JP2006274022A - 水性インク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法、並びに記録物 - Google Patents

水性インク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法、並びに記録物 Download PDF

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Abstract

【課題】 保存安定性、吐出安定性が高く、普通紙・再生紙等で滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なくて画像濃度が高い、インクジェット記録用インクとして好適な水性インク組成物が望まれている。
【解決手段】 着色成分、グリセリンエーテル化合物、保湿剤及び水を少なくとも含んでなる水性インク組成物であって、該着色成分が着色剤を分散ポリマーで包含して水に分散可能となる分散体であり、かつ該分散ポリマーが疎水性部分と親水性部分とから成り、該親水性部分の少なくとも一部分が該疎水性部分の一部分である未中和基を中和して得られる中和基であって、中和基の存在量が未中和基と中和基との和に対してモル比で20%以上60%未満の範囲であり、該グリセリンエーテル化合物が下記式で表されるものであることを特徴とする水性インク組成物。
【化1】
Figure 2006274022

【選択図】 なし

Description

本発明は、水性インク組成物、及びそれを用いたインクジェット記録方法並びに記録物に関する。
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて記録を行なう記録方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で記録可能であるという特徴を有する。この方法に用いられるインクに求められる特性としては、画像の耐水性や耐光性等の堅牢性が良好であること、不規則なインクの流れや付着したインク小滴より大きく広がる現象(以下これを“滲み”とする)が記録媒体種を問わずに無いこと、不規則な画像濃度のムラ(以下これを“濃淡ムラ”とする)が記録媒体種を問わずに無いこと、インクが紙の裏側にまで染み通ってしまう現象(以下これを“裏抜け”とする)が記録媒体種を問わずに無いこと等が挙げられる。
インクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、水を主成分とし、これに着色成分及び目詰まり防止等の目的でグリセリン等の保湿剤を含有したものが一般的である。インクジェット記録用インク組成物に用いられる着色剤としては、色剤の彩度の高さ、利用できる色剤の種類の豊富さ、水への溶解性等の理由から水溶性染料が数多く使用されている。
しかし、染料は耐光性及び耐水性等の諸特性に劣ることがあり、よって染料系のインク組成物により印刷された記録物は、耐光性及び耐水性に劣ることになる。耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録媒体によって改善されているが、普通紙・再生紙については未だ充分とは言い難い。
それに対して、顔料は染料に比べて耐光性及び耐水性に優れており、近年、耐光性及び耐水性を改善する目的でインクジェット記録用インク組成物の着色剤としての利用が検討されている。ここで、顔料は一般に水には不溶であるため、顔料を水系インク組成物に利用する場合には、顔料を水溶性樹脂等の分散剤と共に混合し、水に安定分散させた後にインク組成物として調製する必要がある。
顔料が水系に安定的に分散するためには、顔料の種類、粒径、用いる分散剤の種類、及び分散手段等を検討する必要があり、これまで多くの分散方法及びインクジェット記録用インクが提案されている。例えば、カーボンブラックを界面活性剤や高分子分散剤で分散した水性顔料インクが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。また、水、スチレン−マレイン酸共重合体、ε−カプロラクタム、及び顔料からなるインク組成物が提案されている(特許文献3参照)。また、水性媒体、スチレン−マレイン酸共重合体、及び銅フタロシアニン顔料を含有するインク組成物が提案されている(特許文献4参照)。また、分散ポリマーの酸基の60モル%以上がアルカリ性の中和剤で中和された樹脂を用いた水性インクが提案されている(特許文献5、特許文献6参照)。
また、普通紙上での滲み軽減・乾燥性向上を目的として、種々のインク添加剤が提案されている。例えば、炭素数3以上のハロゲン化アルキレングリコール(特許文献7参照)、特定構造のアルキルポリオールエーテル(特許文献8参照)、ポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(特許文献9参照)、複数個の水酸基と炭素数5〜18のアルキル基等からなる化合物(特許文献10参照)、2〜3個の水酸基と炭素数4〜6のアルキル基からなる水溶性化合物(特許文献11参照)等が提案されている。これら文献によれば、各々の添加剤を加えたインクは、滲みや裏抜けの少ない鮮明な画像を実現できるとされている。
特開昭64−6074号公報 特開昭64−31881号公報 特開平3−252467号公報 特開平3−79680号公報 特開平8−183920号公報 特開平9−40895号公報 特開平5−186726号公報 特開平6−220387号公報 特開平9−165538号公報 特開平9−165539号公報 特開平10−95944号公報
上述の様に顔料をインクジェット記録用インク組成物に用いるためには、水中に安定的に分散させて長期間それを保持することが重要であるが、上記の従来技術(特許文献1〜特許文献6)は満足いくものではなかった。
また、インクジェット記録方法に用いるインクには、着色剤以外にインクジェット記録方法における種々の特性を最適化するために各種の添加剤、特には水溶性有機溶剤が添加される。その水溶性有機溶剤としては、乾燥を防止する保湿剤、インク組成物の表面張力を下げて記録媒体への浸透性を制御する浸透溶剤や界面活性剤、インク組成物のpHを調整する有機アミン等がある。これらの溶剤の中には分散している着色成分に影響してその分散性を阻害するものがあり、そのためにインク組成物の保存安定性を阻害する場合がある。特に、疎水性表面を有する顔料表面や分散剤中の疎水性部分に対して親和性の強い溶剤でこれらの影響が出やすいという問題があった。また、このような影響が出た場合、顔料表面に吸着している分散剤(界面活性剤や樹脂等)が遊離してインク中に溶解してしまい、これをインクジェット記録用インクとして用いた場合にプリンタヘッドからの吐出が不安定となってしまうという問題点があった。
上記の従来技術(特許文献5、特許文献6)に記載された、分散ポリマーの酸基の60モル%以上がアルカリ性の中和剤で中和された分散ポリマーを用いた水性インクでは、使用する水溶性有機溶剤の種類によっては、分散ポリマーと水溶性有機溶剤とが影響し合うことによって、インクの保存安定性・吐出安定性が低下することが問題であった。
また、上述の従来技術(特許文献1〜特許文献6)では、顔料を分散させる分散剤の一部がインク中に溶け出し、それがインクの浸透剤として作用することで、結果的にインクの記録媒体中への浸透性を必要以上に高めてしまっていた。そのため、顔料粒子がそのインクの浸透力に引きずられて記録媒体中に染み込んでしまい、画像の発色性が乏しくなってしまう場合があった。特に普通紙や再生紙でその影響が顕著であり、場合によっては浸透過多による滲みや裏抜け等を引き起こし、画像品質を劣化させてしまう要因となっていた。このような不具合を改善するためにインク添加剤が種々検討されてきており、具体的には前述した特許文献7〜11で提案されている添加剤が挙げられ、一定の効果が見られている。しかし、これら添加剤を添加したインクにおいても充分とは言い難く、記録媒体種によっては滲み・濃淡ムラ・裏抜け等の不具合が発生していた。
よって本発明は上述の問題点を解決し、保存安定性、吐出安定性が高く、普通紙・再生紙等で滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なくて画像濃度が高い、インクジェット記録用インクとして好適な水性インク組成物を提供することを目的としている。
本発明の水性インク組成物は、着色成分、グリセリンエーテル化合物、保湿剤及び水を少なくとも含んでなる水性インク組成物であって、該着色成分が着色剤を分散ポリマーで包含して水に分散可能となる分散体であり、かつ該分散ポリマーが疎水性部分と親水性部分とから成り、該親水性部分の少なくとも一部分が該疎水性部分の一部分である未中和基を中和して得られる中和基であって、中和基の存在量が未中和基と中和基との和に対してモル比で20%以上60%未満の範囲であり、該グリセリンエーテル化合物が下記式で表されるものであることを特徴とする。
Figure 2006274022
また、本発明の水性インク組成物は、前記グリセリンエーテル化合物として、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、3−(オクタデシロキシ)−1,2−プロパンジオール、モノオレイン、1,2−ジヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれていることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、さらに浸透剤を含んでなることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、前記浸透剤が、一価アルコール類、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルキルジオール類、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤からなる群から選ばれることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、さらに樹脂エマルジョンを含んでなることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が30℃以上である樹脂エマルジョンを少なくとも一種類含んでなることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、前記着色剤が、カーボンブラックであることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、前記着色剤が、有機顔料であることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、さらに弱アルカリ化剤を含んでなり、アルカリ性であることを特徴とする。
また、本発明の水性インク組成物は、前記弱アルカリ化剤が、有機酸塩及び有機緩衝剤から選ばれる少なくともいずれかの化合物を含んでなることを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録方法は、上記のいずれかの水性インク組成物の液滴を吐出して、前記液滴を記録媒体に付着させて記録を行なうことを特徴とする。
また、本発明の記録物は、上記のいずれかの水性インク組成物をインクジェット記録方法にて記録したことを特徴とする。
本発明の水性インク組成物は、特定の着色成分、特定のグリセリンエーテル化合物、保湿剤及び水を少なくとも含んでなる水性インク組成物である。このような構成により、インクジェット記録方法に対しては、保存安定性、吐出安定性が高く、普通紙・再生紙等で滲み・濃淡ムラ・裏抜けが無く画像濃度が高い、インクジェット記録用インクとして好適な水性インク組成物を得ることができる。
ここで、本発明の水性インク組成物に使用する、着色成分に含まれる分散ポリマーは、そのポリマー構造として疎水性部分と親水性部分とを併せ持つことが必須である。分散ポリマーが疎水性部分を有さないとポリマー全体が水溶解して分散ポリマーとはならず、安定的な着色剤分散液が得られない。また、このようにして水溶解した遊離ポリマーが水性インク組成物のプリンタヘッドからの吐出を不安定にしてしまう。また必要以上に記録媒体、特に普通紙・再生紙に対して過剰に浸透してしまい、画像濃度の低い、滲み・濃淡ムラ・裏抜け等が発生した画像になってしまう。一方、分散ポリマーが親水性部分を有さないと、ポリマーによる着色剤の分散が安定的に行なえず、着色剤が凝集・沈降してしまう。このような不具合が生じない構成として、後に詳細に説明するが、分散ポリマー中の親水性部分の一部分である中和基が疎水性部分の一部分である未中和基を中和して得られる基であり、かつその存在量が、未中和基と中和基との和に対してモル比で20%以上60%未満であることが必須である。
また、本発明の水性インク組成物にはグリセリンエーテル化合物が必須であり、その構造は下記式で表される。
Figure 2006274022
上記構造のグリセリンエーテル化合物を含むことにより、インクジェット記録方式においては吐出安定性・保存安定性に優れた水性インク組成物が得られる。また、この水性インク組成物は、特に普通紙・再生紙等に画像を印刷した際に、滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度の高い鮮明な画像が得られる。
以下に本発明の水性インク組成物の構成要素について説明する。
<水性インク組成物>
[分散ポリマー]
本発明の水性インク組成物における分散ポリマーは、単独では水に不溶で、後に実施例で述べる分散体の製造方法で用いる有機溶剤(好ましくはアセトンやメチルエチルケトン等の親水性有機溶剤)に可溶なポリマーであれば特に制限は無いが、そのポリマー構造として疎水性部分と親水性部分とを併せ持つことが必須である。
ここで、疎水性部分とは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香環、あるいは未中和基を有する繰り返し単位を示す。未中和基とは、中和剤により中和され得る基であり、酸基、アルカリ性基を挙げることができる。未中和基としては、具体的にはカルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
また親水性部分としては、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及び中和基を有する繰り返し単位を示す。中和基とは、未中和基が中和されてなる基であり、イオン基であることが好ましい。未中和基及び中和基は、アニオン性基であることが好ましく、特に、未中和基がカルボン酸基、中和基がカルボン酸アニオン基(カルボン酸塩の基)である場合を好適に例示できる。カルボン酸塩としては、カルボン酸リチウム塩、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。
分散ポリマーが上述の構造を持つことで、疎水性部分で後述する着色剤の疎水的表面に強固に吸着して着色剤を包含できる。さらに、親水性部分で水になじむことができるため、水中で安定的に分散する分散体となることができる。
アニオン性基を有する分散ポリマーは、例えば、アニオン性基を有するモノマー(以下、アニオン性基含有モノマーという)と、さらに必要に応じてこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有モノマーとしては、カルボン酸基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
カルボン酸基を有するモノマーとしては、繰り返し単位中にカルボン酸基を一つもしくは二つ含んだアクリルモノマーが好ましい。
カルボン酸基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸またはメタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
スルホン酸基を有するモノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スルホブチルメタクリレート、アリルスルホン酸等が好ましい。さらに、樹脂を重合した後、硫酸、発煙硫酸、スルファミン酸等のスルホン化剤によりスルホン化することも好ましい。
アニオン性基含有モノマーと共重合し得る他のモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等のような(メタ)アクリル酸エステル;ステアリン酸とグリシジルメタクリレートの付加反応物等のような油脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応物;炭素原子数3以上のアルキル基を含むオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のようなスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のようなイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のようなマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のようなフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノプロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等が挙げられる。
これらの分散ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜200,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜150,000の範囲程度のものが特に好ましい。分散ポリマーの重量平均分子量がこの範囲であることにより、着色剤における被覆膜として、または水性インク組成物における塗膜としての機能を充分に発揮することができる。
アニオン性基を有する分散ポリマーの未中和基の一部分を中和するアルカリ性化合物としては、有機アミンやアルカリ金属塩化合物等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリンのような揮発性アミン化合物との塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等の揮発しにくい高沸点の有機アミン等の塩が挙げられる。アルカリ金属塩化合物の具体例としては、アルカリ金属としてリチウム、ナトリウム、カリウムを有する化合物、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属塩、より好ましくは水酸化カリウムが挙げられる。
本発明の水性インク組成物の着色成分においては、以上述べた分散ポリマーの疎水性部分と親水性部分のバランスが重要であり、親水性部分の一部分である中和基の存在量が分散体の分散安定性、プリンタヘッドからの吐出安定性、及び記録物の画像品質に大きく影響する。その比率は、分散ポリマー中の疎水性部分の一部分である未中和基と親水性部分の一部分である中和基との和に対してモル比で20%以上60%未満であることが必須である。この範囲になることにより、保存安定性の高い、吐出安定性及び画像品質に優れた水性インク組成物を得ることができる。中和基の量が20%未満であると疎水性部分が多くなり過ぎ、分散ポリマーによる着色剤の分散が不安定で着色剤が凝集・沈降しやすくなってしまうという弊害が生じる。また逆に中和基の量が60%以上であると疎水性部分が少なくなり過ぎ、分散ポリマー全体が単独で水溶化してしまう状態となる。そのようになると、着色剤に吸着しない遊離ポリマーが増えて水性インク組成物のプリンタヘッドからの吐出が不安定になる、また水溶化した分散ポリマーが浸透剤としての作用を示して必要以上にインクが記録媒体に染み込みやすくなり、画像に滲みや裏抜け等の弊害が生じる等々の傾向がある。
分散ポリマーにおいてアニオン性基の量は、酸価が30KOHmg/g程度以上、好ましくは50〜250KOHmg/g程度の範囲がより好ましい。分散ポリマーの酸価がこの様な範囲であることにより、塗膜化した着色剤粒子の貯蔵安定性が向上し、また記録画像の耐水性が向上する。
以上述べた分散ポリマーを用いて着色剤を分散させた分散体である着色成分を用いれば、保存安定性・吐出安定性に優れ、特に普通紙・再生紙等に記録した際に滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少ない記録濃度が高い鮮明な画像が得られる、インクジェット記録用インクとして好適な水性インク組成物が実現できる。この理由は、定かでは無いが、以下のように推定している。
普通紙・再生紙には万年筆等のインクの滲みを抑えるため、“サイズ剤”と呼ばれる薬剤が塗布・添加されている。この“サイズ剤”は普通紙・再生紙の主要構成材料であるセルロース繊維と比較して疎水性を示す。従来の水性顔料インクには、その顔料粒子の分散剤として親水性に富む水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いていた。そのため従来の水性顔料インクではその“サイズ剤”が多く存在している部分で弾かれてしまい、それに付随して顔料粒子も流れてしまうため、普通紙・再生紙上において滲み・濃淡ムラ・裏抜けが発生してしまい、これが画像品質劣化の要因となっていた。それに対して、本発明の水性インク組成物に用いる着色成分中の分散ポリマーは、従来の顔料分散体の分散剤として用いられている水溶性樹脂や水溶性界面活性剤と比較して疎水性に富んでいるため、“サイズ剤”が多く存在している部分においても弾かれること無く均一に着色成分が付着する。このことにより、滲み・濃淡ムラの少ない画像が得られる。また、この分散ポリマーは、セルロース繊維に対してもその疎水性のために、比較的表面に付着する。そのため、分散ポリマー内部に存在している着色剤が普通紙・再生紙表面に多く存在するようになり裏抜けも少なくなる。従って、画像濃度が向上する。
[着色剤]
着色剤としては、水媒体に不溶あるいは難溶の着色剤として有機顔料、カーボンブラック、油溶染料、分散染料等を挙げることができる。この中で、発色が良好であること、比重が小さいために分散時に沈降しにくいことより、特に、カーボンブラック、有機顔料が好ましい。
本発明の水性インク組成物では、このような着色剤が、前記分散ポリマー(好ましくは、アニオン性基を有するポリマー)により分散されている。
本発明で好ましいカーボンブラックの具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等(以上全て商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上全て商品名、デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上全て商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上全て商品名、キャボット社製)が挙げられる。なお、これらは本発明に好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものでは無い。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いてよい。また、これらの顔料は水性インク組成物全量に対して0.5重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の添加が好ましい。
本発明で好ましい有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料等が挙げられる。
本発明による水性インク組成物に用いられる有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
シアンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はシアンインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
マゼンタインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はマゼンタインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
イエローインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はイエローインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
オレンジインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36もしくは43またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はオレンジインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
グリーンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7もしくは36またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はグリーンインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
本発明の水性インク組成物において、着色剤と分散ポリマーの比率は重量比率で10:1〜1:10が好ましく、4:1〜1:3がより好ましい。また、分散時の着色剤の粒径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
[保湿剤]
本発明による水性インク組成物は、保湿剤を含んでなる。保湿剤は水性インク組成物の乾燥を抑制するために添加するものであり、プリンタヘッドノズル先端の乾燥による水分蒸発を抑制して、水性インク組成物の凝集・固化を防止する作用を持つ。
保湿剤は、水溶性で吸湿性の高い材料から選ばれ、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類等を用いることができる。
さらに、上述の材料の能力を補助する目的で、水溶性の固体保湿剤を併用、添加することも可能である。詳しくは、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等、ε−カプロラクタム等のラクタム類、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビット等が挙げられる。
これらの保湿剤の添加量は、単独あるいは複数混合して、水性インク組成物全量に対して1重量%〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは3重量%〜30重量%の範囲である。これらの保湿剤は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることができる。
[グリセリンエーテル化合物]
本発明による水性インク組成物は、下記式で表されるグリセリンエーテル化合物を含んでなる。
Figure 2006274022
上記構造のグリセリンエーテル化合物を含むと、普通紙・再生紙等に印刷した際に滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度の高い鮮明な画像を示す、インクジェット記録用インクとして好適な水性インク組成物が実現できる。また、このグリセリンエーテル化合物は、浸透成分としても優れた特性を持ち、これらを含む水性インク組成物は記録媒体種によらずに濡れ性・浸透速度が向上し、浸透性・乾燥性に優れるという特性をも示す。特に本発明の水性インク組成物に用いられる前述の分散体と併用することにより、分散体そのものが持つ普通紙・再生紙に対する滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度の高い特性を向上させつつ浸透時間を速める働きに優れているため、鮮明な画像が印刷速度を速めても得られるという特性を持つ。
以上述べたグリセリンエーテル化合物は、上記式の構造を持つものであればどのようなものでも用いることができるが、その中でも特に、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、3−(オクタデシロキシ)−1,2−プロパンジオール、モノオレイン、1,2−ジヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれていることが好ましい。この群から選ばれる化合物は、他のグリセリンエーテル化合物と比較して上述した特性に優れているため、本発明の水性インク組成物に特に好適に用いることができる。
これらグリセリンエーテル化合物の添加量は、所望の効果が発現できるように適宜決定されてよいが、水性インク組成物全量に対して0.1重量%〜10重量%が好ましい。この範囲であれば、インク粘度をインクジェット記録方式にて適正な粘度範囲に調整することができ、所望の特性を発現することができる。
[水]
水は、本発明の水性インク組成物の中心となる媒体であり、好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
また、紫外線照射、又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、水性インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
本発明の水性インク組成物は、以上述べた着色剤を包含した分散ポリマーによる分散体、保湿剤、グリセリンエーテル化合物、及び水を必須成分としており、このような成分で構成されていればインクの保存安定性・吐出安定性は良好であり、普通紙・再生紙においては滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度の高い画像が得られるが、必要に応じて、以下に示す成分をさらに含むことにより、種々の特性をさらに向上させることができる。以下、その成分について説明する。
[浸透剤]
本発明による水性インク組成物は、別の態様によれば、さらに浸透剤を含むことができる。ここでいう浸透剤は、記録媒体へのインク浸透性を速めるための添加剤であり、所望のインク乾燥時間により適宜選択される。
浸透剤の一例としては、水性インク組成物の表面張力を下げる作用を持つものとして、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、あるいは1,2−アルキルジオール類から選択することが好ましい。
多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体としては、特にアルキルの炭素数は3以上の多価アルコールの誘導体が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体の添加量は、水性インク組成物全量に対して15重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
1,2−アルキルジオール類としては、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルキルジオールが好ましい。この中で、炭素数6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が強く、特に好ましい。これら1,2−アルキルジオールの添加量は、水性インク組成物全量に対して5重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
また、浸透剤の別の例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノール等の水可溶性の一価アルコール類が挙げられる。これら一価アルコールの添加量は水性インク組成物全量に対して10重量%以下の範囲が好ましい。
また、浸透剤の他の例としては、アセチレングリコール系界面活性剤あるいはアセチレンアルコール系界面活性剤が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤・アセチレンアルコール系界面活性剤は、他の界面活性剤と比較して起泡性が少ない、あるいは無い特性を持つため、本発明の水性インク組成物の添加剤として好ましい。
本発明において好ましいアセチレングリコール系界面活性剤あるいはアセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。これらアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤の添加量は、所望のインク浸透時間で適宜決定されてよいが、水性インク組成物全量に対して10重量%以下が好ましい。
これらの浸透剤は上に列記したものを一種類で用いても良く、あるいは二種類以上を混合して用いることもできる。特に、異なる構造の浸透剤を複数種併用した場合、異なる浸透性・発色性を示す種々の記録媒体種に対して同じ様な画質を得ることができ、記録媒体種対応性の観点から好ましい。
なお、乾燥時間が比較的長い水性インク組成物の場合は、保湿剤の中で水溶液の表面張力が比較的小さくなるものを浸透剤の代用として用いることもでき、この場合は上述の浸透剤を加えずに水性インク組成物とする事もできる。
以上述べた浸透剤は、前述した分散ポリマーに対して溶解作用がほとんど無く、この分散ポリマーが分散している分散液を安定的に分散保持する作用を持つ。そのため、本発明の水性インク組成物においては上記のような浸透剤を含んでいても、顔料等の着色剤表面に吸着していない遊離分散ポリマーがほとんど存在しないため、高い保存安定性・吐出安定性が確保できるという利点がある。
またこれら浸透剤は、本発明の水性インク組成物で必須であるグリセリンエーテル化合物と併用すると、グリセリンエーテル化合物として比較的水溶性に乏しいものを用いた場合にそれの水性インク組成物中への溶解性を安定的に保持する作用を示す。さらに浸透成分としても優れた特性を示す。従って、本発明の水性インク組成物にこれら浸透剤を併用することで、さらに滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度が高い優れた画像品質の画像が、記録媒体種によらずに得られるという利点を持つ。
[樹脂エマルジョン]
本発明による水性インク組成物は、別の態様によれば、さらに樹脂エマルジョンを含んでなることができる。樹脂エマルジョンは、上述した分散体が記録媒体中に染み込むことを抑制してその発色性を向上させ、さらに乾燥するのに伴って樹脂エマルジョン同士及び樹脂エマルジョンと前記分散体が共に融着し、顔料粒子が記録媒体上に固着することで定着性を向上させる作用を持つ。このような特性を持つ樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の混合系を用いてもよい。これらの樹脂成分の中でより好ましくは、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸−ハーフエステル共重合体等が挙げられる。
これらの樹脂成分は、その構造として疎水性部分と親水性部分とを併せ持つことが必須である。ここで、疎水性部分とは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香環、あるいは未中和基を有する繰り返し単位を示す。未中和基とは、中和剤により中和され得る基であり、酸基、アルカリ性基を挙げることができる。未中和基としては、具体的にはカルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
また親水性部分としては、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及び中和基を有する繰り返し単位を示す。中和基とは、未中和基が中和されてなる基であり、イオン基であることが好ましい。未中和基及び中和基は、アニオン性基であることが好ましく、特に、未中和基がカルボン酸基、中和基がカルボン酸アニオン基(カルボン酸塩の基)である場合を好適に例示できる。カルボン酸塩としては、カルボン酸リチウム塩、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。
樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分が上述の構造を持つことで、疎水性部分は樹脂エマルジョンの内部に存在して水から隔離され、その表面に親水性部分が存在することで水になじむことができるため、水中で安定的に分散する樹脂エマルジョンとなることができる。また、記録媒体上に付着した際、樹脂エマルジョン同士あるいは樹脂エマルジョンと前記分散体が共に融着・皮膜化して疎水性部分が皮膜表面を覆うことが出来る。この皮膜は水に不溶で再分散せず、また前記分散体と共に記録媒体上に強固に固着するため、画像の定着性・耐水性が良好となる。
このような樹脂エマルジョンは、種々の特性を満足するように合成して用いてもよいが、市販品を使用してもよい。市販品として具体的には、モビニール701(Tg:−19℃)、モビニール743(Tg:39℃)、モビニール745(Tg:21℃)、モビニール940(Tg:1℃)、モビニール1930(Tg:1℃)、モビニール664(Tg:6℃)、モビニールDM5(Tg:−3℃)、モビニール700(Tg:−2℃)、モビニール792(Tg:−2℃)、モビニールDM772(Tg:3℃)、モビニール865(Tg:1℃)、モビニール870(Tg:19℃)、モビニール928(Tg:5℃)、モビニール1750T(Tg:16℃)、モビニール1751(Tg:16℃)、モビニール1760(Tg:7℃)、モビニールLDM6316(Tg:17℃)、モビニール7200(Tg:24℃)、モビニール727(Tg:5℃)、モビニール752(Tg:16℃)、モビニール837(Tg:10℃)、モビニール860(Tg:3℃)、モビニール864(Tg:4℃)、モビニール864M(Tg:4℃)、モビニールDM60(Tg:0℃)、モビニールDM765(Tg:−19℃)、モビニール937(Tg:−42℃)、モビニール1906(Tg:−45℃)、モビニールLDM6300(Tg:10℃)、モビニール742N(Tg:37℃)、モビニール749E(Tg:25℃)、モビニール752(Tg:16℃)、モビニール916(Tg:−5℃)、モビニール1700A(Tg:37℃)、モビニール7210(Tg:16℃)、モビニール747(Tg:42℃)、モビニール6520(Tg:40℃)、モビニール7502(Tg:−35℃)、モビニールLDM7010(Tg:34℃)、モビニールVDM7410(Tg:−4℃)、モビニールDM772(Tg:3℃)、モビニールDM774(Tg:10℃)、モビニール947(Tg:−55℃)、モビニールLDM6481(Tg:−22℃)、モビニールLDM6880(Tg:9℃)、モビニールDM758(Tg:−60℃)、モビニールDM765(Tg:−19℃)、モビニール650(Tg:−37℃)、モビニール760H(Tg:−17℃)、モビニール761HG(Tg:−35℃)、モビニール763(Tg:−18℃)、モビニール412(Tg:−62℃)、モビニール490(Tg:−53℃)、モビニールS−71(Tg:−53℃)、モビニール987(Tg:−2℃)、モビニール1410(Tg:−8℃)、モビニール630(Tg:27℃)、モビニール620(Tg:−22℃)、モビニール730L(Tg:−13℃)、モビニール735(Tg:14℃)、モビニール767(Tg:25℃)、モビニール790(Tg:102℃)、モビニール9000(Tg:46℃)、モビニール880(Tg:3℃)、モビニールDM60(Tg:3℃)、モビニール8020(Tg:−22℃)、モビニール8030(Tg:17℃)、モビニール8055(Tg:78℃)、モビニール8201(Tg:8℃)、モビニール787(Tg:14℃)、モビニール710(Tg:9℃)、モビニール718(Tg:−6℃)、モビニール776(Tg:−20℃)、モビニール952(Tg:−38℃)、モビニール963A(Tg:−19℃)、モビニールDM772(Tg:6℃)、モビニール975A(Tg:27℃)、モビニール3200(Tg:−21℃)、アプレタン760H(Tg:−17℃)、アプレタン2200(Tg:19℃)、アプレタン2000(Tg:19℃)、アプレタン3510(Tg:0℃)、アプレタン3410(Tg:−32℃)(以上全て商品名、クラリアントジャパン株式会社製)、PCLシリーズ0619(Tg:−4℃)、PCLシリーズ0623A(Tg:−6℃)、PCLシリーズ0640(Tg:55℃)、PCLシリーズ0693(Tg:20℃)、PCLシリーズ0695(Tg:−4℃)、PCLシリーズ0696(Tg:−12℃)、PCLシリーズ0850(Tg:7℃)、PCLシリーズ0890(Tg:−17℃)、SBシリーズ0561(Tg:−63℃)、SBシリーズ0589(Tg:0℃)、SBシリーズ0602(Tg:40℃)、SBシリーズ2108(Tg:−66℃)、SBシリーズ0533(Tg:−20℃)、SBシリーズ0545(Tg:−31℃)、SBシリーズ0548(Tg:−49℃)、SBシリーズ0568(−23℃)、SBシリーズ0569(Tg:−4℃)、SBシリーズ0573(Tg:−9℃)、SBシリーズ0597C(Tg:28℃)、AEシリーズAE116(Tg:50℃)、AEシリーズAE119(Tg:55℃)、AEシリーズAE120(Tg:−10℃)、AEシリーズAE121(Tg:58℃)、AEシリーズAE125(Tg:60℃)、AEシリーズAE134(Tg:48℃)、AEシリーズAE137(Tg:48℃)、AEシリーズAE140(Tg:53℃)、AEシリーズAE173(Tg:60℃)、AEシリーズAE200(Tg:−45℃)、AEシリーズAE311(Tg:−50℃)、AEシリーズAE318(Tg:5℃)、AEシリーズAE337(Tg:−30℃)、AEシリーズ343(Tg:0℃)、AEシリーズ362(Tg:−5℃)、AEシリーズAE373B(Tg:10℃)、AEシリーズAE379A(Tg:20℃)、AEシリーズAE513A(Tg:−48℃)、AEシリーズAE517(Tg:−48℃)、AEシリーズAE604(Tg:5℃)、AEシリーズAE610C(Tg:−62℃)、AEシリーズAE815(Tg:5℃)、AEシリーズAE945(Tg:−17℃)、AEシリーズAE950(Tg:−20℃)、AEシリーズAE986A(Tg:2℃)(以上全て商品名、JSR株式会社製)、ジョンクリル7100(Tg:−10℃)、ジョンクリル390(Tg:−5℃)、ジョンクリル1674(Tg:−4℃)、ジョンクリル711(Tg:0℃)、ジョンクリル1695(Tg:5℃)、ジョンクリル511(Tg:9℃)、ジョンクリル7001(Tg:12℃)、ジョンクリル632(Tg:12℃)、ジョンクリル741(Tg:15℃)、ジョンクリル450(Tg:16℃)、ジョンクリル840(Tg:16℃)、ジョンクリル74J(Tg:22℃)、PDX−7111B(Tg:19℃)、HRC−1645(Tg:21℃)、ジョンクリル734(Tg:30℃)、ジョンクリル852(Tg:31℃)、ジョンクリル7600(Tg:35℃)、ジョンクリル775(Tg:37℃)、ジョンクリル537(Tg:49℃)、ジョンクリル1535(Tg:50℃)、PDX−7630A(Tg:53℃)、ジョンクリル352(Tg:56℃)、ジョンクリル352D(Tg:56℃)、PDX−7145(Tg:56℃)、ジョンクリル538(Tg:66℃)(以上全て商品名、ジョンソンポリマー株式会社製)等が挙げられる。
これら樹脂エマルジョンは、本発明の水性インク組成物において一種類あるいは複数種用いることができるが、その内の少なくとも一種類はそれを構成する樹脂成分のTgが30℃以上であることが好ましい。その理由は、樹脂のTgが30℃以上である樹脂エマルジョンを含むことにより、前記分散体すなわち顔料等の着色剤がより多く記録媒体表面に存在することができ、その結果発色性がより高くなる効果があるためである。
また、これら樹脂エマルジョンの添加量は定着性・発色性等を考慮して適宜決定してよいが、水性インク組成物中に固形分で20重量%以下が好ましい。
[弱アルカリ化剤]
インクジェット記録装置において、水性インク組成物の流路に金属が用いられている場合は、水性インク組成物が酸性であると金属の腐食が生じることがあるので、本発明の水性インク組成物は中性又はアルカリ性に調整されていることが望ましい。
中性又はアルカリ性に調整するためには、水性インク組成物は、別の態様によれば、さらに弱アルカリ化剤を含有することが好ましい。ここで、水性インク組成物を中性又はアルカリ性に調整するために水酸化ナトリウム等の強アルカリ性化合物を用いると、分散ポリマー中の疎水性部分である未中和基が酸基(カルボン酸基、スルホン酸基等)である場合、酸基の中和が進んでしまい、本発明の水性インク組成物に必須な中和基と未中和基との和に対する中和基のモル比が60%以上となってしまう恐れがある。そうなった場合、前述したが、甚だしくは分散ポリマー全体が水溶化してしまい、顔料等の着色剤に吸着しない遊離ポリマーが増えて、水性インク組成物のプリンタヘッドからの吐出が不安定になる、画像に滲み・裏抜けが生じる等の不具合が発生する。本発明では弱アルカリ化剤を用いることで、前記分散ポリマーの中和率を大きく変えずに水性インク組成物を中性又はアルカリ性に保つことができ、より信頼性の高い水性インク組成物を提供することができる。
前記弱アルカリ化剤としては、有機酸塩及び有機緩衝剤から選ばれる化合物が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩等のアルキルカルボン酸の塩類、乳酸塩、グリコール酸塩、グリセリン酸塩等のヒドロキシ酸の塩類が好ましい。中でも、アルキルカルボン酸類のアルカリ金属塩であり、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等がより好ましい。有機緩衝剤としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス−塩酸塩、トリス−マレイン酸、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン等が好ましい。
弱アルカリ化剤の添加量は、所望のインクpHに合わせて適宜設定することができるが、10重量%以下が好ましい。
[その他の成分]
本発明の水性インク組成物は、さらに必要に応じてインクジェット記録用インクに通常用いられる添加物を加えることもできる。
必要に応じて加える添加物としては、酸化防止剤・紫外線吸収剤、防腐剤・防かび剤、界面活性剤等が挙げられる。
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレット等のビウレット類等、L−アスコルビン酸及びその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024等、あるいはランタニドの酸化物等が用いられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等の中から選ぶことができる。
界面活性剤は、記録媒体へのインク浸透性をさらに速めるための添加剤であり、好適な材料として、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等の陰イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等の非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、燐系界面活性剤、硼素系界面活性剤等を必要に応じて用いることができる。この中で、起泡性が少ない、あるいは無い特性を持つことから、アセチレングリコール系界面活性剤あるいはアセチレンアルコール系界面活性剤が好ましい。
シリコン系界面活性剤として、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(以上全て商品名、ビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
[水性インク組成物の諸物性値]
本発明の水性インク組成物は、保存安定性(粒径変化、粘度変化等)・分散安定性を確保する観点、及びインクジェット記録装置において水性インク組成物の流路に用いられている場合のある金属部品の腐食防止の観点から、pHは中性又はアルカリ性に調整されていることが望ましい。より望ましくは、25℃における水性インク組成物のpHが7.0〜10.0の範囲である。この範囲を逸脱すると、保存安定性・分散安定性及び腐食の点で不具合が発生しやすい。
また、本発明の水性インク組成物は、インクジェット記録装置において吐出安定性を確保する観点から、粘度は25℃において25cPs以下が好ましい。より好ましくは15cPs以下である。
[着色剤の分散方法]
本発明で、着色剤を分散ポリマーにより分散させる好適な方法は、アニオン性基を含有するポリマーを有機アミンやアルカリ金属塩化合物等のアルカリ性化合物を含有するアルカリ水に溶解、あるいは分散させ、この液と着色剤を混合して、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の分散機を用いて分散することができる。より好ましくは、着色剤と分散ポリマーをより強固に接着して分散安定するために、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、特開平11−43636号、または、特開2001−247810号の各公報に開示されている方法によって製造することもできる。これら公開公報に開示されている製造方法について、以下に概説する。
特開2001−247810号、特開平9−151342号及び特開平10−140065号各公報には、「転相法」と「酸析法」とが開示されている。
a)「転相法」
本発明において、「転相法」とは、基本的には、自己分散能または溶解能を有するポリマーと顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散(転相乳化)化方法をいう。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者のいずれの状態をも含むものをいう。
一つの具体例として、
(1)分散ポリマー前駆体(前記したアニオン性基を含有するポリマー等)/溶剤溶液に、顔料、中和剤、少量の水を加えて、溶剤ベースのスラリーを作製する工程、(2)スラリーを多量の水に加えながら分散し、水ベースのスラリーを作製する工程、(3)水ベースのスラリーから、ポリマーを溶解するのに用いた溶剤を除去して、水分散性ポリマーで顔料を包含した顔料含有ポリマー粒子分散体を作製する工程を含んでなるものである。
b)「酸析法」
本発明において、「酸析法」とは、ポリマーと顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、ポリマーが含有してなる未中和基の一部を中和剤で中和することによって、着色剤を製造する方法をいう。
未中和基がアニオン性の酸基であり、中和剤が塩基性化合物である場合には、具体的には、例えば、
(1)ポリマーと顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、また、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程、(2)pHを中性または酸性にすることによってポリマーを疎水化して、ポリマーを顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって、含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、ポリマーが含有してなるアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物にて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ないポリマーのゲル化を図る工程とを含んでなるものである。
上記の、「転相法」及び「酸析法」のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号公報、及び特開平10−140065号公報に開示されているものと同様であってよい。
さらに、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号公報には、着色剤の製造方法が開示されている。この製法の概要は、基本的には次の製造工程からなる。
(1)アニオン性基を有するポリマーまたはそれを有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物とを混合して中和することと、(2)この混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得ることと、(3)必要に応じて、溶剤を蒸留して除くことと、(4)酸性化合物を加えてアニオン性基を有するポリマーを析出させることによって、顔料をアニオン性基を有するポリマーで被覆することと、(5)必要に応じて、濾過及び水洗を行なうことと、(6)塩基性化合物を加えてアニオン性基を有するポリマーのアニオン性基を中和して水性媒体中に分散させて水性分散体を得ること、とを含んでなるものである。
また、特開平11−2096722号公報及び特開平11−172180号公報に開示されているものと同様であってよい。
以上のようにして得られる着色剤の水性分散液に、前述した保湿剤、グリセリンエーテル化合物、及び水、さらに必要に応じて前述した浸透剤、樹脂エマルジョン、弱アルカリ剤、その他の成分を添加することによって、本発明の水性インク組成物を好適に製造できる。
<インクジェット記録方法及び記録物>
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方式であればいかなる方法も使用することができる。その幾つかを説明すると、先ず静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に記録情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向すること無く記録情報信号に対応して噴射させる方式がある。
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に記録情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法は圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と記録情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を記録情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上の様な種々のインクジェット記録方式のうち、特に10m/s以下の比較的低速のインク吐出速度での記録方法と本発明の水性インク組成物を組み合わせることで、吐出ノズルへのインク付着を防止して安定にインクジェット記録を行なうことができ、好ましい。
また、本発明の記録物は、上記した水性インク組成物をインクジェット記録方法にて記録して得られる。
以下の実施例により本発明の内容を明確に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものでは無い。また、本発明の水性インク組成物に用いられる分散液を以下に示す方法で作製した。
<分散液の作製>
(1)分散液1
着色剤としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);75g、分散ポリマーとしてカルボン酸基をアニオン性基として有するスチレン−アクリル酸系樹脂のジョンクリル611(商品名、ジョンソンポリマー株式会社製、重量平均分子量8,100、酸価53KOHmg/g);25g、アルカリ性化合物として水酸化カリウム;0.75g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水;250gを混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、超純水で顔料濃度15重量%まで希釈して、カーボンブラックを分散ポリマーで分散した分散液1を調製した。
(2)分散液2
分散液1に対して、着色剤をカーボンブラックであるカラーブラックS160(商品名、デグサ社製)に変更して添加量を75gに、水酸化カリウムの添加量を0.78gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液2とする。
(3)分散液3
分散液1に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3に変更して添加量を65gに、分散ポリマーであるジョンクリル611の添加量を35gに、水酸化カリウムの添加量を1.00gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液3とする。
(4)分散液4
分散液1に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー74に変更して添加量を75gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液4とする。
(5)分散液5
分散液1に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントレッド122に変更して添加量を75gに変更した以外は同様な方法で分散液を作成した。これを分散液4とする。
(6)分散液6
着色剤としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);75g、分散ポリマーとしてカルボン酸基をアニオン性基として有するスチレン−アクリル酸系樹脂のジョンクリル678(商品名、ジョンソンポリマー株式会社製、重量平均分子量8,500、酸価215KOHmg/g);25g、アルカリ性化合物として水酸化カリウム;1.80g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水;250gを混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、超純水で顔料濃度15重量%まで希釈して、カーボンブラックを分散ポリマーで分散した分散液6を調製した。
(7)分散液7
分散液6に対して、着色剤をカーボンブラックであるカラーブラックS160(商品名、デグサ社製)に変更して添加量を75gに、水酸化カリウムの添加量を3.20gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液7とする。
(8)分散液8
分散液6に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントブルー15:4に変更して添加量を75gに、分散ポリマーであるジョンクリル678の添加量を75gに、水酸化カリウムの添加量を9.4gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液8とする。
(9)分散液9
分散液6に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー128に変更して添加量を75gに、分散ポリマーであるジョンクリル678の添加量を22.5gに、水酸化カリウムの添加量を1.2gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液9とする。
(10)分散液10
分散液6に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントレッド202に変更して添加量を80gに、分散ポリマーであるジョンクリル678の添加量を20gに、水酸化カリウムの添加量を1.72gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液10とする。
(11)分散液11
[分散ポリマーの合成]
攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素ガス置換した後、反応容器中へスチレン;25g、n−ドデシルメタクリレート;30g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;20g、ブチルメタクリレート;15.5g、メタクリル酸;9.3g、メチルエチルケトン;100gを混合して、溶液を調製した。
滴下ロートにも同様のモノマー/メチルエチルケトン溶液を入れ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−イソメチルバレロニトリル)0.2gを加えて窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器を65℃に加温して保持しつつ、滴下ロートの溶液を3時間かけて滴下して加えながら重合反応を行った。反応終了後、室温まで自然冷却させた。その後、得られた共重合体溶液を濾過、減圧乾燥、メチルエチルケトン溶解を繰り返して精製した後、分散ポリマーの固形分が50重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈した。酸価が70KOHmg/g、重量平均分子量50,000の分散ポリマーA溶液を得た。
[分散液の調製]
着色剤としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);150g、上述の分散ポリマーA溶液;100gを混合・撹拌してスラリーを作製した。このスラリーにアルカリ性化合物として水酸化カリウム(10重量%水溶液);20gを加え、超高圧ホモジナイザーにて分散を行った。
続いてこの分散溶液を、撹拌している超純水;400gに徐々に加えてしばらく撹拌混合した後、減圧・60℃の条件にてメチルエチルケトンの全部と水の一部を除去した。その後に顔料濃度が15重量%になるように超純水を加え、分散液11を得た。
(12)分散液12
分散液11に対して、着色剤としてカーボンブラックであるカラーブラックS160(商品名、デグサ社製)に変更して添加量を150gに、水酸化カリウム(10重量%水溶液)の添加量を16gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液12とする。
(13)分散液13
着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントブルー60に変更して添加量を50gに、水酸化カリウム(10重量%水溶液)の添加量を21gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液13とする。
(14)分散液14
分散液11に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー109に変更して添加量を150gに、水酸化カリウム(10重量%水溶液)の添加量を10gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液14とする。
(15)分散液15
分散液11に対して、着色剤を有機顔料であるC.I.ピグメントレッド209に変更して添加量を200gに、水酸化カリウム(10重量%水溶液)の添加量を10gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液15とする。
(16)分散液16
[分散ポリマーの合成]
1Lビーカーにn−ブチルメタクリレート;200g、n−ブチルアクリレート;25g、スチレン;100g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート;75g、メタクリル酸;100gを混合し、さらに重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシオクトエート;4gを添加して、ポリマー合成混合液を調製した。
次に、メチルエチルケトン;500gを1Lフラスコに入れて、窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。その中に上記ポリマー合成混合液を3時間にわたって、撹拌しながら滴下混合した。滴下終了後、さらに75℃、攪拌状態で8時間反応を続けた。その後、反応合成物を25℃まで自然冷却した後、固形分が50重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈した。酸価が150KOHmg/g、重量平均分子量15,000の分散ポリマーB溶液を調製した。
[分散液の調製]
着色剤としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);150g、上述の分散ポリマーB溶液;100g、アルカリ性化合物として水酸化カリウム(10重量%水溶液);50g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水;700gを混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))と共に2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き室温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルタで濾過した。
得られた濾液を80℃、常圧下でメチルエチルケトンの全てと水の一部を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、分散ポリマー層を凝結した。これを水洗しながら吸引濾過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを、撹拌している水酸化カリウム(1重量%水溶液);375gに徐々に添加して、撹拌混合し再分散させた。さらに顔料濃度が15重量%になるように超純水を加え、分散液13を得た。
(17)分散液17
分散液16に対して、着色剤としてカーボンブラックであるカラーブラックS160(商品名、デグサ社製)に変更して添加量を150gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を422gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液17とする。
(18)分散液18
分散液16に対して、着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3に変更して添加量を75gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を180gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液18とする。
(19)分散液19
分散液16に対して、着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー110に変更して添加量を450gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を300gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液19とする。
(20)分散液20
分散液16に対して、着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントバイオレット19に変更して添加量を250gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を422gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液20とする。
(21)分散液21
[分散ポリマーの調製]
重量平均分子量15,000、スチレンモル比35%のスチレン−メタアクリル酸メチル系ポリマー;50g、2−ピロリドン;500g、スルファミン酸;25gを混合して、80℃×3時間反応させて一部のスチレンをスルホン化し、2−ピロリドンへの溶解とpH5.0の酸性水での沈殿を繰り返して精製して、続いて固形分が50重量%になるようにメチルエチルケトンで溶解した。酸価が70KOHmg/g、重量平均分子量15,000の分散ポリマーC溶液を調製した。
[分散液の調製]
着色剤としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);150g、上述の分散ポリマーC溶液;100g、アルカリ性化合物として水酸化カリウム(10重量%水溶液);25g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水;700gを混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))と共に2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き室温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルタで濾過した。
得られた濾液を80℃、常圧下でメチルエチルケトンの全てと水の一部を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、分散ポリマー層を凝結した。これを水洗しながら吸引濾過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌しながら、水酸化カリウム(1重量%水溶液);70gに再分散して、さらに顔料濃度が15重量%になるように超純水を加え、分散液21を得た。
(22)分散液22
分散液21に対して、着色剤としてカーボンブラックであるカラーブラックS160(商品名、デグサ社製)に変更して添加量を150gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を105gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液22とする。
(23)分散液23
分散液21に対して、着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントブルー15:4に変更して添加量を50gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を158gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液23とする。
(24)分散液24
分散液21に対して、着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー138に変更して添加量を150gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を190gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液24とする。
(25)分散液25
分散液21に対して、着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントレッド122に変更して添加量を200gに、再分散時の水酸化カリウム(1重量%水溶液)の添加量を123gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液25とする。
(26)分散液26
分散液1に対して、アルカリ性化合物である水酸化カリウムの添加量を0.24gに変更した以外は同様な方法で分散液を作製した。これを分散液26とする。
<水性インク組成物の調製>
[実施例1]
この実施例1では、上述の材料・方法で得た分散液1(カーボンブラック使用)を26.7g、グリセリンエーテル化合物として3−メトキシ−1,2−プロパンジオールを10.0g、保湿剤としてグリセリンを5.0g、トリメチロールプロパンを5.0g、2−ピロリドンを2.0g、さらに超純水を加えて全量を100gとして2時間攪拌、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)にて濾過して水性インク組成物を調製した。
[実施例2〜25]
実施例1に対して、添加物、添加量を表1〜表4の組成に変更した以外は同様な方法でインクを作製した。
(比較例1)
実施例1の組成に対して、グリセリンエーテル化合物である3−メトキシ−1,2−プロパンジオールを添加せず、その分を超純水に変更した以外は実施例1と同様な組成にして、水性インク組成物を作製した。
(比較例2)
実施例1の組成に対して、分散液1の代わりに分散液26として添加量を26.7gとした以外は実施例1と同様な組成にして、水性インク組成物を作製した。この分散液26は、分散ポリマー中の中和基の存在量が未中和基と中和基との和に対してモル比で約18%である。
(比較例3)
実施例1の組成に対して、グリセリンエーテル化合物である3−メトキシ−1,2−プロパンジオールを添加せず、その代わりに特開平5−186726号公報に記載のハロゲン化アルキレングリコールである2,2,3,3−テトラフルオロ−1,4−ペンタンジオールに変更した以外は実施例1と同様な組成にして、水性インク組成物を作製した。
上記各組成を表1〜表4にまとめて示す。
Figure 2006274022
Figure 2006274022
Figure 2006274022
Figure 2006274022
<評価方法>
(保存安定性)
実施例1〜25及び比較例1〜3の水性インク組成物を60℃で1ヶ月放置、凍結で1ヶ月放置、60℃で2週間放置した後凍結で1週間放置の3条件に各々放置した。そしてその水性インク組成物の粘度、粒径の値をインク調製直後と放置後について比較した。判定基準は以下の通りである。
・粘度
判定AA:全ての放置条件で変化幅が±3%未満
A:変化幅が±3%以上、±6%未満となる放置条件がある
B:変化幅が±6%以上、±10%未満となる放置条件がある
C:変化幅が±10%以上となる放置条件がある
・粒径
判定AA:全ての放置条件で変化幅が±5%未満
A:変化幅が±5%以上、±10%未満となる放置条件がある
B:変化幅が±10%以上、±20%未満となる放置条件がある
C:変化幅が±20%以上となる放置条件がある
(吐出安定性)
実施例1〜25及び比較例1〜3の水性インク組成物をインクジェットプリンタであるPX−V600(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。記録媒体としてA4版のXerox P(商品名、富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)を用い、20〜25℃/40〜60%RHの環境下で文字・塗り潰しが混在する画像を連続的に印刷して、印刷画像中の飛行曲がりや抜け等の不具合の有無を目視にて測定した。印刷設定は、「用紙種類;普通紙、印刷品質;ファイン」とした。判定基準は以下の通りである。
判定AA:200枚まで連続印刷しても、飛行曲がり・抜けが発生しない
A:100枚までの連続印刷で、飛行曲がり・抜けが発生しない
B:100枚までの連続印刷で、飛行曲がり・抜けが発生したが10箇所未満である
C:100枚までの連続印刷時に、飛行曲がり・抜けが10箇所以上発生する
(画像品質の評価)
実施例1〜25及び比較例1〜3の水性インク組成物をインクジェットプリンタであるPX−V600(商品名、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。印刷設定を「用紙種類;普通紙、印刷品質;ファイン」にして、2〜20ポイントのゴシック文字を1ポイント刻みで印刷した場合の文字の滲みによる画像品質(文字品質)を評価した。さらに、同様な印刷設定で5%から100%まで5%刻みで塗り潰し密度を変えた画像を印刷して、その記録物の濃淡ムラや裏抜け状態による印刷品質(塗り潰し画像品質)を評価した。この評価では、普通紙としてXerox Premium Multipurpose 4024(商品名、Xerox Corporation製、以下略号として「Xerox 4024」と記載する)、Xerox P(商品名、富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)、REYMAT(商品名、Aussedat rey社製)Hammermill Copy Plus(商品名、International Paper社製、以下略号として「HCP」と記載する)を、再生紙としてXerox R(商品名、富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)を用い、評価は目視で行なった。以下に評価判断基準を示す。
〔文字品質〕
評価AA:全てのポイントの文字において、滲みがわからない
A:5ポイント以下の文字で、わずかに滲みが認められる
B:滲みのため、5ポイント以下の文字が太く見える
C:滲みが著しく、5ポイント以下の文字が判別できない
〔塗り潰し画像品質〕
評価AA:全ての塗り潰し画像において、ほとんど濃淡ムラが認められない。裏抜けも無い。
A:塗り潰し密度100%画像でわずかに濃淡ムラが認められるが、実用上問題無いレベル。裏抜けもほとんど認められない。
B:塗り潰し密度80%以上の画像で濃淡ムラ、裏抜けが認められる。
C:塗り潰し密度50%以上の画像で濃淡ムラ、裏抜けが認められる。
表5に、各水性インク組成物に関して、作成時の25℃におけるpH、保存安定性(粘度、粒径)、吐出安定性、及び画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)の結果をまとめて示す。
Figure 2006274022
表5に示した様に、実施例1〜25の水性インク組成物は、上記条件に放置した時の保存安定性(粘度変化、粒径変化)が良好であり、インクジェットプリンタにおける吐出安定性も問題なかった。また、画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)も紙種に関係無く良好であった。
それに対して、実施例1において本発明のグリセリンエーテル化合物を添加しなかった比較例1では、画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)で滲みや濃淡ムラが発生していた。
また、実施例1において、分散ポリマーの中和基の存在量が未中和基と中和基の和に対してモル比で20%未満である分散液26を用いた比較例2では、顔料の分散性が不安定となって顔料凝集物が発生し、保存安定性及び吐出安定性に劣っていた。また画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)でも滲みや濃淡ムラが発生していた。
また、実施例1において本発明のグリセリンエーテル化合物の代わりに特開平5−186726号公報にて示されているハロゲン化アルキレングリコールを添加した比較例3では、保存安定性・吐出安定性に劣り、画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)では滲み・濃淡ムラが発生し、紙種によっては裏抜けも発生していた。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱すること無く様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本発明の水性インク組成物は、保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ記録媒体種に関係無く滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なくて画像濃度が高い特性を示す。そのため、特にインクジェット記録用インクとして用いるのに適している。

Claims (12)

  1. 着色成分、グリセリンエーテル化合物、保湿剤及び水を少なくとも含んでなる水性インク組成物であって、該着色成分が着色剤を分散ポリマーで包含して水に分散可能となる分散体であり、かつ該分散ポリマーが疎水性部分と親水性部分とから成り、該親水性部分の少なくとも一部分が該疎水性部分の一部分である未中和基を中和して得られる中和基であって、中和基の存在量が未中和基と中和基との和に対してモル比で20%以上60%未満の範囲であり、該グリセリンエーテル化合物が下記式で表されるものであることを特徴とする水性インク組成物。
    Figure 2006274022
  2. 前記グリセリンエーテル化合物として、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、3−(オクタデシロキシ)−1,2−プロパンジオール、モノオレイン、1,2−ジヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれていることを特徴とする、請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. さらに浸透剤を含んでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性インク組成物。
  4. 前記浸透剤が、一価アルコール類、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルキルジオール類、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の水性インク組成物。
  5. さらに樹脂エマルジョンを含んでなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  6. 前記樹脂エマルジョンを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が30℃以上である樹脂エマルジョンを少なくとも一種類含んでなることを特徴とする、請求項5に記載の水性インク組成物。
  7. 前記着色剤が、カーボンブラックであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  8. 前記着色剤が、有機顔料であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  9. さらに弱アルカリ化剤を含んでなり、アルカリ性であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  10. 前記弱アルカリ化剤が、有機酸塩及び有機緩衝剤から選ばれる少なくともいずれかの化合物を含んでなることを特徴とする、請求項9に記載の水性インク組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性インク組成物の液滴を吐出して、前記液滴を記録媒体に付着させて記録を行なうことを特徴とする、インクジェット記録方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性インク組成物をインクジェット記録方法にて記録したことを特徴とする、記録物。
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