JP5315811B2 - 耐硫酸腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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Description
しかしこれらの技術では、硫酸腐食を軽減することは可能であっても、硫酸腐食の進行を止めることは困難である。
近年、アジアにおける自動車市場の拡大に伴って、鉄鋼の需要が増加しており、製鉄業の高炉や熱処理炉等における化石燃料の消費量が増大している。そのため、製鉄業では硫酸腐食を防止する技術の開発が急務となっている。またガソリンにはSが含まれており、自動車のエンジンから排出される排ガスの配管にも硫酸腐食が発生する。したがって、自動車の排ガス配管も硫酸腐食を防止する技術が求められている。また、これらの配管には厳しい曲げ加工が施されるものが少なくない。
たとえば特開昭56-146857号公報には、フェライト系ステンレス鋼のS含有量を0.005質量%以下に低減することによって、耐酸性を向上する技術が開示されている。しかし特開昭56-146857号公報では沸騰塩酸に浸漬して耐酸性を調査しており、耐硫酸腐食性については明らかではない。
フェライト系ステンレス鋼板の成形性を向上するために、素材となる溶鋼の精錬工程でC,Nを大幅に低減する技術、あるいは溶鋼にTiやNbを添加して炭化物,窒化物を形成させることによってC,Nを安定化させる技術が検討されている。その結果、オーステナイト系ステンレス鋼板より優れた深絞り性を有するフェライト系ステンレス鋼板が開発されている。ただし、従来の深絞り性に優れたフェライト系ステンレス鋼板は、ランクフォード値(いわゆるr値)で評価されるような、深絞り加工における成形性を向上させたものである。
(a)S含有量を低減して含S析出物の析出を抑制する、
(b)Nb含有量を好適範囲に維持することによって微細なNbCを分散して析出させ、そこに含S析出物(たとえばMnS等)を付着させることによって、含S析出物を微細化する、
(c)Cu含有量を好適範囲に維持することによって不動態皮膜を改質し、地鉄の溶解を抑制することが有効であるという知見を得た。
また、微細なNbC粒子を分散させることによって、曲げ加工による転位の動きを阻害して曲げ部に加工硬化を起こせば、曲げ部が均一に加工され、肌荒れが軽減されることが判明した。
すなわち本発明は、C:0.001〜0.02質量%,Si:0.05〜0.8質量%,Mn:0.5質量%以下,P:0.04質量%以下,S:0.010質量%以下,Al:0.10質量%以下,Cr:20〜24質量%,Cu:0.3〜0.8質量%,Ni:0.5質量%以下,Nb:0.20〜0.55質量%,N:0.001〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、Sを含有する析出物の最大粒径が5μm以下、フェライト結晶粒の平均粒径が30.0μm以下、析出したNbC粒子の最大径が1μm以下である組織とを有するフェライト系ステンレス鋼板である。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、前記組成に加えて、Ti:0.005〜0.5質量%,Zr:0.5質量%以下およびMo:1.0質量%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有するフェライト系ステンレス鋼板である。
また、本発明は、前記において、熱延鋼板を900〜1100℃で焼鈍し、酸洗、冷間圧延後、900℃未満の焼鈍温度で焼鈍するフェライト系ステンレス鋼板の製造方法である。
また、本発明によれば、上記の特性に加えてさらに90°以上の曲げ加工を行なった曲げ部の肌荒れが少ないフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
C:0.001〜0.02質量%
Cは、フェライト系ステンレス鋼板の強度を高める作用を有する元素である。その効果を得るために、0.001質量%以上とする。しかしC含有量が0.02質量%を超えると、フェライト系ステンレス鋼板が硬化して、プレス成形性が低下するばかりでなく、後述するNbやNと結合して粗大なNb炭窒化物が析出して耐硫酸腐食性が低下する。したがって、Cは0.02質量%以下とする。より好ましくは0.015質量%以下である。
Si:0.05〜0.8質量%
Siは、フェライト系ステンレス鋼の溶製段階で脱酸剤として用いられる。Si含有量が0.05質量%未満では、十分な脱酸効果が得られない。そのため、製造されたフェライト系ステンレス鋼板に多量の酸化物が析出し、溶接性,プレス成形性が低下する。一方、0.8質量%を超えると、フェライト系ステンレス鋼板が硬化して加工性が損なわれ、フェライト系ステンレス鋼板の製造に支障をきたす。したがって、Siは0.05〜0.8質量%の範囲内とする。より好ましくは0.05〜0.3質量%である。さらに好ましくは0.06〜0.28質量%である。
Mnは、フェライト系ステンレス鋼の溶製段階で脱酸剤として用いられる。その効果を得るためには、0.01質量%以上が好ましい。Mn含有量が0.5質量%を超えると、固溶強化によってフェライト系ステンレス鋼板の加工性が損なわれる。しかも、後述するSと結合してMnSの析出が促進され、耐硫酸腐食性が低下する。したがって、Mnは0.5質量%以下とする。より好ましくは0.3質量%以下である。
Pは、硫酸腐食に関連はないが、種々の腐食を生起させる元素であるから、その含有量を低減する必要がある。特にP含有量が0.04質量%を超えると、腐食の問題に加えて、Pが結晶粒界に偏析してフェライト系ステンレス鋼板の加工性が損なわれる。その結果、フェライト系ステンレス鋼板の製造に支障をきたす。したがって、Pは0.04質量%以下とする。より好ましくは0.03質量%以下である。
Sは、Mn等と結合して含S析出物(たとえばMnS等)を生成する元素である。そのため、S含有量は低いほど望ましいが、0.0005質量%以下にすると脱硫が困難となり、製造負荷が増大する。したがって、その含有量は0.0005質量%以上が好ましい。含S析出物が硫酸と接触して溶解すると、硫化水素が発生し、局所的にpHが低下する。フェライト系ステンレス鋼板の表面に析出した含S析出物の直下では不動態皮膜は形成されておらず、含S析出物が溶解した後も、pHが低いために不動態皮膜は形成されない。その結果、地鉄が硫酸に曝され、硫酸腐食が進行する。S含有量が0.010質量%を超えると、含S析出物が多量に析出して硫酸腐食が顕著になる。したがって、Sは0.010質量%以下とする。より好ましくは0.008質量%以下である。
Alは、フェライト系ステンレス鋼の溶製段階で脱酸剤として用いられる。また、本発明では、Alを添加することによって、鋼中のNをNb炭窒化物より高温で析出するAlNとして析出させ、Nbと結合するN量を低減することで、粗大なNb炭窒化物の析出を抑制している。そのため、Nbは微細なNbCとして析出し、フェライト結晶粒の微細化、ならびに、含S析出物の粗大化抑止に効果を及ぼしている。また、析出したAlNはきわめて微細であるため、曲げ加工時の転位の運動を阻害して鋼の加工硬化を促進し、曲げ部の均一な変形が行われる効果も果たしている。その効果を得るためには、0.005質量%以上が好ましい。しかし、Al含有量が0.10質量%を超えると、Al系の非金属介在物が増加し、フェライト系ステンレス鋼板の表面傷等の表面欠陥の原因ともなり、加工性も損なわれる。したがって、Alは0.10質量%以下とする。より好ましくは0.08質量%以下である。
Crは、フェライト系ステンレス鋼板の耐硫酸腐食性を高める元素である。Cr含有量が20質量%未満では、十分な耐硫酸腐食性が得られない。一方、24質量%を超えると、σ相が生成され易くなり、フェライト系ステンレス鋼板のプレス成形性が低下する。したがって、Crは20〜24質量%の範囲内とする。より好ましくは20.5〜23.0質量%である。
Cuは、フェライト系ステンレス鋼板に硫酸腐食が生じた後、アノード反応による地鉄の溶解を低減する作用を有する。また、含S析出物の周辺の不動態皮膜を改質する作用を有する。発明者らの研究によれば、含S析出物の近傍に存在するCuは地鉄の結晶格子に歪みを生じさせる。歪みを生じた結晶格子に形成される不動態皮膜は、正常な結晶格子に形成される不動態皮膜に比べて緻密になる。このようにして不動態皮膜が改質されることによって、フェライト系ステンレス鋼板の耐硫酸腐食性が向上する。Cu含有量が0.3質量%未満では、この効果は得られない。一方、0.8質量%を超えると、Cuが硫酸によって腐食され、それを起点としてフェライト系ステンレス鋼板の硫酸腐食が進行する。また、熱間加工性が劣化するのでフェライト系ステンレス鋼板の製造に支障を来たす。したがって、Cuは0.3〜0.8質量%の範囲内とする。より好ましくは0.3〜0.6質量%である。
Niは、硫酸によるアノード反応を抑制し、pHが低下しても不動態皮膜を保持する作用を有する。その効果を得るためには、0.05質量%以上が好ましい。しかしNi含有量が0.5質量%を超えると、フェライト系ステンレス鋼板が硬化してプレス成形性が損なわれる。したがって、Niは0.5質量%以下とする。より好ましくは0.3質量%以下である。さらに好ましくは0.2質量%以下である。
Nbは、C、Nを固定してCr炭窒化物による腐食に対する鋭敏化を防ぐ作用を有する。また、フェライト系ステンレス鋼板の耐高温酸化性を向上させる効果もある。本発明では、これらの効果に加えて、微細な析出物(すなわちNbC)を分散させることによって、フェライト結晶粒を微細化させる重要な元素である。NbCは、冷間圧延したフェライト系ステンレス鋼板に焼鈍を施す際に再結晶粒の生成核となる。したがってNbCが分散して析出することによって、微細なフェライト結晶粒が生成する。さらに、NbCはフェライト結晶粒の生成過程で粒界の移動を阻害してフェライト結晶粒の成長を妨げ、微細なフェライト結晶粒を維持する効果がある。つまり微細なNbCを分散させると、フェライト結晶粒の微細化を達成できる。しかも、フェライト系ステンレス鋼板に分散して析出した微細なNbCは、曲げ加工による転位の移動を阻害し、曲げ部の加工硬化を生起する。その結果、曲げ加工による変形が、変形抵抗の少ない領域へ順次移動して行くので、曲げ部が均一に加工され、肌荒れが軽減される。また、発明者らの研究によれば、微細なNbCを分散して析出させることによって、含S析出物がNbCに付着して析出し、含S析出物の粒径が小さくなる。小さくなった含S析出物は、硫酸中において溶解しても、pHの低下が抑えられるため、周辺の溶液はステンレス鋼が不動態皮膜を形成できる下限のpH以上を維持でき、含S析出物溶解直後に含S析出物直下のステンレス鋼の再不動態化が可能となる。したがって、含S析出物の溶解が腐食発生の起点とならず、耐硫酸腐食性が向上する。Nbの含有量が0.20質量%未満では、この効果は得られない。一方、0.55質量%を超えると、NbCが粗大化し、フェライト結晶粒、ならびに、含S析出物も粗大化する。したがって、Nbは0.20〜0.55質量%の範囲内とする。より好ましくは0.20〜0.5質量%である。さらに好ましくは0.25〜0.45質量%である。
Nは、フェライト系ステンレス鋼板に固溶して、耐硫酸腐食性を向上させる作用を有する。その効果を得るために、0.001質量%以上とする。しかし過剰に含有すると、Cと同様に、粗大なNb炭窒化物の析出を促進し、フェライト系ステンレス鋼板の耐硫酸腐食性が低下するとともに曲げ部の肌荒れを悪化させる。特にN含有量が0.02質量%を超えると、硫酸腐食の問題に加えて、フェライト系ステンレス鋼板のプレス成形性が損なわれる。したがって、Nは0.02質量%以下とする。より好ましくは0.015質量%以下である。
Ti:0.005〜0.5質量%
Tiは、C,Nと結合してTi炭窒化物を形成することによってC,Nを固定し、Cr炭窒化物による腐食に対する鋭敏化を防止する作用を有する。そのため、Tiを添加することによって、耐硫酸腐食性を一層高めることができる。Ti含有量が0.005質量%未満では、その効果は得られない。一方、0.5質量%を超えると、フェライト系ステンレス鋼板が硬化してプレス成形性が損なわれる。したがってTiを添加する場合は、Ti含有量は0.005〜0.5質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.1〜0.4質量%である。
Zrは、Tiと同様に、C,Nと結合してZr炭窒化物を形成することによってC,Nを固定し、Cr炭窒化物による腐食に対する鋭敏化を防止する作用を有する。その効果を得るためには、0.01質量%以上が好ましい。そのため、Zrを添加することによって、耐硫酸腐食性を一層高めることができる。しかしTi含有量が0.5質量%を超えると、Zr酸化物(すなわちZrO2等)を多量に生成するので、フェライト系ステンレス鋼板の表面清浄が損なわれる。したがってZrを添加する場合は、Zr含有量は0.5質量%以下が好ましい。より好ましくは0.4質量%以下である。
Moは、耐硫酸腐食性を高める作用を有する。その効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。しかしMo含有量が1.0質量%を超えると、その効果は飽和する。つまり1.0質量%を超えて添加しても、その添加量に見合う耐硫酸腐食性の向上は期待できず、むしろ高価なMoを多量に使用することによって、フェライト系ステンレス鋼板の製造コストが上昇する。したがってMoを添加する場合は、Mo含有量は1.0質量%以下が好ましい。より好ましくは 0.8質量%以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼板の組織を説明する。
含S析出物の最大粒径:5μm以下
発明者らは、種々の成分のフェライト系ステンレス鋼板を製造して、含S析出物の大きさと硫酸腐食の進行との関係を調査した。その調査方法と調査結果について述べる。
このようにして得られたフェライト系ステンレス鋼板から切り出した試験片(幅30mm,長さ50mm)の両面を600番の研磨紙で研磨して、走査型電子顕微鏡(いわゆるSEM)で観察した。Nb炭窒化物の粒径は数μm程度、Nb炭化物の粒径は1μm程度であった。また、Nb炭窒化物やNb炭化物の周囲には含S析出物(たとえばMnS等)が付着して析出しているのが認められた。任意の1つの視野の10mm角内にある含S析出物全ての粒径を測定した。粒径は、長軸の最大長さとした。測定した含S析出物のうち最大のものの粒径を最大粒径とした。
このようにして、硫酸に浸漬する前の含S析出物の粒径と浸漬による地鉄の溶解確率との関係を調査した。その結果を図1に示す。なお溶解確率(%)は、浸漬前に、ある所定の大きさを有する析出物が存在した場所で浸漬後に地鉄の溶解が確認された数Mを、浸漬前に、その所定の大きさを有する析出物の総数Nで除した値(=100×M/N)である。
次に、本発明の曲げ加工における曲げ部の肌荒れが少ないフェライト系ステンレス鋼板の組織について説明する。
曲げ加工における曲げ部の肌荒れの深さは、フェライト結晶粒の平均粒径と相関関係を有する。曲げ加工によってフェライト結晶粒は引張応力を受けて偏平な楕円球状の形状になり、隣接するフェライト結晶粒の間に隙間が生じることによって肌荒れが発生する。一定量の曲げ加工を行なった場合、楕円球状に変形したフェライト結晶粒の長径と短径の比は、曲げ加工を施す前のほぼ球形のフェライト結晶粒の大きさに関わらず一定である。肌荒れの深さは楕円球状のフェライト結晶粒の短径に比例し、その短径は曲げ加工前のフェライト結晶粒の大きさに比例する。つまり、フェライト結晶粒の平均粒径が小さいほど、肌荒れが浅くなる。発明者らの研究によれば、フェライト結晶粒の平均粒径が30.0μm以下であれば、90°以上の曲げ加工を行なっても、曲げ部の肌荒れは問題のないレベルに抑制される。したがって、フェライト結晶粒の平均粒径は30.0μm以下とする。好ましくは20.0μm以下である。なお、フェライト結晶粒の平均粒径は、ASTM E112に従い、切断法によって任意の3視野のフェライト結晶粒の粒径を測定し、その平均値を算出した。
上記で説明した通り、フェライト系ステンレス鋼板に微細なNbCが分散すると、フェライト結晶粒の再結晶を促進し、かつフェライト結晶粒の成長を阻害するので、フェライト結晶粒の微細化が達成される。発明者らの研究によれば、析出するNbCの最大径が1μmを超えると、その効果は得られない。また、NbCが粗大化すると、曲げ加工における応力の集中を招き、局所的な変形が生じ易くなる。したがって、NbC粒子の最大径は1μm以下とする。任意の1つの視野の10mm角内にあるNbC析出物の中から最大のものの粒径を測定した。最大粒径は、長軸の最大長さとした。
所定の成分を有するフェライト系ステンレス鋼を溶製し、さらに鋼片とした後、1100〜1200℃に加熱して熱間圧延(仕上げ温度:700〜950℃、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは770℃以下,巻取り温度:600℃以下より好ましくは570℃以下、さらに好ましくは450℃以下,板厚:2.5〜6mm)を行ない、熱延鋼板とする。仕上げ圧延から巻取りまでの間に含S析出物およびフェライト結晶粒が粗大化するのを防止するために、仕上げ温度から巻取り温度まで20℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する。
次いで熱延鋼板を900〜1200℃、より好ましくは、900〜1100℃,30〜240秒で焼鈍し、さらに酸洗を行なう。さらに、冷間圧延(好ましくは圧下率50%以上)を行なった後、焼鈍と酸洗を施してフェライト系ステンレス鋼板とする。冷間圧延の後の焼鈍は、含S析出物の粗大化を防止するために、1050℃未満、より好ましくは、900℃未満,10〜240秒の条件で行なうことが好ましい。焼鈍の温度が900℃以上になる場合は、900℃以上に加熱される時間を1分以下にすることが好ましい。
表1に示す成分のフェライト系ステンレス鋼を溶製し、さらに鋼片とした後、1170℃に加熱して熱間圧延(仕上げ温度:800℃,巻取り温度:450℃,板厚:4mm)を行ない、熱延鋼板とした。仕上げ圧延から巻取りまで(すなわち800℃から450℃まで)の平均冷却速度は20℃/秒とした。
このようにして得られたフェライト系ステンレス鋼板を幅30mm,長さ50mmに切断し、両面を600番の研磨紙で研磨して試験片とした。その試験片を走査型電子顕微鏡(いわゆるSEM)で観察して、任意の1つの視野の10mm角内にある含S析出物全ての粒径を測定した。粒径は、長軸の最大長さとした。測定した含S析出物のうち最大のものの粒径を最大粒径とした。その結果を表2に示す。さらに試験片の質量を測定した。
耐硫酸腐食性の効果の確認に加えて、さらに、90°以上の曲げ加工を行なった曲げ部の肌荒れの効果を確認した。
表3に示す成分を有するフェライト系ステンレス鋼を溶製して連続鋳造を行ない、得られた鋳片を1170℃に加熱して熱間圧延を行なった。仕上げ温度と巻き取り温度は表4に示す通りである。なお表3に示すNo.1〜29の鋳片のうち、No.1およびNo.5はNb含有量が本発明の範囲を外れる例、No.13はCu含有量が本発明の範囲を外れる例、No.28はC含有量が本発明の範囲を外れる例であり、その他は全て成分が本発明の範囲を満足する。
さらに、フェライト系ステンレス鋼板から幅20mm,長さ70mmの試料を切り出し、両面を600番の研磨紙で研磨して、曲げ加工に供した。曲げ加工は、半径10mmのポンチを用いて試料の中央をプレスし、180°の曲げ加工を行なった。
なお、ここでは記載していないが、耐硫酸腐食性の効果も確認したが、実施例1とほぼ同様な効果が確認できた。
Claims (7)
- C:0.001〜0.02質量%、Si:0.05〜0.8質量%、Mn:0.5質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Al:0.10質量%以下、Cr:20〜24質量%、Cu:0.3〜0.8質量%、Ni:0.5質量%以下、Nb:0.20〜0.55質量%、N:0.001〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、Sを含有する析出物の最大粒径が5μm以下、フェライト結晶粒の平均粒径が30.0μm以下、析出したNbC粒子の最大径が1μm以下である組織とを有することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
- 前記組成に加えて、Ni:0.3質量%以下、Nb:0.20〜0.5質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
- 前記組成に加えて、Ti:0.005〜0.5質量%、Zr:0.5質量%以下およびMo:1.0質量%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
- 請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法であって、C:0.001〜0.02質量%、Si:0.05〜0.8質量%、Mn:0.5質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.010質量%以下、Al:0.10質量%以下、Cr:20〜24質量%、Cu:0.3〜0.8質量%、Ni:0.5質量%以下、Nb:0.20〜0.55質量%、N:0.001〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳片または鋼塊に、仕上げ温度700〜950℃で熱間圧延を行い、仕上げ温度から巻き取り温度まで20℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、かつ巻き取り温度600℃以下で巻き取り、前記熱間圧延で得られた熱延鋼板を900〜1200℃で焼鈍し、酸洗、冷間圧延後、1050℃未満の焼鈍温度で焼鈍することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 前記仕上げ温度を700〜900℃とし、前記巻き取り温度を570℃以下として巻き取ることを特徴とする請求項4に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 前記熱延鋼板を900〜1100℃で焼鈍し、酸洗、冷間圧延後、900℃未満の焼鈍温度で焼鈍することを特徴とする請求項4または5に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法であって、C:0.001〜0.02質量%、Si:0.05〜0.3質量%、Mn:0.5質量%以下、P:0.04質量%以下、S:0.01質量%以下、Al:0.1質量%以下、Cr:20〜24質量%、Cu:0.3〜0.8質量%、Ni:0.5質量%以下、Nb:0.20〜0.55質量%、N:0.001〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳片または鋼塊に、仕上げ温度770℃以下で熱間圧延を行い、仕上げ温度から巻き取り温度まで20℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、かつ巻き取り温度450℃以下の熱間圧延を施し、前記熱間圧延で得られた熱延鋼板を900〜1100℃で焼鈍、酸洗、さらに圧下率50%以上の冷間圧延を施すことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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