JP2016160331A - 水性顔料分散物及び水性インク組成物 - Google Patents

水性顔料分散物及び水性インク組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】顔料の分散性及び分散安定性をより高度なレベルで両立し、容易に調製ができる水性顔料分散物、及びこの水性顔料分散物を用いた水性インク組成物の提供。【解決手段】水性媒体と、顔料と、高分子分散剤とを含有する水性顔料分散物であって、高分子分散剤が、一般式(I)で表される構成単位とイオン性基を有する構成単位とを少なくとも有するポリマーで、且つ、ポリマー末端に、無置換か若しくはカルボキシル基、エステル基で置換されているスルフィド基を導入しており、高分子分散剤中、一般式(I)で表される構成単位の含有量が高分子分散剤の質量に対し3〜20質量%である。(R1はH又はメチル基;L1は−C(=O)O−等;L2は単結合等;Aは多環構造)【選択図】なし

Description

本発明は、水性顔料分散物、及びこれを用いた水性インク組成物に関する。
画像データ信号に基づき、紙等の記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などの記録方法がある。
インクジェット記録方法は、印刷版を必要とせず、画像形成部のみにインクを吐出して記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率的に使用でき、ランニングコストが安い。更に、インクジェット記録方法は印刷装置も従来の印刷機に比べ比較的低コストで、小型化も可能であり、騒音も少ない。このように、インクジェット記録方法は他の画像記録方式に比べて種々の利点を兼ね備えている。
インクジェットプリンターの水性インクには、色材として染料が用いられてきた。しかし染料を用いた水性インクでは、画像のにじみが生じやすく、また耐光性及び耐水性の向上にも制約があった。これらの欠点を克服するために、近年では色材として顔料を用いた水性インクが用いられている。顔料を用いた水性インクでは、顔料を水性媒体中に安定的に分散させる必要がある。そのため、水性インクないしその原料となる顔料分散物は、通常は分散剤を用いて顔料の分散性と分散安定性を高めている。
例えば特許文献1には、顔料と、特定構造の疎水性部位とイオン性基を有する高分子分散剤を含有する水系の顔料組成物が記載され、分散性と分散安定性の良い分散体が得られたことが記載されている。
また特許文献2には、顔料と、水溶性の重合性化合物と、重合開始剤と、水とを含有するインクジェット記録用の黒色系インク組成物が記載され、顔料表面に樹脂を被覆することにより、分散安定性の良い分散体が得られたことが記載されている。
特許第4642892号公報 特開2013−47311号公報
インク組成物の原料とする顔料分散物には、高濃度の画像濃度を印刷できるように、分散物中の顔料のより高濃度化が可能であることが求められる。
しかし、上記特許文献1及び2に記載された水性顔料分散物では、顔料濃度を一定濃度以上に高めると、分散性(顔料を水性媒体中に微粒子状態で均一分散でき、顔料微粒子が凝集することなく、低粘度の分散状態をとる特性)ないしは分散安定性(上記の顔料の分散状態が、経時ないしは外部の刺激(熱や振動など)に対して安定的に維持できる特性)が低下し、両特性を高いレベルで両立するのは難しくなる。また、分散速度(ある濃度において所望の粒径の分散物となるまでの時間)も低下する。
本発明は、顔料の分散性及び分散安定性の両立をより高度なレベルで実現し、容易に調製ができる水性顔料分散物、及びこの水性顔料分散物を用いた水性インク組成物を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定構造の高分子分散剤を用いることにより、顔料を水性媒体中に、所望の濃度でより微細な粒子状に分散させることができ、これにより適切な粘度の水性顔料分散物が得られ、しかも顔料の分散安定性を大きく高めることができることを見い出した。さらに、上記特定構造の分散剤を用いることにより顔料濃度を高度に高めた場合でも微細な顔料微粒子を安定的に分散してなる顔料微粒子分散物を容易に得られることを見い出した。また、本発明者は、この水性顔料分散物を用いた水性インク組成物もまた、顔料の分散性に優れ、且つ、顔料の分散安定性にも優れることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至った。
すなわち、本発明の上記課題は以下の手段により解決された。
[1]
水性媒体と、顔料と、高分子分散剤とを含有する水性顔料分散物であって、
高分子分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位とイオン性基を有する構成単位とを少なくとも有するポリマーであり、且つ、下記一般式(III)又は(IV)で表される基を有し、
高分子分散剤中、上記一般式(I)で表される構成単位の含有量が高分子分散剤の質量に対し3〜20質量%である、水性顔料分散物。
Figure 2016160331
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
は−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NR−、又はフェニレン基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は単結合であるか、又は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、−C(=O)−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、及び−SO−から選ばれる2価の連結基もしくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、−C(=O)−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、及び−SO−から選ばれる2種以上の基を組み合わせてなる2価の連結基を表す。Rは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表す。
Aは炭素数8以上の、多環構造を有する基を表す。
Figure 2016160331
はアルキル基又はアリール基を表す。Rはアルキレン基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。
[2]
高分子分散剤が顔料表面において架橋構造を形成している[1]に記載の水性顔料分散物。
[3]
高分子分散剤が、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基を総量で1〜8質量%含有する[1]又は[2]に記載の水性顔料分散物。
[4]
高分子分散剤の重量平均分子量が5000〜15000である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の水性顔料分散物。
[5]
高分子分散剤中、一般式(I)で表される構成単位の含有量xの、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基の総含有量yに対する比が、質量比で、1≦x/y≦7.5を満たす[1]〜[4]のいずれか1つに記載の水性顔料分散物。
[6]
[1]〜[5]のいずれか1つに記載の水性顔料分散物を用いた水性インク組成物。
[7]
水性インク組成物がインクジェット記録用である、[6]に記載の水性インク組成物。
本明細書において、特に断りがない限り、特定の符号で表示された置換基、連結基、配位子、繰り返し単位等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書において、各置換基の例として説明される各基の「基」は無置換の形態及び置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。
本明細書において、「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは化合物を特定の名称ないし化学式で示すときには、特に断わりのない限り、化合物そのものに加え、その塩、錯体、そのイオンを含む意味に用いる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を含む意味に用いる。このことは、「(メタ)アクリル酸」についても同様である。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の水性顔料分散物は、顔料の分散性及び分散安定性の両特性に優れる。また、その調製時において、顔料の分散速度が速く容易に調製が可能である。また、本発明の水性インク組成物は、本発明の水性顔料分散物から調製され、顔料の分散性及び分散安定性の両特性に優れる。
本発明の水性顔料分散物の好ましい実施形態について以下に説明する。
[水性顔料分散物]
本発明の水性顔料分散物は、水性媒体と、顔料と、特定構造の高分子分散剤とを含有する。本発明の水性顔料分散物中において顔料は、その表面の少なくとも一部が上記特定構造の高分子分散剤に覆われ、水性媒体中に分散している。
本発明の水性顔料分散物は、さらに必要に応じてその他の成分を含有してもよい。その他の成分の例としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、界面活性剤、pH調整剤、無機塩、有機塩等が挙げられる。
<水性媒体>
本発明の水性顔料分散物に用いる水性媒体(以下、水性媒体(a)という。)は、水、又は、水と水溶性有機溶媒との混合液である。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。
水性顔料分散物に含まれる水性媒体中、水の含有量は40質量%以上が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、60〜100質量%がさらに好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
水性媒体(a)に含有されうる上記水溶性有機溶媒は、20℃において水に対する溶解度が5質量%以上であるものが好ましい。この水溶性有機溶媒として、例えば、アルコール、ケトン、エーテル化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、スルホン化合物が挙げられる。
これらのうちアルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。
また、ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルが挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドが挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリルが挙げられる。
スルホン化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランが挙げられる。
本発明の水性顔料分散物中の水性媒体(a)の含有量は、60〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、80〜90質量%がさらに好ましい。
<顔料>
本発明の水性顔料分散物は、1種又は2種以上の顔料が分散してなる。
本発明の水性顔料分散物に用いられる顔料の種類に特に制限はなく、通常の有機又は無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、又は多環式顔料が好ましい。
アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料が挙げられる。
多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料が挙げられる。
染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
上記カーボンブラック顔料のジブチルフタレート(DBP)吸収量は特に制限されないが、色調と印画濃度の観点から、30ml/100g以上200ml/100g以下であることが好ましく、50ml/100g以上150ml/100g以下であることがより好ましい。尚、DBP吸収量は、JIS K6217−4:2008によって測定される。
また上記カーボンブラック顔料のBET比表面積は特に制限されないが、印画濃度と保存安定性の観点から、30m/g以上450m/g以下であることが好ましく、200m/g以上400m/g以下であることがより好ましい。
カーボンブラック顔料としては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
具体例としては例えば、Raven1250、Raven1200、Raven1190 ULTRA、Raven1170、Raven1255、Raven1080ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven1040、Raven1035、Raven1020、Raven1000、Raven900、Raven890、Raven850、Raven780ULTRA、Raven860Ultra、Raven520、Raven500、Raven450、Raven460、Raven415、Raven14、Conductex7055 Ultra(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Black Pearls L、Regal99、Regal350、MONARCH280、MONARCH120(以上、キャボット社製)、Color Black S160、Color Black S170、Printex35、Printex U、Printex V、Printex140U、Printex140V、Printex300、Printex25、Printex200、PrintexA、PrintexG、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4、Special Black550、Special Black 350、Special Black250、Special Black100、NEROX3500、NEROX1000、NEROX2500(以上、エボニックデグッサ社製)、No.10、No.20、No.25、No.33、No.40、No.45、No.47、No.52、No.85、No.95、No.260、MA7、MA8、MA11、MA77、MA100、MA220、MA230、MA600(以上、三菱化学社製)等を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明に用いることができる顔料の具体例として、特開2007−100071号公報の段落番号0142〜0145に記載の顔料が挙げられる。
本発明の水性顔料分散物中の顔料濃度に特に制限はなく、通常は5〜25質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
本発明の水性顔料分散物中に分散している顔料の初期粒径は、10nm以上130nm未満が好ましく、50nm以上130nm未満がより好ましく、80nm以上120nm未満がさらに好ましく、70nm以上100nm以下であることが特に好ましい。ここで、水性顔料分散物中の顔料の粒径は体積平均粒径を意味する。水性顔料分散物中の顔料の粒径は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
水性顔料分散物中の顔料の初期粒径を130nm未満とすることにより、水性インク組成物に用いた際の色再現性が向上しうる。また、水性顔料分散物中の顔料の粒径を10nm以上とすることにより、水性インク組成物に用いた際の耐光性が向上しうる。
<高分子分散剤>
本発明の水性顔料分散物に用いる高分子分散剤(以下、単に「分散剤」ともいう。)は、一般式(I)で表される構成単位とイオン性基を有する構成単位とを少なくとも有するポリマーであり、且つ、一般式(III)又は(IV)で表される基を有する。高分子分散剤中、上記一般式(I)で表される構成単位の含有量は高分子分散剤の質量に対し3〜20質量%である。一般式(III)又は(IV)で表される基は、通常は分散剤のポリマー鎖の少なくともいずれか一方の末端に導入されている。
上記分散剤は、下記一般式(I)で表される構成単位の1種を有する形態でも2種以上を有する形態でもよい。また、上記分散剤は、イオン性基を有する構成単位の1種を有する形態でも2種以上を有する形態でもよい。また、上記分散剤は、一般式(III)又は(IV)で表される基の1種を有する形態でも2種以上を有する形態でもよい。上記分散剤の残部は特に限定されないが、後述するモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記分散剤を使用することにより、顔料が小粒径ですばやく均一に分散され、低粘度の水性顔料分散物を得ることができ、さらにこの分散状態を安定的に維持することができる。そのメカニズムは定かではないが、次のように推定される。
一般式(I)で表される構成単位は、顔料表面に対し良好な吸着性を示す。したがって一般式(I)で表される構成単位の含有量を増すほうが分散剤が顔料に対し良好に吸着し、分散性が良化すると考えられる。一方で、一般式(I)で表される構成単位は高い疎水性を示すため、分散性を上げるために一般式(I)で表される構成単位の含有量のみを増していくと、媒体に対する親和性が低下し分散安定性が低下する、ないしは分散剤自体がラテックス状態で安定化し、結果として分散性が低下することがありうる。
それに対し、一般式(III)で表される基ないし一般式(IV)で表される基は顔料表面に対し吸着性を示し、かつ、分散剤の末端に導入されるため、効率的にポリマーの顔料や媒体に対する親和性を制御することが可能であると考えられる。すなわち、一般式(I)で表される構成単位と一般式(III)で表される基ないし一般式(IV)で表される基を適当な含有量で併せ持つことで、水性媒体に対する適正な親和性を保持しつつ、顔料分散剤を高効率に顔料に吸着させることができると推定される。このため、分散物の高粘度化を抑制しつつ、所望の粒径の顔料とすることができると考えられる。
本発明において分散剤として用いるポリマーは、上記の一般式(I)で表される構成単位とイオン性基を有する構成単位とを有し、且つ、一般式(III)又は(IV)で表される基を有していれば、ランダムポリマーでもブロックポリマーでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
(a)一般式(I)で表される構成単位
Figure 2016160331
は水素原子又はメチル基を表す。
は−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NR−、又はフェニレン基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(直鎖又は分岐を有するアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル、さらに好ましくはメチル又はエチル)を表す。フェニレン基はさらに置換されていてもよく、フェニレン基上の置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
は−C(=O)O−、−C(=O)NR−、又は無置換のフェニレン基であることが好ましく、−C(=O)O−又は無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
は単結合であるか、又は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、−C(=O)−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、及び−SO−から選ばれる2価の連結基もしくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、−C(=O)−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、及び−SO−から選ばれる2種以上の基を組み合わせてなる2価の連結基を表す。Rは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表す。
が、2種以上の基を組合せて得られる2価の連結基である場合は、その2種以上の基は同一であっても、異なってもよい。
上記Lとして採り得るアルキレン基は、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐を有するアルキレン基である。
として採り得るアルケニレン基は、炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6、さらに好ましくは炭素数2〜4の直鎖又は分岐を有するアルケニレン基である。
として採り得るアルキレン基及びアルケニレン基は、それぞれ独立に、置換基(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基等)によってさらに置換されていてもよい。
は、単結合又は炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましい。また、Lは、炭素数1〜12のアルキレン基、−C(=O)−、−NR−(Rは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基)、−O−、及びSO−から選ばれる2種以上の基を組み合わせてなる2価の連結基であることも好ましい。
は、単結合、−(CHCHO)n1−、−(CHn2O−、−(CHn3OC(=O)−、−(CHn4−、−(CHn5NRSO−、−(CHn6OC(=O)(Cn7−、又は(CHn8NRC(=O)NR−であることがより好ましく、−(CHn2O−、−(CHn4−、又は−(CHn7NRC(=O)NR−であることがさらに好ましい。ここで、n1は1〜9の整数であり、より好ましくは1〜4である。n2は1〜4の整数であり、より好ましくは1〜3である。n3は1〜4の整数であり、より好ましくは1〜3である。n4は1〜9の整数であり、より好ましくは1〜4である。n5は1〜9の整数であり、より好ましくは1〜4である。n6は1〜4の整数であり、より好ましくは1〜3である。n7は1〜4の整数であり、より好ましくは1〜3である。n8は1〜9の整数であり、より好ましくは1〜4である。
Aは炭素数8以上の、多環構造を有する基を表す。炭素数8以上の、多環構造を有する基は、好ましくは、炭素数8〜36の、多環構造を有する基である。より好ましくは炭素数8〜20の多環構造を有する基である。炭素数8以上の、多環構造を有する基は、その構造中に2〜6個の環構造を有することが好ましく、2〜3個の環構造を有することがより好ましい。炭素数8以上の、多環構造を有する基は、縮環型芳香族基、芳香族環が縮環したヘテロ環基、又はベンゼン環が二個以上連結した基であることがより好ましい。
縮環型芳香族基とは、多環芳香族炭化水素基であるか、又は、芳香族炭化水素に脂環式炭化水素(好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは2〜8の脂環式炭化水素)が縮環した構造を有する1価の基である。縮環型芳香族基の具体的な例としては、ナフチル、アントリル、フルオレニル、フェナントリル、アセナフテニル、アントラキノニルなどが挙げられる。
芳香族環が縮環したヘテロ環基とは、ヘテロ環にヘテロ原子を含まない芳香族環(好ましくはベンゼン環)が縮環した構造を有する1価の基である。ここで、ヘテロ環は5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ環は複数のヘテロ原子を有していても良く、この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。芳香族環が縮環したヘテロ環基の具体例としては、フタルイミド、ナフタルイミド、アクリドニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリルなどが挙げられる。
ベンゼン環が二個以上連結した基とは、二個以上のベンゼン環が互いに単結合、2価の連結基、又は3価の連結基で結合されている構造を有する基をいう。2価の連結基としては、炭素数1〜4のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。3価の連結基としてはメチン基が挙げられる。ここで、ベンゼン環は互いに複数の連結基で結合されていても良く、複数の連結基は同じであっても異なっていても良い。ベンゼン環の数としては、2〜6個が好ましく、2〜3個がより好ましい。ベンゼン環が二個以上連結した基の具体例としては、ビフェニリル、トリフェニルメチル、ジフェニルメチル、フェノキシフェニル、フェニルスルホニルベンジル等が挙げられる。
Aとしては、ナフチル、トリフェニルメチル、ビフェニリル、アクリドニル、フタルイミド、フェナントリル、フルオレニル、アントリル、カルバゾリル、ナフタルイミド、ジフェニルメチル、アントラキノン、又はベンゾイミダゾリルが好ましく、ナフチル、アクリドニル、ナフタルイミド、アントラキノニル、又はベンゾイミダゾリルがより好ましい。
Aの置換位置(Lとの連結部位)は特に限定されない。
Aはその構造中に置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、オキソ基等を挙げることができ、より好ましい置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルカルボニルオキシ基、塩素原子、シアノ基、オキソ基等を挙げることができる。
一般式(I)で表される構成単位は、以下に示す構造を有する化合物(モノマー)に由来することがさらに好ましい。
Figure 2016160331
Figure 2016160331
また、一般式(I)で表される構成単位の特に好ましい具体例は、実施例で用いたモノマーA〜モノマーEに由来する構成単位である。
分散剤の構造中、一般式(I)で表される構成単位の含有量は分散剤の質量に対し3〜20質量%であり、4〜15質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
一般式(I)で表される構成単位の含有量が3質量%未満であると、顔料表面になじみにくくなり十分な分散安定性が得られないことがある。また、一般式(I)で表される構成単位の含有量が20質量%を超えると、分散剤自体がラテックス化してしまい十分な分散作用が得られないことがある。
分散剤は、一般式(I)で表される構成単位により分散剤ポリマー鎖のペンダント基として導入される疎水性の基(Aに相当)により、分散剤の、顔料に対する相互作用が向上し、吸着性が高まる。疎水性の基が、顔料と類似の構造を有しているため、又は平面性の高い構造を有しているため、顔料表面となじみやすいためと考えられる。
分散剤が、上記一般式(I)で表される構成単位を有することにより、顔料が水性媒体(a)中に小粒径で均一に分散され、低粘度の水性顔料分散物を得ることができ、さらにこの分散状態を安定的に維持することができる。
(b)イオン性基を有する構成単位
分散剤は、イオン性基を有する構成単位を有する。「イオン性基を有する構成単位」とは、イオン性基を有するモノマーに由来する構成単位を意味する。
このイオン性基は、酸又は塩基の存在下でイオンを生成する基を意味し、酸性基が好ましい。酸性基とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、例えば、カルボキシ基、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基といった酸性を示す基を意味する。なかでも酸性基はカルボキシ基、スルホ基又はホスホニル基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。酸性基はプロトンを放出して解離した形を採っていてもよく、塩であってもよい。
イオン性基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位であることが好ましく、さらに好ましくはメタクリル酸又はアクリル酸由来の構成単位である。
分散剤の構造中、イオン性基を有する構成単位の含有量は高分子分散剤の質量に対し15〜40質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましい。
分散剤が、イオン性基(親水性基)を有する構成単位を有することにより、顔料表面に吸着した分散剤が水となじみやすくなり、顔料を水性媒体(a)中に分散させることができる。
(c)一般式(III)又は(IV)で表される基
分散剤は、一般式(III)又は(IV)で表される基を有する。分散剤は、通常、そのポリマー鎖末端の少なくとも一方に、一般式(III)又は(IV)で表される基を有する。
Figure 2016160331
はアルキル基又はアリール基を表す。Rはアルキレン基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。
上記Rとして採り得るアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。アルキル基は置換基を有してもよく、アルキル基上の置換基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。
上記Rとして採り得るアリール基は、好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。アリール基は置換基を有してもよく、アリール基上の置換基としては炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。
上記Rとして採り得るアルキレン基は、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。アルキレン基は置換基を有してもよく、アルキレン基上の置換基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。
上記Rとして採り得るアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。アルキル基は置換基を有してもよく、アルキル基上の置換基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。
なお、一般式(IV)で表される基は、プロトンを放出して解離した形を採っていてもよく、塩であってもよい。
一般式(III)又は(IV)で表される基は、例えば、チオールを末端に有する連鎖移動剤を用いることで、分散剤のポリマー末端に導入することができる。上記連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸ブチルなどが挙げられる。
分散剤は、顔料に対する親和性をより向上させる観点で、一般式(IV)で表される基を有することが好ましい。
分散剤の構造中、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基の総量は、分散剤の質量に対し1〜8質量%が好ましく、1.5〜5質量%がより好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。すなわち、分散剤が、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基の内、一般式(III)で表される基のみを有する場合は一般式(III)で表される基の含有量が、分散剤が一般式(IV)で表される基のみを有する場合は一般式(IV)で表される基の含有量が、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基のいずれをも有する場合はこれらの基の含有量の合計が、上記範囲内であればよい。
さらに、分散剤の構造中、一般式(I)で表される構成単位の含有量xの、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基の総含有量yに対する比(質量比)は、0.6≦x/y≦20が好ましく、1≦x/y≦15がより好ましく、1≦x/y≦7.5がさらに好ましい。ここで、総含有量は、分散剤が、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基の内、一般式(III)で表される基のみを有する場合は一般式(III)で表される基の含有量に、一般式(IV)で表される基のみを有する場合は一般式(IV)で表される基の含有量に、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基のいずれをも有する場合はこれらの基の含有量の合計に相当する。
一般式(III)又は(IV)で表される基は顔料に対し吸着性を有する。このため、一般式(I)で表される構成単位の含有量を一定程度少なくしても、顔料表面への分散剤の効率的な吸着を達成することができる。
(c)一般式(II)で表される構成単位
本発明における分散剤は、一般式(I)で表される構成単位と、イオン性基を有する構成単位と、一般式(III)又は(IV)で表される基とを有し、更に、下記一般式(II)で表される構成単位を有することが好ましい。
Figure 2016160331
一般式(II)において、R、L、及びLは、それぞれ一般式(I)のR、L、及びLと同義である。Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
一般式(II)において、Lは−C(=O)O−であることが好ましい。
一般式(II)において、Lは−(CHCHO)n1−、−(CHn2O−又は−(CHn4−であることが好ましい。n1、n2、及びn4は、それぞれ一般式(I)のLにおけるn1、n2、及びn4と同義である。
一般式(II)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(直鎖アルキル基又は分岐を有するアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル又はエチル)、又は炭素数1〜6のアルコキシ基(直鎖アルキル基又は分岐を有するアルコキシ基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、より好ましくはメトキシ又はエトキシ)を示し、水素原子であることがより好ましい。
一般式(II)で表される構成単位の特に好ましい具体例としては、実施例で用いた各ポリマーが有する構成単位が挙げられる。
分散剤の構造中、一般式(II)で表される構成単位の含有量は分散剤の質量に対し20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
分散剤が、一般式(II)で表される構成単位を有することにより、分散性をさらに向上させることができ、好ましい。
(d)他の構成単位
分散剤は、一般式(I)で表される構成単位、イオン性基を有する構成単位、一般式(III)又は(IV)で表される基の他に、また一般式(II)で表される構成単位をさらに含む場合はその他に、他の構成単位(以下、単に「他の構成単位」という。)を有してもよい。
他の構成単位としては、一般式(I)で表される構成単位、イオン性基を有する構成単位、一般式(III)又は(IV)で表される基及び一般式(II)で表される構成単位のいずれとも異なる構造の、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位が好ましい。具体例として、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート等のノニオン性基を有する(メタ)アクリレートから選ばれるモノマーに由来する構成単位を挙げることができる。
なかでも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート、及びメチル(メタ)アクリレートから選ばれるモノマーに由来する構成単位が好ましい。
分散剤の構造中、他の構成単位の含有量は、分散剤の質量に対し40質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。
他の構成単位は、分散剤の物性(親水性、疎水性や溶解性など)を調整するために、適宜選択することができる。
分散剤の酸価は、分散性と分散安定性をより高める観点から、1.5〜4.0mmol/gであることが好ましく、2.0〜3.5mmol/gであることがより好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0mmol/gである
分散剤の酸価は、JIS K0070に準拠して測定し、1mmol/g=56.1mgKOH/gとして換算することで算出できる。
分散剤の重量平均分子量は、分散性と分散安定性をより高める観点から、5000〜15000であることが好ましく、6000〜12000であることがより好ましく7000〜10000であることがさらに好ましい。なお、分散剤の重量平均分子量は、後述するように分散剤を水性顔料分散物中で架橋させる場合には、架橋構造を形成する前の重量平均分子量を意味する。
通常、分散剤の分子量はある程度大きくないと(通常は40000〜50000程度)、顔料表面への吸着が安定せず、十分な分散安定性を発揮することができない。これに対し本発明に用いる分散剤は、上記一般式(I)で表される構成単位及び上記一般式(III)又は(IV)で表される基を特定の含有量で有することにより、顔料表面のへの吸着速度と吸着安定性がいずれも高められ、重量平均分子量が5000〜15000程度と小さい場合でも、分散性と分散安定性を高いレベルで両立することができる。重量平均分子量が小さなポリマーを分散剤として用いることができれば、分散速度の向上及び分散液の低粘度化の点で有利である。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用い、カラムとして、TSKgeL Super HZM−H、TSKgeL Super HZ4000、TSKgeL Super HZ2000(東ソー社製、4.6mmID×15cm)の3本を直列に接続し、溶離液としてNMP(N−メチルピロリドン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー社製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
分散剤は、20℃において水に対する溶解度が10質量%以上であるものが好ましく、20質量%以上であるものがより好ましい。
本発明の水性顔料分散物において、顔料の含有量と分散剤の含有量の比は、顔料が水性媒体(a)中に安定的に分散できれば特に制限はなく、通常は、顔料:分散剤=1:0.1〜1:2(質量比)であり、顔料:分散剤=1:0.2〜1:1(質量比)であることが好ましい。
本発明の水性顔料分散物の初期粘度は、顔料濃度にもよるが、通常は3mPa・s以上60mPa・s未満であり、5mPa・s以上60mPa・s未満であることがより好ましく、10mPa・s以上40mPa・s未満がさらに好ましい。水性顔料分散物の粘度は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の水性顔料分散物のpHは、分散安定性の観点から、pH6〜11が好ましく、pH7〜10がより好ましく、pH7〜9がさらに好ましい。
<顔料分散物の調製>
本発明の水性顔料分散物の調製方法に特に制限はなく、例えば、少なくとも水性媒体(a)と、顔料と、分散剤とを混合し、必要により塩基性物質を含む水溶液を混合して分散処理することにより、本発明の水性顔料分散物を得ることができる。
本発明の水性顔料分散物において、分散剤に架橋構造を形成させてもよい。顔料表面に存在する分散剤同士が架橋構造を形成することにより、分散剤が顔料表面に固定され顔料の分散安定性がより向上しうる。分散剤の架橋構造の形成には、分散剤が有する特定の基と反応性を示す基を1分子中に2つ以上有する架橋剤を用いることができる。例えば、少なくとも水性媒体(a)と、顔料と、分散剤とを混合し、必要により塩基性物質を含む水溶液を混合して分散処理することにより水性顔料分散物を得、この水性顔料分散物に上記架橋剤を混合して加熱(通常は40〜70℃に加熱)し、分散剤に架橋構造を形成させることができる。架橋構造の形成は、例えば、特開2009−190379号公報に記載の方法を採用することができる。
上記架橋剤としては、分散剤のイオン性基と反応性を示す基を、1分子内に2つ以上(好ましくは2〜4つ、より好ましくは2つ又は3つ、さらに好ましくは2つ)有する化合物を好適に用いることができる。より好ましくは、分散剤がイオン性基としてカルボキシ基を有し、架橋剤が1分子内にエポキシ基を2つ以上(好ましくは2〜4つ、より好ましくは2つ又は3つ、さらに好ましくは2つ)有する化合物であり、さらに好ましくは1分子内にグリシジル基を2つ以上(好ましくは2〜4つ、より好ましくは2つ又は3つ、さらに好ましくは2つ)有するグリシジルエーテル化合物である。
上記架橋剤の好ましい具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル又はトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましい。
上記架橋剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、Denacol EX−321、EX−821、EX−830、EX−850、EX−851(ナガセケムテックス社製)を用いることができる。
架橋剤の架橋部位(例えばエポキシ基)と分散剤の被架橋部位(例えばカルボキシ基)のモル比は、架橋反応速度、架橋後の分散安定性の観点から、[架橋部位]:[被架橋部位]=1:1.1〜1:10が好ましく、1:1.1〜1:5がより好ましく、1:1.1〜1:3がさらに好ましい。
[水性インク組成物]
本発明の水性インク組成物は、本発明の水性顔料分散物そのものでもよいが、通常は本発明の水性顔料分散物を原料として用いて調製される。より詳細には、少なくとも本発明の水性顔料分散物と、水性媒体(以下、水性媒体(b)という。)とを混合することにより、本発明の水性インク組成物を調製することが好ましい。本発明の水性インク組成物には、必要に応じて、界面活性剤、乾燥防止剤(膨潤剤)、着色防止剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤等の添加剤を混合してもよい。混合方法に特に制限はなく、通常用いられる混合方法を適宜に選択し、本発明の水性インク組成物を得ることができる。
水性媒体(b)は水性媒体(a)と同義であり、好ましい範囲も同じである。本発明の水性インク組成物中、水性媒体の含有量(水性媒体(a)と(b)の含有量の合計)は、インク安定性、吐出信頼性の観点から、10〜99質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、50〜70質量%がさらに好ましい。
本発明の水性インク組成物中、顔料濃度は、画像濃度の観点から、0.5〜25質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
また、本発明の水性インク組成物中に分散している顔料の粒径は、10nm以上200nm未満が好ましく、50nm以上140nm未満がより好ましく、80nm以上120nm未満がさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。インク組成物中の顔料の粒径は体積平均粒径を意味し、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
水性インク組成物が含有しうる上記界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
上記界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体(アセチレングリコール系界面活性剤)がより好ましい。
上記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
上記界面活性剤は、インクジェット方式により水性インク組成物の吐出を良好に行う観点から、水性インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量で含有させるのが好ましく、より好ましくは水性インク組成物の表面張力を20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる範囲の量で含有させる。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、水性インク組成物を用いて25℃の条件下で測定される。
本発明の水性インク組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は特に限定されないが、水性インク組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
本発明の水性インク組成物の粘度には特に限定はないが、25℃での粘度が、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。水性インク組成物の粘度は、後述する実施例に記載の、水性顔料分散物の粘度の測定方法と同じ方法により測定することができる。
本発明の水性インク組成物のpHは、分散安定性の観点から、pH6〜11が好ましい。後述のインクセットとする場合は、酸性化合物等を含む処理剤との接触によってインク組成物が高速で凝集することが好ましいため、pH7〜10がより好ましく、pH7〜9がさらに好ましい。
本発明の水性インク組成物は、サインペン、マーカー等の文具類に用いるインクや、各種プリンタのインクとして用いることができる。なかでもその優れた顔料分散性と分散安定性をから、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[合成例1] 分散剤P−1の合成
下記構造のポリマーからなる分散剤を合成した。
Figure 2016160331
攪拌機、冷却管を備えた2000mlの三口フラスコにジプロピレングリコール198gを加え窒素雰囲気下で85℃に加熱した。
モノマーとして下記モノマーAを22.5g、ベンジルメタクリレートを166.5g、メタクリル酸メチルを139.53g、メタクリル酸を112.5g、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸を8.97g、166gのジプロピレングリコールに溶解させて溶液Iを得た。また、7.96gのt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油化学製パーブチルO)を99.5gのジプロピレングリコールに溶解させて溶液IIを得た。上記三口フラスコに、溶液Iを4時間、溶液IIを5時間かけてそれぞれ滴下した。溶液Iと溶液IIの滴下は同時に開始した。滴下の間、温度は85℃に維持した。
滴下終了後、さらに2時間反応させた後、95℃に昇温し、3時間加熱攪拌して未反応モノマーをすべて反応させた。室温まで温度を下げて重合反応を停止させた。モノマーの消失はH−NMRで確認した。
得られた反応溶液を70℃に加熱し、50質量%KOH水溶液を111.6g添加した後、ジプロピレングリコール(DPG)を107.5g、純水を75.5g加えて攪拌し、分散剤P−1の37質量%溶液を得た。得られたポリマーの組成はH−NMRで確認した。また、重量平均分子量(Mw)はゲル透過クロマトグラフ(GPC)より求めた。
Figure 2016160331
[合成例2] 分散剤P−2〜P−14、比較用分散剤PH−1〜PH−4の合成
上記合成例1において、使用するモノマー及び連鎖移動剤の種類と使用量(質量%)を下記表1に記載の通りに変更したこと以外は、上記合成例1と同様にして分散剤P−2〜P−14及び比較用分散剤PH−1〜PH−4を得た。得られたポリマーの組成はH−NMRで確認した。また、重量平均分子量(Mw)はゲル透過クロマトグラフ(GPC)より求めた。
下記表1において、式(I)で表される構成単位となるモノマーを「式(I)」、式(II)であらわされる構成単位となるモノマーを「式(II)」、イオン性基を有する構成単位となるモノマーを「イオン性基を有するモノマー」、式(III)又は(IV)で表される基となる化合物を「式(III)又は(IV)」として、示す。また、「x/y」は、上述の一般式(I)で表される構成単位の含有量xの、一般式(III)で表される基及び一般式(IV)で表される基の総含有量yに対する比(質量比)を表す。
Figure 2016160331
上記で用いたモノマーB〜Fの構造を下記に示す。
Figure 2016160331
上記で合成された分散剤P−2〜P−14の構成成分とともに、各構成成分の含有量を下記に示す。
Figure 2016160331
Figure 2016160331
Figure 2016160331
[実施例1] 水性顔料分散物の調製
フリッチュ遊星型ボールミル モデルP−7(フリッチュ社製)を使用し、下記の手順により水性顔料分散物を調製した。
ジルコニア製45ml容器に、大日精化製TRY13(PY−74) 2.25g、合成例1で得た分散剤P−1の溶液2.43g、1規定の水酸化カリウム水溶液0.39g、ジプロピレングリコール1.2g、超純水4.98gを加えた。さらに、0.1mmΦジルコニアビーズ(TORAY製トレセラムビーズ)40gを加えて、スパチュラで軽く混合した。
上記ジルコニア製45ml容器をボールミルに入れ、回転数300rpmで2時間分散した。分散終了後、ろ布でろ過してビーズを取り除き、顔料濃度が20質量%の水性顔料分散物YD−1を得た。
[実施例2〜14]
実施例1において、分散剤P−1に代えて分散剤P−2〜P−14を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水性顔料分散物YD−2〜YD−14をそれぞれ得た。顔料濃度はいずれも20質量%であった。
[比較例1〜4]
実施例1において、分散剤P−1に代えて比較用分散剤PH−1〜PH−4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例の水性顔料分散物YDH−1〜YDH−4をそれぞれ得た。顔料濃度はいずれも20質量%であった。
[実施例15] 架橋分散物の例
実施例1で得られた水性顔料分散物YD−1(102部)に対してDenacol EX−321(ナガセケムテックス社製の架橋剤)(1.4部)及びホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4質量%水溶液)(15.4部)を添加した。得られた混合物を、70℃にて6時間反応させ、25℃に冷却して、架橋分散物を得た。次に、得られた架橋分散物を、攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC社製)及び限外ろ過フィルター(分画分子量5万、Q0500076Eウルトラフィルター、ADVANTEC社製)を用いて、イオン交換水を加えて限外ろ過を行った。分散物中のジプロピレングリコール濃度が0.1質量%以下となるように精製した後、顔料濃度20質量%となるまで濃縮して水性顔料分散物YDC−1を得た。
[試験1]体積平均粒径の測定
ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装社製)を用い、動的光散乱法により、得られた水性顔料分散物中の顔料微粒子の体積平均粒径を測定した。
測定条件:水性顔料分散物10μlに水10mlを加えて希釈して得たサンプルを25℃で測定した。
得られた結果を下記評価基準により評価した。結果を下記表2に示す。
−評価基準−
A:体積平均粒径が70nm以上100nm未満
B:体積平均粒径が100nm以上130nm未満
C:体積平均粒径が130nm以上160nm未満
D:体積平均粒径が160nm以上190nm未満
[試験2]粘度の測定
得られた水性顔料分散物の粘度を、TV−22型粘度計(東機産業社製)を用い、25℃で測定した。
得られた結果を下記評価基準により評価した。結果を下記表2に示す。
−評価基準−
A:粘度が10mPa・s以上40mPa・s未満
B:粘度が40mPa・s以上60mPa・s未満
C:粘度が60mPa・s以上80mPa・s未満
D:粘度が80mPa・s以上
[試験3]分散安定性(経時安定性)の評価
得られた水性顔料分散物をサンプル瓶に詰めて密閉し、60℃で24時間放置した(加熱処理)。水性顔料分散物の凝集及び増粘について、加熱処理前後の体積平均粒径及び粘度の変化を指標にして評価した。加熱処理後の体積平均粒径及び粘度は、試験1及び試験2と同様にしてそれぞれ測定した。結果を下記表2に示す。

(体積平均粒径の変化)=(加熱処理後の体積平均粒径)−(加熱処理前の体積平均粒径)
−評価基準−
A:粒径変化が30nm未満
B:粒径変化が30nm以上50nm未満
C:粒径変化が50nm以上70nm未満
D:粒径変化が70nm以上100nm未満
E:粒径変化が100nm以上

(粘度の変化)=(加熱処理後の粘度)−(加熱処理前の粘度)
−評価基準−
A:粘度変化が30mPa・s未満
B:粘度変化が30mPa・s以上50mPa・s未満
C:粘度変化が50mPa・s以上70mPa・s未満
D:粘度変化が70mPa・s以上100mPa・s未満
E:粘度変化が100mPa・s以上
[試験4]分散速度の評価
フリッチュ遊星型ボールミル モデルP−7(フリッチュ社製)を使用し、下記の手順により分散速度を評価した。
ジルコニア製の45ml容器に、大日精化製TRY13(PY−74)を2.25g、上記合成例で得られた各分散剤の溶液を2.43g、1規定の水酸化カリウム水溶液を0.39g、ジプロピレングリコールを1.2g、超純水を4.98g加えた。さらに、0.1mmΦジルコニアビーズ(TORAY製トレセラムビーズ)を40g加えて、スパチュラで軽く混合した。
上記ジルコニア製の45ml容器をボールミルに入れ、回転数300rpmで1時間分散した。
分散液100μlを分け取り、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装社製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定した。
上記ジルコニア製の容器を再びボールミルに入れ、回転数300rpmで30分さらに分散し、上記と同様の手法で体積平均粒径を測定した。
本操作を、体積平均粒径が100nm以下になるまで繰り返し、分散時間の総計で分散速度を評価した。
得られた結果を下記評価基準により評価した。結果を下記表2に示す。
−評価基準−
A:分散に要した時間が2時間以下であった
B:分散に要した時間が2時間を超え4時間以下であった
C:分散に要した時間が4時間を超え6時間以下であった
D:6時間を超えて分散しても所定の粒径に到達しなかった
Figure 2016160331
比較例1〜4の水性顔料分散物は、いずれも分散性及び分散安定性に劣る結果となった。また、分散速度にも劣る結果となった。
比較例1の水性顔料分散物は、分散剤が、一般式(I)で表される構成単位を含まない例である。この場合、分散安定性に特に劣る結果となった。
比較例2の水性顔料分散物は、分散剤が、一般式(III)又は(IV)で表される基を含まない例である。この場合、分散安定性に特に劣る結果となった。
比較例3の水性顔料分散物は、分散剤中の一般式(I)で表される構成単位の含有量が本発明で規定するよりも多い例である。この場合、分散速度に特に劣る結果となった。
比較例4の水性顔料分散物は、分散剤中の一般式(I)で表されるベンゼン環を有する構成単位の含有量が本発明で規定するよりも少ない例である。この場合、分散安定性に特に劣る結果となった。
これに対し実施例1〜15の水性顔料分散物は、顔料の粒径及び分散物の粘度がいずれも小さく分散性に優れ、且つ、分散安定性にも優れていた。すなわち、本発明に用いる特定構造の分散剤を用いることにより、通常の方法で容易に、上記優れた特性の分散物を得ることができた。さらに、実施例15は分散剤が架橋しているため、分散安定性に特に優れていた。これらの結果から、本発明で規定する分散剤を用いることにより、高濃度の顔料が安定的に分散した水性顔料分散物が得られることがわかる。
[実施例16] 水性インク組成物の調製
イエロー顔料分散液YD−1を用い、水系媒体として、水、サンニックスGP250(三洋化成工業社製)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業社製)を用い、下記のインク組成になるようにインクを調液した。調液後、5μmフィルター(商品名:オムニポア、ミリポア社製)で粗大粒子を除去し、水性インク組成物としてイエローインクYI−01を調製した。
〈イエローインクYI−01のインク組成〉
・イエロー顔料 大日精化製TRY13(PY−74) … 4 質量%
・ポリマー分散剤 … 0.9 質量%
・サンニックスGP250 … 10 質量%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 5 質量%
・オルフィンE1010(日信化学製) … 1 質量%
・イオン交換水 … 合計が100質量%となるように添加
上記の如く調製したイエローインク(以下、単に「インク」ということがある)について、以下に示す方法でインクの打滴安定性試験を行った。
(打滴安定性)
得られたインクを、リコー社製GELJETG717のカートリッジに詰め替え、特菱両面アートN(三菱製紙社製)上に、リコー社製GELJETG717プリンターヘッドを用いて、解像度1200×600dpi、インク打滴量12pLになるように打滴した。連続して打滴して5時間後の状態を観察することで、打滴安定性を評価した。
イエローインクYI−01の打滴安定性は良好であり、吐出不良が見られなかった。このことから、本発明の水性顔料分散物は水性インクの原料として好適に使用できることが分かる。

Claims (7)

  1. 水性媒体と、顔料と、高分子分散剤とを含有する水性顔料分散物であって、
    前記高分子分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位とイオン性基を有する構成単位とを少なくとも有するポリマーであり、且つ、下記一般式(III)又は(IV)で表される基を有し、
    前記高分子分散剤中、上記一般式(I)で表される構成単位の含有量が高分子分散剤の質量に対し3〜20質量%である、水性顔料分散物。
    Figure 2016160331
    式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
    は−C(=O)O−、−OC(=O)−、−C(=O)NR−、又はフェニレン基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
    は単結合であるか、又は炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、−C(=O)−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、及び−SO−から選ばれる2価の連結基もしくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、−C(=O)−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、及び−SO−から選ばれる2種以上の基を組み合わせてなる2価の連結基を表す。Rは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基を表す。
    Aは炭素数8以上の、多環構造を有する基を表す。
    Figure 2016160331
    はアルキル基又はアリール基を表す。Rはアルキレン基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。
  2. 前記高分子分散剤が前記顔料表面において架橋構造を形成している請求項1に記載の水性顔料分散物。
  3. 前記高分子分散剤が、前記一般式(III)で表される基及び前記一般式(IV)で表される基を総量で1〜8質量%含有する請求項1又は2に記載の水性顔料分散物。
  4. 前記高分子分散剤の重量平均分子量が5000〜15000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散物。
  5. 前記高分子分散剤中、前記一般式(I)で表される構成単位の含有量xの、前記一般式(III)で表される基及び前記一般式(IV)で表される基の総含有量yに対する比が、質量比で、1≦x/y≦7.5を満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性顔料分散物を用いた水性インク組成物。
  7. 前記水性インク組成物がインクジェット記録用である、請求項6に記載の水性インク組成物。
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