JP7181768B2 - 高ヤング率Cu-Ni-Al系銅合金板材およびその製造方法並びに導電ばね部材 - Google Patents

高ヤング率Cu-Ni-Al系銅合金板材およびその製造方法並びに導電ばね部材 Download PDF

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Description

本発明は、ヤング率の高いCu-Ni-Al系銅合金板材およびその製造方法、並びに前記板材を用いた導電ばね部材に関する。
Cu-Ni-Al系銅合金は、Ni-Al系の析出物により高強度化が可能であり、また、銅合金のなかでも銅の色味が薄い金属外観を呈する。この銅合金は、リードフレーム、コネクタなどの導電ばね部材や非磁性高強度部材として有用である。
コネクタなどの導電ばね部材は、導体同士の接触によって良好な導通性能を得るために、所定の接触圧力で接続相手材と接触する必要がある。接触抵抗が低く、信頼性の高い接続を実現するためには、高い接触圧力が維持できるように、強度が高く、かつヤング率の高い材料で導電ばね部材を構築することが有利となる。また、コネクタなどの導電ばね部材は通常、曲げ加工を含む加工工程によって製造される。したがって、高性能で寸法精度の高い導電ばね部材を得るための素材である銅合金板材には、曲げ加工性が良好であることも要求される。さらに、Cu-Ni-Al系銅合金に特有の白色調の表面外観を重視する用途では、美麗な白色調が損なわれないよう、耐変色性に優れることも重要となる。
これまでに、Cu-Ni-Al系銅合金の高強度特性を活かしながら、他の諸特性(導電性、加工性、疲労特性、応力緩和特性など)を改善する検討が種々行われてきた。
例えば、特許文献1には、所定量のSiを含有するCu-Ni-Al系銅合金において、700~1020℃での溶体化処理と400~650℃での時効処理を施す工程により、Siを含むγ’相を平均粒径100nm以下で析出させることにより、高強度、加工性、高導電性に優れる材料を得る技術が示されている。ただし、ヤング率の高い板材を得る手法については開示がない。耐変色性の改善についても記載はない。
特許文献2には、Cu-Ni-Al系銅合金において、820~920℃での溶体化処理、400~600℃での時効処理および380~700℃でのテンションアニールを施す工程により、Ni-Al系金属間化合物を微細析出した組織とし、強度、曲げ加工性等の諸特性を向上させる技術が開示されている。ただし、ヤング率の高い板材を得る手法については開示がない。耐変色性の改善についても記載はない。
特許文献3には、Cu-Ni-Al系銅合金において、700℃以上での溶体化処理、200~400℃での時効処理、10%以上の冷間圧延、および300~600℃での熱処理を施す工程により、強度および曲げ加工性の良好な板材を得る技術が示されている。しかし、発明者らの調査によると、この文献に具体的に示されている合金はNi含有量が低く、耐変色性が不十分である。また、耐変色性を確保するためにNiおよびAlの含有量を十分に高めた合金組成にした場合、この文献に開示の製造工程では、良好な曲げ加工性を維持しながら、ヤング率の高い板材を得ることは困難である。
特許文献4には、Cu-Ni-Al系銅合金において、750~950℃での溶体化処理、必要に応じて300~550℃での時効処理、30~90%の冷間圧延、300~600℃での時効処理を施す工程により、強度、弾性、電気伝導性、成形加工性、耐応力緩和特性に優れた板材を得る技術が示されている。しかし、この手法では引張強さ900MPa以上、あるいは更に1000MPa以上の強度レベルを実現することができない。ヤング率の高い板材を得る手法や、耐変色性を改善する手法についても教示はない。
国際公開第2012/081573号 特開平6-128708号公報 特開平1-149946号公報 特開平5-320790号公報
最近ではコネクタなどの導電ばね部材の小型化に伴い、それに用いる素材である板材にも薄肉化の要求が高まっており、従来にも増して素材の高強度化、高ヤング率化が重要となっている。しかし、Cu-Ni-Al系銅合金において、ヤング率の高い板材を製造する技術は確立されていない。また、高強度かつ高ヤング率のCu-Ni-Al系銅合金板材において、例えば、曲げ軸が圧延平行方向(B.W.)となる場合の90°W曲げ試験で割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tが1.5以下であるような優れた曲げ加工性を実現することは、いっそう難しい。
本発明は、白色調の金属外観を呈する組成域のCu-Ni-Al系銅合金において、耐変色性に優れ、高強度かつ高ヤング率の板材を提供することを第1の目的とする。また、そのような銅合金板材において、優れた曲げ加工性を安定して付与する技術を提供することを第2の目的とする。
上記目的は、以下の発明によって達成される。
[1]質量%で、Ni:12.0~30.0%、Al:1.80~6.50%、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式を満たす化学組成を有し、下記(2)式のX線回折強度比Xが0.40以上である結晶配向を有する銅合金板材。
Ni/Al≦15.0 …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
=I{311}/I{220} …(2)
ここで、I{311}およびI{220}はそれぞれ圧延面のX線回折パターンにおける{311}結晶面および{220}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
[2]下記(3)式のX線回折強度比Xが0.50以上である結晶配向を有する上記[1]に記載の銅合金板材。
=I{311}/I{311} …(3)
ここで、I{311}は圧延面のX線回折パターンにおける{311}結晶面のX線回折ピークの積分強度、I{311}は純銅粉末標準試料のX線回折パターンにおける{311}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
[3]下記(A)に定義される圧延方向のヤング率が130GPa以上である上記[1]または[2]に記載の銅合金板材。
(A)当該板材から採取した長手方向が圧延平行方向であるJIS 5号引張試験片についてJISZ 2241:2011に基づきクロスヘッド変位速度vが0.02mm/sである引張試験を行って0.1秒毎にひずみと応力の値を記録し、応力が100MPaから400MPaまでの間で記録されたひずみと応力の全データを用いて応力-ひずみ直交座標系における回帰直線を最小二乗法により定めたときの、当該回帰直線の傾き。
[4]圧延方向の引張強さが900MPa以上である上記[1]~[3]のいずれかに記載の銅合金板材。
[5]粒子を取り囲む最小円の直径をその粒子の「長径」と呼ぶとき、圧延面を研磨した観察面において長径5.0μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が30.0×10個/mm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の銅合金板材。
[6]粒子を取り囲む最小円の直径をその粒子の「長径」と呼ぶとき、圧延面を研磨した観察面において長径5.0μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が5.0×10個/mm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の銅合金板材。
[7]質量%で、Ni:12.0~30.0%、Al:1.80~6.50%、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式を満たす化学組成の鋳片を、930~1150℃で1時間以上加熱する工程(鋳片加熱工程)、
最終パスでの圧延温度が750℃以上となる条件で熱間圧延を施す工程(熱間圧延工程)、
圧延率45~95%の冷間圧延を施す工程(第1冷間圧延工程)、
第1冷間圧延後の板材に650~800℃で1~100時間保持する熱処理を施す工程(中間焼鈍工程)、
中間焼鈍後の板材に圧延率75%以上の冷間圧延を施す工程(第2冷間圧延工程)、
第2冷間圧延後の板材に300℃から800℃までの平均昇温速度が50~200℃/sとなるように昇温して、900~1150℃で30~720秒保持する熱処理を施す工程(溶体化処理工程)、
溶体化処理後の板材に圧延率50%以下の範囲で冷間圧延を施す工程(仕上冷間圧延工程)、
仕上冷間圧延後の板材に400~650℃で0.1~75時間保持する熱処理を施す工程(時効処理工程)、
を上記の順に行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の銅合金板材の製造方法。
Ni/Al≦15.0 …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
[8]上記[7]に記載の製造方法において、仕上冷間圧延工程を行わず、溶体化処理工程によって得られた材料を効処理工程に供する、銅合金板材の製造方法。
[9]質量%で、Ni:12.0~30.0%、Al:1.80~6.50%、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式を満たす化学組成の鋳片を、1000~1150℃で2時間以上加熱する工程(鋳片加熱工程)、
950℃以上での圧延率が65%以上となり、最終パスでの圧延温度が800℃以上となる条件で熱間圧延を施す工程(熱間圧延工程)、
圧延率45~95%の冷間圧延を施す工程(第1冷間圧延工程)、
第1冷間圧延後の板材に650~800℃で1~100時間保持する熱処理を施す工程(中間焼鈍工程)、
中間焼鈍後の板材に圧延率75%以上の冷間圧延を施す工程(第2冷間圧延工程)、
第2冷間圧延後の板材に300℃から800℃までの平均昇温速度が50~200℃/sとなるように昇温して、950~1100℃で30~360秒保持する熱処理を施す工程(溶体化処理工程)、
溶体化処理後の板材に圧延率50%以下の範囲で冷間圧延を施す工程(仕上冷間圧延工程)、
仕上冷間圧延後の板材に400~650℃で0.1~75時間保持する熱処理を施す工程(時効処理工程)、
を上記の順に行う、請求項5に記載の銅合金板材の製造方法。
Ni/Al≦15.0 …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
[10]上記[9]に記載の製造方法において、仕上冷間圧延工程を行わず、溶体化処理工程によって得られた材料を効処理工程に供する、銅合金板材の製造方法。
[11]上記[1]~[6]のいずれかに記載の銅合金板材を材料に用いた導電ばね部材。
〔X線回折強度比XAの求め方〕
X線回折装置を用いて、Cu-Kα線、管電圧40kV、管電流20mAの条件で板面(圧延面)のX線回折パターンを測定し、{311}面および{220}面のX線回折ピークの積分強度を求め、それらの値を上記(2)式に代入することによりX線回折強度比XAを定める。
〔X線回折強度比XBの求め方〕
X線回折装置を用いて、Cu-Kα線、管電圧40kV、管電流20mAの条件で、対象となる銅合金板材の板面(圧延面)と純銅粉末標準試料のX線回折パターンを測定し、それぞれの{311}面のX線回折ピークの積分強度を求め、それらの値を上記(3)式に代入することによりX線回折強度比XBを定める。
〔粗大第二相粒子の個数密度の求め方〕
板面(圧延面)を電解研磨してCu素地のみを溶解させて、第二相粒子を露出させた観察面を調製し、その観察面をSEMにより観察し、SEM画像上に観測される長径5.0μm以上の第二相粒子の総個数を観察総面積(mm2)で除した値を、粗大第二相粒子の粒子個数密度(個/mm2)とする。観察総面積は、無作為に設定した重複しない複数の観察視野により合計0.1mm2以上とする。観察視野から一部がはみ出している第二相粒子は、観察視野内に現れている部分の長径が5.0μm以上であればカウント対象とする。
ある板厚t0(mm)からある板厚t1(mm)までの圧延率は、下記(4)式により求まる。
圧延率(%)=(t0-t1)/t0×100 …(4)
本発明によれば、白色調の金属外観を呈する組成域のCu-Ni-Al系銅合金の板材において、ヤング率が高く、かつ耐変色性に優れるものが提供可能となった。また、優れた曲げ加工性も付与することが可能である。したがって本発明は、Cu-Ni-Al系銅合金を用いたコネクタなどの導電ばね部材の信頼性向上に寄与するものである。
発明者らは研究の結果、Cu-Ni-Al系銅合金板材において高いヤング率を実現するためには、上記[1]の(2)式に特定される結晶配向に調整することが極めて有効であることを見いだした。そのような結晶配向は、上記[7]に特定されるように、中間焼鈍を挟んだ冷間圧延を特定条件で行い、溶体化処理をゆっくりとした昇温速度で行い、かつ仕上冷間圧延を行う場合はその圧延率が低めにコントロールされた条件で行ったのちに、時効処理を施すことによって得られることがわかった。また、高いヤング率に加え、優れた曲げ加工性を安定して付与するためには、上記[6]に特定されるように、長径5.0μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が所定以下である組織状態とすることが極めて有効であることを見いだした。そのような組織状態は、上記[9]に特定されるように、各工程の条件がより厳密にコントロールされた製造方法によって得られることがわかった。以下、本発明を特定するための事項について説明する。
〔化学組成〕
本発明では、Cu-Ni-Al系銅合金を対象とする。以下、合金成分に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
Niは、CuとともにCu-Ni-Al系銅合金のマトリックス(金属素地)を構成する主要な元素である。また、合金中のNiの一部はAlと結合して第2相(Ni-Al系析出相)の粒子を形成し、強度および曲げ加工性の向上に寄与する。Ni含有量の増大に伴って、他の一般的な銅合金と比べ白色調の金属外観を呈するようになる。ただし、他の銅合金と同様、高湿環境に曝されると金属表面に薄い酸化皮膜が形成され、外観として判る程度に変色することがある。その場合、美麗な白色外観が損なわれる。発明者らの検討によれば、特に耐変色性を重視する場合、Ni含有量を12.0%より高くし、かつAl含有量を後述のように確保することが極めて有効であることがわかった。したがって、本発明では12.0%を超えるNi含有量のCu-Ni-Al系銅合金を対象とする。15.0%以上のNi含有量とすることがより効果的である。一方、Ni含有量が多くなると熱間加工性が悪くなる。Ni含有量は30.0%以下に制限され、25.0%以下に管理してもよい。
Alは、Ni-Al系析出物を形成する元素である。Al含有量が少なすぎると強度向上が不十分となる。また、Ni含有量の増加に伴ってAl含有量も増加させることによって、耐変色性を改善することができる。種々検討の結果、Al含有量は1.80%以上とし、かつ下記(1)式を満たすようにAlを含有させる必要がある。下記(1)’式を満たすことがより好ましい。
Ni/Al≦15.00 …(1)
Ni/Al≦11.00 …(1)’
ここで、(1)式、(1)’式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
一方、Al含有量が過大になると熱間加工性が悪くなる。Al含有量は6.50%以下に制限される。
その他の元素として、必要に応じてMg、Cr、Co、P、B、Mn、Sn、Ti、Zr、Si、Fe、Zn等を含有させることができる。これらの元素の含有量範囲は、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%である。また、これら任意添加元素の総量は2.0%以下とすることが望ましく、1.0%以下とすることがより望ましい。0.5%以下に管理してもよい。
〔ヤング率〕
小型化が進展するコネクタ等の導電ばね部材において、接触相手材との高い接触圧力を安定して維持させるためには、素材である板材として、下記(A)に定義される圧延方向のヤング率が130GPa以上であることが極めて有効である。
(A)当該板材から採取した長手方向が圧延平行方向であるJIS 5号引張試験片についてJISZ 2241:2011に基づきクロスヘッド変位速度vが0.02mm/sである引張試験を行って0.1秒毎にひずみと応力の値を記録し、応力が100MPaから400MPaまでの間で記録されたひずみと応力の全データを用いて応力-ひずみ直交座標系における回帰直線を最小二乗法により定めたときの、当該回帰直線の傾き。
〔強度〕
板材の強度レベルとしては、圧延方向の引張強さが900MPa以上であることが望まれ、1000MPa以上であることがより好ましい。上記の化学組成を有するCu-Ni-Al系銅合金の板材では、圧延方向の引張強さ1100MPa以上、あるいは1150MPa以上といった高強度を得ることも可能である。過剰な高強度化は、冷間圧延工程での負荷の増大を伴い、生産性低下を招く。また、良好な「強度-曲げ加工性バランス」を維持するうえでも不利となる。圧延方向の引張強さが1300MPa以下となる範囲で強度レベルを調整することが好ましい。また、板面のビッカース硬さは、JIS Z2244:2009に基づく硬さ記号HV100において、270HV以上であることが好ましく、300HV以上であることがより好ましい。上述の過剰な高強度化による弊害を考慮すると、400HV以下の範囲で調整すればよい。
〔曲げ加工性〕
コネクタ等の導電ばね部材へ加工するためには、曲げ軸が圧延平行方向(B.W.)となる場合の90°W曲げ試験において、割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tが2.0以下であることが望まれる。また、特に小型化や複雑形状への加工に有利な高いレベルの曲げ加工性としては、上記MBR/tが1.5以下であることが好ましい。
〔結晶配向〕
上記の化学組成を有するCu-Ni-Al系銅合金の板材においては、下記(2)式のX線回折強度比XAが0.40以上である結晶配向とすることによって、上記の高いヤング率を実現することができることがわかった。
A=I{311}/I{220} …(2)
ここで、I{311}およびI{220}はそれぞれ圧延面のX線回折パターンにおける{311}結晶面および{220}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
{311}面が圧延面に平行である結晶粒の存在量は、下記(3)式のX線回折強度比XBによって特定される。
B=I{311}/I0{311} …(3)
ここで、I{311}は圧延面のX線回折パターンにおける{311}結晶面のX線回折ピークの積分強度、I0{311}は純銅粉末標準試料のX線回折パターンにおける{311}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
後述の製造方法に従って、上述(2)式により定まるX線回折強度比XAが0.40以上となる時効処理済みの板材を得た場合、上記(3)式により定まるX線回折強度比XBは0.50以上となる。
〔粗大第二相粒子の個数密度〕
長径が5.0μm以上の第二相粒子を本明細書では「粗大第二相粒子」と呼ぶ。粗大第二相粒子はNi-Al系の金属間化合物を主体とするものである。粗大第二相粒子の存在量が多いと曲げ加工性にも悪影響を及ぼすようになる。上述MBR/tが2.0以下である曲げ加工性は、圧延面を研磨した観察面において長径5.0μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が30.0×103個/mm2以下の範囲で達成できる。25.0×103個/mm2以下であることがより好ましい。ただし、上述MBR/tが1.5以下である優れた曲げ加工性を安定して実現するためには、粗大第二相粒子の個数密度を5.0×103個/mm2以下にコントロールする必要がある。
〔平均結晶粒径〕
圧延方向に垂直な断面(C断面)における板厚方向の平均結晶粒径が小さいことも、良好な「強度-曲げ加工性バランス」を実現する上で有利となる。具体的には下記(A)により定義される平均結晶粒径が50.0μm以下である組織状態であることが望ましい。
(A)圧延方向に垂直な断面(C断面)を観察した光学顕微鏡画像上に、板厚方向の直線を無作為に引き、その直線によって切断される結晶粒の平均切断長を板厚方向の平均結晶粒径とする。ただし、1つまたは複数の観察視野中に、同一結晶粒を重複して切断しない複数の直線を無作為に設定し、複数の直線によって切断される結晶粒の総数が100個以上となるようにする。
〔製造方法〕
以上説明した銅合金板材は、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
溶解・鋳造→鋳片加熱→熱間圧延→第1冷間圧延→中間焼鈍→第2冷間圧延→溶体化処理→(仕上冷間圧延)→時効処理
なお、上記工程中には記載していないが、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
連続鋳造、半連続鋳造等の一般的な手法により鋳片を製造すればよい。
〔鋳片加熱〕
鋳片を930~1150℃で1時間以上加熱保持する。高いレベルの曲げ加工性が要求される場合は、1000~1150℃で2時間以上加熱保持する必要がある。この加熱は熱間圧延時の鋳片加熱工程を利用して実施することができる。一般的にCu-Ni-Al系銅合金の鋳片加熱は上記よりも低温域で行われており、諸特性が良好な高強度材を得る上で、それより高温で加熱する必要性は生じていなかった。しかし、本発明ではNiおよびAlの含有量が高い組成域において良好な「強度-曲げ加工性バランス」を実現させるために、強度に寄与する微細第二相粒子の存在量を十分に確保する必要がある。そのためには、鋳片を上記の高温に加熱することにより、鋳造組織中に存在する粗大な第二相をできるだけ固溶させておくことが有効となる。ただし、加熱温度が1150℃を超えると鋳造組織中の融点が低い部分が脆弱となり、熱間圧延で割れが生じる恐れがある。
〔熱間圧延〕
熱間圧延は、最終パスでの圧延温度が750℃以上となる条件で行えばよい。高いレベルの曲げ加工性が要求される場合は、Cu-Ni-Al系銅合金の一般的な熱間圧延温度よりも高めの温度で十分な圧延率を稼ぐことが重要である。具体的には、950℃以上の温度域での圧延率を65%以上とし、最終パスの圧延温度を800℃以上とする。各圧延パスの温度は、その圧延パスでワークロールから出た直後の材料の表面温度によって表すことができる。「950℃以上の温度域での圧延率」は、熱間圧延前の板厚をt0(mm)とし、圧延温度が950℃以上である最後の圧延パスによって得られた板厚をt1(mm)として、これらを下記(4)式に代入することによって定まる。
圧延率(%)=(t0-t1)/t0×100 …(4)
トータルの熱間圧延率は例えば70~97%とすればよい。熱間圧延終了後には、水冷などにより急冷することが好ましい。熱間圧延最終パス後の板厚は例えば7~15mmとすればよい。
〔第1冷間圧延-中間焼鈍-第2冷間圧延〕
後述時効処理後の板材において上述(2)式によるX線回折強度比XAが0.40以上である結晶配向を得るために、本発明では溶体化処理前の段階で、中間焼鈍を挟んだ冷間圧延工程を限定された条件で行う。具体的には、まず、第1冷間圧延を圧延率45~95%、より好ましくは60~93%で行う。次いで、中間焼鈍を650~800℃で1~100時間保持する条件で行う。保持温度を670~780℃の範囲に管理してもよい。保持時間は5時間以上とすることがより好ましい。あまり長時間の加熱は不経済となるので、通常は、例えば24時間の範囲で設定すればよい。その後、第2冷間圧延を圧延率75%以上、より好ましくは77%以上で行う。圧延率の上限は圧延機の能力によって制限を受けるが、例えば99%以下の範囲で設定すればよい。
〔溶体化処理〕
溶体化処理は、時効処理前にNi-Al系の第二相を十分に固溶させること(溶体化)が主目的である。本発明では一般的なCu-Ni-Al系銅合金の溶体化処理温度(800~900℃程度)よりも高温に加熱する。具体的には、900~1150℃で30~720秒保持する条件とする。このような高温域に加熱すると、保持時間が上記のように短くても、第二相を十分に固溶させることができる。ただし、最終的に上述(2)式によるX線回折強度比XAが0.40以上の結晶配向に調整するためには、溶体化処理の昇温過程において、急速な昇温を避け、300℃から800℃までの平均昇温速度が50~200℃/sとなるようにゆっくりと昇温することが重要である。この昇温速度の制御により、所望の結晶配向を得るのに適した再結晶集合組織が得られるものと考えられる。なお、高いレベルの曲げ加工性が要求される用途では、溶体化処理の加熱保持を「950~1100℃で30~360秒保持する」という、より限定された条件で行うことが望ましい。保持温度の下限を950℃に引き上げることで、より短時間で十分に溶体化を行うことができ、保持温度の上限を1100℃に引き上げ、かつ保持時間の上限を360秒に制限することで、結晶粒の粗大化を抑制することができるので、曲げ加工性に有利な組織状態が得られやすくなる。溶体化処理の加熱保持後には、例えば900℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/s以上となるように急冷することが好ましい。
〔仕上冷間圧延〕
板厚調整や、時効析出の駆動力となる格子歪を付与する目的などから、必要に応じて溶体化処理後の段階で最終的な冷間圧延を施すことができる。ただし、この冷間圧延では、圧延率が大きすぎると、圧延集合組織が発達しすぎてしまい、最終的に上述(2)式によるX線回折強度比XAが0.40以上の結晶配向を得ることが難しくなる。種々検討の結果、溶体化処理と時効処理の間に行う仕上冷間圧延の圧延率は50%以下に制限され、40%以下の圧延率とすることがより好ましい。この仕上冷間圧延は省略しても構わない。
〔時効処理〕
次いで時効処理を施す。時効処理条件は、所望の強度レベルに応じて、保持温度400~650℃、保持時間0.1~75時間の範囲で設定することができる。保持温度430~600℃、保持時間0.5~50時間の範囲で設定することがより好ましい。
時効処理を終えた板材には、必要に応じて、表面性状や板形状を改善するためのスキンパス圧延やテンションレベラーによる形状矯正などを施しても構わない。しかし、時効処理後に、圧延率10%以上の冷間圧延や、250℃以上に加熱する熱処理(いわゆる低温焼鈍など)は実施しないことが好ましい。これらの加工履歴や熱履歴を加えると、上述(2)式によるX線回折強度比XAが0.40以上の結晶配向を得ることが難しくなり、安定して高いヤング率を実現することができない。
以上のようにして得られた本発明に従う板材の板厚は例えば0.03~0.50mmである。この板材を素材として、プレス成形加工や曲げ加工を含む加工を施し、導電ばね部材等を得ることができる。
表1に示す化学組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を表2A、表2Bに示す温度、時間で加熱保持したのち抽出して、熱間圧延を施し、水冷した。トータルの熱間圧延率は90~95%であり、950℃以上の温度域での圧延率、最終パスの圧延温度および熱間圧延後の仕上板厚は表2A、表2B中に示してある。熱間圧延で割れが生じた一部の例では、その時点で製造を中止した。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)し、表2A、表2Bに示す条件で第1冷間圧延、中間焼鈍、第2冷間圧延を施した。第2冷間圧延で割れが生じた一部の例では、その時点で製造を中止した。その後、連続式の焼鈍炉を用いて表2A、表2Bに示す条件で溶体化処理を施した。加熱後の冷却は水冷とした。一部の例(No.11)を除き、表2A、表2Bに示す圧延率で仕上冷間圧延を施した。次いで、バッチ式の焼鈍炉を用いて表2A、表2Bに記載の温度で同表に記載の時間保持する時効処理を施した。雰囲気は大気である。このようにして、表2A、表2Bに示す板厚の板材製品(供試材)を得た。
各供試材について以下の調査を行った。
(X線回折強度比XA、XB
上掲の「X線回折強度比XAの求め方」および「X線回折強度比XBの求め方」に従い、X線回折強度比XA、XBを求めた。なお、銅合金板材試料の圧延面(ND面)に明らかな酸化が認められた場合には、酸洗または番手1500(JIS R6010:2000に規定される粒度P1500)の耐水研磨紙で研磨仕上した試料を使用した。
(板厚方向の平均結晶粒径)
圧延方向に垂直な断面(C断面)をエッチングして結晶粒界を現出させた観察面をSEMで観察し、前記(A)に定義される板厚方向の平均結晶粒径を求めた。
(粗大第二相粒子の個数密度)
前掲の「粗大第二相粒子の個数密度の求め方」に従い、板面(圧延面)を電解研磨した観察面をSEMにより観察し、長径5.0μm以上のNi-Al系析出物粒子の個数密度を求めた。観察面調製のための電解研磨液として蒸留水、リン酸、エタノール、2-プロパノールを10:5:5:1で混合した液を使用した。電解研磨は、BUEHLER社製の電解研磨装置(ELECTROPOLISHER POWER SUPPLUY、ELECTROPOLISHER CELL MODULE)を用いて、電圧15V、時間20秒の条件で行った。
(ヤング率)
上記(A)に定義されるヤング率を求めた。引張試験は試験数n=3で行った。各試験片毎に上記(A)に従うヤング率(縦軸が応力、横軸がひずみである「応力-ひずみ直交座標系」における回帰直線の傾き)を求め、3本の試験片によるヤング率の平均値を算出し、その値を当該板材のヤング率と定めた。このヤング率が130GPa以上であるものを合格と判定した。
(引張強さ)
各供試材から圧延方向(LD)の引張試験片(JIS 5号)を採取し、試験数n=3でJIS Z2241:2011に基づく引張試験行い、引張強さを測定した。n=3の平均値を当該供試材の成績値とした。高強度の導電ばね部材用途を考慮し、引張強さが900Pa以上のものを合格と判定した。
(硬さ)
板面のビッカース硬さ(JIS Z2244:2009のHV100)を測定した。高強度の導電ばね部材用途を想定し、270HV以上のものを合格と判定した。
(曲げ加工性)
JIS H3110:2012に記載の方法で曲げ軸が圧延平行方向(B.W.)となる場合の90°W曲げ試験を行った。割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tを求めた。Ni、Al含有量の高いCu-Ni-Al系銅合金の強度レベルを上述のように高めた板材を導電ばね部材に加工する場合を想定し、MBR/tが1.5以下であるものを◎(曲げ加工性;優秀)、1.5を超え2.0以下であるものを○(曲げ加工性;良好)それ以外を×(曲げ加工性;不十分)と評価し、○評価以上を合格と判定した。
(耐変色性)
供試材から幅10mm×長さ65mmのサンプルを採取し、板面(圧延面)を番手1200(JIS R6010:2000に規定される粒度P1200)の研磨紙による乾式研磨仕上として、耐候性試験片を作製した。耐候性試験は、試験片を温度50℃、相対湿度95%の雰囲気中に24時間暴露する方法で行った。耐候性試験の前および後の試験片表面について、それぞれL***を測定し、JIS Z8730:2009に規定されるL***表示色による色差ΔE* abを求めた。この色差ΔE* abが5.0未満であるものは導電ばね部材として良好な耐変色性を有すると判断できる。したがって、色差ΔE* abが5.0未満であるものを合格(耐変色性;良好)と判定した。なお、参考のため、無酸素銅(C1020)、70-30黄銅(C2600)、ネーバル黄銅(C4622)の各板材についても同条件で耐候性試験を実施した。その結果、色差ΔE* abは、無酸素銅が11.0、70-30黄銅が10.5、ネーバル黄銅が10.7であった。
これらの調査結果を表3A、表3Bに示す。
Figure 0007181768000001
Figure 0007181768000002
Figure 0007181768000003
Figure 0007181768000004
Figure 0007181768000005
本発明例のCu-Ni-Al系銅合金板材はいずれも、高いヤング率、高強度、良好な曲げ加工性、優れた耐変色性を有する。なかでも、上記[8]、[9]に示した、より限定された製造条件に従ったものは、高いレベルの曲げ加工性(◎評価)を有する。
これに対し、 No.31は鋳片加熱温度が高いので、熱間圧延中に融点に近い脆弱な部分で割れが生じ、その後の工程に進めることができず、実験を中止した。
No.32は合金のNi含有量が高い例、No.34は合金のAl含有量が高い例である。これらはいずれも熱間加工性が悪く、熱間圧延中に割れが生じたので、その後の工程に進めることができず、実験を中止した。
No.33は合金のNi含有量が低いため、耐変色性に劣った。
No.35は合金のAl含有量が低いため、強度レベルが低く、耐変色性も悪かった。
No.36は溶体化処理での昇温速度が速く、また溶体化処理時間が短いので、所定の結晶配向を得ることができず、ヤング率が低かった。
No.37は仕上冷間圧延での圧延率が高いので所定の結晶配向を得ることができず、ヤング率が低かった。
No.38は第1冷間圧延での圧延率が低いので所定の結晶配向を得ることができず、ヤング率が低かった。
No.39は第1冷間圧延での圧延率が高く、第2冷間圧延での圧延率が低いので所定の結晶配向を得ることができず、ヤング率が低かった。
No.40は中間焼鈍の温度が低いので第1冷間圧延での加工歪を十分に除去することができず、第2冷間圧延で割れが生じた。その後の工程に進めることができず、実験を中止した。
No.41は中間焼鈍の温度が高いので所定の結晶配向を得ることができず、ヤング率が低かった。

Claims (11)

  1. 質量%で、Ni:12.0~30.0%、Al:1.80~6.50%、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式を満たす化学組成を有し、下記(2)式のX線回折強度比Xが0.40以上である結晶配向を有する銅合金板材。
    Ni/Al≦15.0 …(1)
    ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
    =I{311}/I{220} …(2)
    ここで、I{311}およびI{220}はそれぞれ圧延面のX線回折パターンにおける{311}結晶面および{220}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
  2. 下記(3)式のX線回折強度比Xが0.50以上である結晶配向を有する請求項1に記載の銅合金板材。
    =I{311}/I{311} …(3)
    ここで、I{311}は圧延面のX線回折パターンにおける{311}結晶面のX線回折ピークの積分強度、I{311}は純銅粉末標準試料のX線回折パターンにおける{311}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
  3. 下記(A)に定義される圧延方向のヤング率が130GPa以上である請求項1または2に記載の銅合金板材。
    (A)当該板材から採取した長手方向が圧延平行方向であるJIS 5号引張試験片についてJISZ 2241:2011に基づきクロスヘッド変位速度vが0.02mm/sである引張試験を行って0.1秒毎にひずみと応力の値を記録し、応力が100MPaから400MPaまでの間で記録されたひずみと応力の全データを用いて応力-ひずみ直交座標系における回帰直線を最小二乗法により定めたときの、当該回帰直線の傾き。
  4. 圧延方向の引張強さが900MPa以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  5. 粒子を取り囲む最小円の直径をその粒子の「長径」と呼ぶとき、圧延面を研磨した観察面において長径5.0μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が30.0×10個/mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  6. 粒子を取り囲む最小円の直径をその粒子の「長径」と呼ぶとき、圧延面を研磨した観察面において長径5.0μm以上の粗大第二相粒子の個数密度が5.0×10個/mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  7. 質量%で、Ni:12.0~30.0%、Al:1.80~6.50%、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式を満たす化学組成の鋳片を、930~1150℃で1時間以上加熱する工程(鋳片加熱工程)、
    最終パスでの圧延温度が750℃以上となる条件で熱間圧延を施す工程(熱間圧延工程)、
    圧延率45~95%の冷間圧延を施す工程(第1冷間圧延工程)、
    第1冷間圧延後の板材に650~800℃で1~100時間保持する熱処理を施す工程(中間焼鈍工程)、
    中間焼鈍後の板材に圧延率75%以上の冷間圧延を施す工程(第2冷間圧延工程)、
    第2冷間圧延後の板材に300℃から800℃までの平均昇温速度が50~200℃/sとなるように昇温して、900~1150℃で30~720秒保持する熱処理を施す工程(溶体化処理工程)、
    溶体化処理後の板材に圧延率50%以下の範囲で冷間圧延を施す工程(仕上冷間圧延工程)、
    仕上冷間圧延後の板材に400~650℃で0.1~75時間保持する熱処理を施す工程(時効処理工程)、
    を上記の順に行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の銅合金板材の製造方法。
    Ni/Al≦15.0 …(1)
    ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
  8. 請求項7に記載の製造方法において、仕上冷間圧延工程を行わず、溶体化処理工程によって得られた材料を効処理工程に供する、銅合金板材の製造方法。
  9. 質量%で、Ni:12.0~30.0%、Al:1.80~6.50%、Mg:0~0.30%、Cr:0~0.20%、Co:0~0.30%、P:0~0.10%、B:0~0.05%、Mn:0~0.20%、Sn:0~0.40%、Ti:0~0.50%、Zr:0~0.20%、Si:0~0.50%、Fe:0~0.30%、Zn:0~1.00%、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式を満たす化学組成の鋳片を、1000~1150℃で2時間以上加熱する工程(鋳片加熱工程)、
    950℃以上での圧延率が65%以上となり、最終パスでの圧延温度が800℃以上となる条件で熱間圧延を施す工程(熱間圧延工程)、
    圧延率45~95%の冷間圧延を施す工程(第1冷間圧延工程)、
    第1冷間圧延後の板材に650~800℃で1~100時間保持する熱処理を施す工程(中間焼鈍工程)、
    中間焼鈍後の板材に圧延率75%以上の冷間圧延を施す工程(第2冷間圧延工程)、
    第2冷間圧延後の板材に300℃から800℃までの平均昇温速度が50~200℃/sとなるように昇温して、950~1100℃で30~360秒保持する熱処理を施す工程(溶体化処理工程)、
    溶体化処理後の板材に圧延率50%以下の範囲で冷間圧延を施す工程(仕上冷間圧延工程)、
    仕上冷間圧延後の板材に400~650℃で0.1~75時間保持する熱処理を施す工程(時効処理工程)、
    を上記の順に行う、請求項5に記載の銅合金板材の製造方法。
    Ni/Al≦15.0 …(1)
    ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量値が代入される。
  10. 請求項9に記載の製造方法において、仕上冷間圧延工程を行わず、溶体化処理工程によって得られた材料を効処理工程に供する、銅合金板材の製造方法。
  11. 請求項1~6のいずれか1項に記載の銅合金板材を材料に用いた導電ばね部材。
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