以下、本発明に係わるリチウム二次電池(例えば円筒形リチウム二次電池)を図1を参照して詳細に説明する。
例えばステンレスからなる有底円筒状の容器1は、底部に絶縁体2が配置されている。電極群3は、前記容器 1内に収納されている。前記電極群3は、正極4、セパレ―タ5及び負極6をこの順序で積層した帯状物を前記セパレータ5が外側に位置するように渦巻き状に巻回した構造になっている。
前記容器1内には、電解液が収容されている。中央部が開口された絶縁紙7は、前記容器1内の前記電極群3の上方に載置されている。絶縁封口板8は、前記容器1の上部開口部に配置され、かつ前記上部開口部付近を内側にかしめ加工することにより前記封口板8は前記容器1に液密に固定されている。正極端子9は、前記絶縁封口板8の中央に嵌合されている。正極リ―ド10の一端は、前記正極4に、他端は前記正極端子9にそれぞれ接続されている。前記負極6は、図示しない負極リ―ドを介して負極端子である前記容器1に接続されている。
次に、前記正極4、前記セパレータ5、前記負極6および前記電解液について詳しく説明する。
1)正極4
正極4は、正極活物質に導電剤および結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物を集電体に塗布、乾燥して薄板状にすることにより作製される。
前記正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有コバルト化合物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物、リチウム含有鉄酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。中でも、リチウムコバルト酸化物{Lix CoO2 (0.8≦x≦1)}、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2 )、リチウムマンガン酸化物(LiMn2 O4 またはLiMnO2 )を用いると、高電圧が得られるために好ましい。
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
前記正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%の範囲にすることが好ましい。
前記集電体としては、例えばアルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることができる。
2)セパレータ5
前記セパレータ5としては、例えば合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等を用いることができる。
3)負極6
前記負極6は、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物を含む。前記炭素質物は、黒鉛構造領域および無定形炭素構造領域を備え、多相構造である。また、前記炭素質物は、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークが存在し、かつ真密度が1.8g/cm3 以上である。なお、d002 は、黒鉛結晶子の(002)面の面間隔を示す。
前記炭素質物の(002)面の面間隔d002 は、粉末X線回折によって得られる回折図のピークの位置及び半値幅から求めることができる。算出方法としては、学振法に規定された半値幅中点法を用いる。また、粉末X線回折測定においては、CuKαをX線源、標準物質に高純度シリコンを使用する。なお、半値幅中点法は、「Tanso(炭素)」、1963、p25の文献に記載されている。
前記炭素質物の微細組織の一例模式図を図2に示す。図2に示すように、前記炭素質物は、多相構造であり、黒鉛構造領域(黒鉛構造部分)を有する。この黒鉛構造領域は、主に、複数の六角網面層20が一定の規則性をもって配置された構造の黒鉛結晶子Cから形成される。前記炭素質物は、粉末X線回折において0.340nm以下のd002 に相当するピークを有する。このようなピークは、前記黒鉛構造領域に起因すると考えられる。一方、前記炭素質物は無定形炭素構造領域(無定形炭素構造部分)も備えている。前記無定形炭素構造領域では、黒鉛結晶子の六角網面層20の配置に規則性がなく、例えば領域Dのような空隙(欠陥)が存在する。このような無定形炭素構造領域においては、前記空隙の小角X線散乱法による直径が0.1〜20nmである構造にするか、(002)面の面間隔d002 に0.370nm以上のものが存在する構造にするか、あるいは前記空隙の小角X線散乱法による直径を0.1〜20nmにし、かつ(002)面の面間隔d002 に0.370nm以上のものが存在する構造にすると良い。この0.370nm以上の面間隔の多くは、前記空隙に起因する(ただし、前記炭素質物は、0.370nm以上のd002 の存在比率が粉末X線回折の検出限界(約10重量%)以下の場合、粉末X線回折によって0.370nm以上のd002 に相当するピークを検出できない)。
前記炭素質物は、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークを有する。このようなピークが存在しない炭素質物は、リチウム二次電池の放電容量を改善することが困難である。前記炭素質物は、粉末X線回折において0.340nm以下のd002 に相当するピークのみを有していても良いが、0.340nmを越えるd002 に相当するピークが存在していても良い。しかしながら、粉末X線回折によって0.370nm以上のd002 に相当するピークが検出される炭素質物は、真密度が1.8g/cm3 よりも小さくなる恐れがあり、負極の体積比容量(mAh/cc)が低下する恐れがある。より好ましい炭素質物は、粉末X線回折において0.338nm以下のd002 に相当するピークを有するものである。さらに好ましい炭素質物は、0.3354〜0.340nm(さらに好ましくは0.3354〜0.338nm)のd002 に相当するピークを有するものである。
前記炭素質物の真密度は、1.8g/cm3 以上にする。前記炭素質物の真密度を1.8g/cm3 未満にすると、前記炭素質物中の黒鉛構造領域の不足や、黒鉛構造領域の黒鉛化度の低下が生じ、負極の体積比容量が低下する。微細組織が黒鉛構造領域のみからなる炭素質物の真密度は2.25g/cm3 であり、黒鉛構造領域と無定形炭素構造領域とが適度な割合で共存した微細組織を有する炭素質物にする観点から、前記炭素質物の真密度の上限値は2.2g/cm3 にすることが好ましい。より好ましい真密度は、2.0〜2.2g/cm3 の範囲である。
小角X線散乱法による空隙の直径の測定は、以下に説明する方法で行われる。
すなわち、シーメンス(Siemens)社製の商品名がD5000の粉末X線装置を用い、管球としてCu・Kαを使用し、透過型の配置で測定を行った。また、測定条件は以下の通りである。試料ホルダーとしては、縦と横のサイズがそれぞれ13mmで、高さが9mmで、厚さが1.5mmのチャンバからなるものを使用した。前記試料ホルダーは、前記装置内に一次光線と直交するように配置した。窓材料として厚さが25μmの高分子フィルム(Kapton箔)を使用した。前記試料ホルダーに収容する炭素質物の量は150mg〜200mgの範囲にした。入射角及び対散乱角はそれぞれ0.1°に設定した。受光スリットの幅は、0.1mmにした。
散乱角を0.4°から0.05°刻みづつ10°まで上昇させ、各散乱角における小角散乱強度を測定した。得られた散乱強度の平均値をI(q)とし、下記数1に示す(1)式から前記空隙の回転半径R
g を求めた。
ここで、qは波動ベクトル、Nは炭素質物中の空隙の数、Vは前記空隙の総体積を示す。
得られた回転半径Rg を下記(2)式に代入し、前記炭素質物の空隙の小角X線散乱法による直径Rs を得る。
Rg =(3/5)1/2 ×Rs (2)
前記炭素質物の無定形炭素構造領域の空隙(欠陥)の小角X線散乱法による直径は、0.1〜20nmの範囲にすることが好ましい。前記空隙の直径がこの範囲を逸脱すると、無定形炭素構造領域に吸蔵されるリチウムイオンの量が減少し、リチウム二次電池の高容量化を達成できなくなる恐れがある。より好ましい直径は、0.5〜5nmの範囲である。さらに好ましい直径は、0.5〜2nmの範囲である。
前記炭素質物は、繊維状粒子か、球状粒子か、もしくは繊維状粒子と球状粒子の混合物の形態で負極中に存在することができる。なお、繊維状炭素質物粒子には、炭素繊維の他に、炭素繊維を粉砕することにより得られるものも包含される。
(1)繊維状炭素質物粒子
前記繊維状炭素質物粒子の平均繊維長さは、10〜100μmの範囲にすることが好ましい。
前記繊維状炭素質物粒子の平均繊維径は、1〜20μmの範囲にすることが好ましい。
また、前記繊維状炭素質物粒子の比表面積は、0.1〜5m2 /gであることが好ましい。
前記繊維状炭素質物粒子は、平均繊維長さが10〜100μmの範囲で、かつ平均繊維径が1〜20μmの範囲である場合、アスペクト比(繊維長さ/繊維径)を2〜10の範囲にすることが好ましい。前記繊維状の炭素質物粒子のアスペクト比を2未満にすると、前記繊維状の炭素質物粒子の横断面が負極表面に露出する比率が増加する。その結果、Liイオンの吸蔵・放出反応において、前記繊維状の炭素質物粒子の横断面からの吸蔵・放出反応の比率が高くなるため、繊維状の炭素質物粒子内部へのLiイオンの移動が遅くなって大電流放電性能が低下する恐れがある。また、電解液の分解が生じて充放電効率が低下する恐れがある。さらに、前記繊維状の炭素質物粒子の負極中の充填密度を例えば1.3g/cm3 以上に高めることが困難になる恐れがある。一方、前記繊維状の炭素質物粒子のアスペクト比が10を越えると前記繊維状の炭素質物粒子が前記セパレータを貫通し易くなり、正極と負極の短絡を招く恐れがある。
前記繊維状炭素質物粒子の中でも、炭素繊維を粉砕することにより得られる繊維状炭素質粒子については、平均粒径を1〜100μm、より好ましくは2〜40μmの範囲にすることが望ましい。
繊維状炭素質物粒子の黒鉛構造領域の黒鉛結晶子の配向は、放射型であることが好ましい。ここで、黒鉛結晶子の配向が放射型であるとは、繊維状炭素質物粒子に存在する黒鉛結晶子の六角網面層間が繊維状炭素質物粒子の外周面を向いていることを意味する。この放射型配向には、ラメラ型、ブルックステーラ型に属する配向も包含される。図3に、放射型配向を有する繊維状炭素質物粒子21のうち、繊維状炭素質物粒子21に含まれる全ての黒鉛結晶子22の六角網面層間が繊維状炭素質物粒子21の外周面を向いている例を示す。なお、この繊維状炭素質物粒子21は、無定形炭素構造領域に空隙23を有する。黒鉛結晶子の配向が放射型に属する繊維状炭素質物粒子の中でも、その配向に適度な乱れを有しているものが好ましい。この配向に適度な乱れを有する繊維状の炭素質物粒子は強度が高く、Liイオンの吸蔵・放出反応に伴う構造劣化が少ないため、寿命特性が向上される。特に、繊維状炭素質物粒子の内部に存在する黒鉛結晶子の配向が乱れていると良い。このような繊維状炭素質物粒子は、外周面からのLiイオンの吸蔵・放出反応が容易であり、寿命特性が向上されるばかりか急速充放電性能が向上される。ただし、繊維状炭素質物粒子の黒鉛結晶の配向を同軸同管状(オニオン型)にすると、リチウムイオンの内部拡散を妨げる恐れがある。
また、黒鉛結晶子の配向が放射型に属する繊維状炭素質物粒子は、メソフェーズピッチ系炭素繊維を炭素化または黒鉛化したものから形成することが好ましい。
(2)球状炭素質物粒子
球状をなす炭素質物粒子の平均粒径は、1〜100μm、より好ましくは2〜40μmの範囲にすることが望ましい。
球状をなす炭素質物粒子の短径/長径は、1/10以上にすることが望ましい。より好ましくは、1/2以上として真球状に近い形状にすることが望ましい。
また、球状炭素質物粒子は、メソフェーズ小球体を炭素化または黒鉛化したものから形成することが好ましい。
前記球状炭素質物粒子の黒鉛構造の黒鉛結晶子の配向は、放射型、ラメラ型又はラメラ(薄層)型と放射型とが複合されたブルックス−テーラー型などにすることができる。なお、前記ブルックス−テーラ型の定義については「Chemical&Phisics Carbon」Vol4、1968、p243の文献、及び「Carbon」Vol3、1965、p185の文献にそれぞれ記載されている。また、配向性が同心球状のもの知られている。
黒鉛構造領域と無定形炭素構造領域を備え、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークを有し、かつ真密度が1.8g/cm3 以上である炭素質物は、例えば、以下の(1)〜(3)に示す方法により作製できる。
(1)易黒鉛化性の炭素前駆体もしくは炭素(例えば石油ピッチ、石炭ピッチを原料としたメソフェーズピッチ、コークスなど)あるいは天然黒鉛のような黒鉛化物と、難黒鉛化性の炭素前駆体(例えば等方性ピッチ、ポリアクリルニトリル、フルフリールアルコール、フラン樹脂、フェノール系樹脂、セルロース、砂糖、ポリ塩化ビニリデンなど)との混合物を800〜3000℃の範囲で熱処理することにより前記炭素質物を作製する。
(2)前記易黒鉛化性の炭素前駆体か、あるいは前記難黒鉛化性の炭素前駆体にFe,Co,Ni,Ca,Cr,Mn,Al,Siのような触媒を添加し、前記易黒鉛化性の炭素前駆体の場合には1000〜2000℃の範囲で、前記難黒鉛化性の炭素前駆体の場合には1500〜3000℃の範囲で熱処理することによって前記炭素質物を作製する。
(3)天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体の黒鉛化物の黒鉛結晶に酸処理、イオン注入、気相酸化処理などによって空隙(欠陥)を機械的に形成させることにより前記炭素質物を作製する。
前記負極6は、例えば、適当な溶媒(例えば、有機溶媒)に分散された結着剤と前記炭素質物を混合し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより作製することができる。なお、プレス工程において、2〜5回の多段階プレスを行っても良い。
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース (CMC)等を用いることができる。
前記炭素質物および結着剤の配合割合は、炭素材90〜98重量%、結着剤2〜10重量%の範囲にすることが好ましい。特に、前記負極6は、炭素質物の含有量を5〜20mg/cm2 の範囲することが好ましい。
前記集電体としては、例えば銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることができる。
4)電解液
前記非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。
前記非水溶媒としては、リチウム二次電池の溶媒として公知の非水溶媒を用いることができ、特に限定はされないが、エチレンカーボネート(EC)と前記エチレンカーボネートより低融点であり且つドナー数が18以下である1種以上の非水溶媒(以下第2溶媒と称す)との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。このような非水溶媒は、前記負極を構成する黒鉛構造の発達した炭素質物に対して安定で、電解液の還元分解または酸化分解が起き難く、さらに導電性が高いという利点がある。
エチレンカーボネートを単独含む非水電解液では、黒鉛化した炭素質物に対して還元分解され難い性質を持つ利点があるが、融点が高く(39℃〜40℃)粘度が高いため、導電率が小さく常温作動の二次電池では不向きである。エチレンカーボネートに混合する第2の溶媒は混合溶媒を前記エチレンカーボネートよりも粘度を小さくして導電性を向上させる。また、ドナー数が18以下の第2の溶媒(ただし、エチレンカーボネートのドナー数は16.4)を用いることにより前記エチレンカーボネートがリチウムイオンに選択的に溶媒和し易くなくなり、黒鉛構造の発達した炭素質物に対して前記第2の溶媒の還元反応が抑制されることが考えられる。また、前記第2の溶媒のドナー数を18以下にすることによって、酸化分解電位がリチウム電極に対して4V以上になり易く、高電圧なリチウム二次電池を実現できる利点も有している。
前記第2種の溶媒としては、例えば鎖状カーボンが好ましく、中でもジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、またはプロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレンまたは、酢酸メチル(MA)などが挙げられる。これらの第2の溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。特に、前記第2種の溶媒はドナー数が16.5以下であることがより好ましい。
前記第2溶媒の粘度は、25℃において28cp以下であることが好ましい。
前記混合溶媒中の前記エチレンカーボネートの配合量は、体積比率で10〜80%であることが好ましい。この範囲を逸脱すると、導電性の低下あるいは溶媒の分解がおき、充放電効率が低下する恐れがある。より好ましい前記エチレンカーボネートの配合量は体積比率で20〜75%である。非水溶媒中のエチレンカーボネートの配合量を20体積%以上に高めることによりエチレンカーボネートのリチウムイオンへの溶媒和が容易になるため、溶媒の分解抑制効果を向上することが可能になる。
前記混合溶媒のより好ましい組成は、ECとMEC、ECとPCとMEC、ECとMECとDEC、ECとMECとDMC、ECとMECとPCとDECの混合溶媒で、MECの体積比率は30〜80%とすることが好ましい。このようにMECの体積比率を30〜80%、より好ましくは40〜70%にすることにより、導電率を向上できる。一方、溶媒の還元分解反応を抑える観点から、炭酸ガス(CO2 )を溶解した電解液を用いると、容量とサイクル寿命の向上に効果的である。
前記混合溶媒(非水溶媒)中に存在する主な不純物としては、水分と、有機過酸化物(例えばグリコール類、アルコール類、カルボン酸類)などが挙げられる。前記各不純物は、黒鉛化物の表面に絶縁性の被膜を形成し、電極の界面抵抗を増大させるものと考えられる。したがって、サイクル寿命や容量の低下に影響を与える恐れがある。また高温(60℃以上)貯蔵時の自己放電も増大する恐れがある。このようなことから、非水溶媒を含む電解液においては前記不純物はできるだけ低減されることが好ましい。具体的には、水分は50ppm以下、有機過酸化物は1000ppm以下であることが好ましい。
前記非水電解液に含まれる電解質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、ホウフッ化リチウム(LiBF4 )、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6 )、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3 SO2 )2 ]などのリチウム塩(電解質)が挙げられる。中でもLiPF6 、LiBF4 、LiN(CF3 SO2 )2 を用いるのが好ましい。
前記電解質の前記非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/1とすることが望ましい。
なお、前述した図1においては、円筒形リチウム二次電池に適用した例を説明したが、角形リチウム二次電池にも同様に適用できる。また、前記電池の容器内に収納される電極群は渦巻形に限らず、正極、セパレータおよび負極をこの順序で複数積層した形態にしてもよい。
本発明に係る別のリチウム二次電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物を含む負極と、非水電解液を具備したリチウム二次電池であって、
前記負極の炭素質物は、元素M(但し、前記元素MはMg、Al、Si、Ca、SnおよびPbから選ばれる少なくとも一種の元素からなる)を含有し、かつ粉末X線回折に0.344nm以下のd002 (但し、d002 は(002)面の面間隔を示す)に相当するピークが存在することを特徴とするものである。
前記二次電池は前述した図1に示す構造を有する円筒形リチウム二次電池に適用することができる。また、複数の負極および複数の正極の間にセパレータをそれぞれ介在して積層物とし、この積層物を有底矩形筒状の容器内に収納した構造の角形リチウム二次電池にも適用することができる。
前記正極、前記セパレータ及び前記電解液としては、前述したものと同様なものを用いることができる。
1)負極
前記負極は、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物を含む。前記炭素質物は、Mg、Al、Si、Ca、SnおよびPbから選ばれる一種以上の元素M(異種元素M)からなり、かつ粉末X線回折において0.344nm以下のd002 に相当するピークを有する。なお、d002 は、黒鉛結晶子の(002)面の面間隔を示す。
粉末X線回折による(002)面の面間隔d002 の測定、定義は、前述した通りである。
前記炭素質物は、粉末X線回折に0.344nm以下のd002 に相当するピークを有する。このようなピークが存在しない炭素質物は、リチウム二次電池の放電容量を改善することが困難である。前記炭素質物は、粉末X線回折において0.344nm以下のd002 に相当するピークのみを有していても良いが、0.344nmを越えるd002 に相当するピークが存在していても良い。しかしながら、0.344nmを越えるd002 に相当するピークが存在する炭素質物は、0.344nm以下のd002 の割合が低下し、黒鉛化度が低くなり、真密度が低下する恐れがある。真密度が低下すると、負極の体積比容量(mAh/cc)が低下する恐れがある。より好ましい炭素質物は、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークが存在するものである。さらに好ましい炭素質物は、粉末X線回折に0.3354〜0.344nm(好ましくは0.3354〜0.340nm)d002 に相当するピークを有するものである。
前記元素Mは、前記炭素質物の黒鉛結晶子間や、黒鉛結晶子の六角網面層間に存在しているものと推測される。この元素Mは、単位体積当りのリチウムイオン吸蔵放出量が炭素質物に比べて多い。このため、前述した特定のピークを有する炭素質物に元素Mを含有させると、負極の容量を向上させることができる。中でも、Si、Pb、Al、Caを用いるのが好ましい。また、前記炭素質物に2種類以上の元素Mを含有させる場合には、SiとAlからなる元素Mか、もしくはCaとMgからなる元素Mを用いるのが良い。
前記炭素質物は、前記元素Mを原子比率(前記炭素質物中の炭素原子数に対する前記元素Mの原子数)で0.1〜10%含有することが好ましい。前記炭素質物の元素Mの含有量を原子比率で0.1%未満にすると、元素Mの含有量が少ないため、元素M導入による負極の容量増大の効果が不十分になる恐れがある。一方、前記元素Mの含有量が原子比率で10%を越えると、前記炭素質物において多量の金属炭素化物が生成してサイクル寿命が低下する恐れがある。より好ましい含有量は、原子比率で1〜8%の範囲である。
前記炭素質物の真密度は、1.7g/cm3 以上にすることが好ましい。前記炭素質物の真密度を1.7g/cm3 未満にすると、0.344nm以下のd002 の割合が減少して前記炭素質物を含む負極の体積比容量が低下する恐れがある。前記炭素質物の真密度は、2.0g/cm3 以上にすることがより好ましい。なお、真密度の上限値は、炭素質物のd002 に0.344nm以下のものが高い比率で存在するように設定すると良い。また、真密度の上限値は、炭素質物に含有される元素Mの種類及び含有量によって変動する。
前記炭素質物は、繊維状粒子か、球状粒子か、もしくは繊維状粒子と球状粒子の混合物の形態で負極中に存在することができる。なお、繊維状炭素質物粒子には、炭素繊維の他に、炭素繊維を粉砕することにより得られるものも包含される。
(1)繊維状炭素質物粒子
前記繊維状炭素質物粒子の平均繊維長さは、10〜100μmの範囲にすることが好ましい。
前記繊維状炭素質物粒子の平均繊維径は、1〜20μmの範囲にすることが好ましい。
また、前記繊維状炭素質物粒子の比表面積は、0.1〜5m2 /gであることが好ましい。
前記繊維状炭素質物粒子は、平均繊維長さが10〜100μmの範囲で、かつ平均繊維径が1〜20μmの範囲である場合、前述したのと同様な理由によりアスペクト比(繊維長さ/繊維径)を2〜10の範囲にすることが好ましい。
前記繊維状炭素質物粒子の中でも、炭素繊維を粉砕することにより得られる繊維状炭素質粒子については、平均粒径を1〜100μm、より好ましくは2〜40μmの範囲にすることが望ましい。
繊維状炭素質物粒子の黒鉛構造領域の黒鉛結晶子の配向は、放射型であることが好ましい。この放射型配向には、ラメラ型、ブルックステーラ型に属する配向も包含される。黒鉛結晶子の配向が放射型に属する繊維状炭素質物粒子の中でも、その配向に適度な乱れを有しているものが好ましい。この配向に適度な乱れを有する繊維状の炭素質物粒子は強度が高く、Liイオンの吸蔵・放出反応に伴う構造劣化が少ないため、寿命特性が向上される。特に、繊維状炭素質物粒子の内部に存在する黒鉛結晶子の配向が乱れていると良い。このような繊維状炭素質物粒子は、外周面からのLiイオンの吸蔵・放出反応が容易であり、寿命特性が向上されるばかりか急速充放電性能が向上される。ただし、繊維状炭素質物粒子の黒鉛結晶の配向を同軸同管状(オニオン型)にすると、リチウムイオンの内部拡散を妨げる恐れがある。
また、黒鉛結晶子の配向が放射型に属する繊維状炭素質物粒子は、メソフェーズピッチ系炭素繊維を炭素化または黒鉛化したものから形成することが好ましい。
(2)球状炭素質物粒子
球状をなす炭素質物粒子の平均粒径は、1〜100μm、より好ましくは2〜40μmの範囲にすることが望ましい。
球状をなす炭素質物粒子の短径/長径は、1/10以上にすることが望ましい。より好ましくは、1/2以上として真球状に近い形状にすることが望ましい。
また、球状炭素質物粒子は、メソフェーズ小球体を炭素化または黒鉛化したものから形成することが好ましい。
前記球状炭素質物粒子の黒鉛構造の黒鉛結晶子の配向は、放射型、ラメラ型又はラメラ(薄層)型と放射型とが複合されたブルックス−テーラー型などにすることができる。また、配向性が同心球状のもの知られている。
前記炭素質物は、例えば、易黒鉛化性の炭素前駆体もしくは炭素(例えば石油ピッチ、石炭ピッチを原料としたメソフェーズピッチ、コークスなど)か、あるいは難黒鉛化性の炭素前駆体(例えば等方性ピッチ、ポリアクリルニトリル、フルフリールアルコール、フラン樹脂、フェノール系樹脂、セルロース、砂糖、ポリ塩化ビニリデンなど)か、または両者の混合物に元素Mを含む化合物を添加し、600〜3000℃の範囲で熱処理することにより作製することができる。このような方法によれば、600〜3000℃の熱処理温度で炭素前駆体に元素Mを導入しつつ前記炭素前駆体を高い黒鉛化度まで黒鉛化できるため、元素Mを含有し、かつ粉末X線回折に0.344nm以下のd002 に相当するピークを有する炭素質物を作製できる。
前記元素Mを含む化合物には、Mg、Al、Si、Ca、Sn、またはPbの単体も包含される。中でも、炭化硅素(SiC)、ケイ化マグネシウム(Mg2 Si)、炭化アルミニウム(Al4 C3 )、シュウ酸錫、炭化カルシウム(CaC3 )、炭酸鉛のような炭素前駆体中に均一に溶解、あるいは炭素前駆体と均一に混合するものが好ましい。
前記熱処理の温度を前記範囲に限定したのは次のような理由によるものである。前記熱処理の温度を600℃未満にすると、炭素前駆体の縮重合反応が不十分となり、炭素前駆体の黒鉛化が進行しない恐れがある。一方、前記熱処理の温度が3000℃を越えると、前記元素Mが揮発し、前記元素Mを炭素前駆体に導入することが困難になる恐れがある。前記炭素質物の黒鉛化度を向上する観点から、前記熱処理の温度を1500〜3000℃、更に好ましくは2000〜3000℃の範囲にすると良い。
かかる方法において、例えばB、Mn、Crのような触媒を添加しても良い。前記触媒を添加すると、より低い熱処理温度で前記炭素質物を作製できる。この方法によって本発明に係る炭素質物を作製すると、炭素質物中に前記触媒が残留することがある。残留した触媒によって負極の特性が損なわれることはない。また、前記触媒として硼素(B)を用いて炭素質物を作製し、前記硼素が前記炭素質物中に残留すると、この硼素は単位体積当りのリチウムイオン吸蔵放出量が多いため、前記炭素質物を含む負極の容量を向上させることが可能である。従って、本発明に係る二次電池の負極に用いられる炭素質物は、微量のB、Mn、Crを含むことを許容する。
前記負極は、例えば、適当な溶媒(例えば、有機溶媒)に分散された結着剤と前記炭素質物を混合し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより作製することができる。なお、プレス工程において、2〜5回の多段階プレスを行っても良い。
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース (CMC)等を用いることができる。
前記炭素質物および結着剤の配合割合は、炭素材90〜98重量%、結着剤2〜10重量%の範囲にすることが好ましい。特に、前記負極6は、炭素質物の含有量を5〜20mg/cm2 の範囲することが好ましい。
前記集電体としては、例えば銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることができる。
本発明に係るリチウム二次電池に備えられた負極は、黒鉛構造領域および無定形炭素構造領域を有し、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークを有し、かつ真密度が1.8g/cm3 以上である炭素質物を含む。このような負極は、単位体積当りの容量を飛躍的に向上する(例えば900mAh/cc以上にする)ことができる。従って、前記負極を備えたリチウム二次電池は、放電容量を大幅に向上することができ、放電サイクル寿命を改善することができる。これは次のようなメカニズムによるものと推測される。
すなわち、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークが存在し、かつ真密度が1.8g/cm3 以上である炭素質物は、適度な比率で黒鉛構造領域と無定形炭素構造領域が共存しており、かつ黒鉛構造領域のd002 に占める0.340nm以下のd002 の割合が高い。このような炭素質物は、黒鉛構造領域におけるリチウムイオンの拡散速度を大幅に向上することができるため、リチウムイオンの吸蔵・放出に無定形炭素構造領域を寄与させることができる。無定形炭素構造領域を有していても、このようなピークが存在しない炭素質物は、黒鉛構造領域の黒鉛化度が低く、黒鉛構造領域におけるリチウムイオンの拡散速度が遅いため、リチウムイオンの吸蔵放出に無定形炭素構造領域を関与させることがほとんどできない。このような炭素質物を含む負極は、リチウムイオンの吸蔵放出量が少ないため、単位体積当りの容量が低下する。また、前記負極を備えたリチウム二次電池は、充放電効率が劣る。無定形炭素構造領域には多量のリチウムイオンを吸蔵させることができるため、本願発明のように炭素質物の無定形炭素構造領域をリチウムイオンサイトとして利用できると、負極の単位体積当りのリチウムイオン吸蔵放出量を増大させることができる。また、リチウムイオンの吸蔵放出に伴う炭素質物の膨脹収縮分を無定形炭素構造領域で吸収することができるため、前記負極は、充放電サイクルの進行に伴って炭素質物の黒鉛構造が崩壊するのを抑制することができ、充放電サイクルの進行に伴う放電容量の低下を低く抑えることができる。その結果、前記負極を備えたリチウム二次電池は、飛躍的に放電容量を向上させることができ、充放電サイクル寿命を改善することができる。また、前記リチウム二次電池は、負極のリチウムイオン吸蔵放出速度が速いため、初充放電効率を改善することができる。
前記炭素質物の無定形炭素構造領域に小角X線散乱法による直径が0.1〜20nmの空隙を形成することによって、無定形炭素構造領域におけるリチウムイオン吸蔵放出量を増大させることができる。その結果、このような炭素質物を含む負極を備えたリチウム二次電池は、放電容量を飛躍的に向上することができるため、充放電サイクル寿命を更に改善することができる。
また、前記炭素質物の無定形炭素構造領域が0.370nm以上のd002 を有することによって、無定形炭素構造領域におけるリチウムイオン吸蔵放出量を増大させることができる。その結果、このような炭素質物を含む負極を備えたリチウム二次電池は、放電容量を飛躍的に向上することができるため、充放電サイクル寿命を更に改善することができる。
更に、前記炭素質物の無定形炭素構造領域に小角X線散乱法による直径が0.1〜20nmの空隙を形成すると共に、この領域が0.370nm以上の面間隔d002 を有することによって、無定形炭素構造領域におけるリチウムイオン吸蔵放出量を増大させることができる。その結果、このような炭素質物を含む負極を備えたリチウム二次電池は、放電容量を飛躍的に向上することができるため、充放電サイクル寿命を更に改善することができる。
ところで、黒鉛結晶子の配向が放射型である繊維状炭素質物粒子は、横断面のみならず外周面においてもリチウムイオンを吸蔵放出することができるため、負極のリチウムイオン吸蔵放出速度及び吸蔵放出量を向上することができる。この放射状型配向の繊維状炭素質物粒子を、前述した黒鉛構造領域と無定形炭素構造領域を有し、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークが存在し、真密度が1.8g/cm3 以上である炭素質物から形成することによって、放射状型配向の繊維状炭素質物粒子のリチウムイオンの吸蔵放出速度及び吸蔵放出量を効果的に改善することができる。このため、このような炭素質物粒子を含む負極を備えたリチウム二次電池は、急速充放電の際の放電容量を飛躍的に向上することができる。
本発明に係る別のリチウム二次電池は、元素M(但し、前記MはMg、Al、Si、Ca、SnおよびPbから選ばれる少なくとも一種の元素からなる)を含有し、かつ粉末X線回折において(002)面の面間隔d002 に0.344nm以下のものが存在することを示すピークが存在する炭素質物を含む負極を備える。このような負極を備えたリチウム二次電池は、放電容量を飛躍的に向上することができ、急速充放電の際にも高容量を確保することができ、かつ充放電サイクル寿命を向上することができる。これは次のようなメカニズムによるものと推測される。
すなわち、粉末X線回折において0.344nm以下のd002 に相当するピークが存在する炭素質物は、面間隔d002 中に0.344nm以下のものが多く存在するため、リチウムイオンの拡散速度を向上することができる。このため、前記炭素質物は、リチウムイオンの吸蔵放出反応に寄与できる元素Mの割合を高めることができる。また、前記炭素質物は、黒鉛構造が発達した結晶子が骨格になっているため、真密度が高い。従って、このような負極は、黒鉛結晶構造領域内にLiC6 を形成するまでリチウムイオンを速やかに吸蔵することができ、かつ元素Mが多量のリチウムイオンを迅速に吸蔵できるため、重量比容量(mAh/g)及び体積比容量(mAh/cc)を前記ピークが検出されない炭素材料に元素Mを導入した負極と比較して大幅に向上できる。その結果、前記負極を備えたリチウム二次電池は、飛躍的に放電容量を向上させることができ、充放電サイクル寿命を改善することができる。また、前記リチウム二次電池は、負極のリチウムイオン吸蔵放出速度が速いため、急速充放電効率を改善することができる。
また、前記炭素質物の前記元素Mの含有量を原子比率で0.1〜10%の範囲にすることによって、炭素質物に元素Mを添加することによる放電容量増大の効果を効果的に発現することができるため、リチウム二次電池の放電容量をより一層向上することができる。
さらに、黒鉛結晶子の配向が放射型である繊維状炭素質物粒子を、前述した炭素質物、つまり、粉末X線回折に0.344nm以下のd002 に相当するピークが存在し、前記元素Mを含有する炭素質物から形成することによって、放射状型配向の繊維状炭素質物粒子のリチウムイオンの吸蔵放出速度及び吸蔵放出量を効果的に改善することができる。このため、このような炭素質物粒子を含む負極を備えたリチウム二次電池は、急速充放電の際の放電容量を飛躍的に向上することができる。
以下、本発明の実施例を前述した図1を参照して詳細に説明する。
実施例1
まず、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2 )粉末91重量%をアセチレンブラック3.5重量%、グラファイト3.5重量%及びエチレンプロピレンジエンモノマ粉末2重量%とトルエンを加えて共に混合し、アルミニウム箔(30μm)集電体に塗布した後、プレスすることにより正極を作製した。
また、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチにフェノール樹脂を20%添加し、これを紡糸、不融化し、アルゴンガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が11μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように、かつ粒径0.5μm以下の粒子を少なく(5%以下)になるように適度に粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で2700℃にて黒鉛化することにより繊維状の炭素質物粒子を製造した。
得られた繊維状炭素質物粒子は、平均繊維径が7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。真密度は、2.0g/cm3 であった。X線回折による(002)格子像から、前記繊維状炭素質物粒子の微細組織が黒鉛構造領域および無定形炭素構造領域が共存したものであることを確認した。前記無定形炭素構造領域に多数存在する微細空隙の直径を小角X線散乱法によって測定したところ、直径は0.5〜20nmであった。また、前記炭素質物粒子は、粉末X線回折において0.336nmのd002 に相当するピークと、0.370nmのd002 に相当するピークが得られた。この0.336nmのd002 に相当するピークは炭素質物粒子の黒鉛構造領域に起因するものと考えられる。一方、0.370nmのd002 に相当するピークは炭素質物の無定形炭素構造領域に起因するものと考えられる。さらに、前記繊維状炭素質物粒子の横断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、この粒子の黒鉛結晶子の配向は放射型に属するものであった。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。
次いで、前記メソフェーズピッチ系繊維状炭素質物粒子96.7重量%をスチレンブタジエンゴム2.2重量%とカルボキシメチルセルロース1.1重量%と共に混合し、これを集電体としての銅箔に塗布し、乾燥し、プレスすることにより負極を作製した。
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレ―タおよび前記負極をそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が外側に位置するように渦巻き状に巻回して電極群を作製した。
さらに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )をエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒(混合体積比率50:50)に1.0モル/1溶解して非水電解液を調製した。
前記電極群及び前記電解液をステンレス製の有底円筒状容器内にそれぞれ収納して前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
実施例2
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例1と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
天然黒鉛を平均粒径が1μm以下になるように微粉砕した後、これに等方性ピッチを20%添加した混合物を1100℃で炭素化処理及び粉砕処理を施すことによって平均粒径が15μmの球状をなす炭素質物粒子を作製した。
前記炭素質物粒子の真密度は2.2g/cm3 であった。X線回折による(002)格子像から、前記炭素質物粒子の微細組織が黒鉛構造領域及び無定形炭素構造領域からなることを確認した。前記無定形炭素構造領域に多数存在する微細空隙の直径を小角X線散乱法によって測定したところ、直径は0.5〜20nmであった。また、前記炭素質物粒子は、粉末X線回折において0.3358nmのd002 に相当するピークと、0.380nmのd002 に相当するピークが得られた。この0.3358nmのd002 に相当するピークは炭素質物粒子の黒鉛構造領域に起因するものと考えられる。一方、0.380nmのd002 に相当するピークは炭素質物粒子の無定形炭素構造領域に起因するものと考えられる。さらに、前記球状炭素質物粒子をSEMで観察したところ、この粒子は黒鉛結晶子が配向しておらず、配向性がランダム型であった。
実施例3
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例1と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
石油ピッチから得られたメソフェーズピッチにフェノール樹脂を20%添加し、これを紡糸、不融化し、アルゴンガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が11μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように、かつ粒径0.5μm以下の粒子を少なく(5%以下)になるように適度に粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で2700℃にて黒鉛化することにより繊維状の炭素質物粒子を製造した。
得られた繊維状炭素質物粒子は、平均繊維径が7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。真密度は、2.0g/cm3 であった。X線回折による(002)格子像から、前記繊維状炭素質物粒子の微細組織が黒鉛構造領域および無定形炭素構造領域が共存したものであることを確認した。前記無定形炭素構造領域に多数存在する微細空隙の直径を小角X線散乱法によって測定したところ、直径は0.5〜20nmであった。また、前記炭素質物粒子は、粉末X線回折において0.3357nmのd002 に相当するピークが得られた。この0.3357nmのd002 に相当するピークは炭素質物粒子の黒鉛構造領域に起因するものと考えられる。さらに、前記繊維状炭素質物粒子の横断面をSEMで観察したところ、この粒子の黒鉛結晶子の配向は放射型に属するものであった。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。
実施例4
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例1と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
天然黒鉛を平均粒径が1μm以下になるように微粉砕した後、これに等方性ピッチを20%添加した混合物を1100℃で炭素化処理及び粉砕処理を施すことによって平均粒径が15μmの球状をなす炭素質物粒子を作製した。
前記炭素質物粒子の真密度は2.2g/cm3 であった。X線回折による(002)格子像から、前記炭素質物粒子の微細組織が黒鉛構造領域及び無定形炭素構造領域からなることを確認した。前記無定形炭素構造領域に多数存在する微細空隙の直径を小角X線散乱法によって測定したところ、直径は0.5〜20nmであった。また、前記炭素質物粒子は、粉末X線回折において0.3356nmのd002 に相当するピークが得られた。この0.3356nmのd002 に相当するピークは炭素質物粒子の黒鉛構造領域に起因するものと考えられる。さらに、前記球状炭素質物粒子をSEMで観察したところ、この粒子は黒鉛結晶子が配向しておらず、配向性がランダム型であった。
比較例1
微細組織が黒鉛構造領域のみから構成され、粉末X線回折において0.3354nmのd002 に相当するピークを有し、粉末X線回折により求められるc軸結晶子の長さLcが100nm以上で、真密度が2.25g/cm3 である人造黒鉛粉末を負極の炭素質物として用いること以外は、実施例1と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
比較例2
以下に説明する炭素質物を用いること以外は、実施例1と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物としてエポキシノボラック樹脂を1100℃で炭素化処理することにより作製された。前記炭素質物の真密度は1.55g/cm3 であった。X線回折による(002)格子像から、前記炭素質物の微細組織が黒鉛構造領域と無定形炭素構造領域とからなることを確認した。前記無定形炭素構造領域に多数存在する空隙の直径を小角X線散乱法によって測定したところ、直径は1nmであった。また、前記炭素質物は、粉末X線回折において0.380nmのd002 に相当するピークが得られた。粉末X線回折によるC軸方向の結晶子の長さLcは1nmであった。
得られた実施例1〜5及び比較例1〜2の二次電池について、充電電流1Aで4.2Vまで2.5時間充電した後、2.7Vまで1Aで放電する充放電サイクル試験を行った。その結果から、各二次電池について、初充放電効率、1サイクル目の放電容量および300サイクル時における容量維持率(1サイクル目の放電容量に対する)を測定し、その結果を下記表1に示す。
表1から明らかなように、黒鉛構造領域及び無定形炭素構造領域を有し、粉末X線回折に0.340nm以下のd002 に相当するピークを有し、真密度が1.8g/cm3 以上である炭素質物を含む負極を備えた実施例1〜4の二次電池は、初充放電効率、放電容量および300サイクル時の容量維持率が高いことがわかる。
これに対し、微細組織が黒鉛構造領域のみからなり、粉末X線回折に0.3354nmのd002 に相当するピークを有する炭素質物を含む負極を備えた比較例1の二次電池は、初充放電効率に優れるものの、放電容量及び容量維持率が実施例1〜4に比べて低いことがわかる。一方、微細組織が黒鉛構造領域と無定形炭素構造領域とからなり、粉末X線回折に0.380nmのd002 に相当するピークを有し、真密度が1.55g/cm3 である炭素質物を含む負極を備えた比較例2の二次電池は、初充放電効率、放電容量および容量維持率が実施例1〜4よりも低いことがわかる。
実施例5
まず、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2 )粉末91重量%をアセチレンブラック3.5重量%、グラファイト3.5重量%及びエチレンプロピレンジエンモノマ粉末2重量%とトルエンを加えて共に混合し、アルミニウム箔(30μm)集電体に塗布した後、プレスすることにより正極を作製した。
また、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチに炭化硅素(SiC)の微粉末を添加し、均一に分散させた後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2600℃にて黒鉛化することにより繊維状の炭素質物粒子を製造した。
得られたメソフェーズピッチ系繊維状炭素質物粒子は、硅素(Si)を原子比率で8%含有していた。また、前記繊維状炭素質物粒子の真密度は、2.10g/cm3 であった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3367nmのd002 に相当するピークを有していた。また、CuKαをX線源、標準物質に高純度シリコンを使用した粉末X線回折を行い、得られた回折図の回折ピークの位置及び半値幅から学振法に規定された半値幅中点法によって黒鉛構造領域のC軸方向の結晶子の長さLcを算出したところ、35nmであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。なお、前記半値幅中点法は、「Tanso(炭素)」、1963、p25の文献に記載されている。
次いで、前記メソフェーズピッチ系繊維状炭素質物粒子96.7重量%をスチレンブタジエンゴム2.2重量%とカルボキシメチルセルロース1.1重量%と共に混合し、これを集電体としての銅箔に塗布し、乾燥し、プレスすることにより負極を作製した。得られた負極の充填密度は、1.4g/cm3 であった。
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレ―タおよび前記負極をそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が外側に位置するように渦巻き状に巻回して電極群を作製した。
さらに、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )をエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の混合溶媒(混合体積比率1:1)に1モル/1溶解して非水電解液を調製した。
前記電極群及び前記電解液をステンレス製の有底円筒状容器内にそれぞれ収納して前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
実施例6
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチにケイ化マグネシウム(Mg2 Si)の微粉末を添加し、均一に分散させた後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2000℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、マグネシウム(Mg)の含有量が原子比率で4%、硅素(Si)の含有量が原子比率で2%、真密度が2.2g/cm3 、粉末X線回折によるLcが25nmであった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3380nmのd002 に相当するピークを有するものであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
実施例7
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチに炭化アルミニウム(Al4 C3 )を添加した後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2800℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、アルミニウム(Al)の含有量が原子比率で8%、真密度が2.3g/cm3 、粉末X線回折によるLcが30nmであった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3375nmのd002 に相当するピークを有するものであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
実施例8
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチにシュウ酸スズの微粉末を添加し、均一に分散させた後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2000℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、スズ(Sn)の含有量が原子比率で5%、真密度が2.3g/cm3 、粉末X線回折によるLcが25nmであった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3390nmのd002 に相当するピークを有するものであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
実施例9
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチに炭化カルシウム(CaC3 )を添加した後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2000℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、カルシウム(Ca)の含有量が原子比率で9%、真密度が2.25g/cm3 、粉末X線回折によるLcが35nmであった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3370nmのd002 に相当するピークを有するものであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
実施例10
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチに炭酸鉛の微粉末を添加し、均一に分散させた後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2000℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、鉛(Pb)の含有量が原子比率で8%、真密度が2.5g/cm3 、粉末X線回折によるLcが35nmであった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3370nmのd002 に相当するピークを有するものであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
実施例11
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチに炭化硅素微粉末及び炭化アルミニウムを添加し、均一に分散させた後、紡糸し、不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2000℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、硅素(Si)の含有量が原子比率で10%で、アルミニウム(Al)の含有量が原子比率で10%で、真密度が2.2g/cm3 であった。また、前記炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3370nmのd002 に相当するピークを有するものであった。更に、粉末X線回折によるLcが35nmであった。また、前記繊維状の炭素質物粒子の横断面をSEMで観察したところ、前記繊維状炭素質物粒子の黒鉛結晶子の配向は放射型に属するものであった。ただし、配向性に若干の乱れを有していた。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
比較例3
以下に説明する炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
前記炭素質物には、石油ピッチから得られたメソフェーズピッチを不融化し、不活性ガス雰囲気下、600℃で炭素化し、平均粒径が15μmで、粒度1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在するように粉砕する。その後、不活性ガス雰囲気下で、かつ加圧下で2600℃にて黒鉛化することにより作製された繊維状の炭素質物粒子を用いた。
前記繊維状の炭素質物粒子は、元素Mを含有せず、真密度が2.2g/cm3 、粉末X線回折によるLcが35nmであった。前記繊維状炭素質物粒子は、粉末X線回折に0.3375nmのd002 に相当するピークを有するものであった。また、横断面のSEM観察によって黒鉛結晶子の配向が放射型に属することを確認した。ただし、配向性に若干の乱れを有しているため、繊維に欠落部はなかった。さらに、平均繊維径は7μm、平均繊維長が40μmであり、平均粒径が20μmであった。粒度分布で1〜80μmの範囲に90体積%以上が存在し、粒径が0.5μm以下の粒子の粒度分布は0体積%であった。N2 ガス吸着BET法による比表面積は、1.2m2 /gであった。
比較例4
ノボラック樹脂を1100℃で炭素化処理することにより作製され、真密度が1.6g/cm3 で、粉末X線回折に0.380nmd002 に相当するピークが存在し、粉末X線回折によるLcが1nmである炭素質物を用いたこと以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
比較例5
硅素(Si)を原子比率で6%含有し、真密度が1.7g/cm3 で、粉末X線回折に0.349nmのd002 に相当するピークが存在し、粉末X線回折によるLcが2.5nmである気相成長炭素体を炭素質物として用いること以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
比較例6
リチウムアルミニウム(LiAl)からなるリチウム合金の負極を用いること以外は、実施例5と同様な構成で前述した図1に示す円筒形リチウム二次電池を組み立てた。
得られた実施例5〜11及び比較例3〜6の二次電池について、充電電流1.5Aで4.2Vまで2時間充電した後、2.7Vまで1.5Aで放電する充放電サイクル試験を施し、1サイクル目の放電容量と、500サイクル目における容量維持率(1サイクル目の放電容量に対する)を求め、その結果を下記表2に示す。
表2から明らかなように、Mg、Al、Si、Ca、SnおよびPbから選ばれる一種以上の元素Mを含有し、かつ粉末X線回折に0.344nm以下のd002 に相当するピークを有する炭素質物を含む負極を備えた実施例5〜11の二次電池は、放電容量が高く、かつ500サイクル時の容量維持率が高いことがわかる。
これに対し、粉末X線回折に0.344nm以下のd002 に相当するピークを有するものの、元素Mを含有しない炭素質物を含む負極を備えた比較例3の二次電池、粉末X線回折に0.380nmのd002 に相当するピークを有する炭素質物を含む負極を備えた比較例4の二次電池およびSiを含有し、粉末X線回折に0.349nmのd002 に相当するピークを有する炭素質物を含む負極を備えた比較例5の二次電池は、実施例5〜11に比べて放電容量及び容量維持率が低いことがわかる。一方、リチウム合金からなる負極を備えた比較例6の二次電池は、放電容量は実施例5〜11より高いものの、500サイクル時の容量維持率が著しく低いことがわかる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。