JP5538799B2 - インクジェット用インク、インクジェット記録方法、及びインクカートリッジ - Google Patents
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Description
一般式(1) R1−(S−R1’)n1
一般式(2) R2−(X−S−R2’)n2
一般式(3) R3−(O−X−S−R3’)n3
(上記式中、R1、R2及びR3はそれぞれエステル結合を含まない3官能以上の有機基であり、Xはアルキレン基であり、R1’、R2’及びR3’はそれぞれ芳香族(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種のモノマーと、酸モノマー及びその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合鎖であり、n1、n2及びn3はそれぞれ3以上の整数である。)
(星形構造を有するポリマー(スターポリマー))
本発明のインクは、中心骨格に特定の共重合鎖が結合してなるスターポリマー及び顔料を含有してなるインクである。該スターポリマーは、芳香族(メタ)アクリレート又は芳香族(メタ)アクリルアミドと、酸モノマー又はその塩との共重合鎖が中心骨格に結合した星形構造を有する。
一般式(1) R1−(S−R1’)n1
一般式(2) R2−(X−S−R2’)n2
一般式(3) R3−(O−X−S−R3’)n3
上記中心化合物(多価メルカプト化合物)を合成する方法としては、特開平07−206809号公報に記載される多価ハロゲン化合物に対してアルカリと硫化水素を用いる方法が挙げられる。例えば、1,1,1−トリクロロエタン、1,2,3−トリクロロプロパン、1,1,2−トリブロモエタン、1,2,3−トリブロモプロパン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサンなどの多価ハロゲン化合物を出発物質として用い、硫化水素によって多価ハロゲン化合物中のハロゲンをメルカプト基に置換することで、対応した価数の多価メルカプト化合物を得ることができる。このようにして得られる一般式(a)で表される多価メルカプト化合物中のR1は、出発物質である多価ハロゲン化合物からハロゲンを除いた構造である。
上記中心化合物(多価メルカプト化合物)を合成する方法としては、特開2005−213679号公報に記載される多価アルコールを濃硫酸により脱水しオレフィンにした後、硫化水素を付加する方法が挙げられる。例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどの多価アルコールを出発物質とすることで、対応した価数の多価メルカプト化合物を得ることができる。また、特開平11−209459号公報に記載される多価エポキシ化合物に硫化水素を付加する方法も用いることができる。例えば、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)などの多価エポキシ化合物を出発物質とすることで、対応した多価メルカプト化合物を得ることができる。
上記中心化合物(多価メルカプト化合物)を合成する方法としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、特開2005−213679号公報に記載される多価アルコール化合物に対してアルカリと塩化アリルを用いて多価アリル化合物とした後、(2)と同様にしてオレフィンに硫化水素を付加する方法が挙げられる。例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、シクリトール、イノシトール、D−アラビトール、キシリトール、アドニトール、ズルシトール、L−イジトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、グリセリン縮合物であるポリグリセリン#310、同#500、同#750(いずれも製品名;阪本薬品工業製)などの多価アルコール化合物を出発物質とすることで、対応した多価メルカプト化合物を得ることができる。また、(2)と同様に、多価エポキシ化合物に硫化水素を付加する方法でも得ることができる。例えば、デナコールEX−411、EX−421、EX−512、EX−521、EX−611、EX−612、EX−614B、EX−622(いずれも製品名:ナガセケムテックス製)など。多価アルコールのグリシジルエーテルを出発物質とすることで、対応した多価メルカプト化合物を得ることができる。
本発明のインクに使用する色材は顔料であり、該顔料は上記で説明したスターポリマーにより水性媒体中に分散されてなることが特に好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、さらには2.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。顔料としては、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。顔料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のインクは、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有することが好ましい。水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、さらには30.0質量%以上80.0質量%以下であることがより好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、さらには3.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。
本発明のインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤などの添加剤を適宜に添加することができる。このような添加剤のインク中における含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、さらには0.2質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記したような成分で構成される本発明のインクを調製する方法としては、以下のような方法とすることができる。初めに、少なくともスターポリマーと水とを混合した混合物に顔料を添加して混合撹拌した後、分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って顔料分散液を得る。さらに、必要に応じてこの顔料分散液に、水性媒体や上記で挙げたような適宜に選択された添加剤などを加え、撹拌して本発明のインクとする。
本発明のインクは、複数のインクで構成されるインクセットとして用いてもよい。該インクセットは、例えば、上記で説明した少なくとも顔料及びスターポリマーを含有してなる本発明のインク(顔料インク)と、少なくとも染料を含有してなるインク(染料インク)を組み合わせてなるものが挙げられる。かかる構成のインクセットとすることで、前記顔料インクにより得られる効果に加えてさらに、複数のインクで形成した画像間における耐ブリーディング性に特に優れた画像を得ることができる。上記インクセットは、インクジェット記録に用いる、つまりインクジェット用インクセットであることが特に好適である。上記インクセットは、上記で説明した本発明のインク(顔料インク)の他にも、その他の構成のインクをさらに組み合わせてなるものであってもよい。このようなインクとしては、例えば、スターポリマーを含まない顔料インクや、色材として染料及び顔料を共に含有するインクが挙げられる。
本発明のインクは、記録媒体上においてインクと接触した際に、インク中の顔料の平均粒径を増大させる、すなわちインク中の顔料の分散状態を不安定化させる作用を有する反応液と組み合わせて、インクと反応液とのセットとして使用することが好ましい。このようなインクと反応液とのセットを用いて記録を行うことで、画像濃度や発色性がより高い記録物を得ることができる。以下、本発明において使用する反応液について説明する。
反応液に使用する、インク中に含まれる顔料の平均粒径を増大させる、すなわちインク中の顔料の分散状態を不安定化させる作用をもつ化合物(反応剤)としては、多価金属イオンやカチオン性ポリマーが挙げられる。これらの反応剤は、インク中の顔料と反応して、顔料の平均粒径を増大させる、すなわち顔料の分散状態を不安定化させる作用を生じる。
本発明で使用する反応液は、水及び水溶性有機溶剤の混合媒体である水性媒体を含有することが好ましい。水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、25.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、反応液中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、5.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましく、さらには5.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。反応液に使用する水溶性有機溶剤としては、反応液に用いてもよいことが知られている公知の水溶性有機溶剤を用いることができる。
本発明において使用する反応液には、必要に応じて、さらに、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜配合してもかまわない。浸透促進剤として機能する界面活性剤の選択と添加量は、記録媒体に対する反応液の浸透性を抑制するように適切に決定することが好ましい。さらに、本発明で使用する反応液は、無色であることがより好ましいが、記録媒体上でインクと接触、混合した際に、インクの色調を変えない程度の淡色のものでもよい。さらに、反応液は、25℃での粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下の範囲となるように調整されたものであることが好ましい。
本発明で使用する反応液を記録媒体に付与する方法としては、インクと同様にインクジェット記録方式を用いる方法、及びローラなどで記録媒体に塗布する方法などが挙げられる。本発明においては、記録媒体上においてインクが付与される領域を少なくとも含むように、反応液を付与することが特に好ましい。また、反応液とインクとを記録媒体に付与する順序は、どのような順序であってもよいが、反応液を先に付与した後にインクを付与することが特に好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、使用するインクが、前記本発明のインクであることを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェット方式としては、インクに力学的エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
本発明のインクを用いるのに好適なインクジェット記録装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えてなり、インク収容部に収容されているインクが、前記本発明のインクであるものである。特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出するインクジェット記録装置である場合に、より顕著な効果を得ることができる。
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図2参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジに対して着脱可能に搭載される。
次の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
MEK:メチルエチルケトン
BzA:ベンジルアクリレート
nBA:n−ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
BzAm:N−ベンジルアクリルアミド
P−1M:ライトエステルP−1M(共栄社化学製)
SA:NKエステルSA(新中村化学製)
St:スチレン
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
tBMA:tert−ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
V−59:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製)
PEG1,000:ポリエチレングリコール(平均分子量1,000)
AE100:アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(川研ファインケミカル製)
9−BNN:9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン
(合成例1)
チオール化合物S1の合成は、特開2005−213679号公報に記載の実施例4にしたがって行った。すなわち、容量300mLのオートクレーブ中に、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル29.6g(0.1mol)のメタノール溶液200gと9−BNN2.4mg(0.02mmol)を仕込み、系内を窒素置換した。ここに、硫化水素23.9g(0.7mol)を導入し、内温を20℃に保ち、5時間反応させた。反応後、減圧濃縮することにより、下記の4官能チオール化合物S1を得た。
チオール化合物S2の合成は、特開昭63−162640号公報に記載の実施例1にしたがって行った。すなわち、容量300mLのオートクレーブ中に、イノシトール18.0g(0.1mol)、テトラメチルアンモニウムブロマイド7.7g、48%水酸化ナトリウム水溶液25.0g(0.3mol)を仕込み、90℃で1時間撹拌した。ここに、塩化アリル23.0g(0.3mol)を導入し、内温を90℃に保ち、4時間反応させた。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液25.0gをさらに加えて1時間撹拌し、塩化アリル23.0gを導入して4時間反応させた。反応後ヘキサンにより有機成分を抽出した後、減圧乾燥することにより、イノシトールヘキサアリルエーテルを得た。その後、合成例1のペンタエリスリトールテトラアリルエーテルをイノシトールヘキサアリルエーテルに代えること以外は合成例1と同様にして、下記の6価官能チオール化合物S2を得た。
チオール化合物S3の合成は以下のようにして行った。ナスフラスコ中に、トルエン100g、ペンタエリスリトール13.6g(0.1mol)、ジメチルホルムアミド(DMF)10g、塩化チオニル119g(1mol)を加えた。このフラスコを80℃に加熱し、2,2−ジ−(メチルクロロ)−1,3−ジクロロプロパン(DMCDCM)を得た。反応液にイオン交換水を加えて、未反応物、DMF、塩化チオニルをイオン交換水へ抽出し、さらに、分液漏斗を用いてトルエン相のみをナスフラスコに取り、エバポレーターでトルエンを除去してDMCDCMを精製した。続いて、DMCDCM28.9g(0.1mol)を室温下でテトラヒドロフラン100gに溶解させ、これにチオ尿素7.6gを加えた。1時間撹拌した後、1N水酸化ナトリウム水溶液100mLを加えて、下記の4官能チオール化合物S3を得た。
上記のチオール化合物S3の合成方法において、DMCDCMを精製した後の反応経路と同様にして、DMCDCMに代えて、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン29.1g(0.1mol)を用いて反応を行った。下記の6官能チオール化合物S4を得た。
チオール化合物S1の合成方法において、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルをペンタエリスリトールトリアリルエーテルに代えること以外は合成例1と同様にして、下記の3官能チオール化合物S5を得た。
チオール化合物S2の合成方法において、イノシトールをトリペンタエリスリトールに代えること以外は合成例2と同様にして、下記の8官能チオール化合物S6を得た。
チオール化合物S2の合成方法において、イノシトールをポリグリセリン#500(グリセリン7量体、阪本薬品工業製)に代えること以外は合成例2と同様にして、下記の9官能チオール化合物S7を得た。
チオール化合物S3の合成方法において、ペンタエリスリトールをトリメチロールプロパンに代えること以外は合成例3と同様にして、下記の3官能チオール化合物S8を得た。
チオール化合物S3の合成方法において、ペンタエリスリトールをトリペンタエリスリトールに代えること以外は合成例3と同様にして、下記の8官能チオール化合物S9を得た。
(ポリマー1〜5)
撹拌装置、窒素導入管、還流式冷却装置及び温度計を備えたフラスコにMEK90部を加え、窒素雰囲気下80℃に昇温した。次いでBzAを65部、nBAを20部、AAを15部、スターポリマーの中心骨格となる中心化合物として4官能チオール化合物S1を10部混合した溶液を2時間かけて滴下した。同時に0.3部のV−59を10部のMEKに溶解した重合開始剤溶液を3時間かけて滴下した。重合開始剤溶液は、4官能チオール化合物S1を含む混合溶液を滴下し始めるのと同じタイミングで滴下し始めた。そして、重合開始剤溶液を滴下完了後(滴下開始から3時間後)引き続き2時間反応を継続させた。
ポリマー1と同じ組成のモノマーと中心化合物とを用いて、中心化合物の比率を変化させた以外はポリマー1と同様の合成方法にて、数平均分子量の異なるポリマー5及び6を合成した。ポリマー5及び6の各物性を下記表2にまとめて示す。
ポリマー3と同じ組成のモノマーと中心化合物を用いて、中心化合物の比率を変化させた以外はポリマー3と同様の合成方法にて、数平均分子量の異なるポリマー7及び8を合成した。ポリマー7及び8の各物性を下記表3にまとめて示す。
ポリマー1と同じ組成のモノマーを用いて、中心化合物とその比率を変化させた以外はポリマー1と同様の合成方法にて、数平均分子量の異なるポリマー9及び10を合成した。ポリマー9及び10の各物性を下記表4にまとめて示す。
ポリマー3と同じ組成のモノマーを用いて、中心化合物とその比率を変化させた以外はポリマー3と同様の合成方法にて、数平均分子量の異なるポリマーを合成した。ポリマー11及び12の各物性を下記表5にまとめて示す。
ポリマー1と同じ組成のモノマーを用いて、中心化合物とその比率を変化させた以外はポリマー1と同様の合成方法にて、アームの数の異なるポリマー13〜15を合成した。ポリマー13〜15の各物性を下記表6にまとめて示す。
ポリマー3と同じ組成のモノマーを用いて、中心化合物とその比率を変化させた以外はポリマー3と同様の合成方法にて、アームの数の異なるポリマー16及び17を合成した。ポリマー16及び17の各物性を下記表7にまとめて示す。
ポリマー1と同じ中心化合物を用いて、使用するモノマーを下表のように変化させた以外はポリマー1と同様の合成方法にて、組成の異なるポリマー18〜20を合成した。ポリマー18〜20の各物性を下記表8にまとめて示す。なお、下記表8には、上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
ポリマー15と同じ中心化合物を用いて、使用するモノマーを下表のように変化させた以外はポリマー15と同様の合成方法にて、組成の異なるポリマー21を合成した。ポリマー21の各物性を下記表9にまとめて示す。
ポリマー21と同じ組成のモノマーと中心化合物を用いて、中心化合物の比率を変化させた以外はポリマー21と同様の合成方法にて、数平均分子量の異なるポリマー22を合成した。ポリマー22の各物性を下記表10にまとめて示す。
ポリマー1の共重合するモノマーの組成比(質量比)を下記表11のように変えたこと以外はポリマー1と同様の合成方法にて、酸価の異なるポリマー23〜28を合成した。ポリマー23〜28の各物性を下記表11にまとめて示す。なお、表11には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
ポリマー1の共重合するモノマーの組成比(質量比)と中心化合物の比率を下記表12のように変えたこと以外はポリマー1と同様の合成方法にて、芳香族モノマーの比率の異なるポリマー29〜32を合成した。ポリマー29〜32の各物性を下記表12にまとめて示す。なお、表12には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
ポリマー1の共重合するモノマーの組成比(質量比)と中心化合物の比率を下記表13のように変えたこと以外はポリマー1と同様の合成方法にて、芳香族モノマー及び酸モノマーがアームに占める質量比率の異なるポリマー33及び34を合成した。ポリマー33及び34の各物性を下記表13に示す。なお、表13には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
ポリマー35は、本発明の参考例に使用したスターポリマーである。ポリマー1の中心化合物をPEMPに変更した以外はポリマー1と同様の合成方法にて、中心骨格とアームとの間の結合様式の異なるポリマー35を合成した。ポリマー35の各物性を下記表14にまとめて示す。
ポリマー36は、本発明の比較例に使用したスターポリマーである。表15においては、このポリマーは、便宜上、一般式(3)の構造を有するスターポリマーとして記載しているが、本発明におけるR3’の要件を満たしていない。具体的には、モノマーとして芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドを共重合鎖(R3’)に含まない。ポリマー1の芳香族(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるBzMAを芳香族(メタ)アクリル酸エステルモノマーでないStにした以外はポリマー1と同様の方法でポリマー36を合成した。ポリマー36の各物性を下記表15にまとめて示す。
ポリマー37は、本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、スターポリマーを構成する共重合鎖が、芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドと酸モノマー又はその塩とから構成されていないものである。ポリマーの製法は、特開2001−40256号公報の実施例1にしたがった。中心化合物はトリヒドロキシベンゼン、アームを構成するモノマーはエチレンオキサイド、アームの数は3本である。ポリマー37の各物性を下記表16にまとめて示す。
ポリマー38は、本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、スターポリマーを構成する共重合鎖が、芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドと酸モノマー又はその塩から構成されていないものである。このポリマーの製法は、特開2001−40256号公報の実施例15にしたがった。中心化合物はTMMP、アームを構成するモノマーはN,N−ジメチルアクリルアミド、アームの数は3本である。ポリマー38の各物性を下記表17にまとめて示す。
ポリマー39は、本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、スターポリマーを構成する共重合鎖が、芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドと酸モノマー又はその塩とから構成されていないものである。このポリマーの製法は特開平9−249709号公報の参考例1にしたがった。中心化合物及びその組成比はPEMG:9部、アームを構成するモノマー及びその組成比はnBA:50部、2EHA:40部、HEA:10部であり、アームの数は4本である。ポリマー39の各物性を下記表18にまとめて示す。
ポリマー40は、本発明の比較例に使用したポリマーで、原料にスターポリマーを含むが、合成されるポリマーはスターポリマーでない。つまり、本発明で用いるような、スターポリマーを構成する共重合鎖が、芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドと酸モノマー又はその塩とから構成されていないものである。ポリマーの製法は特開昭59−124922号公報の製造例1にしたがった。スターポリマーであるペンタエリスリトールポリマーとイソホロン系イソシアネートで架橋し、ペンタエリスリトールポリマーのヒドロキシル基に無水フタル酸を付加させたもので合成されるポリマーはスターポリマーではない。ポリマー40の各物性を下記表19にまとめて示す。
ポリマー41は、本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このスターポリマーは単離可能な中心骨格を持たず、スターポリマーを構成する共重合鎖が、芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドから構成されていないものである。このポリマーの製法は、特開2000−169771号公報のスターポリマー1の合成方法にしたがった。アームを構成するモノマーは芳香族(メタ)アクリレートや芳香族(メタ)アクリルアミドでないnBMAとMAAであり、アームの片末端に重合したEGDMAの架橋によりスターポリマーとしたものである。アームを構成するモノマー及びその組成比はnBMA:69部、MAA:17部、EGDMA:14部であり、アームの数は制御不能のため分布を有しており一義的に定められない。ポリマー41の各物性を下記表20にまとめて示す。
ポリマー42は、本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このスターポリマーは、本発明で使用する一般式(1)〜(3)で表される構造のスターポリマーに必須である、硫黄原子(各式中のS)を有していない。また、単離可能な中心骨格を持っていない。このポリマーは、ポリマー41と同様に特開2000−169771号公報のスターポリマー1の合成方法を用いてアームを構成するモノマーを下記表21に示す通りとした。下記表21中でBzMA/nBMA/MAAはこの3種のモノマーがランダムに配置されていることを示す。また、表中の記号「//EGDMA」はEGDMAがアームの片末端にブロック化されて共重合されていることを示す。特開2000−169771号公報には、アームを構成するモノマーとして芳香族(メタ)アクリル酸エステル又は芳香族(メタ)アクリルアミドを含まない。しかし、性能を比較しやすくするため、あえて、芳香族(メタ)アクリル酸エステルであるBzMAを共重合させた場合について述べる。ポリマー42の各物性を下記表21にまとめて示す。
ポリマー43は、本発明の比較例に使用した直鎖状ポリマーである。このポリマーはリビングアニオン重合により得た。合成方法は「新高分子実験学2」高分子の合成・反応(1)付加系高分子の合成 高分子学会編を参考にした。本直鎖状ポリマーのモノマーを下記表22に示す通りとした。重合に際し、実験装置及び実験手順は「新高分子実験学2」高分子の合成・反応(1)付加系高分子の合成 高分子学会編 212頁記載の実験例2.4.1を用いた。溶媒をトルエン100部、開始剤をtert−ブチルリチウム/トリブチルアルミニウムを2部用い、重合温度を−78℃、反応時間を24時間とした。反応後、塩酸/メタノールを加えて停止反応を行うと同時にtBMAの加水分解反応を行ってMAAとした。その後過剰のヘキサンを加えてポリマーを析出させて、真空乾燥を行った。ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水を加えて、25%のポリマー43の水溶液を得た。ポリマー43の各物性を下記表22にまとめて示す。
(ブラック顔料分散液の調製)
・ポリマー水溶液1(固形分濃度25%) 20部
・2−ピロリドン 10部
・イオン交換水 55部
・分散機:超高圧ホモジナイザーNM2−L200AR(吉田機械興業製)
・処理圧力:150MPa
・処理パス:10パス
・ポリマー水溶液1(固形分濃度25%) 20部
・2−ピロリドン 10部
・イオン交換水 55部
・分散機:ビーズミル UAM−015(製品名)(寿工業製)
・使用ビーズ:0.05mm径ジルコニアビーズ
・ビーズ充填率:70%(嵩比重換算)
・ローター回転数:42.1Hz
上記シアン顔料分散液における顔料をシアン顔料からマゼンタ顔料(CROMOPHTAL Pink PT;チバスペシャリティケミカルズ製)とした以外はシアン顔料分散液と同じ方法によりマゼンタ顔料分散液を調製した。
上記シアン顔料分散液における顔料をシアン顔料からイエロー顔料(IRGALITE Yellow GS;チバスペシャリティケミカルズ製)とした以外はシアン顔料分散液と同じ方法によりイエロー顔料分散液を調製した。
(ブラックインクの調製)
上記のブラック顔料分散液1を使用し、下記に示す各成分を混合し、ブラックインク1とした。
・ブラック顔料分散液1(顔料濃度として5部) 33部
・グリセリン 10部
・エチレングリコール 5部
・PEG1,000 5部
・AE100 0.5部
・イオン交換水 46.5部
また、ブラック顔料分散液2〜43を用いてブラックインク1のブラック顔料分散液1を変えた以外は、ブラックインク1と同様の方法でブラックインク2〜43をそれぞれ調製した。
ブラックインク1において、ブラック顔料分散液1をシアン顔料分散液とした以外はブラックインク1と同様にしてシアンインクを調製した。
ブラックインク1において、ブラック顔料分散液1をマゼンタ顔料分散液とした以外はブラックインク1と同様にしてマゼンタインクを調製した。
ブラックインク1において、ブラック顔料分散液1をイエロー顔料分散液とした以外はブラックインク1と同様にしてイエローインクを調製した。
(光学濃度)
上記で得られた各ブラックインクをそれぞれインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジをインクジェット記録装置 PIXUS iP4300(キヤノン製)に搭載した。そして、記録モードを普通紙・標準モードとして、キヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)に記録デューティが100%であるベタ画像を記録して記録物を作製した。得られた記録物について、ベタ画像の部分における光学濃度OD1を測定することにより光学濃度の評価を行った。光学濃度は、反射濃度計RD-19I(GretagMacbeth製)を用いて測定した。光学濃度の評価基準は以下の通りである。評価結果を表23に示す。
A:1.5<OD1
B:1.4<OD1≦1.5
C:1.2<OD1≦1.4
D:1.0<OD1≦1.2
E:OD1≦1.0であるか、又はベタ画像がかすれていた(吐出不良が起きた)
上記で得られた各ブラックインクをそれぞれインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジと、染料インクとして、BCI−7eイエローインク(キヤノン製)とをインクジェット記録装置 PIXUS iP4300(キヤノン製)に搭載した。そして、記録モードを普通紙・標準モードとして、キヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)に染料インクで形成したベタ画像の上にブラックインクで文字を記録した記録物を作成した。得られた記録物について、文字の部分におけるラジェットネス値Ragを測定することにより耐ブリーディング性の評価を行った。ラジェットネス値は、画像評価装置Personal IAS(QEA製)を用いて測定した。耐ブリーディング性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表23に示す。
A:Rag<10
B:10≦Rag<15
C:15≦Rag<20
D:20≦Rag<30
E:30≦Ragであるか、又は文字がかすれていた(吐出不良が起きた)
上記で得られた各ブラックインクを温度60℃の恒温槽中にて1週間保存した後、該インクを室温まで冷却して、上記の光学濃度と同様の評価方法及び評価基準によりインクの保存安定性の評価を行った。評価結果を表23に示す。
上記で得られた各ブラックインクを温度60℃の恒温槽中にて1週間保存した後、該インクを室温まで冷却して、上記の文字品位と同様の評価方法及び評価基準によりインクの保存安定性の評価を行った。評価結果を表23に示す。
(彩度)
上記で得られた各カラーインクをそれぞれインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジをインクジェット記録装置 PIXUS iP4300(キヤノン製)に搭載した。そして、記録モードを普通紙・標準モードとして、キヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)に記録デューティが100%であるベタ画像を記録して記録物を作製した。得られた記録物について、ベタ画像の部分における彩度C*を測定することにより彩度の評価を行った。具体的には、各色の画像について、CIEで規定される色差表示法であるL*a*b*表色系におけるa*座標及びb*座標を、反射濃度計RD−19I(Gretag Macbeth製)を用いて測定し、下記式で定義される彩度C*の値を算出した。得られたC*の値により彩度の評価を行った。なお、彩度C*の値が大きいほど発色性が高いことを示す。評価結果を表24に示す。
C*={(a*)2+(b*)2}1/2
上記で得られた各カラーインクをそれぞれインクカートリッジに充填した。そして、前記ブラックインクの評価と同様に、このカラーインクカートリッジと、染料インクとして、BCI−7eブラックインク(キヤノン製)とをインクジェット記録装置 PIXUS iP4300(キヤノン製)に搭載した。そして、記録モードを普通紙・標準モードとして、キヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)に各カラーインクで形成したベタ画像の上に染料インクで文字を記録した記録物を作成した。得られた記録物について、文字の部分におけるラジェットネス値Ragを測定することにより耐ブリーディング性の評価を行った。ラジェットネス値は、画像評価装置Personal IAS(QEA製)を用いて測定した。評価結果を表24に示す。
上記で得られた各カラーインクを温度60℃の恒温槽中にて1週間保存した後、該インクを室温まで冷却して、上記の彩度と同様の評価方法及び評価基準によりインクの保存安定性の評価を行った。評価結果を表24に示す。
上記で得られた各カラーインクを温度60℃の恒温槽中にて1週間保存した後、該インクを室温まで冷却して、上記の文字品位と同様の評価方法及び評価基準によりインクの保存安定性の評価を行った。評価結果を表24に示す。なお、表24には、上記で得た、ブラックインク1を用いた場合の評価結果を併せて示した。
下記に示す各成分を混合し、ろ過して、反応液を調製した。
・ジエチレングリコール 10.0部
・メチルアルコール 5.0部
・硝酸マグネシウム 3.0部
・AE100 0.1部
・イオン交換水 81.9部
上記で得られた反応液と、前記ブラックインク1、前記シアン、前記マゼンタ、及び前記イエローの各カラーインクとを組み合わせてインクと反応液とのセットとした。このセットを構成する反応液をキヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)に先に付与した後、反応液と各インクとがそれぞれ接触するように、ブラックインク1、シアン、マゼンタ、及びイエローの各カラーインクを記録して記録物を作製した。得られた記録物について、反応液を用いること以外は前記と同様の方法及び基準で、光学濃度、彩度、及び文字品位の評価を行った。評価結果を表24に示す。
Claims (11)
- 顔料と、下記一般式(1)、下記一般式(2)及び下記一般式(3)からなる群から選ばれる少なくとも1つの式で示されるスターポリマーとを含有することを特徴とするインクジェット用インク。
一般式(1) R1−(S−R1’)n1
一般式(2) R2−(X−S−R2’)n2
一般式(3) R3−(O−X−S−R3’)n3
(上記式中、R1、R2及びR3はそれぞれエステル結合を含まない3官能以上の有機基であり、Xはアルキレン基であり、R1’、R2’及びR3’はそれぞれ芳香族(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種のモノマーと、酸モノマー及びその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合鎖であり、n1、n2及びn3はそれぞれ3以上の整数である。) - 前記スターポリマーのポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる数平均分子量(Mn)が、1,000以上10,000以下である請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 前記一般式(1)中の前記n1、前記一般式(2)中の前記n2、及び前記一般式(3)中の前記n3が、それぞれ、3以上8以下の整数である請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
- 前記一般式(1)中の前記R1−(S−)n1、前記一般式(2)中の前記R2−(X−S−)n2、及び前記一般式(3)中の前記R3−(O−X−S−)n3が、それぞれ、含硫黄有機化合物に由来する有機基である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記含硫黄有機化合物が多価メルカプト化合物である請求項4に記載のインクジェット用インク。
- 前記酸モノマー及びその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記芳香族(メタ)アクリル酸エステル及び前記芳香族(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種のモノマーが、ベンジル(メタ)アクリレートである請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記スターポリマーにおける、前記芳香族(メタ)アクリル酸エステル及び前記芳香族(メタ)アクリルアミドのモノマーユニットが占める質量比率が、スターポリマー全質量を基準として、30.0質量%以上85.0質量%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- 前記スターポリマーの酸価が、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
- インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、使用するインクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジであって、インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
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