JP4104829B2 - 炭素質材料及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池用の炭素質材料及びリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
小型軽量化及び高性能化が進んでいる携帯電子機器のニーズに応えるため、リチウム二次電池の高容量化が急務となっている。
ところで、リチウム二次電池の負極活物質の一つである黒鉛は、372mAh/gの理論電気容量を有するが、これよりも高容量な負極活物質を得ようとするためには、非晶質炭素材料や、あるいは炭素材料に代わる新規材料の開発を進める必要がある。
黒鉛に代わる新規材料としては従来からケイ素やその化合物が検討されている。ケイ素やその化合物は、ケイ素自体がリチウムと合金を形成し、黒鉛よりも大きな電気容量が得られることが知られている。
そこで最近では、リチウム二次電池の負極材料として、(1)黒鉛にケイ素化合物の粉末を単に混合した材料や、(2)シランカップリング剤等を用いて黒鉛表面に微粉末のケイ素化合物等を化学的に固定した材料、(3)更に黒鉛系炭素質物とSi等の金属質物とを非晶質な炭素質物で結合または被覆した材料が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記(1)の材料では、黒鉛とケイ素化合物とが必ずしも密着していないため、充放電サイクルの進行により黒鉛が膨張収縮した際に、ケイ素化合物が黒鉛から遊離してしまい、このケイ素化合物自体は電子伝導性が低いため、ケイ素化合物が負極活物質として十分に利用されなくなり、リチウム二次電池のサイクル特性が低下するという課題があった。
【0004】
また上記(2)の材料では、充放電サイクルが初期のうちは黒鉛にケイ素化合物が密着した状態で保たれ、従ってケイ素化合物が黒鉛と同様に負極活物質として機能するが、充放電サイクルが進むと、リチウムとの合金形成に伴ってケイ素化合物自体が膨張し、これによってシランカップリング剤による結合を破壊してケイ素化合物が黒鉛から遊離し、ケイ素化合物が負極活物質として十分に利用されなくなり、リチウム二次電池のサイクル特性が低下するという課題があった。
また、負極材料の製造の際に施されるシランカップリング処理が均質に行われない場合があり、安定した品質の負極材料が容易に得られるまでには至っていないという課題があった。
【0005】
更に上記(3)の材料でも上記(2)の材料と同様な問題が発生する。即ち、充放電サイクルが進むと、リチウムとの合金形成に伴う金属質物自体の膨張により、非晶質炭素質物による結合を破壊して金属質物が黒鉛系炭素質物から遊離し、金属質物が負極活物質として十分に利用されなくなり、リチウム二次電池のサイクル特性が低下するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、充放電容量が高いと同時にサイクル特性に優れた炭素質材料を提供し、またこの炭素質材料を有するリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料は、X線広角回折による(002)面の面間隔d002が0.337nm未満である黒鉛粒子の周りに、珪素及び炭素を少なくとも含有するとともに前記黒鉛粒子より粒径が小さな複合粒子が分散して配置され、かつ前記黒鉛粒子及び前記複合粒子が0.37nm以上の面間隔d002を有する非晶質炭素膜によって被覆されてなり、前記複合粒子は、結晶質珪素からなるSi微粒子の周りに導電性炭素材が配置されるとともに、前記Si微粒子及び前記導電性炭素材が硬質炭素膜により被覆されてなるものであることを特徴とする。
【0008】
なお本発明において、「周りに」の意義は、黒鉛粒子に対する複合粒子の位置関係を表すものであって、黒鉛粒子の「表面上もしくは表面近傍」を意味する。
また、「周りに」の意義は、Si微粒子に対する導電性炭素材の位置関係をも表すものであって、Si微粒子の「表面上もしくは表面近傍」を意味する。
更に「分散して配置」の意義は、複数の複合粒子が凝集することなく相互に分散した状態で黒鉛粒子の表面に接合若しくは表面からわずかに離間して位置している状態を意味する。
また「被覆」の意義は、被覆対象粒子を完全に覆うことによって被覆対象粒子同士を結合させる状態を意味する。この場合、被覆対象粒子は必ずしも直接に接していなくても良い。
具体的には、黒鉛粒子及び複合粒子を非晶質炭素膜によって被覆するとは、黒鉛及び複合粒子を非晶質炭素膜によって完全に覆って黒鉛粒子と複合粒子を結合させることや、非晶質炭素膜中に複合粒子を埋め込んで黒鉛粒子表面に近接させたことを意味する。
同様に、Si微粒子及び導電性炭素材を硬質炭素膜によって被覆するとは、Si微粒子及び導電性炭素材を硬質炭素膜によって完全に覆ってSi微粒子と導電性炭素材を結合させることや、硬質炭素膜中に導電性炭素材を埋め込んでSi微粒子表面に近接させたことを意味する。
【0009】
係る炭素質材料においては、黒鉛粒子及びSi微粒子がLiを吸蔵するので、黒鉛粒子単独の場合よりも充放電容量が向上する。
また黒鉛粒子に対して高比抵抗なSi微粒子の周りに導電性炭素材を配置することで、Si微粒子の導電性を見かけ上、向上させる。
更にSi微粒子を硬質炭素膜で被覆することにより、Liの吸蔵・放出に伴うSi微粒子の体積膨張・収縮が機械的に抑えられる。
更にまた、黒鉛粒子と複合粒子を非晶質炭素膜で覆うことにより、黒鉛粒子が直接に電解液に触れることなく電解液分解が抑制されるとともに、複合粒子が黒鉛粒子から脱落することがなく、更に充電による体積膨張に起因するSi微粒子の微粉化を防止する。
以上のことから、本発明の炭素質材料では、充放電容量を高くするとともに、Si微粒子の体積膨張及び複合粒子の脱落、および充電による体積膨張に起因するSi微粒子の微粉化を抑制して、サイクル特性の低下を防止することが可能になる。
【0010】
また本発明のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料は、先に記載の炭素質材料であって、前記黒鉛粒子の粒径が2μm以上70μm以下の範囲であり、前記複合粒子の粒径が50nmを越えて2μm以下の範囲であり、前記非晶質炭素膜の膜厚が50nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする。
【0011】
黒鉛粒子の粒径が2μm未満では、黒鉛粒子の粒径が複合粒子の粒径よりも相対的に小さくなり、複合粒子を黒鉛粒子の表面に均一に付着させることが困難になるので好ましくなく、粒径が70μmを越えると、集電体との密着性が低下するとともに、電極内の空隙も大きくなるので好ましくない。
また複合粒子の粒径を、50nmを越えて2μm以下、好ましくは50nmを越えて500nm以下とするのは、黒鉛粒子の表面に複合粒子を分散配置させるために複合粒子の粒径を黒鉛粒子の最小粒径である2μm以下にする必要があるためであり、さらに粒径を500nm以下とすれば膨張・収縮による複合粒子の体積変化を小さくできるからである。また粒径が50nm以下では、複合粒子に含まれるSi微粒子の結晶構造の乱れが大きくなって、Li吸蔵量が低下するので好ましくない。
更に非晶質炭素膜の膜厚を50nm未満にすると、黒鉛粒子が非晶質炭素膜によって完全に被覆されないおそれがあり、黒鉛粒子からの複合粒子の脱落を防止できなくなるとともに電解液分解を防止できなくなるおそれがあるので好ましくなく、膜厚が5μmを越えると、リチウムイオンが黒鉛粒子まで到達せず、Li吸蔵量が低下して充放電容量が低下するので好ましくない。
【0012】
また本発明のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料は、先に記載の炭素質材料であって、前記Si微粒子の粒径が10nm以上2μm未満の範囲であり、前記導電性炭素材の比抵抗が10-4Ω・m以下であり、かつ前記硬質炭素膜の曲げ強度が500kg/cm2以上であるとともに膜厚が10nm以上1μm以下であることを特徴とする。
【0013】
Si微粒子の粒径を10nm以上とするのは、Si微粒子の結晶構造の乱れを防止してLi吸蔵量を向上させるためであり、粒径を2μm未満とするのは、複合粒子の粒径を黒鉛粒子の最小粒径である2μmより小さくするためである。
また、導電性炭素材の比抵抗を10-4Ω・m以下とするのは、Si微粒子に十分な導電性を付与するためである。
更に、硬質炭素膜の曲げ強度を500kg/cm2以上とするのは、Liの吸蔵、放出に伴うSi微粒子の膨張・収縮を機械的に抑えて体積変化を小さくするためであり、硬質炭素膜の膜厚を10nm以上1μm以下とするのは、膜厚が10nm未満であると導電性炭素材とSi微粒子との結着力が低下するとともに複合粒子の体積膨張を抑制する効果がなくなって好ましくないためであり、膜厚が1μmを越えると、リチウムイオンがSi微粒子まで到達せず、充放電容量が低下してしまうので好ましくないためである。
【0014】
また本発明のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料は、先に記載の炭素質材料であって、前記複合粒子の含有量が1重量%以上25重量%以下であることを特徴とする。
【0015】
複合粒子の含有量が1重量%未満では、炭素材料のみを活物質とした場合を上回る充分な放電容量を得ることができなくなるので好ましくない。
一方、含有量が25重量%を越えると炭素材料部分の寄与が少なくなり、放電初期からSiの反応電位近くまで電圧が増加してしまうので好ましくなく、更に複合粒子間の距離が狭まって再凝集化し、Si微粒子による体積膨張・収縮が起こりやすくなり、サイクル特性が低下するので好ましくない。
【0016】
次に、本発明のリチウム二次電池は、先のいずれかに記載の炭素質材料を備えたことを特徴とする。
係るリチウム二次電池は、例えば、正極と、電解質と、前記の負極材料を有する負極を少なくとも有するもので、円筒形、角形、コイン型、あるいはシート型等の種々の形状からなる。尚、本発明のリチウム二次電池は、ここで挙げた形態に限られるものではなく、このほかの形態からなるものであってもよい。
係るリチウム二次電池によれば、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を構成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図4に、本発明のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料の断面模式図を示す。この炭素質材料は、黒鉛粒子の周りに複合粒子が分散して配置され、かつ黒鉛粒子と複合粒子とが非晶質炭素膜によって被覆されてなるものである。
【0018】
ここで、「周りに」とは、黒鉛粒子に対する複合粒子の位置関係を表すものであって、黒鉛粒子の「表面上もしくは表面近傍」を意味する。即ち、複合粒子が黒鉛粒子の表面に接合した状態と、複合粒子が黒鉛粒子の表面から離間して黒鉛粒子の周囲に位置することを含む。
更に「分散して配置」とは、複数の複合粒子が相互に分散した状態で黒鉛粒子の表面に接合若しくは表面からわずかに離間して位置している状態を意味する。尚、複合粒子同士が凝集しない程度で相互に接触していてもよい。
また、「被覆」とは、被覆対象粒子を完全に覆うことによって被覆対象粒子同士を結合させる状態を意味する。この場合、被覆対象粒子は必ずしも直接に接していなくても良い。
具体的には、黒鉛粒子及び複合粒子を非晶質炭素膜によって被覆するとは、黒鉛粒子及び複合粒子を非晶質炭素膜によって完全に覆って黒鉛粒子と複合粒子を結合させることや、非晶質炭素膜中に複合粒子を埋め込んで黒鉛粒子表面に近接させたことを意味する。
従って本発明の炭素質材料には、以下に示すような様々な形態のものが含まれる。
【0019】
例えば、図1に示す炭素質材料1は、黒鉛粒子2の表面に複数の複合粒子3…が相互に分散した状態で接合し、非晶質炭素膜4が複合粒子3…の粒径よりも小さくかつ均一な膜厚で黒鉛粒子2と複合粒子3…を被覆することにより構成されている。
【0020】
また図2に示す炭素質材料1は、複数の黒鉛粒子2…の表面に複数の複合粒子3…が相互に分散した状態で接合し、非晶質炭素膜4が複合粒子3…の粒径よりも大きくかつ均一な膜厚で黒鉛粒子2と複合粒子3…を覆うように形成されるとととともに、この非晶質炭素膜4によって複数の黒鉛粒子2…が結合されて構成されている。
図2では、2つまたは3つの黒鉛粒子2…が非晶質炭素膜4によって結合されている状態を示すが、これに限られず、4つ以上の黒鉛粒子2…が非晶質炭素膜4によって結合されていても良い。
【0021】
更に、図3に示す炭素質材料1は、黒鉛粒子2の表面に複数の複合粒子3…が相互に分散した状態で接合し、非晶質炭素膜4が黒鉛粒子2と複合粒子3…を被覆することにより構成されている。図3に示す非晶質炭素膜4の膜厚は不均一であり、例えば、黒鉛粒子2のみを覆う部分では複合粒子3…の粒径よりも大きく設定され、複合粒子3…を覆う部分では複合粒子3…の粒径よりも小さく設定されている。
【0022】
更に、図4に示す炭素質材料1は、黒鉛粒子2の表面に複数の複合粒子3…が相互に分散した状態で接合し、非晶質炭素膜4が黒鉛粒子2と複合粒子3…を被覆することにより構成されている。図4に示す非晶質炭素膜4の膜厚は不均一であり、例えば、黒鉛粒子2のみを覆う部分では複合粒子3…の粒径よりも大きく設定され、複合粒子3…を覆う部分では複合粒子3…の粒径よりも小さく設定され、しかも非晶質炭素膜4の表面は複合粒子3…の形状を反映することなく凹凸のないなめらかな面に形成されている。
【0023】
本発明の炭素質材料は図1〜4に示したものに限られず、上記の用語の意義を満足する限り、どのようなものであっても良い。
【0024】
炭素質材料に含まれる黒鉛粒子2は、X線広角回折による(002)面の面間隔d002が0.335nm以上0.337nm未満とされたものを用いることが好ましく、0.335nm以上0.337nm未満のものがより好ましい。
面間隔d002が0.337nm以上では黒鉛粒子の結晶性が低下し、初期不可逆容量が著しく増加するとともに、黒鉛粒子の電子伝導性が低下するので好ましくない。
また、黒鉛粒子2の粒径は、2μm以上70μm以下の範囲が好ましい。
黒鉛粒子2の粒径が2μm未満では、黒鉛粒子2の粒径が複合粒子3…の粒径よりも相対的に小さくなり、複合粒子3…を黒鉛粒子2の表面に均一に付着させることが困難になるので好ましくなく、粒径が70μmを越えると、炭素質材料と集電体等との密着性が低下するとともに、電池の電極内の空隙も大きくなるので好ましくない。
【0025】
次に非晶質炭素膜4は図1〜図4に示すように、黒鉛粒子2及び複合粒子3…を覆うとともに、複合粒子3…を黒鉛粒子2の表面上に付着させている。この非晶質炭素膜4は、図2に示すように黒鉛粒子2…同士を結合させる作用もある。
この非晶質炭素膜4は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系ピッチ材料、石油系ピッチ材料、タール系材料等のうち少なくとも一種を熱処理して得られたもので、黒鉛化が比較的に進んでいないもので非晶質なものであり、0.37nm以上の面間隔d002を有するものである。非晶質炭素膜4が非晶質であるため、有機電解液が非晶質炭素膜4に触れても分解するおそれがなく、炭素質材料1の充放電効率を高くできる。
非晶質炭素膜4の面間隔d002が0.37nm未満であると、非晶質炭素膜4の結晶性が向上して黒鉛構造に近づき、有機電解液を分解させてしまうおそれがあるので好ましくない。
【0026】
また、非晶質炭素膜4によって複合粒子3…を黒鉛粒子2の表面上に配置させているので、比較的高比抵抗な複合粒子3…が黒鉛粒子2から遊離するのを防止して、充放電反応に寄与しない複合粒子3…の発生を防止できる。
また、この非晶質炭素膜4は例えば、上記の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を溶媒中に溶解するとともに更に黒鉛粒子2も投入し、黒鉛粒子2の表面に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を析出させ、更に焼成して得られたものなので、黒鉛粒子2全体を完全に被覆させることが可能であり、また、密度が比較的低くリチウムイオンが透過しやすいので、黒鉛粒子2及び複合粒子3…とリチウムイオンとの反応を阻害することがない。
非晶質炭素膜4の膜厚は、50nm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。膜厚が50nm未満では、黒鉛粒子2が完全に被覆されず、複合粒子3…が黒鉛粒子2から脱落するおそれがあるので好ましくなく、膜厚が5μmを越えると、不可逆容量が増加するので好ましくない。
【0027】
次に複合粒子3…は、図5に示すように、Si微粒子5の周りに導電性炭素材6…が配置されるとともに、Si微粒子5と導電性炭素材6…とが硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜によって被覆されてなるものである。
ここで、「周りに」とは、Si微粒子5に対する導電性炭素材6…の位置関係を表すものであって、Si微粒子5の「表面上もしくは表面近傍」を意味する。即ち、導電性炭素材6…がSi微粒子5の表面に接合した状態と、導電性炭素材6…がSi微粒子5の表面から離間してSi微粒子5の周囲に位置することを含む。
また、Si微粒子5と導電性炭素材6…とを硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜によって被覆するとは、Si微粒子5及び導電性炭素材6…を硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜によって完全に覆ってSi微粒子5と導電性炭素材6…を結合させることや、硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜中に導電性炭素材6…を埋め込んでSi微粒子5表面に近接させたことを含む。
【0028】
複合粒子3の粒径は、50nmを越えて2μm以下の範囲が好ましく、50nmを越えて500nm以下の範囲がより好ましい。
複合粒子3の粒径を2μm以下とするのは、黒鉛粒子2の表面に複合粒子3…を分散配置させるためには複合粒子3…の粒径を黒鉛粒子2の最小粒径である2μm以下にする必要があるためであり、更に粒径を500nm以下とすればリチウムの吸蔵、放出に伴うSi微粒子5の膨張・収縮による体積変化を小さくできるからである。また粒径の下限値を50nmを越えてとする理由は、50nm以下であると複合粒子3に含まれるSi微粒子5の結晶構造の乱れが大きくなり、Li吸蔵量が低下して充放電容量が少なくなるおそれがあるためである。
【0029】
Si微粒子5は結晶質珪素からなるものであり、粒径が10nm以上2μm未満の範囲のものである。
珪素はリチウムと合金を形成する元素であり、この珪素からなるSi微粒子5にリチウムイオンが作用すると、Si微粒子5の表面若しくはSi微粒子5内部にある空隙部分にリチウムが侵入して合金を形成し、これによりSi微粒子5自体が膨張する。ここでSi微粒子5の結晶性が低下すると、リチウムとの合金形成能が低下して充放電容量が低下するので好ましくない。
更に、Si微粒子5の粒径を10nm以上とするのは、Si微粒子5の結晶構造の乱れを防止してLi吸蔵量を向上させるためであり、粒径を2μm未満とするのは、複合粒子3の粒径を黒鉛粒子2の最小粒径である2μmより小さくする必要があるからである。
【0030】
次に導電性炭素材6…は、Si微粒子5の表面上または表面近傍に配置されてなるもので、図5ではSi微粒子5の周りに粒子状の導電性炭素材6…が配置されているが、導電性炭素材6…の形状は粒子状に限られず、膜状、層状、繊維状等の様々な形態でもよい。
導電性炭素材6…は、半導体であるSi微粒子5の表面に位置してSi微粒子5に見かけ上の導電性を付与する。この導電性炭素材6…の比抵抗は10-4Ω・m以下の範囲が好ましい。比抵抗が10-4Ω・mを越えると、Si微粒子5の見かけ上の導電性が低下してSi微粒子5に対するリチウムイオンの充放電反応が円滑に進行せず、炭素質材料の充放電容量を向上させることができなくなるので好ましくない。
導電性炭素材6…としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)等を例示できる。
【0031】
硬質炭素膜7は、Si微粒子5及び導電性炭素材6…を覆うとともに、導電性炭素材6…をSi微粒子5の表面上に配置させている。また、硬質炭素膜7に代えて導電性高分子膜により、Si微粒子5及び導電性炭素材6…を覆うとともに導電性炭素材6…をSi微粒子5の表面上に配置させてもよい。
硬質炭素膜7は、ポリビニルアルコールやフェノール樹脂等を焼成して得られたものである。また導電性高分子膜は、溶剤に溶かしたポリアニリンなどのイオン性高分子系材料、フェニルアセチレンなどのポリアセチレン系材料などの導電性高分子を乾燥させて得られるものである。
また、硬質炭素膜7及び導電性高分子膜はいずれも、曲げ強度が500kg/cm2以上であるとともに膜厚が10nm以上1μm以下のものである。
【0032】
硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜は、リチウムイオンの充放電反応に伴うSi微粒子5の膨張、収縮に起因して生じる黒鉛粒子2からの複合粒子3の遊離を防止するためのもので、Si微粒子5の膨張、収縮を機械的に抑制する。従って硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜の曲げ強度を500kg/cm2以上にすることが好ましい。曲げ強度が500kg/cm2未満であると、Si微粒子5の膨張・収縮を機械的に抑えることができなくなり、複合粒子3が黒鉛粒子2から遊離するおそれがあるので好ましくない。
また、硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜の膜厚が10nm未満であると、導電性炭素材6…とSi微粒子5との結着力が低下するとともに複合粒子3の体積膨張を抑制する効果が低下して好ましくない。更に膜厚が1μmを越えると、非晶質炭素に起因する不可逆容量の増加を招くため好ましくない。
更に導電性高分子膜を用いた場合は、Si微粒子に更に高い導電性を付与することができ、Si微粒子5の見かけ上の導電性を高めてSi微粒子5に対するリチウムイオンの充放電反応を円滑に進行させることができ、炭素質材料の充放電容量を向上できる。
【0033】
そして、本発明の炭素質材料における上記の複合粒子3の含有量は、1重量%以上25重量%以下であることが好ましい。複合粒子3の含有量が1重量%未満では、炭素材料のみを活物質とした場合を上回る充分な放電容量を得ることができないので好ましくない。また含有量が25重量%を越えると炭素材料部分の寄与が少なくなり、放電初期からSiの反応電位に達してしまい、電池の平均電圧が低下するので好ましくなく、更に複合粒子3間の距離が狭まって再凝集化し、Si微粒子5による体積膨張・収縮が起こりやすくなり、サイクル特性が低下するので好ましくない。
【0034】
上記の炭素質材料1がリチウムイオンと反応する場合は、リチウムイオンが主として黒鉛粒子2に吸蔵されるとともにSi微粒子5…と化合して合金を形成する。このSi微粒子5…の表面には導電性炭素材6が付着していて導電性が見かけ上高くなっており、Si微粒子5…に対してもリチウムイオンが容易に合金化する。
このとき、黒鉛粒子2及びSi微粒子5…の体積が膨張するが、Si微粒子5…は硬質炭素膜7もしくは導電性高分子膜により被覆されているので、体積膨張が機械的に抑制され、Si微粒子5…を含む複合粒子3…が黒鉛粒子2から解離することがなく、Si微粒子5…を充放電反応に寄与させることができ、炭素質材料1の充放電容量が低下することがない。
【0035】
また、黒鉛粒子2と複合粒子3…を非晶質炭素膜4で覆うことにより、黒鉛粒子2が直接に有機電解液に触れることがなく、有機電解液の分解が抑制される。また、複合粒子3…が黒鉛粒子2から脱落することがなく、更に充電による体積膨張に起因するSi微粒子5…の微粉化が防止される。
【0036】
従って上記の炭素質材料1によれば、充放電容量を高くするとともに、Si微粒子5…の体積膨張及び複合粒子3…の脱落、並びに充電に伴う体積膨張に起因するSi微粒子5…の微粉化を抑制して、サイクル特性の低下を防止することができる。
【0037】
上記の炭素質材料は、例えば、次のようにして製造することができる。
この炭素質材料の製造は、複合粒子を製造する工程と、得られた複合粒子に黒鉛粒子を混合し、これらを非晶質炭素膜で被覆する工程とからなる。
まず、複合粒子を製造する工程では、Si微粒子と導電性炭素材とを、乾式混合あるいは湿式混合により混合する。湿式混合の場合、イソプロピルアルコール、アセトン、エタノール、水等の分散媒を用いることが好ましい。
【0038】
次に、高分子材料を適当な溶媒に溶解し、この溶液にSi微粒子と導電性炭素材の混合物を混合した後、溶媒を除去する。溶媒を除去することにより、Si微粒子及び導電性炭素材に高分子膜を被覆した複合粒子前駆体が形成される。
なお、上記の高分子材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フェノール系樹脂等を用いることが好ましく、また石炭系ピッチ材料、石油系ピッチ材料、タール系材料等を用いてもよい。特にフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
次に、複合粒子前駆体を熱処理することにより、高分子膜を炭化させて硬質炭素膜を形成する。
熱処理は、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましく、熱処理温度は800℃以上1200℃以下の範囲が好ましく、熱処理時間は120分以上行うことが好ましい。
熱処理を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気で行うと、高分子膜の酸化が防止されて良好な硬質炭素膜が形成できる。
尚、熱処理温度が800℃未満だと炭化が完全に行われず、硬質炭素膜の比抵抗が高く、リチウムイオンの挿入・脱理が行われにくくなり好ましくなく、熱処理温度が1200℃を越えると、Si微粒子が炭化されて炭化ケイ素(SiC)が生成してしまうので好ましくない。
同様に、熱処理時間が120分未満だと均一な硬質炭素膜が形成できないので好ましくない。
【0040】
また、上記の方法の他に、ポリアニリンなどの導電性高分子を適当な溶媒に溶かし、この溶液にSi微粒子と導電性炭素材の混合物を混合した後、乾燥することで、Si微粒子及び導電性炭素材に導電性高分子膜が被覆された複合粒子を形成してもよい。
このようにして、複合粒子が得られる。
【0041】
次の工程では、得られた複合粒子に、乾式混合あるいは湿式混合により黒鉛粒子を混合する。湿式混合の場合、イソプロピルアルコール、アセトン、エタノール、水等の分散媒を用いることが好ましい。
【0042】
次に、別の高分子材料を適当な溶媒に溶解し、この溶液に複合粒子及び黒鉛粒子の混合物を混合した後、溶媒を除去する。溶媒を除去することにより、複合粒子及び黒鉛粒子に高分子膜を被覆した炭素質材料前駆体が形成される。
なお、上記の高分子材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フェノール系樹脂等を用いることが好ましく、また石炭系ピッチ材料、石油系ピッチ材料、タール系材料等を用いても良い。特にフェノール系樹脂を用いることが好ましい。
【0043】
次に、炭素質材料前駆体を熱処理することにより、高分子膜を炭化させて非晶質炭素膜を形成する。
熱処理は、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましく、熱処理温度は800℃以上1200℃以下の範囲が好ましく、熱処理時間は120分以上行うことが好ましい。
熱処理を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気で行うと、高分子膜の酸化が防止されて良好な非晶質炭素膜が形成できる。
尚、熱処理温度が800℃未満だと温度が低いために炭化が完全に行われず、非晶質炭素膜の比抵抗が高く、リチウムイオンの挿入・脱理が行われにくくなり好ましくなく、熱処理温度が1200℃を越えるとSi微粒子が炭化されて炭化ケイ素(SiC)が生成しするとともに、高分子膜の黒鉛化が進行し、炭素膜の強度が低下するため好ましくない。
同様に、熱処理時間が120分未満だと均一な非晶質炭素膜が形成できないので好ましくない。
このようにして、本発明に係る炭素質材料が得られる。
【0044】
上記の炭素質材料を有する負極と、リチウムの吸蔵・放出が可能な正極及び有機電解質とにより、リチウム二次電池を構成することができる。
正極としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、V2O5、TiS、MoS等のリチウムの吸蔵、放出が可能な正極材料や、有機ジスルフィド化合物または有機ポリスルフィド化合物等の正極材料を含むものが例示できる。
正極または負極の具体例として、上記の正極材料または炭素質材料に、結着材と更に必要に応じて導電助材を混合し、これらを金属箔若しくは金属網からなる集電体に塗布してシート状に成形したものを例示できる。
【0045】
有機電解質としては、例えば、非プロトン性溶媒にリチウム塩が溶解されてなる有機電解液を例示できる。
非プロトン性溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの二種以上を混合した混合溶媒を例示でき、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートのいずれか1つを必ず含むとともにジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートのいずれか1つを必ず含むことが好ましい。
【0046】
また、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y 十 1SO2)(ただしx、yは自然数)、LiCl、LiI等のうちの1種または2種以上のリチウム塩を混合させてなるものを例示でき、特にLiPF6、LiBF4のいずれか1つを含むものが好ましい。
またこの他に、リチウム二次電池の有機電解液として従来から知られているものを用いることもできる。
【0047】
また有機電解質の別の例として、PEO、PVA等のポリマーに上記記載のリチウム塩のいずれかを混合させたものや、膨潤性の高いポリマーに有機電解液を含浸させたもの等、いわゆるポリマー電解質を用いても良い。
更に、本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、電解質のみに限られず、必要に応じて他の部材等を備えていても良く、例えば正極と負極を隔離するセパレータを具備しても良い。
【0048】
上記のリチウム二次電池によれば、上記の炭素質材料1を備えているので、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を構成することができる。
【0049】
【実施例】
[実施例の炭素質材料の製造]
平均粒径が390〜2500nmのSi微粒子の2重量部に、1重量部のカーボンブラックを混合した。なお、Si微粒子は組織の大部分が結晶性ケイ素からなり、カーボンブラックは比抵抗が10-4Ω・m以下のものであった。
次に10重量部のフェノール樹脂をイソプロピルアルコールに溶解させた溶液を用意し、この溶液に、先程のSi微粒子及びカーボンブラックの混合物を混合し、十分に攪拌した後、溶媒を除去した。このようにして、Si微粒子の表面にカーボンブラックとフェノール樹脂被膜とが付着してなる複合粒子前駆体を形成した。
次に、この複合粒子前駆体をアルゴンガス雰囲気中、1000℃で180分間熱処理することにより、フェノール樹脂皮膜を炭化させて厚さ0.05μmの硬質炭素膜を形成した。
尚、上記と同じ条件でフェノール樹脂を単独で炭化させた場合、得られる炭化物の曲げ強度は800kg/cm2程度であることから、上記の硬質炭素膜の曲げ強度も同程度であると推定される。
このようにして複合粒子を得た。
【0050】
次に、平均粒径15μmの天然黒鉛の95重量部に、5重量部の上記複合粒子を添加し、更にイソプロピルアルコールを加えて湿式混合した。尚、天然黒鉛のX線広角回折による(002)面の面間隔d002は 0.3355nmであった。
次に、上記の天然黒鉛と複合粒子の混合物に、10重量部のフェノール樹脂を含むイソプロピルアルコール溶液を添加して混合した後に、イソプロピルアルコールを蒸発させた。このようにして、天然黒鉛の表面に複合粒子とフェノール樹脂皮膜とが付着してなる炭素質材料前駆体を形成した。
【0051】
次に、この炭素質材料前駆体を、真空雰囲気中、1000℃(1273K)で焼成することにより、フェノール樹脂を炭化させて厚さ0.05μmの非晶質炭素膜とした。
尚、上記と同じ条件でフェノール樹脂を単独で炭化させた場合、得られる炭化物の(002)面の面間隔d002が0.39nm程度であることから、上記の非晶質炭素膜の面間隔d002も同程度であると推定される。
このようにして実施例1〜4の炭素質材料を得た。
【0052】
また、フェノール樹脂を炭化させて非晶質炭素膜を得る代わりに、ポリアニリンを溶解させたアセトニトリル溶液に天然黒鉛と複合粒子の混合物を混合した後にアセトニトリルを蒸発させて、天然黒鉛の表面に複合粒子と導電性高分子膜とが付着してなる炭素質材料前駆体を形成したこと以外は、実施例1〜4と同様にして実施例5の炭素質材料を得た。尚、このときのポリアニリンの量は天然黒鉛と複合粒子の混合物に対し10重量部とした。
【0053】
[比較例1の炭素質材料の製造]
複合粒子に代えて粒径390nmのSi微粒子の5重量部を、95重量部の天然黒鉛に混合し、フェノール樹脂膜を形成して焼成したこと以外は上記実施例と同様にして、比較例1の炭素質材料を得た。
【0054】
[充放電試験用のテストセルの作成]
上記の実施例1〜5の炭素質材料に、ポリフッ化ビニリデンを混合し、更にN−メチルピロリドンを加えてスラリー液とした。このスラリー液を、ドクターブレード法により厚さ14μmの銅箔に塗布し、真空雰囲気中で120℃、24時間乾燥させてN−メチルピロリドンを揮発させた。このようにして、厚さ100μmの負極合材を銅箔上に積層した。なお、負極合材中のポリフッ化ビニリデンの含有量は8重量%であり、負極合材の密度は1.5g/cm3以上であった。
そして、負極合材を積層させた銅箔を直径13mmの円形に打ち抜いて実施例1〜4の負極電極とした。
【0055】
また、上記の比較例1の炭素質材料にポリフッ化ビニリデンとN−メチルピロリドンを加え、さらにカーボンブラックを添加してスラリー液としたこと以外は、上記と同様にして比較例1の負極電極を得た。尚、負極合材中のポリフッ化ビニリデンの含有量は8重量%であり、カーボンブラックの含有量は2.5重量%であった。
【0056】
実施例1〜5及び比較例1の負極電極を作用極とし、円形に打ち抜いた金属リチウム箔を対極とし、作用極と対極との間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレータを挿入し、電解液としてジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒に溶質としてLiPF6が1(モル/L)の濃度となるように溶解させたものを用いて、コイン型のテストセルを作成した。
そして、充放電電流密度を0.2Cとし、充電終止電圧を0V(L i/L i+)、放電終止電圧を1.5V(L i/ Li+)として充放電試験を行った。
【0057】
表1に、負極材料の1サイクル目における放電容量及び充放電効率を示す。また、2サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除した容量比(2nd/1st)を求めた。結果を表1に併せて示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すように、1サイクル目の放電容量は、実施例1〜5の方が比較例1よりも高くなっていることがわかる。また、実施例1〜4の比較では、Si微粒子の粒径が大きくなるにつれて放電容量が増加していることがわかる。
次に、1サイクル目における充放電効率は、実施例1〜5の方が比較例1よりも2〜5%程度高くなっていることがわかる。また実施例1〜3の比較では、Si微粒子の粒径が小さくなるにつれて充放電効率が増加していることがわかる。
容量比(2nd/1st)については、実施例1〜3の方が比較例1よりも3〜5%程度高くなっている。また、実施例1〜3の比較では、Si微粒子の粒径が小さくなるにつれて容量比(2nd/1st)が増加していることがわかる。
Si微粒子の粒径が2μmを越えている実施例4の容量比は低く、Si微粒子の平均粒径が2μm以上とあると充電時の膨脹を抑制する効果が小さいことがわかる。
【0060】
このように1サイクル目の放電容量は実施例1〜5の方が比較例1よりも高くなっており、更に他の特性については実施例1〜3および実施例5の方が比較例1よりも優れており、特に充放電容量及びサイクル特性に優れることがわかる。
これは、実施例1〜3および実施例5の場合、Si微粒子の周囲に導電性炭素材及び硬質炭素膜もしくは導電性高分子膜が形成されていることから、Si微粒子の見かけ上の導電性が向上するとともに、硬質炭素膜もしくは導電性高分子膜によりSi微粒子の体積変化が機械的に抑制されてSi微粒子が黒鉛から遊離するおそれがないため、放電容量とサイクル特性が向上したものと考えられる。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の炭素質材料によれば、黒鉛粒子及びSi微粒子がLiを吸蔵するので、黒鉛粒子単独の場合よりも充放電容量が向上する。また黒鉛粒子に対して高比抵抗なSi微粒子の周りに導電性炭素材を配置することで、Si微粒子の導電性を見かけ上、向上させる。更にSi微粒子を硬質炭素膜もしくは導電性高分子膜で被覆することにより、Liの吸蔵・放出に伴うSi微粒子の体積膨張・収縮が機械的に抑えられる。更にまた、黒鉛粒子と複合粒子を非晶質炭素膜で覆うことにより、黒鉛粒子が直接に電解液に触れることなく電解液分解が抑制されるとともに、複合粒子が黒鉛粒子から脱落することがなく、更に充電による体積膨張に起因するSi微粒子の微粉化を防止する。
以上のことから本発明の炭素質材料では、充放電容量を高くするとともに、Si微粒子の体積膨張及び複合粒子の脱落、および充電による体積膨張に起因するSi微粒子の微粉化を抑制して、サイクル特性の低下を防止することができる。
【0062】
また、本発明のリチウム二次電池によれば、本発明に係る炭素質材料を負極として備えているので、エネルギー密度及びサイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態である炭素質材料の一例を示す断面模式図である。
【図2】 本発明の実施形態である炭素質材料の別の一例を示す断面模式図である。
【図3】 本発明の実施形態である炭素質材料の更に別の一例を示す断面模式図である。
【図4】 本発明の実施形態である炭素質材料の他の一例を示す断面模式図である。
【図5】 本発明の実施形態である炭素質材料に含まれる複合粒子の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 炭素質材料
2 黒鉛粒子
3 複合粒子
4 非晶質炭素膜
5 Si微粒子
6 導電性炭素材
7 硬質炭素膜
Claims (5)
- X線広角回折による(002)面の面間隔d002が0.337nm未満である黒鉛粒子の周りに、珪素及び炭素を少なくとも含有するとともに前記黒鉛粒子より粒径が小さな複合粒子が分散して配置され、かつ前記黒鉛粒子及び前記複合粒子が0.37nm以上の面間隔d002を有する非晶質炭素膜によって被覆されてなり、
前記複合粒子は、結晶質珪素からなるSi微粒子の周りに導電性炭素材が配置されるとともに、前記Si微粒子及び前記導電性炭素材が硬質炭素膜により被覆されてなるものであることを特徴とするリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料。 - 前記黒鉛粒子の粒径が2μm以上70μm以下の範囲であり、前記複合粒子の粒径が50nmを越えて2μm以下の範囲であり、前記非晶質炭素膜の膜厚が50nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料。
- 前記Si微粒子の粒径が10nm以上2μm未満の範囲であり、前記導電性炭素材の比抵抗が10−4Ω・m以下であり、かつ前記硬質炭素膜の曲げ強度が500kg/cm2以上であるとともに膜厚が10nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料。
- 前記複合粒子の含有量が1重量%以上25重量%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のリチウム二次電池の負極活物質用の炭素質材料を備えたことを特徴とするリチウム二次電池。
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