JP5257740B2 - リチウム二次電池の負極材用複合炭素材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ノート型パソコン等の高容量を必要とする部位に使用されるリチウムイオン二次電池の負極材として用いられるリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料及びその製造方法に関する。
ノート型パソコンや携帯電話に使用されるリチウム二次電池には、更なる高容量化が求められている。しかしながら、現行の黒鉛負極材料の容量は、ほぼ理論容量の372mAh/gに達しているため、理論容量が大きい負極材料が望まれている。
SiやSnに代表されるリチウムと合金化可能な金属系負極材料は、理論容量は大きい。しかし、該金属系負極材料は、理論容量こそ大きいが、導電性が低いことや、充放電サイクルにおける膨張が大きく、容量劣化が激しいという欠点があった。そのため、該金属系負極材料には、導電性の付与や膨張緩和が必要となる。
これまで、該金属系負極材料に導電性を付与する方法として、(i)金属系材料への炭素前駆体の被覆、(ii)遷移金属のドープ、(iii)金属系材料と炭素との複合化、が行われてきた。
ところが、該(i)及び該(ii)の方法で得られる金属系負極材料は、導電性を付与することができるものの、充放電サイクルの膨張収縮に伴う金属の微細化によって、徐々に導電性が低下するため、実用レベルには程遠いといった欠点があった。
また、該(iii)の方法により得られる金属系材料としては、例えば、特開2004−185975号公報(特許文献1)には、黒鉛粒子に対し、Siを機械的衝撃力を利用したメカノケミカル処理により固定化し、さらにその上を炭素層で被覆した三層構造を持つ複合材料が開示されている。また、特開2002−8652号公報(特許文献2)には、黒鉛粒子の表面にSiを付着し、黒鉛粒子の少なくとも一部、複合体の表面の少なくとも一部が炭素被覆されていることを特徴とする複合炭素材料が開示されている。また、特開2002−255529号公報(特許文献3)又は特開2006−49266号公報(引用文献4)には、平均粒径が15μmの黒鉛粒子と、Si粒子上にフェノール樹脂を用いてカーボンブラックを付着した複合粒子をイソプロピルアルコール/フェノール樹脂溶液を用いて湿式混合後、焼成炭化することにより得た黒鉛粒子上にSi/カーボンブラック複合粒子が付着した構造を持つ複合炭素材料が開示されている。
しかし、特許文献1及び特許文献2では、サイクルを経ると、Si粒子自体の粒破壊が起こり、大部分のSiが数サイクル後には、ほとんど機能しなくなるという問題があった。
また、特許文献3及び特許文献4では、上記問題に加えて、凹凸な形状であるため、充填密度が小さく、結果的に体積当たりのエネルギー密度が小さくなるという問題があった。また、凹凸な形状は、プレス工程時に剥離し、不可逆容量の増加を招くという問題もあった。更には、カーボンブラック自体が、初期の不可逆容量が大きいので、サイクル寿命が短いという問題もあった。
金属系材料の寿命を長くするために、Si粒子自体の寿命も長くする必要がある。その手法として、Si粒子の微細化が行われている。しかし、Si粒子の微細化という手法では、大粒のものを用いる場合に比べ、格段にサイクル寿命が向上するものの、サイクル後の膨張収縮により、徐々に集電体との剥離が生じ、結果的にサイクル劣化してしまうという問題がある。また、金属系材料の寿命を長くするために、薄膜化するという手法も行われているが、微細化と同様の問題があることに加えて、電池を組んだ際に電池の容積に占める活物質厚みが薄くなり、電池容量が小さくなるという問題もある。
また、特開2003−17051号公報(特許文献5)には、黒鉛/SiOの混合粉をボールミルで微粉砕し、フルフリルアルコール中に分散させ塩酸を加えて重合後、1000℃で焼成炭化することにより、0.1〜1μmのSiOマトリクス中に2〜10nmのSiが分散し、かつ、5〜20μmの炭素マトリクス中にこのSiO/Si複合体と黒鉛の複合体が分散している複合炭素材料が開示されている。
しかしながら、特許文献5の複合炭素材料は、長寿命ではあるが、工業的に不向きな上、フルフリルアルコールから形成される炭素マトリックスは1000℃の処理の段階では非結晶で比重が低いものとなり、結果的に極板密度が低くなるため、単位重量当たりの容量は大きいものの、単位体積当たりの容量は小さく、高容量のSiを使うメリットを生かせないという問題があった。
特開2004−185975号公報(特許請求の範囲) 特開2002−8652号公報(特許請求の範囲) 特開2002−255529号公報(段落番号0050〜0051) 特開2006−49266号公報(段落番号0073〜0075) 特開2003−17051号公報(段落番号0098)
つまり、優れた充放電サイクル特性を備えた、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池の負極材料は、未だ達成されていない。
従って、本発明の課題は、容量が黒鉛の理論容量より高く、エネルギー密度が高く、優れた充放電サイクル特性を有し、且つ、優れた初期不可逆容量を示すリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を提供することにある。また、本発明の課題は、そのようなリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を、工業的に製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、核となる黒鉛粒子にあらかじめ炭素質物質からなる被覆層を形成させた後、被覆層を有する黒鉛核粒子と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包粒子と、を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層に該金属粒子又は金属化合物粒子を埋め込み、且つ、該被覆層の表面を滑らかにすることができるので、次いで、炭化焼成することにより、黒鉛核粒子と、表面が滑らかであり且つリチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた炭化物層と、からなるリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料が得られ、このようにして得られた複合炭素材料は、容量が黒鉛の理論容量より高く、エネルギー密度が高く、優れた充放電サイクル特性を有し、且つ、優れた初期不可逆容量を示すことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、黒鉛核粒子粉末と、炭素質物質と、溶融性有機物と、を加熱混練して、該黒鉛核粒子の表面に該炭素質物質及び該溶融性有機物からなる被覆層を被覆し、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る第一工程と、
該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層に、該金属粒子又は金属化合物粒子、あるいは、該金属内包炭素質粒子を埋め込むと共に整粒し、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0の金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る第二工程と、
該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を、非酸化性雰囲気下、850〜1,400℃で焼成炭化して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を得る第三工程と、
を行い得られることを特徴とするリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を提供するものである。
また、本発明は、黒鉛核粒子粉末と、炭素質物質と、溶融性有機物と、を加熱混練して、該黒鉛核粒子の表面に該炭素質物質及び該溶融性有機物からなる被覆層を被覆し、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る第一工程と、
該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層に、該金属粒子又は金属化合物粒子、あるいは、該金属内包炭素質粒子を埋め込むと共に整粒し、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0の金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る第二工程と、
該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を、非酸化性雰囲気下、850〜1,400℃で焼成炭化して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を得る第三工程と、
を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、容量が黒鉛の理論容量より高く、エネルギー密度が高く、優れた充放電サイクル特性を有し、且つ、優れた初期不可逆容量を示すリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を提供することができる。また、本発明の課題は、そのようなリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を、工業的に製造することができる製造方法を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法は、黒鉛核粒子粉末と、炭素質物質と、溶融性有機物と、を加熱混練して、該黒鉛核粒子の表面に該炭素質物質及び該溶融性有機物からなる被覆層を被覆し、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る第一工程と、
該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層に、該金属粒子又は該金属化合物粒子、あるいは、該金属内包炭素質粒子を埋め込むと共に整粒し、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0の金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る第二工程と、
該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を、非酸化性雰囲気下、850〜1,400℃で焼成炭化して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を得る第三工程と、
を有するリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法である。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法に係る該第一工程は、該黒鉛核粒子粉末と、該炭素質物質と、該溶融性有機物と、を加熱混練することにより、該黒鉛核粒子の表面に、該炭素質物質と該溶融性有機物の混合物からなる該被覆層を被覆し、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る工程である。
該第一工程に係る該黒鉛核粒子粉末としては、特に制限されないが、例えば、天然黒鉛又は人造黒鉛や、人造黒鉛電極の破砕品や、コークスや、これらの混合物が挙げられ、該黒鉛核粒子粉末の形状としては、球状又は鱗片状のものが挙げられ、予め粉砕処理したものや分級処理をしたもの、予め球状化処理したものであってもよい。該黒鉛核粒子粉末に係る該人造黒鉛としては、例えば、2500℃以上の熱履歴を持つ人造黒鉛が挙げられる。そして、該黒鉛核粒子粉末としては、充放電容量が高くなるという点で、球状又は鱗片状の天然黒鉛、あるいは、2500℃以上の熱履歴を持つ人造黒鉛が好ましい。
該黒鉛核粒子粉末は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、人造黒鉛電極の破砕品、コークス等を、ローラーミルや衝撃粉砕機等の粉砕機を用いて粉砕し、分級して得られる。
該黒鉛核粒子粉末のアスペクト比であるが、後述する該第二工程で球状化されて、アスペクト比が1.0〜2.0になり、後述する該第三工程においてもこの形状が維持されるため、該第一工程で用いる該黒鉛核粒子粉末のアスペクト比は2.0以上であってもよい。そのため、該黒鉛核粒子粉末のアスペクト比は、特に制限されないが、該黒鉛核粒子粉末のアスペクト比が2.0以下であることが、リチウムイオン二次電池の負極内での充填性が高くなるので充放電容量が優れる点で好ましい。
該黒鉛核粒子粉末は、予め球状化処理されたものを用いてもよいが、この球状化する方法としては、例えば、鱗片状黒鉛等の非球状の黒鉛粒子を、ハイブリダイゼーションシステムを用いて高速気流中衝撃法により、粒子同士の衝突、磨耗及び圧縮作用により球状化処理する方法が挙げられる。このような予め球状化処理された該黒鉛核粒子粉末としては、例えば、中越黒鉛工業株式会社製の球状化黒鉛が挙げられる。
該黒鉛核粒子粉末の体積基準メディアン径は、1〜30μmであることが好ましい。該黒鉛核粒子粉末の体積基準メディアン径が、上記範囲より大きくなると、リチウムイオン二次電池として大電流放電する際、リチウムイオンの粒内拡散距離が長くなり、出力特性が低くなり易くなり、また、リチウムイオン二次電池の負極を作成する際、活物質塗工時における膜厚を薄く均一な層にすることが困難になり易く、体積当たりの出力特性が低くなり易い。また、該黒鉛核粒子粉末の体積基準メディアン径が、上記範囲より小さいと、比表面積が大きくなり過ぎて、初期の不可逆容量が大きくなり易い。なお、本発明において、該体積基準メディアン径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置(島津製作所製SALD2000)により測定された値であり、体積を基準としたメディアン径である。
該黒鉛核粒子粉末のX線広角回折法により測定した(002)面の面間隔d(002)は、好ましくは0.3500nm以下、特に好ましくは0.3400nm以下、更に好ましくは0.3358nm以下である。該黒鉛核粒子粉末のX線広角回折法により測定した(002)面の面間隔d(002)が、上記範囲を超えると、放電可逆容量が330mAh/g未満となる。なお、本発明においては、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を用い、反射式ディフラクトメーター法によって、広角X線回折曲線を測定し、学振法を用いて、該面間隔d(002)を測定した。
該炭素質物質としては、ピッチ、タール、常温で液状のフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂などの有機高分子等が挙げられ、ピッチが、粘性が高いので次の第二工程におけるリチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末を良好に固着できる点や第三工程での焼成炭化時の炭化率が高くなる点で好ましい。そして、該炭素質物質に係る該ピッチとしては、特に制限されず、コールタールピッチ、石油ピッチ、縮合多環芳香族炭化水素化合物の重縮合で得られる有機合成ピッチ、ヘテロ原子含有縮合多環芳香族炭化水素化合物の重縮合で得られる有機合成ピッチ等が挙げられ、これらのうち、コールタールピッチが好ましい。
該炭素質物質に係る該ピッチの軟化点は、環球法で測定された軟化点が好ましくは70〜250℃、特に好ましくは70〜150℃、更に好ましくは70〜90℃である。該ピッチの軟化点が、上記範囲未満だと、該第二工程において、ピッチ溶融分が装置内壁に付着してしまい、連続運転ができなくなるという不具合が生じ易く、また、上記範囲を超えると、ピッチの軟化状態が悪くなるため分散性が悪くなり易く、該第二工程において、球状化が困難となり易い。また、軟化点の異なるピッチ同士を二種以上混合することや、タールを添加することにより、軟化点を上記範囲に調整したピッチを用いてもよい。
該炭素質物質に係る該ピッチとしては、負極材としての初回充放電ロスが低くなる点で、濾過などの方法によりフリーカーボンを除去したピッチ又はキノリン不溶分の含有率が1%未満であるピッチが好ましい。
該第一工程に係る該溶融性有機物は、該第一工程で加熱混練する際の加熱温度での粘度が20Pa・s以下の有機物を指し、該溶融性有機物としては、合成油、天然油、ステアリン酸、合成ワックス、天然ワックス等が挙げられる。そして、該溶融性有機物は、好ましくは空気中400℃に加熱した時の揮発分が50%以上であって、且つ、不活性雰囲気中800℃に加熱した時の残炭率が3%以下である。該第一工程において、該黒鉛核粒子粉末と該ピッチ等の該炭素質物質とを加熱混合する際に、該炭素質物質が低粘度の溶融状態になる必要があるので、該炭素質物質の粘度を低下させるために該溶融性有機物が用いられる。そのため、該溶融性有機物は、分子量が小さい方が好ましく、加熱混練中に過度の黒鉛核粒子の粉砕が生じるのを防ぐものが好ましい。また、該溶融性有機物は、該第二工程において、潤滑剤としても作用し、造粒粉末が微粉化するのを防ぐ効果がある。また、該溶融性有機物は、生産面を考慮すると、装置の金属磨耗を抑える効果、装置内部へのピッチの付着を抑える効果も有する。また、該第三工程において、該金属又は金属化合物が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を焼成炭化する際に、該整粒粉末中に含まれる該溶融性有機物が揮散する際のガス圧によって、該整粒粉末の周辺の酸素を追い出す効果、あるいは、該溶融性有機物と酸素が反応して酸素濃度を低下させるという効果もある。そのため、該溶融性有機物は、空気中400℃に加熱した時に50%以上が揮発する有機物であり、揮発分が50%より少ないと該整粒粉末の周辺の酸素濃度が十分に低下し難くなり、該炭素質物質由来の炭素の結晶性が低下し易くなり、可逆容量も低下し易くなる。また、該溶融性有機物中の残炭分は、可逆容量を低下させることになるので、できるだけ残炭率が低いことが望ましいため、該溶融性有機物は、不活性雰囲気中で800℃まで加熱した時の残炭率が3%以下であることが好ましい。なお、該不活性雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気を指す。
該第一工程において加熱混練する際の該炭素質物質の配合量は、該黒鉛核粒子粉末100重量部に対して5〜40重量部とするのが好ましく、5〜30重量部とするのが特に好ましく、5〜25重量部とするのが更に好ましい。該炭素質物質の配合量が、上記範囲未満だと、該黒鉛核粒子の表面に該炭素質物質を均一に被覆することが困難となり易く、また、粒度分布の微細部が多くなりブロードとなり易い。
また、該炭素質物質の配合量が、上記範囲を超えると、粒子同士が過剰に凝集するため、個々の造粒粒子を1個づつ解砕することが困難となり易く、複合炭素材料の粒子径が大きくなり易く、また、被覆層の厚みが不均一となり易く、また、該炭素質物質単独の粉末が存在し易くなる。そのうえ、粗大な塊が形成されるため複合炭素材料の粉砕が必要なり、電池特性として初回充放電ロスが大きくなり易い。また、該第二工程において、余分な該炭素質物質が装置内部に付着するため、連続的な運転が困難となる不具合が生じ易くなる。
該第一工程において加熱混練する際の該溶融性有機物の配合量は、該黒鉛核粒子粉末100重量部に対して1〜30重量部とするのが好ましく、3〜20重量部とするのが特に好ましい。該溶融性有機物の配合量が、上記範囲未満だと、該第二工程において、外部エネルギーの付与が過剰となり、結果として微粉が多く残存してしまい易く、微粉の除去が難しい上、収率が低下し易くなり、また、上記範囲を超えると、該第二工程で該被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒化が困難となり易く、また、粗大な塊が形成され易くなる。
該第一工程では、該黒鉛核粒子粉末と、該炭素質物質と、該溶融性有機物と、を加熱しながら混練する。該第一工程での該黒鉛核粒子粉末と、該炭素質物質と、該溶融性有機物と、の混練方法としては、
(i)先に、該黒鉛核粒子粉末及び該溶融性有機物を加熱混練した後、該炭素質物質を添加して加熱混練する方法
(ii)先に、該黒鉛核粒子粉末及び該炭素質物質を加熱混練した後、該溶融性有機物を添加して加熱混練する方法
(iii)該黒鉛核粒子粉末、該炭素質物質及び該溶融性有機物を加熱混練する方法、
等が挙げられる。これらのうち、該黒鉛核粒子粉末の過度の微粉砕化を防ぐことができる点で、該(i)及び該(iii)の方法が好ましい。
該第一工程で加熱混練を行う際の加熱温度は、該炭素質物質の軟化点を超える温度であり、好ましくは該炭素質物質の軟化点より20℃以上高い温度である。
該第一工程の加熱混練の操作の形態例を示すと、該黒鉛核粒子粉末、該炭素質物質及び該溶融性有機物を混練装置内に投入し、混練しながら装置容器内の温度を該炭素質物質の軟化点を超える所定温度にまで昇温させ、加熱しながら十分に混練する。加熱混練する時間は、混練装置の容量、混練羽形状、該黒鉛核粒子粉末、該炭素質物質及び該溶融性有機物の投入量などにより、適宜選択されるが、該炭素質物質の融点を超える温度で通常10分間〜2時間である。加熱混練後、室温まで冷却して該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る。
該第一工程で、加熱混練を行うための混練装置としては、特に制限されず、通常、粉体を加熱しながら攪拌又は混練できるものであればよく、ミキサー、ニーダー、加圧蓋を設けた加圧式ニーダー等が挙げられる。
このようにして、該第一工程で、該黒鉛核粒子粉末と、該炭素質物質と、該溶融性有機物と、を加熱混練することにより、該黒鉛核粒子の粒子表面に、該炭素質物質及び該溶融性有機物からなる被覆層を被覆させて、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る。
該第一工程により得られる該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層の厚みは、好ましくは0.3μm以下、特に好ましくは0.01〜0.2μmである。該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層の厚みが、上記範囲内にあることにより、リチウムイオン二次電池の容量劣化が起こり難くなる。
該第一工程により得られる該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末のレーザー回折法により測定した体積基準メディアン径は、特に制限されないが、概ね5〜40μmである。
次いで、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法に係る該第二工程を行う。
該第二工程の第一の形態例は、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の該被覆層に、該金属粒子又は該金属化合物粒子を埋め込み、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る工程である(以下、第二工程(A)とも記載する。)。また、該第二工程(A)では、該黒鉛核粒子が摩擦及び圧縮されることにより、黒鉛の微粒子破片が生じる場合もあるが、このような場合、該黒鉛の微粒子破片も、該被覆層に埋め込まれる。なお、以下、該第二工程(A)に係る該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子を、該第二工程(A)に係る金属粒子とも記載し、また、該第二工程(A)に係る該リチウムを吸蔵及び放出する金属化合物粒子を、該第二工程(A)に係る金属化合物粒子とも記載する。つまり、該第二工程(A)は、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を、直接、該被覆層に埋め込む工程である。
あるいは、該第二工程の第二の形態例は、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の該被覆層に、該金属内包炭素質粒子を埋め込み、該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る工程である(以下、第二工程(B)とも記載する。)。また、該第二工程(B)では、該黒鉛核粒子が摩擦及び圧縮されることにより、黒鉛の微粒子破片が生じる場合もあるが、このような場合、該黒鉛の微粒子破片も、該被覆層に埋め込まれる。なお、以下、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子を、第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子とも記載する。つまり、該第二工程(B)は、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子を介して、該被覆層に埋め込む工程である。
また、該第二工程(A)及び(B)では、該混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末は、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0に整粒される。
該第二工程(A)に係る金属粒子としては、Si、アモルファスSiなどの結晶性の低いものがリチウムイオンを吸蔵した際の膨張量およびリチウムイオンを放出した際の収縮量が小さく、サイクル特性が良いという点で好ましい。
該第二工程(A)に係る金属化合物粒子としては、SiO、または珪素を含むSi−Mg、Si−Al、Si−Feなど金属合金等が挙げられ、これらのうち、SiO(式中、0.8≦x≦1.5)であることが、該第三工程での焼成炭化で、SiOの不均化反応が起こり微細Siを形成させることができ、且つSiOが膨張緩和材として機能する点で好ましく、SiO(式中、x=1)が特に好ましい。
該第二工程(A)では、該第二工程(A)に係る金属粒子と該第二工程(A)に係る金属化合物粒子とを組み合わせてもよい。
該第二工程(A)に係る金属粒子及び該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の最大粒子径は、2μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることが特に好ましい。該第二工程(A)に係る金属化合物粉末が、SiOの場合、該第三工程における焼成炭化により、微細なSi相とSiO相に分離するが、微細化して分散されたSi相の導電性を確保するために、該第二工程(A)に係る金属化合物粉末の粒径はできるだけ小さいことが好ましい。該第二工程(A)に係る金属化合物粉末の粒径が大きい程、粒中心部のSi相を絶縁体のSiO相が覆うことになり、活物質としてのリチウムの挿入脱離の機能が阻害され易くなる。
また、複合炭素材料の炭化物層の厚みが3μmを超えると、容量劣化を起こし易くなり、且つ、厚みが3μmの被覆層を形成されること自体が困難となり易い。そのため、複合炭素材料の炭化物層の厚みは3μm以下であることが好ましいが、該第二工程(A)に係る金属粒子及び該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の最大粒子径が2μmを超えると、3μm以下の厚みの該被覆層に、該第二工程(A)に係る金属粒子及び該第二工程(A)に係る金属化合物粒子を埋め込むことが困難となり易い。
該第二工程(A)において、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の混合量は、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部である。該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の混合量が、上記範囲未満だと、高容量化の効果が得られ難くなり、一方、上記範囲を超えると、Si等の金属に均一に導電性を付与することが困難となり易くなり、サイクル特性が低くなり易い。
該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子は、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子が、ピッチ、ポリマー等の焼成炭化により炭化物となる物質、又はピッチ、ポリマー等の炭化物の粒子中に、内包されている粒子である。
該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子において、該金属粒子又は該金属化合物粒子が内包される物質は、ピッチ、フェノール系樹脂やエポキシ系樹脂やフラン系樹脂などのポリマー等の焼成炭化により炭化物となる物質、又はピッチ、ポリマー等の炭化物であるが、これらは、該第三工程を行って得られるリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の炭化物層中では、黒鉛微粒子となって存在することになる。
該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子において、内包されている金属粒子は、Siが挙げられる。また、該第二工程(B)に係る金属内包粒子において、内包されている金属化合物粉末としては、SiO、または珪素を含むSi−Mg、Si−Al、Si−Feなど金属合金等が挙げられ、これらのうち、SiO(式中、0.8≦x≦1.5)であることが、該第三工程での焼成炭化で、SiOの不均化反応が起こり微細Siを形成させることができ、且つSiOが膨張緩和材として機能する点で好ましく、SiO(式中、x=1)が特に好ましい。
該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子は、金属粒子と金属化合物粒子の両方が内包されたものでもよい。
該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子の最大粒子径は、2μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることが特に好ましい。複合炭素材料の炭化物層の厚みが3μmを超えると、容量劣化を起こし易くなり、且つ、厚みが3μmの被覆層を形成させること自体が困難となり易い、そのため、複合炭素材料の炭化物層の厚みは3μm以下であることが好ましいが、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子の最大粒子径が2μmを超えると、3μm以下の厚みの該被覆層に、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子を埋め込むことが困難となり易い。
該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子を製造する方法としては、
(I)該金属粒子又は金属化合物粒子の粉末と、ピッチとを混合し、加熱混練して、溶融ピッチ中に該金属粒子又は該金属化合物粒子を混合し、次いで、冷却固化し、粉砕し、次いで、表面を酸化して不融化する方法、
(II)モノマー中に、該金属粒子又は該金属化合物粒子を分散させた状態で重合、固化する方法、
(III)該(I)又は該(II)の方法で得られた金属内包粒子を、焼成炭化する方法、
等が挙げられる。また、該(II)の方法では、該金属粒子又は該金属化合物粒子の粉末とともに、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック等の既に炭化されている物質の粉末や、ピッチ、樹脂、ポリマー等の非酸化性雰囲気下で焼成炭化することにより炭化する物質の粉末を併用することもできる。
該第二工程では、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子を用いることが、該第三工程での焼成炭化の際に、粒子の形状安定性が高まる点、及び複合炭素材料の炭化物層に、微小な黒鉛等の炭化物を埋め込むことができるので、導電性を付与でき、膨張緩和を高める点で、好ましい。
該第二工程(B)において、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子の混合量は、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部である。該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子の混合量が、上記範囲未満だと、高容量化の効果が得られ難くなり、一方、上記範囲を超えると、Si等の金属に均一に導電性を付与することが困難となり易くなり、サイクル特性が低くなり易い。
該第二工程では、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の粉末、あるいは、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子と、を混合し、得られる混合粉末を、摩擦及び圧縮する。
該第二工程では、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイザー(株式会社奈良機械製作所社製)等を用いて、該混合粉末を、繰り返し摩擦させ圧縮して、該混合粉末に外部から機械的エネルギーを加え続ける。このことにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層に、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の粉末、あるいは、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子と、該黒鉛核粒子が摩擦及び圧縮されることにより生じる黒鉛の微粒子破片とが埋め込まれ、更に、埋め込みの際に生じる穴が、機械的エネルギーが加えられることより閉じ、そして、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0に整粒される。
このようにして、該第二工程により、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0であり、且つ、該黒鉛核粒子が摩擦及び圧縮されることにより生じる黒鉛の微粒子破片と、金属粒子又は金属化合物粒子とが埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末が得られる。
なお、該混合粉末を摩擦及び圧縮する装置、すなわち、外部から機械的エネルギーを加える具体的な装置としては、上記装置に限定されるものではなく、該混合粉末を摩擦させ圧縮することができるものであればよい。
該混合粉末に対して機械的エネルギーを付与する方法としては、例えば、図1に示すハイブリダイザー(株式会社奈良機械製作所製)を用いる方法が挙げられる。図1に示すハイブリダイザー内に、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の粉末、あるいは、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子とを、原料投入口1より投入し、回転部8を、回転周速20〜100m/sで1分〜3分回転させる。このとき、原料循環路2を通してドラム6と該回転部8の隙間に投入された該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の粉末、あるいは、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子との混合粉末に対し、該ドラム6と該回転部8との回転速度の差異により生じる摩擦力、圧縮力及び衝突力により、該混合粉末に機械的エネルギーが加えられる。なお、3はステーター、4はジャケット、5は原料排出部、7はブレードである。
図1に示す該ハイブリダイザーで該混合粉末に機械的エネルギーを加えている際の該ハイブリダイザー内部の温度は、機械的エネルギーの付与により上昇するが、該第一工程に係る該炭素質物質の軟化点+20℃の温度以下に調整することが好ましい。該ハイブリダイザー内の温度が、該炭素質物質の軟化点+20℃を超えると、該炭素質物質が造粒粒子の間隙より溶融して溶出し、溶出した該炭素質物質が該ハイブリダイザー内部に付着し易くなるため、定常的な連続運転が困難となり易い。なお、該炭素質物質の軟化点+20℃の温度以下に調整するとは、例えば、該炭素質物質の軟化点が90℃の場合、該ハイブリダイザー内部の温度を、110℃以下にするということである。
図1に示す該ハイブリダイザーで該混合粉末に機械的エネルギーを加えている際の該回転部8の回転周速は、20〜100m/sが好ましい。該回転部8の回転周速が、20m/s未満だと、該混合粉末が受ける機械的エネルギーが小さく、該黒鉛の微粒子破片、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子、あるいは、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子が埋め込まれ難くなり、また、100m/sを超えても、100m/sの場合と、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の性能に大差がなく、コスト的な面、装置の安全性等を考慮すると上限は100m/sとするのが好ましい。また、該ハイブリダイザーで該混合粉末に機械的エネルギーを加えている際の処理時間は、30秒〜5分が好ましく、1分〜3分が特に好ましい。該処理時間が、30秒未満では埋め込みが起り難く、また、5分を超えても、リチウムイオン二次電池負極材用炭素粒子粉末の物性がほとんど変化しないため、生産性を考慮すると、該処理時間は、2分以下が特に好ましい。
また、該第二工程では、該混合粉末への摩擦力及び圧縮力が強すぎて、該被覆層を有する黒鉛核粒子の破壊が生じてしまう場合には、磨耗を減らすために、該第一工程に係る該溶融性有機物を添加することができる。その際、該溶融性有機物の投入量は、コスト及び処理時間を考慮して、適宜決定される。
なお、該第二工程では、該混合粉末を摩擦及び圧縮する際の処理条件、例えば、該ハイブリダイザーを用いる場合であれば、該回転部8の回転周速、処理時間、処理温度等を上記のように適宜選択することにより、粒子径アスペクト比を1.0〜2.0に整粒することができる。
該第二工程を行い得られる粒子径アスペクト比が1.0〜2.0に整粒された粒子は、次の第三工程でもその形状が維持されるので、該第三工程を行い得られる負極材用複合炭素材料は、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0と小さく、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料として高容量な特性を発揮することができる。
該第二工程を行い得られる該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子では、該被覆層の厚みは、0.5〜4μmであることが適当であり、3μm以下であることが、容量劣化が起こり難くなる点で好ましく、0.5〜1.5μmであることが特に好ましい。
次いで、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法に係る該第三工程を行う。該第三工程は、該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を、非酸化性雰囲気下、850〜1,400℃で焼成炭化して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を得る工程である。
該第三工程で、該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を焼成炭化する際の焼成炭化温度は、850〜1,400℃、好ましくは850〜1,350℃、特に好ましくは900〜1,100℃である。該第三工程において、該焼成炭化温度が、上記範囲未満だと、該溶融性有機物の揮散が十分でなく、また、該炭素質物質中の低分子有機未燃分が残存し、リチウムイオン二次電池の充放電効率の低下やサイクル特性の劣化が起こる。また、該第三工程において、該焼成炭化温度が、上記範囲を超えると、Si等の金属と炭素とが反応して、SiC等の金属炭化物となるので好ましくない。
特に、該被覆層に埋め込まれている該金属化合物粒子が、SiOの場合、該第三工程における焼成炭化で加熱されることにより、SiOが、不均化反応により、SiとSiOの2相に分離する。例えば、x=1の場合、下記式:
2SiO → Si + SiO
のとおりである。
この不均化反応は、800℃より高温で進行し、温度が高くなる程、Si相の結晶が大きくなり、Si(220)のピークの半値幅が小さくなる。
また、1400℃より高い温度では、Siと炭素が反応して、SiCに変化してしまう。SiCは、リチウムの挿入に対して全く不活性であるため、SiCが生成すると、活物質の容量が低くなる。
従って、該被覆層に埋め込まれている該金属化合物粒子が、SiOの場合、焼成温度は、850〜1,400℃、好ましくは850〜1,350℃、特に好ましくは900〜1,100℃である。
該第三工程では、非酸化性雰囲気下で焼成炭化を行うが、該非酸化性雰囲気下とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下や、該ピッチ等の炭素質物質が酸化消耗することなく炭化する雰囲気である。
このように、該第三工程で、該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を焼成炭化することにより、該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子から、該溶融性有機物が揮散すると共に、該被覆層を構成している該炭素質物質が炭化して炭化物層となり、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料が得られる。
また、該第二工程(B)を有し、且つ、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子中に未炭化物が存在する場合、該第三工程では、該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子から、該溶融性有機物が揮散すると共に、該被覆層を構成している該炭素質物質が炭化して炭化物層となることに加えて、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子中の未炭化物が炭化し黒鉛微粒子となり、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料が得られる。
該第三工程を行った後、該第三工程を行い得られた該リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料末を、必要に応じて、解砕又は分級することができる。該解砕を行うための解砕装置としては、特に制限されず、ターボミル(株式会社マツボー製)、クイックミル(株式会社セイシン企業製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)等の装置が例示される。また、該分級では、最小粒子径1μm以上、最大粒子径55μm以下、メディアン径5〜25μmに、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を調整することができる。
このようにして、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法を行い得られるリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料、すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料は、黒鉛核粒子と、該黒鉛核粒子の表面に形成されている炭化物層と、からなり、
該炭化物層には、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子と黒鉛微粒子とが、埋め込まれており、
粒子径アスペクト比が1.0〜2.0である、
リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料である。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、粒子径アスペクト比は1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.6、特に好ましく1.0〜1.3である。該粒子アスペクト比が上記範囲内であることにより、負極での充填性と電解液を含有するバランスがとれて充放電容量が高くなる。該粒子径アスペクト比が2.0より大きくなると、活物質層塗工時において黒鉛層方向が基盤と平行に配向しやすく、活物質層が基盤から剥離し易くなり、サイクル特性が劣化する不具合が生じる。
該粒子径アスペクト比の調節は、該第二工程での摩擦又は圧縮の条件、例えば、ハイブリダイザーではその回転速度、該第一工程での該黒鉛核粒子粉末、該炭素質物質を選択することにより可能となる。なお、本発明では、SEM(走査型電子顕微鏡)観察にて、該負極材用複合炭素材料から粒子100個を任意に選び出し、粒子の最長径を最小径で除した値の平均値を、該粒子径アスペクト比とする。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料に係る該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子としては、Siが挙げられる。また、本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料に係る該リチウムを吸蔵及び放出する金属化合物粒子としては、SiO、または珪素を含むSi−Mg、Si−Al、Si−Feなど金属合金等が挙げられ、これらのうち、SiO(式中、0.8≦y≦1.5)であることが特に好ましい。そして、酸化珪素の不均化反応により生成した珪素及び酸化珪素粒子であることが、Siが微細であり、且つSiOが膨張緩和材として機能するため、リチウムイオン二次電池の高容量で長寿命となる点で特に好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、該炭化物層の厚みが、3μm以下であることが、容量劣化が起こり難くなる点で好ましく、0.5〜1.5μmが特に好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、該黒鉛核粒子が、天然黒鉛、又は2500℃以上の熱履歴を持つ人造黒鉛であることが、電池容量が高い点で好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、該炭化物層が、フリーカーボンを除去したピッチ又はキノリン不溶分の含有率が1%未満であるピッチの炭化物からなることが、初回充放電ロスが少なくなる点で好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の最大粒子径が、2μm以下であることが、導電性が高くなる点で好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。複合炭素材料に含有される金属粒子又は金属化合物粒子の量は、複合炭素材料に対して2〜20重量%が好ましい。複合炭素材料に含有される金属粒子又は金属化合物粒子の量が、2重量%未満だと、充放電容量の増加がなく、また、20重量%を超えると、容量劣化が起こり易くなる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の最大粒子径に対する該炭化物層の厚みの比(炭化物層の厚み/金属粒子又は金属化合物粒子の最大粒子径)が、1.5〜4であることが、容量劣化が起こり難くなる点で好ましく、1.5〜2であることが特に好ましい。なお、該リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の最大粒子径に対する該炭化物層の厚みの比の調製は、該第一工程の該炭素質物質の配合量、第一工程で得られる該被覆層を有する黒鉛核粒子の被覆層の厚さ、該第二工程(A)に係る金属粒子又は該第二工程(A)に係る金属化合物粒子の粒径、該第二工程(B)に係る金属内包炭素質粒子に内包されている金属粒子又は金属化合物粒子の粒径を調整すること、あるいは、該第二工程で、粉末を摩擦及び圧縮する際の条件等を調整すること等で可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、タッピング密度が1.0〜1.3g/cmであることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料のBET比表面積が1.5〜5m/gであることが好ましい。複合炭素材料のBET比表面積が、上記範囲未満だと、リチウムイオンの脱挿入に要する反応面積が小さいため、出力特性を維持することが困難となり易く、また、上記範囲を超えると、反応面積が大きくなり過ぎて、初回充電時に大きなロスを生じ易くなる。比表面積の調節は、該第一工程で被覆する該被覆層の厚み、該第二工程での摩擦又は圧縮の条件、例えば、ハイブリダイザーではその回転速度、該第三工程を行った後に粉砕機を用いて粉砕し、その粉砕条件を調整すること、該第三工程を行った後に分級を行い、その分級条件を調整すること等で可能となる。なお、BET比表面積は、Nガスを用いたBET 10点法により算出した値とする。本発明で、窒素吸着比表面積は、表面積計(島津製作所社製、全自動表面積測定装置)を用い、測定対象に対して窒素流通下、350℃で30分間、予備乾燥を行った後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET 10点法によって測定した値である。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の体積基準メディアン径D50は、好ましくは5〜30μm、特に好ましくは10〜25μm、更に好ましくは10〜20μmである。複合炭素材料の体積基準メディアン径が、5μm未満だと、スラリー調製時における液中への分散が悪くなり易く、また、比表面積が小さくなる。一方、複合炭素材料の体積基準メディアン径が、30μmを超えると、リチウムイオン二次電池として大電流放電する際、リチウムイオンの粒内拡散距離が長くなり、出力特性が低くなり易い。また、活物質塗工時における膜厚が制限され、出力特性に優れる電極構造を設計する際、薄く均一な活物質層を塗工することが困難となり易い。なお、本発明で、体積基準メディアン径は、レーザー回折法により測定されるメディアン径であり、島津製作所社製SALDにて測定されるメディアン径である。該体積基準メディアン径の調節は、該第一工程において、該黒鉛核粒子粉末の粒子径、該炭素質物質の配合量を調整すること、該第三工程を行った後に粉砕機を用いて粉砕し、その粉砕条件を調整すること、該第三工程を行った後に分級を行い、その分級条件を調整すること等で可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の粒子径アスペクト比は、好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.0〜1.6、更に好ましくは1.0〜1.3である。複合炭素材料の粒子径アスペクト比が、2.0を超えると、活物質塗工時において黒鉛層方向が基盤と平行に配列し易くなり、活物質層が基盤から剥離し易くなり、サイクル特性が低くなり易くなる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料では、粒子内部の結晶性について、X線回折法により得られる黒鉛結晶子の(002)面の面間隔d(002)面で議論するのが妥当である。本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離は、好ましくは0.3400nm以下、特に好ましくは0.3370nm以下、更に好ましくは0.3354〜0.3365nmである。本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離は、上記範囲を超えると、放電可逆容量が小さくなり易い。天然黒鉛は、理想黒鉛の0.3354nmに近い値を示し、易黒鉛化コークスは2,800℃以上の熱処理を施すことで、0.3365nm以下にすることができる。なお、本発明において、該黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離は、CuKα線をX線源、標準物質に高純度シリコンを使用し、(002)面の回折パターンのピーク位置、半値幅から学振法に基づき算出した値である。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の形態例について、図3〜図5を参照して説明する。図3〜図5中、21は本発明のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を、22は黒鉛核粒子を、24は炭化物層を、23は該炭化物層24に埋め込まれているSi粒子(リチウム金属を吸蔵及び放出する金属粒子)を示す。該Si粒子23は、図3に示すように該炭化物層24から一部がはみ出ていてもよく、あるいは、図4又は図5に示すように該炭化物層24内に全体が埋め込まれていてもよい。また、該Si粒子は、図3又図4に示すように該黒鉛核粒子22に接触していてもよく、あるいは、図5に示すように該黒鉛核粒子に接触していなくてもよい。また、該炭化物層24の厚みは、図3に示すように該Si粒子23の粒径より小さくても、あるいは、図4に示すように該Si粒子23の粒径と同程度あっても、あるいは、図5に示すように該Si粒子の粒径より大きくてもよい。なお、図3〜図5は、発明のチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料21の模式的な断面図である。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。なお、これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
<リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造>
(第一工程)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛100重量部に対し、溶融性有機物として、空気中で400℃に加熱した場合に70%が揮発し、且つ、不活性雰囲気中で800℃に加熱した際の残炭率が0.6%の溶融機械油5重量部を混合し、混練機にて、150℃、30分間加熱混練後、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して10重量部添加し、更に150℃、30分間加熱混練した後、25℃まで冷却し、粉体Aを得た。
(第二工程)
次に、得られた粉体A 100重量部と平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を、25重量部を混合して、混合粉体を得た。
次に、ハイブリダイザー装置内に、該混合粉体を投入し、装置内の最高温度を75℃±5℃に保ちながら、回転数8000rpm(回転周速:100m/s)で3分間処理し、粉体を装置より取り出し、25℃に冷却して、粉体Bを得た。
(第三工程)
得られた粉体Bを、黒鉛坩堝に投入し、窒素ガス雰囲気下、1000℃で焼成炭化した。次いで、解砕装置(日清エンジニアリング株式会社製、スーパーローター)で解砕し、分級装置(日清エンジニアリング株式会社製、ターボクラシファイア)で分級して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料Cを得た。その物性を表1及び表2に示す。
各特性の測定方法
(1)平均粒子径
レーザー回折式の粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD2000)により測定した体積基準メディアン径
(2)X線回折法よるd(002)(nm)
X線回折法による測定は、ターゲットをCu(Kα線)グラファイトモノクロメーター、スリットを発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度の条件とし、学振法により結晶子格子面間隔d(002)を求める。
(3)タップ密度(g/cm
25mlメスシリンダーに複合炭素材料粒子5gを入れ、振動板との間隙を10mmとして1000回タッピングを繰り返した後の値である。
(4)比表面積(m2/g)
表面積計(島津製全自動表面積測定装置)を用い、測定対象に対して窒素流通下350℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET10点法によって測定した値である。
(5)アスペクト比
走査型電子顕微鏡観察にて、粒子100個を任意に選び出し、粒子の最大径を最小径で除し、その平均値を粒子径アスペクト比とする。
(6)被覆層の厚さ
被覆層の厚さ =(複合粒子の平均粒子径−原料黒鉛核粒子の平均粒子径)/2
(7)Si量およびSiC量の測定
(a)作製した複合炭素材料粒子(約1g)を秤量し粉体aとし、この粉体aと固体の水酸化ナトリウム100gとをガラス製ビーカーに入れて、60℃にて1時間マグネティックスターラにて加熱攪拌し、冷却後、精製水にて水洗して水酸化ナトリウムを除去した濾過残渣(カーボン、SiC、Si)を乾燥して粉体bを得る。乾燥した粉体bを秤量する。
(b)乾燥後の粉体をフッ酸液中で、25℃にて1時間攪拌した後、精製水にて水洗してフッ酸を除去した濾過残渣(カーボン、SiC)を乾燥して粉体cを得る。乾燥した粉体cを秤量する。
((粉体bの重量 − 粉体cの重量)/粉体aの重量)×100
をSi量(重量%)とした。
((粉体aの重量 − 粉体bの重量)/粉体aの重量)×100
をSiOx量(重量%)とした。
(c)SiC量の測定
粉体cを灰化する。
(灰化残分の重量/粉体aの重量)×100をSiC量(重量%)とした。
(8)揮発分の測定
JIS−M8812 石炭類、及びコークス類の工業分析法に従い、磁性坩堝を用いて、900℃で30分間熱処理した後の重量減少率を揮発分とした。
<リチウムイオン二次電池の作成>
(スラリーの調製)
上記のようにして得られた該リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料Cを100重量部に対し、増粘剤として1wt%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を適量投入して30分間攪拌混合した後、結合剤として40wt%のスチレン−ブタジエンゴム(SBR)水溶液を適量投入して5分間攪拌混合し、負極合材ペーストを調製した。
(作用極の作製)
得られた負極合材ペーストを厚さ18μmの銅箔(集電体)上に塗布し、真空中で130℃に加熱して溶媒を完全に揮発させた。得られたシートを極板密度が1.5g/ccになるようローラープレスで圧延し、ポンチで打ち抜いて作用極を得た。
(対極の作製)
不活性雰囲気下、リチウム金属箔をポンチで打ち抜いたニッケルメッシュ(集電体)にめり込ませ、対極を得た。
(可逆放電容量評価用ボタン型電池の作製)
前記の作用極、対極を使用し、評価用電池として図2に示すボタン型電池を不活性雰囲気下で組み立てた。電解液は1mol/dmのリチウム塩LiPFを溶解したエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC) 1:1混合溶液を使用した。充電は電流密度0.2mA/cm、終止電圧5mVで定電流充電を終えた後、下限電流0.02mA/cmとなるまで定電位保持する。放電は電流密度0.2mA/cmにて終止電圧1.5Vまで定電流放電を行い、5サイクル終了後の放電容量を可逆放電容量とした。図2において、9は負極側ステンレスキャップ、10は負極、11は銅箔、12は絶縁ガスケット、13は電解液含浸セパレータ、14はニッケルメッシュ、15は正極側ステンレスキャップ、16は正極である。
(サイクル耐久性評価用ボタン型電池の作製)
対極をリチウムコバルト酸化物に変え、上記と同様、ボタン型電池を組み立てて、20℃の下、0.2Cの電流密度にて4.1V〜3.0V間を100回、繰り返し充放電を行った後の容量維持率を調べた。測定結果を表3に示す。
(実施例2)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が14.1μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3362nmの球状天然黒鉛とし、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiOに代えて、平均粒子径1μm、最大粒子径2μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(実施例3)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が10.9μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3357nmの鱗片状天然黒鉛とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(実施例4)
窒素ガス雰囲気下、1000℃で焼成炭化することに代えて、窒素ガス雰囲気下、900℃で焼成炭化すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(実施例5)
窒素ガス雰囲気下、1000℃で焼成炭化することに代えて、窒素ガス雰囲気下、1,350℃で焼成炭化すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(実施例6)
コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して10重量部添加することに代えて、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して5重量部添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(実施例7)
コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して10重量部添加することに代えて、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して25重量部添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(実施例8)
平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を、25重量部投入することに代えて、以下のようにして得られた金属内包炭素質粒子Aを、40重量部投入すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
<金属内包炭素質粒子Aの製造方法>
平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を50重量部と、平均粒子径が10μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3354nmの鱗片状天然黒鉛50重量部とを混合し、次いで、30重量部のピッチ(軟化点:70℃)を加えて混練し、1000℃で焼成炭化後に、最大粒子径が1μm以下となるように調整し、金属内包炭素質粒子Aを得た。
(実施例9)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が13.1μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3356nmの球状天然黒鉛とし、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を、25重量部とすることに代えて、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を18重量部とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜3に示す。
(実施例10)
平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を、25重量部とすることに代えて、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を40重量部とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜3に示す。
(実施例11)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が12.9μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3355nmの球状天然黒鉛とし、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を、25重量部とすることに代えて、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を18重量部とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜3に示す。
(比較例1)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が12.9μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3364nmの球状天然黒鉛とし、溶融性有機物を混合しない以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例2)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が14.2μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3361nmの球状天然黒鉛とし、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiOに代えて、平均粒子径2μm、最大粒子径3μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)とする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例3)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が13.7μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3360nmの球状天然黒鉛とし、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して10重量部添加することに代えて、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して3重量部添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例4)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3362nmの球状天然黒鉛とし、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して10重量部添加することに代えて、コールタールピッチ(軟化点:90℃)を球状天然黒鉛100重量部に対して50重量部添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例5)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3367nmの球状天然黒鉛とし、窒素ガス雰囲気下、1000℃で焼成炭化することに代えて、窒素ガス雰囲気下、800℃で焼成炭化すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例6)
窒素ガス雰囲気下、1000℃で焼成炭化することに代えて、窒素ガス雰囲気下、1,500℃で焼成炭化すること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例7)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が11.5μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3412nmのか焼コークスとする以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例8)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が13.4μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3355nmの球状天然黒鉛とし、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiOを混合しないこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜表3に示す。
(比較例9)
平均粒子径が13.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3358nmの球状天然黒鉛に代えて、平均粒子径が11.8μm、黒鉛結晶子のd(002)面の層間距離が0.3401nmの球状天然黒鉛とし、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を、25重量部とすることに代えて、平均粒子径0.3μm、最大粒子径0.5μmに調整したSiO(原子比Si/O=1.0)を50重量部とすること以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1〜3に示す。

Figure 0005257740
Figure 0005257740
Figure 0005257740
表1及び表2より、溶融性有機物を添加しない比較例1では、アスペクト比が2.7と高くなるうえに、黒鉛核粒子の破粒により平均粒子径が小さくなり、タップ密度が低下する。このため、初回不可逆容量の増大、容量維持率の低下をきたす。
また、比較例2のように高容量の担い手となるSiの原料となるSiOの粒子径を大きくすると、アスペクト比が2.3と高くなり容量が低下するうえに、容量維持率も低下する。
また、比較例3では、コールタールピッチの添加量が少な過ぎるため炭化物層の厚みが薄くなり過ぎて、初回不可逆容量が増大し、容量維持率が低下する。一方、比較例4では、コールタールピッチの添加量が多過ぎるため炭化物層の厚みが厚くなり過ぎて、初回不可逆容量の増大を招く。
また、焼成炭化温度が低い比較例5では、初回不可逆容量が増大したり、容量維持率が低下する。焼成炭化温度が低い比較例6では、SiOの不均化反応におけるSiの生成反応も起きないため、初回不可逆容量が増大したり、可逆容量が低下する。
実施例8に示したように、Si内包炭素質粒子を用いることで、初回不可逆容量が低くなり、容量維持率を改善することが可能となる。
更に、SiOを添加しない比較例8では、比較例6と同様に可逆容量が低くなった。SiOを過剰に添加した比較例9では、容量維持率が低くなる。
ハイブリダイザーの模式図である。 実施例及び比較例の評価用電池の断面図である。 本発明のチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料21の模式的な断面図である。 本発明のチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料21の模式的な断面図である。 本発明のチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料21の模式的な断面図である。
符号の説明
1 原料投入口
2 原料循環路
3 ステーター
4 ジャケット
5 原料排出口
6 ドラム
7 ブレード
8 回転部
9 負極側ステンレスキャップ
10 負極
11 銅箔
12 絶縁ガスケット
13 電解液含浸セパレータ
14 ニッケルメッシュ
15 正極側ステンレスキャップ
16 正極
21 本発明のチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料
22 黒鉛核粒子
23 Si粒子
24 炭化物層

Claims (6)

  1. 黒鉛核粒子粉末と、炭素質物質と、溶融性有機物と、を加熱混練して、該黒鉛核粒子の表面に該炭素質物質及び該溶融性有機物からなる被覆層を被覆し、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る第一工程と、
    該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層に、該金属粒子又は金属化合物粒子、あるいは、該金属内包炭素質粒子を埋め込むと共に整粒し、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0の金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る第二工程と、
    該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を、非酸化性雰囲気下、850〜1,400℃で焼成炭化して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を得る第三工程と、
    を行い得られることを特徴とするリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料。
  2. 黒鉛核粒子粉末と、炭素質物質と、溶融性有機物と、を加熱混練して、該黒鉛核粒子の表面に該炭素質物質及び該溶融性有機物からなる被覆層を被覆し、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末を得る第一工程と、
    該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末と、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子の粉末、あるいは、リチウムを吸蔵及び放出する金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子の粉末と、を混合し、得られた混合粉末を摩擦及び圧縮することにより、該被覆層を有する黒鉛核粒子の素粒粉末の該被覆層に、該金属粒子又は金属化合物粒子、あるいは、該金属内包炭素質粒子を埋め込むと共に整粒し、粒子径アスペクト比が1.0〜2.0の金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を得る第二工程と、
    該金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の整粒粉末を、非酸化性雰囲気下、850〜1,400℃で焼成炭化して、リチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料を得る第三工程と、
    を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法。
  3. 前記炭素質物質が、フリーカーボンを除去したピッチ又はキノリン不溶分の含有率が1%未満であるピッチであることを特徴とする請求項2記載のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法。
  4. 前記金属粒子又は金属化合物粒子が埋め込まれた被覆層を有する黒鉛核粒子の被覆層の厚みが、0.5〜4μmであることを特徴とする請求項2又は3いずれか1項記載のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法。
  5. 前記金属粉末又は金属化合物粉末の最大粒子径が、2μm以下であることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法。
  6. 金属粒子又は金属化合物粒子を内包している金属内包炭素質粒子粉末の最大粒子径が、2μm以下であることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載のリチウムイオン二次電池の負極材用複合炭素材料の製造方法。
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