている。さらに、特開平8−12867号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート50〜98重量%、ならびに(B)ABS樹脂及び/または(C)AS樹脂50〜2重量%からなる樹脂100重量部に対し、(D)フッソ系樹脂および/きたはシリコーン0.01〜5重量部および(E)高融点であるリン酸エステル化合物1〜40重量部を配合する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。これらはいずれも、高粘度または融点の高いリン酸エステル化合物を難燃剤として用いることで問題を解決しようとするものであり、それなりの効果は期待できるものである。
【0009】
また、特開平9−100405号公報には、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ABSなどのゴム強化樹脂、(C)リン酸エステル系難燃剤および(D)フェノール性OH基含有重合性物質の単量体及びオリゴマーからなる難燃性樹脂組成物が提案されている。しかし、この方法では(D)成分のビスフェノールAなどが高温、高湿下での使用などで物性低下が生じる原因になどの問題点が発生する場合がある。
【0010】
いずれにしても、これらの提案は、リン酸エステル化合物の使用範囲が制限されたり、また、このような特定のリン酸エステル化合物を選択使用したのみでは、成形時の成形環境の改善や成形品の外観などの問題点は解消できるものの、分散性、溶融混練性、さらには耐衝撃性、耐老化性、特に耐湿熱性、リサイクル性などを総合的に十分解決するまでには至っていないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状の下、ポリカーボネート樹脂のリン酸エステル化合物による難燃化において、優れた難燃性を維持しながら、耐衝撃性、耐熱、耐湿熱性などの耐老化性、リサイクル性にすぐれた成形品を成形可能な難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびこの組成物を用いた成形品の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明者は、難燃性ポリカーボネート樹脂のリン酸エステル化合物による難燃化において、成形性の改善とともに、耐熱性、特に過酷な使用条件下にあっても、十分使用に耐えるポリカーボネート樹脂組成物の改良について鋭意検討した。その結果、リン酸エステル化合物を難燃剤として含有するポリカーボネート樹脂組成物において、組成物中の特定成分の含有量が特定範囲になる組成物を選択することにより、成形性、耐熱性が改善され、しかも加熱下、高温、高湿度下における使用、さらにはリサイクルによる再溶融成形においても物性の低下や着色の少ない成形品が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリカーボネート樹脂5〜100重量%と(B)スチレン系樹脂95〜0重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)リン酸エステル化合物1〜30重量部を含有する組成物であって、アセトン溶媒ソックスレー抽出フェノール類の含有量が300ppm以下である難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(2)ポリカーボネート樹脂の末端基中に占めるヒドロキシル基の割合が0.5〜20モル%である上記(1)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(3)樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂20〜95重量%と(B)成分としてのゴム変性スチレン系樹脂80〜5重量%からなる上記(1)または(2)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(4)さらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.02〜5重量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(5)さらに、(E)コア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.2〜30重量部含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる電気・電子機器のハウジングまたは部品である射出成形品である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の構成成分(A)〜(C)について説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂(PC)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する(A)成分であるポリカーボネート樹脂(PC)としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、2価フエノールとホスゲンの反応、2価フエノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
【0015】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
【0016】
特に好ましい2価フエノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0018】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。本発明において用いられる(A)成分のポリカーボネート樹脂は、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は、通常10,000〜100,000、好ましくは11,000〜40,000、特に12,000〜25,000のものが好適である。
【0019】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂としては、樹脂の末端基中に占めるヒドロキシル基の割合が0.5モル%以上、好ましくは0.5〜20モル%である。ここでヒドロキシル基の割合は、ポリカーボネート樹脂とリン酸エステル化合物、特に、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との配合組成物において、組成物の相溶性の向上に寄与し、結果として成形品の層状剥離などの不良減少の低減、衝撃強度、伸び、ウエルド強度などの物性が向上する。しかしながら他方では、耐熱性などの低下などにも影響する場合がある。したがって、ヒドロキシル基の全末端に占める割合は、0.5〜20モル%であることが総合的に見て好ましい範囲である。
【0020】
また、ポリカーボネート樹脂原料としては、アセトン溶媒でのソックスレー抽出成分である低分子量成分が、通常10重量%以下であることが好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂中のハロゲン、通常塩素含有量が、通常200ppm以下、好ましくは100ppm以下と少ないことが好ましい。こららの低分子量成分や塩素含有量は、製造方法(溶液法、溶融法)、縮合条件などの製造条件、洗浄条件、粒状化条件、乾燥条件、溶融混練条件、添加剤処方などにより総合的に達成することができる。
【0021】
(B)スチレン系樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する(B)成分のスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンなどのモノビニル系芳香族単量体20〜100重量%、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体0〜60重量%、およびこれらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチルなどの他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体または単量体混合物を重合して得られる重合体がある。これらの重合体としては、ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などがある。
【0022】
また、スチレン系樹脂としてはゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、好ましくは、少なくともスチレン系単量体がゴムにグラフト重合した耐衝撃性スチレン系樹脂である。ゴム変性スチレン系樹脂としては、たとえば、ポリブタジエンなどのゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したABS樹脂、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したMBS樹脂などがあり、ゴム変性スチレン系樹脂は、二種以上を併用することができるとともに、前記のゴム未変性であるスチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
【0023】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、例えば2〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%、特に5〜15重量%である。ゴムの割合が2重量%未満であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50重量%を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色などの問題が生じる場合がある。上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレートおよび/またはメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SBS)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン・アクリルゴム、イソプレン・ゴム、イソプレン・スチレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものはポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、低シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0024】
(C)リン酸エステル化合物
リン酸エステル化合物としては、特にハロゲンを含まないリン酸エステル化合物であり、リン酸エステル化合物としては、たとえば、次式(1)
【0025】
【化1】
【0026】
(ここで、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。)で示されるリン酸エステル化合物である。
式(1)において、有機基とは、置換されていても、いなくてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などである。また置換されている場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基などがある。さらに、これらの置換基を組み合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基など、またはこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子などにより結合して組み合わせたアリールスルホニルアリール基などを置換基としたものなどがある。
【0027】
また、式(1)において、2価以上の有機基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニレン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン等がある。
【0028】
リン酸エステル化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよい。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなど、これらの置換体、縮合体などを例示できる。
【0029】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の(C)成分として好適に用いることができる市販のハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニルホスフェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェート〕、CR−733S〔レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX201〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX202〔4,4’−ビフェニレン−テスラキス)2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートなどを挙げることができる。
【0030】
つぎに、本発明の(A)〜(C)成分の組成について説明する。本発明においては、(B)成分のスチレン系樹脂は、本発明の難燃性とは直接関係はなく、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性を改良する必要がある場合に配合されるものである。ここで、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)スチレン系樹脂の配合割合は、通常(A)ポリカーボネート樹脂5〜100重量%、好ましくは30〜95重量%、特に好ましくは60〜95重量%、(B)スチレン系樹脂が95〜0重量%、好ましくは70〜5重量%、特に好ましくは40〜5重量%である。
【0031】
ここで、(A)成分のポリカーボネート樹脂が5重量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、(B)成分のスチレン系樹脂は、5重量%以下では成形性の改良効果が不十分である場合がある。また、スチレン系樹脂が40重量%未満であると難燃性のレベルが、通常UL94のHBからV−2クラス以上に向上するので特に好ましい。なお、この場合の(B)スチレン系樹脂としては、前記したアクリロニトリル−スチレン共重合体やゴム変性スチレン系樹脂、特にゴム変性スチレン系樹脂が好ましく用いられる。ゴム変性スチレン系樹脂を用いる場合のポリカーボネート樹脂組成物中のゴム成分の含有量としては、15重量%以下、特に10重量%以下が好ましい。これらの配合割合は、ポリカーボネート樹脂の分子量、スチレン系樹脂の種類、分子量、メルトインデックス、ゴムの含有量や成形品の用途、大きさ、厚みなどを考慮して適宜決定される。
【0032】
(C)成分であるリン酸エステル化合物の含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは、2〜25重量部、特に好ましくは、3〜20重量部である。ここで、1重量部未満であると、目的とする難燃性を得ることが難しく、また、30重量部を越えると、耐熱性の低下、衝撃強度の低下が起こる場合がある。したがって、この含有量は、成形品の難燃要求特性を考慮して、リン酸エステル化合物の種類、他のゴム状弾性体、無機充填剤などの含有量などをもとに総合的に判断して決定される。
【0033】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、基本的には、(A)〜(C)成分からなるものである。しかし、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、燃焼時の溶融滴下防止を目的にさらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を含有することができる。ここで(D)フルオロオレフィン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくはは500,000〜10,000,000である。本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。
【0034】
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0036】
ここで、フルオロオレフィン樹脂の含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.02〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部である。ここで、0.02重量部未満であると、目的とする難燃性における耐溶融滴下性が十分でない場合があり、5重量部を越ても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、たとえば、UL−94のV−0、V−1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
【0037】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、さらに、(E)成分としてのコア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体を、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性などの一層の向上のために含有することができる。その含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.2〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。このグラフトゴム状弾性体の含有量は、成形品に要求される耐衝撃性、耐熱性、剛性などを総合的に考慮して決定される。
【0038】
ここで、コア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体とは、コア(芯)とシェル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状態)である。このグラフトゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大部分がもとの形態を保っている。配合されたゴム状弾性体の大部分がもとの形態を保っていることにより、表層剥離を起こさない効果が得られる。
【0039】
このコア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、種々なものを挙げることができる。市販のものとしては、例えばハイブレンB621(日本ゼオン株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メタブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
これらの中で、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレートやアクリルメタクリレートとしては、炭素数2〜10のアルキル基を有するものが好適である。具体的には、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類を主体とする単量体から得られるゴム状弾性体としては、アルキルアクリレート類70重量%以上と、これと共重合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等30重量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げられる。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適宜添加して反応させてもよい。
【0041】
ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいし、また、他のビニル系重合体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよい。この重合反応は、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法によって行うことができる。特に、乳化重合法が好適である。
【0042】
このようにして得られるコア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体は、前記ゴム状重合体を20重量%以上含有していることが好ましい。このようなコア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には60〜80重量%のn−ブチルアクリレートと、スチレン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのMAS樹脂弾性体やポリシロキサンゴム成分が5〜95重量%とポリアクリル(メタ)アクリレートゴム成分95〜5重量%とが、分離できないように相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体が好ましい。この共重合体は、それぞれのゴム単独でのグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。この複合ゴム系グラフト共重合体は、市販品としての、三菱レーヨン株式会社製メタブレンS−2001などとして入手できる。
【0043】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、この組成物、通常ペレット粉砕物を、アセトン溶媒を用いてソックスレー抽出を行い、この抽出成分中のフェノール類の含有量が組成物全体の300ppm以下、好ましくは200ppm以下であることを特徴とするものである。ここでフェノール類の含有量が300ppm越えると、滞留熱安定性、耐熱老化性、耐湿熱性、リサイクル性など熱安定性全般にわたって、物性の低下、着色の発生が起こり好ましくない。
【0044】
なお、ここでのフェノール類とは、ポリカーボネート樹脂起源のもの、リン酸エステル化合物起源のもの、他の添加剤起源のものなどを含むものであり、原料ポリカーボネート樹脂、リン酸エステル化合物、スチレン系樹脂さらにはこれら原料に含まれる不純物、添加剤からのもの、さらには加熱溶融混練時に分解などにより発生したものなど最終の組成物、通常はペレット成形原料時点でのものである。
【0045】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記したように、ポリカーボネート樹脂として、末端基中に占めるヒドロキシル基の割合が0.5モル%以上、特に0.5〜20モル%であることが好ましい。さらに、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ハロゲン、特に塩素含有量が50ppm以下、特に30ppm以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物のこれらの測定方法は以下の通りである。
(1)フェノール類成分の含有量の測定:難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを粉砕して100メッシュの金網を通過したもの15gを試料として、円筒濾紙No84(28×100mm)に採取し、これを300mlのアセトンを用いて3〜4分に1回(20ml)の還流量で8時間還流させて抽出した。その後アセトンを蒸発して低分子量を秤量した。この試料をDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して、N,Oビス(トリメチルシリル)アセトアミドを添加し、GC昇温分析することにより、フェノール類を定量分析した。低分子量成分の含有量から、組成物中のフェノール類成分の含有量を計算で求めた。
(2)全末端基中に占める末端ヒドロキシル基割合の測定:NMRにより測定した。
(3)ハロゲン含有量の測定:乾燥した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレット10gを塩化メチレン90gに溶解し、アセトン50ml加え、0.005M硝酸銀/アセトン溶液を滴定試薬として用い、自動滴定装置で電位差滴定を行い測定した。
【0047】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、成形性、耐衝撃性、剛性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目的で、上記(A)、(C)からなる必須成分に、(B)、(D)、(E)から選ばれた任意成分の一種以上とともに、熱可塑性樹脂に常用されている添加剤成分を必要により含有することができる。例えば、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤、ポリエステル樹脂などの他の熱可塑性樹脂、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。任意成分の配合量は、本発明の,難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0048】
次に、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)と(C)を上記割合で、さらに必要に応じて用いられる、(B)、(D)、(E)の各種任意成分、さらには他の成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。
【0049】
なお、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂は、用いる原料として、不純物、残留溶媒の少ないものを出来るだけ用いることが必要である。さらに、溶融混練時に、例えばL/Dの大きい押出成形機を用いて、ベットより真空吸引することにより、残留溶媒を除去したり、二段押出成形機により溶融混練時に発生した揮発成分を十分に吸引除去する成形方法の採用が好ましい。場合によっては、アルコールや水を少量添加してこれらの後添加物質の蒸発と同伴させて不純物をとり除くなどの成形方法などを採用することもできる。
【0050】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法などにより各種成形品を製造することができる。しかし、上記溶融混練方法により、ペレット状の成形原料を製造し、ついで、このペレットを用いて、射出成形、射出圧縮成形による射出成形品の製造に特に好適に用いることができる。なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止のため、あるいは軽量化のためのガス注入成形を採用することもできる。
【0051】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から得られる射出成形品(射出圧縮を含む)としては、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、などのOA機器、情報機器などの電気・電子機器のハウジウングまたは種部品、さらには、電子レンジ、冷蔵庫などの家庭電化機器、自動車部品など他の分野にも好適に用いられる。
【0052】
【実施例】
本発明について実施例および比較例を示してより具体的に説明するが、これらに、何ら制限されるものではない。
実施例1〜9および比較例1〜3
表1、表2に示す割合で各成分を配合〔(A)、(B)成分は重量%、他の成分は、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対する重量部で示す。〕し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械株式会社製)に供給し、ベントの減圧度を600mmHg以下として、280℃〔PC単独〕、260℃〔PS系との複合〕で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例および比較例において、酸化防止剤としてイルガノックス1076(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)0.2重量部およびアデカスタブC(旭電化工業株式会社社製)0.1重量部をそれぞれ配合した。なお、比較例3のみ、オープンベントとしてペレットを成形した。得られたペレットを、80℃で12時間乾燥した後、成形温度280℃〔PC単独〕と260℃〔PS系との複合〕で射出成形して試験片、成形品を得た。得られた試験片を用いて性能を各種試験によって評価し、その結果を表1、表2に示した。
【0053】
なお、用いた成形材料および性能評価方法を次に示す。
(A)ポリカーボネート樹脂
PC−1:ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI=20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平均分子量:19,000、アセトン抽出フェノール類成分:80ppm、末端ヒドロキシル基:5モル%、塩素含有量80ppm
PC−2:ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI=20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平均分子量:19,000、アセトン抽出フェノール類成分:60ppm、末端ヒドロキシル基:0.3モル%、塩素含有量80ppm
PC−3:ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI=20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平均分子量:19,000、アセトン抽出フェノール類成分:340ppm、末端ヒドロキシル基:5モル%、塩素含有量60ppm
【0054】
(B)スチレン系樹脂
HIPS:耐衝撃ポリスチレン樹脂:ポリブタジエンにポリスチレンがグラフト重合したもの、ゴム含有量=10重量%、MI:8g/10分(200℃、5Kg荷重)
ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS):DP−611(テクノポリマー株式会社製)、MI=2g/10分(200℃、5Kg荷重)
【0055】
(C)有機リン系難燃剤
P−1:トリフェニルホスフェート:TPP(大八化学株式会社製)
P−2:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート):リン酸エステルPFR(旭電化工業株式会社製)
P−3:1,3−フエニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニルホスフェート):PX−200(大八化学株式会社製)
(D)フルオロオレフィン樹脂
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン:F201L(ダイキン化学工業株式会社製):分子量400万〜500万
(E)コア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体
複合ゴム系グラフト共重合体:メタブレンS2001(三菱レーヨン株式会社製):ポリジメチルシロキサン含有量:50重量%以上
【0056】
〔性能評価方法]
(1)IZOD(アイゾット衝撃強度)
ASTM D256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位:kJ/m2
(2)難燃性
UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:1.5mm)
(3)ウエルド強度
1.引張強度試験片成形金型を用いて2点ゲートで成形し、引張強度を測定した。
2.ウエルド強度保持率(%)=(ウエルド部の引張強度/非ウエルド部の引張強度)×100
【0057】
(4)滞留熱安定性
射出成形機内で、260℃、60分間滞留させた後、試験片を成形し、色差(ΔE)を測定した。色調変化:JIS H7103(黄変度試験方法)に準拠して、色差計で熱処理前後の試験片の色相(L,a,b)を測定し、色相変化を色差(ΔE)として算出した。
(5)耐熱老化性:成形品を80℃で500時間熱処理を行ない、熱処理後のIZOD衝撃強度とΔEを測定した。
(6)耐湿熱性:温度70℃、湿度90%の条件下で、500時間の暴露試験を行ない、暴露後のIZOD衝撃強度と色差(ΔE)を測定した。
(7)リサイクル性
成形品として、ノートパソコンハウジング(A4タイプ)を成形し、成形品を粉砕して、回収し、粉砕物100%を用いて、同様な成形条件で試験片を成形し、IZOD衝撃強度と色差(ΔE)を測定した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1、表2の結果から明らかなように、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からの成形品は、実施例と比較例から、優れた滞留熱安定性、耐熱、耐湿熱老化性、リサイクル性にすぐれていることが、衝撃強度、色調の測定結果より明らかである。また、スチレン系樹脂との併用においても良好である。
【0061】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ノンハロゲンで、かつ優れた難燃性、衝撃強度、耐熱安定性を有するとともに、成形品の耐熱、耐湿熱老化性にすぐれたものである。さらに、このすぐれた熱安定性からリサイクル性に優れ、再生使用が可能となり、環境問題、省資源に貢献できるものである。また、スチレン系樹脂やゴム状弾性体を併用することにより、成形性、衝撃強度などを前記耐久性を維持しつつ改良できる。したがって、OA機器、情報機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車部品などの大型化、薄肉化にも十分対応できるものであり、その応用分野の拡大が期待される。
Claims (7)
- (A)ポリカーボネート樹脂5〜100重量%と(B)スチレン系樹脂95〜0重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)リン酸エステル化合物1〜30重量部を含有する組成物であって、アセトン溶媒ソックスレー抽出フェノール類の含有量が300ppm以下である難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂の末端基中に占めるヒドロキシル基の割合が0.5〜20モル%である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 樹脂が、(A)ポリカーボネート樹脂20〜95重量%と(B)成分としてのゴム変性スチレン系樹脂80〜5重量%からなる請求項1または2記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.02〜5重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、(E)コア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.2〜30重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる電気・電子機器のハウジングまたは部品である射出成形品。
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