JP5110764B2 - インクジェット用顔料分散インク、インクセット、インクタンク、記録ユニット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット用顔料分散インクの製造方法 - Google Patents

インクジェット用顔料分散インク、インクセット、インクタンク、記録ユニット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット用顔料分散インクの製造方法 Download PDF

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本発明は、インクジェットノズルからの吐出安定性の高いインクジェット用顔料分散インクと、この顔料分散インクを用いた高画質なカラー画像が得られるインクセット、インクタンク、記録ユニット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット用顔料分散インクの製造方法に関する。
現在、インクジェット記録方式に用いるインクにおいては、該インクを用いて記録媒体上に形成した記録物の耐候性を向上させるために、インクの色材として、耐候性に優れる顔料を用いることについての検討が種々なされている。しかしながら、顔料は、インクジェットインク中に溶解せずに液媒体中に分散された状態にあることから、ノズルから吐出される際の顔料インクの吐出速度が不安定で、時としてノズルからインクが吐出しなくなる等、吐出安定性が極めて低かった。その結果、記録媒体上の目的としている位置にインクが正確に着弾せず、画像の乱れが生じるという問題が起こっていた。これに対し、ある種のノニオン性界面活性剤をインク中に添加することで、吐出安定性を向上させる検討が行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
又、インクジェットインクとしては、その定着速度と色相互のブリードを考慮し、通常、記録媒体に対する浸透性の高い物性を有したものが用いられている。そのために、普通紙等を用いて画像を形成した場合には、記録媒体の内部にまで色材が浸透してしまい、記録媒体表面に、定着する色材量を十分確保することができず、この結果、発色性のよい記録物を得ることが困難となっている。
そこで、十分な発色を得るため、画像形成の際に、インク中の色材と反応する反応液を併用し、画像形成の際に反応液と色材とを接触させることで、インク中の色材を析出や凝集させて、液媒体と色材とを固液分離を行って、記録媒体表面での色材の定着量を増加させることについて、種々の提案がなされている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、先に述べたように、インクの吐出安定性を向上させる目的で、ある種のノニオン性界面活性剤を顔料インクに添加することが行われているが、顔料や分散剤の種類によってその効果に差があり、十分な吐出安定性を確保できるものは実質的に少なく、又、添加されたノニオン性界面活性剤によって、上記した反応液による顔料の凝集反応が阻害される場合があった。このように、耐候性の高い記録物を得るために顔料インクを用いた場合においては、インクジェットノズルからの吐出安定性の向上と、記録物の発色性の向上との両立を図ることは、極めて困難であった。
又、顔料を液媒体中に分散させる際に樹脂分散剤を使用して得られる顔料分散体(以下、顔料分散液という)を用いたインクジェットインクの樹脂分散剤として水溶性樹脂を用いる場合には、水溶性樹脂の水に対する溶解度は高い方が、吐出安定性を確保するためにはよい、という提案がなされている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、樹脂分散剤として、水溶性の高い樹脂を用いると、顔料に対する樹脂分散剤の吸着力が弱く、分散安定性や保存安定性を確保することが困難であるという問題があった。
又、記録媒体上に形成された記録物の耐水性や定着性を向上させる目的で、樹脂分散剤以外に、20℃で水に対する溶解度が2質量%以下の樹脂を添加するといった提案(例えば、特許文献5参照)や、不溶性樹脂粒子を添加するといった提案(例えば、特許文献6参照)がなされている。しかしながら、これらの公報においても樹脂分散剤には水溶性の高い樹脂を用いており、樹脂分散剤以外に、別途、水に対する溶解性が低い樹脂を添加すると、インクの吐出安定性が低下し、記録媒体上へのインクの着弾精度が落ち、記録物が乱れるといった別の課題が生じていた。
又、インク中の顔料のように、溶液中に分散されている微粒子は、微粒子間に働くファンデルワールス(van der Waals)引力と微粒子表面に帯電している静電荷によって発生する静電斥力や、微粒子表面に吸着している樹脂や界面活性剤の立体障害による斥力の作用により分散状態を保っている。van der Waals引力については、ハマーカー定数というものが求められており、微粒子に対する定数と微粒子の粒径から計算することが可能である。
又、静電斥力についてもその効果の大小については、微粒子のゼータ電位を測定することで求めることができる。これまで、静電斥力、即ち、ゼータ電位を規定することで、顔料の分散安定性や、インクの吐出安定性を向上させたインクジェット用顔料インクについての提案は数多くなされてきている。しかしながら、微粒子表面に吸着している樹脂や界面活性剤の立体障害による斥力の効果については、評価手法が確立しておらず、インクジェット用顔料インクにとってこの立体障害による斥力因子がどのような影響を及ぼすのかについては、十分な検討がなされていなかった。
特開平5−140496号公報 特開平7−207202号公報 特開平5−202328号公報 特開平5−263029号公報 特開平5−331395号公報 特開平5−25413号公報
従って、本発明の目的は、インクジェット記録用として、記録媒体上の記録物が良好な耐候性を示し、しかもインクの吐出安定性及び保存安定性が確保され、着弾精度が落ちて記録物が乱れるといったことのない顔料分散インク及びインクセット、更には、記録媒体上の記録物が十分な発色性を確保できる反応系インクセット、インクタンク、記録ユニット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及び上記顔料分散インクの製造方法を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、顔料及び樹脂分散剤を含有するインクジェット用顔料分散インクにおいて、該樹脂分散剤が、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルナフタレン、4−ビニル安息香酸、ビニル安息香酸エステル、N−ビニルカルバゾール、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び酢酸ビニル並びにこれらの化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド変性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の疎水性モノマーを含むモノマーを重合することで得られる疎水性の主鎖と、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の親水性モノマーを含むモノマーを重合することで得られるマクロモノマーに由来する親水性の側鎖と、を有し、該主鎖を構成する、該疎水性モノマーの割合が、主鎖を構成する全モノマーに対し、60質量%以上であるグラフトポリマーであり、該グラフトポリマー自体の重量平均分子量が、3,000〜15,000であり、該グラフトポリマーの側鎖となるマクロモノマーの重量平均分子量が、300〜2,000であり、該グラフトポリマー自体の重量平均分子量と該グラフトポリマーの側鎖となるマクロモノマーの重量平均分子量が下記式を満足することを特徴とするインクジェット用顔料分散インクである。
Figure 0005110764
本発明の別の実施形態は、複数のインクを具備しているインクセットにおいて、該複数のインクの少なくとも一つが上記インクであることを特徴とするインクセットである。その好ましい形態としては、該インクセットが、顔料分散インクと反応する反応剤を含む反応液を具備しているインクセットが挙げられる。
本発明の別の実施形態は、上記インクジェット用顔料分散インクを収納しているインク収納部を有しているインクタンクである。
本発明の別の実施形態は、上記インクジェット用顔料分散インクと、該インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドを有している記録ユニットである。
本発明の別の実施形態は、上記インクジェット用顔料分散インクと、該インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドを有しているインクジェット記録装置である。
本発明の別の実施形態は、上記インクジェット用顔料分散インクをインクジェット法で記録媒体に吐出する工程を有するインクジェット記録方法である。
本発明の別の実施形態は、上記インクジェット用顔料分散インクの製造方法であって、該インクを構成する樹脂分散剤の酸価の1〜1.5倍量のKOHを含有するアルカリ水溶液と樹脂分散剤とを含有する水性媒体中に、顔料を添加する工程を有することを特徴とするインクジェット用顔料分散インクの製造方法である。
本発明によれば、インクジェット記録用として、記録媒体上の記録物が良好な耐候性を示し、しかもインクの吐出安定性及び保存安定性が確保され、着弾精度が落ちて記録物が乱れるといったことのない顔料分散インク、該顔料分散インクの製造方法及び該インクを利用したインクセットが提供される。又、本発明によれば、上記に加えて、記録媒体上に形成された記録物が十分な発色性を確保したものとなる、反応系インクセット、インクタンク、記録ユニット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法が提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明のインクジェット用顔料分散インクは、顔料及び樹脂分散剤を含有し、上記樹脂分散剤が、50mgKOH/g以上の酸価を有し、且つ、該酸価の1.5倍の量のKOHを含有するアルカリ水溶液に対する溶解度が3質量%以下であるビニル系共重合体であり、粘弾性測定装置を用いて測定された該インクの粘度特性が、下記式を満足することを特徴とする。
Figure 0005110764
先ず、本発明にかかるインクジェット用顔料分散インク(以下、インク、顔料インク又は顔料分散インクともいう)の粘度特性評価について説明する。本発明でいう粘度特性とは、シアレート(剪断速度)を変化させたときに測定される粘度変化についてのことであり、B型粘度計や粘弾性測定装置(レオメーター)により測定される。
前述したように、顔料のように溶液中に分散されている微粒子は、微粒子間に働くvan der Waals引力と、微粒子表面に帯電している静電荷によって発生する静電斥力や、微粒子表面に吸着している樹脂や界面活性剤の立体障害による斥力の作用により分散状態を保っている。本発明者らは、これらの中で、立体障害による斥力については、微粒子表面に吸着している樹脂や界面活性剤の吸着層の厚みが厚いものほど大きな斥力として働くと推測した。吸着層の厚みが厚くなると、顔料の粒径が同じで、顔料の体積濃度が同じでも、吸着層を含めた体積濃度が高くなるために、下記のアインシュタインの粘度式から粘度は高くなる。
η=η0×(1+2.5×φ)
[式中、ηは分散体の粘度、η0は溶媒の粘度、φは顔料の体積濃度である。]
しかし、この吸着層は、樹脂や界面活性剤の分子、更にはこれらに水和した水分子により形成されていると考えられ、力学的に弱い構造であると考えられる。よって、粘度測定時の回転速度が高くなる、即ち、シアレートが高い測定条件(本発明においては100秒-1である。以下、100s-1とも記載する。)では、吸着層の分子配向が回転による流動により破壊され易く、吸着層が顔料粒子の体積増分として寄与しにくくなるため、粘度の上昇として測定しにくい。逆に、回転速度を低下させた、即ち、シアレートを低くした場合(本発明においては0.5秒-1である。以下、0.5s-1とも記載する。)には、この吸着層の分子配向が破壊されにくく、微粒子の体積増による粘度上昇が測定できるものと考えられる。従って、高シアレートと低シアレートにおける粘度比が大きなものほど、この吸着層による立体障害効果が大きなものであると評価することができる。
そこで、本発明者らは、この考えに基づいて検討した結果、インクの粘度特性において、高シアレートと低シアレートにおける粘度比が、下記式を満足するものである場合に、顔料粒子表面に吸着している樹脂や界面活性剤による立体障害の斥力効果が、インクジェット特性、中でも吐出安定性を向上させることを見出し、本発明に至った。
Figure 0005110764
次に、本発明にかかるインクの構成材料として用いる、顔料を液媒体中に分散させるための樹脂分散剤について説明する。本発明で用いる樹脂分散剤は、50mgKOH/g以上の酸価を有し、且つ、該酸価の1.5倍の量のKOHを含有するアルカリ水溶液に対する溶解度が3質量%以下であるビニル系共重合体である。
先ず、樹脂分散剤の酸価が上記範囲であると、ビニル系共重合体の溶解性が高まり、優れた顔料の分散性が得られ、結果として、インクの吐出安定性及び保存安定性が向上する。加えて、後に詳細に述べるように、分散剤の極性と逆の極性を有する物質(例えば、多価金属イオン)を反応液として用いて、顔料を凝集させることにより高い発色性を得る、いわゆる反応系のシステムに用いると、反応点が多いために非常に良好な反応性を示すこともできる。更に、本発明においては、酸価が200mgKOH/g以上の樹脂分散剤を使用すると、アルカリ水溶液中での溶解性或いは分散安定性がより高まるため、好ましい。一方、本発明にかかるインクに使用する樹脂分散剤は、下記の理由から、酸価が300mgKOH/g以下のものであることが好ましい。即ち、酸価が300mgKOH/gを超えると、分散液の粘度が高くなって、吐出を悪化させ易くなったり、顔料分散体の水に対する親和性が高くなり過ぎて、印字物の耐水性が低下し易くなったりする恐れがある。
又、アルカリ水溶液に対するビニル系共重合体の溶解度を上記したような範囲とすることにより、溶解性が高くなり過ぎず、結果として、非常に好ましい吐出安定性及び保存安定性を有するインクを得ることができる。加えて、上述した反応系システムに用いた場合も、非常に良好な反応性を示すことができる。
このように、本発明においては、本発明が規定する構成が相乗的に作用することにより、上記本発明の顕著な効果を得ることができる。
尚、本発明における酸価は、例えば、JIS K5601等に代表される公知の方法により測定することができる。又、本発明においては、使用する樹脂分散剤が有する酸化のほぼ1.5倍の量のKOHを含有するアルカリ水溶液に、樹脂分散剤を濃度が3質量%以下になるように添加した溶液を目視で観察し、その場合に白濁していれば、これを「樹脂分散剤の溶解度が3質量%以下である」とした。
更に、本発明にかかるインクの構成材料として使用する樹脂分散剤は、ビニル系共重合体であって、その重量平均分子量が、1,000〜30,000のものであることが好ましく、特には、3,000〜15,000のものであることが好ましい。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定されたものであり、値はポリスチレン換算の値である。以下、本発明で述べる重量平均分子量は、すべてGPC法で測定したポリスチレン換算の値である。
このような樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマール酸等の、カルボキシル基を含有するビニル系モノマーグループから少なくとも1つを選択して、下記に挙げるような他のモノマーと共重合して得られた共重合体が挙げられる。
本発明において、インクに含有させる樹脂分散剤として使用するビニル系共重合体を形成する他のモノマーとしては、ビニル系化合物と共重合可能であれば何れでもよく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ビニルナフタレン、4−ビニル安息香酸、ビニル安息香酸エステル、N−ビニルカルバゾール等芳香族官能基を有するビニル系モノマーや、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル等ビニル系モノマーや、それらのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド変性化合物等が挙げられる。上記した中でも、好ましくは、芳香族官能基を有するビニル系モノマーを用いて得られた共重合体を樹脂分散剤としていることが好ましい。
本発明にかかるインクに用いられる樹脂分散剤としては、以下の構造を有する樹脂分散剤を用いることが特に好ましい。即ち、疎水性の主鎖及び親水性の側鎖を有し、側鎖となるマクロモノマーの重量平均分子量が300〜2,000であるグラフトポリマーであって、且つ、グラフトポリマー自体の重量平均分子量とグラフトポリマーの側鎖となるマクロモノマーの重量平均分子量が、下記式の関係を満足するものを使用することが特に好ましい。
Figure 0005110764
本発明においては、かかるグラフトポリマーがビニル系共重合体であることが好ましい。又、かかるグラフトポリマーの側鎖の重量平均分子量が300〜1,500であることが更に好ましい。更に、グラフトポリマー自体の重量平均分子量が1,000〜30,000であるものが好ましく、特には、3,000〜15,000であることが好ましい。
又、本発明においては、多分散度が3.5以下である樹脂分散剤を使用することが好ましく、特には、多分散度が1以上3以下のものを使用することが好ましい。本発明にかかるインクにおいては、使用する顔料分散剤の分子量が顔料インクの吐出安定性や発色性の向上に影響を与え易い。そのため、多分散度の大きいポリマー、つまり種々の分子量を含むポリマーを用いると、本発明の効果が得られにくくなる。本発明における多分散度は、(重量平均分子量)/(数平均分子量)により求めることができ、数平均分子量は、重量平均分子量と同様にGPC法によって求めることが可能である。以下、本発明で述べる数平均分子量はすべて、GPC法で測定したポリスチレン換算の値である。
本発明において顔料分散剤に好適に用いられるグラフトポリマーは、構造中にイオン性基を有するものであることが好ましい。この場合のイオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基及びホスフィノ基等が挙げられる。
疎水性の主鎖を構成する疎水性モノマーとしては、疎水性官能基を有するモノマーグループから少なくとも1つを選択する必要がある。疎水性官能基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルナフタレン、4−ビニル安息香酸、ビニル安息香酸エステル、N−ビニルカルバゾール等芳香族官能基を有するビニル系モノマーや、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルや、酢酸ビニル等ビニル系モノマー及びそれらのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド変性化合物等が挙げられる。
親水性の側鎖を構成する親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマール酸等カルボキシル基を含有する親水性モノマーグループ、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレングリコール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルのような水酸基を有するモノマーや、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの(メタ)アクリル酸エステル、更には(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドから少なくとも1つを選択して、親水部(親水性の側鎖部分)を形成する必要がある。
主鎖を形成するモノマーは、疎水性の特性を妨げない範囲で、親水性モノマーから構成されていてもよい。しかしながら、主鎖を構成する疎水性モノマーの割合が少ない場合、グラフトポリマーが疎水性の顔料粒子に吸着しにくくなり、分散性が充分に得られず、インクとした場合に、分散安定性並びに吐出安定性が低下し易くなる。よって、主鎖を構成する疎水性モノマーの割合は、主鎖を構成する全モノマーに対し、60質量%以上のものであることが好ましい。
又、側鎖を形成するモノマーは、親水性の特性を妨げない範囲で、疎水性モノマーから構成されていてもよい。しかしながら、側鎖を構成する親水性モノマーの割合が少ない場合、グラフトポリマーの水性媒体に対する溶解性が低下し、水性媒体への分散状態が不安定になり易く、インクとした場合に、インクジェットヘッドから吐出される際の吐出安定性が損なわれ易くなる。よって、側鎖を構成する親水性モノマーの割合は、側鎖を構成する全モノマーに対し、60質量%以上のものであることが好ましい。
更に、後に述べる反応液との反応性を付与するためには、側鎖を形成する親水性モノマー中にカルボキシル基を有するモノマーが含まれていることが好ましく、側鎖を構成する全モノマーに対し、30質量%以上含まれた構成のグラフトポリマーを用いることが特に好ましい。更に、かかるカルボキシル基を有するモノマーがアクリル酸であることが好ましい。即ち、アクリル酸を用いると、他のカルボキシル基含有モノマーを用いたグラフトポリマーと比較して、インクとした場合に、優れた吐出安定性が得られる側鎖の重量平均分子量の範囲をより広くすることができる。
本発明にかかるインクの顔料分散剤に好適な上記で説明したようなグラフトポリマーは、幹ポリマーから枝モノマーを重合させるgraft−from法、幹ポリマーに枝ポリマーを結合させるgraft−onto法、幹モノマーを枝高分子と共重合させるgraft−through法、マクロモノマー法等、公知の何れの合成法によっても合成可能である。中でもマクロモノマー法は、枝ポリマーが既知となり、ポリマー設計が容易に行えること等から、グラフトポリマーの合成法として、最も効果的で汎用性の高い方法である。
本発明にかかるインクにおいて、上記したような樹脂分散剤は、顔料インクの全質量に対して0.1〜15質量%の範囲で含有させるのが好ましい。又、これら樹脂分散剤は、必要に応じて、複数組み合わせて用いてもよいし、用いる顔料によって異なるものを用いてもよい。顔料により最適な樹脂分散剤を選択することで、インクジェットノズルからの吐出性や分散安定性を飛躍的に向上させることができる。
更に、本発明においては、本発明の顕著な効果が得られる範囲内で、樹脂分散剤として、本発明に規定する上記で説明したような樹脂分散剤以外の水溶性樹脂を1つ、又は、複数組み合わせて用いてもよい。用いることのできる水溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリペプチド、セルロース及びその変性体、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、着色顔料インクに対して、前述した特定の樹脂分散剤と等量程度か、それ以下の割合で添加するのがよい。
本発明にかかる顔料分散インクの着色剤は、顔料であるが、無機及び有機の何れの顔料であってもよい。又、インク中におけるこれらの顔料の含有量は、インクの全質量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、特には2〜12質量%であることが好ましい。
本発明において使用できる顔料としては、具体的には、下記のものが挙げられる。黒色の顔料としては、カーボンブラックが挙げられる。中でも、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、DBP吸油量が40〜200ml/100g、一次粒子径が11〜40mμ(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好ましく用いられる。
上記したような特性を有するカーボンブラックの市販品としては、例えば、No.2300、No.900、No.950、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(以上、コロンビア製)、REGAL400R、REGAL330R、REGAL660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FWl、Color Black FW285、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S160、Printex 35、HIBLACK 900、HIBLACK 890、Printex U(以上、デグサ製)等があり、本発明において、これらは、何れも好ましく使用することができる。
又、イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 128等が挙げられる。
マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられる。
シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。
勿論、本発明は、これらに限られるものではない。又、上記に挙げた顔料の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も、勿論、使用することが可能である。
本発明にかかる顔料分散インクは、上記した成分の他に液媒体を有するが、液媒体としては、水性媒体が好適である。水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒が好ましい。水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
又、水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
上記したような水溶性有機溶剤のインク中における含有量は、インクの全質量に対し、3〜50質量%であることが好ましく、特には、3〜40質量%であることが好ましい。又、使用される水の含有量としては、インクの全質量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、特には、30〜80質量%であることが好ましい。
又、本発明にかかる顔料インクは、全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが好ましい。このようなものとすれば、顔料微粒子間に静電斥力が働き、顔料の分散安定性を高めることができ、長期保存性に一層優れた顔料インクとすることができるので好ましい。但し、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、7〜10のpH範囲とするのが好ましい。
又、本発明にかかるインクとしては、上記した成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することができる。特に、浸透促進剤として機能する界面活性剤は、記録媒体にインクの液体成分を速やかに浸透させる役割を担うための適量を添加する必要がある。添加量の例としては、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%が好適である。アニオン性界面活性剤の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものを何れも好ましく使用することができる。
以下に、上記したような成分からなる本発明にかかる顔料インクの製造方法について説明する。先ず始めに、樹脂分散剤として使用するビニル系共重合体と、水とが少なくとも混合された水性媒体を分散媒として、これに顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、更に、必要に応じて、遠心分離処理等の粗大粒子を取り除くための分級処理を行って所望の顔料分散液を得る。次に、得られた顔料分散液に、サイズ剤、及び先に挙げたような添加剤成分を適宜に選択して加え、撹拌して本発明にかかるインクを調製する。
尚、樹脂分散剤として用いる前記したようなビニル系共重合体は、アルカリ水溶液には完全には溶解しないが、分散媒に対する親和性を高めるために塩基を添加してもよい。この際に使用する塩基類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好適である。中でも、樹脂分散剤の酸価の1〜1.5倍量のKOHを含有するアルカリ水溶液と樹脂分散剤とを含有する水性媒体中に、顔料を添加することが好ましい。
又、上記した製造方法において、インク中に顔料を分散させるために用いる樹脂分散剤としての前記ビニル系共重合体を溶解する水性媒体を、分散媒に添加してもよい。この際に用いることのできる水性媒体としては、前記したビニル系共重合体を溶解できるものであれば何れでもよい。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等、の水性媒体を好ましく用いることができる。これら水性媒体は、予めイオン交換水等を含む溶媒と混合した後、樹脂分散剤を溶解してもよく、又、これら水性媒体に予め樹脂分散剤を溶解した後、イオン交換水等を含む溶媒と混合してもよい。
又、作製したインクの分散安定性を高めるため、これら水性媒体を取り除きたい場合は、分散処理後、液のpHを酸性とすることで顔料を含む固形分を凝集させたり、液を遠心分離することで固液分離を行ったりして、水性媒体を取り除き、所望の水溶液中で固形分を再度分散させてインクとするとよい。又、顔料が含有されているインクの作製方法においては、顔料を含む水性媒体を攪拌し、分散処理する前に、プレミキシングを30分間以上行うのが効果的である。即ち、このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
上記した顔料の分散媒中への分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら如何なるものも使用できる。例えば、ボールミル、ロールミル及びサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用される。高速型のサンドミルとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
又、顔料が含有されている本発明にかかるインクをインクジェット記録方法で記録する場合には、ノズルの耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いる。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組み合わせ等の手法が挙げられる。
次に、複数のインクを具備しているインクセットにおいて、該複数のインクの少なくとも一つが上記で説明した本発明にかかる顔料インクであることを特徴とする本発明にかかるインクセットについて説明する。上述のように、本発明のインクジェット用顔料分散インクは、用いる樹脂分散剤の反応性が非常に高いので、反応系のシステムに非常に好適に用いられ、非常に優れた発色性を得ることができる。そこで、顔料分散インクと反応する反応液を具備している本発明にかかる反応系インクセットについて説明する。本発明にかかる反応系インクセットは、少なくともひとつのインクジェット用顔料分散インクと、該顔料分散インクと反応する反応剤を含む反応液と、を具備している反応系インクセットであって、顔料分散インクが、前記した本発明にかかるインクジェット用顔料分散インク或いはこれを含むインクセットであることを特徴とする。
以下、本発明において使用する反応液について説明する。本発明において使用する反応液に含有されるインクと反応する反応剤としては、多価金属塩を用いることが最も好適である。多価金属塩とは、2価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成される。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+等の2価金属イオン、そして、Fe3+、Al3+等の3価金属イオンが挙げられる。又、陰イオンとしては、Cl-、NO3 -、SO4 2-等が挙げられる。瞬時に反応させて凝集膜を形成するために、反応液中の多価金属イオンの総電荷濃度は、インク中の逆極性イオンの総電荷濃度の2倍以上であることが好ましい。
本発明において使用する反応液は、上記した反応液を水性媒体に溶解或いは分散させてなる。本発明において使用する反応液を構成する水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が挙げられる。本発明において使用する反応液中における上記水溶性有機溶剤の含有量については特に制限はないが、反応液全質量の5〜60質量%であることが好ましく、特には、5〜40質量%であることが好ましい。このとき、反応液の表面張力がインクの表面張力より高くなるように調製すると、インクが記録媒体上に着弾するまでに反応液が記録媒体中に浸透することがなく、インクと効果的に反応するので特に好ましい。
又、本発明において使用する反応液には、更にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜配合してなるものであってもかまわないが、浸透促進剤として機能する界面活性剤の選択と添加量は、記録媒体に対する反応液の浸透性を抑制する上で注意が必要である。更に、本発明において使用する反応液は、無色であることがより好ましいが、記録媒体上でインクと混合された際に、各色インクの色調を変えない範囲の淡色のものでもよい。更に、以上のような本発明において使用する反応液の各種物性の好適な範囲としては、25℃付近での粘度が1〜30cps.(mPa・s)の範囲となるように調整されたものが好ましい。
本発明にかかるインク或いはインクセットを用いて記録を行うのに好適な記録装置としては、これらのインクが収容されるインク収容部を有する記録ヘッドの室内のインクに、記録信号に対応した熱的又は力学的エネルギーを与え、該エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
図1に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示した。図1において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端は、ブレード保持部材によって保持されて、固定端となりカンチレバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配設され、又、図1に示した例の場合は、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。62はキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して、吐出面と当接しキャッピングを行う構成を具える。更に、図1中の63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。
上記ブレード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及び吸収体63によってインク吐出口面の水分、塵やほこり等の除去が行われる。65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続している。これにより、キャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
51は、記録媒体を挿入するための給紙部、52は不図示のモータにより駆動される紙送りローラである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行するにつれて、排紙ローラ53を配した排紙部へ排紙される。
上記構成において、記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中へ突出するように移動する。
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても、記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上記した記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って、上記ワイピングが行われる。
図2は、ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す断面図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にできる。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記の如きヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図3に示すようにそれらが一体になったものも好適に用いられる。図3において、70は記録ユニットであって、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。72は記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図1で示す記録ヘッド65に代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
図4に、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示した。本例におけるカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェット記録ヘッド100と、インク等の液体を収容するための液体タンク1001とで主要部が構成されている。インクジェット記録ヘッド100は、液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インク等の液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室へと導かれるようになっている。図4に示したカートリッジ1012は、インクジェット記録ヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1001内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対し、液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
以下に実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。尚、文中の「部」及び「%」の表示は、特に指定がない限り質量基準を意味する。
<実施例1>
(マクロモノマーM1の合成)
3−メルカプトプロピオン酸2.0部、t−ブチルアクリレート80部を、1−メトキシ−2−プロパノール500部に、重合温度を75℃にてN2気流下に3時間かけて滴下した。この時、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤に用いた。次いでその溶液に、グリシジルメタクリレート10部、ヒドロキノン0.01部、N,N−ジメチルドデシルアミン0.05部を加えて90℃で5時間反応させた。得られた反応物をヘキサン1,000部中に展開して未反応物を沈殿精製により取り除き、10%のKOHエタノール溶液500部中に溶解して、t−ブチル基の加水分解処理を行った後、再度、ヘキサン1,000部中に展開して不純物を沈殿精製により取り除き、アクリル酸のマクロモノマーM1を得た。このマクロモノマーM1の重量平均分子量は630であった。
(グラフトポリマーG1の合成)
マクロモノマーM1を固形分として30部、スチレン70部を用い、1−メトキシ−2−プロパノール500部中で、N2気流下にアゾビスイソブチロニトリルを開始剤に用い、75℃にて2時間反応させた。得られた反応物をヘキサン1,000部中に展開して未反応物を沈殿精製により取り除き、減圧乾燥してグラフトポリマーG1を得た。このグラフトポリマー分散剤G1の重量平均分子量は5,800、数平均分子量は2,800で、多分散度は2.1で、酸価は222mgKOH/gであった。又、0.34部のKOHを溶解したKOH水溶液33部に、上記で得られたグラフトポリマーG1を1部混合し(ポリマーの酸価の1.5倍のKOHを含有するアルカリ溶液に、2.9%のポリマーを含有している)、24時間攪拌した。KOH溶液は、攪拌後も白濁状態であり、グラフトポリマーG1は溶解しなかったため、その溶解度は3%以下であった。
(顔料分散液P1の調製)
・グラフトポリマーG1 15部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 50部
・イオン交換水 200部
・水酸化カリウム 1部
上記成分を混合し、樹脂分を完全に溶解させた後、ピグメントブルー15:3を30部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニアビーズ(1mm径)
・粉砕メディアの充填率:75%(体積)
・粉砕時間:3時間
固形分と溶剤分を酸析して分離し、固形分に固形分濃度が15%となるように1%KOH水溶液を加えて、顔料分散液P1とした。
(顔料インクC1の調製)
上記で得た顔料分散液P1を含む下記の成分を混合し、常法に従って顔料インクC1を調製した。
・顔料分散液P1 30部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・イソプロピルアルコール 5部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
1部
・イオン交換水 54部
(インクの粘度測定及び粘度比の評価)
上記で得た本実施例の顔料インクC1の粘度特性を、粘弾性測定装置MCR300(Paar Physica社製)にて測定した。測定システムとして、共軸二重円筒 Wギャップ DG42/T200/XL/Q1を用い、該測定システムを、恒温槽で20℃に保ち、回転速度を変化させることで、シアレートを変化させて、顔料インクC1の粘度特性を測定した。得られた、顔料インクC1の、シアレート0.5s-1及び100s-1の条件下の粘度の測定結果を用いて、下記式に基づいて粘度比を算出した。この結果、粘度比(粘度特性)は1.28であった。
Figure 0005110764
(グラフトポリマーの分子量と組成の分析法)
上記で得た顔料インクC1中に含まれる樹脂分散剤の分子量と組成の分析法について記す。顔料インクC1を塩酸により酸析して得られる固形分を、テトラヒドロフランに懸濁してポリマーを抽出し、遠心分離を40,000rpmで1時間行って顔料を沈降させて、ポリマーが溶解している上澄み液を回収した。ポリマーを更に回収するため、沈降物をテトラヒドロフランに再び懸濁して遠心分離を行う操作を数回繰り返した。得られたポリマー溶液の一部をヘキサンで沈殿精製後、重量平均分子量(Mwa)を測定したところ、5,800であった。NMRスペクトルから、ポリマーの組成がスチレンとアクリル酸であることがわかった。又、種々の溶媒を用いたNMRスペクトルにおいて、スチレンとアクリル酸のピーク強度が変化したことから、このポリマーがランダム共重合体でないことがわかった。
先に得られたポリマーのテトラヒドロフラン溶液を20%水酸化カリウム水溶液で加水分解処理し、塩酸で中和後にカラムクロマトグラフィーで2種類の成分を精製分離した。得られたポリマーxとポリマーyのそれぞれの質量(Wx及びWy)を測定したところ、Wxが0.32g、Wyが0.22gであった。又、ポリマーx及びポリマーyそれぞれのNMRスペクトルからポリマー組成を分析した結果、ポリマーxがポリスチレン、ポリマーyがポリアクリル酸であることがわかった。ポリスチレンとポリアクリル酸の重量平均分子量(MwxとMwy)は、それぞれ3,200と630であり、重量平均分子量(MwxとMwy)と、質量(Wx及びWy)とから求めたポリスチレンとポリアクリル酸のモル比(Mx/Mwx:My/Mwy)は1:3.5であった。2成分のモル比が1:2以上であったことから、このポリマーはブロックでなく、ポリスチレンが主鎖で、且つポリアクリル酸が側鎖、ポリマー中の平均の枝の数が3.5本であるグラフトポリマーであることがわかる。
よって、顔料インクC1の分散樹脂は、ポリスチレンが主鎖でポリアクリル酸が側鎖であるグラフトポリマーであり、側鎖の重量平均分子量Mwgが630で、ポリマー全体の重量平均分子量Mwaが5,800、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwgが9.2であることがわかった。これは、グラフトポリマーG1のそれと同等であった。
(インクの吐出安定性の評価)
上記で得られた顔料インクC1の吐出安定性の評価は、下記のようにして行った。市販のインクジェットプリンタBJS−600(キヤノン(株)製)のインクカートリッジに、顔料インクC1を詰め、市販の普通紙スーパーホワイトペーパー(キヤノン(株)製)100枚に英数文字を印字した。そして、得られた印字物の印字の乱れを目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表7に示した。
AA:文字に乱れがない。
A:文字にたまに乱れが見られるが、ほとんど乱れがない。
B:文字に乱れがあるが、読める。
C:文字が大変乱れ、読みにくい。
(インクの保存安定性の評価)
保存安定性の評価は、下記のようにして行った。保存試験として、顔料インクC1を60℃の恒温槽に1,000時間保存した。そして、保存試験の前後におけるインク中に分散された顔料粒子の平均粒径を動的光散乱法に基づいて、大塚電子(株)製FPAR−1000を用いて測定した。得られた測定値を用いて下記式から、保存した過程で生じた粒径変化率(%)を求めた。
Figure 0005110764
更に、得られた粒径変化率(%)の大きさを用いて、下記の基準で保存安定性を評価した。そして、結果を表7に示した。
A:粒径変化率10%未満。
B:粒径変化率10%以上30%未満。
C:粒径変化率30%以上。
(インクの発色性の評価)
下記成分を混合した反応液Sを調製し、これをインクタンクに詰め、顔料インクC1と共に、市販のインクジェットプリンタBJF890(キヤノン製)に搭載して画像を形成して、得られた画像について下記の方法で彩度を求め、インクの発色性を評価した。
・硝酸マグネシウム六水和物 10部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・イソプロピルアルコール 5部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.2部
・イオン交換水 74.8部
反応液Sを普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に吐出後、反応液Sと紙面上で接するように顔料インクC1を吐出してベタ印字物を作成した。得られた印字物について、反射濃度計RD−19I(Gretag Macbeth製)を用いて、CIE規格L***表色系の色度a*、b*値を測定し、彩度C*=(a*2+b*21/2を求めた。得られた結果を表7に示した。
参考
(マクロモノマーM2の合成)
α−メチルスチレンダイマー20部、アクリル酸80部を、1−メトキシ−2−プロパノール500部に、重合温度を75℃にてN2気流下に3時間かけて滴下した。この時、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤に用いた。滴下後、2時間75℃に保ち、得られた反応物をヘキサン1,000部中に展開して未反応物を沈殿精製により取り除き、減圧乾燥してマクロモノマーM2を得た。このマクロモノマーM2の重量平均分子量は320であった。
(グラフトポリマーG2の合成)
マクロモノマーM2を固形分として30部、スチレン40部、n−ブチルアクリレート20部、エチレングリコールモノアクリレート10部を用い、実施例1と同様の方法で、グラフトポリマーG2を得た。このグラフトポリマー分散剤G2の重量平均分子量は1,800、数平均分子量は1,300、多分散度は1.4で、酸価は218mgKOH/gであった。又、0.33部のKOHを溶解したKOH水溶液33部に、上記で得られたグラフトポリマーG2を1部混合し(ポリマーの2.9%溶液)、24時間攪拌した。KOH溶液は攪拌後も白濁状態で、グラフトポリマーG2は溶解しなかったため、溶解度は3%以下であった。
得られたグラフトポリマーについて、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwgを実施例1と同様にして測定したところ、以下のようであった。
粘度特性:1.13
Mwg:320
Mwa:1,800
Mwa/Mwg:5.6
更に、グラフトポリマーG2を用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
<実施例3〜5、比較例1、2>
参考に記載したマクロモノマー合成法を用いて、溶媒とモノマーの比率を適宜調節して分子量の異なるマクロモノマーM3〜M7を合成し、下記表1のように、ポリマー全体の重量平均分子量(Mwa)と側鎖の重量平均分子量(Mwg)の異なるグラフトポリマー分散剤G3〜G7を合成した。
得られたグラフトポリマーについて、酸価、溶解度、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の数平均分子量Mna、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwg、多分散度Mwa/Mnaを実施例1と同様にして測定した。そして、得られた結果を表1にまとめて示した。尚、表1中、溶解度が3%以下であるものは○、3%を超えるものは×とした。
Figure 0005110764
更に、各グラフトポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
参考例8、実施例〜9、比較例3、4>
実施例1に記載したマクロモノマーの合成において、t−ブチルアクリレートに代えて、t−ブチルメタクリレートを用い、溶媒とモノマーの比率を適宜調節して、分子量の異なるマクロモノマーM8〜M13を合成した。次いで、マクロモノマーM8〜M13をそれぞれ固形分として30部、ベンジルメタクリレート50部、エチルメタクリレート20部を用い、実施例1と同様の方法で、下記表2のように、ポリマー全体の重量平均分子量(Mwa)と側鎖の重量平均分子量(Mwg)の異なるグラフトポリマー分散剤G8〜G13を合成した。
得られたグラフトポリマーについて、酸価、溶解度、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の数平均分子量Mna、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwg、多分散度Mwa/Mnaを実施例1と同様にして測定した。そして、得られた結果を表2にまとめて示した。尚、下記表2中、溶解度が3%以下であるものは○、3%を超えるものは×とした。
Figure 0005110764
更に、各グラフトポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
<実施例10〜12、参考例1及び比較例5>
参考に記載したマクロモノマーの合成において、アクリル酸80部に代えて、アクリル酸60部とエチレングリコールモノアクリレート20部を用い、又、溶媒とモノマー全量の比率を適宜調節して、参考と同様の方法で、分子量の異なるマクロモノマーM14〜M18を合成した。次いで、マクロモノマーM14〜M18を固形分としてそれぞれ40部、ベンジルアクリレート40部、iso−ブチルメタクリレート20部を用い、実施例1と同様の方法で、溶媒とモノマーの比率を適宜調節して、下記表3のように、ポリマー全体の重量平均分子量(Mwa)と側鎖の重量平均分子量(Mwg)が異なるポリマーG14〜G18を合成した。
得られたグラフトポリマーについて、酸価、溶解度、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の数平均分子量Mna、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwg、多分散度Mwa/Mnaを実施例1と同様にして測定した。そして、得られた結果を表3にまとめて示した。尚、下記表3中、溶解度が3%以下であるものは○、3%を超えるものは×とした。
Figure 0005110764
更に、各グラフトポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
<実施例14、15>
参考に記載したマクロモノマーの合成において、アクリル酸80部に代えて、アクリル酸(AA)と2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を用い、質量比をAA:HEA=40:40(実施例14)及び20:60(実施例15)としてマクロモノマーM19、M20を合成した。マクロモノマーM19、M20をそれぞれ用いて参考と同様の比率で重合することで、下記表4のように、酸価の異なるグラフトポリマーG19、G20を合成した。
得られたグラフトポリマーについて、酸価、溶解度、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の数平均分子量Mna、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwg、多分散度Mwa/Mnaを実施例1と同様にして測定した。そして、得られた結果を表4にまとめて示した。尚、下記表4中、溶解度が3%以下であるものは○、3%を超えるものは×とした。
Figure 0005110764
更に、各グラフトポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
<実施例16>
参考に記載したグラフトポリマーの合成において、マクロモノマー(MM)とスチレン(Sty)、n−ブチルアクリレート(nBuA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の質量比をMM:Sty:nBuA:HEA=35:37:19:9として、下記表5のように、酸価の異なるグラフトポリマーG21を得た。
得られたグラフトポリマーについて、酸価、溶解度、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の数平均分子量Mna、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwg、多分散度Mwa/Mnaを実施例1と同様にして測定した。そして、得られた結果を表5にまとめて示した。尚、下記表5中、溶解度が3%以下であるものは○、3%を超えるものは×とした。
Figure 0005110764
更に、各グラフトポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
<実施例17〜19及び参考例2>
参考に記載したマクロモノマーの合成において、アクリル酸80部に代えて、アクリル酸(AA)と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)と、ベンジルアクリレート(BzA)を用い、質量比をAA:HEA:BzA=28:22:30(実施例17)、28:17:35(実施例18)、20:30:30(実施例19)及び20:20:40(参考例2)として、マクロモノマーM21〜M24を合成した。マクロモノマー30部と、ベンジルアクリレート50部、n−ブチルアクリレート20部を用い、同様の方法でグラフトポリマーG22〜G25を得た。
得られたグラフトポリマーの側鎖中の親水基を有するユニットの割合は、それぞれ、63%、56%、63%及び50%であった。又、親水基を有するユニット中のAAの割合は、それぞれ、35%、35%、25%及び25%であった。
得られたグラフトポリマーについて、酸価、溶解度、粘度特性、側鎖の重量平均分子量Mwg、ポリマー全体の重量平均分子量Mwa、ポリマー全体の数平均分子量Mna、ポリマー全体の重量平均分子量とポリマー側鎖の重量平均分子量の比Mwa/Mwg、多分散度Mwa/Mnaを実施例1と同様にして測定した。そして、得られた結果を表6にまとめて示した。尚、下記表6中、溶解度が3%以下であるものは○、3%を超えるものは×とした。
Figure 0005110764
更に、各グラフトポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして顔料分散液及び顔料インクを調製し、得られたインクについて実施例1と同様の方法で評価した。そして、結果を表7に示した。
Figure 0005110764
参考
(ビニル系共重合体A1の合成)
スチレン40部と、ブチルメタクリレート40部と、メタクリル酸20部とを用いて2−プロパノール500部中で、重合温度を75℃にてN2気流下にて3時間かけて滴下しながら、アゾビスイソブチロニトリルを用いてラジカル重合を行った。滴下後、2時間、温度を75℃に保った後、ヘキサン1,000部中に反応物を展開して未反応物を沈殿精製により取り除き、減圧乾燥してビニル系共重合体A1を得た。
このビニル系共重合体A1の重量平均分子量は10,000、数平均分子量は4,200、多分散度は2.4であり、酸価は55mgKOH/gであった。又、0.083部のKOHを溶解したKOH水溶液33部に上記で得られたビニル系共重合体A1を1部混合し(ポリマーの2.9%溶液)、24時間攪拌した。KOH溶液は攪拌後も白濁状態で、ビニル系共重合体A1は溶解しなかったため、溶解度は3%以下であった。
(顔料分散液PK1の調製)
上記で得たビニル系共重合体A1を用い、該共重合体A1を溶解するプロピレングリコールモノメチルエーテルを分散媒に加えることで、ビニル系共重合体A1を溶解した。
・ビニル系共重合体A1 8部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 50部
・イオン交換水 200部
・アンモニア 1部
即ち、上記成分を混合することで、ビニル系共重合体A1を溶解させた。この溶液にカーボンブラック(Color Black FW18 デグサ製)を30部加え、30分間プレミキシングを行った後、下記条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニアビーズ(1mm径)
・粉砕メディアの充填率:75%(体積)
・粉砕時間:3時間
その後、遠心分離処理(遠心効果2,100G、60分間)を行い、粗大粒子を除去し、更に遠心分離処理(遠心効果20,000G 3時間)を行って、固形分と溶剤分を分離した。分離して得た固形分に、固形分濃度が15%となるように1%KOH水溶液を加え、顔料分散液PK1とした。
(インクK1の調製)
上記で得た顔料分散液PK1を含む下記の成分を混合し、その後に濾過して、黒色のインクK1を調製した。
・顔料分散液PK1 30部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・イソプロピルアルコール 5部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
1部
・イオン交換水 54部
(インクC1の調製)
顔料分散液PK1の調製の際に使用したカーボンブラック(Color Black FW18 デグサ製)30部を、ピグメントブルー15:3に代えて顔料分散液PC1とし、これを用いたこと以外は、インクK1の調製の場合と同様にして、顔料を含有したシアン色のインクC1を調製した。
(インクM1の調製)
顔料分散液PK1の調製の際に使用したカーボンブラック(Color Black FW18 デグサ製)30部を、ピグメントレッド122に代えて顔料分散液PM1とし、これを用いたこと以外は、インクK1の場合と同様にして、顔料を含有したマゼンタ色のインクM1を調製した。
(インクY1の調製)
顔料分散液PK1の調製の際に使用したカーボンブラック(Color Black FW18 デグサ製)30部を、ピグメントイエロー74に代えて顔料分散液PY1とし、これを用いたこと以外は、インクK1の場合と同様にして、顔料を含有したイエロー色のインクY1を調製した。
(インクセットIの調製)
上記のようにして得た、各顔料がすべて同じ樹脂分散剤(ビニル系共重合体A1)で分散してなるインクK1、C1、M1及びY1を、それぞれ具備したものをインクセットIとした。
[評価]
上記インクセットIを構成する各インクについて、実施例1と同様にして、粘度特性の測定と、発色性以外の評価を行った。得られた結果を表8に示した。
Figure 0005110764
参考
参考例では、顔料の種類に合わせて樹脂分散剤を最適化したインクの組み合わせからなるインクセットIIを用いた。この結果、実施例1の場合よりも吐出特性を向上させることができた。先ず、樹脂分散剤として使用する、ビニル系共重合体A2、ビニル系共重合体A3、ビニル系共重合体A4を下記のようにして合成した。
(ビニル系共重合体A2の合成)
スチレン40部と、NKエステルM−40G(新中村化学工業社製)20部と、メタクリル酸40部とを用いた以外は参考と同様の方法で、ビニル系共重合体A2を合成した。得られたビニル系共重合体A2の重量平均分子量は9,600、数平均分子量は6,000、多分散度は1.6であり、酸価は208mgKOH/gであった。又、0.32部のKOHを溶解したKOH水溶液33部に、上記で得たビニル系共重合体A2を1部混合し、24時間攪拌したが、KOH溶液は白濁状態で、ビニル系共重合体A2は溶解しなかった。
(ビニル系共重合体A3の合成)
ベンジルメタクリレート40部と、n−ブチルメタクリレート20部と、メタクリル酸40部とを用いた以外は参考と同様の方法で、ビニル系共重合体A3を合成した。得られたビニル系共重合体A3の重量平均分子量は10,500、数平均分子量は6,200、多分散度は1.7であり、酸価は222mgKOH/gであった。又、0.32部のKOHを溶解したKOH水溶液33部に、上記で得たビニル系共重合体A3を1部混合し、24時間攪拌したが、KOH溶液は白濁状態で、ビニル系共重合体A3は溶解しなかった。
(ビニル系共重合体A4の合成)
ベンジルメタクリレート40部と、NKエステルM−40G(新中村化学工業社製)20部と、メタクリル酸40部とを用いた以外は参考と同様の方法で、ビニル系共重合体A4を合成した。得られたビニル系共重合体A4の重量平均分子量は10,500、数平均分子量は6,500、多分散度は1.6であり、酸価は232mgKOH/gであった。又、0.35部のKOHを溶解したKOH水溶液33部に、上記で得たビニル系共重合体A4を1部混合し、24時間攪拌したが、KOH溶液は白濁状態で、ビニル系共重合体A4は溶解しなかった。
(顔料分散液PK2の調製)
参考の顔料分散液PK1の調製で使用したビニル系共重合体A1を、上記で得たビニル系共重合体A2とし、且つ、カーボンブラック(Color Black FW18 デグサ製)を、MCF88(三菱化学製)に代えたこと以外は参考の顔料分散液PK1の調製の場合と同様の方法で、顔料分散液PK2を作製した。
(顔料分散液PM2の調製)
参考の顔料分散液PM1の調製で使用したビニル系共重合体A1を、上記で得たビニル系共重合体A3としたこと以外は参考の顔料分散液PM1の調製の場合と同様の方法で、顔料分散液PM2を作製した。
(顔料分散液PY2の調製)
参考の顔料分散液PY1の調製で使用したビニル系共重合体A1を、上記で得たビニル系共重合体A4としたこと以外は参考の顔料分散液PY1の調製の場合と同様の方法で、顔料分散液PY2を作製した。
(インクK2の調製)
顔料分散液PK1を、上記で得た顔料分散液PK2としたこと以外は、参考のインクK1と同様の方法で、インクK2を調製した。
(インクM2の調製)
顔料分散液PM1を、上記で得た顔料分散液PM2としたこと以外は、参考のインクM1と同様の方法で、インクM2を調製した。
(インクY2の調製)
顔料分散液PY1を、上記で得た顔料分散液PY2としたこと以外は、参考のインクY1と同様の方法で、インクY2を調製した。
(インクセットIIの調製)
上記のようにして得た、各顔料を異なる樹脂分散剤(ビニル系共重合体A2、A3及びA4)で分散してなるインクK2、M2及びY2を、それぞれ具備したものをインクセットIIとした。
[評価]
上記で得たインクセットIIを構成する各インクの吐出安定性、各インクの保存安定性を実施例1の場合と同様の方法で評価し、結果をそれぞれ表10に示した。表9に、保存安定性を評価した際の粒径の経時変化の測定結果を示した。又、各インクの粘度特性を実施例1の場合と同様の方法で測定し、測定結果を表10中に示した。表10に示したように、顔料に応じて樹脂分散剤を最適化することで、インクセットIIを構成する各インクK2、M2、Y2の粘度比は、参考の場合よりも大きくなった。更に、かかるインクセットIIを用いた本参考例では、参考の場合と比較して、特に、吐出安定性を更に向上させることができる(表10参照)ことがわかった。
Figure 0005110764
Figure 0005110764
参考
参考例では、参考で用いたインクセットIと、下記で調製した反応液S1を組み合わせてインクセットIIIとした。下記に述べるように、反応液S1を併用するインクセットIIIの構成とすることで、各インクによる記録媒体上での記録物の印字特性が向上することがわかった。以下、これについて述べる。
(反応液S1の調製)
先ず、以下の組成からなる成分を混合し、その後に濾過して反応液S1を調製した。
・ジエチレングリコール 10.0部
・メチルアルコール 5.0部
・硝酸マグネシウム 3.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.5部
・イオン交換水 81.5部
上記で得た反応液S1、及びインクセットIを構成するK1、C1、M1及びY1の各インクの表面張力を測定したところ、下記表11のようであった。
Figure 0005110764
反応液S1と、参考で用いたインクK1、C1、M1及びY1を独立に具備してなるインクセットIIIを用いて、下記のようにして普通紙であるPB用紙(キヤノン(株)製)に画像を形成して印字テストを行った。印字する際に、反応液S1を先に付与させた後、付与した反応液S1と接するように、インクK1、C1、M1及びY1を付与して印字物を作製した。画像形成に用いた記録ヘッドは、1,200dpiの記録密度を有し、その駆動条件としては、駆動周波数15kHzとした。又、1ドットあたりの吐出体積が夫々4plのヘッドを使用した。又、印字テストの際の環境条件は、25℃/55%RHに統一して行った。
上記のようにして得られた印字物は、ブリーディングは良好で、各色間の滲みの発生はなかった。又、得られた印字物の印字部のK1の光学濃度及びC1、M1、Y1の彩度を反射濃度計RD−19I(Gretag Macbeth製)で測定したところ、インクK1の光学濃度が1.3、C1の彩度が52、M1の彩度が61、Y1の彩度が74であった。この結果、インクセットIIIを用いることで、画像濃度及び彩度の高い印字物が得られることが確認できた。
参考
参考例では、参考で用いた反応液S1の代わりに、下記で調製した反応液S2を組み合わせてインクセットIVとした。本参考例で使用した反応液S2の表面張力は、58mN/mであった。本参考例は、参考で用いた反応液S1(表面張力:40mN/m)の代わりに、この反応液S2を併用しているため、参考のインクセットIIIと比べて、反応液とインク間の表面張力差が大きい。この結果、下記に述べるように、画像を形成した場合に、参考のインクセットIIIを用いた場合と比べて記録媒体上での記録物の印字特性を向上させることができることがわかった。
(反応液S2の調製)
先ず、以下の組成からなる成分を混合し、その後に濾過して反応液S2を調製した。得られた反応液S2の表面張力は、58mN/mであった。
・ジエチレングリコール 10.0部
・メチルアルコール 5.0部
・硝酸マグネシウム 3.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.1部
・イオン交換水 81.9部
上記反応液S2と、参考で用いたインクK1、C1、M1及びY1とをそれぞれ具備するインクセットIVを用いて、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に画像を形成して印字テストを行った。画像形成の際には、反応液S2を先に付与させた後、付与した反応液S2と接するようにして、インクK1、C1、M1及びY1を付与させて印字物を作製した。この際、印字条件等は参考と同等とした。
上記の印字テストの結果、作成された印字物のブリーディングは良好で、各色間の滲みはなかった。又、参考の場合と同様に、得られた印字物の印字部のK1の光学濃度及びC1、M1、Y1の彩度を反射濃度計RD−19I(Gretag Macbeth製)で測定したところ、インクK1の光学濃度が1.6、C1の彩度が55、M1の彩度が67、Y1の彩度が80であった。参考で得られた印字物の反射濃度と比較した結果、インクと併用する反応液の表面張力を、インクの表面張力に比べて大幅に高くすることで、記録媒体上の記録物の印字濃度が向上したことが確認された。
参考比較例
参考比較例は、酸価の1.5倍以下のアルカリ水溶液に溶解する樹脂で顔料を分散させた場合の例である。
(ビニル系共重合体A5の合成)
先ず、スチレン60部とアクリル酸40部とを用いて参考と同様の方法でビニル系共重合体A5を合成した。このビニル系共重合体A5の重量平均分子量は9,400、数平均分子量は4,000、多分散度は2.4であり、酸価は201mgKOH/gであった。又、0.3部のKOHを溶解したKOH水溶液19部に、上記で得たビニル系共重合体A5を1部混合し(ポリマーの5%溶液)、24時間攪拌したところ、KOH溶液は透明となり、ビニル系共重合体A5は溶解した。
(顔料分散液PK3の調製)
参考の顔料分散液PK1の調製で使用したビニル系共重合体A1を、上記で得たビニル系共重合体A5とし、且つ、カーボンブラック(Color Black FW18 デグサ製)を、MCF88(三菱化学製)に代えたこと以外は参考の顔料分散液PK1の調製の場合と同様の方法で、顔料分散PK3を作製した。
(インクK3の調製)
インクK3は、顔料分散液PK1を、上記で得た顔料分散液PK3としたこと以外は、参考のインクK1と同様の方法で調製した。得られた黒色のインクK3について、実施例1の場合と同様にして、インクK3の吐出安定性、保存安定性を評価し、結果をそれぞれ表13に示した。表12に、保存安定性を評価した際の粒径の経時変化の測定結果を示した。又、インクK3の粘度を実施例1の場合と同様にして測定し、測定結果を表13中に示した。
Figure 0005110764
Figure 0005110764
参考と同様に、上記で得られた粘度比と、インクK3の吐出安定性及び保存安定性との相関をみた。この結果、表13に示した通り、インクK3は、シアレート0.5s-1とシアレート100s-1における粘度比は、1.1よりも小さかったが、その吐出安定性が悪く、保存安定性もあまりよくなかった。又、記録物の画質はよくなかった。
参考比較例
本例では、ノニオン性界面活性剤を添加してインクK3の吐出安定性の改善を図った場合について述べる。
(インクK4の調製)
参考比較例で得た顔料分散液PK3を含む下記の成分を混合し、その後に濾過して、黒色のインクK4を調製した。
・顔料分散液PK3 30部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 5部
・イソプロピルアルコール 5部
・BC−20TX(日光ケミカルズ製) 1部
・イオン交換水 54部
上記で得られたインクK4について、参考の場合と同様にして、インクK4の吐出安定性、保存安定性を評価し、結果をそれぞれ表15に示した。表14に、保存安定性を評価した際の粒径の経時変化の測定結果を示した。又、インクK4の粘度を実施例1の場合と同様にして測定し、測定結果を表15中に示した。更に、参考で使用した反応液S1と、上記で得たインクK4とを用いて、普通紙であるPB用紙(キヤノン製)に画像を形成して、印字試験を行った。その際、反応液S1を先に付与させた後、反応液S1と接するようにインクK4を付与して、印字物を作製した。得られた印字物の印字部の反射濃度は、下記表15に示した通りである。
Figure 0005110764
Figure 0005110764
表15に示したように、参考比較例のインクK3に比べて、本参考比較例のインクK4の場合は、吐出安定性の向上が見られた。しかし、印字試験の結果、画質の面からは十分であるとはいえず、保存安定性もそれほどよくないままであった。更に、反応液S1を併用しても、記録媒体上の記録物の反射濃度の向上も見られなかった。
本発明の効果としては、本発明にかかる顔料分散インク或いはインクセットを用いることで、形成した記録媒体上の記録物が良好な耐候性を示し、しかもインクの吐出安定性及び保存安定性が確保され、着弾精度が落ちて記録物が乱れるといったことがなく、画像乱れのない耐候性に優れた画像の提供が可能となる。上記に加えて更に、本発明にかかる反応系インクセットを用いれば、記録媒体上の記録物が十分な発色性を確保でき、高い反射濃度を有する良好な画像の提供が可能となる。又、本発明によれば、上記した優れた効果が得られる上記顔料分散インクが簡易に得られる製造方法が提供される。
インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。 インクカートリッジの縦断面図である。 記録ユニットの斜視図である。 液体吐出ヘッドを備えたインクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。
符号の説明
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラ
53:排紙ローラ
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モータ
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
832:吐出口
100:インクジェット記録ヘッド
1001:液体タンク
1012:カートリッジ

Claims (10)

  1. 顔料及び樹脂分散剤を含有するインクジェット用顔料分散インクにおいて、
    該樹脂分散剤が、
    スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルナフタレン、4−ビニル安息香酸、ビニル安息香酸エステル、N−ビニルカルバゾール、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び酢酸ビニル並びにこれらの化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド変性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の疎水性モノマーを含むモノマーを重合することで得られる疎水性の主鎖と、
    アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の親水性モノマーを含むモノマーを重合することで得られるマクロモノマーに由来する親水性の側鎖と、を有し、
    該主鎖を構成する、該疎水性モノマーの割合が、主鎖を構成する全モノマーに対し、60質量%以上であるグラフトポリマーであり、
    該グラフトポリマー自体の重量平均分子量が、3,000〜15,000であり、
    該グラフトポリマーの側鎖となるマクロモノマーの重量平均分子量が、300〜2,000であり、
    該グラフトポリマー自体の重量平均分子量と該グラフトポリマーの側鎖となるマクロモノマーの重量平均分子量が下記式を満足することを特徴とするインクジェット用顔料分散インク。

    Figure 0005110764
  2. 前記側鎖となるマクロモノマーを構成する前記親水性モノマーの割合が、側鎖を構成する全モノマーに対し、60質量%以上である請求項1に記載のインクジェット用顔料分散インク。
  3. 前記側鎖となるマクロモノマーを構成する前記親水性モノマーが、カルボキシル基を有するモノマーを有し、該カルボキシル基を有するモノマー割合が、側鎖となるマクロモノマーを構成する全モノマーに対し、30質量%以上である請求項1又は2に記載のインクジェット用顔料分散インク。
  4. 複数のインクを具備しているインクセットにおいて、該複数のインクの少なくとも一つが請求項1〜3の何れか1項に記載のインクであることを特徴とするインクセット。
  5. 前記インクセットが、顔料分散インクと反応する反応剤を含む反応液を具備している請求項4に記載のインクセット。
  6. インクジェット用顔料分散インクを収納しているインク収納部を有しているインクタンクにおいて、該インクが請求項1〜3の何れか1項に記載のインクであることを特徴とするインクタンク。
  7. インクジェット用顔料分散インクと、該インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドを有している記録ユニットにおいて、該インクが請求項1〜3の何れか1項に記載のインクであることを特徴とする記録ユニット。
  8. インクジェット用顔料分散インクと、該インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドを有しているインクジェット記録装置において、該インクが請求項1〜3の何れか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. インクジェット用顔料分散インクをインクジェット法で記録媒体に吐出する工程を有するインクジェット記録方法において、該インクが請求項1〜3の何れか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  10. 請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット用顔料分散インクの製造方法であって、該インクを構成する樹脂分散剤の酸価の1〜1.5倍量のKOHを含有するアルカリ水溶液と樹脂分散剤とを含有する水性媒体中に、顔料を添加する工程を有することを特徴とするインクジェット用顔料分散インクの製造方法。
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