JP5247180B2 - インクジェット記録用水性インク及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
〔条件A:水不溶性樹脂とメチルエチルケトンと前記水不溶性樹脂のアニオン性の解離性基に対して等当量の水酸化ナトリウムと水とを、水不溶性樹脂及びメチルエチルケトンの合計質量が全質量の35質量%となるように混合したときに、水不溶性樹脂が析出することなくエマルジョンを形成し、かつ3時間静置した後、透明1相を形成あるいは2相に分離し、少なくとも水相は透明である。ここで、透明とは、厚み1cmとした水相の一方の側から入射した光が他方の側に透過して抜け出る光の量が入射光量の85%以上である場合をいう。〕
<3> 前記水不溶性樹脂は、重量平均分子量が3万以上である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インクである。
<5> 前記水不溶性樹脂は、酸価が50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インクである。
<6> 前記水溶性有機溶媒の含有割合が15質量%以上である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インクである。
<7> 前記水溶性有機溶媒が、グリセリン、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、及びグリセリンアルキルエーテル誘導体から選ばれる少なくとも1種である前記<6>に記載のインクジェット記録用水性インクである。
<8> 更に、界面活性剤の少なくとも1種を含む前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インクである。
、フェノキシエチルメタクリレートに由来の構造単位を40質量%以上70質量%未満、及び(メタ)アクリル酸の炭素数1以上4以下のアルキルエステルに由来の構成単位を20質量%以上60質量%以下を含み、下記条件Aを満たし、かつ105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が1g以下である水不溶性樹脂、有機溶媒、前記アニオン性の解離性基を中和する中和剤、顔料、及び水を混合して分散し、得られた分散物から前記有機溶媒を除去する工程を設けて、前記顔料の粒子表面が前記水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料粒子の分散物を調製し、得られた樹脂被覆顔料粒子の分散物と水と少なくとも1つのヒドロキシ基を含む水溶性有機溶媒とを用いて水性インクを調製するインクジェット記録用水性インクの製造方法である。
〔条件A:水不溶性樹脂とメチルエチルケトンと前記水不溶性樹脂のアニオン性の解離性基に対して等当量の水酸化ナトリウムと水とを、水不溶性樹脂及び有機溶媒の合計質量が全質量の35質量%となるように混合したときに、水不溶性樹脂が析出することなくエマルジョンを形成し、かつ3時間静置した後、透明1相を形成あるいは2相に分離し、少なくとも水相が透明である。ここで、透明とは、厚み1cmとした水相の一方の側から入射した光が他方の側に透過して抜け出る光の量が入射光量の85%以上である場合をいう。〕
−樹脂被覆顔料粒子−
本発明のインクジェット記録用水性インクは、塩生成基、及び主鎖をなす原子に連結基を介して結合する芳香環を有するメタクリレートに由来の構造単位を有し、以下に示す条件Aを満たす水不溶性樹脂(特定水不溶性樹脂)で被覆された樹脂被覆顔料粒子の少なくとも1種を含有する。但し、本発明においては、特定水不溶性樹脂が、アニオン性の解離性基を有するモノマーに由来の構成単位を7質量%以上15質量%、フェノキシエチルメタクリレートに由来の構成単位を40質量%以上70質量%未満、及び(メタ)アクリル酸の炭素数1以上4以下のアルキルエステルに由来の構成単位を20質量%以上60質量%以下を含み、下記条件Aを満たし、かつ105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が1g以下である水不溶性樹脂である場合に限られる。
本発明における樹脂被覆顔料粒子は、必ずしも顔料表面の全体が本発明における特定水不溶性樹脂で被覆されている必要はなく、場合により顔料表面の少なくとも一部が被覆された状態であってもよい。
本発明における特定水不溶性樹脂は、塩生成基と、主鎖をなす原子に連結基を介して結合する芳香環を有するメタクリレートに由来の構造単位(以下、「メタクリレート由来の特定構造単位」ともいう。)と、を少なくとも含み、下記の条件Aを満たす。
*条件A:特定水不溶性樹脂と有機溶媒と前記塩生成基に対して1当量の中和剤(例えば、塩生成基が、アニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)と水とを、特定水不溶性樹脂及び有機溶媒の合計質量が全質量の35質量%となるように混合したときに、特定水不溶性樹脂が析出することなくエマルジョンを形成し、かつ3時間静置した後、透明1相を形成あるいは2相に分離し、少なくとも水相が透明となる。
エマルジョンとは、水中に特定水不溶性ポリマーが液体状態で分散されている乳化状態をいい、水相が「透明」とは厚み1cmとした水相の一方の側から入射した光が他方の側に透過して抜け出る光の量が入射光量の85%以上である性質をいう。
塩生成基は、親水性基であり、乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基が好ましい。解離性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン残基、硝酸基、アミノ基、アンモニウム基などを挙げることができる。本発明においては、水性インクを構成した場合の分散安定性の観点から、塩生成基としてアニオン性の解離性基が好ましく、より好ましくはカルボキシル基である。
本発明の水不溶性樹脂は、疎水性構造単位として、「主鎖をなす原子に連結基を介して結合する芳香環を有するメタクリレートに由来の構造単位」(メタクリレート由来の特定構造単位)の少なくとも1つを有する。この構造単位では、芳香環が「主鎖をなす原子に連結基を介して結合」する形態を有することにより、芳香環がエステル基を含む連結基を介して特定水不溶性樹脂の主鎖に結合し、芳香環が主鎖に直接結合しないので、疎水性の芳香環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持されるため、水不溶性樹脂と顔料との間で相互作用が生じやすく、強固に吸着して分散性が向上する。
中でも、特に好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは2〜12)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜10)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CH2CH2O)n−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
Arで表される芳香環は、無置換でも置換されていてもよい。Arで表される芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、ヘテロ環が縮環した芳香環、又は2個以上連結したベンゼン環などが挙げられる。
前記「ヘテロ環が縮環した芳香環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。ヘテロ環が縮環した芳香環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
なお、Lにおける「*」印は、主鎖に連結する結合手を表す。nは、インクジェット記録用水性インクに含まれる樹脂被覆顔料粒子の特定水不溶性樹脂におけるエチレンオキシ鎖を平均した繰り返し数を表す。
親水性構造単位(a)には、親水性基含有のモノマーに由来するものであれば、特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものでも、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものでもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であっても、ノニオン性の親水性基であってもよい。
前記不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。前記不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。前記不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド、等が挙げられる。
親水性構造単位(a)は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
本発明における特定水不溶性樹脂は、上記の「主鎖をなす原子に連結基を介して結合する芳香環を有するメタクリレートに由来の構造単位」以外の他の疎水性構造単位(b)を更に含んでいてもよい。
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。中でも、ビニルアセテートが好ましい。
前記(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
なお、酸価とは、特定水不溶性樹脂の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、顔料における被覆膜としての機能又はインクの塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における特定水不溶性樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
具体的には、特定水不溶性樹脂は、モノマー混合物と必要に応じて有機溶媒及びラジカル重合開始剤とを含んだ混合物を、不活性ガス雰囲気下で共重合反応させることにより製造することができる。重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cm2であり、特に1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
次に、本発明における特定水不溶性樹脂で被覆される顔料について説明する。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、などが挙げられる。
前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
マゼンタインクの顔料として、C.I.ピグメント・レッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、48(Ca)、48(Mn)、48:2、48:3、48:4、49、49:1、50、51、52、52:2、53:1、53、55、57(Ca)、57:1、60、60:1、63:1、63:2、64、64:1、81、83、87、88、89、90、101(ベンガラ)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、163、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219、269等、及びC.I.ピグメント・バイオレット19が挙げられ、特にC.I.ピグメント・レッド122が好ましい。
また、シアンインクの顔料として、C.I.ピグメント・ブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、16、17:1、22、25、56、60、C.I.バットブルー4、60、63等が挙げられ、特にC.I.ピグメント・ブルー15:3が好ましい。
転相法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、上記の硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
b)酸析法
酸析法は、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が有するアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、マイクロカプセル化顔料を製造する方法である。
酸析法は、具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性又は酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が有するアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない、樹脂のゲル化を図る工程と、を含む方法がある。
工程(1):既述の本発明における特定水不溶性樹脂、有機溶媒、中和剤、顔料、及び水を含有する混合物を攪拌等により分散して分散物を得る工程
工程(2):前記分散物から前記有機溶媒を除去する工程
前記アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンが最も好ましい。
なお、より具体的には、特開平11−2096722号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
樹脂被覆顔料粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、少なくとも1つのヒドロキシ基を含む水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有する。水溶性有機溶媒は、乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤の目的で用いられる。乾燥防止剤としては、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する目的で用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進剤としては、紙へのインク浸透性を高める目的で用いられる。
R−(A)n−OH ・・・一般式(II)
〔R:グリセリンに由来する基、A:エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基、n=7〜55〕
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
少なくとも1つのヒドロキシ基を含む水溶性有機溶媒のインクジェット記録用水性インク中における含有量としては、15質量%以上が好ましく、より好ましくは15〜40質量%の範囲である。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、界面活性剤の少なくとも一種を用いて構成されるのが好ましい。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いられ、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、ベタイン系の界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、上記の成分に加え、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の他の成分を含有してもよい。
前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
pH調整剤としては、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
本発明のインクジェット記録用水性インクの表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、水性インクを25℃の条件下で測定されるものである。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、水性インクを20℃の条件下で測定されるものである。
また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインクや、いわゆる印刷分野における特色のインク等を用いることができる。
上記の各色調のインクは、着色剤として用いる顔料の色相を所望により変更することにより調製できる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸12g、及びエチルメタクリレート38gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、フェノキシエチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[モル比]=50/38/12)共重合体(樹脂分散剤P−1)96.3gを得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成は、1H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は48500であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、78.24mgKOH/gであった。
得られた樹脂分散剤P−1を5.36gと、メチルエチルケトン(有機溶媒)47.14gとを混合した後、これに、水酸化ナトリウム0.30g(樹脂分散剤P−1中のカルボキシル基に対して1当量)を水97.20gに溶解させた水溶液を加え、撹拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)して、樹脂分散剤P−1及びメチルエチルケトン(有機溶媒)の合計量が全質量の35質量%となるようにした。このとき、樹脂分散剤P−1が析出することなくエマルジョンを形成し、その後3時間静置した後、透明1相が形成されているか、あるいは2相に分離していて、水相が透明であるかを目視により観察して評価した。水相の透明性は、幅1cmの石英セルに水相を入れ、分光光度計(日本分光(株)製、V−570型分光光度計)で400nm〜800nmの透過率を測定し、平均透過率が85%以上の場合を透明であるとした。
評価は、混合時、白濁相を生じず、静置後に透明1相又は2相を生じ水相が透明であった場合を「A」とし、混合時、水相が白濁相となった場合を「B」として、下記表1に示す。
前記樹脂分散剤P−1の合成において、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸12g、及びエチルメタクリレート38gをそれぞれ対応するモノマーの種類及び比率になるように下記表1に示すように変更し、前記樹脂分散剤P−1の合成とほぼ同様の方法により、樹脂分散剤P−2〜P−10を合成した。また、樹脂分散剤P−1における場合と同様に混合テストを試み、評価結果を下記表1に示す。
−樹脂被覆顔料粒子の分散物の調製−
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、フェノキシエチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(樹脂分散剤P−1)5部と、メチルエチルケトン42部と、1規定 NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルで0.1mmφジルコニアビーズを使用して2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
次に、得られた樹脂被覆顔料粒子の分散物を用い、下記の組成の成分を混合して水性インクを調製した。
・前記樹脂被覆顔料粒子の分散物 ・・・37.2部
・サンニックスGP250(三洋化成工業(株)製) ・・・10部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・5部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1部
・イオン交換水 ・・・46.8部
得られた水性インクについて、下記の評価を行なった。評価結果は下記表1に示す。
<1.体積平均粒子径>
ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法により、得られた水性インクの体積平均粒子径を測定した。このとき、測定は、水性インク10μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプルを調製し、25℃で測定した。
得られた水性インクの調製直後の粒子径a1を上記の「1.体積平均粒子径」と同様の方法により測定し、粘度b1及び粗大粒子数を下記の方法で測定した後、この水性インクを60℃の恒温槽中で14日間保存し、保存後の粒子径a2及び粘度b2を同様の方法で測定した。さらに、保存後のインク中に含まれる5μm以上の粗大粒子の個数をカウントした。そして、得られた粒子径及び粘度から、保存前後での粒径変化(|a2−a1|;μm)、粘度変化(|b2−b1|/b1×100;%)を求め、下記の評価基準にしたがって評価した。なお、「| |」は絶対値を表す。
〜粘度の測定〜
得られた水性インクをVISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃の条件下で測定した。
〜粗大粒子数の測定〜
フロー式粒子像分析装置FPIA3000(シスメックス(株)製)を用い、水性インク中の5μm以上の粗大粒子数を測定した。このとき、測定は、水性インク0.2mlに1.8mlのイオン交換水を加えて測定用サンプルを調製し、25℃で測定した。得られた結果からインク1μl中の粗大粒子個数を算出した。
〜評価基準〜
A:粒径変化が10nm以内であり、粘度変化が10%以内であり、5μm以上の粗大粒子数は50個以下であった。
B:粒径変化が10nmを超えるか、粘度変化が10%を超えるか、あるいは5μm以上の粗大粒子数が50個以上であるかのいずれかを満たしていた。
C:粒径変化が10nmを超えるか、粘度変化が10%を超えるか、あるいは5μm以上の粗大粒子数が50個以上であるかの2つ以上を満たしていた。
実施例1において、樹脂分散剤P−1を下記表1に示す樹脂分散剤に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、水性インクを調製し、同様の評価を行なった。評価結果は下記表1に示す。
Claims (9)
- アニオン性の解離性基を有するモノマーに由来の構成単位を7質量%以上15質量%以下、フェノキシエチルメタクリレートに由来の構成単位を40質量%以上70質量%未満、及び(メタ)アクリル酸の炭素数1以上4以下のアルキルエステルに由来の構成単位を20質量%以上60質量%以下を含み、下記条件Aを満たし、かつ105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が1g以下である水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料粒子と、水と、少なくとも1つのヒドロキシ基を含む水溶性有機溶媒と、を含有するインクジェット記録用水性インク。
〔条件A:水不溶性樹脂とメチルエチルケトンと前記水不溶性樹脂のアニオン性の解離性基に対して等当量の水酸化ナトリウムと水とを、水不溶性樹脂及びメチルエチルケトンの合計質量が全質量の35質量%となるように混合したときに、水不溶性樹脂が析出することなくエマルジョンを形成し、かつ3時間静置した後、透明1相を形成あるいは2相に分離し、少なくとも水相は透明である。ここで、透明とは、厚み1cmとした水相の一方の側から入射した光が他方の側に透過して抜け出る光の量が入射光量の85%以上である場合をいう。〕 - 前記樹脂被覆顔料粒子が、前記水不溶性樹脂、有機溶媒、前記水不溶性樹脂のアニオン性の解離性基を中和する中和剤、顔料、及び水を混合して分散し、得られた分散物から前記有機溶媒を除去することにより調製されたものである請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記水不溶性樹脂は、重量平均分子量が3万以上である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記水不溶性樹脂は、酸価が30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記水不溶性樹脂は、酸価が50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記水溶性有機溶媒の含有割合が15質量%以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク。
- 前記水溶性有機溶媒が、グリセリン、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、及びグリセリンアルキルエーテル誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載のインクジェット記録用水性インク。
- 更に、界面活性剤の少なくとも1種を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク。
- アニオン性の解離性基を有するモノマーに由来の構成単位を7質量%以上15質量%以下、フェノキシエチルメタクリレートに由来の構成単位を40質量%以上70質量%未満、及び(メタ)アクリル酸の炭素数1以上4以下のアルキルエステルに由来の構成単位を20質量%以上60質量%以下を含み、下記条件Aを満たし、かつ105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が1g以下である水不溶性樹脂、有機溶媒、前記水不溶性樹脂のアニオン性の解離性基を中和する中和剤、顔料、及び水を混合して分散し、得られた分散物から前記有機溶媒を除去する工程を設けて、前記顔料の粒子表面が前記水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料粒子の分散物を調製し、得られた樹脂被覆顔料粒子の分散物と水と少なくとも1つのヒドロキシ基を含む水溶性有機溶媒とを用いて水性インクを調製するインクジェット記録用水性インクの製造方法。
〔条件A:水不溶性樹脂とメチルエチルケトンと前記水不溶性樹脂のアニオン性の解離性基に対して等当量の水酸化ナトリウムと水とを、水不溶性樹脂及びメチルエチルケトンの合計質量が全質量の35質量%となるように混合したときに、水不溶性樹脂が析出することなくエマルジョンを形成し、かつ3時間静置した後、透明1相を形成あるいは2相に分離し、少なくとも水相が透明である。ここで、透明とは、厚み1cmとした水相の一方の側から入射した光が他方の側に透過して抜け出る光の量が入射光量の85%以上である場合をいう。〕
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