JP2007161923A - 水性インク組成物、これを用いたインクジェット記録方法、及び記録物 - Google Patents

水性インク組成物、これを用いたインクジェット記録方法、及び記録物 Download PDF

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Abstract

【課題】分散安定性(保存安定性)と優れた印字品質(すなわち、濃淡ムラ、滲み、裏抜け等が少ない)とを両立できる、とりわけ発色性に優れる水性インク組成物を提供する。
【解決手段】着色成分と、樹脂エマルジョンと、水と、を少なくとも含んでなる水性インク組成物であって、前記着色成分として、アニオン性基を有する水溶性分散ポリマーによって着色剤が分散した分散体を用い、前記樹脂エマルジョンとして、水酸基価が50以上、酸価が50以下であり、かつ、ガラス転移温度が30℃以上である樹脂成分からなるものを用いる。
【選択図】なし

Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、分散安定性(保存安定性)と優れた印字品質とを両立できる、とりわけ発色性に優れる水性インク組成物に関する。
背景技術
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて記録を行なう記録方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で記録可能であるという特徴を有する。この方法に用いられるインクに求められる特性としては、画像の耐水性や耐光性等の堅牢性が良好であること、不規則なインクの流れや付着したインク小滴より大きく広がる現象(以下これを“滲み”とする)が記録媒体種を問わずに無いこと、不規則な画像濃度のムラ(以下これを“濃淡ムラ”とする)が記録媒体種を問わずに無いこと、インクが紙の裏側にまで染み通ってしまう現象(以下これを“裏抜け”とする)が記録媒体種を問わずに無いこと等が挙げられる。このようなインクジェット記録方法に使用されるインク組成物としては、水を主成分とし、これに着色成分及び目詰まり防止等の目的でグリセリン等の保湿剤を含有したものが一般的に使用されている。
インクジェット記録用水性インクの着色剤として、色剤の彩度の高さ、利用できる色剤の種類の豊富さ、水への溶解性等の理由から水溶性染料が数多く使用されている。しかし、染料は耐光性及び耐水性等の諸特性に劣ることがあり、耐水性については、インク吸収層を有するインクジェット専用記録媒体により改善されているものの、普通紙や再生紙については未だ充分とは言い難い。
一方、顔料は染料に比べて耐光性及び耐水性に優れており、近年、耐光性及び耐水性を改善する目的でインクジェット記録用インク組成物の着色剤としての利用が検討されている。ここで、顔料は一般に水には不溶であるため、顔料を水系インク組成物に利用する場合には、顔料を水溶性樹脂等の分散剤と共に混合し、水に安定分散させた後にインク組成物として調製する必要がある。顔料を水系インク中に安定的に分散させるためには、顔料の種類、粒径、用いる分散剤の種類、及び分散手段等を検討する必要があり、これまで多くの分散方法及びインクジェット記録用インクが提案されている。
このような顔料を用いた水系インクとして、例えば、特開昭64−6074号公報(特許文献1)には、カーボンブラックを界面活性剤や高分子分散剤で分散した分散体を用いた水性顔料インクが提案されている。また、特開平3−79680号公報(特許文献2)には、分散剤としてスチレン−マレイン酸共重合体を使用した銅フタロシアニン顔料を含有するインク組成物が提案されている。さらに、特開平9−40895号公報(特許文献3)には、酸価が50〜280のスチレン(メタ)アクリル酸共重合体の酸基の60モル%以上が中和された自己水分散性の樹脂によって顔料を包含した着色微粒子を着色成分として用いたインクが提案されている。また、特開2003−238853号公報(特許文献4)等には、カルボキシル基含有モノマーと脂肪族炭化水素基含有モノマーと芳香環含有モノマーを共重合させた酸価70〜130の自己水分散性共重合体樹脂を用いることが提案されている。
ところで、このような水系顔料インクにおいて、濃淡ムラ、滲み、裏抜け等を改善するために、インクに樹脂エマルジョンを添加することが提案されている。これは、樹脂エマルジョンの添加によって、記録媒体の紙繊維間を樹脂で埋めて、紙の表面に顔料が留まるようにして滲みや裏抜け等を改善するものである。このような樹脂として、例えば、特開2003−41169号公報(特許文献5)等には、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の一部を塩基性化合物で中和したポリエステル樹脂を用いることが提案されている。これは、樹脂成分中の酸基を塩基性化合物で中和することにより、遊離基として水中に安定的に分散することができるものである。また、特開2004−197104号公報(特許文献6)等には、ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンを反応させたウレタン樹脂からなる微粒子を添加剤として用いることが提案されている。さらに、特開2002−088285号公報(特許文献7)等には、酸価30〜300のスチレンーアクリル系樹脂をエマルジョン形態で分散させたインク組成物が提案されている。
特開昭64−6074号公報 特開平3−79680号公報 特開平9−40895号公報 特開2003−238853号公報 特開2003−41169号公報 特開2004−197104号公報 特開2002−88285号公報
発明の概要
本発明者は、今般、樹脂の酸基を塩基性化合物で中和した樹脂エマルジョンを使用した場合、インクの使用環境下によっては、増粒、増粘、または凝集物の発生が生じる場合があることに気づいた。より詳細に検討した結果、この現象は、インクを長期間または高温環境下で放置すると、樹脂エマルジョン内部に残存した未中和の酸基が、分子運動によって樹脂エマルジョン表面に現れ、当該酸基がインク中の塩基性化合物により中和されることで、結果的にインクのpHが酸性側に変化することに起因するものであるとの知見を得た。そして、この点に関して種々検討した結果、酸価および水酸基価が所定の範囲にある特定のガラス転移温度を有する樹脂エマルジョンを使用することにより、分散安定性(保存安定性)を保持しつつさらに濃淡ムラ、滲み、裏抜け等が改善できるインク組成物が得られる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
したがって、本発明の目的は、分散安定性(保存安定性)と優れた印字品質(すなわち、濃淡ムラ、滲み、裏抜け等が少ない)とを両立できる、とりわけ発色性に優れる水性インク組成物を提供することにある。
そして本発明による水性インク組成物は、着色成分と、樹脂エマルジョンと、水と、を少なくとも含んでなる水性インク組成物であって、
前記着色成分が、アニオン性基を有する水溶性分散ポリマーによって着色剤が分散した分散体であり、
前記樹脂エマルジョンが、水酸基価が50以上、酸価が50以下であり、かつガラス転移温度が30℃以上である樹脂成分からなるものである。
本発明によれば、分散安定性(保存安定性)と優れた印字品質(すなわち、濃淡ムラ、滲み、裏抜け等が少ない)とを両立できる、とりわけ発色性に優れる水性インク組成物が実現できる。
発明の具体的説明
本発明による水性インク組成物は、着色成分と、特定の樹脂エマルジョンと、水とを必須成分とするものである。ここで、樹脂エマルジョンとは、連続相である水と分散相である樹脂成分(特に、熱可塑性樹脂成分)とからなるものである。以下、本発明による水性インク組成物の構成成分について説明する。
<樹脂エマルジョン>
樹脂エマルジョンは、着色成分が記録媒体中に染みこむことを抑制し、その結果インクの発色性を向上させるとともに、インクの乾燥に伴い、樹脂エマルジョンと着色成分とが互いに融着して着色剤を記録媒体に固着させるため、記録物の画像部分の定着性を向上させる作用を持つ。
本発明による水性インク組成物に使用する樹脂エマルジョンは、水酸基価が50以上であり、かつ酸価が50以下である樹脂成分を含み、ガラス転移温度(以下、Tgともいう)が30℃以上である。このような樹脂エマルジョンを使用することにより、滲み、濃淡ムラ、裏抜け等のない記録物が得られるとともに、水性インク組成物の長期間あるいは高温下での保存安定性が飛躍的に向上する。とりわけ、インクを高温環境下に放置した場合であっても、粘度変化が極めて少なく、粒径変化等が大幅に低減できる。この理由は定かではないが以下のように考えられる。
本発明者は、普通紙や再生紙等の記録媒体において、滲み、濃淡ムラ、裏抜け等を抑制するには、Tgが室温以上(概ね30℃以上)の樹脂成分からなる樹脂エマルジョンを使用する必要があることを見出すとともに、このようなTgを有する樹脂エマルジョンを用いると、インクの増粒・増粘・沈降物発生等の不具合が多発することを見出した。この理由は、Tgが室温(概ね30℃)以上の樹脂エマルジョンにおいては、長期間あるいは室温以上の温度環境下に放置すると、樹脂エマルジョン内部に残存する未中和の酸基が分子運動によって樹脂エマルジョン粒子表面に現れて、その酸基自身がインク中の塩基性化合物により中和されることで、結果的にインクのpHを酸性側にシフトさせてしまうことによるものと考えられる。そのような不具合を改善するために、従来技術では、樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分の構造変更、特に、酸価の低減化等の種々の検討がなされてきた。しかし、酸価が低い樹脂成分を用いた場合、樹脂エマルジョン中の親水性基含有量が少なくなるため、分散安定性が劣り、結果的にインクの増粘、顔料・樹脂固形分等による分散粒子径の増大やインクのゲル化・析出沈降物が発生していた。特に、長期間あるいは高温環境下で保存した場合に、この不具合が顕著に発生していた。
これに対し、樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分中に親水性基として水酸基を一定量以上含ませることで、これら不具合が発生しないことを見出し、本発明を完成するに至った。樹脂成分中に水酸基を含ませることで上記のような不具合が発生しない理由は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、水酸基は、それ自身が解離せずに水に対して親和性を有するため、酸基のように中和する必要がない。そのため、本発明においては、所定量の水酸基、詳細には水酸基価で50以上含む樹脂成分からなる樹脂エマルジョンとすることにより、酸基の量が50以下と少なくても、樹脂エマルジョン自身の分散安定性が良好となるとともに、長期間あるいは室温以上の温度に放置した場合であっても、インクのpHを変化させることがなく、結果として、粘度変化や粒径変化等の保存安定性が飛躍的に向上するものと考えられる。
上述したように、本発明においては、酸価が50以下、水酸基価50以上の樹脂エマルジョンを使用することにより、樹脂エマルジョン自身の分散安定性を確保でき、結果的にこれを添加したインクを長期間あるいは高温に放置した場合であっても、増粘・増粒・沈降物発生等を抑制できる。酸価が50より大きくなると、樹脂エマルジョン内部に未中和基となっている酸基の量が多くなり、インクを長期間あるいは高温に放置した場合、酸基が樹脂エマルジョン表面に現れてインクのpHが酸性側になり、その結果、増粘・増粒・沈降物発生等の弊害が生じる場合がある。また、樹脂成分自体が水に溶けやすくなってしまい、インク中に遊離したこれら樹脂成分の影響により記録画像に滲み・濃淡ムラ・裏抜け等が発生しやすくなる。
本発明においては、樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分の酸価は、水性インク組成物の分散安定性(保存安定性)の観点から50以下が必須であるが、好ましくは5〜45の範囲、より好ましくは8〜40の範囲である。
なお、樹脂エマルジョンのTgは、示差走査熱量計により測定することができる。
本発明において使用できる樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、またこれらの樹脂の混合系を用いてもよい。これらの樹脂成分の中でより好ましくは、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル系共重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル系共重合体、スチレン−メタクリル酸系共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル系共重合体、スチレン−アクリル酸−メタクリル酸アルキルエステル系共重合体、スチレン−マレイン酸−ハーフエステル系共重合体等が挙げられる。
これらの樹脂成分は、その構造として疎水性部分と親水性部分とを併せ持つことが必須である。ここで、疎水性部分とは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香環、あるいは未中和基を有する繰り返し単位を示す。未中和基とは、中和剤により中和され得る基であり、酸基、アルカリ性基を挙げることができる。未中和基としては、具体的にはカルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
また親水性部分としては、中和基を有する繰り返し単位、水酸基を有する繰り返し単位が含まれる。ここで、中和基とは、未中和基が中和された基であり、イオン基であることが好ましい。未中和基及び中和基は、アニオン性基であることが好ましく、特に、未中和基がカルボン酸基、中和基がカルボン酸アニオン基(カルボン酸塩の基)である場合を好適に例示できる。カルボン酸塩としては、カルボン酸リチウム塩、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。
樹脂エマルジョンを構成する樹脂成分が上述の構造を持つことで、疎水性部分は樹脂エマルジョンの内部に存在して水から隔離され、その表面に親水性部分が存在することで水になじむことができるため、水中で安定的に分散する樹脂エマルジョンとなることができる。また、記録媒体上に付着した際、樹脂エマルジョン同士あるいは樹脂エマルジョンと着色成分が共に融着・皮膜化して疎水性部分が皮膜表面を覆うことが出来る。この皮膜は水に不溶で再分散せず、また着色成分と共に記録媒体上に強固に固着するため、画像の定着性・耐水性が良好である。
このような樹脂エマルジョンは、種々の特性を満足するように合成して用いることもできる。アニオン性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン基からなる群から選ばれる1個以上のアニオン性基を有するアクリルモノマーが挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
カルボキシキル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸などが挙げられる。これらの中でもアクリル酸またはメタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
スルホン酸基を有するアクリルモノマーの具体例としては、スルホエチルメタクリレート、ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。
ホスホン基を有するアクリルモノマーの具体例としては、ホスホエチルメタクリレート等が挙げられる。
アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合し得る他のモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等のような(メタ)アクリル酸エステル;ステアリン酸とグリシジルメタクリレートの付加反応物等のような油脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応物;炭素原子数3以上のアルキル基を含むオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のようなスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のようなイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のようなマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のようなフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノプロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等が挙げられる。
水酸基を樹脂成分中に含ませるモノマーとしては、例えば、メチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、n−ブチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。また、酢酸ビニル等のモノマーを用いて樹脂成分を合成した後、アルカリ剤によりケン化させることで水酸基を樹脂成分中に含ませることもできる。
これらの樹脂成分からなる樹脂エマルジョンは、本発明の水性インク組成物において一種類あるいは複数種用いることができるが、それを構成する樹脂成分のTgが30℃以上であることが必須である。その理由は、樹脂のTgが30℃以上である樹脂エマルジョンを含むことにより、着色成分中の顔料等の着色剤が多く記録媒体表面に存在することができ、その結果発色性が高くなる効果があるためである。
また、これら樹脂エマルジョンの添加量は定着性・発色性等を考慮して適宜決定してよいが、水性インク組成物中に固形分で0.1重量%〜20重量%の範囲が好ましい。樹脂エマルジョンの添加量が0.1重量%未満であると、画像の発色性に乏しい場合がある。反対に20重量%より多くなると、インク粘度が高くなってインクジェット記録方式用インクとして不向きとなる、インク中の固形分濃度が高くなるためヘッドノズルの目詰まりが発生しやすくなる等の不具合がある。
<着色成分>
本発明による水性インク組成物に使用される着色成分としては、アニオン性基を有する水溶性分散ポリマーによって着色剤が分散した分散体を使用する。
着色剤をインク中に分散させるために水溶性分散ポリマーを用いる。水溶性分散ポリマーは、アニオン性基を有するものである。このようなポリマーは、例えば有機アミンや無機アリカリ等の塩基性化合物を用いて上記のアニオン性基との塩を形成することにより、水に対して自己分散または溶解する。このようなポリマーにより着色剤を分散させることで、本発明の分散体は水主体の水性インク中でも安定的に分散することができる。
本発明において使用する水溶性分散ポリマーとしては、アニオン性アクリル系分散ポリマーが好ましい。アニオン性アクリル系分散ポリマーとしては、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、アニオン性基含有アクリルモノマーという)と、さらに必要に応じてこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン基からなる群から選ばれる1個以上のアニオン性基を含有するアクリルモノマーが挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
カルボキシキル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸などが挙げられる。これらの中でもアクリル酸またはメタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
スルホン酸基を有するアクリルモノマーの具体例としては、スルホエチルメタクリレート、ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。
ホスホン基を有するアクリルモノマーの具体例としては、ホスホエチルメタクリレート等が挙げられる。
アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合し得る他のモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等のような(メタ)アクリル酸エステル;ステアリン酸とグリシジルメタクリレートの付加反応物等のような油脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応物;炭素原子数3以上のアルキル基を含むオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のようなスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のようなイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のようなマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のようなフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノプロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等が挙げられる。
これらのモノマーを重合した水溶性分散ポリマーは、アルカリ金属や有機アミン等の塩基性化合物との塩の形で水性インク組成物に使用されることが望ましい。塩形態での水溶性分散ポリマーを用いた場合、再分散性と信頼性とに優れた水性インクを提供することができる。水溶性分散ポリマーとアルカリ金属との塩の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩が、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の塩、より好ましくは水酸化カリウムとの塩が挙げられる。また水溶性分散ポリマーの有機アミン塩の具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリンの如き揮発性アミン化合物との塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどの揮発しにくい高沸点の有機アミン等の塩が挙げられる。
これらの水溶性分散ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。また、これらの水溶性分散ポリマーはアルカリ中和していないものは有機溶剤(例えば、アセトンやメチルエチルケトン等の親水性有機溶剤が好ましく用いられる)に可溶であることが好ましい。水溶性分散ポリマーの重量平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、または水性インク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
着色剤としては、水媒体に不溶あるいは難溶の着色剤として有機顔料、カーボンブラック、油溶染料、分散染料等を挙げることができる。この中で、発色が良好であること、比重が小さいために分散時に沈降しにくい観点から、特に、カーボンブラック、有機顔料が好ましい。
本発明の水性インク組成物では、このような着色剤が、上記した水溶性分散ポリマー(アニオン性基を有するポリマー)により分散されたものを用いる。
本発明において、好ましいカーボンブラックの具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等(以上全て商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上全て商品名、デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上全て商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上全て商品名、キャボット社製)が挙げられる。なお、これらは本発明に好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものでは無い。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いてよい。
これらの顔料は水性インク組成物全量に対して0.5重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の添加が好ましい。
本発明で好ましい有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料等が挙げられる。
本発明による水性インク組成物に用いられる有機顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
シアンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はシアンインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
マゼンタインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209、C.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はマゼンタインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
イエローインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はイエローインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
オレンジインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36もしくは43またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はオレンジインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
グリーンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7もしくは36またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はグリーンインク組成物に対して0.5重量%〜15重量%程度、好ましくは1重量%〜10重量%程度含有してなる。
本発明の水性インク組成物において、着色剤と前記水溶性分散ポリマーの比率は重量比率で10:1〜1:10が好ましく、4:1〜1:3がより好ましい。また、分散時の着色剤の粒径は、動的光散乱法で計測した場合の最大粒径が500nm未満で平均粒径が300nm以下であり、より好ましくは平均粒径が200nm以下である。
<浸透剤>
本発明による水性インク組成物は、浸透剤をさらに含んでなることが好ましい。浸透剤は、記録媒体へのインク浸透性を速めるための添加剤であり、所望のインク乾燥時間により適宜選択される。
浸透剤の一例としては、水性インク組成物の表面張力を下げる作用を持つものとして、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、あるいは1,2−アルキルジオール類から選択することが好ましい。
多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体としては、特にアルキルの炭素数は3以上の多価アルコールの誘導体が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体の添加量は、水性インク組成物全量に対して15重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
1,2−アルキルジオール類としては、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルキルジオールが好ましい。この中で、炭素数6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が強く、特に好ましい。これら1,2−アルキルジオールの添加量は、水性インク組成物全量に対して5重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
また、浸透剤の別の例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンタノール等の水可溶性の一価アルコール類が挙げられる。これら一価アルコールの添加量は水性インク組成物全量に対して10重量%以下の範囲が好ましい。
また、浸透剤の他の例としては、アセチレングリコール系界面活性剤あるいはアセチレンアルコール系界面活性剤が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤・アセチレンアルコール系界面活性剤は、他の界面活性剤と比較して起泡性が少ない、あるいは無い特性を持つため、本発明の水性インク組成物の添加剤として好ましい。
本発明において好ましいアセチレングリコール系界面活性剤あるいはアセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。これらアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤の添加量は、所望のインク浸透時間で適宜決定されてよいが、水性インク組成物全量に対して10重量%以下が好ましい。
また、浸透剤の他の例としては、下記式で表されるグリセリンエーテル化合物が挙げられる。
Figure 2007161923
(式中、Rは炭素数1〜20の二重結合、三重結合、もしくは置換基を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、または、置換基を有していても良いアリール基を表し、Xは水素原子、水酸基、または炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状アルコキシ基を表す。)
上記構造のグリセリンエーテル化合物を含むと、普通紙・再生紙等に印刷した際にさらに滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度の高い鮮明な画像を示す、インクジェット記録用インクとして好適な水性インク組成物が実現できる。また、このグリセリンエーテル化合物は、浸透成分としても優れた特性を持ち、これらを含む水性インク組成物は記録媒体種によらずに濡れ性・浸透速度が向上し、浸透性・乾燥性に優れるという特性をも示す。
以上述べたグリセリンエーテル化合物は、上記式の構造を持つものであればどのようなものでも用いることができるが、その中でも特に、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、3−(オクタデシロキシ)−1,2−プロパンジオール、モノオレイン、1,2−ジヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオールからなる群から選ばれていることが好ましい。この群から選ばれる化合物は、他のグリセリンエーテル化合物と比較して上述した特性に優れているため、本発明の水性インク組成物に特に好適に用いることができる。
これらグリセリンエーテル化合物の添加量は、所望の効果が発現できるように適宜決定されてよいが、水性インク組成物全量に対して10重量%以下が好ましい。この範囲であれば、インク粘度をインクジェット記録方式にて適正な粘度範囲に調整することができ、所望の特性を発現することができる。
これらの浸透剤は上に列記したものを一種類で用いても良く、あるいは二種類以上を混合して用いることもできる。特に、異なる構造の浸透剤を複数種併用した場合、異なる浸透性・発色性を示す種々の記録媒体種に対して同じ様な画質を得ることができ、記録媒体種対応性の観点から好ましい。
なお、乾燥時間が比較的長い水性インク組成物の場合は、以下に述べる保湿剤の中で水溶液の表面張力が比較的小さくなるものを浸透剤の代用として用いることもでき、この場合は上述の浸透剤を加えずに水性インク組成物とする事もできる。
<保湿剤>
本発明による水性インク組成物は、さらに保湿剤を含んでなることが好ましい。保湿剤は水性インク組成物の乾燥を抑制するために添加するものであり、プリンタヘッドノズル先端の乾燥による水分蒸発を抑制して、水性インク組成物の凝集・固化を防止する作用を持つものである。
保湿剤は、水溶性で吸湿性の高い材料から選ばれ、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類、を用いることができる。
さらに、上述の材料の能力を補助する目的で、水溶性の固体保湿剤を併用、添加することも可能である。詳しくは、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等、ε−カプロラクタム等のラクタム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素誘導体、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類及びこれらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビット等が挙げられる。
これらの保湿剤の添加量は、単独あるいは複数混合して、水性インク組成物全量に対して40重量%以下が好ましい。これらの保湿剤は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることができる。
<水、その他の成分>
水は、本発明の水性インク組成物の中心となる媒体であり、好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
また、紫外線照射、又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、水性インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
本発明の水性インク組成物は、以上述べた着色成分(アニオン性基を有する水溶性分散ポリマーで分散された分散体)、水酸基価が50以上、酸価が50以下でかつガラス転移温度(Tg)が30℃以上の樹脂成分からなる樹脂エマルジョン、及び水を必須成分としており、好ましくはさらに保湿剤、浸透剤を含んでなる。このような成分で構成されていればインクの保存安定性・吐出安定性は良好であり、普通紙・再生紙においては滲み・濃淡ムラ・裏抜けが少なく画像濃度の高い画像が得られるが、必要に応じて、以下に示す成分をさらに含むことにより、種々の特性をさらに向上させることができる。以下、その成分について説明する。
必要に応じて加える添加物としては、酸化防止剤・紫外線吸収剤、防腐剤・防かび剤、界面活性剤等が挙げられる。
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレット等のビウレット類等、L−アスコルビン酸及びその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024等、あるいはランタニドの酸化物等が用いられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等の中から選ぶことができる。
界面活性剤は、記録媒体へのインク浸透性をさらに速めるための添加剤であり、好適な材料として、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、燐系界面活性剤、硼素系界面活性剤等を必要に応じて用いることができる。
シリコン系界面活性剤として、BYK−307、BYK−331、BYK−333、BYK−348(以上全て商品名、ビックケミー株式会社製)等を挙げることができる。
本発明の水性インク組成物は、保存安定性(粒径変化、粘度変化等)・分散安定性を確保する観点、及びインクジェット記録装置において水性インク組成物の流路に用いられている場合のある金属部品の腐食防止の観点から、pHは中性又はアルカリ性に調整されていることが望ましい。より望ましくは、25℃における水性インク組成物のpHが7.0〜10.0の範囲である。この範囲を逸脱すると、保存安定性・分散安定性及び腐食の点で不具合が発生しやすい。
また、本発明の水性インク組成物は、インクジェット記録装置において吐出安定性を確保する観点から、粘度は25℃において25cPs以下が好ましい。より好ましくは15cPs以下である。
<水性インク組成物の調製>
本発明で、着色剤を水溶性分散ポリマーにより分散させる好適な方法は、アニオン性基を含有するポリマーを有機アミンやアルカリ金属塩化合物等のアルカリ性化合物を含有するアルカリ水に溶解、あるいは分散させ、この液と着色剤を混合して、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の分散機を用いて分散することができる。より好ましくは、着色剤と水溶性分散ポリマーをより強固に接着して分散安定するために、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、特開平11−43636号、または、特開2001−247810号の各公報に開示されている方法によって製造することもできる。これら公開公報に開示されている製造方法について、以下に概説する。
特開2001−247810号、特開平9−151342号及び特開平10−140065号各公報には、「転相法」と「酸析法」とが開示されている。
a)「転相法」
本発明において、「転相法」とは、基本的には、自己分散能または溶解能を有するポリマーと顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散(転相乳化)化方法をいう。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者のいずれの状態をも含むものをいう。
一つの具体例として、
(1)分散ポリマー前駆体(前記したアニオン性基を含有するポリマー等)/溶剤溶液に、顔料、中和剤、少量の水を加えて、溶剤ベースのスラリーを作製する工程、
(2)スラリーを多量の水に加えながら分散し、水ベースのスラリーを作製する工程、
(3)水ベースのスラリーから、ポリマーを溶解するのに用いた溶剤を除去して、水分散性ポリマーで顔料を包含した顔料含有ポリマー粒子分散体を作製する工程を含んでなるものである。
b)「酸析法」
本発明において、「酸析法」とは、ポリマーと顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、ポリマーが含有してなる未中和基の一部を中和剤で中和することによって、着色剤を製造する方法をいう。
未中和基がアニオン性の酸基であり、中和剤が塩基性化合物である場合には、具体的には、例えば、
(1)ポリマーと顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、また、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程、(2)pHを中性または酸性にすることによってポリマーを疎水化して、ポリマーを顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって、含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、ポリマーが含有してなるアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物にて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ないポリマーのゲル化を図る工程とを含んでなるものである。
上記の、「転相法」及び「酸析法」のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号公報、及び特開平10−140065号公報に開示されているものと同様であってよい。
さらに、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号公報には、着色剤の製造方法が開示されている。この製法の概要は、基本的には次の製造工程からなる。
(1)アニオン性基を有するポリマーまたはそれを有機溶剤に溶解した溶液と塩基性化合物とを混合して中和することと、(2)この混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得ることと、(3)必要に応じて、溶剤を蒸留して除くことと、(4)酸性化合物を加えてアニオン性基を有するポリマーを析出させることによって、顔料をアニオン性基を有するポリマーで被覆することと、(5)必要に応じて、濾過及び水洗を行なうことと、(6)塩基性化合物を加えてアニオン性基を有するポリマーのアニオン性基を中和して水性媒体中に分散させて水性分散体を得ること、とを含んでなるものである。
また、特開平11−2096722号公報及び特開平11−172180号公報に開示されているものと同様であってよい。
以上のようにして得られる着色剤の水性分散液に、保湿剤、樹脂エマルジョン及び水、さらに必要に応じて前記した浸透剤、その他の成分を添加することによって、水性インク組成物を好適に製造できる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方式であればいかなる方法も使用することができる。その幾つかを説明すると、先ず静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式がある。
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法は圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上のような種々のインクジェット記録方式のなかでも、特に10m/s以下の比較的低速のインク吐出速度での印刷方法と本発明の水性インク組成物を組み合わせることで、吐出ノズルへのインク付着を防止して安定にインクジェット記録を行なうことができ、好ましい。
また、本発明の記録物は、上記した水性インク組成物をインクジェット記録方法にて印刷して得られる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。なお、以下に示す「部」は、特に断りの無い限り「重量部」を意味する。
<樹脂エマルジョンの調製>
撹拌機、還流冷却装置、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン150部を添加し、加熱して液温を80℃に調整しながら窒素ガスで置換し、そのまま窒素ガスを導入しながら、アクリル酸6部、アクリル酸エチル10部、メタクリル酸メチル20部、スチレン51部、エチルα−(ヒドロキシメチル)アクリレート12部を加え、よく撹拌混合して80℃に調整した。この撹拌混合物を撹拌しつつ、そこへ2,2’−アゾビス(2,4−イソメチルバレロニトリル)1部をメチルエチルケトン50部に溶解させた溶液を全量滴下して加え、液温を80℃に保持しつつ5時間撹拌混合して重合させ、重合樹脂−メチルエチルケトン溶液を得た。その後、この溶液を徐々に冷却させて室温にした。
別に用意した撹拌機、還流冷却装置を備えた四つ口フラスコ内に、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水500部と、重合した樹脂の酸価に相当する水酸化カリウムとを加え水溶液とした。このフラスコ内の水溶液を撹拌しながら、その中へ上記の重合樹脂−メチルエチルケトン溶液を徐々に滴下しながら加え、2時間撹拌混合した。得られた撹拌混合物を減圧下、60℃にてメチルエチルケトンの全量と水の一部を除去し、さらに樹脂固形分が30重量%となるように調整して、樹脂エマルジョン1の分散液を得た。
また、下記表1に示した組成に変更した以外は、上記樹脂エマルジョン1と同様にして樹脂エマルジョン2〜10の分散液を作製した。表1中の数値は、特に断りの無い限り重量部を示す。また、得られた樹脂エマルジョン1〜10について、示差走査熱量計(DSC6220:セイコーインスツルメンツ株式会社製)によりガラス転移温度を測定した。樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)、酸価、水酸基価は表1に示される通りであった。
Figure 2007161923
<顔料分散液の調製>
(1)顔料分散液1
着色剤としてカーボンブラックであるモナーク880(商品名、キャボット社製)を100g、水溶性分散ポリマーとしてカルボン酸基を有するスチレン−アクリル酸系水溶性分散ポリマーであるジョンクリル67(商品名、ジョンソンポリマー株式会社製、重量平均分子量12,500、酸価213)を75g、塩基性化合物として水酸化カリウムを16g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を500g混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、顔料濃度20重量%になるように調整して水溶性分散ポリマーで分散した顔料分散液1を作製した。
(2)顔料分散液2
着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー74を150g、水溶性分散ポリマーとしてカルボン酸基を有するスチレン−アクリル酸系水溶性分散ポリマーであるジョンクリル67(商品名、ジョンソンポリマー株式会社製、重量平均分子量12,500、酸価213)を45g、塩基性化合物として水酸化カリウムを9g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を500g混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、顔料濃度20重量%になるように調整して水溶性分散ポリマーで分散した顔料分散液2を作製した。
(3)顔料分散液3
着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントバイオレット19を150g、水溶性分散ポリマーとしてカルボン酸基を有するスチレン−アクリル酸系水溶性分散ポリマーであるジョンクリル67(商品名、ジョンソンポリマー株式会社製、重量平均分子量12,500、酸価213)を45g、水酸化カリウムを9g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を500g混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、顔料濃度20重量%になるように調整して水溶性分散ポリマーで分散した顔料分散液3を作製した。
(4)顔料分散液4
着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントブルー15:4を100g、アニオン性基としてカルボン酸基を有するスチレン−アクリル酸系水溶性分散ポリマーとしてジョンクリル67(商品名、ジョンソンポリマー株式会社製、重量平均分子量12,500、酸価213)を45g、水酸化カリウムを9g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を600g混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除き、超純水で顔料濃度20重量%まで希釈して水溶性分散ポリマーで分散した顔料分散液4を作製した。
(5)顔料分散液5
1Lビーカーにn−ブチルメタクリレートを200g、n−ブチルアクリレートを25g、スチレンを100g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを75g、及びメタクリル酸を100g入れて混合し、さらに重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシオクトエートを4g添加して、ポリマー合成混合液を得た。
次に、メチルエチルケトン500gを1Lフラスコに入れて、窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃、攪拌状態で上記ポリマー合成混合液を3時間にわたって滴下した。さらに75℃、攪拌状態で8時間反応を続けた。その後、反応合成物を25℃まで自然冷却した後、固形分が50重量%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、酸価130、重量平均分子量15,000の水溶性分散ポリマー溶液を得た。
着色剤としてカーボンブラックであるMA−100(商品名、三菱化学株式会社製)を150g、上記の水溶性分散ポリマー溶液を100g、5%水酸化カリウム水溶液を40g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を700g混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き、他の成分を加え常温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過した。
得られた濾過物を80℃、常圧下でメチルエチルケトンの全てと水の一部を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、ポリマー層を凝結した。これを水洗しながら吸引濾過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌しながら、5%の水酸化カリウム水溶液を滴下し、液性をpH9±0.5に調整して、さらに固形分が20重量%になるように超純水を加えることにより、顔料分散液5を作製した。
(6)顔料分散液6
着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントイエロー128を150g、上記分散液5で使用した水溶性分散ポリマー溶液Aを150g、5%水酸化カリウム水溶液を50g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を700g混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き、他の成分を加え常温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過した。
得られた濾過物を80℃、常圧下でメチルエチルケトンの全てと水の一部を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、ポリマー層を凝結した。これを水洗しながら吸引濾過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌しながら、5%の水酸化カリウム水溶液を滴下し、液性をpH9±0.5に調整して、さらに固形分が20重量%になるように超純水を加えることで、顔料分散液6を作製した。
(7)顔料分散液7
着色剤として有機顔料であるC.I.ピグメントレッド122を200g、上記分散液5で使用した水溶性分散ポリマー溶液Aを100g、5%水酸化カリウム水溶液を50g、及びイオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を650g混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き、他の成分を加え常温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過した。
得られた濾過物を80℃、常圧下でメチルエチルケトンの全てと水の一部を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、ポリマー層を凝結した。これを水洗しながら吸引濾過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌しながら、5%の水酸化カリウム水溶液を滴下し、液性をpH9±0.5に調整して、さらに固形分が20重量%になるように超純水を加えることで、顔料分散液7を作製した。
(8)顔料分散液8
顔料として有機顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3を200g、上記分散液5で使用した分散ポリマー溶液Aを200g、5%水酸化カリウム水溶液を70g、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水を600g混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き、他の成分を加え常温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)で濾過した。
得られた濾過物を80℃、常圧下でメチルエチルケトンの全てと水の一部を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、ポリマー層を凝結した。これを水洗しながら吸引濾過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌しながら、5%の水酸化カリウム水溶液を滴下し、液性をpH9±0.5に調整して、さらに固形分が20重量%になるように超純水を加えることで、顔料分散液8を作製した。
<インク組成物の調製>
上記のようにして得られた樹脂エマルジョンおよび顔料分散液を用い、下記表2に示した組成にしたがって、全量が100gとなるように各成分を加え、2時間攪拌した。その後、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名、日本ミリポア・リミテッド製)にて濾過して実施例1〜16及び比較例1〜4の水性インク組成物を調製した。
Figure 2007161923
Figure 2007161923
<インクの評価>
(1)保存安定性
実施例1〜16及び比較例1〜4の水性インク組成物を以下の(I)〜(III)の環境下に放置した。
(I)60℃で1ヶ月放置
(II)凍結した状態で1ヶ月放置
(III)60℃で2週間放置した後、凍結した状態で1週間放置
上記の3種の条件下で放置した後、水性インク組成物の粘度及び粒径について、インク調製直後と放置後との比較を行った。判定基準は以下の通りとした。
粘度
A:全ての放置条件下で変化幅が±3%未満
B:変化幅が±3%以上、±6%未満となる放置条件がある
C:変化幅が±6%以上、±10%未満となる放置条件がある
D:変化幅が±10%以上となる放置条件がある
粒径
A:全ての放置条件で変化幅が±5%未満
B:変化幅が±5%以上、±10%未満となる放置条件がある
C:変化幅が±10%以上、±20%未満となる放置条件がある
D:変化幅が±20%以上となる放置条件がある
評価結果は、下記の表3に示される通りであった。
(2)吐出安定性
実施例1〜16及び比較例1〜4の水性インク組成物をインクジェットプリンタPX−V600(セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。記録媒体としてA4版のXerox P(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)を用い、20〜25℃で40〜60%RHの環境下で、文字と塗り潰しとが混在する画像を連続的に印刷した。印刷設定は、「用紙種類;普通紙、印刷品質;ファイン」とした。得られた印刷物について、印刷画像中の飛行曲がりや抜け等の不具合の有無を目視にて測定した。判定基準は以下の通りとした。
A:200枚まで連続印刷しても、飛行曲がり・抜けが発生しない
B:100枚までの連続印刷で、飛行曲がり・抜けが発生しない
C:100枚までの連続印刷で、飛行曲がり・抜けが発生したが10箇所未満である
D:100枚までの連続印刷時に、飛行曲がり・抜けが10箇所以上発生する
評価結果は、下記の表3に示される通りであった。
(3)画像品質
実施例1〜16及び比較例1〜4の水性インク組成物を上記と同様のインクジェットプリンタに搭載した。印刷設定を「用紙種類;普通紙、印刷品質;ファイン」にして、2〜20ポイントのゴシック文字を1ポイント刻みで印刷した。また、同様の印刷設定で5%から100%まで5%刻みで塗り潰し密度を変えた画像を印刷した。記録媒体は、普通紙として、Xerox Premium Multipurpose 4024(Xerox Corporation社製、以下略号として「Xerox 4024」と記載する)、Xerox P(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)、REYMAT(Aussedat rey社製)、及びHammermill Copy Plus(International Paper社製、以下略号として「HCP」と記載する)の4種類を用い、再生紙としてXerox R(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社製)を用いた。
得られた各印刷物について、文字の滲みによる画像品質(文字品質)を目視にて観察した。また、塗り潰し密度を変えた印刷物について、濃淡ムラや裏抜け状態による印刷品質(塗り潰し画像品質)を目視にて観察した。評価基準は以下の通りとした。
文字品質
A:全てのポイントの文字において、滲みがわからない
B:5ポイント以下の文字で、わずかに滲みが認められる
C:滲みのため、5ポイント以下の文字が太く見える
D:滲みが著しく、5ポイント以下の文字が判別できない
塗り潰し画像品質
A:全ての塗り潰し画像において、ほとんど濃淡ムラが認められず裏抜けも無い
B:塗り潰し密度100%画像でわずかに濃淡ムラが認められるが、実用上問題無いレベルであり、裏抜けもほとんど認められない
C:塗り潰し密度80%以上の画像で濃淡ムラ、裏抜けが認められる
D:塗り潰し密度50%以上の画像で濃淡ムラ、裏抜けが認められる
評価結果は、下記の表3に示される通りであった。
Figure 2007161923
表3に示した結果からも明らかなように、実施例1〜16の水性インク組成物は、保存安定性(粘度変化、粒径変化)が良好であり、インクジェットプリンタにおける吐出安定性も問題がない。また、画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)も記録媒体の種類に関係無く良好であった。
これに対して、本発明による樹脂エマルジョンを添加しなかった比較例1の水性インク組成物においては、画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)で滲み・濃淡ムラ・裏抜けが発生する紙種があった。また、酸価が50を超える樹脂エマルジョン8を添加した比較例2の水性インク組成物においては、インクの保存安定性(粘度変化、粒径変化)に欠け、吐出安定性も悪く、かつ画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)で滲み・濃淡ムラ・裏抜けが発生する紙種があった。さらに、水酸基価が50より少ない樹脂エマルジョン9を添加した比較例3の水性インク組成物においては、インクの保存安定性(粘度変化、粒径変化)、及び吐出安定性に欠け、かつ画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)で滲み・濃淡ムラ・裏抜けが発生する紙種があった。また、酸価及び水酸基価は本発明の範囲内であるがTgが30℃未満である樹脂エマルジョン10を添加した比較例4の水性インク組成物においては、画像品質(文字品質、塗り潰し画像品質)で滲み、濃淡ムラ、裏抜けが発生する紙種があった。

Claims (10)

  1. 着色成分と、樹脂エマルジョンと、水と、を少なくとも含んでなる水性インク組成物であって、
    前記着色成分が、アニオン性基を有する水溶性分散ポリマーによって着色剤が分散した分散体であり、
    前記樹脂エマルジョンが、水酸基価が50以上、酸価が50以下であり、かつ、ガラス転移温度が30℃以上である樹脂成分からなる、水性インク組成物。
  2. 前記樹脂成分が、疎水性部分と親水性部分とを併せ持つ構造を有する、請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. 前記親水性部分が、中和基を有する繰り返し単位、及び水酸基を有する繰り返し単位を含んでなる、請求項2に記載の水性インク組成物。
  4. 前記中和基が、カルボン酸アニオン基である、請求項3に記載の水性インク組成物。
  5. 前記樹脂エマルジョンが、インク全体に対して固形分換算で0.1〜20重量%含まれてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  6. 浸透剤をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  7. 前記浸透剤が、一価のアルコール類、多価アルコールのグリコールモノエーテル誘導体、1,2−アルカンジオール類、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、および、下記式:
    Figure 2007161923
    (式中、Rは炭素数1〜20の二重結合、三重結合、もしくは置換基を有していても良い直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、または、置換基を有していても良いアリール基を表し、Xは水素原子、水酸基、または炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状アルコキシ基を表す。)
    で表される化合物、からなる群から選択される一種以上を含んでなる、請求項6に記載の水性インク組成物。
  8. 前記着色剤が、有機顔料またはカーボンブラックである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  9. インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性インク組成物を用いる、インクジェット記録方法。
  10. 請求項9に記載のインクジェット記録方法によって記録が行われた、記録物。
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JP2011094082A (ja) * 2009-11-02 2011-05-12 Konica Minolta Ij Technologies Inc インクジェットインク及び記録方法

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