まず、本発明のシリカ粒子について説明する。本発明のシリカ粒子は、アルコールが結合したシリカ粒子であって、シリカ粒子のシロキサン結合率が60%以上であり、アルコールの結合量がシリカ粒子1g当たり0.001mmol以上であることを特徴の一つとする。
本発明のシリカ粒子は、ケイ素原子が主に酸素原子との結合を介して三次元構造を構成してなるケイ素の含酸素化合物であることが好ましい。
本発明のシリカ粒子のシロキサン結合率は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、68%以上がさらに好ましく、70%以上がさらにより好ましく、72%以上が最も好ましい。本発明のシリカ粒子のシロキサン結合率は、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、76%以下がさらに好ましく、74%以下が最も好ましい。シロキサン結合率とは、シリカ粒子に含まれるケイ素原子のうち、Si−O−Siのように酸素原子との結合を介して三次元構造を形成しているケイ素原子の割合を意味する。シロキサン結合率が高いほど、水酸基やアルコキシ基等が結合しているケイ素元素がシリカ粒子に含まれる割合が少なくなる。シロキサン結合率が60%以上であれば、シリカ粒子への水分子の吸着量または結合量が低く抑えられ、本発明のシリカ粒子を用いて樹脂組成物を製造した場合、得られる樹脂組成物は透明性や耐久性が優れたものとなる。シロキサン結合率が90%以下であれば、シリカ粒子の表面硬度が過度に高くなるのが抑えられ、シリカ粒子が周囲の材料に損傷を与えにくくなる。
シリカ粒子のシロキサン結合率は、29Si−固体NMR測定により求められ、その算出方法は次の通りである。シリカ粒子を、固体NMR装置(BRUKER社製、AVANCE400)により、ケミカルシフト(δ)−130ppm〜−80ppmの範囲で測定する。ケミカルシフト(δ)−130ppm〜−80ppmの範囲の全シグナルの面積を100%としたときの、ケミカルシフト(δ)−111.4ppmにピークを有するシグナルの面積の割合を、シロキサン結合率とする。
本発明のシリカ粒子分散体(シリカ粒子溶媒分散体)に含まれるシリカ粒子の29Si−固体NMR測定を行う場合は、前もってシリカ粒子を分離する。分離方法は次の通りである。シリカ粒子分散体を遠心分離機により、遠心力10万G以上で1時間遠心分離して、沈殿物を取り出す。前記沈殿物を80℃にて10時間、50Torr(6.7kPa)の条件で真空乾燥して、29Si−固体NMR測定に供するシリカ粒子を得る。
本発明において、アルコールが結合したシリカ粒子の形態としては、例えば、アルコールがシリカ粒子に吸着している形態、アルコールとシリカ粒子が共有結合している形態等が示される。本発明においては、アルコールとシリカ粒子が共有結合している形態が好ましく、アルコールの水酸基が結合した炭素原子とシリカ粒子のケイ素原子とが酸素原子を介して結合している形態がより好ましい。
本発明のシリカ粒子は、アルコールが結合することにより、樹脂との親和性が向上することが好ましい。また、本発明のシリカ粒子は、アルコールが結合することにより、樹脂への分散性が向上することが好ましい。本発明のシリカ粒子は、樹脂との親和性や樹脂への分散性が向上することにより、本発明のシリカ粒子を用いて樹脂組成物を製造した場合、樹脂組成物の使用目的に応じて、耐熱性の向上、機械的強度の向上、熱膨張係数の低減、光拡散特性の向上、アンチブロッキング性の向上、滑り性の向上等の様々な特性を樹脂組成物に付与しやすくなる。
本発明のシリカ粒子に結合しているアルコールは特に限定されるものではなく、1価アルコールでもよく、多価アルコールでもよい。また、本発明のシリカ粒子は、1種類のアルコールのみが結合していてもよく、複数種類のアルコールが結合していてもよい。
前記1価アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−メチル−1−プロピルアルコール、2−メチル−2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等の脂肪族アルコール;ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。これらの1価アルコールは、1種類のみがシリカ粒子に結合していてもよく、2種類以上がシリカ粒子に結合していてもよい。これらの中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−メチル−1−プロピルアルコール、2−メチル−2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコールが好ましく、特に好ましいのは、メチルアルコール、エチルアルコールである。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリコール;グリセリン;グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、ラクトース等の糖;イノシトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種類のみがシリカ粒子に結合していてもよく、2種類以上がシリカ粒子に結合していてもよい。これらの中でも、グリコールが好ましい。
前記グリコールとは、2個の水酸基が2個の異なる炭素原子に結合している炭素、酸素、水素からなる化合物を意味する。前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ピナコール等の脂肪族グリコール;ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール等のアリール基を有するグリコール;シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の脂環式グリコールが挙げられる。
前記例示したグリコールは、シリカ粒子に求められる物性に応じて、使い分けることができる。例えば、グリコール結合量の多いシリカ粒子を得る場合には、脂肪族グリコールやアリール基を有するグリコールを用いることが好ましい。シリカ粒子と、樹脂組成物との親和性を高める場合には、脂環式グリコールやアリール基を有するグリコールを用いることが好ましい。シリカ粒子の耐熱性を高める場合には、脂肪族グリコールや脂環式グリコールを用いることが好ましい。
前記例示したグリコールのうち、水やアルコール類等の有機溶媒への溶解度をある程度有するグリコールとして、炭素数2〜8のグリコールがより好ましい。入手容易性や製造時の取り扱い容易性を考慮すると、エチレングリコールが特に好ましい。
上記のように、本発明のシリカ粒子はアルコールが結合していることが好ましいが、1価アルコールおよび/またはグリコールを含むアルコールが結合していることがさらに好ましい。本発明のシリカ粒子は、1価アルコールおよび/またはグリコールを含むアルコールが結合することで、樹脂組成物との親和性や分散性がより向上する。特に、1価アルコールおよびグリコールが共に結合していることが好ましい。
本発明のシリカ粒子が、1価アルコールを含むアルコールが結合したシリカ粒子である場合、1価アルコールの結合量は、シリカ粒子1g当たり0.001mmol以上が好ましく、0.002mmol以上がより好ましく、0.005mmol以上がさらに好ましい。また、1価アルコールの結合量は、シリカ粒子1g当たり1mmol以下が好ましく、0.1mmol以下がより好ましく、0.04mmol以下がさらに好ましく、0.02mmol以下が特に好ましい。1価アルコールの結合量がシリカ粒子1g当たり0.001mmol以上、1mmol以下であれば、本発明のシリカ粒子は、樹脂組成物との親和性や分散性が向上しやすくなる。
本発明のシリカ粒子が、グリコールを含むアルコールが結合したシリカ粒子である場合、グリコールの結合量は、シリカ粒子1g当たり0.001mmol以上が好ましく、0.003mmol以上がより好ましく、0.01mmol以上がさらに好ましく、0.1mmol以上が最も好ましい。また、グリコールの結合量は、シリカ粒子1g当たり3mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.8mmol以下がさらに好ましく、0.5mmol以下がさらにより好ましく、0.2mmol以下が最も好ましい。グリコールの結合量がシリカ粒子1g当たり0.001mmol以上、3mmol以下であれば、本発明のシリカ粒子は、樹脂組成物との親和性や分散性が向上しやすくなる。
本発明のシリカ粒子のアルコール結合量は、次の方法により測定することができる。シリカ粒子約1gを精秤し、0.05N水酸化ナトリウム水溶液50mLに入れ、室温で10時間撹拌し、懸濁液を得る。前記懸濁液を遠心分離機により、遠心力10万G以上で60分間遠心分離して、上澄み液を分取する。上澄み液をガスクロマトグラフにより分析し、アルコール含有量を求める。ガスクロマトグラフの検出器は水素炎イオン化検出器(FID)を用いる。ガスクロマトグラフ分析は、JIS K 0114に従う。なお、本発明のシリカ粒子分散体(シリカ粒子溶媒分散体)に含まれるシリカ粒子のアルコール結合量を測定する場合は、前もってシリカ粒子を分離する。シリカ粒子分散体(シリカ粒子溶媒分散体)からシリカ粒子を分離する方法は、上記記載の通りである。
本発明のシリカ粒子の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。また、本発明のシリカ粒子の平均粒子径は、3.0μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が前記範囲にあれば、樹脂組成物へのシリカ粒子の分散性が良好となりやすくなる。また、本発明のシリカ粒子を用いて樹脂組成物を製造した場合、樹脂組成物の使用目的に応じて、耐熱性の向上、機械的強度の向上、熱膨張係数低減、光拡散特性の向上、アンチブロッキング性の向上、滑り性の向上等の様々な特性を樹脂組成物に付与しやすくなる。樹脂組成物がフィルム等の薄膜状の場合は、その表面に微細な突起を付与することができるため、シリカ粒子を、防眩剤、つや消し剤、アンチブロッキング剤、滑り性付与剤等として好適に用いることができる。
本発明のシリカ粒子の粒子径の変動係数は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。変動係数が20%以下であれば、粒子径が揃ったシリカ粒子となり、透明性や光散乱性等の光学特性がミクロなレベルでより均質な樹脂組成物が得られるようになる。また、樹脂組成物がフィルム等などの薄膜状の場合は、その表面により均一な凹凸を付与することができるため、マクロレベルでの平坦性を確保しつつ、防眩性、つや消し性、アンチブロッキング性、滑り性が付与された薄膜材料が得られやすくなる。なお、シリカ粒子の粒子径の変動係数は、下記式により算出される。
変動係数(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
前記平均粒子径、前記変動係数、前記粒子径の標準偏差は、各々、一次粒子の平均粒子径、一次粒子の変動係数、一次粒子径の標準偏差を意味する。シリカ粒子の平均粒子径と粒子径の標準偏差は次の方法により算出される。任意に採取したシリカ粒子の電子顕微鏡写真(95mm×70mm)を、5ヶ所場所を変え、撮影する。このとき、電子顕微鏡写真1枚の中の粒子が50個〜100個となるように測定倍率を設定する。例えば、平均粒子径1μmのシリカ粒子であれば、10000倍で撮影を行う。電子顕微鏡写真に写った全粒子の粒子径(一次粒子径)をノギスにより計測する。この計測値の算術平均を平均粒子径とし、この計測値の不偏分散の平方根を粒子径の標準偏差とする。
本発明のシリカ粒子は、粒子の凝集がないことが好ましい。また、本発明のシリカ粒子は、個々の粒子がほぼ球形の形状を有するものが好ましい。粒子の凝集がなく、個々の粒子がほぼ球形の球状を有しているシリカ粒子であれば、当該シリカ粒子を用いて製造された樹脂組成物に応力が加えられた場合、その応力がより均一に分散するため、機械的強度に優れたものとなる。また、当該シリカ粒子を用いて製造された樹脂組成物は、光拡散特性においてより優れたものとなる。
本発明のシリカ粒子は、他の成分として、アルコール、アミン等の有機物;アルコキシ基、アシルオキシ基等の有機官能基;シランカップリング剤、アルミネート系カップリング剤、チタネート系カップリング等のカップリング剤;界面活性剤、有機高分子等の従来公知の分散剤;金属元素;カルコゲン元素;ハロゲン元素等を含有してもよい。
しかしながら、本発明のシリカ粒子は、アルカリ金属元素およびハロゲン元素の含有量がそれぞれ5ppm以下であることが、より好ましい。前記アルカリ金属元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられ、前記ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩素が挙げられる。ナトリウム、カリウム、リチウムの各元素の含有量は、JIS K 0121の原子吸光分析により分析を行ったときの値がそれぞれ5ppm以下であることが好ましい。フッ素、塩素の含有量は、JIS K 0127のイオンクロマトグラフにより分析を行ったときの値が5ppm以下であることが好ましい。ナトリウム、カリウム、リチウム等の各アルカリ金属元素やフッ素、塩素等の各ハロゲン元素のそれぞれの含有量が5ppm以下であれば、本発明のシリカ粒子を樹脂組成物に混ぜた場合、シリカ粒子の凝集や樹脂組成物の変色・着色が起こりにくくなる。樹脂組成物がフィルム等の薄膜状の場合は、電気的障害の発生も抑制しやすくなる。また、シリカ粒子中の不純物濃度を可能な限り低くして、シリカ純度を高めることで、不純物の存在を嫌う電子材料や半導体材料分野等の用途へシリカ粒子を適用する範囲が広がる。
本発明のシリカ粒子は、強熱減量が12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。シリカ粒子の強熱減量とは、シリカ粒子を600℃で1時間加熱した際の質量減少割合を表し、シリカ粒子の有機物含有量の目安となるものである。強熱減量は次のように測定される。80℃、50Torr(6.7kPa)の条件下で24時間真空乾燥させたシリカ粒子を蒸発皿(質量w1)にとる。シリカ粒子と蒸発皿を合わせた質量を計測し、この質量をw2とする。シリカ粒子を入れた蒸発皿を電気炉に入れ、600℃で1時間放置して加熱処理し、加熱処理後のシリカ粒子と蒸発皿を合わせた質量w3を計測する。そして、以下の式に基づき、シリカ粒子の強熱減量を求める。なお、本発明では、強熱減量測定用の試料を3個設け、一度に同じ条件でシリカ粒子の強熱減量の測定を行い、この平均値をシリカ粒子の強熱減量とした。
シリカ粒子の強熱減量(質量%)={1−(w3−w1)/(w2−w1)}×100
次に、本発明のシリカ粒子分散体について説明する。本発明のシリカ粒子分散体は、本発明のシリカ粒子が分散媒体に分散されているものであれば特に限定されず、例えば、液体でもよく、固体でもよい。
本発明のシリカ粒子分散体は、分散媒体にシリカ粒子が単分散していることが好ましい。シリカ粒子が分散媒体に単分散していることで、分散体としての様々な特性が発揮されやすくなる。
前記分散媒体としては、例えば、溶媒、樹脂、溶媒と樹脂(バインダー)の混合物等が挙げられる。
前記分散媒体として溶媒を用いた場合は、シリカ粒子分散体は、シリカ粒子溶媒分散体となる。
前記溶媒は特に限定されるものでないが、有機溶媒が好ましく、例えば、アルコール類、脂肪族および芳香族カルボン酸エステル類、ケトン類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族および芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等の有機系溶媒;鉱物油;植物油;ワックス;シリコーン油等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。前記例示した溶媒のうち、本発明のシリカ粒子との親和性や溶媒への分散性、シリカ粒子分散体の製造容易性から、アルコール類が好ましく、1価アルコールおよび/またはグリコールがより好ましい。また、グリコールとしては、炭素数2〜8のグリコールが好ましく、入手容易性や製造時の取り扱い容易性からエチレングリコールが特に好ましい。なお、溶媒として用いられるアルコール類は、シリカ粒子に結合しているアルコールと、同一であっても異なっていてもよい。
本発明のシリカ粒子を樹脂組成物や成形材料等に加える場合は、シリカ粒子を溶媒分散体の形態で合成時の任意の工程で樹脂組成物や成形材料等の原料に加えることで、シリカ粒子を樹脂組成物や成形材料等により均一に分散させやすくなる。
シリカ粒子溶媒分散体中のシリカ粒子含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。シリカ粒子溶媒分散体中のシリカ粒子含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。シリカ粒子含有量が10質量%以上であれば、シリカ粒子溶媒分散体を樹脂組成物等の合成時の任意の工程で原料に添加する場合、前記分散体中にシリカ粒子が高濃度で含まれることになるため、規定量のシリカ粒子を添加する場合に分散体としての添加量を少なくできる。従って、シリカ粒子溶媒分散体の貯留や添加等の設備を小さくしたり、補充回数を少なくしたりすることができ、運搬も容易になる。シリカ粒子含有量が40質量%以下であれば、シリカ粒子が凝集を起こしにくくなり、シリカ粒子を溶媒や樹脂等に安定して分散させやすくなる。
シリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量は、次のように測定される。蒸発皿(質量w11)にシリカ粒子溶媒分散体をとり、シリカ粒子溶媒分散体と蒸発皿を合わせた質量を計測し、この質量をw12とする。シリカ粒子溶媒分散体を入れた蒸発皿を乾燥器に入れ、80℃、50Torr(6.7kPa)の条件下で24時間真空乾燥し、乾燥後のシリカ粒子溶媒分散体(シリカ粒子)と蒸発皿を合わせた質量w13を計測する。そして、以下の式に基づき、シリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量を求める。なお、本発明では、シリカ粒子含有量測定用の試料を3個設け、一度に同じ条件でシリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量測定を行い、この平均値をシリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量とした。
シリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量(質量%)=(w13−w11)/(w12−w11)×100
本発明のシリカ粒子溶媒分散体は、溶媒が有機溶媒の場合、水分含有量が0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。水分含有量が0.3質量%以下であれば、シリカ粒子溶媒分散体を樹脂組成物等の合成時の任意の工程で原料に添加する場合、樹脂組成物等の合成に好ましくない水の存在を少なくできる。
シリカ粒子溶媒分散体の水分含有量は、JIS K 0068のカールフィッシャー滴定法(容量滴定法)に従い測定する。本発明では、水分含有量測定用の試料を3個設け、一度に同じ条件でシリカ粒子溶媒分散体の水分含有量測定を行い、この平均値をシリカ粒子溶媒分散体の水分含有量とした。
本発明のシリカ粒子分散体は、分散媒体として樹脂を用いた場合は、成形材料用組成物等として用いることができる。
前記樹脂としては、例えば、ポリアミド(6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロン等)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポロプロピレン等)、ポリエステル(PET、PBT、PEN等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、およびこれらの原料となる単量体等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂(フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂等)、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等)、およびこれらの原料となる単量体等の熱硬化性樹脂;ポリビニルブチラール系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系等の軟質樹脂または硬質樹脂;シリカゲル、アルカリケイ酸、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド、これらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等の無機系バインダー;等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
成形材料用組成物中のシリカ粒子含有量は、シリカ粒子および樹脂の固形分合計量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また、99質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、さらに40質量%以下が好ましく、特に10質量%以下が好ましい。シリカ粒子含有量が0.1質量%以上であれば、シリカ粒子を成形材料用組成物中に含有させることによって得られる効果を確実に発揮させることができる。シリカ粒子含有量が99質量%以下であれば、得られる組成物の強度や可撓性を十分確保することができる。
本発明のシリカ粒子分散体は、分散媒体として溶媒と樹脂(バインダー)の混合物を用いた場合は、塗料組成物等として用いることができる。
前記溶媒としては、シリカ粒子溶媒分散体で用いられる溶媒として例示された溶媒に加え、水を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
前記樹脂としては、熱可塑性または熱硬化性の各種合成樹脂、天然樹脂等、無機系バインダー等を挙げることができる。合成樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂等が挙げられる。天然樹脂としては、例えば、セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラック等が挙げられる。無機系バインダーとしては、シリカゲル、アルカリケイ酸、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド、これらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等を挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
本発明のシリカ粒子分散体を塗料組成物として用いる場合は、シリカ粒子と樹脂とを必須成分として含み、溶媒は任意成分として用いられてもよい。また、その他の任意成分としては、架橋剤等の硬化剤、硬化助剤等の硬化触媒、可塑剤、消泡剤・レベリング剤、チクソトロピック剤、つや消し剤、界面活性剤、難燃剤、顔料湿潤剤・分散剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、その他(熱)安定剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤、防食・防錆剤、染料、顔料等の従来公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、要求性能に応じて適宜調整されればよい。
塗料組成物中のシリカ粒子含有量は、シリカ粒子および樹脂の固形分合計量に対して0.1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、また、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。シリカ粒含有量が0.1質量%以上であれば、シリカ粒子を塗料組成物中に含有させることによって得られる効果を確実に発揮させることができる。シリカ粒子含有量が90質量%以下であれば、得られる組成物の可撓性を十分確保することができる。
次に本発明のシリカ粒子の製造方法について説明する。本発明のシリカ粒子の製造方法は、アルコキシシランを塩基性触媒および水の存在下で加水分解および縮合させてシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程、前記シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および/または水濃度を高めてシリカ粒子を得る工程を有する方法が好ましい。
本発明のシリカ粒子の製造方法に関して、まず、アルコキシシランを塩基性触媒および水の存在下で加水分解および縮合させて、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程について説明する。
本工程では、アルコキシシランが塩基性触媒(以下、「塩基性触媒A」と称する場合がある)および水を含む有機溶媒中で加水分解および縮合することによって、粒子を形成する。その結果、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体が得られる。
前記アルコキシシランとしては、組成式RnSiX4−n(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、不飽和脂肪酸残基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の有機基を表し、Xはアルコキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、RおよびXはそれぞれ同一あるいは異なっていてもよい)で表されるケイ素化合物およびその誘導体が、工業的に入手し易く安価であるため、好ましく用いられる。ただし、上記組成式中のnで表される整数が2または3であるケイ素化合物および/またはその誘導体を原料として用いた場合には、上記組成式中のnで表される整数が0または1であるケイ素化合物および/またはその誘導体を併用することが好ましい。
前記アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらアルコキシシランは、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記例示のアルコキシシランのうち、テトラメトキシシランがより好ましい。
アルコキシシラン、塩基性触媒A、水、有機溶媒の添加・混合方法は特に限定されるものではないが、例えば、塩基性触媒Aおよび水を含む有機溶媒にアルコキシシランを一括して添加し撹拌する方法、塩基性触媒Aおよび水を含む有機溶媒を撹拌しながらアルコキシシランを数回に分けて添加する方法、塩基性触媒Aおよび水を含む有機溶媒を撹拌しながらアルコキシシランを連続的に添加する方法等の種々の方法を採用することができる。また、アルコキシシランを有機溶媒に溶解させた溶液を予め調製し、前記溶液を塩基性触媒Aおよび水を含む有機溶媒に上記種々の方法を採用して添加することもできる。従って、アルコキシシラン、塩基性触媒A、水、有機溶媒を添加・混合する際の互いのタイミングは、適宜工夫されるものとする。
前記塩基性触媒Aとしては、アンモニア;加熱によりアンモニアを発生し得る尿素等のアンモニア発生剤;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン(以下、脂肪族アミンと脂環式アミンと芳香族アミンとを総じて「アミン類」と称する);テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の4級アンモニウムハイドロオキサイド;テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が例示される。これらの中でも、粒子径が制御されたシリカ粒子初期縮合物が得られやすい点で、アンモニア、アミン類、アルカノールアミンが好ましい。また、沸点が低く、得られるシリカ粒子やシリカ粒子分散体への残存量を少なくしやすい点で、アンモニア、炭素数1〜4の脂肪族アミンが好ましい。さらに、アルコキシシランと水との加水分解反応を促進する効果が高く、得られるシリカ粒子やシリカ粒子分散体への残存量を少なくしやすい点で、アンモニアが特に好ましい。
有機溶媒は、アルコキシシランを溶解するとともに、塩基性触媒Aおよび水を溶解するか、もしくは、塩基性触媒Aおよび水が会合した状態で(ミセル状で)均一に分散することができる化合物であればよい。前記有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等の(環状)エーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。前記例示した有機溶媒のうち、アルコール類が特に好ましい。なお、塩基性触媒Aおよび水と相溶しない有機溶媒を用いることもできるが、この場合には、塩基性触媒Aおよび水を均一に分散させるために界面活性剤を添加してもよい。
有機溶媒に含まれるアルコキシシランの濃度は、0.05mol/L以上が好ましく、3.0mol/L以下が好ましい。
水の濃度は、0.1mol/L以上が好ましく、2mol/L以上がより好ましい。また、水の濃度は、50mol/L以下が好ましく、25mol/L以下がより好ましい。
塩基性触媒Aの濃度は、0mol/Lを超えることが好ましく、0.8mol/L以上がより好ましい。また、塩基性触媒Aの濃度は、10mol/L以下が好ましく、9.4mol/L以下がより好ましい。
アルコキシシランを加水分解および縮合する際の反応温度は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、前記反応温度は、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、100℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。前記反応温度は、反応溶液の温度を意味する。
アルコキシシランを加水分解および縮合する際の反応時間は、30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。また、前記反応時間は、100時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。前記反応時間が30分以上であれば、加水分解および縮合反応が十分進行し、100時間以下であれば、加熱処理に要するエネルギーを低く抑えられ、生産性が向上する。
従って、加水分解および縮合時における最も好ましい反応条件は、有機溶媒に含まれるアルコキシシランの濃度が0.05mol/L〜3.0mol/Lの範囲内であり、水の濃度が2mol/L〜25mol/Lの範囲内であり、塩基性触媒Aの濃度が0.8mol/L〜9.4mol/Lの範囲内であり、かつ、反応温度が20℃〜50℃の範囲内であり、反応時間が2時間〜10時間の範囲内である。アルコキシシランを、塩基性触媒Aおよび水を含む有機溶媒中で加水分解および縮合することにより、球状で粒子径が揃ったシリカ粒子初期縮合物を含有する分散液が得やすくなる。
有機溶媒に含まれるアルコキシシランの濃度、塩基性触媒Aの濃度、水の濃度、反応温度は、シリカ粒子初期縮合物の粒子径等に影響を及ぼす場合があるため、所望する平均粒子径や粒度分布に応じて適宜調整されることが好ましい。
シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体は、フィルターに通すことで、粗大粒子を低減することが可能である。例えば、シリカ粒子初期縮合物の平均粒子径よりも1μm以上孔径の大きいフィルターを使用することにより、反応中の液界面で生じた粗大凝集物等が除去される。上記フィルターは、適宜設定した空隙や空隙直径を持つメッシュであってもよい。
次に、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および/または水濃度を高めて、シリカ粒子を得る工程について説明する。
本工程では、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および/または水濃度を高めることにより、シリカ粒子初期縮合物が有するアルコキシ基の加水分解反応、およびシリカ粒子内での縮合反応が促進されると考えられる。その結果、得られるシリカ粒子は、シリカ粒子初期縮合物よりもシロキサン結合率が高くなる。例えば、シリカ粒子初期縮合物のシロキサン結合率は60%未満であるのに対し、シリカ粒子を得る工程により得られるシリカ粒子のシロキサン結合率は60%以上に高めることができる。
シリカ粒子を得る工程では、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の水濃度を高めて加熱する方法も好ましい。シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の水濃度を高めてシリカ粒子を得る場合、室温ではシロキサン結合率を高める反応が速やかに進まない場合があるためである。そのような場合は、分散体の水濃度を高めるとともに、分散体を加熱することが好ましい。
シリカ粒子を得る工程では、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度を高めた後、さらに水濃度を高めて加熱する方法も好ましい。この方法では、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度を高めてシリカ粒子のシロキサン結合率を高める反応を一旦進めた上で、さらに水濃度を高めて加熱することで、シリカ粒子のシロキサン結合率をさらに高めやすくなる。
シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程とシリカ粒子を得る工程は、いずれも、アルコキシ基の加水分解反応と縮合反応が関与するものである。シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程では、縮合反応は主にアルコキシシランの分子間で起こると考えられ、縮合反応の進行はシリカ粒子の大きさを増大させることに主に寄与するものと考えられる。一方、シリカ粒子を得る工程では、縮合反応は、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程においてアルコキシシランが縮合して得られたポリシロキサンの分子内(シリカ粒子内)で主に起こると考えられ、縮合反応の進行はシリカ粒子のシロキサン結合率を高めることに主に寄与するものと考えられる。
本工程において、塩基性触媒の濃度を高める方法は特に限定されるものではないが、例えば、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に塩基性触媒を添加する方法が好ましい。
本工程で用いられる塩基性触媒(以下、「塩基性触媒B」と称する場合がある)としては、塩基性触媒Aで用いられる化合物が例示される。塩基性触媒Bは、塩基性触媒Aと同一であっても異なっていてもよい。塩基性触媒Bとしてより好ましいのは、アンモニアである。アンモニアであれば、シロキサン結合率を高めやすくなり、得られるシリカ粒子やシリカ粒子分散体への塩基性触媒の残存量を少なくしやすくなる。なお、本工程における塩基性触媒濃度とは、塩基性触媒Aと塩基性触媒Bの合計の濃度を意味する。
本工程は、シリカ粒子のシロキサン結合率を高めるところに特徴を有するが、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程で塩基性触媒Aと塩基性触媒Bの合計量の塩基性触媒が添加された場合は、粒子径の大きいシリカ粒子が生成しやすくなり、シリカ粒子のシロキサン結合率を高めることは難しい。
塩基性触媒Bの添加量は、塩基性触媒Aの使用量に対して、0.1倍mol以上が好ましく、0.5倍mol以上がより好ましく、1倍mol以上がさらに好ましい。塩基性触媒Bの添加量は、塩基性触媒Aの使用量に対して、20倍mol以下が好ましく、15倍mol以下がより好ましく、10倍mol以下がさらに好ましい。塩基性触媒Bの添加量が、塩基性触媒Aの使用量に対して、0.1倍mol以上であればシロキサン結合率が十分高いシリカ粒子が得やすくなり、20倍mol以下であればシロキサン結合率の向上に寄与しない塩基性触媒Bの添加を減らすことができ、製造上経済的である。
塩基性触媒Bが液体の場合は、無希釈のままシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に添加されてもよいし、水および/または有機溶媒に希釈された溶液としてシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に添加されてもよい。塩基性触媒Bが固体の場合は、水および/または有機溶媒に溶解された溶液としてシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に添加されることが好ましい。
塩基性触媒Bが、水に希釈または溶解された溶液としてシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に添加される場合は、分散体の塩基性触媒濃度と水濃度を同時に高めることができる。
塩基性触媒Bが、有機溶媒に希釈または溶解された溶液としてシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に添加される場合、用いられる有機溶媒としては、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得る工程で用いられる有機溶媒が例示される。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。前記例示した有機溶媒のうち、アルコール類が特に好ましい。なお、水および塩基性触媒Bと相溶しない有機溶媒を用いることもできるが、この場合には、水および塩基性触媒Bを均一に分散させるために界面活性剤を添加してもよい。
塩基性触媒Bを、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に添加する方法は、例えば、一括に添加する方法、数回に分けて添加する方法、連続的に添加する方法等の種々の方法を採用することができる。また、前記例示した方法に適宜撹拌操作を組み合わせることもできる。
シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および/または水濃度を高めてシリカ粒子を得る工程において、塩基性触媒濃度を高めた場合において該効果を発揮させるためには、反応温度は、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、15℃以上がさらに好ましい。また、前記反応温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。反応温度が5℃以上であれば、シロキサン結合率を高める反応が速やかに進行しやすくなる。反応温度が60℃以下であれば、塩基性触媒Aおよび/または塩基性触媒Bとしてアンモニアを用いた場合に、アンモニアの揮発が起こりにくくなり、シロキサン結合率を高める反応が確実に進行しやすくなる。前記反応温度は、反応溶液の温度を意味する。
シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および/または水濃度を高めてシリカ粒子を得る工程において、反応時間は、3時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましく、12時間以上がさらに好ましい。また、前記反応時間は、48時間以下が好ましく、36時間以下がより好ましく、24時間以下がさらに好ましい。前記反応時間が3時間以上であれば、シロキサン結合率を高める反応が十分進行し、48時間以下であれば、処理に要するエネルギーを低く抑えることができ、生産性が向上する。
シリカ粒子を得る工程において、水濃度を高める方法としては、分散体に水を添加する方法、分散体の溶媒の一部または全部を水に置換する方法等が例示される。水濃度を高める対象となる分散体としては、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度を高めたことにより得られるシロキサン結合率が高くなったシリカ粒子を含む分散体、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および水濃度を高めたことにより得られるシロキサン結合率が高くなったシリカ粒子を含む分散体が例示される。
分散体の溶媒の一部または全部を水に置換する方法としては、例えば、沈降分離、浮上分離、遠心分離、ろ過等の方法により、分散体に含まれる固形分を分離または濃縮した後、水を加える方法を採用することができる。また、溶媒抽出、蒸留等の手段を用いて、分散体に含まれる有機溶媒の一部または全部を除去した後水を加える方法、分散体に水を加えた後有機溶媒の一部または全部を除去する方法、分散体に含まれる有機溶媒を除去しながら水を加える方法、水に分散体を加えながら分散体に含まれる有機溶媒を除去する方法等を採用してもよい。
分散体の水濃度を高めて加熱する場合、その具体的な方法としては、分散体の水濃度を高めた後に加熱する方法、分散体の水濃度を高めながら加熱する方法等が例示される。
分散体の水濃度を高めて加熱する場合、分散体の水濃度を高める方法としては、蒸留により分散体の水濃度を高める方法が製造上効率的であり、より好ましい。例えば、分散体に水を加えた後蒸留により有機溶媒を除去する方法、蒸留により分散体に含まれる有機溶媒を除去しながら水を加える方法、加熱した水に分散体を加えながら加熱を継続することにより分散体に含まれる有機溶媒を除去する方法が示される。このうち、加熱した水に分散体を加えながら加熱を継続することにより分散体に含まれる有機溶媒を除去する方法であれば、反応系内の温度の急激な低下を避けやすく、反応温度をスムーズに上げやすくなるため、特に好ましい。なお、蒸留により分散体の水濃度を高める場合、用いられる有機溶媒は水より低い沸点を有するものであることが必要となる。
分散体の水濃度を高めて加熱する場合、加熱温度は、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。加熱温度は、300℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。加熱温度が90℃以上であれば、シロキサン結合率を高める反応が速やかに進行しやすくなり、蒸留の際の溶媒置換が速やかに進む。加熱温度が300℃以下であれば、前記反応の制御が容易になる。なお、加熱温度は、反応溶液の温度を意味する。
加熱は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行ってもよい。加熱の際の温度が100℃以上となる場合は、加圧下で行うことが好ましい。
分散体の水濃度を高めて加熱する場合、加熱時間は、1時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましく、5時間以上がさらに好ましい。また、加熱時間は、20時間以下が好ましく、15時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。前記反応時間が1時間以上であれば、シロキサン結合率を高める反応が十分進行し、20時間以下であれば、処理に要するエネルギーを低く抑えることができ、生産性が向上する。
加熱操作の有無、加熱温度や加熱時間の条件により、得られるシリカ粒子は、溶媒に分散された形態(分散体)、湿潤状態の固体(ケーキ状)、乾燥(低湿潤)状態の固体(粉体)の形態等となる。従って、本発明のシリカ粒子の製造方法は、シリカ粒子分散体の製造方法とすることもできる。加熱温度が高くなるほど、あるいは加熱時間が長くなるほど、溶媒の蒸発量が増え、シリカ粒子は固体(粉体)の形態で得られやすくなる。
シリカ粒子が分散体の形態で得られた場合は、さらに固液分離工程を組み合わせることで、シリカ粒子を含有する分散体から固体状シリカ粒子を得ることができる。固液分離は公知の方法を用いることができ、沈降分離、浮上分離、遠心分離、ろ過等の方法を用いることができる。
固液分離工程の後段に乾燥工程を組み合わせて、固体(粉体)状シリカ粒子を製造してもよい。乾燥方法は、シリカ粒子から溶媒を除去できる方法であれば、特に限定されない。
前記方法により得られるシリカ粒子(分散体、ケーキ状、粉体等の形態は問わない)は、任意の分散媒体に配合されることで、本発明のシリカ粒子分散体とすることもできる。
本発明のシリカ粒子の製造方法は、前記シリカ粒子を得る工程で得られたシリカ粒子を、アルコールの存在下で加熱する工程を有してもよい。
シリカ粒子を得る工程で得られるシリカ粒子は、製造条件により分散体として得られたり、ケーキ状、粉体等の固体状で得られたりする。本工程では、シリカ粒子を得る工程で得られたシリカ粒子を含有する分散体の溶媒の一部または全部をアルコールに置換した後、または置換しながら加熱処理を行う。また、本工程では、シリカ粒子を得る工程で得られた固形状のシリカ粒子を、アルコールの存在下で加熱処理を行う。
シリカ粒子を含有する分散体の溶媒の一部または全部をアルコールに置換する方法は、シリカ粒子を得る工程において分散体の溶媒の一部または全部を水に置換する方法として例示された方法が採用できる。前記例示された方法のうち、蒸留によりシリカ粒子を含有する分散体の溶媒をアルコールに置換する方法が製造上効率的であり、より好ましい。例えば、シリカ粒子を含有する分散体にアルコールを加えた後蒸留により水を除去する方法、蒸留によりシリカ粒子を含有する分散体に含まれる水を除去しながらアルコールを加える方法、加熱したアルコールにシリカ粒子を含有する分散体を加えながら加熱を継続することによりシリカ粒子を含有する分散体に含まれる水を除去する方法が示される。このうち、蒸留によりシリカ粒子を含有する分散体に含まれる水を除去しながらアルコールを加える方法、加熱したアルコールにシリカ粒子を含有する分散体を加えながら加熱を継続することによりシリカ粒子を含有する分散体に含まれる水を除去する方法であれば、反応系内の温度の急激な低下を避けられ、反応温度をスムーズに上げやすくなるため、特に好ましい。なお、蒸留により分散体の溶媒の一部または全部をアルコールに置換する場合、用いられるアルコールは水より高い沸点を有するものであることが必要となる。
固形状のシリカ粒子をアルコールの存在下で加熱処理を行う場合の、固形状のシリカ粒子とアルコールとを共存させる方法は、例えば、固形状のシリカ粒子とアルコールとを配合して分散体や湿潤状態の固体とする方法、固体状のシリカ粒子をガス状のアルコールと接触させる方法等が採用できる。
本工程で用いられるアルコールとしては、本発明のシリカ粒子に結合しているアルコールとして例示された前記アルコールを挙げることができる。前記例示したアルコールは特に限定されるものではなく、1価アルコールでもよく、多価アルコールでもよい。また、1種類のアルコールのみが用いられてもよく、複数種類のアルコールが混合して用いられてもよい。これらのアルコールの中でも、本工程で用いられるアルコールとしては、1価アルコールおよび/またはグリコールを含むアルコールであることが好ましい。さらに、水やアルコール類等の有機溶媒への溶解度をある程度有するアルコールとして、1価アルコールとしては炭素数1〜4の脂肪族アルコールが好ましく、グリコールとしては炭素数2〜8のアルコールが好ましい。グリコールについては、入手容易性や製造時の取り扱い容易性を考慮すると、エチレングリコールを用いることがさらに好ましい。
加熱は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行ってもよい。
加熱温度は、用いられるアルコールの沸点近辺またはそれ以上に保持することが好ましいが、減圧下ではアルコールの沸点以下の温度で加熱してもよい。加熱の際の温度がアルコールの沸点以上となる場合は、加圧下で行うことが好ましい。加熱温度は、水の常圧沸点である100℃以上であることが好ましいが、さらに、アルコールの常圧における沸点をTb(℃)とした場合に、Tb−10℃以上であることが好ましく、Tb−5℃以上であることがより好ましく、Tb以上であることがさらに好ましい。加熱の際の温度がTb−10℃以上であれば、アルコールの結合量が多いシリカ粒子が得やすくなる。
加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。前記反応時間が0.5時間以上であれば、アルコールとシリカ粒子との反応が十分進行する。
シリカ粒子を得る工程で得られたシリカ粒子の形態、アルコールの存在下で加熱する際の加熱温度や加熱時間の条件により、得られるシリカ粒子は、溶媒に分散された形態(分散体)、湿潤状態の固体(ケーキ状)、乾燥(低湿潤)状態の固体(粉体)の形態等となる。加熱温度が高くなるほど、あるいは加熱時間が長くなるほど、溶媒の蒸発量が増え、シリカ粒子は固体(粉体)の形態で得られやすくなる。
シリカ粒子が分散体の形態で得られた場合は、さらに固液分離工程を組み合わせることで、シリカ粒子を含有する分散体から固体状シリカ粒子を得ることができる。固液分離は公知の方法を用いることができ、沈降分離、浮上分離、遠心分離、ろ過等の方法を用いることができる。
固液分離工程の後段に乾燥工程を組み合わせて、固体(粉体)状シリカ粒子を製造してもよい。乾燥方法は、シリカ粒子から溶媒を除去できる方法であれば、特に限定されない。
また、前記方法により得られる固体状シリカ粒子(分散体、ケーキ状、粉体等の形態は問わない)は、任意の溶媒に配合されることで、本発明のシリカ粒子分散体とすることもできる。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、各シリカ粒子およびシリカ粒子分散体の測定結果を表1に示す。
<シリカ粒子のシロキサン結合率の測定方法>
シリカ粒子を、固体NMR装置(BRUKER社製、AVANCE400)により、ケミカルシフト(δ)−130ppm〜−80ppmの範囲で測定した。ケミカルシフト(δ)−130ppm〜−80ppmの範囲の全シグナルの面積を100%としたときの、ケミカルシフト(δ)−111.4ppmにピークを有するシグナルの面積の割合を、シロキサン結合率とした。
<シリカ粒子のアルコールの結合量の測定方法>
シリカ粒子約1gを精秤し、0.05N水酸化ナトリウム水溶液50mLに入れ、室温で10時間撹拌し、懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離機により、遠心力10万G以上で60分間遠心分離して、上澄み液を分取した。前記上澄み液をガスクロマトグラフにより分析し、グリコール含有量を求めた。ガスクロマトグラフの検出器は水素炎イオン化検出器(FID)を用いた。ガスクロマトグラフ分析は、JIS K 0114に従った。
<シリカ粒子の平均粒子径、粒子径の標準偏差、粒子径の変動係数の測定方法>
任意に採取したシリカ粒子の電子顕微鏡写真(95mm×70mm)を、5ヶ所場所を変え、撮影した。このとき、電子顕微鏡写真1枚の中の粒子が50個〜100個となるように測定倍率を設定した。例えば、平均粒子径1μmのシリカ粒子であれば、10000倍で撮影を行う。電子顕微鏡写真に写った全粒子の粒子径(一次粒子径)をノギスにより計測した。この計測値の算術平均を平均粒子径とし、この計測値の不偏分散の平方根を粒子径の標準偏差とした。粒子径の変動係数は、下記式により算出した。
変動係数(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
<シリカ粒子の強熱減量の測定方法>
80℃、50Torr(6.7kPa)の条件下で24時間真空乾燥させたシリカ粒子を蒸発皿(質量w1)にとった。シリカ粒子と蒸発皿を合わせた質量を計測し、この質量をw2とした。シリカ粒子を入れた蒸発皿を電気炉に入れ、600℃で1時間放置して加熱処理し、加熱処理後のシリカ粒子と蒸発皿を合わせた質量w3を計測した。そして、以下の式に基づき、シリカ粒子の強熱減量を求めた。なお、強熱減量の測定では、測定用の試料を3個設け、一度に同じ条件でシリカ粒子の強熱減量の測定を行い、この平均値をシリカ粒子の強熱減量とした。
シリカ粒子の強熱減量(質量%)={1−(w3−w1)/(w2−w1)}×100
<シリカ粒子分散体(シリカ粒子溶媒分散体)のシリカ粒子含有量の測定方法>
蒸発皿(質量w11)にシリカ粒子溶媒分散体をとり、シリカ粒子溶媒分散体と蒸発皿を合わせた質量を計測し、この質量をw12とした。シリカ粒子溶媒分散体を入れた蒸発皿を乾燥器に入れ、80℃、50Torr(6.7kPa)の条件下で24時間真空乾燥し、乾燥後のシリカ粒子溶媒分散体と蒸発皿を合わせた質量w13を計測した。そして、以下の式に基づき、シリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量を求めた。なお、シリカ粒子含有量の測定では、測定用の試料を3個設け、一度に同じ条件でシリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量測定を行い、この平均値をシリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量とした。
シリカ粒子溶媒分散体のシリカ粒子含有量(質量%)=(w13−w11)/(w12−w11)×100
<シリカ粒子分散体の水分含有量の測定方法>
JIS K 0068のカールフィッシャー滴定法(容量滴定法)に従い測定した。水分含有量の測定では、測定用の試料を3個設け、一度に同じ条件でシリカ粒子分散体の水分含有量測定を行い、この平均値をシリカ粒子分散体の水分含有量とした。
<元素含有量の分析方法>
シリカ粒子に含まれるナトリウム、カリウム、リチウム、フッ素、塩素の各元素の含有量を測定した。ナトリウム、カリウム、リチウムの各元素の含有量は、JIS K 0121の原子吸光分析により分析を行った。フッ素、塩素の含有量は、JIS K 0127のイオンクロマトグラフにより分析を行った。
[製造例1]
撹拌装置、滴下装置および温度計を備えた容量30Lの反応器に、メチルアルコール16Lと、28質量%アンモニア水(塩基性触媒A)1.0kgとを仕込み、撹拌しながら液温を30±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラメトキシシラン1.0kgをメチルアルコール2.0Lに溶解させた溶液を仕込んだ。反応器中の液温を30±0.5℃に保持しながら、滴下装置から前記溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに2時間、液温を前記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得た。
前記シリカ粒子初期縮合物に、28質量%アンモニア水(塩基性触媒B)2.0kgを一括に添加し、反応器中の液温を30±0.5℃に保持しながら12時間撹拌することにより、シリカ粒子溶媒分散体1を得た。
得られたシリカ粒子溶媒分散体1を遠心分離機により、遠心力10万G以上で60分間遠心分離して、沈殿物を取り出した。前記沈殿物を80℃にて10時間、50Torr(6.7kPa)の条件で真空乾燥して、シリカ粒子1を得た。
シリカ粒子1のシロキサン結合率は67.3%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.026mmol/g、平均粒子径は0.05μm、粒子径の変動係数は10.2%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体1のシリカ粒子含有量は29.1質量%、水分含有量は0.25質量%であった。
[製造例2]
製造例1で用いた容量30Lの反応器に、メチルアルコール16Lと、28質量%アンモニア水(塩基性触媒A)1.0kgとを仕込み、撹拌しながら液温を20±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラメトキシシラン1.0kgをメチルアルコール2.0Lに溶解させた溶液を仕込んだ。反応器中の液温を20±0.5℃に保持しながら、滴下装置から前記溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに12時間、液温を前記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得た。
撹拌装置、滴下装置、温度計および留出ガス回収装置を備えた容量5Lの反応器に水を1.6kg仕込んだ。留出ガス回収装置は、反応器に接続した留出ガス凝縮器、留出ガス凝縮器に接続した留出液受け器からなっており、留出液受け器には減圧吸引口が備わっている。反応器に仕込まれた水を、常圧で撹拌しながら、反応器外部より120℃に保持された熱媒体により加熱した。一方、滴下装置に、前記シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体18.2kgを仕込んだ。反応器中の水が前記条件で加熱・撹拌されているところに、前記シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を240分間かけて連続的に滴下した。滴下後、反応溶液の液温が100℃(常圧)になった時点から3時間、同温度で加熱を続け、シリカ粒子溶媒分散体2を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体2を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子2を得た。
シリカ粒子2のシロキサン結合率は69.4%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.016mmol/g、平均粒子径は0.09μm、粒子径の変動係数は7.5%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体2のシリカ粒子含有量は27.5質量%、水分含有量は0.22質量%であった。
[製造例3]
製造例1で用いた容量30Lの反応器に、メチルアルコール16Lと、28質量%アンモニア水(塩基性触媒A)1.5kgとを仕込み、撹拌しながら液温を20±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラメトキシシラン1.0kgをメチルアルコール2.0Lに溶解させた溶液を仕込んだ。反応器中の液温を20±0.5℃に保持しながら、滴下装置から前記溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに2時間、液温を前記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得た。
前記シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体に、28質量%アンモニア水(塩基性触媒B)2.0kgを一括に添加し、反応器中の液温を20±0.5℃に保持しながら12時間撹拌し、得られた生成物18.2kgを滴下装置に仕込んだ。当該滴下装置、撹拌装置、温度計および留出ガス回収装置を備えた製造例2で用いた容量5Lの反応器に水を1.6kg仕込み、常圧で撹拌しながら、反応器外部より120℃に保持された熱媒体により加熱した。反応器中の水が前記条件で加熱・撹拌されているところに、滴下装置から前記生成物を240分間かけて連続的に滴下した。滴下後、反応溶液の液温が100℃(常圧)になった時点から3時間、同温度で加熱を続け、シリカ粒子溶媒分散体3を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体3を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子3を得た。
シリカ粒子3のシロキサン結合率は71.4%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.013mmol/g、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は5.4%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体3のシリカ粒子含有量は28.8質量%、水分含有量は0.21質量%であった。
[製造例4]
撹拌装置、滴下装置、温度計および留出ガス回収装置を備えた製造例2で用いた容量5Lの反応器にエチレングリコールを1.6kg仕込み、常圧で撹拌しながら、反応器外部より120℃に保持された熱媒体により加熱した。一方、滴下装置に、シリカ粒子溶媒分散体1を18.7kg仕込んだ。反応器中のエチレングリコールが前記条件で加熱・撹拌されているところに、シリカ粒子溶媒分散体1を240分間かけて連続的に滴下した。滴下後、熱媒体の温度を120℃から徐々に230℃まで上げて、メチルアルコール、アンモニア、水、およびエチレングリコールの一部を含む液体を留出させ、さらに反応溶液の液温を195℃〜198℃で保持しながら1時間加熱して、シリカ粒子溶媒分散体4を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体4を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子4を得た。
シリカ粒子4のシロキサン結合率は68.3%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.021mmol/g、エチレングリコールが0.192mmol/g、平均粒子径は0.05μm、粒子径の変動係数は10.2%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体4のシリカ粒子含有量は25.9質量%、強熱減量は8.6質量%、水分含有量は0.05質量%であった。
[製造例5]
製造例2でシリカ粒子溶媒分散体2を得た後、シリカ粒子溶媒分散体2を得るのに用いた反応器を引き続き用いて、滴下装置にエチレングリコール1.6kgを仕込み、熱媒体を180℃に保持しながら、エチレングリコールを120分かけてシリカ粒子溶媒分散体2に連続的に滴下した。滴下後、熱媒体の温度を180℃から徐々に230℃まで上げて、メチルアルコール、アンモニア、水、およびエチレングリコールの一部を含む液体を留出させ、さらに反応溶液の液温を195℃〜198℃で保持しながら1時間加熱して、シリカ粒子溶媒分散体5を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体5を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子5を得た。
シリカ粒子5のシロキサン結合率は70.2%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.009mmol/g、エチレングリコールが0.158mmol/g、平均粒子径は0.09μm、粒子径の変動係数は7.5%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体5のシリカ粒子含有量は25.8質量%、強熱減量は7.6質量%、水分含有量は0.06質量%であった。
[製造例6]
製造例3でシリカ粒子溶媒分散体3を得た後、シリカ粒子溶媒分散体3を得るのに用いた反応器を引き続き用いて、滴下装置にエチレングリコール1.6kgを仕込み、熱媒体を180℃に保持しながら、エチレングリコールを120分かけてシリカ粒子溶媒分散体3に連続的に滴下した。滴下後、熱媒体の温度を180℃から徐々に230℃まで上げて、メチルアルコール、アンモニア、水、およびエチレングリコールの一部を含む液体を留出させ、さらに反応溶液の液温を195℃〜198℃で保持しながら1時間加熱して、シリカ粒子溶媒分散体6を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体6を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子6を得た。
シリカ粒子6のシロキサン結合率は72.1%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.009mmol/g、エチレングリコールが0.159mmol/g、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は5.4%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体6のシリカ粒子含有量は26.7質量%、強熱減量は7.2質量%、水分含有量は0.04質量%であった。
[製造例7]
製造例1で用いた容量30Lの反応器に、エチルアルコール9.2Lと、28質量%アンモニア水(塩基性触媒A)2.8kg、水0.5kgとを仕込み、撹拌しながら液温を30±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラエトキシシラン1.4kgを仕込んだ。反応器中の液温を30±0.5℃に保持しながら、滴下装置からテトラエトキシシランを1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに2時間、液温を前記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラエトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得た。
前記シリカ粒子初期縮合物に、28質量%アンモニア水(塩基性触媒B)2.8kgを一括に添加し、反応器中の液温を30±0.5℃に保持しながら12時間撹拌することにより、得られた生成物14.7kgを滴下装置に仕込んだ。当該滴下装置、撹拌装置、温度計および留出ガス回収装置を備えた製造例1で用いた容量5Lの反応器に水を1.6kg仕込み、常圧で撹拌しながら、反応器外部より120℃に保持された熱媒体により加熱した。反応器中の水が前記条件で加熱・撹拌されているところに、滴下装置から前記生成物を240分間かけて連続的に滴下した。滴下後、反応溶液の液温が100℃(常圧)になった時点から3時間、同温度で加熱を続け、シリカ粒子溶媒分散体を得た。
滴下装置にエチレングリコール1.6kgを仕込み、熱媒体を180℃に保持しながら、エチレングリコールを120分かけて前記シリカ粒子溶媒分散体に連続的に滴下した。滴下後、熱媒体の温度を180℃から徐々に230℃まで上げて、エチルアルコール、アンモニア、水、およびエチレングリコールの一部を含む液体を留出させ、さらに反応溶液の液温を195℃〜198℃で保持しながら1時間加熱して、シリカ粒子溶媒分散体7を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体7を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子7を得た。
シリカ粒子7のシロキサン結合率は74.1%、アルコールの結合量はエチルアルコールが0.010mmol/g、エチレングリコールが0.176mmol/g、平均粒子径は1.04μm、粒子径の変動係数は3.2%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体7のシリカ粒子含有量は28.4質量%、水分含有量は0.07質量%であった。
[製造例8]
製造例6において、エチレングリコールの代わりにベンジルアルコールを用い、ベンジルアルコールで溶媒置換した後の反応溶液の液温を195℃〜198℃から200℃に変えた以外は、製造例6と同様に行い、シリカ粒子溶媒分散体8とシリカ粒子8を得た。
シリカ粒子8のシロキサン結合率は74.3%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.009mmol/g、ベンジルアルコールが0.189mmol/g、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は5.4%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体8のシリカ粒子含有量は26.1質量%、水分含有量は0.03質量%であった。
[製造例9]
シリカ粒子溶媒分散体3を遠心分離することにより、シリカ粒子含有量70質量%のケーキ状の分散体を得た。撹拌装置を備えたステンレス製オートクレーブ反応器に、ケーキ状の分散体100質量部と、1−ブチルアルコール600質量部とを仕込んだ。反応器の気相部に窒素パージした後、撹拌しながら昇温し、200℃で2時間加熱保持し、冷却した。得られた分散体700質量部をエバポレータにより減圧濃縮して、シリカ粒子含有量23質量%のシリカ粒子溶媒分散体9を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体9を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子9を得た。
シリカ粒子9のシロキサン結合率は73.8%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.009mmol/g、1−ブチルアルコールが0.211mmol/g、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は5.4%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体9のシリカ粒子含有量は23.2質量%、水分含有量は0.05質量%であった。
[製造例10]
製造例9において、1−ブチルアルコール600質量部の代わりに、メチルアルコール300質量部とプロピレングリコール300質量部からなる混合物を用いた以外は、製造例9と同様に行い、シリカ粒子含有量23質量%のシリカ粒子溶媒分散体10を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体10を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子10を得た。
シリカ粒子10のシロキサン結合率は73.1%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.010mmol/g、プロピレングリコールが0.265mmol/g、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は5.4%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体10のシリカ粒子含有量は23.3質量%、水分含有量は0.06質量%であった。
[製造例11]
製造例2で得られたシリカ粒子初期縮合物を含有する分散体18.2kgを滴下装置に仕込んだ。当該滴下装置、撹拌装置、温度計および留出ガス回収装置を備えた製造例2で用いた容量5Lの反応器にエチレングリコールを1.6kg仕込み、常圧で撹拌しながら、反応器外部より120℃に保持された熱媒体により加熱した。反応器中のエチレングリコールが前記条件で加熱・撹拌されているところに、前記シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を240分間かけて連続的に滴下した。滴下後、熱媒体の温度を120℃から徐々に230℃まで上げて、メチルアルコール、アンモニア、水、およびエチレングリコールの一部を含む液体を留出させ、さらに反応溶液の液温を195℃〜198℃で保持しながら1時間加熱して、シリカ粒子溶媒分散体11を得た。得られたシリカ粒子溶媒分散体11を、製造例1と同様の条件で遠心分離および真空乾燥して、シリカ粒子11を得た。
シリカ粒子11のシロキサン結合率は55.4%、アルコールの結合量はメチルアルコールが0.083mmol/g、エチレングリコールが2.767mmol/g、平均粒子径は0.25μm、粒子径の変動係数は5.4%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体11のシリカ粒子含有量は25.0質量%、強熱減量は13.1質量%、水分含有量は0.12質量%であった。
[製造例12]
製造例1で用いた容量30Lの反応器に、エチルアルコール9.2Lと、28質量%アンモニア水(塩基性触媒A)2.8kg、水0.5kgとを仕込み、撹拌しながら液温を30±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラエトキシシラン1.4kgを仕込んだ。反応器中の液温を30±0.5℃に保持しながら、滴下装置からテトラエトキシシランを1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに12時間、液温を前記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラエトキシシランの加水分解および縮合を行い、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体を得た。以降の操作は、製造例11と同様に行い、シリカ粒子溶媒分散体12およびシリカ粒子12を得た。
シリカ粒子12のシロキサン結合率は57.6%、アルコールの結合量はエチルアルコールが0.098mmol/g、エチレングリコールが2.333mmol/g、平均粒子径は1.04μm、粒子径の変動係数は3.2%であった。アルカリ金属とハロゲン元素の各含有量はいずれも1ppm未満であった。シリカ粒子溶媒分散体12のシリカ粒子含有量は27.0質量%、強熱減量は12.7質量%、水分含有量は0.13質量%であった。
製造例1〜10はいずれも、本発明のシリカ粒子の製造方法を実施しており、本発明の実施例に相当する。表1の製造例1〜10に示された各測定値は、本発明のシリカ粒子およびシリカ粒子分散体に関するものである。
製造例11,12は比較例に相当し、本発明のシリカ粒子の製造方法において、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体の塩基性触媒濃度および/または水濃度を高めてシリカ粒子を得る工程を実施しておらず、シリカ粒子初期縮合物を含有する分散体をアルコールの存在下で加熱処理してシリカ粒子を得ている。
製造例1〜10ではいずれも、シロキサン結合率が60%以上、アルコールの結合量が0.001mmol/g以上となった。
製造例4〜6で得られたシリカ粒子溶媒分散体と製造例11で得られたシリカ粒子溶媒分散体とをシリカ粒子濃度25質量%となるようにエチレングリコールを追加して透明性を目視で評価した結果、製造例11で得られたシリカ粒子溶媒分散体に比べ、製造例4〜6で得られたシリカ粒子溶媒分散体は透明性に優れることが確認された。