JP4927384B2 - リチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、リチウムイオン二次電池用負極ならびにリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、リチウムイオン二次電池用負極ならびにリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

炭素材料と金属を含むリチウムイオン二次電池用負極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いたリチウムイオン二次電池用負極およびそれを用いた放電容量やサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池に比べて高い電圧、高いエネルギー密度を有するので、電子機器の電源として広く普及している。近年、電子機器の小型化あるいは高性能化が急速に進み、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度をさらに向上させる要望がますます高まっている。
現在、リチウムイオン二次電池は、正極にLiCoO、負極に黒鉛を用いたものが一般的である。しかし、黒鉛負極は、充放電の可逆性に優れるものの、その放電容量はすでに層間化合物(LiC6)の理論値(372mAh/g)に近い値まで到達している。そこで、電池のエネルギー密度をさらに高めるためには、黒鉛より放電容量の大きい負極材料を開発する必要がある。
金属リチウムは負極材料として最大の放電容量を有する。しかし、充電時にリチウムがデンドライト状に析出して負極が劣化するため、電池の充放電サイクルが短くなるという問題がある。また、デンドライト状に析出したリチウムがセパレータを貫通して正極に達し、電池が短絡する可能性もある。
そのため、金属リチウムに代わる負極材料として、リチウムと合金を形成する、金属または金属化合物が検討されてきた。これらの合金負極の放電容量は、金属リチウムには及ばないものの黒鉛を遥かにしのぐ放電容量をもつ。しかし、合金化に伴う体積膨張により活物質の粉化・剥離が発生し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性は未だに実用レベルに至っていない。
前述のような合金負極の欠点を解決するため、リチウムと合金化する金属または金属化合物と炭素材料とを複合化した負極材料の開発が検討されている。
例えば、特許文献1(特開2001−102048号公報)には、炭素材料に脂肪酸金属塩を添加して造粒し、熱処理することによって、リチウムと合金を形成する金属を含む造粒型の負極材料が提案されている。
また、特許文献2(特開平11−279785号公報)には、粒子状黒鉛表面に、コールタールなどの有機材料と金属化合物とに由来する被覆層を形成した複合炭素材料を電極として用いる技術が開示されている。
また、特許文献3(特開2004―55505号公報)には、珪素と黒鉛をメカニカルアロイングの手法で複合化し、さらに化学蒸着処理によって形成された炭素層で被覆してなる負極材料が開示されている。
また、特許文献4(特開2004−185975号公報)には、黒鉛粒子表面に、リチウムと合金化可能な金属をメカノケミカル処理で固定化し、さらにその表面に炭素層を形成してなる3層構造の負極材料が開示されている。
特開2001−102048号公報 特開平11−279785号公報 特開2004―55505号公報 特開2004−185975号公報
しかし、上記特許文献1に記載の負極材料は、造粒体を構成する炭素材料の周囲に金属が存在しており、金属の充放電に伴う膨張・収縮によって、炭素材料同士が離れてしまい、造粒体が破壊され、サイクル特性が低下してしまう。
また、上記特許文献2に記載の負極材料は、金属が充放電に伴って膨張・収縮を繰り返すと、金属に密着しているコールタールの炭化被膜が破壊され、黒鉛粒子表面から該炭化被膜と金属が脱落して、サイクル特性が低下してしまう。
また、上記特許文献3に記載の負極材料は、金属が充放電に伴って膨張・収縮を繰り返すと、複合体表面の炭素被膜が割れて複合体の凝集力が弱まり、金属と黒鉛が脱落してサイクル特性が低下してしまう。
また、上記特許文献4に記載の負極材料は、黒鉛と炭素層の界面に金属が固定されているため、金属が充放電に伴って膨張・収縮を繰り返すと、黒鉛から炭素層が剥離し、金属も脱落してサイクル特性が低下してしまう。
上述の通り、従来技術では、リチウムと合金化可能な金属を炭素材料と複合化することで、炭素材料単独の場合よりも高い放電容量を発現するものの、繰り返し充放電による金属の膨張・収縮に起因して、複合構造を保持することができず、サイクル特性が低下するという問題を有する。
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池用負極材料として用いて、放電容量が高く、優れたサイクル特性が得られる負極材料およびその製造方法を提供することを目的とする。また、得られた負極材料を用いてなる、放電容量が高く、優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池用負極およびこの二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下のような特徴を有する。
[1]粗面化された炭素材料の凹部の少なくとも一部に、リチウムと合金化可能な金属または金属化合物が付着し、前記粗面化された炭素材料の凸部は、炭素材料が露出し
かつ、前記金属または金属化合物が付着したのちの炭素材料の表面の凹凸の高低差は、平均値が1〜10μmの範囲にあることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
[2]上記[1]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を用いたリチウムイオン二
次電池用負極。
[3]負極として、上記[2]に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウム
イオン二次電池。
[4]粗面化された炭素材料の表面の少なくとも一部に、リチウムと合金化可能な金属または金属化合物を被覆した後、該被覆された炭素材料の凸部を研磨または研削して炭素材料を露出させ、かつ、前記金属または金属化合物が付着したのちの炭素材料の表面の凹凸の高低差は、平均値が1〜10μmの範囲にあることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料を用いると、黒鉛の理論容量を超える優れた放電容量が得られ、同時に優れたサイクル特性を示すリチウムイオン二次電池を得ることができる。
そのため、本発明の負極材料を用いてなるリチウムイオン二次電池は、近年の電池の高エネルギー密度化に対する要望を満たし、搭載する機器の小型化および高性能化に有効である。
以下、本発明をより具体的に説明する。
[炭素材料]
本発明の炭素材料は、表面が粗面化された炭素材料である。粗面化とは、起伏、突起、隆起などの凸部や、外部に開放された空孔、空隙などの凹部を有する状態を指す。
前記炭素材料表面の凹凸の高低差は、1〜10μmの範囲にあることが好ましい。高低差が1μm以上あれば、凹部に付着した金属または金属化合物が充放電に伴って膨張・収縮を繰り返しても、炭素材料同士の接触が維持され、リチウムイオン二次電池として優れたサイクル特性が得られる。また、高低差が10μm以下であれば、負極材料の充填密度を高くすることができ、電池の単位体積あたりの容量を高く設定することができる。
なお、前記高低差の計測は、例えば、炭素材料の断面を走査型電子顕微鏡で観察することで求めることができる。具体的には、高低差が1μm以上の起伏について、複数個の高低差を計測し、その平均値を求めることにより行うことができる。
前記炭素材料の凸部は、炭素材料自体から直接盛り上げて起伏を形成したものであってもよいし、異種の炭素質の微粒子を機械的エネルギーを付与して埋設したものや、接着成分を介して付着したものであってもよい。
ここで、前記凸部の高さや凹部の深さは炭素材料の平均径の50%以下であることが好ましい。特に1〜30%の範囲にあることがより好ましい。
また、本発明の炭素材料の形状には特に制限はなく、粒状、塊状、球状、楕円体状、板状、繊維状、フィルム状、鱗片状などのいずれであってもよいが、そのアスペクト比は3以下とすることが好ましく、より好ましくは2以下、さらに好ましくは球状に近い、すなわちアスペクト比が1に近い粒子状のものである。つまり、最も好ましいものは球状に近い、アスペクト比の小さい粒子の表面が微細に粗面化されている状態である。
ここで、前記アスペクト比とは、炭素材料の長軸長と、これに直交する短軸方向の長さ(短軸長)の比(長軸長/短軸長)を表し、複数の炭素材料について計測した値の平均値である。前記アスペクト比を3以下とすることにより、サイクル特性が向上する。これは負極を形成した場合に、炭素材料が一方向に配列することなく、かつ電解質が内部に浸透しやすくなるからである。
また、本発明の炭素材料における体積換算の平均粒子径は1〜100μm、特に3〜50μmであることが好ましい。1μm未満では、初期充放電効率が低下するおそれがあり、100μm超ではサイクル特性が低下するおそれがある。
また、本発明の炭素材料は、負極材料として用いたときに高い放電容量を得るために、結晶性が高いことが好ましい。ここでは、X線回折における格子面間隔d002が0.34nm以下、特に0.337nm以下の黒鉛質であることが好ましい。さらに好ましくは0.3365nm以下である。ここで、格子面間隔d002とは、X線としてCuKα線を用い、高純度シリコンを標準物質とするX線回折法「大谷杉郎著、「炭素繊維」、近代編集社、1986年、第733〜742頁」によって測定された値である。
また、本発明の炭素材料の比表面積は、0.5〜20m/g、特に1〜10m/gであることが好ましい。前記比表面積が0.5m/g未満では、リチウムイオンが出入りする黒鉛エッジ面が減少し急速充放電特性が低下することがある。20m/gを超えると、負極合剤ペーストの粘度調整が不安定になったり、バインダーによる結着力が低下することがある。
また、本発明の炭素材料の種類は特に限定されないが、易黒鉛化性の黒鉛前駆体を1500℃以上で黒鉛化処理して得られるものが好ましい。前記易黒鉛化性の黒鉛前駆体としては、石油系、石炭系のタール、ピッチ類を熱処理してなるメソフェーズ小球体、メソフェーズ焼成体(バルクメソフェーズ)、メソフェーズ繊維などのメソフェーズ系炭素質材料、石油コークス、ニードルコークス、生コークス、グリーンコークス、ピッチコークスなどのコークス系炭素質材料などが例示される。なかでも、メソフェーズ小球体、メソフェーズ焼成体(バルクメソフェーズ)、メソフェーズ繊維などのメソフェーズ系の黒鉛前駆体を黒鉛化してなるものが好ましく、特にメソフェーズ小球体を黒鉛化してなるものが最も好ましい。
なお、本発明の炭素材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の黒鉛質材料、非晶質ハードカーボンなどの炭素質材料、有機物などの混合物、造粒物、内包物、被覆物、積層物であってもよい。また、液相、気相、固相における各種化学的処理、熱処理、物理的処理、酸化処理などを施したものであってもよい。
[金属または金属化合物]
本発明の炭素材料に付着しているリチウムと合金化可能な金属としては、Al、Pb、Zn、Sn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Ag、Fe、Au、Pt、Pd、Ge、Ni、B、Si、Sbなどを挙げることができる。これらのなかでも、特に、Si、Snが好ましい。また、前記金属としては、これらの2種以上の合金であってもよい。
前記合金中には、前記金属以外の元素が含有されていてもよく、酸化物や窒化物などの金属化合物を形成していてもよい。また、前記金属及び金属化合物は、そのものが非晶質、または非晶質のものを含むことが好ましい。非晶質であると充電時の膨張が軽減されるからである。
これらのリチウムと合金化可能な金属または金属化合物(以下、「金属類」とも称す。)は、前記炭素材料の凹部の少なくとも一部に付着しており、炭素材料表面に露出している。ただし、前記金属類が付着した部分は、炭素材料自体の凸部よりも起伏が低くなる。
図1に、前記炭素材料の凹部の少なくとも一部に前記金属類10が付着した状態のイメージ図を示す。前記金属類10が付着したのちにおいても、炭素材料表面の凹凸の高低差(例えば、図1のA部拡大図に示す高低差L)は、その平均値が1〜10μmの範囲にあることが好ましい。また、前記炭素材料の凸部には、前記金属類は付着していないことが好ましい。凸部にも金属類が付着している場合には、炭素材料同士の導電性が低下する場合があるからである。
ここで、前記炭素材料の凸部に前記金属類が付着していない状態とする方法としては、例えば、前記炭素材料の表面に金属類を被覆した後、この金属類が被覆された炭素材料の凸部を研磨または研削して炭素材料を露出(図1中B部参照)させる方法により行うことができる。
また、本発明の前記リチウムと合金化可能な金属類が付着した炭素材料全体に占める前記金属類の質量割合は1〜50%、特に3〜10%であることが好ましい。質量割合が1%以上であれば、高い放電容量が得られる。また、質量割合が50%以下であれば、優れたサイクル特性を維持することができる。
前記の質量割合は公知の元素定量分析法やX線回折法(XRD)などによる金属種の定性分析から換算して得ることができる。
前記リチウムと合金化可能な金属類の平均付着厚みは概ね1nm〜2μm、好ましくは10nm〜1μmの範囲である。
なお、前記平均付着厚みは炭素材料の断面を走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察したり、グロー放電発光分析装置(GDS)などにより深さ方向の元素濃度を分析することによって測定することができる。
前記リチウムと合金化可能な金属類は、前記炭素材料の外表面のうち、面積割合で10〜90%、特に20〜80%を被覆していることが好ましい。前記被覆面積が10%以上であれば、金属類が薄膜状に付着しており、優れたサイクル特性が得られる。また、90%以下であれば、炭素材料同士の導電性が保持され、優れたサイクル特性が得られる。
ここで、本発明の炭素材料が負極材料として用いられた場合に高い放電容量を有し、かつ、サイクル特性が改良されるメカニズムについては明らかではないが、負極を形成した場合において、炭素材料の凸部同士が接触して導電性が保持されること、炭素材料の凹部に付着した金属類が充放電によって膨張・収縮を繰り返しても、金属類の周囲に十分な空間があり構造破壊を生じないこと、金属類周囲にも電解質が浸透していること、炭素材料が粗面化されてリチウムイオンが出入りするサイトが増えたこと、バインダーの結着力が高くなったことなどが総合的に寄与しているものと考えられる。
[負極材料の製造方法]
本発明の負極材料の製造方法としては、粗面化された炭素材料の凹部の少なくとも一部に、リチウムと合金化可能な金属類が付着した構造が得られる方法であればいかなる方法を用いてもよい。本発明の負極材料の代表的な製造方法を以下に記載する。
(1)炭素材料を、最終的に得られる負極材料の形状(粒子形状、平均粒子径、表面の粗さ)に調製する。
(2)上記(1)で調製した炭素材料に金属類を薄膜被覆する。
(3)上記(2)で得られた金属類が被覆された炭素材料の形状を実質的に変化させずに、研磨または研削し、炭素材料の凸部に被覆された金属類を取り除く。
少なくとも上記(1)〜(3)の工程を採用することによって、本発明の負極材料を製造することができる。さらに、上記各工程について詳述する。
(1)炭素材料を粗面化する方法として、以下の(a)〜(d)のいずれかの方法が挙げられる。
(a)粒子径の大きい炭素材料に粒子径の小さい炭素材料を機械的エネルギーを付与して打ち込み埋設する。
(b)粒子径の大きい炭素材料に粒子径の小さい炭素材料を接着成分を介して付着させる。
(c)複数の炭素材料を機械的エネルギーを付与し変形させて、あるいは接着成分を介して造粒する。
(d)炭素材料の前駆体中に、高温で蒸発、分解する物質を混入させ、高温で熱処理して、蒸発、分解に由来する空孔を付与する。
上記(a)〜(d)の方法は組み合わせて行ってもよく、炭化、黒鉛化などの熱処理を工程内に取り入れることもできる。上記(b),(c)の接着成分としては、石油系、石炭系のタール、ピッチ類、フェノール樹脂、フラン樹脂などの樹脂類が例示でき、これらを炭化、黒鉛化することで、最終的に得られる炭素材料の構成成分とすることができる。
上記(d)の高温で蒸発、分解する物質とは、各種金属や金属化合物の微粒子が例示でき、黒鉛化を促進する作用を有するものを使用することもできる。前記高温で蒸発、分解する物質の粒子径や配合量を調整することで、最終的に得られる炭素材料の空孔サイズや空孔量を制御することができる。
(2)リチウムと合金化可能な金属類を上記(1)により調製した炭素材料に付着する方法としては、気相法または液相法が薄膜に被覆するうえで好ましく、特に気相法が好ましい。気相法としては、PVD法あるいはCVD法が例示できる。このような方法の好ましい例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法などのPVD法や、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法、MO(Magneto-Optic)CVD法、光CVD法などのCVD法が挙げられる。
これらのなかでもスパッタリング法が最も好ましい。スパッタリング法としては、直流スパックリング法、マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、反応性スパックリング法、バイアススパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが例示できる。
このスパッタリング法は、カソード側に金属のターゲットを設置し、一般に1〜10−2Pa程度の不活性ガス雰囲気中で電極間にグロー放電を起こし、不活性ガスをイオン化させ、ターゲットの金属を叩き出して、アノード側に設置した炭素材料にターゲット金属を被覆する方法が代表例として挙げられる。
前記金属のターゲットの代わりに金属化合物のターゲットを用いてもよい。また、複数の種類の金属ターゲットを同時に用いて炭素材料の外表面に合金を形成してもよい。さらに、金属と金属化合物とを混合してターゲットとして用いてもよい。また、2種類以上のターゲットを用いて、スパッタリングを2回以上行い、例えば、複数の金属および/または金属化合物を順に積層して付着させてもよい。また、不活性ガスの代わりに反応性ガスを用いてもよい。
この場合、炭素材料を機械的に攪拌する、超音波などの振動を与える、またはガスを流通させる方法によって金属類を付着させる炭素材料に動きを与え、前記炭素材料の外表面に金属類を均一に被覆させることが好ましい。
(3)引続き上記(2)で金属類が被覆された炭素材料の形状を実質的に変化させずに、研磨または研削し、炭素材料の凸部に被覆された金属類を取り除く。この研磨、研削工程は機械的な方法で行うことができる。前記機械的な方法としては、例えば、圧縮、剪断、衝突、摩擦などの機械的エネルギーを付与するメカノケミカル処理が挙げられる。このような操作が可能な装置としては、例えば、GRANUREX(フロイント産業(株)製)、ニューグラマシン((株)セイシン企業製)、アグロマスター(ホソカワミクロン(株)製)などの造粒機、ロールミル、ボールミル、ハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所製)、メカノマイクロシステム((株)奈良機械製作所製)、メカノフュージョシステム(ホソカワミクロン(株))などの圧縮剪断式加工装置などが挙げられる。
[リチウムイオン二次電池]
リチウムイオン二次電池は、通常、負極、正極および非水電解質を主たる電池構成要素とする。正極および負極はそれぞれリチウムイオンの担持体からなる。充電時には、リチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極から離脱する電池機構によっている。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極材料として上記金属類が付着した炭素材料(以下、単に「炭素材料」という。)を含有すること以外は特に限定されない。本発明の他の電池構成要素については一般的なリチウムイオン二次電池の要素に準じる。
以下、負極、正極、電解質などについて説明する。
[負極]
リチウムイオン二次電池用の負極の作製は、本発明の炭素材料の電池特性を充分に引き出し、かつ賦形性が高く、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる成型方法であればいずれによってもよい。本発明の炭素材料と結合剤を溶剤および/または分散媒(以後、単に「溶剤」とも称す。)中で混合して、ペースト化し、得られた負極合剤ペーストを集電材に塗布した後、溶剤を除去し、プレスなどにより固化および/または賦形する方法によるのが一般的である。すなわち、まず、本発明の炭素材料を分級などにより所望の粒度に調整し、結合剤と混合して得た組成物を溶剤に分散させ、ペースト状にして負極合剤を調製する。
具体的には、水系の調製法の例としては、本発明の炭素材料と、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴムなどの結合剤を、水、アルコールなどの溶剤中で混合して得たスラリーを、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合して、負極合剤ペーストを調製する方法が挙げられる。また、非水系の調製法の例としては、本発明の炭素材料と、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂粉末をイソピロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶剤と混合してスラリーとし、同様の攪拌混合によっても負極合剤ペーストを調製する方法が挙げられる。
前記得られた負極合剤ペーストを、集電材の片面または両面に塗布し、乾燥することで、負極合剤層が均一かつ強固に接着した負極が得られる。負極合剤層の膜厚は、乾燥後の膜厚として10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
また、負極合剤層は、本発明の炭素材料と、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末を乾式混合し、金型内でホットプレス成型して作製することもできる。
また、負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行うと、負極合剤層と集電材との接着強度をさらに高めることができる。
前記負極に用いる集電材の形状は、特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状物などが好ましい。また、前記集電材の材質としては、銅、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。また、前記集電材の厚みは、箔状の場合は好ましくは5〜20μmである。
[正極]
正極は、例えば正極材料と結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電材の表面に塗布することにより形成することができる。正極の材料(正極活物質)は、充分な量のリチウムを吸蔵/離脱し得るものを選択することが好ましい。このような材料としては、リチウムと遷移金属の複合カルコゲン化物、なかでもリチウムと遷移金属の複合酸化物(リチウム含有遷移金属酸化物とも称される)が好ましい。なお、前記複合酸化物は、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、具体的には、LiM 1−X (式中Xは0≦X≦1の範囲の数値であり、M 、M は少なくとも一種の遷移金属元素である)またはLiM 2−Y (式中Yは0≦Y≦2の範囲の数値であり、M 、M は少なくとも一種の遷移金属元素である)で示される。Mで示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどである。前記リチウム含有遷移金属酸化物の好ましい具体例は、LiCoO、LiNiO 、LiMnO 、LiNi0.9Co0.1、LiNi0.5Co0.5 などである。
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
正極活物質は、前記化合物を単独で使用しても2種類以上を併用して用いてもよい。例えば、正極中に炭酸リチウム等の炭素塩を添加することができる。また、正極を形成するに際しては、従来公知の導電剤などの各種添加剤を適宜に使用することができる。
正極は、正極材料、結合剤、および正極に導電性を付与するための導電剤よりなる正極合剤を、集電材の両面に塗布して正極合剤層を形成して作製することができる。前記結合剤としては、負極の作製に使用されるものと同じものが使用可能である。前記導電剤としては、黒鉛化物など公知のものが使用できる。
前記正極に用いる集電材の形状は特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状物などが好ましい。また、前記集電材の材質としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。また、前記集電材の厚みは、10〜40μmのものが好ましい。
正極も負極と同様に、正極合剤を溶剤中に分散させペースト状にし、このペースト状の正極合剤を集電材に塗布、乾燥して正極合剤層を形成してもよい。あるいは、正極合剤層を形成した後、さらにプレス加圧等の圧着を行ってもよい。これにより正極合剤層が均一且つ強固に集電材に接着される。
[電解質]
本発明に用いられる電解質としては、溶媒と電解質塩からなる有機系電解質や、高分子化合物と電解質塩とからなるポリマー電解質などを用いることができる。前記電解質塩としては、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6、LiClO4 、LiB(C654 、LiCl、LiBr、LiCF3SO3 、LiCH3 SO3 、LiN(CF3 SO22 、LiC(CF3 SO23 、LiN(CF3CH2 OSO22 、LiN(CF3 CF2OSO22 、LiN(HCF2 CF2 CH2OSO22 、LiN[(CF32 CHOSO22 、LiB[C63 (CF324、LiAlCl4 、LiSiF6 などのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF6 、LiBF4が酸化安定性の点から好ましい。
前記有機系電解質中の電解質塩濃度は0.1〜5mol /lが好ましく、0.5〜3.0mol/lがより好ましい。
前記有機系電解質の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート、1,1 −または1,2 −ジメトキシエタン、1,2 −ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1 ,3−ジオキソラン、4 −メチル−1 ,3 −ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテルなどのエーテル、スルホラン、メチルスルホランなどのチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3−メチル−2−オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイトなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
前記非水電解質をポリマー電解質とする場合には、可塑剤(非水溶媒)でゲル化されたマトリックス高分子化合物を含むが、このマトリックス高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂などを単独、もしくは混合して用いることができる。これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
前記ポリマー電解質中の溶媒の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。前記ポリマー電解質中の溶媒の割合が10〜90質量%の範囲であると、導電率が高く、機械的強度が強く、フィルム化しやすい。
前記ポリマー電解質の作製方法は特に限定されないが、例えば、マトリックスを構成する高分子化合物、リチウム塩および非水溶媒(可塑剤)を混合し、加熱して溶融・溶解する方法が挙げられる。また、混合用有機溶媒に、高分子化合物、リチウム塩、および非水溶媒を溶解させた後、混合用有機溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。さらには、重合性モノマー、リチウム塩および非水溶媒を混合し、紫外線、電子線または分子線などを照射して、重合性モノマーを重合させ、ポリマーを得る方法などを挙げることができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池においては、セパレータを使用することもできる。
前記セパレータの材質は特に限定されるものではない。例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。前記セパレータの材質としては、合成樹脂製の微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等が好適である。
[リチウムイオン二次電池]
ポリマー電解質を用いたリチウムイオン二次電池は、一般にポリマー電池と呼ばれる。このポリマー電池は、本発明の炭素材料を用いた負極と、正極およびポリマー電解質から構成することができる。例えば、負極、ポリマー電解質、正極の順に積層し、電池外装材内に収容することで作製される。なお、これに加えて、さらに、負極と正極の外側にポリマー電解質を配するようにしてもよい。
さらに、本発明のリチウムイオン二次電池の構造は特に限定されず、その形状、形態についても特に限定されるものではない。このような構造として、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの中から任意に選択することができる。より安全性の高い密閉型非水電解質電池を得るためには、過充電などの異常時に電池内圧上昇を感知して電流を遮断させる手段を備えたものであることが好ましい。ポリマー電解質を用いたポリマー電池の場合には、ラミネートフィルムに封入した構造とすることもできる。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池においては、ゲル電解質を用いることも可能である。
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また以下の実施例および比較例では、図2に示すように、負極材料を含有する作用電極(負極)2とリチウム箔よりなる対極(正極)4から構成される単極評価用のボタン型二次電池を作製して評価した。実電池は、本発明の概念に基づき、公知の方法に準じて作製することができる。
なお、炭素材料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計により測定し、粒度分布の累積度数が体積百分率で50%となる粒子径とした。
炭素材料の比表面積はBET法により測定した。
炭素材料のアスペクト比は1000倍の走査型電子顕微鏡観察により求めた、任意の50個について、それぞれの長軸長と短軸長を計測し、その平均値を求めた。
炭素材料の表面粗さの指標としては、炭素材料の断面を3000倍の走査型電子顕微鏡観察により、任意の50箇所について高低差を計測し、その平均値を求めた。
炭素材料の格子面間隔d002は、上述したX線回折法により求めた。
負極材料中のリチウムと合金化可能な金属の質量割合は、負極材料を灰化したのち、発光分光法による元素分析を行って、金属としての濃度に換算して求めた。
〔実施例1〕
[負極材料の作製]
球状のメソフェーズ小球体(JFEケミカル(株)製、平均粒子径25μm)(母材)80質量部、前記メソフェーズ小球体の粉砕物(平均粒子径3μm)(小粒子)10質量部、およびコールタールピッチ(JFEケミカル(株)製、PKL)15質量部をタール中油を媒体として混合したのち、150℃で5時間真空乾燥してタール中油を除去した。得られた混合物を非酸化性雰囲気下600℃で3時間焼成した。わずかに融着したので、これを解砕したのち、不活性ガス雰囲気下、3000℃で6時間加熱し、黒鉛質の複合型炭素材料を得た。
このようにして得られた炭素材料は、平均粒子径が28μm、格子面間隔d002は0.3361nm、アスペクト比は1.2、比表面積は1.1m/gであった。また、この炭素材料は、球状の母材の表面に、塊状の子粒子が点在して付着した形状(図1(a)参照)であった。前記子粒子の付着によって形成された起伏の平均高低差は3.0μmであった。
DC二極スパッタリング装置のアノード側ステージに前記炭素材料を配置し、カソード側に99.999質量%の単結晶シリコンターゲットを配置して、圧力0.5Pa、電圧600V、電流0.5Aの条件でスパッタリングを2時間行った後、被覆された炭素材料を攪拌した。再び上記と同じ条件でスパッタリングを2時間行い、攪拌を繰り返した。その後、さらに、同様なスパッタリングを2時間行った。
炭素材料の表面に付着した金属シリコンについて、X線回折法による解析から、ほぼ全量が非晶性シリコンであることが確認された。発光分光分析による非晶性シリコンの付着量は10質量%であった。
次いで、得られたシリコン付着炭素材料をボールミルに投入し、5時間運転してこの炭素材料の表面に剪断力を付与した。運転前後においてシリコン付着炭素材料の平均粒子径や粒子形状に変化はなかった。得られたシリコン付着炭素材料の外観および断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、子粒子に由来する起伏の凸部にはシリコンが付着しておらず、起伏の凹部にシリコンが膜状に堆積している様子が確認された。シリコン付着後の起伏の平均高低差は2.1μmであり、発光分光分析による非晶性シリコンの付着量は9.5質量%であった。
[作用電極(負極)の作製]
上記方法により作製したシリコン付着炭素材料を負極材料とし、4質量%の結合剤ポリフッ化ビニリデンを混合し、さらに、溶剤N−メチルピロリドンを加え、有機溶剤系負極合剤ペーストを作製した。これを銅箔上に均一な厚さに塗布し、さらに真空中90℃で溶剤を揮発させて乾燥した。次に、この銅箔上に塗布された負極合剤をハンドプレスによって加圧した。さらに直径15.5mmの円形状に打抜くことで、集電体銅箔(厚み16μm)に密着した負極合剤層(厚み50μm)からなる作用電極(負極)を作製した。
[対極(正極)の作製]
リチウム金属箔をニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形状に打抜いて、ニッケルネットからなる集電体と、この集電体に密着したリチウム金属箔(厚み0.5mm)からなる対極(正極)を作製した。
[電解液、セパレータ]
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶剤に、LiPFを1mol/lとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚み20μm)に含浸させ、電解液が含浸したセパレータを作製した。
[評価電池の作製]
評価電池として図2に示すボタン型二次電池を作製した。
外装カップ1と外装缶3は、その周縁部において絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉した。その内部に外装缶3の内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円筒状の対極(正極)4、電解液が含浸されたセパレータ5、負極合剤からなる円盤状の作用電極(負極)2および銅箔からなる集電体7bが積層された電池系である。
前記評価電池は電解液を含浸させたセパレータ5を集電体7bに密着した作用電極2と、集電体7aに密着した対極4との間に挟んで積層した後、作用電極2を外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合わせ、さらに、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉して作製した。
評価電池は実電池において負極用活物質として使用可能な黒鉛質物粒子を含有する作用電極2と、リチウム金属箔とからなる対極4とから構成される電池である。
前記のように作製された評価電池について、25℃の温度下で下記のような充放電試験を行い、放電容量、初期充放電効率とサイクル特性を計算した。評価結果を下表1に示した。
[放電容量および初期充放電効率]
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、回路電圧が0mVに達した時点で定電圧充電に切替え、さらに電流値が20μAになるその間の通電量から充電容量を求めた。その後、120分間休止した。次に0.9mAの電流値で回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から放電容量を求めた。これを第1サイクルとした。次式(1)から初期充放電効率を計算した。なお、この試験では、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料からリチウムイオンが脱離する過程を放電とした。
初期充放電効率(%)=(第1サイクルの放電容量/第1サイクルの充電容量)×100 ・・・(1)
[サイクル特性]
引き続き、回路電圧が0mVに達するまで4.0mAの定電流充電を行った後、回路電圧が0mVに達した時点で定電圧充電に切替え、さらに電流値が20μAになるまで充電を続けた後、120分間休止した。次に4.0mAの電流値で回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。この充放電を50回繰返し、得られた放電容量から、次式(2)を用いてサイクル特性を計算した。
サイクル特性(%)=(第50サイクルにおける放電容量/第1サイクルにおける放電容量)×100 ・・・(2)
〔実施例2〕
[負極材料の作製]
メソフェーズ小球体の粉砕物(JFEケミカル(株)製、平均粒子径5μm)70質量部、およびコールタールピッチ(JFEケミカル(株)製、PKL)45質量部をタール中油を媒体として混合したのち、150℃で5時間真空乾燥してタール中油を除去した。得られた混合物を非酸化性雰囲気下600℃で3時間焼成した。融着したので、これを粉砕し、不活性ガス雰囲気下、3000℃で6時間加熱し、黒鉛質の複合型炭素材料を得た。
このようにして得られた炭素材料は、平均粒子径が25μm、格子面間隔d002は0.3363nm、アスペクト比は1.6、比表面積は1.8m/gであった。また、この炭素材料は、複数の塊状粒子が結着した造粒体であり、粒子表面に空隙を有する形状(図1(b)参照)であった。前記塊状粒子同士の隙間に由来する平均高低差は4.5μmであった。
この炭素材料に実施例1と同様にしてスパッタリング処理を行い、シリコンが付着した炭素材料を得た。X線回折法による解析から、ほぼ全量が非晶性シリコンであることが確認された。発光分光分析による非晶性シリコンの付着量は10質量%であった。
次いで、得られたシリコン付着炭素材料を実施例1と同様にボールミルで処理した。運転前後においてシリコン付着炭素材料の平均粒子径や粒子形状に変化はなかった。得られたシリコン付着炭素材料の外観および断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒子外表面の凸部にはシリコンが付着しておらず、粒子の空隙部分である凹部にシリコンが堆積している様子が確認された。シリコン付着後の起伏の平均高低差は3.2μmであり、発光分光分析による非晶性シリコンの付着量は9.8質量%であった。
その他は、上記実施例1と同様に負極合剤の調製、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池の評価を行った。前記負極材料の特性と評価結果を同じく下表1に示した。
実施例1および2から、本発明の負極材料を用いたリチウムイオン二次電池は優れた放電容量、初期充放電効率およびサイクル特性を有していることがわかった。
[比較例1]
実施例1において、シリコン付着炭素材料をボールミルで処理する操作を行わない以外は、実施例1と同様に負極合剤の調製、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池の評価を行った。前記負極材料の特性と評価結果を同じく下表1に示した。
なお、得られたシリコン付着炭素材料の外観および断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、子粒子に由来する起伏の凸部および凹部の全域に比較的均一にシリコンが付着している様子が確認された。
実施例1と比較例1との対比から、リチウムと合金化する金属を、粗面化された炭素材料の凸部には付着させず、凹部に選択的に付着させることによって、高い放電容量と初期充放電効率を有しつつ、サイクル特性が向上することが分かる。
[比較例2]
実施例1において、炭素材料を作製する際に、メソフェーズ小球体の粉砕物、コールタールピッチおよびタール中油を混合しなかった以外は、実施例1と同様に負極合剤の調製、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池の評価を行った。前記負極材料の特性と評価結果を同じく下表1に示した。
なお、得られたシリコン付着炭素材料の外観および断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、子粒子の無い球状の炭素材料の表面全体にシリコンが付着している様子が確認された。
実施例1と比較例2との対比から、リチウムと合金化する金属を付着させる炭素材料を、あらかじめ粗面化し、金属の付着していない部分を凸部にすることで、高い放電容量と初期充放電効率を有しつつ、サイクル特性が向上することが分かる。
[比較例3]
実施例2において、シリコン付着炭素材料をボールミルで処理する操作を行わない以外は、実施例2と同様に負極合剤の調製、負極の作製、リチウムイオン二次電池の作製および電池の評価を行った。前記負極材料の特性と評価結果を同じく下表1に示した。
なお、得られたシリコン付着炭素材料の外観および断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒子外表面の起伏の凸部および粒子空隙の凹部の全域に比較的均一にシリコンが付着している様子が確認された。
実施例2と比較例3との対比から、リチウムと合金化する金属を、粗面化された炭素材料の凸部には付着させず、凹部に選択的に付着させることによって、高い放電容量と初期充放電効率を有しつつ、サイクル特性が向上することが分かる。
Figure 0004927384
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、その特性を活かして、小型から大型までの高性能リチウムイオン二次電池に使用することができる。
本発明の炭素材料の凹部の少なくとも一部に金属類が付着した状態のイメージ図である。 本発明の負極材料の電池特性を評価するための評価電池の断面図である。
符号の説明
1 外装カップ
2 作用電極
3 外装缶
4 対極
5 電解質溶液含浸セパレータ
6 絶縁ガスケット
7a、7b 集電体
10 金属類

Claims (4)

  1. 粗面化された炭素材料の凹部の少なくとも一部に、リチウムと合金化可能な金属または金属化合物が付着し、前記粗面化された炭素材料の凸部は、炭素材料が露出し
    かつ、前記金属または金属化合物が付着したのちの炭素材料の表面の凹凸の高低差は、平均値が1〜10μmの範囲にあることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極。
  3. 負極として、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池。
  4. 粗面化された炭素材料の表面の少なくとも一部に、リチウムと合金化可能な金属または金属化合物を被覆した後、該被覆された炭素材料の凸部を研磨または研削して炭素材料を露出させ、かつ、前記金属または金属化合物が付着したのちの炭素材料の表面の凹凸の高低差は、平均値が1〜10μmの範囲にあることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
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