JP5743165B2 - 銅合金及び銅合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材等に適用される高強度、高導電性を有する銅合金及びこの銅合金を製造する銅合金の製造方法に関するものである。
従来、電子機器のリードフレーム等の各種端子、コネクタ、リレー又はスイッチ等の電気伝導性及びばね性が必要な材料においては、製造コストを重視する用途には低廉な黄銅が適用されていた。また、一方で、ばね性等の機械的性質が重視される用途にはりん青銅が適用されていた。更に、ばね性に加え、耐食性が重視される用途には洋白が適用されていた。
しかしながら、近年における電子機器類及びその部品の軽量化、薄肉化及び小型化に伴い、これらの材料を使用したのでは必要な強度を十分に満足することができないのが現状である。
近年電子機器の各種端子等の電気伝導性及びばね性が必要な材料においては、従来のりん青銅、黄銅等に代表される固溶強化型合金に代わり、高強度及び高導電性の観点から、時効硬化型の銅合金の使用量が増加している。
時効硬化型の銅合金は、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細粒子が均一に析出して耐力又はばね限界値等の強度特性の向上とともに固溶元素量が減少し導電率の向上に寄与する銅合金である。
従って、益々厳しくなる電子機器類及びその部品の軽量化、材料の高強度化の要求を満足する材料として、例えば、Cu−Ni−Si系合金(コルソン)やベリリウム銅等の時効硬化型の銅合金が使用されている。
この他に、軽量化、高強度化して、電子機器類に対応する銅合金としてCu−Ni−Si系合金(コルソン)を用いて製造方法による改善も試みられている。例えば、特許文献1では、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%、Znを1.0〜5.0質量%、Snを0.1〜0.5質量%、Pを0.003〜0.3質量%含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金材であって、目的とする最終板厚の1.3〜1.7倍の厚さまで冷間圧延する第1の冷間圧延工程、第1の冷間圧延後の材料を700〜900℃に加熱後、毎分25℃以上の降温速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理工程、第1の熱処理後の材料を最終板厚まで冷間圧延する第2の冷間圧延工程、第2の冷間圧延後の材料を400〜500℃に加熱して30分〜10時間保持する第2の熱処理工程、及び第2の熱処理後の材料を長手方向に張力を加えながら400〜550℃で10秒〜3分間加熱保持する銅合金材が開示されている。しかし、製造工程が複雑になり、製造コストの低減を図ることが難しい。
このCu−Ni−Si系(コルソン)合金を利用し、他の金属元素を添加して改善するものが開示されている(特許文献2ないし4を参照。)。例えば、特許文献2では、Ni:1.0〜4.5質量%、Si:0.50〜1.2質量%、Cr:0.0030〜0.3質量%を含有し(但し、NiとSiの重量比が3≦Ni/Si≦5.5である。 )、残部Cu及び不可避的不純物から構成される銅合金であって、材料中に分散する大きさが0.1μm以上5μm以下のCr−Si化合物について、その分散粒子中のSiに対するCrの原子濃度比が1〜5であって、その分散密度が1×10個/mm以下である電子材料用銅合金が記載されている。 しかし、Ni−Si系金属間化合物の強度を改善するものであって、高強度・高導電性に関して限界がある。
また、Ni−Si系とは異なる金属間化合物、Cr−Si系、Ni−PにFeを添加するNi−P−Fe系、Ni−Ti系金属間化合物を析出させる銅合金が開示されている(特許文献5ないし7を参照。)。例えば、特許文献7では、Ni1〜3mass%及びTi0.2〜1.4mass%を含み、前記Ni及びTiの質量百分率の比率(Ni/Ti)が2.2〜4.7であり、MgとZrの一方または両方を合わせて0.02〜0.3mass%、Zn0.1〜5mass%を含み、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金であって、Ni、Ti、及びMgからなる金属間化合物、Ni、Ti、及びZrからなる金属間化合物、またはNi、Ti、Mg、及びZrからなる金属間化合物を少なくとも1つ含有し、前記金属間化合物の分布密度が1×10〜1×1013個/mmであり、引張強度が650MPa以上かつ導電率が55IACS%以上かつ150℃で1000時間保持したときの応力緩和率が20%以下である電気電子機器用銅合金が記載されている。
特開2007−070651 特開2009−242921 特開2010−090408 特開2008−266787 特開2007−126739 特開2001−335864 特開2006−336068
しかし、いずれの銅合金でも、併せ持つ高強度、高導電性が、最近の要請に対して不十分である。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、高強度であっても加工性が優れ、かつ、高導電性の銅合金及びこのような銅合金の製造方法を提供することである。
また、これらの高強度であっても加工性が優れ、かつ、高導電性を有する特性を制御することができる銅合金及びこのような銅合金の製造方法を提供することである。
上記課題を解決する手段である本発明の特徴としては、発明者らは高強度銅合金を得るために検討した結果、Cu−Ni−Al合金において、FCC構造の母相中にNiAlL12構造で、FCC構造のγ’相を微細析出させることが有効であることがわかった。さらにSiを添加することでより一層、高強度化されることがわかった。
したがって、本発明の銅合金は、Ni:3.0〜29.5質量%、Al:0.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、残部がCu及び不可避的不純物とからなるFCC構造の銅合金であって、前記銅合金の母相中に、Siを含むNiAlL1構造で、FCC構造のγ’相が析出していて、かつ、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬さが220Hv以上であることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、Ni:3.0〜14.0質量%、Al:0.5〜4.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、かつ、導電率が10〜25IACS%であることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、冷間加工性が10〜95%であることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、Al当量(質量%)=(Al質量%+1.19Si質量%)及びNi質量%で示される範囲として、(Al:2.0質量%、Ni:3.0質量%)、(Al:4.0質量%、Ni:9.5質量%)、(Al:1.5質量%、Ni:14.0質量%)、(Al:0.5質量%、Ni:5.0質量%)の4点で囲まれる領域Aにあることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、Ni:9.5〜29.5質量%、Al:1.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、かつ、ビッカース硬さが220〜450Hvで、導電率が8.5〜15IACS%であることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、Al当量(質量%)=(Al質量%+1.19Si質量%)及びNi質量%で示される範囲として、(Al:4.0質量%、Ni:9.5質量%)、(Al:7.0質量%、Ni:16.0質量%)、(Al:2.5質量%、Ni:29.5質量%)、(Al:1.5質量%、Ni:14.0質量%)の4点で囲まれる領域Bにあることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、添加元素として、Co、Ti、Sn、Cr、Fe、Zr、Mg、Znからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.01〜5.0質量%を含むことを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、添加元素として、C、P及びBからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.001〜0.5質量%を含むことを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、前記γ’相が、平均粒径が100nm以下で析出していることを特徴とする。
また、本発明の銅合金は、さらに、前記γ’相が球形で、面積分率が5〜40%であることを特徴とする。
上記課題を解決する手段である本発明の銅合金によって、高導電性について検討した結果、領域A及び領域Bにおいて強度、導電性の両者を満たすことがわかった。領域Aでは特に導電率が高く、加工性に優れる高強度銅合金を、領域Bは特に強度が高い高強度銅合金を得ることができる。
また、本発明の銅合金の製造方法によって、高導電性について検討した結果、領域A及び領域Bにおいて強度、導電性の両者を満たす銅合金を製造することができる。
上側が電子線回折による析出物の結晶構造L1 を示すとともに、下側が析出物の状態を示す透過電子顕微鏡の写真である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
本発明の銅合金は、Ni:3.0〜29.5質量%、Al:0.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、残部がCu及び不可避的不純物とからなるFCC構造の銅合金であって、前記銅合金の母相中に、平均粒径が100nm以下で、Siを含むNiAlでL1構造のγ’相が析出している。前記L1構造は、例えば電子線回折像の配列構造で確認できる。
図1は、上側が電子線回折による析出物の結晶構造L1 を示すとともに、下側が析出物の状態を示す透過電子顕微鏡の写真である。
なお、本写真は、Ni:12.3質量%−Al:1.0質量%−Si:0.3質量%−Cuの組成で、溶体化処理:900℃10分−冷間加工30%−時効処理500℃6時間の熱処理を施している。
図1のように、電子線回折では回折面110を持つ規則相を対象とするものとされている。すなわち、γ’相は金属間化合物であって、隅に位置する原子がAl及びSi、面心に位置する原子がNiである規則化されたFCC構造である。
また、後述するが、図1の下側の写真ではL1構造のγ’相が微細に析出していることが分かる。
これらのFCC構造を有する母相の銅及びL1構造を有するγ’相は、ともにFCC構造であるために整合性が良く強度の向上に寄与するとともに、γ’相を析出させることで母相の溶質元素濃度が減少し、導電率の向上にも寄与する。
本発明の銅合金は、FCC構造を有したままの銅合金である。FCC構造は、金属元素が、最も密に積層した構造であって、高強度、高導電性の母相合金として適している。したがって、FCC構造を有する銅は、加工性に優れており目的の形状を容易に作製することが可能である。
本発明の銅合金は、Ni:3.0〜29.5質量%、Al:0.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含むことが高強度と高導電性を満たすために必要である。
NiとAlとは、母相のCu中で、NiAlの金属間化合物を析出して、γ’相を形成する。さらに、AlとSiとは、Niと合わせてNi(Al、Si)金属間化合物を形成することから、AlとSiとは両方合わせて、この系に合わせた量が必要であり、かつ、NiAl、NiSiの単独の系ではなく、L1型の中でFCC構造の隅に混在しながら1つのNi(Al、Si)金属間化合物を形成している。
本発明の銅合金におけるL1構造を有するγ’相は金属間化合物であって、隅に位置する原子がAl及びSi、面心に位置する原子がNiである規則化されたFCC構造である。
これらのFCC構造を有する母相の銅及びL1構造を有するγ’相は、ともにFCC構造であるために整合性が良く強度の向上に寄与するとともに、γ’相を析出させることで母相の溶質元素濃度が減少し、導電率の向上にも寄与する。
さらに、詳細に説明すると、L1構造のγ’相はGCP(Geometrically close packing)相に属し、その稠密充填構造に起因して延性があり、さらに整合性が高いために微細組織であるγ’相が析出しているγ+γ’組織になっていることで靱性のある加工性の高い銅合金を得ることができる。
このγ’相は、母相である銅が主体のγ相に球形で、微細に析出する。γ’相が球形であることで、γ’相とγ相との界面で応力集中することなく靱性のある加工性の高い銅合金を得ることができる。
さらに、γ’相の平均粒径を小さく制御することでより強度の向上をもたらすことが可能である。γ’相の平均粒径を小さくすることで、移動する転位のピンニングサイトが多くなり、高い引張強度を得ることができる。
さらに、γ’相は金属間化合物で、これ自身の硬度が高く、引張強度も高い。したがって、γ’相内を転位が移動するのを妨げることで、銅合金への硬度、引張強度へ貢献することができる。
また、導電率は、一般に、銅中に固溶する溶質元素濃度が高いほど低下するが、γ単相の溶体化状態に比べ、低温で熱処理をしてγ’相を析出させることで母相の溶質元素濃度が減少するため、γ’相の析出は導電率の向上にも寄与する。なお、γ’相の導電率は、純Cuより、導電率は低いことから、このγ’相の占有する体積の割合に応じた分だけ電子の移動を低下させるが、適量のγ’相の面積分率とすることで高い導電率を維持することができる。
したがって、銅合金にしたときに、冷間加工性等の延性を大きく損なわずに硬度、引張強度等の機械的特性に対する貢献が大きく、かつ、導電率を向上させる効果のある第二相として、γ’相が適している。このとき、γ’相の面積分率は5〜40%が好ましい。
この面積分率は、銅合金のある断面の各金属組織の面積を比較することで求めることができる。なお、通常は、面積分率と体積分率とは、カヴァリエリの原理による2個の立体をある平面に平行な平面で切るときの切り口の面積が等しければ、2個の立体の体積は等しい。したがって、この面積分率は体積分率ととらえてもさしつかえない。
なお、面積分率は、金属顕微鏡、電子顕微鏡(SEM、TEM)、EPMA(X線分析装置)等で測定することができる。
また、このγ’相の平均粒径は100nm以下が好ましい。小さいほど好ましいが熱処理による粗大化のために実用上の析出サイズを1nmより微細に制御することは難しく、1nm以上で、100nm以下であれば十分な強度を得ることができる。
γ’相の平均粒径は、電子顕微鏡による組織観察から画像解析によって複数のγ’相の直径を計測し、それらを平均することで得られる。
このときに、添加されているNi、Al、Siによって、NiAlの金属間化合物のγ’相以外のNi(Al、Si)、NiAl、NiSi等の金属間化合物が析出することがある。
しかし、Ni(Al、Si)はNi(Al、Si)と比較して析出する量が少なく、銅合金の機械的性質、電気的性質に与える影響は小さい。
NiAlで表わされるβ相の金属間化合物が析出する。このβ相は、BCC規則構造のB2構造であるが、析出する組成範囲が狭く、析出してもNi(Al、Si)と比較して量が少なく、銅合金の機械的性質、電気的性質に与える影響は小さい。
また、NiSiの金属間化合物が析出することがある。このNiSiもNi(Al、Si)と比較して析出する量が少なく、銅合金の機械的性質、電気的性質に与える影響は小さい。
しかし、これらのNi(Al、Si)のγ’相以外の金属間化合物がそれぞれ多数析出することで、銅合金の機械的性質、電気的性質に影響を与えるが、Ni(Al、Si)以上に影響を与えるものではない。しかしながら、これらすべての析出物を合わせた上で、本発明の銅合金が成り立っている。
Siはマトリックス中の溶質元素濃度を低下させる効果があり、γ’相の体積分率を増加させるとともに導電率を高める効果がある。そのため、γ’相はNi(Al、Si)の金属間化合物になることで、NiAlの単体と比較して強度、導電率に優れる。AlとSiとの量比は、Al/Si=1〜5の範囲にあることが好ましい。Al/Si比が1より小さいとγ’相の他に延性、導電率の低下に影響を及ぼす他の化合物が析出し、5より大きいとγ’相の体積分率が不十分でマトリックス中の溶質元素濃度の低下も不十分で強度及び導電率の上昇が十分に得られないためである。
したがって、Al:0.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%の範囲にして、γ’相を析出させることで、高強度、高導電性、そして、加工性に優れた組成領域を得ることができる。
また、本発明の銅合金は、Ni:3.0〜14.0質量%、Al:0.5〜4.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含む組成の範囲で、かつ、導電率が8.5IACS%以上である。
この組成範囲にし、100nm以下のγ’相を析出させることで、導電率を8.5IACS%以上にすることができる。
導電率が8.5IACS%以上にすることで、高導電性を有する銅合金として電子機器等のリードフレーム、コネクタ、端子材等に適用される。
また、本発明の銅合金は、この組成範囲にし、100nm以下のγ’相を析出させることで、さらに、冷間加工性が10〜95%とすることができる。
冷間加工性は、温度20℃において実施する圧延の場合は、焼鈍をせずに割れなく圧延できる最大の厚さの減少率で定義し、伸線の場合は焼鈍をせずに割れなく伸線できる最大の減面率で定義する。
γ’相のNi(Al、Si)金属間化合物は純Cuより加工性が低いことから、このNi(Al、Si)金属間化合物の占有する体積の割合に応じた分だけ加工率を大きくすることができない。
したがって、Ni:3.0〜14.0質量%、Al:0.5〜4.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含む組成の範囲にすることで、γ’相の析出量を制御して、導電率を高く維持したまま、冷間加工性が10〜95%にすることができる。
冷間加工性が10%未満では目的形状を有した材料を作れないという問題がある。冷間加工性が95%を越えると設備に対する負担が大きいという問題がある。したがって、冷間加工性は10〜95%の範囲が好ましく、さらに、好ましくは、20〜90%が一層よい。
冷間加工性を10〜95%にすることで、高強度を有する銅合金として電子機器等のリードフレーム、コネクタ、端子材等に適用される。
さらに、本発明の銅合金は、NiとAl、Siの添加量が、Al当量(質量%)=(Al質量%+1.19Si質量%)及びNi質量%で示されるNi対Al等量図において、(Al:2.0質量%、Ni:3.0質量%)、(Al:4.0質量%、Ni:9.5質量%)、(Al:1.5質量%、Ni:14.0質量%)、(Al:0.5質量%、Ni:5.0質量%)の4点で囲まれる領域Aにある。
本発明の銅合金は、この領域Aの範囲にしてγ’相の析出する体積分率を5〜20%にすることで、高い導電率と高い冷間加工性を得ることができる。
この領域Aの範囲では、ほぼ10〜25IACS%の導電率を得ることができ、また、10〜95%の冷間加工性を得ることができることから、接点材料として、接触・摺擦されることが多くとも、摩耗を少なくすることができる。
したがって、高い導電率と高い冷間加工性を有する銅合金として、電子機器等のリードフレーム、コネクタ、端子材等に適用されることができる。
さらに、本発明の銅合金では、Ni:9.5〜29.5質量%、Al:1.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、かつ、ビッカース硬度が220〜450Hvの範囲にある。
高いNi量の添加によって、γ’相の占有する体積、面積を高くすることで、ビッカース硬度を高くすることができる。
この場合、γ’相析出する体積分率を20〜40%にすることで、銅に対するビッカース硬度で表される強度に貢献することができる。
このときのγ’相の平均粒径は、上記同様に、100nm以下が好ましい。小さいほど好ましいが実用上の析出は完全に均一に行うことが難しく1nm以上で、100nm以下で有れば十分な強度を得ることができ、30nm以下がより好ましい。
なお、本発明の銅合金は、この組成範囲における導電率は、ほぼ7〜15IACS%の導電率を得ることができることから、高いビッカース硬度を併せて備えることで、電子機器等のリードフレーム、コネクタ、端子材等に適用されても、摩耗が少なく、耐久性がよく長時間の使用に耐えることができる。
また、本発明の銅合金では、Al当量(質量%)=(Al質量%+1.19Si質量%)及びNi質量%で示されるNi対Al等量図において、(Al:4.0質量%、Ni:9.5質量%)、(Al:7.0質量%、Ni:16.0質量%)、(Al:2.5質量%、Ni:29.5質量%)、(Al:1.5質量%、Ni:14.0質量%)の4点で囲まれる領域Bにある。
本発明の銅合金は、この領域Bの範囲にし、γ’相が析出する体積分率を25〜40%にすることで、さらに、ビッカース硬度で表される高い強度を有することができる。これは、γ’相が金属間化合物であり、硬度が非常に高いことに由来している。ただし、γ’相の面積率が高くなると導電率が低下するというデメリットがある。
したがって、この領域Bの範囲にすることで、高い導電率を得ながら、高いビッカース硬度をあわせて備えることができる。
これによって、電子機器等のリードフレーム、コネクタ、端子材等に広く適用することができる。
また、本発明の銅合金は、さらに、添加元素として、Co、Ti、Sn、Cr、Fe、Zr、Mg、Znからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.01〜5.0質量%を含ませることができる。
Co、Ti、Cr及びZrは、γ’相を安定化し析出を促進させるために強度の向上に寄与し、またCu中の溶質元素濃度を減少させる効果もあるため導電率の向上にも寄与する。
Sn、Mg及びZnは耐応力緩和特性を改善させることに効果があるとともに、Cu中に固溶することから強度の向上に寄与する。
FeはCu中にFeの微細粒が分散することで結晶粒の微細化に効果があり、強度の向上及び耐熱性の向上に寄与する。
添加元素の添加量は、選択した1種又は2種以上の添加元素が総量で0.01〜5.0質量%を含むようにする。選択した1種又は2種以上の添加元素が総量で0.01質量%未満では、銅合金に対して導電率の向上、強度の向上にも寄与しないという問題がある。また、添加元素が総量で5.0質量%を越えると、導電率の向上、強度の向上には寄与するが、導電率等の電気的特性とビッカース硬度等の機械的特性を適正な範囲に制御することができなくなるという問題がある。
本発明の銅合金は、添加元素として、さらに、C、P及びBからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.001〜0.5質量%を含ませることができる。
Cは、結晶粒の微細化に効果があると考えられ強度の向上に寄与する。また、Cu中の溶質元素の固溶度を低下させて導電率向上に寄与する。
Pは、脱酸剤として用いられ、Cuの不純物の濃度を減少させる効果があり、導電率の向上に寄与する。
Bは、結晶粒成長を抑制する効果があるため、微細化して強度の向上に効果がある。耐熱性を向上が可能である。
添加量は、選択した1種又は2種以上の添加元素が総量で0.001〜0.5質量%を含むようにする。添加元素が総量で0.001質量%未満では、銅合金に対して導電率の向上、強度の向上にも寄与しないという問題がある。また、添加元素が総量で0.5質量%を越えると、導電率の向上、強度の向上には寄与するが、導電率等の電気的特性とビッカース硬度等の機械的特性を適正な範囲に制御することができなくなるという問題がある。
また、本発明の銅合金の製造方法では、一体にして溶融混合して、鋳造した後、熱間鍛造などの熱間加工及び、必要に応じて冷間圧延、冷間伸線などの冷間加工により板材、線材、管材などの形状に成形する。次に、700〜1020℃で、0.1〜10時間の範囲で熱処理し、その後、400〜650℃で、0.1〜48時間の範囲で時効処理する。
本発明の銅合金の製造方法は、(a)Ni:3.0〜29.5質量%、Al:0.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とCuとを一体にして溶融混合して鋳塊として銅合金材を形成する工程と、熱間及び必要に応じて冷間加工により成形した後に(b)前記銅合金材を700℃〜1020℃の温度範囲で、0.1〜10時間の範囲で熱処理する溶体化処理を行う工程と、(c)溶体化処理後の銅合金材を400℃〜650℃の温度範囲で、0.1〜48時間の範囲で加熱する時効処理を行う工程とを有する。
(a)の銅合金材を形成する工程では、銅合金の原料としては、添加元素として、さらに、Co、Ti、Sn、Cr、Fe、Zr、Mg、Znからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.01〜5.0質量%をさらに添加することもできる。さらに、銅合金の原料として、C、P及びBからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.001〜0.5質量%添加することもできる。
溶融混合は、Al、Siの酸化による減少を防止するために、例えば、ホウ化カルシウム等の脱酸剤を使用するか、または、アルゴンガスや窒素ガス等を用いてバブリング処理、または、真空容器内で真空中で溶解を行えばよい。 溶解する方法としては、特に制限されることはなく、高周波溶解炉等の公知の装置を用いて、銅合金原料の融点以上の温度に加熱すればよい。
(b)の溶体化処理を行う工程では、銅合金材を700℃〜1020℃の温度範囲で、0.1〜10時間の範囲で熱処理する。 これによって、添加した合金元素が、Cuの母相中に偏析することなく一様に均質化した固溶体が達成される。 加熱の方法は、特に制限されることはなく、公知の方法に従って行えばよい。
この溶体化処理で、Ni、Al、Si等を均質に分散させることで、後述の時効処理によって100nm以下の微細な平均粒径を有するγ’相を析出させることができる。
(c)の時効処理を行う工程では、銅合金材を400〜650℃で、0.1〜48時間の範囲で時効処理する。400℃未満で、及び/又は、0.1時間未満では、γ’相を析出させることができない。650℃を超えて及び/又は48時間を超えると、γ’相が成長し、平均粒径が100nmを超えて、所望の導電率及び加工率が得られないという問題が生ずる。したがって、所望の導電率及び硬度を得るには、このような時効処理が必須要件となる。
また、本発明の高強度銅合金の製造方法は、さらに、前記時効処理の前又は後に、10〜95%の冷間加工を行うことを特徴とする。
本発明の高強度銅合金の製造方法は、上述した製造工程の他に、さらに、(d)前記銅合金材を、前記時効処理の前又は後に、10〜95%の冷間加工を行う工程を設ける。
銅合金材を時効処理の前に冷間加工することによって、結晶粒界、転位、積層欠陥などの格子欠陥を形成して、結晶粒微細化や加工硬化させるとともに、その後のNi(Al、Si)のγ’相を多数分散させて析出させることで、γ’相の平均粒径を100nm以下にするとともに、時効処理の温度を低くし、かつ、時間を短くすることができる。冷間加工の方法は、特に制限されることはなく、ローラによる圧延等の公知の方法で行えばよい。
また、銅合金材を時効処理の後に冷間加工することによって、転位、積層欠陥などを導入させて加工硬化させることができるので、高強度化させることができる。
このときに、加工率は10〜95%の範囲で行う。加工率が10%未満では、欠陥の導入が少なく、上記加工の効果が十分に得られない。加工率が95%を超えると、加工設備に対する負荷が大きくなり問題が生ずる。
これらの工程後には、ばね性を付与するために100〜400℃の範囲で低温時効を行ってもよい。低温時効の方法は、特に制限されることはなく、公知の方法に従って行うことができる。
このような製造方法によって得られる銅合金は、銅合金中に析出するL1構造のγ’相の粗大化を抑制しつつ、十分な量の微細なγ’相を析出させることができるため、導電率等の電気的特性、冷間加工性、ビッカース硬度等の機械的特性を容易に制御することができる。
(銅合金No.1〜57)
本発明の銅合金の範囲で、実施例1〜57の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。
(実施例1〜57の組成)
その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率、加工性、ビッカース硬度を示している。
(導電率、加工性、ビッカース硬度の結果)
表2−1、表2−2から、本発明の銅合金の範囲で、導電率等の電気的特性、冷間加工性、ビッカース硬度等の機械的特性を制御できていることが分かる。
その後、表3に示す製造熱処理条件工程を経てFCC構造の母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
(製造条件)
表4では、銅合金としてNo.16〜23の組成の銅合金を用いて、表3におけるそれぞれの製造条件における導電率とビッカース硬度を示している。
(製造条件における導電率とビッカース硬度の結果)
この表4から分かるように、熱処理加工条件1、5、12、13以外は、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(銅合金No.58〜70)
次に、添加元素を添加した。実施例58〜70の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。
(添加元素の組成)
その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表6から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.71〜76)
次に、添加元素としてSnを添加した。
実施例71〜76の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表7に実施例71〜76の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表8から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上になった。
また、処理加工条件1、5、6、7、8、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.77〜82)
次に、添加元素としてTiを添加した。
実施例77〜82の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表9に実施例77〜82の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表10から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.83〜88)
次に、添加元素としてZrを添加した。
実施例83〜88の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表11に実施例83〜88の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表12から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.89〜94)
次に、添加元素としてCrを添加した。
実施例89〜94の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表13に実施例89〜94の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表14から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.95〜100)
次に、添加元素としてFeを添加した。
実施例95〜100の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表15に実施例95〜100の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表16から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.101〜106)
次に、添加元素としてPを添加した。
実施例101〜106の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表17に実施例101〜106の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表18から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.107〜112)
次に、添加元素としてZnを添加した。
実施例107〜112の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表19に実施例107〜112の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表20から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.113〜118)
次に、添加元素としてMgを添加した。
実施例113〜118の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表21に実施例113〜118の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表22から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.119〜122)
次に、添加元素としてBを添加した。
実施例119〜122の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表23に実施例119〜122の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表24から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
(銅合金No.123〜128)
次に、添加元素としてCoを添加した。
実施例123〜128の組成の銅合金材を、高周波誘導溶解炉に一体にして投入し、溶解し溶融混合した。これを鋳造インゴット(as−cast)とした。その後、FCC構造のCuの母相中にL1構造のγ’相を析出させた。
以下の表25に実施例123〜128の組成を示す。
熱処理条件は、代表的な製造条件で、熱間圧延(900℃、圧下率90%)−溶体化(900℃、10分)−冷間圧延(20℃、圧下率30%)−時効析出処理(500℃、18時間)である。
このときの、それぞれの組成における導電率とビッカース硬度を示している。
表26から分かるように、本発明の製造方法の製造条件では、熱処理加工条件1、5、12、13以外の時効処理を必須にしている熱処理加工条件では、全て、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬度が220Hv以上になった。
(導電率とビッカース硬度の結果)
したがって、本発明の銅合金は、所定の組成で、かつ、所定の製造方法によって得られる銅合金は、銅合金中に析出するL1構造のγ’相の粗大化を抑制しつつ、十分な量の微細なγ’相を析出させることができるため、導電率等の電気的特性、冷間加工性、ビッカース硬度等の機械的特性を容易に制御することができることがわかった。

Claims (10)

  1. Ni:3.0〜29.5質量%、Al:0.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、残部がCu及び不可避的不純物とからなるFCC構造の銅合金であって、
    前記銅合金の母相中に、Siを含むNiAlL1構造で、FCC構造のγ’相が析出していて、
    かつ、導電率が8.5IACS%以上で、ビッカース硬さが220Hv以上である
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  2. 請求項1に記載の高強度銅合金であって、
    前記高強度銅合金は、Ni:3.0〜14.0質量%、Al:0.5〜4.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、
    かつ、導電率が10〜25IACS%である
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  3. 請求項2に記載の高強度銅合金であって、
    冷間加工性が10〜95%の範囲にある
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  4. 請求項2又は3に記載の高強度銅合金であって、
    前記高強度銅合金は、Al当量(質量%)=(Al質量%+1.19Si質量%)及びNi質量%で示される範囲として、(Al:2.0質量%、Ni:3.0質量%)、(Al:4.0質量%、Ni:9.5質量%)、(Al:1.5質量%、Ni:14.0質量%)、(Al:0.5質量%、Ni:5.0質量%)の4点で囲まれる領域Aにある
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  5. 請求項1に記載の高強度銅合金であって、
    前記高強度銅合金は、Ni:9.5〜29.5質量%、Al:1.5〜7.0質量%、Si:0.1〜1.5質量%とを含み、
    かつ、ビッカース硬さが220〜450Hvで、導電率が8.5〜15IACS%である
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  6. 請求項5に記載の高強度銅合金であって、
    前記高強度銅合金は、Al当量(質量%)=(Al質量%+1.19Si質量%)及びNi質量%で示される範囲として、(Al:4.0質量%、Ni:9.5質量%)、(Al:7.0質量%、Ni:16.0質量%)、(Al:2.5質量%、Ni:29.5質量%)、(Al:1.5質量%、Ni:14.0質量%)の4点で囲まれる領域Bにある
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の高強度銅合金であって、
    前記高強度銅合金は、添加元素として、さらに、Co、Ti、Sn、Cr、Fe、Zr、Mg、Znからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.01〜5.0質量%を含む
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の高強度銅合金であって、
    前記高強度銅合金は、添加元素として、さらに、C、P及びBからなる群から選択した1種又は2種以上の元素を総量で0.001〜0.5質量%を含む
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の高強度銅合金であって、
    前記γ’相が、平均粒径が100nm以下で析出している
    ことを特徴とする高強度銅合金。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載の高強度銅合金であって、
    前記γ’相が球形で、面積分率が5〜40%である
    ことを特徴とする高強度銅合金。
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