JP5669476B2 - 水系着色剤分散物、水系着色剤分散物の製造方法、及びインクジェット記録用水系インク - Google Patents
水系着色剤分散物、水系着色剤分散物の製造方法、及びインクジェット記録用水系インク Download PDFInfo
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Description
このような事情から、従来より各種の添加剤、例えば水性用顔料分散樹脂や界面活性剤の使用が検討されてきたが、上記のような経時安定性や保存時の沈降安定性を満足し、既存の高品質な油性インクに匹敵するような水性インクは得られていない。
最近では、主鎖と直接結合していないベンゼン環を有する酸価が10〜85mgKOH/gのポリマーを含む水系着色分散物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、特許文献1〜3のいずれの水分散物においても、保存時に沈降が生じることがあり、安定に保存することが困難である場合があった。
本発明は、着色剤が微細に分散され、経時安定性に優れ、保存時に沈降が少ない水系着色剤分散物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、
本発明は、吐出安定性および吐出性に優れたインクジェット記録用水系インクを提供することを目的とする。
<3> 前記アルキルエステルに由来する疎水性構造単位は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸エチルより成る群から選ばれる少なくとも一つに由来する疎水性構造単位であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の水系着色剤分散物。
<4> 前記ポリマー(B)における親水性構造単位(b)の含有量が、ポリマー(B)の全質量に対して16質量%以上20質量%以下であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の水系着色剤分散物。
<5> 前記ポリマー(B)の酸価が104.3mgKOH/g以上125mgKOH/g以下であることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の水系着色剤分散物。
<6> 前記ポリマー(B)の重量平均分子量(MW)が3万以上10万以下であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の水系着色剤分散物。
<8> 前記着色剤(A)がアゾ骨格又はキナクリドン骨格をもつ顔料である前記<7>に記載の水系着色剤分散物。
<9> 前記着色剤(A)がC.I.ピグメントレッド122およびC.I.ピグメントイエロー74の少なくとも一方である前記<8>に記載の水系着色剤分散物。
<10> 着色剤(A)、ポリマー(B)、及び有機溶媒(C)の混合物(II)に、塩基性物質を含む水を主成分とする溶液(III)を加えた後、前記有機溶媒(C)を除いて水系着色剤分散物を製造する、前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の水系着色剤分散物の製造方法。
<11> 前記<1>〜前記<9>のいずれか1つに記載の水系着色剤分散物を含むインクジェット記録用水系インク。
本発明によれば、吐出安定性および吐出性に優れたインクジェット記録用水系インクを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における着色剤(A)について詳細に説明する。
本発明における着色剤としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である着色剤であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、更に、耐光性の観点から顔料であることがより好ましい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
本発明におけるポリマー(B)について詳細に説明する。
前記ポリマー(B)は、主鎖を形成する原子と連結基を介して結合する芳香環を含み、前記芳香環の含有量がポリマー全質量に対して10質量%以上21質量%未満である疎水性構造単位(a)と、ポリマー全質量に対して12質量%以上20質量%以下の親水性構造単位(b)とを有し、酸価が85mgKOH/g以上である共重合体であり、前記着色剤(A)の分散剤として用いられる。
このポリマー(B)の構造は、疎水性構造単位と、親水性構造単位とからなる。
本発明におけるポリマー(B)は、疎水性の構造単位として、少なくとも、該ポリマーの主鎖を形成する原子と連結基を介して結合する芳香環を含み、芳香環をポリマー(B)の全質量に対して10質量%以上21質量%未満の範囲で有する疎水性構造単位(a)〔以下、単に「疎水性構造単位(a)」ともいう。〕を少なくとも含ませて構成されたものであり、必要に応じて、さらに他の疎水性構造単位を設けて構成されてもよい。
疎水性構造単位(a)は、芳香環を、ポリマー(B)の主鎖を形成する原子との間に連結基を介して有している。ここでいう「連結基を介して」とは、芳香環とポリマーの主鎖構造を形成する原子とが、連結基を介して結合した構造となっていることを表す。このような形態を有することで、ポリマー(B)中の親水性構造単位と疎水性の芳香環との間の適切な距離が維持されるため、ポリマー(B)と着色剤(A)とに相互作用が生じやすくなり、強固に吸着し、結果分散性が向上する。
ここで、前記フェニレン基に含まれる置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられるが、特に限定されない。
対応するモノマーとしては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート並びに、オリゴ(繰り返し単位数が2〜6程度)エチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート類及びメタクリレート類から選択される1種以上が挙げられる。これらのうち、好ましいのは、2−フェノキシエチルアクリレートまたは2−フェノキシエチルメタクリレートであり、最も好ましいのは2−フェノキシエチルメタクリレートである。
ここで「由来する構造単位」とは、化合物がこれに隣接する繰り返し単位と結合することで形成されるポリマー中の成分を意味する。
前記疎水性構造単位(c)のモノマーは、重合体を形成しうる官能基と疎水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知の如何なるモノマー類をも用いることができる。疎水性構造単位(c)を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類((メタ)アクレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
前記ポリマー(B)は主として着色剤との親和性を示す疎水性構造単位(a)と、主として水性媒体との親和性を示す親水性構造単位(b)という、いわば相反する性質の構造単位を含む。疎水性構造単位(c)は疎水性構造単位(a)と親水性構造単位(b)の中間的な親和性特性を有する。疎水性構造単位(c)、特に(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位を含むことで、疎水性構造単位(a)と親水性構造単位(b)は互いに干渉することなくそれぞれの機能をより有効に発揮する。その結果、水溶性着色剤分散液の分散特性はさらに向上する。
前記ビニルモノマー類の例として、(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(n−又はイソ−)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、イソ−又はターシャリー−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(n−又はイソ−)オクチル(メタ)アクリレート、(n−又はイソ−)デシル(メタ)アクリレート、(n−又はイソ−)ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのうち、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルが好ましく、炭素数1〜4のアルキルエステルがより好ましく、炭素数1のアルキルエステルが更に好ましい。
本発明におけるポリマー(B)を構成する親水性構造単位(b)について説明する。
該親水性構造単位(b)は、ポリマー(B)の全質量に対して、12質量%以上20質量%以下の範囲で含有され、13質量%以上19質量%以下がより好ましい。親水性構造単位(b)の含有量が12質量%未満であると、着色剤、特にイエロー色の着色剤(特に顔料)における沈降性に劣る。また、親水性構造単位(b)の含有量が20質量%を超えると、分散性の点で好ましくない。
前記ポリマー(B)の親水性構造単位(b)は、アニオン性基を含有する親水性構造単位(b’)〔以下、単に「親水性構造単位(b’)」ともいう。〕を含んでもよい。
アニオン性基を含有する親水性構造単位(b’)は、アニオン性基含有モノマーを重合することにより得ることができるが、アニオン性基を有さないポリマーの重合後、該ポリマー鎖にアニオン性基を導入することで形成してもよい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が挙げられ、カルボキシル基がより好ましい。
本発明に用いることができるアニオン性基含有モノマーの例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
。
カルボン酸等のアニオン性基を含有する場合の前記ポリマー(B)の酸価が85mgKOH/g以上の場合には、解離したカルボキシル基による分散物の荷電反発、経時での沈降、および保存安定性の向上の点で好ましい性質が得られる。また、140mgKOH/g以下の場合では、ポリマーの親水性−疎水性バランス、着色剤に吸着しないポリマーの水性媒体中への溶出の抑制、分散の十分性、分散物の粒径を小さくする点で好ましい性質が得られる。
また、本発明におけるポリマー(B)は、保存安定性(保存時の分散粒子の沈降抑制)の観点から、水可溶性であることが望ましい。ここでいう水可溶性とは水酸化ナトリウムで100%中和させた後のポリマー(B)の溶解量(25℃)が、水100gに対して1g以上であること意味し、好ましく水100gに対して5g以上、さらに好ましくは水100gに対して10g以上である。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好となりやすく、また立体効果により着色剤への吸着に時間がかからないように成りやすい点で好ましい。また、前記分子量を6万以下とすることでより水性着色剤分散液の粘度を高くしすぎず、取り扱いが容易となり、3万以上にすることで、水性着色剤分散液の経時安定性がより良くなる。
また、本発明で用いるポリマー(B)の分子量分布(重量平均分子量値/数平均分子量値で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることにより、顔料の分散時間の短縮、及び分散物の経時安定性の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、THFを溶離液として示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表したポリスチレン換算値である。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られたポリマーは再沈殿などの精製を行なってもよい。
本発明の水系着色剤分散物における水性液媒体としては、水を含むものであるが、水溶性有機溶媒を更に含むことができる。前記水溶性有機溶媒は乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で使用される。
ノズルのインク噴射口において水系着色剤分散物を含む該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で乾燥防止剤が用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。
また、前記インクジェット用インクを紙によりよく浸透させる目的で浸透促進剤として、水溶性有機溶媒が好適に使用される。
ここで、水溶性有機溶媒における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。
上記に、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ヒアルロン酸類;尿素類等のいわゆる固体湿潤剤等を添加してもよい。
本発明に使用される水の添加量は、特に制限はないが、水性液媒体全体に対して、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以上70質量%以下である。
本発明の水系着色剤分散物中の前記水性液媒体の含有量としては、乾燥防止、被着体への浸透性、粘度等の液物性の観点から、1〜70質量%が好ましく、2〜60質量%がより好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。
水性液媒体の含有量を上記範囲とすることにより、水系着色剤分散物の乾燥速度、被着体への浸透性、粘度等の液物性を適切な状態に調整することができる。
本発明の水系着色剤分散物の製造方法は、着色剤(A)、ポリマー(B)、及び前記ポリマー(B)を溶解または分散しうる有機溶媒(C)の混合物(II)に、塩基性物質を含む水を主成分とする溶液(III)を添加(混合)した後(混合・水和工程)、前記有機溶媒(C)を除く(溶媒除去工程)ことを特徴とする。
本発明の水系着色剤分散物の製造方法によれば、前記着色剤が微細に分散され、経時安定性、保存安定性に優れた水系着色剤分散物を製造することができる。
工程(2):前記有機溶媒(C)を除去する工程
次に、塩基性物質を含み水を主成分とする溶液(III)、水、及び必要に応じて界面活性剤等を、前記混合物(II)に加えて混合、分散処理し、水中油型の水系着色剤分散物を得る。
中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水系着色剤分散物の液性が、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記ポリマー(B)(例えば、水不溶性ビニルポリマー)の望まれる中和度により、目標とするpHを決めることもできる。
また、これらの有機溶媒(C)は、単独で用いても複数併用してもよい。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C. Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用いて、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理を行なうことにより得ることができる。
前記着色剤の分散粒子のd95粒径は、動的光散乱法を用いて測定した値を採用する。d95粒径の測定は、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、得られた水系着色剤分散物のd95粒径を動的光散乱法により測定した。ここで、d95粒径とは、個数累積粒度分布において、小粒径側から累積95%となる粒径を表す。
本発明のインクジェット記録用水系インク(以下、適宜「インクジェットインク」ということがある。)は、前記本発明の水系着色剤分散物を用いてなることを特徴とする。
本発明のインクジェットインクは前記本発明の水系着色剤分散物をそのまま、或いは必要に応じて、更に、前記乾燥防止剤などのその他の添加剤を添加して、前記水性液媒体(I)で希釈して調製することができる。
樹脂の重量平均分子量は、1万以上20万以下が好ましく、より好ましくは3万以上10万以下である。
樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子の添加量は、インクジェットインクの全質量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは、30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂微粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
前記界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(高分子分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
該インクジェットインクにおけるpH調整は、前記水系着色剤分散物の項において記載した塩基性物質を用いて調製することができる。
下記スキームに従って合成した。
得られたポリマーの組成は1H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は40,300であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマー(以下、「分散剤ポリマー」ともいう。)の酸価を求めたところ、88.0mgKOH/gであった。
前記合成例1の合成方法に準じて、本実施例で使用する他のポリマーB−2〜B−34、および比較化合物(C−1)〜(C−4)についても同様に合成した。分子量の調整は、開始剤であるジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートの添加量を、酸価の調整はモノマーの仕込み比を、それぞれ調整することで行なった。他のポリマー及び比較化合物の構造については、下記の表1に示す。
前記合成例1の合成方法に準じて、モノマーをフェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート35g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート5gとし、比較化合物(D−3)を同様に合成した。分子量の調整は、開始剤であるジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートの添加量を調整することで行なった。得られたポリマーのMwは40,100、酸価は、65.2mgKOH/gであった。
(顔料含有樹脂粒子の分散物(顔料分散物(E−4))の調製)
ピグメントブルー15:3(PB15:3、大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)10質量部と、前記ポリマーB−2を5質量部と、メチルエチルケトン42質量部とを混合し、これに1規定のNaOH水溶液6.2質量部及びイオン交換水87.2質量部をさらに混合し、ビーズミルで0.1mmφジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の顔料含有樹脂粒子の分散物を得た。さらに、遠心分離機(05P−21、日立製作所社製)により5000rpmで30分間、遠心分離させた後、顔料濃度が15質量%になるようにイオン交換水を添加して顔料分散液を調製し、2.5μmのメンブレンフィルター(東洋濾紙株式会社製)を用いて加圧ろ過した。その後、顔料濃度が4質量%になるようにイオン交換水を添加し、本発明の水系着色剤分散物として顔料分散物(E−4)を得た。
前記顔料分散物(E−4)の調製において、ポリマーB−2及びピグメントブルー15:3に代えて、下記表1に記載された成分に変更したこと以外は、すべて前記顔料分散物(E−4)の調製と同様にして、本発明の水系着色剤分散物として顔料分散物(E−1)〜(E−3)及び(E−5)〜(E−35)をそれぞれ調製した。
・C.I.Pigment Red 122(PR122、BASFジャパン(株)製、商品名:CROMOPHTAL Jet Magenta DMQ)
・C.I.Pigment Yellow 74(PY74、BASFジャパン(株)製、商品名:Irgalite Yellow GS)
・カーボンブラック(CB、degussa社製、商品名:NIPEX180−IQ)
上記で得られた顔料分散物(E−4)を用い、下記の組成より成る顔料分散物含有組成物を調製し、該組成物に遠心分離(10000〜20000rpmで30分〜2時間)を行ない、水性インク(インクジェット記録用水系インク)(F−4)を調製した。
<組成>
前記顔料分散物(E−4) ・・・40質量部
グリセリン ・・・7質量部
ジエチレングリコール ・・・9質量部
トリエタノールアミン ・・・1質量部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製)・・・1質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・9質量部
イオン交換水 ・・・34質量部
東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、前記水性インク(F−4)のpHを測定したところ、pHは8.6であった。
前記顔料分散物(E−4)の調製において、ポリマーB−2を、下記表1に記載のポリマーC−1、C−2、C−3、もしくはC−4、特許第4109713号の段落番号[0043]に記載の共重合体A(以下、D−1と称する。)、又は特開2006−176623号公報の段落番号[0052]の「製造例1」に記載の共重合体(以下、D−2と称する。)、又は比較化合物D−3に変更したこと以外は、前記顔料分散物(E−4)の調製と同様にして、顔料分散物(E−36)〜(E−42)をそれぞれ調製した。
前記水性インク(F−4)の調製において、顔料分散物(E−4)を用いる代わりに、前記顔料分散物(E−36)〜(E−42)を用いたこと以外は、すべて前記水性インク(F−4)の調製と同様にして、水性インク(F−36)〜(F−42)を調製した。
(1)d95粒径の測定
ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、得られた顔料分散物のd95粒径を動的光散乱法により測定した。ここで、d95粒径とは、個数累積粒度分布において、小粒径側から累積95%となる粒径を表す。測定結果を下記表2に示す。
<測定条件>
分散物10μlに対しイオン交換水10mlを加え、測定用溶液を調製し、25℃で測定した。
得られた顔料分散物を密閉状態で60℃、28日間放置した後、顔料粒子の凝集及び増粘について、d95粒径、粘度の測定を行ない、下記の評価基準で評価した。評価結果を下記表2に示す。
<評価基準>
◎:顔料粒子のd95粒径・粘度の変化は認められなかった。
○:顔料粒子のd95粒径・粘度の変化は僅かに認められたが実用上問題はなかった。
△:顔料粒子のd95粒径・粘度の変化が多少認められたが実用上問題はなかった。
×:顔料粒子のd95粒径・粘度の変化は認められ、実用上問題となった。
<d95粒径の測定条件>
d95粒径の測定は、上記(1)と同様に行ない、また、粘度の測定は下記の手順により行なった。
<粘度の測定条件>
顔料分散物の粘度は、TV−22型粘度計(東機産業(株)社製)を用い、25℃で測定を行なった。
得られた顔料分散物13mlをビュレット中、密閉状態にて23℃、7日間放置した後、上層3ml、下層10mlそれぞれについて、5μm以上の粗大粒子数及び分光吸収の測定を行なった。
5μm以上の粗大粒子数は、フロー式粒子像分析装置FPIA3000(シスメックス(株)製)にて測定した。
また、分光吸収の測定は、上記上層及び下層の液を更に1万倍に希釈したサンプルを使用して、SHIMADZU UV−2450 紫外・可視分光光度計にて測定した。それぞれについて得られた結果は下記の評価基準で評価した。評価結果を下記表2に示す。
<評価基準>
◎:5μm以上粗大粒子がなく、上層と下層の分光吸収の差が小さく、顔料分散物の沈降がみられなかった。
○:顔料分散物の沈降は僅かに認められたが実用上問題はなかった。
×:顔料分散物の沈降は認められ、実用上問題となった
600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いて、これに水性インク(F−1)〜(F−42)を充填して印字し、下記の評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
上記インクジェット記録装置を用いた印刷の際に、印字開始から印字終了までにインクの飛行曲がり、ミストが発生するか印刷物を目視観察して評価し、下記基準に基づき判定した。
<評価基準>
○・・・飛行曲がり及びミストは発生するが、実用上問題ない程度に頻度が低い。
△・・・頻繁ではないが、上記「○」の評価を与えたものに比して発生する頻度が高く、高品位な画質を求める場合には実用上問題となる可能性がある。
×・・・頻繁に発生し実用上問題がある。
インクジェット記録装置を用いて印刷を行なった後、ヘッド部に覆い等を被せず空気中に露出した状態で、温度25℃、65%RHで、3週間放置し、その後再度吐出を行なった際の吐出状態を観察し、下記基準に基づき評価した。
<評価基準>
○・・・所定のメンテナンスを施すことで再度吐出が可能となる。
△・・・所定のメンテナンスを3回繰り返すことで再度吐出が可能となる。
×・・・所定のメンテナンスを行なった限りでは、吐出できない。
ここで、前記「所定のメンテナンス」とは、15Paの圧力を印加してインクを吐出することで、ヘッドの詰まりを解消する操作をいう。
また、本発明の水性インクは、吐出安定性、吐出回復性に優れていた。
一方、比較の顔料分散物(E−36〜E−42)及び水性インク(F−36〜F−42)は、いずれかの評価項目において劣っていた。
Claims (11)
- 着色剤(A)と、
フェノキシエチルアクリレート及びフェノキシエチルメタクリレートの少なくとも一方に由来する構造単位を含み、ポリマーに占める前記フェノキシエチルアクリレートに由来する構造単位及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位の合計の含率が40質量%以上53質量%以下であり、前記フェノキシエチルアクリレートに由来する構造単位及び前記フェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位に含まれる芳香環の合計含有量がポリマー全質量に対して10質量%以上21質量%未満である疎水性構造単位(a)、カルボキシル基、リン酸基、及びスルホン酸基より選ばれる1種以上のアニオン性基を有し、ポリマー全質量に対して12質量%以上20質量%以下である親水性構造単位(b)、及びアクリル酸又はメタクリル酸の、炭素数1〜6のアルキルエステルに由来する疎水性構造単位(c)を有し、酸価が85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の共重合体であるポリマー(B)と、
水性液媒体(I)と、
を含む水系着色剤分散物。 - 前記親水性構造単位(b)が、アクリル酸およびメタクリル酸に由来する構造単位の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の水系着色剤分散物。
- 前記アルキルエステルに由来する疎水性構造単位は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びメタクリル酸エチルより成る群から選ばれる少なくとも一つに由来する疎水性構造単位であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水系着色剤分散物。
- 前記ポリマー(B)における親水性構造単位(b)の含有量が、ポリマー(B)の全質量に対して16質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水系着色剤分散物。
- 前記ポリマー(B)の酸価が104.3mgKOH/g以上125mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水系着色剤分散物。
- 前記ポリマー(B)の重量平均分子量(MW)が3万以上10万以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の水系着色剤分散物。
- 前記着色剤(A)が顔料であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の水系着色剤分散物。
- 前記着色剤(A)がアゾ骨格又はキナクリドン骨格をもつ顔料である請求項7に記載の水系着色剤分散物。
- 前記着色剤(A)がC.I.ピグメントレッド122およびC.I.ピグメントイエロー74の少なくとも一方である請求項8に記載の水系着色剤分散物。
- 着色剤(A)、ポリマー(B)、及び有機溶媒(C)の混合物(II)に、塩基性物質を含む水を主成分とする溶液(III)を加えた後、前記有機溶媒(C)を除いて水系着色剤分散物を製造する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の水系着色剤分散物の製造方法。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の水系着色剤分散物を含むインクジェット記録用水系インク。
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