《A−1.本発明の織物製品の全体構成》
本発明の織物製品は、セルロース繊維を50質量%以上含み、英式綿番手が5番手〜100番手であるセルロース系繊維を用いて50〜200本/インチ(2.54cm)の経糸密度および緯糸密度で製織された略矩形の織地を含む。該織地の四辺の各端部には、経糸または緯糸として2本以上の熱融着性弾性繊維が織り込まれており、その四隅部の各々においては、2本以上の経糸の該熱融着性弾性繊維と2本以上の緯糸の該熱融着性弾性繊維とが少なくとも1つの格子を形成するように交差し、該交差部において相互に熱融着している。本発明の織物製品においては、必要に応じて、該織地の内部領域に経糸および緯糸としてそれぞれ1本以上の熱融着性弾性繊維が織り込まれ、その交差部において相互に熱融着していてもよい。また、本発明の織物製品においては、必要に応じて、該織地の一部に熱融着性樹脂が熱融着していてもよい。なお、本明細書において、「略矩形」とは、本発明の効果が得られる範囲において、厳密な矩形でなくても良いことを意味する。具体的には、各辺は、その延びる方向が直線であればよく、直線、曲線(例えば、波線)、ジグザグ線、またはその組み合わせ等であり得る。角は、曲線であってもよく、裁断により切り落とされていてもよい。また、「隅部」とは、例えば、角を形成する二本の辺の端部から内側に71mmまで、好ましくは42mmまでの領域であり得る。また、「内部領域」とは、該織地全体から四辺の端部領域(例えば、辺の端部から内側に50mmまで、好ましくは40mmまでの領域)を除いた領域を意味する。また、「融着」とは、溶融または軟化による接着および密着を意味し、「熱融着」とは、外からの熱または熱と圧力とに起因する融着を意味する。また、「経」または「経方向」は、経糸の延びる方向を意味し、「緯」または「緯方向」は、緯糸の延びる方向を意味し、「経方向の端部」および「緯方向の端部」は、それぞれ経方向および緯方向に延びる端部を意味する。
本発明の織物製品によれば、上記織地の四隅部の各々において2本以上の経糸の該熱融着性弾性繊維と2本以上の緯糸の該熱融着性弾性繊維とが少なくとも1つの格子を形成するように4箇所以上で交差し、該交差部において相互に熱融着している。このように熱融着性弾性繊維が織地の四辺を取り囲み、いわば固定枠のように機能することにより、織地の構成繊維の動きが抑制されるので、少量の熱融着性弾性繊維の使用で優れたほつれ止め機能が発揮され得る。そのため、本発明の織物製品は、織地の裁断部にほつれ止めの縫製を施すことなく、端部の少なくとも一部を切りっぱなし仕様(すなわち、裁断したままの状態)とすることができる。一般に、織物製品には、端部を折り返して、または重ね合わせて縫い合わせることによってほつれ止めの縫製が施されており、該端部は乾燥時に水分の蒸発を阻害する構造となっている。これに対し、本発明の織物製品は、端部を無縫製とすることができ、端部の折り返しや重ね合わせを必要としないので、乾燥時の水分の蒸発を早め得る。このように本発明の織物製品によれば、端部の速乾性を高めることで、水に濡れた状態で感じる使用中の不快感を改善し得る。また、本発明の織物製品を構成する織地は、比較的細い糸で緩く製織されているので、目ずれや変形の問題が生じやすいが、本発明の織物製品においては、該熱融着性弾性繊維が上記のように交差および熱融着することにより、織地全体が固定化されるので、洗濯および使用を繰り返した場合であっても該織地の目ずれおよび変形が好適に抑制され得る。その結果、薄くて軽い織組織を有しながら、目ずれ、変形等が好適に低減された織物製品が得られ得る。
図1(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の好ましい実施形態による織物製品の一例を示す概略平面図である。図1(a)は、織地100aからなる織物製品200aを示す。織地100aの四辺の各端部には、経糸または緯糸として2本ずつ熱融着性弾性繊維10が織り込まれており、該熱融着性弾性繊維10は、四隅部の各々において、格子状に4点の交差部20を形成し、該交差部20において相互に熱融着している。図1(b)は、織地100bからなる織物製品200bを示す。織地100bは、内部領域に経糸および緯糸として織り込まれた熱融着性弾性繊維10をさらに含み、該内部領域に織り込まれた熱融着性弾性繊維10もまた、熱融着性弾性繊維相互の交差部20において相互に熱融着している。図1(c)は、内部領域の一部に熱融着性樹脂30が熱融着した織地100cからなる織物製品200cを示す。
図2は、本発明の好ましい実施形態における織地の隅部を説明する概略図である。図中、直線は熱融着性弾性繊維を示し、黒点は熱融着性弾性繊維の交差部(熱融着部)を示し、点線は裁断部を示す。上記のとおり、本発明の織物製品においては、上記織地の四隅部の各々で2本以上の経糸の該熱融着性弾性繊維と2本以上の緯糸の該熱融着性弾性繊維とが少なくとも1つの格子を形成するように交差し、該交差部において相互に熱融着していればよい。したがって、例えば、隅部Aのように、織り込まれた熱融着性弾性繊維がすべて格子状に交差および熱融着していてもよいし、隅部B、C、およびDのように、角が曲線または斜めに裁断されることにより、織り込まれた熱融着性弾性繊維の一部が少なくとも1つの格子を形成するように交差および熱融着していてもよい。各隅部における該交差部(熱融着部)の数は、ほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果を向上させる観点から、4個以上であり、好ましくは9個以上、より好ましくは12個以上、特に好ましくは16個以上である。また、触感、吸水性等の低下を回避する観点から、好ましくは2500個以下、より好ましくは900個以下である。これに対し、図4(a)〜(d)に示すように、該交差部が各隅部に1〜3個配置されている場合には、ある程度のほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果が得られるものの、格子を形成していないので該熱融着弾性繊維が動きやすくなっている。そのため、使用および洗濯を繰り返すことにより、該熱融着弾性繊維のずれや抜け等が生じて、該交差部による織地の固定化が不十分となるので、ほつれ、目ずれ、変形等の問題を十分に低減することができない。
本発明の織物製品の目ずれ度は、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。このような目ずれ度であれば、保形性が良好であり、洗濯および使用を繰り返した場合でも審美性が維持され得る。
本発明の織物製品は、端部の機械強度に優れることが好ましい。本発明の織物製品は、好ましくは490cNより高い、より好ましくは750cNより高い端部の引裂強力を有する。端部の引裂強力が490cN以下であると、使用時または洗濯時に織物製品に破れや裂けが発生し易くなる傾向にある。
1つの実施形態においては、本発明の織物製品は、端部が無縫製であっても、該端部の機械強度(例えば、引裂強力)が、内部領域以上であり得る。このような織物製品によれば、使用または洗濯を繰り返しても該端部領域に破れや裂けが生じにくいという利点がある。
本発明の織物製品は、好ましくはハンカチ、スカーフ(インナーマフラーを含む)、タオル、ランチョンマット、テーブルクロス、またはシーツであり得る。
《A−2.織地》
上記織地は、略矩形であり、セルロース繊維を50質量%以上含み、英式綿番手が5番手〜100番手であるセルロース系繊維を用いて50〜200本/インチ(2.54cm)の経糸密度および緯糸密度で製織されている。上記織地における該セルロース系繊維の含有率は、例えば、50質量%〜99.99質量%である。
上記セルロース系繊維は、セルロース繊維を50質量%以上含む。このようなセルロース系繊維を用いることにより、吸水性および風合いに優れた織物製品が得られ得る。当該セルロース系繊維は、好ましくはセルロース繊維を70質量%以上含む。このような含有量であれば、吸水性および風合いに極めて優れ、さらに、セルロース系繊維を架橋させるための処理(詳細は後述する)を併用することによって、優れた防しわ効果が得られ得る。当該セルロース繊維の含有量は、JIS L 1030−2に準拠して求められる値である。
上記セルロース繊維としては、用途等に応じて任意の適切なセルロース繊維が選択され得る。当該セルロース繊維の具体例としては、綿(例えば、短繊維綿、中繊維綿、長繊維綿、超長綿、超・超長綿)、麻、竹、こうぞ、みつまた、バナナ、被嚢類等の植物性および動物性の天然セルロース繊維;レーヨン繊維(例えば、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン)等の再生セルロース繊維;アセテート繊維(例えば、ビスアセテート、トリアセテート)等の半再生セルロース繊維;等が挙げられる。なかでも、吸水性、風合い、および物性に優れた織物製品が得られ得ることから、綿、麻、およびレーヨンが好ましく用いられ得る。当該セルロース繊維は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記セルロース系繊維において、上記セルロース繊維と組み合わせて用いられ得る他の繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリイミド繊維、ポリ乳酸繊維等が挙げられる。ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維等を上記セルロース繊維と組み合わせて用いることにより、織物製品の破裂強力の向上や伸長性および伸長回復性の向上効果が得られ得る。当該他の繊維は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記セルロース系繊維は、目的に応じて任意の適切な形態であり得る。具体的には、原糸(未加工糸)、仮撚糸、染色糸等の形態が挙げられる。また、単糸、合撚糸、カバリングヤーン等の形態が挙げられる。また、当該セルロース系繊維が2種以上の繊維を含む場合、当該2種以上の繊維は、例えば、混紡糸、混撚糸等の形態であり得る。これらの形態は、単独でまたは2種以上組み合わせて採用され得る。
上記セルロース系繊維の繊度は、英式綿番手で5番手〜100番手である。繊度が5番手未満であると、繊維が太いために生地が硬くなるという問題がある。一方、繊度が100番手を超えると、繊維が細いために生地の引張強力、引裂強力等が低くなる、製造コストが高くなる等の問題がある。所望の用途に応じた性能(例えば、吸水性、速乾性、柔らかさ、敷物としての安定性)、生地の強度、厚さおよび重さ、製造コスト等の観点から、本発明の織物製品をハンカチ、スカーフ、タオル、シーツとして用いる場合の繊度は、好ましくは30〜80番手である。また、ランチョンマット、テーブルクロスとして用いる場合の繊度は、好ましくは5〜30番手である。なお、繊度が30番手である糸としては、30番手の単糸、60番手の単糸からなる双糸等を用いることができる。
上記織地は、必要に応じて上記セルロース系繊維に加えて他の繊維を経糸および/または緯糸として用いて製織(いわゆる、交織り)されてもよい。該他の繊維としては、上記セルロース系繊維においてセルロース繊維と混紡され得る他の繊維と同様の繊維が挙げられる。該他の繊維の繊度は、上記セルロース系繊維と同様である。
上記織地の織組織としては、特に制限はなく、平織、綾織、朱子織の三原組織が用いられ得る。平織の場合は、本発明の効果が好適に発揮されることから、目ずれしやすい組織が好ましく、例えば経糸および緯糸の充填率が70%以下の平織が好ましい。中でも、薄く、柔らかい風合いの織物製品を提供できる点でローンおよびガーゼ生地が好ましい。これらの生地では、織密度が粗いので、生地の縮みや織組織のずれ(目ずれ)が生じやすくなるが、本発明においては、所定の部位に所定の数以上の熱融着性弾性繊維を織り込み、交差部で熱融着させることによって組織ずれを抑制するので、保形性が格段に向上すると共に、無縫製でも実用可能なレベルのほつれ止め機能が発揮され得る。経糸および緯糸の充填率が70%以下である平織の生地は、ハンカチ、スカーフ、シーツ、タオルに好適であり、ローンおよびガーゼ生地を用いた場合は、薄さを最大限活かすことができる点で、特に、ハンカチおよびスカーフ用途に好適である。なお、充填率については、後述する。
上記織組織が綾織および朱子織の場合は、多様なデザインを有する織物製品を提供することができる。さらに織密度を粗くすることにより、軽量で柔らかく様々なデザインの織物製品を提供することができる。これらの織組織では、経糸と緯糸との交わる組織点が平織に比べて少なくなっており、また、織密度を粗くしていくと糸の撚り(および繊維の天然撚り)が戻ろうとする力も加わるので、ある一定方向に生地が変形して織組織のずれ(目ずれ)が生じやすくなる傾向にあるが、本発明においては、上記のように該織組織ずれが抑制されるので、ほつれ止め機能に加えて、目ずれ低減効果が好適に得られ得る。
さらに、部分的に緯糸を織り込まない空打ちや、経糸の一部にも糸を通さずに形成した空羽織等の隙間の多い織り方を用いた場合にも、ほつれ防止および目ずれ低減効果が好適に得られ得る。
上記織地は、50〜200本/インチの経糸密度および緯糸密度で製織されている。経糸密度および緯糸密度が50本/インチ未満であると糸同士の隙間の多い生地となるので、例えばハンカチとして用いた場合には生地の強度、吸水性等が劣る場合がある。また、経糸密度および緯糸密度が200本/インチを超えると糸同士の隙間が少なくなるので、例えばハンカチとして用いた場合には風合いが硬く、張りが強くなったり、生地が重たくなる等の問題が生じる場合がある。所望の用途に応じた性能(例えば、吸水性、速乾性、柔らかさ)、生地の強度、厚さおよび重さ等の観点から、該経糸密度および緯糸密度はそれぞれ、好ましくは70〜130本/インチである。経糸密度と緯糸密度とは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。なお、該織密度は、上記織地の熱融着性弾性繊維を除く構成繊維で製織された組織(本明細書においては、「地組織」と称する場合がある)の織密度である。
本発明においては、織物製品の用途等に応じて、上記織地の片面または両面にパイル糸を用いてパイルを織り込むことにより、パイル織の織地としてもよい。
《A−3.熱融着性弾性繊維》
上記熱融着性弾性繊維は、上記織地の四辺の各端部に(すなわち、織地の最外端の構成繊維となるように)、経糸または緯糸として2本以上織り込まれており、該織地の四隅部の各々において少なくとも1つの格子を形成するように4箇所以上で交差し、該交差部において相互に熱融着している。織地(地組織部)の四辺を取り囲むように織り込まれた熱融着性弾性繊維がいわば織地の固定枠のように機能することにより、上記織地の変形や上記セルロース系繊維等の動きが抑制されるので、ほつれ、目ずれ、変形等の低減効果が発揮され得る。また、格子の形成により、熱融着性弾性繊維が動き難く、かつ、抜け難くなっているので、使用および洗濯を繰り返しても固定枠としての効果を保持し得る。該2本以上の熱融着性弾性繊維は、好ましくは、隣接するように連続して各辺の端部に織り込まれている。隣接して織り込まれた熱融着性弾性繊維は相互に接触(線接触)して熱融着できるので、ほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果がより好適に発揮され得るからである。なお、各辺の端部に織り込まれる熱融着性弾性繊維の数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記熱融着性弾性繊維は、好ましくは、他の構成繊維、例えば、上記セルロース系繊維との接触箇所(代表的には、交差部)において該他の構成繊維と熱融着した状態であり得る。具体的には、該熱融着性弾性繊維は、該他の構成繊維を埋め込むように変形し、これらを固定した状態であり得る。熱融着性弾性繊維がこのような状態にあることにより、ほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果がより好適に発揮され得る。
各辺の端部に織り込まれている熱融着性弾性繊維の本数は、用途、織地の大きさ、織密度、熱融着性弾性繊維の種類等に応じて適切に設定され得る。例えば、織地の織密度が高く、ほつれや目ずれが起こりにくい傾向にある場合には、熱融着性弾性繊維の織り込み本数を少なくすることができる。一方、織密度が低く、ほつれや目ずれが起こりやすい傾向にある場合には、織り込み本数を増やすことで本発明の効果を好適に得ることができる。好ましくは、熱融着性弾性繊維は、四辺の端部にそれぞれ2〜50本織り込まれている。2本未満であると、ほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果が不十分となる場合がある。一方、50本を越えると、吸水性や吸汗性が低下したり、ゴムやプラスチックのような手触りとなる場合があり、また、ほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果の向上がみられない場合がある。各端部に織り込まれている熱融着性弾性繊維の本数は、より好ましくは2〜30本である。2本織り込まれている場合には、熱融着性弾性繊維の使用本数が最も少ない状態で実用上十分なほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果が得られるので、製品中で特に目立ちにくくしたい場合等に好適である。また、30本織り込まれている場合には、例えば、経糸密度および緯糸密度がともに50本/インチである最も目が粗い織地に対しても十分なほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果が得られ、さらには、織り込む面積を小さくすることができるので製品全体の風合いの低下を抑えることができる。
上記熱融着性弾性繊維の織り込み密度は、織地の織密度を考慮すると、好ましくは経糸密度および緯糸密度がともに25〜200本/インチである。経糸密度および緯糸密度がともに25本/インチの場合、熱融着性弾性繊維の織り込み本数を30本とした場合であっても、織り込み幅を約3cmに抑えることができるので、製品全体の風合いの低下を抑えることができる。また、織り込み密度を25本/インチ以上とすると、1mm毎に1本以上の熱融着性弾性繊維が配置されるので、隣接する熱融着性弾性繊維が相互に接触および熱融着しない場合であっても、各隅部において、格子状の4箇所以上の交差部で熱融着することにより、織地全体の動きを十分に抑えることができる。その結果、ほつれおよび目ずれが好適に抑制され得る。
上記熱融着性弾性繊維の織り込み幅は、織り込み密度、用途等に応じて適切に設定され得る。該織り込み幅は、本発明の織物製品がハンカチ、タオル、スカーフ(インナーマフラー含む)、ベッドシーツ、ランチョンマット、テーブルクロス等である場合には、風合いやコストの観点から、好ましくは0.13mm〜5cm、より好ましくは0.13mm〜3cmであるが、当該織り込んだ部分をデザインとして活用する場合はその限りではない。なお、このような織り込み幅であれば、熱融着性弾性繊維上に装飾用の切り抜きを施したり、端部を波状等に裁断することにより、本発明の効果を得つつ、所望のデザインとすることができる。また、該熱融着性弾性繊維を織り込んだ端部の外側部分に飾りとして、織地(地組織)の構成繊維である経糸と緯糸のどちらか一方または両方を房として残すような方法もデザインとして適用できる。
本発明においては、必要に応じて、上記織地の内部領域に経糸または緯糸として1本以上の熱融着性弾性繊維が織り込まれていてもよい。好ましくは、上記織地の内部領域に経糸および緯糸としてそれぞれ1本以上の熱融着性弾性繊維が織り込まれている。内部に織り込まれた熱融着性弾性繊維もまた、他の熱融着性弾性繊維との交差部において相互に熱融着している。例えば、経糸および緯糸の充填率が50%未満、好ましくは40%未満の目の粗い織地や、経、緯の両辺の長さが共に100cmを超える織地に対しては、内部領域に熱融着性弾性繊維を織り込んで、熱融着させることにより、特に目ずれ防止効果が好適に発揮され得る。
上記織地中の経糸および緯糸の充填率は、下記(1)式で計算した値であり、織組織の粗さを示す。例えば、充填率が100%の場合、織地中で糸は隙間なく織り込まれている。また、充填率が50%の場合、織地の面積の5割が空隙である。なお、糸の直径は、下記(2)式(繊維技術データ集、日本紡績協会発行、改定3版、137頁に記載)で計算した値であり、単糸、双糸、多層構造糸、あるいは異形断面の繊維を円筒形として近似した値を示す。
織地中の糸の充填率(%)={(経糸の直径(cm)×経糸密度(本/2.54cm))/2.54+(緯糸の直径(cm)×緯糸密度(本/2.54cm))/2.54}/2×100…(1)式
糸の直径(cm)={1/(26.2×√(英国式綿番手))}×2.54…(2)式
織地の風合いおよび物性の低下を防止する観点から、内部領域に織り込まれる熱融着性弾性繊維の量は少ないことが好ましい。具体的には、経糸および緯糸として所定の間隔で1本または連続して2本の熱融着性弾性繊維が格子状に織り込まれていることが好ましい。例えば、目の粗い織地、具体的には経糸および緯糸の充填率が50%未満、より具体的には40%未満の織地に対しては、熱融着性弾性繊維が経糸および緯糸としてそれぞれ30cm以下、より好ましくは25cm以下の間隔で織り込まれていることが好ましい。また、例えば、経、緯の両辺の長さが共に100cmを超える織地に対しては、少なくとも経糸または緯糸のいずれか一方として100cm以下の間隔で熱融着性弾性繊維が織り込まれていることが好ましい。
上記熱融着性弾性繊維としては、例えば、1.0倍以上、好ましくは1.0倍を超える伸長倍率および90〜180℃の溶融開始温度を有する任意の適切な熱融着性弾性繊維が用いられ得る。熱融着性弾性繊維の種類としては、熱融着性ポリウレタン弾性繊維、熱融着性ポリエーテルエステル弾性繊維、熱融着性ポリエステル弾性繊維等、およびこれらを含む複合糸が挙げられる。なかでも、熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、ゴムのように柔軟で伸び縮みし、加熱により該繊維同士または他の繊維との接触箇所で融着による変形を生じるが、融着により溶けだして織り込み場所から抜け出ることなく連なっており、融着後も柔軟性を保持しているので好適である。これに対し、融解時に溶けて織り込み場所から抜け出して他の繊維に浸透し、凝固するタイプの熱融着性繊維は、凝固箇所が硬くなる、一部が鋭角的に固まり肌への刺激性が強くなる等の点で好ましくない。また、本発明のような織地の四辺を取り囲む固定枠の働きも生じないので、好ましくない。
上記熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、任意の適切な製造方法によって得られ得る。当該製造方法としては、例えば、ポリオールと過剰モル量のジイソシアネートを反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタン中間重合体を製造し、該中間重合体のイソシアネート基と容易に反応し得る活性水素を有する低分子量ジアミンや低分子量ジオールを不活性な有機溶剤中で反応させポリウレタン溶液(ポリマー溶液)を製造した後、溶剤を除去し糸条に成形する方法や、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンまたは低分子量ジオールとを反応させたポリマーを固化し溶剤に溶解させた後、溶剤を除去し糸条に成形する方法、当該固化したポリマーを溶剤に溶解させることなく加熱により糸条に成形する方法、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させてポリマーを得、該ポリマーを固化することなく糸条に成形する方法、さらには、上記のそれぞれの方法で得られたポリマーまたはポリマー溶液を混合した後、混合ポリマー溶液から溶剤を除去し糸条に成形する方法等がある。好ましくは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとを反応させて得られるポリマー(紡糸用ポリマー)を固化することなく溶融紡糸する方法である。低温で融着しやすく、かつ、耐熱性を有する熱融着性ポリウレタン弾性繊維が得られ得るからである。当該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の製造に用いられ得るポリオール、ジイソシアネート、ジアミン、およびジオールとしては、例えば、特開2011−74516に記載のものが挙げられる。
上記熱融着性弾性繊維は、そのまま単独で使用してもよく、複合糸の形態で使用してもよい。単独で使用する場合は、原糸(未加工糸)、仮撚加工糸、先染糸、原着糸等の任意の形態であり得る。複合糸として使用する場合は、熱融着性弾性繊維を芯糸として、周囲を非熱融着性繊維で被覆したカバリングヤーン、熱融着性弾性繊維と非熱融着性繊維とを合撚した合撚糸、エア交絡糸等の形態であり得る。熱融着性弾性繊維の被覆率が低いほど熱融着性弾性繊維相互の接する度合いが増加することから、熱融着性を高める観点からは、単独で、例えば原糸(未加工糸)で使用することが好ましい。一方、原糸(未加工糸)専用の送り出し装置が不要であること、生地の伸度コントロールがし易いこと、生地の引裂強力を高めること等の観点からは、複合糸の形態で使用することが好ましい。複合糸の中でも、複合糸の中心に熱融着性弾性繊維を配置することができ、また熱融着性弾性繊維の被覆度のコントロールが容易で、均一に被覆できることから、カバリングヤーンを用いることが好適である。
単独で使用する場合の熱融着性弾性繊維の繊度は、用途に応じて任意の適切な繊度に設定される。熱融着性ポリウレタン弾性繊維の場合は、代表的には11〜2400dtexである。表面積が大きいほど、熱融着する面積が大きいことから、22dtex以上が好ましく、より好ましくは33dtex以上、さらに好ましくは44dtex以上である。2400dtexより太くなると、製品によってはゴムのような感触に近づいたり、繊維の生産性が低下する場合がある。
複合糸の形態で使用する場合、上記非熱融着性繊維としては特に制限は無く、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化学合成繊維等からなる糸を使用することができる。なかでも、長繊維ではナイロンまたはポリエステルが好ましく、短繊維では綿を50質量%以上含む繊維が好ましい。これらの繊維は、製織性、複合糸の製造のしやすさ、風合い等の点に優れるからである。特に、綿糸を用いて地組織を製織し、複合糸の非熱融着性繊維を綿100%の糸とする場合、織地中の天然繊維の含有率を高めることができるので、風合い等の点から好ましい。なお、本発明においては、熱融着性弾性繊維を複合糸の形態で用いる場合、該複合糸が相互に熱融着している状態(例えば、一方の複合糸中の熱融着性弾性繊維と他方の複合糸中の熱融着性弾性繊維とが、これらの接触箇所(例えば、複合糸の交差部および線接触箇所)において相互に熱融着している状態、一方の複合糸中の熱融着性弾性繊維と他方の複合糸中の非熱融着性繊維とが、これらの接触箇所において相互に熱融着している状態、およびその組み合わせの状態)であれば、熱融着性弾性繊維が相互に熱融着していると判断するものとする。一方の複合糸中の熱融着性弾性繊維と他方の複合糸中の非熱融着性繊維とが熱融着している状態においては、一方の複合糸中の熱融着性弾性繊維が、他方の複合糸中の非熱融着性繊維を埋め込むように変形し、これらを固定した状態であり得、これにより、ほつれ、目ずれ、変形等の抑制効果が好適に発揮され得る。
上記カバリングヤーンとしては、SCY(シングルカバリングヤーンまたはシングルカバードヤーン)またはDCY(ダブルカバリングヤーンまたはダブルカバードヤーン)があるが、熱融着性弾性繊維の被覆率のコントロールが容易であり、均一に被覆できること、および、熱融着性弾性繊維の被覆率が低いほど、熱融着性弾性繊維相互の接点が増し、熱融着箇所が増加することからSCYの使用がより好ましい。
熱融着性ポリウレタン弾性繊維をSCYの芯糸に用いる場合、当該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の繊度は、繊維の生産性、熱融着性、製織性、所望の用途に応じた物性および触感等、の観点から、好ましくは11〜2400dtex、より好ましくは22〜2400dtexである。
SCYの芯糸に用いられる熱融着性ポリウレタン弾性繊維の伸長倍率は、好ましくは1.0〜3.0倍、より好ましくは1.0〜2.3倍である。鞘糸に長繊維を使用した場合は、さらに好ましくは1.0〜1.8倍である。鞘糸に短繊維を使用した場合は、さらに好ましくは1.0〜1.5倍である。伸長倍率が低すぎると、例えば、SCY製造中に熱融着性ポリウレタン弾性繊維の巻取体からの該弾性繊維の解舒性が悪くなり、その結果、断糸したり、できあがりのSCYの伸長性にばらつきが生じる場合がある。一方、倍率が高すぎると、織り込む段階で、例えば経糸として用いる場合、テンション変動が激しく、製織性が低下する場合がある。さらには、織り込んだ箇所の生地の収縮が大きくなる等の問題が生じる場合がある。
SCYの鞘糸に用いる非熱融着性繊維の繊度は、熱融着性、製織性、所望の用途に応じた物性および触感等の観点から、適切に設定され得る。鞘糸が長繊維である場合、その繊度は、好ましくは11〜156dtex、より好ましくは33〜156dtex、さらに好ましくは44〜156dtexであり、フィラメント数は、好ましくは1〜100、より好ましくは10〜46である。また、鞘糸が短繊維である場合、その繊度は、好ましくは89dtex(英国式綿番手60番手)〜1063dtex(英国式綿番手5番手)である。引裂強力が低い織地を用いた織物製品は、端部を縫製することで端部の引裂強力を向上させ得るが、無縫製のまま使用する場合には引裂強力の低下が大きな問題になる場合がある。これに対し、本発明では、このような鞘糸を用いることにより、織地の端部の引裂強力を750cN超とすることができる。このような引裂強力であれば、使用または洗濯を繰り返しても該端部領域での破れや裂けの発生が防止され得る。
SCYの鞘糸の撚り数は、好ましくは100〜2100T/m、より好ましくは100〜1400T/mである。撚り数が低すぎると、製織性の低下等の問題が生じる場合がある。一方、撚り数が高すぎると、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が高くなり、熱融着しにくくなる場合がある。
SCY中の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率は、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%、さらに好ましくは50〜90質量%である。混率が低すぎると、熱融着箇所が少なくなるので、目ずれ低減、ほつれ防止等の効果が弱くなる場合がある。混率が高すぎると、熱融着効果は十分となるが、製織性の低下、織り込み箇所の生地収縮が大きくなる、得られる織物製品の引裂強力が低下する等の問題が生じる場合がある。
SCY中の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率は、好ましくは1%以上であり、また、好ましくは22%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは18%以下である。被覆率が低すぎると熱融着効果は十分となるが、製織性の低下、織り込み箇所の生地収縮が大きくなる、得られる織物製品の引裂強力が低下する等の問題が生じる場合がある。被覆率が高すぎると、熱融着が不十分となって、ほつれ防止、目ずれ低減等の効果が弱くなる場合がある。
なお、上記カバリングヤーン中の熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率は、下記(3)式で計算した値であり、上記カバリングヤーンの被覆率は下記(4)式で計算した値である。
ポリウレタン弾性繊維の混率(%)=(PU/DR)/((PU/DR)+D)×100…(3)式
C = (0.012 × √ D × T / ( 1000/ D R ) ) ×100…(4)式
ここで、Cは被覆率(%)を、PUは熱融着ポリウレタン弾性繊維の繊度(デシテックス)を、Dは熱融着性ポリウレタン弾性繊維の周囲に被覆される非熱融着性繊維の繊度(デシテックス)を、Tは撚糸時の撚り数(T/m)を、DRはカバリングまたは撚糸時のポリウレタン弾性繊維の伸長倍率(倍)を示す。
好ましいSCYの具体例としては、鞘糸が長繊維であって、その繊度が33〜156dtexであり、芯糸が熱融着性ポリウレタン弾性繊維であって、その繊度が33〜2400dtexであり、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が2.1〜8.1%であるSCY;鞘糸が長繊維であって、その繊度が44〜156dtexであり、芯糸が熱融着性ポリウレタン弾性繊維であって、その繊度が44〜2400dtexであり、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が2.4〜8.1%であるSCY;鞘糸が短繊維であって、その繊度が89〜1063dtexであり、芯糸が熱融着性ポリウレタン弾性繊維であって、その繊度が89〜2400dtexであり、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が3.4〜17.6%であるSCY;が挙げられる。なお、鞘糸が短繊維の場合には、熱融着性ポリウレタン弾性繊維の繊度が2400dtexを超えても所定の性能が発揮され得るが、該繊維の生産性が低下する場合がある。
上記熱融着性弾性繊維が、熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含む合撚糸である場合、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の伸長倍率は、好ましくは1.1〜3.0倍である。また、撚り数は、好ましくは100〜2500T/mである。撚り数が100T/mよりも低いと、製織安定性が低下する場合があり、2500T/mよりも高いと、芯糸の被覆率が高くなり、熱融着しにくくなる場合がある。
上記熱融着性弾性繊維が、熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含むエア交絡糸である場合、該熱融着性ポリウレタン弾性繊維の伸長倍率は、好ましくは1.1〜3.0倍である。また、交絡数は、好ましくは30〜150個/mである。交絡数が30個/m未満であると、製織安定性が低下する場合があり、150個/mよりも多いと、使用される熱融着性ポリウレタン弾性繊維の被覆率が高くなり、熱融着が不十分となる場合がある。
本発明においては、上記熱融着性弾性繊維として、熱融着性コンジュゲートヤーンを用いることもできる。熱融着性コンジュゲートヤーンは、融点の異なる2成分を複合紡糸して得られる繊維であり、熱処理することにより、その低融点成分の融着により繊維交差点を固定化することが可能である。熱融着性コンジュゲートヤーンとしては、例えば、結晶性ポリプロピレンとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートと共重合体ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンとポリプロピレン、ポリウレタンとポリアミドエラストマー等の組み合わせのものが知られている。
上記熱融着性コンジュゲートヤーンの原料としては、任意の適切な熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコール等をブロック共重合したポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられ得る。
上記織地における上記熱融着性弾性繊維の含有率は、例えば、0.01質量%〜3.0質量%、好ましくは0.5質量%〜3.0質量%である。
《A−4.熱融着性樹脂》
本発明においては、必要に応じて、上記織地の一部に熱融着性樹脂が熱融着していてもよい。熱融着性樹脂が織地に熱融着していることにより、ほつれ、目ずれ、変形等がより好適に抑制され得る。熱融着性樹脂を熱融着させる位置としては、上記織地の各辺の端部領域であってもよく、内部領域であってもよく、その両方であってもよい。
上記熱融着性樹脂としては、一般にホットメルト樹脂として用いられるものであれば、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、上記織地との接着力が4.9N以上、より好ましくは6.8N以上である樹脂である。接着力が4.9N未満であると、使用中に剥離する場合がある。好ましい樹脂の具体例としては、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系ホットメルト樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂等の反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は適度の伸縮性を備えているので、伸縮性に優れた織物製品が得られ得る。なかでも、ポリウレタン系ホットメルト樹脂を用いることが好ましい。
上記ホットメルト樹脂の溶融開始温度は、90℃〜150℃が好ましい。温度が90℃未満であると、製品の仕上げ加工前(ハンカチの場合は、糊抜き、精練、および漂白工程)で溶融する可能性があるので、取り扱いが難しくなるおそれがある。また、150℃より高い場合は、生地そのものにダメージを与え、風合いを損なうおそれがある。
上記織地における熱融着性樹脂の含有率は、好ましくは0.5質量%〜3.0質量%である。
《A−5.架橋処理》
本発明の織物製品においては、上記織地中のセルロース系繊維は架橋剤によって架橋されていてもよい。セルロース系繊維が架橋されることにより、目ずれおよび変形がより一層抑制され得るとともに、防しわ性およびウォッシュアンドウェアー性(以下、「W&W性」と称する場合がある)に優れた織物製品が得られ得る。
上記架橋剤とは、セルロースの水酸基と反応し、セルロース系繊維間に架橋結合を形成させる化合物を意味し、本発明においては、セルロースの水酸基と反応し、セルロース系繊維間に架橋を生成するものであれば任意の化合物を使用することがきる。
上記化合物としては、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基および水酸基のいずれかを含む化合物が挙げられる。具体的には、尿素・ホルムアルデヒド化合物(例えば、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、尿素誘導体)、メラミン・ホルムアルデヒド化合物(例えば、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン誘導体)、環状尿素化合物(例えば、環状尿素型樹脂、エチレン尿素誘導体、ブチレン尿素誘導体)、アルキル・カーバメート化合物(例えば、アルキル・カーバメート樹脂)、アセタール化合物(例えば、アセタール樹脂)、エポキシ化合物(例えば、エポキシ樹脂)、オルガノオキシ基または水酸基含有シリコーン化合物(例えば、シリコーン樹脂、シリコーンゾル)、カルボン酸化合物、ポリカルボン酸、スルフォン化合物、第4級アンモニウム塩、1,3−ジクロロ−2−プロパノール誘導体、N−メチロールアクリルアミド等の化合物が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を混合して用いられ得る。これらのなかでも、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、エポキシ化合物、オルガノオキシ基または水酸基含有シリコーン化合物、ポリカルボン酸が、効果、物性、反応性、経済性等の点で好ましい。さらにこれらの中でも、エチレン尿素型の環状尿素化合物がより好ましい。
上記尿素誘導体としては、尿素、モノメチロール尿素、ジメチロール尿素等の公知のものを使用することができる。
上記メラミン誘導体としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基等を含むものが好ましく、その一例として、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−メチル化メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−エチル化メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−メチル化エチロールメラミン等が挙げられる。これらの中で、ホルマリンの低減の為には、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基を含むものやメラミンとジメトキシエタナールとの反応物等の使用が効果的である。
上記環状尿素化合物としては、具体的にはジメチロールエチレン尿素、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等があげられる。これらの中では、エチレン尿素タイプが反応性や価格の点で好ましく、ホルマリン低減の為には、メチロール基の一部または全部をメトキシ化、エトキシ化したもの、あるいは、低ホル型と呼ばれるジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等の使用が有効である。
上記オルガノオキシ基または水酸基含有シリコーン化合物としては、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリエチルブトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルプロポキシシラン、トリプロピルブトキシシラン、トリフェニルヒドロキシシラン等およびこれらの(部分)加水分解縮合物が挙げられ、上記オルガノオキシシラン化合物を1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらのなかでも特に架橋構造を形成する上でメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシランおよびテトラオルガノキシシランが好ましく用いられるが、一官能性や二官能性のシラン化合物もセルロース系繊維と反応させることができるため、本発明においては一乃至四官能性のシラン化合物のいずれも使用することができる。
上記ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等の脂環式ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等の脂肪族トリカルボン酸;ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等の脂肪族テトラカルボン酸;ジエチレントリアミン五酢酸等の脂肪族ペンタカルボン酸;トリエチレンテトラミン六酢酸等の脂肪族ヘキサカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(または無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等のカルボン酸ポリマーが挙げられる。なかでも、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等の水溶性のポリカルボン酸が、均一に処理しやすく、作業もしやすいので、好ましく使用され得る。
上記エポキシ化合物としては、分子中に2個以上の反応性官能基を有するものが好ましく、当該反応性官能基はグリシジルエーテル基またはクロルヒドリン基であることが好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエチレングリコール系や、プロピレングリコールジグリシジルエーテル,ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のプロピレングリコール系の分子中に2個の官能基を有するもの、グリセロールグリシジルエーテル等の3個以上の官能基を持つエポキシ系架橋剤等が挙げられる。また、エポキシ変性シリコーンとして、セルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つシリコーン誘導体も使用することができる。エポキシ基にはグリシジルタイプのものと脂環式タイプのものとがあるが、いずれのタイプでも構わない。これらは単独でも混合系で使用しても構わない。
上記架橋剤のなかでも、メラミン誘導体、エチレン尿素型の環状尿素化合物、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシランおよびテトラオルガノキシシラン、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、ならびにセルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つ化合物を好適に用いることができる。
上記架橋処理においては、上記架橋剤を水等に溶解または分散させた架橋処理液として用いることが好ましい。当該架橋処理液中の架橋剤の濃度は、好ましくは0.5〜80質量%、より好ましくは0.5〜50質量%である。
上記架橋処理液には、上記架橋剤とセルロースとの反応性を高め、架橋処理を迅速に行うために触媒を添加することができる。当該触媒としては、通常、セルロース系繊維の樹脂加工に用いられる触媒であれば特に限定されず、尿素誘導体;メラミン誘導体;環状尿素化合物;エポキシ化合物;シリコーン化合物;アルキルカーバメート樹脂;ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化ナトリウム、ホウ弗化カリウム、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、ホウ酸等の無機酸;等が挙げられる。これらの触媒には、必要に応じて、助触媒としてクエン酸、酒石酸、林檎酸、マレイン酸等の有機酸等を併用することもできる。
上記触媒の使用量は、上記架橋剤に対して0.01〜400質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜300質量%である。触媒の使用量が0.01質量%未満であると、反応収率が低下して架橋量が少なくなり、効果が不足する場合がある。一方、触媒の使用量が400質量%を超えると、セルロース系繊維の酸分解等により繊維の強度が低下したり、変色の原因になる場合がある。
上記架橋処理液には、必要に応じて、セルロースと架橋剤との反応を円滑に進めるための助剤を添加することができる。助剤は、架橋剤とセルロースの反応を促進させたり、架橋生成反応においても反応を均一に進めるといった反応溶媒としての作用、更にはセルロースを膨潤させる作用等を有するものである。当該助剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジメチルホルムアミド、モルホリン、2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上記助剤の使用量は、架橋剤に対して1〜400質量%が好ましく、より好ましくは5〜300質量%である。助剤の使用量が1質量%未満であると、反応を円滑にする効果が不十分となる場合がある。一方、助剤の使用量が400質量%を超えると、セルロースの脆化を招いたり、架橋処理後に生地から助剤を除去することが煩雑になる場合がある。
上記架橋処理液には、上述の成分の他に、必要に応じて、風合い調整用の柔軟剤や、遊離ホルマリン濃度低減のためのホルマリンキャッチャー、浸透剤としての界面活性剤等を添加することもできる。メラミン誘導体や環状尿素型樹脂等のホルマリンを発生するおそれのあるものはホルマリンキャッチャー剤との併用が、架橋セルロースが硬くなることで引裂強力や引張強度が低下する場合は柔軟剤の併用が、架橋処理液の生地への浸透性が低い場合は浸透剤の併用が好ましい。なお、本発明の織物製品中の残留ホルマリンは、75ppm以下が好ましい。75ppmを超えると使用時に皮膚刺激を引き起こす恐れがある。
上記架橋処理液のpHは、通常1〜6、好ましくは2〜5の範囲内に調整され得る。このような範囲内であれば、セルロースの加水分解による繊維強度の低下や変色を防止することができる。pHは、任意の適切なpH調整剤によって調整され得る。
上記架橋処理は、代表的には、上記架橋剤等を含む架橋処理液を処理する生地に付着させ、次いで、熱処理することによって行われ得る。生地に架橋処理液を付着させる方法としては、通常のパッド・ドライ法、浸漬法、含浸法、印捺法、インクジェット印刷法、レーザープリンター印刷法、塗布法、噴霧法等の公知の方法を採用することができる。例えば、生地全体を処理する場合は、パッド・ドライ法が効率的で好ましい。製品全域を処理する場合は、浸漬法や噴霧法によって手軽に実施できる。製品の一部を処理する場合は、噴霧法が効率的である。例えば、架橋処理しない部分を所望の形状をしたマスキング等で覆い、その上から生地全体に架橋処理液を噴霧することで、マスキングした部分以外に処理液を付着させることができる。また、所望の形状に型抜きしたシート等を生地の上にセットし、型抜きされた部分だけに処理液を噴霧して付着させることもできる。インクジェット印刷方式等で精巧な柄を形成する場合、液の滲み、濃度むら等のない鮮明な図柄を得る目的で、上記処理液に、公知の増粘剤、浸透剤、粘着剤、カチオン処理剤等を添加することができる。
本発明の織物製品における架橋剤の付着量は、織地の質量に対して、0.3〜25質量%が好ましい。付着量が0.3質量%未満であると、防しわ性およびW&W性が十分に得られない場合がある。また、付着量が25質量%を超えると、架橋セルロース繊維の破断強度および引裂強力が大きく低下する場合がある。ただし、セルロース系繊維の種類等を選択することにより物性(引張強度、引裂強力、破裂強力等)を高めることができる場合は、架橋剤の付着量を多くすることもできる。例えば、中繊維綿からなる綿糸に代えて、長繊維綿、超長綿または超・超長綿を含む綿糸を一部あるいは全部使用すると破裂強力、引張強度および引裂強力の向上に効果がある。
上記熱処理は、ピンテンター、スチームセッター、オーブン、ベーキング機等の加熱手段を用いて、好ましくは70〜220℃、より好ましくは80〜180℃で、好ましくは0.5〜60分間、より好ましくは1〜40分間の熱処理条件で行われ得る。このような条件であれば、セルロース繊維や架橋セルロース繊維を脆化させることなく、十分な架橋量が得られ得る。
《B.織物製品の製造方法》
1つの好ましい実施形態において、本発明の織物製品は、
セルロース繊維を50質量%以上含み、英式綿番手が5番手〜100番手であるセルロース系繊維を50〜200本/インチの経糸密度および緯糸密度で含み、かつ、四辺の各端部に経糸または緯糸として2本以上の熱融着性弾性繊維を含む織地を製織すること(製織工程)、および
得られた織地を熱処理して、該熱融着性弾性繊維を相互に熱融着させること(融着工程)
を含む製造方法(製造方法1)によって得られ得る。
上記製造方法1は、必要に応じて、A−5項に記載の架橋処理工程をさらに含み得る。また、上記織地には、毛焼、精練、漂白、シルケット加工等の公知の加工処理、染色またはプリント加工処理等を施してもよい。
また、上記製造方法1は、織地を所望の寸法に裁断すること(裁断工程)、ほつれ防止のために織地の端部の少なくとも一部を縫製すること(縫製工程)等を含んでもよい。裁断工程を融着工程の後に行い、熱融着した熱融着性弾性繊維上を裁断する場合、裁断部のほつれが防止されるので、縫製工程が不要になるという利点がある。
上記製織工程においては、必要に応じて、織地の内部領域に経糸または緯糸の少なくとも一方として熱融着性弾性繊維を織り込んでもよい。
上記融着工程においては、必要に応じて、織地の所望の位置に熱融着性樹脂を配置した状態で熱処理を行ってもよい。この場合、熱融着性樹脂は、代表的には、熱融着性樹脂フィルムまたは熱融着性樹脂層を備えた熱融着性テープの形態で用いられる。織地の端部領域に熱融着性樹脂を融着させる場合、織地の一方の面の端部領域に熱融着性テープを熱融着させてもよいし、端部を所定幅折り返して、該折り返し部の織地の間に熱融着性樹脂フィルムを挟んで熱融着させてもよい。
上記融着工程における熱処理条件は、用いる熱融着性弾性繊維または熱融着性樹脂の種類等に応じて適切に設定され得る。必要に応じて、加圧してもよい。また、融着工程は複数回行ってもよい。例えば、上述の架橋処理工程において熱融着性弾性繊維の溶融開始温度以上の温度が適用される場合、該架橋処理工程は融着工程でもある。
上記熱処理における加熱温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃である。また、加熱時間(融着工程が複数回行われる場合は合計時間)は、好ましくは0.5〜150分、より好ましくは0.5〜120分である。
別の好ましい実施形態においては、本発明の織物製品は、
セルロース繊維を50質量%以上含み、英式綿番手が5番手〜100番手であるセルロース系繊維を50〜200本/インチの経糸密度および緯糸密度で含む複数の地組織部を有し、四辺の各端部に経糸または緯糸として2本以上の熱融着性弾性繊維を含む織地であって、該複数の地組織部が経糸および/または緯糸として隣接するように織り込まれた4本以上の熱融着性弾性繊維によって区切られている織地を製織すること(製織工程)、
得られた織地を熱処理して、該熱融着性弾性繊維を相互に熱融着させること(融着工程)、および
該地組織部を区切る熱融着性弾性繊維上を裁断して、四辺の各端部に経糸または緯糸として2本以上の熱融着性弾性繊維を含む複数枚の織地を得ること(裁断工程)
を含む製造方法(製造方法2)によって得られ得る。該製造方法2によれば、大面積で上記織地を製織および熱処理した後に、熱融着した熱融着性弾性繊維上を裁断することにより、四辺の各端部に経糸または緯糸として2本以上の相互に熱融着した熱融着性弾性繊維を含む織地を一度に複数枚得ることができる。該織地の四隅部の各々においては、該2本以上の経糸の該熱融着性弾性繊維と該2本以上の緯糸の該熱融着性弾性繊維とが、少なくとも1つの格子を形成するように交差し、該交差部において相互に熱融着している。このような織地は、無縫製のままで製品とすることができるので、当該製造方法2は、生産性に非常に優れるという利点がある。
上記製造方法2は、必要に応じて、A−5項に記載の架橋処理工程をさらに含み得る。また、上記織地には、毛焼、精練、漂白、シルケット加工等の公知の加工処理、染色またはプリント加工処理等を施してもよい。また、ほつれ防止のために、裁断後の織地の端部の少なくとも一部を縫製すること(縫製工程)等を含んでもよい。
上記製造方法2の製織工程においては、裁断不良の問題および裁断効率の観点から、地組織部を区切る熱融着性弾性繊維を好ましくは6〜100本、より好ましくは10〜80本、さらに好ましくは20本〜60本隣接するように織り込むことが好ましい。また、地組織部には経糸および/または緯糸として1本以上の熱融着性弾性繊維を織り込んでもよい。融着工程の熱処理条件については、上記製造方法1について記載したとおりである。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例で用いられる測定方法および評価方法は以下の通りである。
[目ずれ評価試験]
図3を用いて目ずれ評価試験の具体的な方法を説明する。評価する生地1を経方向の長さが1mとなるように切断し、任意の一方の耳端部における緯糸2に印(a点)をつける。該a点から生地1の経方向に対しての垂線をもう一方の耳端部まで直線で結ぶ。その直線の長さ(生地の全幅)をAcmとする。一方、上記の緯糸2が上記垂線から最も外れる距離(垂直距離)をBcmとする。これらを下記式に代入して目ずれ度を算出する。3回(3か所)測定の平均値と目ずれ度とする。なお、生地がハンカチ用途である場合、生地の全幅Aを30〜50cmとして評価した。
目ずれ度(%) = B / A × 100
[洗濯耐久性評価試験]
経10〜250cm×緯10〜150cmの織物製品サンプル(1〜5枚)を、家庭用2槽式洗濯機(TOSHIBA(株)製 AW-60SDF(W))を使用して下記条件にて洗濯および乾燥を5回行った。
洗濯(5分)→遠心脱水(3分)→注水すすぎ(2分)→遠心脱水(3分)→注水すすぎ(2分)→遠心脱水(3分)→タンブル乾燥(30分)
液温は、洗い時が40℃、すすぎ時が30℃であった。水流は強水流であった。洗剤はライオン(株)製の商品名「(登録商標)トップ」を使用した。水量は23リットルであった。洗濯水1リットルに対して洗剤1.3gを使用した。織物製品サンプルと負荷布の重量をあわせて、0.8kgになるように負荷布の重量を定めて、織物製品サンプルと負荷布を一緒に洗濯した。
5回の洗濯および乾燥後の織物製品サンプルの端部のほつれ程度を観察し、下記の4段階で評価した。なお、△および×は、使用をためらう程度の傷みであり、◎または○が洗濯耐久性の点で好ましい。
〈評価基準〉
◎(4点):傷みが認められない
○(3点):やや傷みが認められる
△(2点):傷みが認められる
×(1点):傷みが激しい
[生地の引裂強力(cN)]
JIS L−1096 D法(ペンジュラム法)に準拠して測定した。具体的には、試料の大ききに応じて以下の2つの方法で測定した。なお、以下の測定方法は緯方向の引裂強力の測定方法であるが、経方向の引裂強力は、試験片の長辺を緯方向とすること以外は同様にして測定できる。経方向および緯方向の引裂強力のうち、より低い値を物性評価に用いた。
(i)通常サイズ
経10cm×緯6.3cmの試験片をそれぞれ3枚以上採取した。エレメンドルフ形引裂強さ試験機を用い、両つかみの中央で該試験片の長辺のほぼ中央に該辺と直角に鋭利な刃によって2cmの切れ目を入れ、残りの4.3cm分の経糸が引裂かれたときに示す荷重(cN)を測定した。平均値を生地の緯方向の引裂強力とした。
(ii)小サイズ
試験片の大きさが経10cm×緯3.0cmであること、および、該試験片の長辺のほぼ中央に該辺と直角に鋭利な刃によって1cmの切れ目を入れ、残りの2.0cm分の経糸が引裂かれたときに示す荷重(cN)を測定した以外は上記(i)と同様にして生地の緯方向の引裂強力を求めた。
[生地中の残留ホルマリン(ppm)]
JIS L−1041 アセチルアセトン B法に準拠して測定した。具体的には、次のとおりである。測定する生地を1cm角に切って、三角フラスコに入れ、その上に蒸留水100ccを加えて、40℃の高温槽に1時間浸漬した。その後、ガラスフィルターで濾過し、得られたろ液を5ml採取し、2,4−ペンタジオン(アセチルアセトン)試薬を5ml加えて撹拌した。得られた混合液を40℃の恒温槽に30分間浸漬した。分光光度計で混合液の吸光度を測定して、ブランクとの差から残留ホルマリン量を求めた。
[W&W性評価試験]
JIS L―1096 洗濯後のしわ A法に準じて、洗濯を実施した。脱水後はタンブル乾燥を実施した。試験点数は1点とした。W&W性の判定者は1名として、レプリカ(AATCC TEST METHOD 124にて規定)と比較して判定した。判定標準間は0.1級刻みで評価した。例えば、等級3.0から等級3.5の場合、3.1級と3.2級、3.3級、3.4級、3.5級とした。なお、一般に、W&W性が3.0級以上であれば、織物製品のしわが少なくなり、3.2級以上であればさらにしわが目立ちにくくなり、さらに3.5級以上とすると、アイロン掛けをしなくても安心してそのまま使用できるレベルとされている。
[実施例1]
経糸として英国式綿番手綿40番手(40番単糸、綿100%)、緯糸として英国式綿番手綿32番手(64番双糸の精紡交撚糸、綿100%)を用い、経糸120本/インチ、緯糸70本/インチ、2/2綾織組織(織地中の糸の充填率は58%)で製織した織地の各辺の端部に2本のSCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−LLタイプ(繊度156dtex4フィラメント、伸長倍率1.3倍)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度78dtex46フィラメント、黒色先染糸、撚り数300T/m)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率61%、被覆率4.1%である)を織り込んで、30cm四方のハンカチ生地とした。
次に、該生地を製織密度(経糸120本/インチ、緯糸70本/インチ)になるように伸長しつつテンターでセットし、130℃で1分間処理することにより、1回目の熱処理を行った。その後、糊抜(ビーカーで酵素糊抜き剤と精練剤で30分処理)、乾燥の順で処理した。続いて、当該生地を1回目の熱処理と同様の伸長条件にしてテンターでセットして、150℃で4分間乾熱処理することにより、2回目の熱処理を行った。SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの交差部においてこの時点で完全に熱融着し、該交差部の境界が消失する程度に融着した。
さらに、該生地を架橋処理液(水70質量部、架橋剤として下記式(1)のジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(固形分濃度60質量%)16質量部、触媒として固形分濃度20質量%の塩化マグネシウムの水溶液3質量部、ホルマリンキャッチャー剤として大日本インキ化学工業(株)製、製品名「ファインテックスFC−KP」3質量部、柔軟剤として大日本インキ化学工業(株)製、製品名「ファインテックスPE−140−E」3質量部、および日華化学(株)製、製品名「AMC−800E」5質量部)を付与したパッダーに浸漬し、マングルでパッドオン率(生地中に含まれる架橋処理液重量/架橋処理液付与前の生地の重量×100)65%として絞った後、架橋反応させた。条件は、上記1回目の熱処理と同様の伸長条件で、155℃設定のピンテンターで4分間処理とした。この段階で、セルロース繊維とセルロース架橋剤とが反応した。加工後の生地中のSCYは、芯糸と鞘糸、および、芯糸と綿糸の交差部で芯糸が大きく変形し、鞘糸および綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれた。糸相互の境界面は存在し一体化していないので鞘糸および綿糸を芯糸から手で引き剥がすことはできるが、芯糸には大きな熱融着痕(埋没跡)が生じており、芯糸と芯糸、芯糸と該芯糸の鞘糸、芯糸と他のSCYの鞘糸、芯糸と綿糸の接触交差部における熱融着により優れたほつれ防止機能が生じていることがわかる。
その後、SCYを織り込んだ箇所の外側に沿って経緯共にはさみで裁断し、これにより、SCYが経方向に0.21mmのピッチで2本配置され、緯方向に0.37mmのピッチで2本配置され、各隅部において該SCYが4箇所で格子状に交差および熱融着している織地からなる、裁断したままの無縫製の織物製品(ハンカチ)を得た。
[実施例2]
経糸および緯糸として英国式綿番手綿60番手(60番単糸、綿100%、先染め糸使用)を用い、経糸133本/インチ、緯糸78本/インチ、5枚サテン(朱子織)組織(織地中の糸の充填率は51%)で製織した地組織を囲むように、経緯共に51cm毎に幅10mmにわたりSCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−LLタイプ(繊度156dtex4フィラメント、伸長倍率1.3倍、黒の原着糸)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度78dtex24フィラメント、撚り数300T/m)であり、熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率61%、被覆率4.1%であり、黒の原着糸は糸の質量に対し、0.2%カーボンブラックを練りこんで得た)を、経糸52本/10mm幅、緯糸30本/10mm幅で織り込み、緯方向に2枚のハンカチが採取できる生地を得た。
続いて、当該生地を、毛焼き、糊抜・精練(液流加工機で酵素糊抜き剤と精練剤で20分処理)、乾燥、シルケットの順で処理した。
次に、当該生地の幅(測定値42インチ)を織上幅45インチに幅出しするために、経糸を133本/インチおよび緯糸を78本/インチの伸長状態でテンターにセットして、155℃で6分間乾熱処理した。これにより、SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの交差部においてこの時点で完全に熱融着し、該交差部の境界が消失する程度に融着した。
続いて、155℃で4分間の熱処理を行った。その後、SCYを織り込んだ箇所の中央を経緯共にはさみで裁断し、これにより、SCYが経方向には中心距離が0.19mmの間隔で26本配置され、緯方向には中心距離が0.33mmの間隔で15本配置され、各隅部においてSCYが390箇所で交差および熱融着している織地からなる、裁断したままの無縫製の織物製品(ハンカチ、緯共に52cm)を得た。また、該ハンカチにおいては、SCY中の芯糸と鞘糸、および、芯糸と綿糸との交差部で芯糸が大きく変形し、鞘糸および綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれていた。
[比較例1]
SCYを使用しないこと以外は実施例1と同様にして、裁断したままの無縫製のハンカチを得た。
[比較例2]
各端部に織り込むSCYの本数を1本としたこと以外は実施例1と同様にして、裁断したままの無縫製のハンカチを得た。
[比較例3]
実施例1で得たハンカチの四隅をはさみで斜めに切り落とすことにより、四隅部の各々に熱融着性弾性繊維の交差部を有さないハンカチを得た。
[比較例4]
SCYを使用しないこと以外は実施例2と同様にして、裁断したままの無縫製のハンカチを得た。
[比較例5]
SCYを使用しないこと、および、はさみで裁断した後、四辺の裁断部を三ツ巻で縫製(縫製条件:折り込み幅2mm、運針11/2.54cm、縫製糸は英国式綿番手綿糸50番手を使用)したこと以外は実施例2と同様にして、端部に縫製を施したハンカチを得た。
上記実施例1〜2および比較例1〜5で得たハンカチの各種特性を評価した。結果を表1および表2に示す。なお、端部の引裂強力とは、ハンカチの緯方向の端部を含む領域を上述のとおり所定の大きさで裁断して試料とし、該端部に向かって引裂いた場合の引裂強力である。
表1および表2に示されるとおり、本発明のハンカチは、洗濯後の傷み、ほつれ等が少なく、無縫製であっても十分使用できるものであり、目ずれ度も4%以下にまで低減されていた。また、吸水性および手触り等の風合いにも優れていた。さらに、W&W性は3級以上であった。一方、熱融着性弾性繊維を使用しなかった比較例1および4のハンカチでは、目ずれが大きく、また、洗濯耐久性が大きく劣るので、実用できるレベルではなかった。比較例5のハンカチは、端部にほつれ止めの縫製がなされているので、洗濯耐久性には問題が無かったが、目ずれが依然として大きく、審美性に欠ける結果であった。比較例2のハンカチでは、洗濯中に経方向(経糸)のSCYが脱落し、ほつれ防止効果を消失した。比較例3では、洗濯後もSCYは残っていたが、目ずれが大きい結果となった。また、実施例1および2のハンカチの端部の引裂強力は、内部領域の引裂強力を上回り、実施例2では縫製した比較例5のハンカチと同等以上である。以上のとおり、熱融着性弾性繊維を特定の部分に用いた本発明のハンカチは、全体的に生地が柔らかく、風合いが良好でありながら、ほつれおよび目ずれが少なく、無縫製であっても十分使用可能な機械的物性を備えていた。
[実施例3]
SCYの種類を変更して、SCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−LLタイプ(繊度110dtex4フィラメント、伸長倍率2.3倍)であり、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度13dtex5フィラメント、撚り数600T/m)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率79%、被覆率6.0%である)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、裁断したままの無縫製の織物製品(ハンカチ)を得た。
上記のようにして得られたハンカチの目ずれ度は0.7%であり、W&W性は3.5級であり、洗濯耐久試験は4点であった。また、実施例1と同様にして端部の引裂強力(小サイズ、緯方向)を測定したところ、約300cNであった。
[実施例4]
織り込んだSCY中の熱融着性の芯糸を完全に熱融着させた段階(1回目の熱処理後の段階)の実施例2の生地を用いて、実施例1と同様の架橋処理液を付与したパッダーに該生地を浸漬し、マングルでパッドオン率65%として絞った後、乾燥させた。乾燥は、該生地の幅を45インチにセットした状態で、100℃設定のピンテンターで2分間処理することによって行った。
次に、SCYを織り込んだ箇所の中央を経緯共にはさみでハンカチサイズに裁断した後、四つ折りにして折り目を形成した状態でピンテンターにセットし、155℃で4分間熱処理した。これにより、セルロース繊維とセルロース架橋剤を反応させ、洗濯耐久性の高いプリーツを持った、裁断したままの無縫製の織物製品(ハンカチ、経緯共に52cm)を得た。
上記のようにして得られたハンカチの目ずれ度は1.9%であり、W&W性は3.5級であり、洗濯耐久試験は4点であった。該ハンカチは、洗濯によるしわや目ずれが極めて少なく、アイロンなしでそのまま使用でき、しかも耐久性プリーツを有する無縫製ハンカチであった。なお、該ハンカチの残留ホルマリン値は32ppmであった。
[実施例5]
経糸として英国式綿番手綿20番手(40番双糸、綿100%)、緯糸として英国式綿番手綿30番手(30番単糸、綿100%)を用い、経糸55本/インチ、緯糸60本/インチ、平織組織(織地中の糸の充填率は43%)で製織した地組織を囲むように、経100cm緯45cm毎に幅10mmにわたりSCY(芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−LLタイプ(繊度500dtex8フィラメント、伸長倍率1.3倍、黒の原着糸)であり、鞘糸は、帝人ファイバー(株)製のウーリーテトロン(繊度84dtex36フィラメント、撚り数300T/m)であり、製熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率82%、被覆率4.3%であり、黒の原着糸は糸の質量に対し、0.2%カーボンブラックを練りこんで得た)を、経糸22本/10mm幅、緯糸24本/10mm幅で織り込み、さらに地組織の中央の経94cm緯39cmの範囲に経パイル糸として英国式綿番手綿20番手(20番単糸、綿100%)を、55本/インチ、パイル織組織で織り込み(パイル織地中の糸の充填率は66%)、緯方向に3枚のタオルが採取できる生地を得た。
続いて、該生地を、糊抜・精練(液流加工機で酵素糊抜き剤と精練剤で20分処理)、乾燥の順で処理した。
次に、該生地の幅(測定値50インチ)を織上幅56インチに幅出しするために、経糸を55本/インチおよび緯糸を60本/インチの伸長状態でテンターにセットして、155℃で6分間乾熱処理(1回目の熱処理)した。SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの交差部においてこの時点で完全に熱融着し、該交差部の境界が消失する程度に融着した。
続いて、155℃で4分間の熱処理(2回目の熱処理)を行った。その後、SCYを織り込んだ箇所の中央を経緯共にはさみで裁断し、経方向の端部には中心距離が0.47mmの状態で11本のSCYが配置され、緯方向の端部には、中心距離が0.43mmの間隔で12本のSCYが配置され、各隅部においてSCYが132箇所で交差および熱融着している織地からなる裁断したままの無縫製の織物製品(タオル、経101cm緯46cm、地組織の経100cm緯45cmのうち、パイル織部分は経94cm緯39cmで残りは平織組織)を得た。該タオルにおいては、SCY中の芯糸と鞘糸および芯糸と綿糸の交差部において芯糸が大きく変形し、鞘糸および綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれていた。
上記のようにして得られたタオルの目ずれ度は3.1%と低く、洗濯耐久試験も4点であり、洗濯による目ずれやほつれが少ない良好なタオルであった。また、端部の引裂強力(通常サイズ、緯方向)も1500cN以上と良好であった。一方、地組織中の平織組織の織地の引裂強力(通常サイズ、緯方向)は1421cNであった。
[実施例6]
図5に示すように、経糸および緯糸として英国式綿番手綿40番手(40番単糸、綿100%、先染め糸使用)を用い、経糸50本/インチ、緯糸50本/インチ、平織組織(織地中の糸の充填率は29%)で製織した地組織を囲むように、経緯共に50.9cm毎に幅10mmにわたりSCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−LLタイプ(繊度156dtex4フィラメント、伸長倍率1.3倍、黒の原着糸)、鞘糸は、東レ(株)製のウーリーナイロン(繊度78dtex24フィラメント、撚り数300T/m)であり、熱融着性ポリウレタン弾性繊維の混率61%、被覆率4.1%であり、黒の原着糸は糸の質量に対し、0.2%カーボンブラックを練りこんで得た)を、経糸20本/10mm幅、緯糸20本/10mm幅で織り込み、さらに地組織の中に、経緯共に10.1cm間隔で1mmにわたりSCYを格子状に織り込み(織り込み本数は経2本/1mm幅、緯2本/1mm幅)、緯方向に2枚のハンカチが採取できる生地を得た。
続いて、該生地を、毛焼き、糊抜・精練(液流加工機で酵素糊抜き剤と精練剤で20分処理)、乾燥、シルケットの順で処理した。
次に、該生地の幅(測定値41インチ)を織上幅43インチに幅出しするために、経糸および緯糸を50本/インチの伸長状態でテンターにセットして、155℃で6分間乾熱処理(1回目の熱処理)し、SCY中の熱融着性の芯糸はこれらの交差部においてこの時点で完全に熱融着し、該交差部の境界が消失する程度に融着した。
続いて、155℃で4分間の熱処理(2回目の熱処理)を行った。その後、SCYを織り込んだ箇所の中央を経緯共にはさみで裁断し、経方向の端部には中心距離が0.51mmの状態で10本のSCYが配置され、緯方向の端部には、中心距離が0.51mmの間隔で10本のSCYが配置され、各隅部においてSCYが100箇所で交差および熱融着している織地からなる裁断したままの無縫製の織物製品(ハンカチ、経緯共に52cm)を得た。該ガーゼハンカチにおいては、SCY中の芯糸と鞘糸および芯糸と綿糸の交差部において芯糸が大きく変形し、鞘糸および綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれていた。
上記のようにして得られたガーゼハンカチの目ずれ度は2.8%と低く、洗濯耐久試験も4点であり、洗濯による目ずれやほつれが少ない良好なガーゼハンカチであった。また、端部の引裂強力(通常サイズ、緯方向)も1500cN以上と良好であった。一方、地組織のSCYを含まない領域の引裂強力(試料は通常サイズ、緯方向)は950cNであった。
[実施例7]
経糸および緯糸として英国式綿番手綿30番手(30番手、綿100%)を用い、経糸120本/インチ、緯糸65本/インチの平織組織(織地中の糸の充填率は63%)であり、緯方向の中心位置で経糸としてSCY(シングルカバードヤーン、芯糸の熱融着性ポリウレタン弾性繊維は、日清紡テキスタイル(株)製の熱融着性モビロン糸R−LLタイプ(繊度231dtex5フィラメント、伸長倍率1.2倍)であり、鞘糸は、帝人(株)製のウーリーテトロン(繊度84dtex36フィラメント、撚り数300T/m)であり、ポリウレタン弾性繊維の混率70%、被覆率4.0%)を1本織り込んだ織組織を囲むように、該SCYを経方向の端部に幅10mmにわたり経糸48本/10mm幅で、緯方向には250cm間隔で幅10mmにわたり緯糸26本/10mm幅で織り込んで、ベッドシーツ生地とした。
続いて、当該生地を、毛焼き、糊抜・精練(液流加工機で酵素糊抜き剤と精練剤で20分処理)、乾燥、漂白、シルケットの順で処理した。
次に、該生地の幅(測定値56インチ)を織上幅62インチに幅出しするために、経糸を120本/インチおよび緯糸を65本/インチの伸長状態でテンターにセットして、150℃で6分間乾熱処理(1回目の乾熱処理)し、織り込んだSCY中の熱融着性の芯糸をこの時点で完全に熱融着させた。
次に、該生地を実施例1と同様の架橋処理液を付与したパッダーに浸漬し、マングルでパッドオン率65%として絞った後、乾燥させた。乾燥は、生地の幅を62インチにセットした状態で、100℃設定のピンテンターで2分間処理することによって行った。続いて、150℃設定のピンテンターで5分間熱処理(2回目の乾熱処理)を行い、樹脂を架橋結合させた。
次に、10mm幅で織り込んだSCYの中央に沿って切断し、これにより、経方向の端部には中心距離が0.21mmの状態で24本のSCYが配置され、緯方向の端部には、中心距離が0.39mmの間隔で13本のSCYが配置され、緯方向の中央の位置で経方向に1本のSCYが配置され、各隅部においてSCYが312箇所で交差および熱融着している織地からなる裁断したままの無縫製の織物製品(ベッドシーツ、経250cm、緯156.5cm)を得た。該シーツにおいては、SCY中の芯糸と鞘糸および芯糸と綿糸の交差部において芯糸が大きく変形し、鞘糸、綿糸は芯糸に埋没するように組み込まれていた。
得られたベッドシーツの目ずれ度は3.0%、W&W性は3.2級、洗濯耐久性は4点であり、ともに良好であった。また、該ベッドシーツのSCYを含まない地組織の引裂強力(試料は通常サイズ、緯方向)が588cNであったのに対して、端部の引裂強力(試料は通常サイズ、緯方向)は1500cN以上と極めて高い値となった。
[実施例8]
実施例2で得たハンカチ(経緯共に52cm)のデザインを変更した略矩形のハンカチを図6に示す。図中、直線はSCYを示す。具体的には、緯方向の端部に織り込まれたSCY上に三角形の切り抜きを施し、端部を該切り抜きに沿うようにジグザグに裁断し、このパターンを緯方向に延ばした。また、経方向の端部に織り込まれたSCY上に楕円形の切り抜きを施し、端部を該切り抜きに沿うように波状に裁断し、このパターンを経方向に延ばした。さらに、隅部は、曲線で裁断した。このとき、地組織部を囲むように各辺の最も内側に織り込まれた熱融着弾性繊維を含む2本以上の熱融着性弾性繊維およびその交差部を切断することなく残存させた。このようにして得られたハンカチの洗濯耐久性および目ずれ度は、実施例2のハンカチと同等であり、端部の引裂強力も実用上十分であった。このようなハンカチの裁断は、生産者が行ってもよく、使用者が好みのパターンで行ってもよい。
[参考例1]
実施例1で得たハンカチから緯方向の端部を含む布片を経6mm、緯300mmの寸法で2枚切り出した。1枚を無縫製のまま、もう1枚を三ツ巻で縫製(縫製条件:折り込み幅2mm、運針11/2.54cm、縫製糸は綿糸50番手を使用)して試料とし、両者の乾燥性能を調べた。具体的には、試料に同重量の水を均一に浸み込ませ、14℃、40RH%の室内で乾燥させ、質量を計量することで残留水分を求めた。結果を表3に示す。なお、手で触れることで乾きを判断したところ、残留水分率が4%の時点で乾いた状態であると認識できた。
表3に示される通り、無縫製の試料は水分の蒸発速度が速く、速乾性に優れる。このことから、例えば、ハンカチ等の織物製品を使用する場合に、端部の濡れが比較的長時間続く場合は不快感も長時間続きやすいが、切りっぱなし仕様とすることで織物製品の使用快適性を良好にし得ることがわかる。