JP4263276B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関し、さらに詳しくは、赤リンにより難燃化され、着色性が良好で、衝撃強度にすぐれた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝撃特性、耐熱性、電気的特性、寸法安定性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車分野、建築分野等様々な分野において幅広く利用されている。ポリカーボネート樹脂は、一般的に自己消火性樹脂ではあるが、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器分野を中心として、高度の難燃性を要求される分野があり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られている。
【0003】
一方、近時、成形品が複写機、ファックスなどのOA機器、電話機、通信機などの情報・通信機器、電気・電子機器などの部品やハウジングなどの場合には、形状が複雑になること、リブやボスなどの凹凸が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、ボリカーボネート樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高めた組成物が求められている。この成形性の改善としては、耐衝撃性などの物性も考慮して、ゴム変性スチレン系樹脂との配合組成物が多く提案されている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良のために、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)などのスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した組成物は、ポリマーアロイとして、その耐熱性、耐衝撃性の特性を生かし、多くの成形品分野に用いられてきている。一方、これらの用途の中でも、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器などの場合には、その製品の安全性を高めるために、あるレベル以上の難燃性が求められている。
【0005】
ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上する方法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が難燃剤効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤とともに用いられてきた。しかし、近時安全性、環境への影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が市場より求められている。ノンハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物は優れた難燃性を示し、多くの方法が提案されている。
【0006】
具体的には、たとえば特開昭61−55145号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ABS樹脂、(C)AS樹脂、(D)ハロゲン化合物、(E)リン酸エステル、(F)ポリテトラフルオロエチレン成分からなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。特開平2−32154号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ABS樹脂、(C)AS樹脂、(D)リン酸エステル、(E)ポリテトラフルオロエチレン成分からなる難燃性高衝撃性ポリカーボネート成形用組成物が記載されている。特開平8−239565号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート、(B)ゴム状弾性体を含有する耐衝撃ポリスチレン樹脂、(C)ハロゲン非含有リン酸エステル、(D)コアシエルタイプグラフトゴム状弾性体、(D)タルクを含むポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【0007】
これらは、いずれも、ポリカーボネートの溶融流動性の改良による成形性、耐衝撃性、難燃性の改良を目的としたもので、すぐれた効果を生かし、各種成形品として用いられてきている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂、あるいはポリカーボネート樹脂とゴム変性スチレン系樹脂からなる良溶融流動性組成物を有機リン系難燃剤で難燃化する場合には、リン酸エステル化合物などを比較的多量に配合する必要がある。また、リン酸エステル化合物は難燃性には寄与するものの、成形加工時の金型腐食、成形品が加熱下に置かれたり、高湿度下に置かれた場合の、衝撃強度の低下、変色の発生などの問題点がある。
【0008】
他方、ポリカーボネート樹脂の非ハロゲン系難燃化の方法として、赤リンを用いることが良く知られている。例えば特公平5−18356号公報には、黄リン転化処理法により直接的に得られる破砕面のない球体様赤リンに転化した赤リンを含む難燃性熱可塑性樹脂組成物、さらに赤リンを被覆処理することも開示されている。また、特開平7−53779号公報には、前記において、分散剤の存在下に転化処理した球体様または微粉末状赤リンに表面処理をした赤リンを用いることが開示されている。これらの記載からも明らかなように、難燃剤としての赤リンは、その表面を熱硬化性樹脂や無機化合物で被覆する安定化処理により、貯蔵、保管、輸送、取り扱い時、熱可塑性樹脂との混練時における、安全性の確保、ホスフィンガスの発生の抑制が図られている。
【0009】
しかしながら、赤リンは比較的少量の添加により、すぐれた難燃性を示すものであるが、ポリカーボネート樹脂への添加により、着色し、淡色、明色系(例えばL値が70以上)に着色する場合には、赤リンによる赤着色が発生し、この赤着色を補うために、酸化チタンを多く添加する必要性がある。ポリカーボネート樹脂に3重量%以上の酸化チタンを添加すると、加熱溶融時に樹脂が分解し易く、結果として、衝撃強度など強度の大幅な低下、成形品表面にシルバーが発生するなどの問題点があり、すぐれた難燃効果がありながら赤リンの使用は、大きく制限されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状の下、ポリカーボネート樹脂の赤リンによる難燃化において、ポリカーボネート樹脂に悪影響がなく、衝撃強度、成形品外観にすぐれた成形品を成形可能な難燃性ポリカーボネート樹脂組成物およびこの組成物を用いた成形品の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明者らは、難燃性ポリカーボネート樹脂の赤リンによる難燃化において、成形性、外観、物性などの改良について鋭意検討した。その結果、赤リンを難燃剤として含有するポリカーボネート樹脂、またはゴム変性スチレン系樹脂を含有してなる樹脂組成物に、特定の安定化処理赤リンを選択使用することにより、難燃性を低下させることなく、成形性、外観、衝撃強度の低下を防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリカーボネート樹脂20〜100重量%および(B)スチレン系樹脂80〜0重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)酸化チタン並びにフェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂による複合安定化処理赤リン0.1〜10重量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(2)スチレン系樹脂がゴム変性スチレン系樹脂であり、(A)ポリカーボネート樹脂50〜95重量%および(B)ゴム変性スチレン系樹脂50〜5重量%からなる上記(1)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(3)さらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部含有する上記(1)または(2)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(4)さらに、(E)コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(5)さらに、(F)官能基含有シリコーン化合物を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(6)(F)官能基含有シリコーン化合物が、式R 1 aR 2 bSiO (4-a-b)/2 〔R 1 は官能基含有基、R 2 は炭素数1〜12の炭化水素基、0<a<2、0≦b<2、0<a+b≦2〕で表される基本構造を有するシリコーン化合物である、上記(5)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるL値が70以上の成形品。
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなるOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器または家庭電化機器のハウジングまたはそれらの部品を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の構成成分(A)〜(C)について説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂(PC)
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する(A)成分であるポリカーボネート樹脂(PC)としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、二価フエノールとホスゲンの反応、2価フエノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
【0014】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
【0015】
特に好ましい2価フエノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0017】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。本発明において用いられる(A)成分のポリカーボネート樹脂は、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は、10,000〜100,000のものが好ましく、特に14,000〜40,000のものが好適である。
【0018】
(B)スチレン系樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する(B)成分のスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンなどのモノビニル系芳香族単量体20〜100重量%、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体0〜60重量%、およびこれらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチルなどの他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体または単量体混合物を重合して得られる重合体がある。これらの重合体としては、ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などがある。
【0019】
また、スチレン系樹脂としてはゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、好ましくは、少なくともスチレン系単量体がゴムにグラフト重合した耐衝撃性スチレン系樹脂である。ゴム変性スチレン系樹脂としては、たとえば、ポリブタジエンなどのゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したABS樹脂、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したMBS樹脂などがあり、ゴム変性スチレン系樹脂は、二種以上を併用することができるとともに、前記のゴム未変性であるスチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
【0020】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、例えば2〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%、特に5〜15重量%である。ゴムの割合が2重量%未満であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50重量%を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色などの問題が生じる場合がある。上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレートおよび/またはメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SBS)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン・アクリルゴム、イソプレン・ゴム、イソプレン・スチレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものはポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、低シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0021】
つぎに、本発明においては、(B)成分のスチレン系樹脂は、本発明の難燃性とは直接関係はなく、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性を改良する必要がある場合に配合されるものである。ここで、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)スチレン系樹脂の配合比は、通常(A)ポリカーボネート樹脂20〜100重量%、好ましくは50〜95重量%、(B)スチレン系樹脂が80〜0重量%、好ましくは50〜5重量%である。ここで、(A)成分のポリカーボネート樹脂が20重量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、(B)成分のスチレン系樹脂が5重量%未満では成形性の改良効果が不十分である場合がある。なお、この場合の(B)スチレン系樹脂としては、前記したゴム変性スチレン系樹脂が好ましく用いられる。これらの配合比は、ポリカーボネート樹脂の分子量、スチレン系樹脂の種類、分子量、メルトインデックス、ゴムの含有量や成形品の用途、大きさ、厚みなどを考慮して適宜決定される。
【0022】
(C)酸化チタン安定化処理赤リン
本発明で用いる酸化チタン安定化処理赤リンとは、赤リンの安定化のための多くの各種処理の中から酸化チタン安定化処理(表面被覆)を選択したものである。この酸化チタンに用いられる赤リンとしては、古くから知られている粉砕赤リンを篩別して粒度を調整したものや、黄リンを熱転化することにより直接得られる球体状のものであってもよい。酸化チタンによる安定化のための処理量は、赤リンに対して、通常1〜50重量%程度である。なお、赤リンの酸化チタンによる処理は、必ず必要であるが、他の公知の赤リンの安定化のための表面処理(表面被覆)が併用されていてもよく、特に他の安定化処理との複合処理が好ましく用いられる。
【0023】
これらの他の安定化表面処理としては、熱硬化性樹脂、無機化合物、金属などによる処理がある。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを例示できる。無機化合物としては、シリカ、ベントナイト、ゼオライト、カオリン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどをあげることができる。また、金属としては、通常無電解メッキが可能な金属であり、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、マンガン、アルミニウムなどを例示できる。
【0024】
また、これらの安定化表面処理は、2種以上を併用することもできる。これらの表面処理と酸化チタンの表面処理は、同時に行うこともでき、また、酸化チタン処理を、他の安定化表面処理の前後で別々に二段処理することもできる。これらの安定化表面処理の赤リンへの被覆量は、赤リンの含有率が20重量%以上となることが、難燃化効率とコストの点から好ましい。本発明で用いる安定化処理赤リンとしては、平均粒子径が0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μmの範囲である。
【0025】
(C)成分の酸化チタン安定化処理赤リンの含有量は、前記(A)ポリカーボネート樹脂およびと(B)スチレン系樹脂からなる樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜6重量部、より好ましくは0.3〜4重量部である。ここで、含有量が0.1未満では、成形品の難燃性が十分でなく、10重量部を越えると成形時の臭気の発生、物性などの点から望ましくない。なお、本発明では、赤リンとともに、安定剤として公知のトリフェニルホスファイト、トリス(2,4ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどのホスファイト系化合物を(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部の範囲で併用することにより安定性を更に向上させることができる。したがって、この酸化チタン安定化処理赤リン、ホスファイト系化合物の含有量は、成形品の難燃要求特性を考慮して、安定化処理赤リン中の赤リンの含有量、他のゴム状弾性体や無機充填剤の含有量などをもとに総合的に判断して決定される。
【0026】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、燃焼時の溶融滴下防止を目的にさらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を含有することができる。ここで(D)フルオロオレフィン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくはは500,000〜10,000,000である。本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。
【0027】
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0029】
ここで、フルオロオレフィン樹脂の含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1〜2重量部である。ここで、0.05重量部未満であると、目的とする難燃性における耐溶融滴下性が十分でない場合があり、5重量部を越ても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、たとえば、UL−94のV−0、V−1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
【0030】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、さらに、(E)成分としてコアシェルタイプゴム状弾性体を難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性の一層の向上のために含有することができる。その含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部である。このゴム状弾性体の含有量は、目的の成形品に要求される耐衝撃性、耐熱性、剛性などを総合的に考慮して決定される。(E)成分のコアシェルタイプゴム状弾性体とは、コア(芯)とシェル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状態)であるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体が好ましい。このゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大部分がもとの形態を保っている。配合されたゴム状弾性体の大部分がもとの形態を保っていることにより、表層剥離を起こさない効果が得られる。
【0031】
このコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、種々なものを挙げることができる。市販のものとしては、例えばハイブレンB621(日本ゼオン株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メタブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
これらの中で、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレートやアクリルメタクリレートとしては、炭素数2〜10アルキル基を有するものが好適である。具体的には、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類を主体とする単量体から得られるゴム状弾性体としては、アルキルアクリレート類70重量%以上と、これと共重合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等30重量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げられる。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適宜添加して反応させてもよい。
【0033】
ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいし、また、他のビニル系重合体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよい。この重合反応は、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法によって行うことができる。特に、乳化重合法が好適である。
【0034】
このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、前記ゴム状重合体を20重量%以上含有していることが好ましい。このようなコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には60〜80重量%のn−ブチルアクリレートと、スチレン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのMAS樹脂弾性体が挙げられる。中でも、ポリシロキサンゴム成分が5〜95重量%とポリアクリル(メタ)アクリレートゴム成分95〜5重量%とが、分離できないように相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体が特に好ましい。この共重合体は、それぞれのゴム単独でのグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。この複合ゴム系グラフト共重合体は、市販品としての、三菱レーヨン株式会社製メタブレンS−2001などとして、入手できる。
【0035】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、さらに、(F)官能基含有シリコーン化合物を(A)ポリカーボネート樹脂および(B)スチレン系樹脂からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部含有することができる。この官能基含有シリコーン化合物は、その原因は明らかではないが、赤リンからのホスフィンガスの発生を抑制する作用により、よりすぐれた成形性、強度などにすぐれた組成物を得ることができる。
【0036】
ここで官能基を有するシリコーン化合物としては、官能基を有する(ポリ)オルガノシロキサン類であり、その骨格としては、式R1aR2bSiO(4-a-b)/2 〔R1 は官能基含有基、R2 は炭素数1〜12の炭化水素基、0<a<2、0≦b<2、0<a+b≦2〕で表される基本構造を有する重合体、共重合体である。また、官能基としては、アルコキシ基、水素基、カルボキシル基、シアノール基、アミノ基、エポキシ基などを含有するものである。これらシリコーン化合物は液状物、パウダーなどである。
【0037】
また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、必要により無機充填剤を、成形品の剛性、さらには難燃性をさらに向上させるために含有させることができる。ここで、無機充填剤としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などをあげることができる。なかでも、板状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填剤が好ましい。タルクとしては、、マグネシウムの含水ケイ酸塩であり、一般に市販されているものを用いることができる。タルクには、主成分であるケイ酸と酸化マグネシウムの他に、微量の酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化鉄を含むことがあるが、本発明の樹脂組成物を製造するには、これらを含んでいてもかまわない。また、タルクなどの無機充填剤の平均粒径は0.1〜50μm、好ましくは、0.2〜20μmである。これら無機充填剤、特にタルクを含有させることにより、剛性向上効果に加えて、難燃剤としてのハロゲン非含有リン酸エステルの配合量を減少させることができる。
【0038】
ここで、無機充填剤の含有量は、、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは、2〜50重量部である。ここで、1重量部未満であると、目的とする剛性、難燃性改良効果が十分でない場合があり、100重量部を越えると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合があり、成形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求性状と成形性を考慮して適宜決定することができる。
【0039】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物にあっては、従来知られているように、難燃剤として、赤リンの他に有機リン系難燃剤、特にハロゲン非含有の有機リン系難燃剤を、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは、2〜15重量部併用することもできる。ハロゲン非含有有機リン系難燃剤としては、特に制限なく用いることができる。好ましくは、リン原子に直接結合するエステル性酸素原子を1つ以上有するリン酸エステル化合物が用いられる。
【0040】
リン酸エステル化合物としては、たとえば、次式(1)
【0041】
【化1】
【0042】
(ここで、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。)で示されるリン酸エステル系化合物である。
式(1)において、有機基とは、置換されていても、いなくてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などである。また置換されている場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基などがある。さらに、これらの置換基を組み合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基など、またはこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子などにより結合して組み合わせたアリールスルホニルアリール基などを置換基としたものなどがある。
【0043】
また、式(1)において、2価以上の有機基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニレン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン等がある。
【0044】
ハロゲン非含有リン酸エステル系化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよい。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体などを例示できる。
【0045】
ここで、市販のハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニルホスフェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェート〕、PFR〔レゾルシノール(ジフェニルホスフェート)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、PX201L〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、PX202〔4,4’−ビフェニレン−テスラキス)2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルなどを挙げることができる。
【0046】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、成形性、耐衝撃性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目的で、上記(A)、(C)からなる必須成分に、(B)、(E)〜(F)、さらには無機充填剤、リン酸エステル化合物から選ばれた任意成分の一種以上とともに、熱可塑性樹脂に常用されている各種添加剤成分を必要により含有することができる。例えば、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。任意成分の配合量は、本発明の,難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0047】
次に、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)、(C)を上記割合で、さらに必要に応じて用いられる、(B)、(E)〜(F)の各種任意成分、さらには他の成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。なお、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
【0048】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法などにより各種成形品を製造することができる。しかし、上記溶融混練方法により、ペレット状の成形原料を製造し、ついで、このペレットを用いて、射出成形、射出圧縮成形による射出成形品の製造に特に好適に用いることができる。なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止のため、あるいは軽量化のためのガス注入成形を採用することもできる。
【0049】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品(特に射出圧縮成形を含む射出成形品)としては、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器もしくは家庭電化機器のハウジウングまたはそれらの各種部品、さらには、自動車部品など他の分野にも用いられる。特に、本発明は、成形品として、L値が70以上である成形品、すなわち、淡色、明色外観である成形品の製造に好適なものである。なお、L値とは、JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」による、L、a、bの測定により得られるものである。
【0050】
【実施例】
本発明について実施例および比較例を示してより具体的に説明するが、これらに、何ら制限されるものではない。
実施例1〜4および比較例1〜2
表1に示す割合で各成分を配合〔(A)、(B)成分は重量%、他の成分は、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対する重量部で示す。〕し、押出機(機種名:VS40、田辺プラスチック機械株式会社製)に供給し、260℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例および比較例において、酸化防止剤としてイルガノックス1076(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)0.2重量部およびアデカスタブC(旭電化工業株式会社社製)0.1重量部をそれぞれ配合した。
【0051】
なお、本発明の実施例、比較例では、マンセルナンバー2.0Y7.5/0.5(ライトグレー)用の着色剤を用い、調色した場合についての実験である。即ち、上記マンセルナンバーであるライトグレーになるように後添加の酸化チタン添加量を調整して調色した。得られたペレットを、80℃で12時間乾燥した後、成形温度260℃で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて性能を各種試験によって評価し、その結果を表1に示した。
【0052】
なお、用いた成形材料および性能評価方法を次に示す。
(A)ポリカーボネート樹脂
PC:タフロン(A1900:出光石油化学株式会社製):ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI=20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平均分子量:19000
(B)スチレン系樹脂
HIPS:耐衝撃ポリスチレン樹脂(IDEMITSU PS IT44:出光石油化学社株式会社製):ポリブタジエンにスチレンがグラフト重合したもの、ゴム含有量=10重量%、MI:8g/10分(200℃、5Kg荷重)
ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(DP−611:テクノポリマー株式会社製)、MI:2g/10分(200℃、5Kg荷重)
(C)赤リン
P−1:フエノール系樹脂と酸化チタン複合安定化処理赤リン(ノーバレッド280C:燐化学工業株式会社製)、酸化チタン量:約50重量%、平均粒子径:8μm
P−2:フエノール系樹脂安定化処理赤リン(ノーバレッドエクセル140:燐化学工業株式会社製)、平均粒子径:28μm
(D)フルオロオレフィン樹脂
PTFE(F201L:ダイキン化学工業株式会社製)、分子量400万〜500万
(E)ゴム状弾性体(コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体)
複合ゴム系グラフト共重合体(メタブレンS2001:三菱レーヨン株式会社製)、ポリジメチルシロキサン含有量:50重量%以上
(F)メトキシシリコーン(KC−89:信越化学工業株式会社製)
酸化チタン(CR63:石原産業株式会社製)
〔性能評価方法]
(1)溶融流動性
流れ値(Q値):JIS K7210:×10-2ml/s(280℃、160kg荷重)
(2)成形品外観評価
成形試験片を目視観察
(3)IZOD(アイゾット衝撃強度)
ASTM D256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位:kJ/m2
(4)難燃性
UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:1.5mm)
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から明らかなように、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からの成形品は、実施例1と比較例1から、調色のための後添加酸化チタン量が大幅に少なくてすむことが明らかである。その結果、同一調色において、組成物全体中の酸化チタンを削減でき、ポリカーボネート樹脂の分解防止(比較例1はQ値が増加)、衝撃強度の低下がないばかりか、難燃性のレベルも高い。また、L値が70以上の淡色、明色系の成形品であっても、赤リンによる赤着色の影響が少なく成形品外観、難燃性、強度にすぐれた成形品が成形できることが明白である。このことは、スチレン系樹脂との複合組成物においても同様である。
【0055】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ノンハロゲンで、かつ優れた難燃性、成形性、衝撃強度を有するとともに、耐熱性向上による成形時の樹脂の分解、成形品外観にすぐれる。また、淡色、明色の調色において、酸化チタンの使用量を大幅に削減できる。しかも、酸化チタンを赤リンの処理に使うことにより、同じ酸化チタンでありながら、全く量的に異なった効果が得られることは、予想をはるかに越えた全く予期できない効果であった。本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、したがって、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車部品などの大型化、薄肉化にも十分対応できるものであり、その応用分野の拡大が期待される。
Claims (8)
- (A)ポリカーボネート樹脂20〜100重量%および(B)スチレン系樹脂80〜0重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)酸化チタン並びにフェノール樹脂、フェノール−ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂による複合安定化処理赤リン0.1〜10重量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- スチレン系樹脂がゴム変性スチレン系樹脂であり、(A)ポリカーボネート樹脂50〜95重量%および(B)ゴム変性スチレン系樹脂50〜5重量%からなる請求項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、(D)フルオロオレフィン樹脂を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部含有する請求項1または2記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、(E)コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに、(F)官能基含有シリコーン化合物を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (F)官能基含有シリコーン化合物が、式R1aR2bSiO(4-a-b)/2 〔R1は官能基含有基、R2は炭素数1〜12の炭化水素基、0<a<2、0≦b<2、0<a+b≦2〕で表される基本構造を有するシリコーン化合物である、請求項5記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるL値が70以上の成形品。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなるOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器または家庭電化機器のハウジングまたはそれらの部品。
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