JP5659994B2 - 負極活物質、リチウム二次電池、負極活物質の製造方法 - Google Patents

負極活物質、リチウム二次電池、負極活物質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池のサイクル特性を向上することができる、比較的安価な負極活物質に関するものである。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界では、電気自動車やハイブリッド自動車用に高出力かつ高容量の電池の開発が進められており、エネルギー密度が高いリチウム電池の開発が進められている。
このようなリチウム二次電池に用いられる負極活物質として、さらなる電池の高容量化に対応するために、理論容量の高いSiまたはSnを含有する材料が研究されている。しかしSiまたはSnを含む負極活物質を使用する場合、リチウムの挿入脱離反応の際に生じる活物質の膨張収縮による体積変化が大きいため、充放電の繰り返しに伴う負極の崩壊が激しく、負極と集電体との電気的接触性の低下や、負極内での導電パスの断絶による内部抵抗の増加が起こりやすい。
これに対し、特許文献1〜3では、SiまたはSnを含む負極活物質と、ポリアクリル酸と、を含有する負極活物質層を有するリチウム二次電池が開示されている。強度の高いポリアクリル酸を負極のバインダーとして用いることで、負極活物質の膨張収縮による負極の崩壊を抑制する手段が述べられている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたSiまたはSnを含む負極活物質では、リチウムの挿入脱離による形状変化が大きく、微細化が起こり、電子伝導がとれなくなるため、充放電反応に関与できなくなり、サイクル特性が低下するという問題がある。
一方、他の負極活物質として、比較的高い容量を持ち、放電電位の平坦性に優れ、非常に安価である点から、炭素材料である黒鉛が用いられている。しかし黒鉛の容量はSiまたはSnより低く、また、容量を高めるためにプレス処理等で圧力を加えると、黒鉛が集電体の面方向に配向し、黒鉛結晶へのリチウムの挿入脱離が繰り返されることで電極内部が破壊され、電池のサイクル特性や充放電特性の低下が起こるという問題がある。
なお、特許文献4では、黒鉛に二トリル基含有アクリル性結着材と導電助材を混合させた負極について開示されており、また、特許文献5では、Siを含むLi吸蔵粒子に、黒鉛粒子を混在させた負極活物質について開示されているが、上記負極および上記負極活物質では、黒鉛の配向特性およびLi吸蔵粒子の膨張収縮特性を十分に抑制できないという問題がある。
特開2000−348730号公報 特開2005−197258号公報 特開2009−252348号公報 特開2011−023221号公報 特開2010−272540号公報
高容量で比較的安価な負極活物質を得る観点から、炭素材料の配向を起こさずに電極密度を高めることおよびリチウムの挿入脱離による形状変化とそれに伴う負極の破壊とを抑制することが求められる。本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、比較的安価で、リチウム二次電池のサイクル特性を向上することができる負極活物質を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物との反応物と、炭素材料と、を有することを特徴とする負極活物質を提供する。
本発明によれば、比較的高容量で放電電位の平坦性に優れ、安価な材料である炭素材料と、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応物と、を混合させると、上記炭素材料が上記反応物により固定された状態で負極活物質内に分散されるため、上記材料を用いて活物質層を形成する際にプレスをしても配向せずに、リチウムの挿入脱離反応を維持することができる。一方、上記高分子化合物の酸基と相互作用する上記金属酸化物または上記金属の金属原子が、原子レベルで結合することにより負極活物質中に予め高度に分散されるため、リチウムの挿入脱離に伴う負極活物質の形状変化が生じても、導電性を維持することができる。よって本発明の負極活物質は、従来の負極活物質よりも比較的安価で、かつ、サイクル特性を向上させることができる。
上記発明においては、上記一般式において、Mが、Bi、Sb、Sn、Si、Al、Pb、In、Mg、Ti、Zr、V、Fe、Cr、Cu、Co、Mn、Ni、Zn、Nb、Ru、Mo、Sr、Y、Ta、W、またはAgであることが好ましい。
上記発明においては、上記金属酸化物または上記金属が、酸化ビスマス(Bi)、酸化スズ(SnO)またはスズ(Sn)であることが好ましい。酸と反応しやすいからである。
上記発明においては、上記酸基が、カルボン酸基またはスルホン酸基であることが好ましい。上記金属酸化物または上記金属との反応性が高いからである。
上記発明においては、炭素材料が、黒鉛であることが好ましい。安価で資源的に豊富であるからである。
また、本発明においては、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するリチウム二次電池であって、上記負極活物質層が、上述した負極活物質を用いて形成されたものであることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
本発明によれば、上述した負極活物質を用いることで、比較的安価で、サイクル特性に優れたリチウム二次電池とすることができる。
また、本発明においては、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒とを有する反応液を調製する調製工程と、上記反応液と、炭素材料とを混合させる混合工程と、を有することを特徴とする負極活物質の製造方法を提供する。
本発明によれば、安価な材料である炭素材料を上記反応液に混合させることで、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応物により炭素材料が固められるため、プレス後の負極活物質内において炭素材料が集電体の面方向に配向することを抑制することが可能となる。また、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応物においては、上記高分子化合物の酸基と相互作用する上記金属酸化物または上記金属の金属原子を原子レベルで結合し、材料内に分散されるため、リチウムの挿入脱離反応に伴う形状変化が生じても、導電性を維持することが可能となる。よってリチウム二次電池のサイクル特性を向上することが可能な比較的安価な負極活物質を得ることができる。
本発明においては、サイクル特性を向上させることができ、比較的安価なリチウム二次電池を得ることができるという効果を奏する。
本発明の負極活物質の製造方法の一例を示すフローチャートである。 参考例1で得られた反応物のXRD測定の結果を示すグラフである。 参考例2で得られた反応物のXRD測定の結果を示すグラフである。 酸化ビスマス(Bi)のXRD測定の結果を示すグラフである。 酸化スズ(SnO)のXRD測定の結果を示すグラフである。 実施例1および比較例1で得られた電極のXRD測定の結果を示すグラフである。 実施例2、比較例2、比較例3、比較例4で得られた電池の放電容量維持率を示すグラフである。 実施例2、比較例2、比較例3、比較例4で得られた電池のサイクル特性の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明の負極活物質、リチウム二次電池、および負極活物質の製造方法について詳細に説明する。
A. 負極活物質
まず、本発明の負極活物質について説明する。本発明の負極活物質は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物との反応物と、炭素材料と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記炭素材料は、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物との反応物と混合させることで、炭素材料が上記反応物により固定されると考えられる。また、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物との反応物は、上記金属酸化物または上記金属の金属原子が上記高分子化合物の側鎖の酸基と相互作用することにより上記高分子化合物と結合していると考えられる。その結果、負極活物質において、炭素材料および金属原子が高度に分散されていると考えられる。
上記炭素材料を上記反応物で固定させることで、上記負極活物質を活物質層として用いた電極を作製する際に、炭素材料が配向するのを防ぐことができるため、リチウムの挿入脱離反応に伴う負極活物質の破壊が起こりにくい。炭素材料は非常に安価で、高い容量と平坦性に優れた放電電位を持つため、炭素材料の配向が抑制された本発明の負極活物質を用いることにより、電池容量の増加やサイクル特性の向上だけでなく、電池全体のコストを抑えることができる。
また、上述したように、特許文献2〜4に記載されたSiまたはSnを含む負極活物質は、リチウムの挿入脱離反応による負極活物質の形状変化が大きく、充放電に伴い微細化し、電子伝導パスが切断されてしまうのに対し、本発明の場合、リチウムの挿入脱離に伴う負極活物質の形状変化が生じた場合でも、負極活物質が微細化されることはなく、負極活物質中に予め高度に金属原子が分散されているため、電子伝導パスが切断されにくく、良好な導電性を経時的に維持することができる。したがって、本発明の負極活物質をリチウム二次電池に用いることにより、比較的安価でサイクル特性を向上させた電池を得ることができる。
本発明の負極活物質は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物との反応物(以下、単に反応物とする場合がある)と、炭素材料とを少なくとも有するものである。以下、それぞれついて、構成ごとに説明する。
1.反応物
本発明における反応物とは、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物とが反応してなるものであり、具体的には、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とが相互作用により結合してなるものである。
(1)金属酸化物または金属
本発明に用いられる金属酸化物または金属は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)または一般式Mで表されるものである。本発明においては、上記金属酸化物または上記金属の金属原子が、後述する高分子化合物の側鎖の酸基を反応すると考えられる。
ここで、合金化反応とは、金属酸化物または金属がLiイオン等の金属イオンと反応し、Li合金等の合金に変化する反応をいい、コンバージョン反応とは、金属酸化物がLiイオン等の金属イオンと反応し、金属酸化物が還元されて、金属と、Li酸化物等の元の金属酸化物とは別の金属酸化物とに変化する反応をいう。また、生成した金属がLiイオン等の金属イオンと反応し、Li合金等の合金に変化する場合もある。
本発明に用いられる金属酸化物または金属は、一般式M(Mは金属である)または一般式Mで表わされるものである。上記一般式においては、MはBi、Sb、Sn、Si、Al、Pb、In、Mg、Ti、Zr、V、Fe、Cr、Cu、Co、Mn、Ni、Zn、Nb、Ru、Mo、Sr、Y、Ta、W、またはAgであることが好ましい。中でも本発明では、Mが両性酸化物を形成する金属であることが好ましい。酸と反応するからである。具体的には、MはBi、Sn、Sbであることがより好ましく、BiまたはSnであることが特に好ましい。すなわち、本発明に用いられる金属酸化物または金属は、酸化ビスマス(Bi)、酸化スズ(SnO)またはスズ(Sn)であることが好ましく、酸と反応しやすいからである。なお、本発明では、Mが2種類以上の金属を含有していても良い。
(2)高分子化合物
本発明に用いられる高分子化合物は、側鎖に酸基を有するものであり、上記高分子化合物の側鎖の酸基が、上記金属酸化物または上記金属原子と反応すると考えられる。
本発明に用いられる高分子化合物が側鎖に有する酸基としては、上記金属酸化物または上記金属原子と反応することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基等を挙げることができる。中でも、本発明においては、カルボン酸基またはスルホン酸基が好ましい。上記の金属酸化物または上記金属原子との反応性が高いからである。
本発明に用いられる高分子化合物は、側鎖に上述した酸基を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロースやアルギン酸のようなカルボン酸を有する多糖類、ポリアミック酸、ポリスルホン酸等を挙げることができる。中でも、本発明においては、ポリアクリル酸が好ましい。側鎖の酸基量が多く、低コストであるからである。
本発明に用いられる高分子化合物の数平均分子量は、例えば1000〜20000000の範囲内であることが好ましく、1500〜3000000の範囲内であることがより好ましく、1800〜3000000の範囲内であることがさらに好ましい。なお、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により測定することができる。
(3)反応物
本発明における反応物は、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とが結合してなるものであると考えられ、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とが結合していることは、例えば、赤外分光(IR)測定により確認することができる。
また、本発明における反応物が、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物とが反応したものであることは、例えば、X線回折(XRD)測定により確認することができる。具体的には、上記反応物および上記金属酸化物または上記金属を同一条件で測定した場合、上記反応物のXRD測定結果において、ハローパターンが現れ、上記金属酸化物または上記金属に特有のピークを有さない、もしくは有していても、その強度が、上記金属酸化物または上記金属のXRD測定結果における上記ピークの強度を100%とした場合に、10%以下、好ましくは5%以下に低下していることにより、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物とが反応してなる反応物であると特定することができる。
本発明における反応物は、通常粉末状であり、その平均粒径は、例えば、0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜20μmの範囲内であることがより好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば粒度分布計により決定できる。
本発明の負極活物質における反応物の質量比率は、0.1質量%〜95質量%の範囲内にあることが好ましく、5質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。負極活物質中の反応物の量が多すぎると、後述する炭素材料を加えることにより得られる効果が損なわれる可能性があるからである。一方、負極活物質中の反応物の量が少なすぎると、反応物によるリチウムの挿入脱離反応が減り、充放電量の低下やサイクル特性の低下を生じる可能性があるからである。
2.炭素材料
本発明に用いられる炭素材料は、炭素材料結晶内へリチウムを挿入脱離することにより充放電を行うものである。上記反応物と混合させることにより、炭素材料が上記反応物により固められ、負極活物質内で分散されていると考えられる。
本発明に用いる炭素材料の種類は、安価で、リチウムイオンを吸蔵・放出できるものであれば特に限定されるものではなく、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、メソフェーズ小球体、繊維状黒鉛、人造黒鉛(たとえばMCMB)、高配向グラファイト、ハードカーボン等を用いることが可能であるが、中でも鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛等の黒鉛が好ましく、特に、鱗片状黒鉛がより好ましい。非常に安価で資源的にも豊富であるからである。
本発明に用いる炭素材料の平均粒径は0.1μm〜100μmの範囲内にあることが好ましく、1μm〜50μmの範囲内にあることがより好ましい。炭素材料の粒径が大きすぎると、抵抗が増大するからである。一方、炭素材料の粒径が小さすぎると、表面積が増加し、副反応が増加するからである。なお、上記平均粒径は、例えば粒度分布計により決定できる。
本発明の負極活物質における炭素材料の質量比率は、0.1質量%〜95質量%の範囲内にあることが好ましく、5質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。負極活物質中の炭素材料の量が多すぎると、上記反応物による炭素材料の固定が不十分となり、負極活物質層を形成する際に、炭素材料が配向を生じる可能性があるからである。一方、負極活物質中の炭素材料の量が少なすぎると、炭素材料によるリチウムの挿入脱離反応が減り、サイクル特性の低下を生じ、また、電子伝導性の低下を生じ、さらに、電池材料のコストを抑える効果が下がる可能性があるからである。なお、本発明の負極活物質の組成は、X線光電子分光(XPS)測定、またはラマン分光測定により確認することができる。
3.負極活物質
本発明の負極活物質は、上述した反応物と炭素材料と、を少なくとも有するものであり、上記材料のみからなるものでも良いが、上述した反応物、炭素材料に加えて、導電化材をさらに含有するものであることが好ましい。電子伝導性が良好な負極活物質とすることができるからである。導電化材としては、特に限定されるものではないが、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、気相成長カーボン、黒鉛等の炭素材料を挙げることができる。
本発明の負極活物質における導電化材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、1質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、2質量%〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。導電化材の割合が多すぎると、相対的に上記反応物および炭素材料の割合が少なくなり、容量低下が大きくなる可能性があるからであり、一方、導電化材の割合が少なすぎると、電子伝導性を十分に向上させることができない可能性があるからである。
本発明の負極活物質は、炭素材料と金属酸化物または金属の金属原子と、高分子化合物との反応物とを混合したものであり、炭素材料が上記反応物により固定された状態で分散しているものであると考えられる。「炭素材料が上記反応物により固定された状態」については、明確ではないが、炭素材料と上記反応物とが互いに反応はしておらず、上記反応物が結着材のように作用することにより、炭素材料が固定されている状態であると推測される。
本発明の負極活物質は、通常粉末上であり、その平均粒径としては、例えば0.2μm〜100μmの範囲内にあることが好ましく、1μm〜50μmの範囲内にあることがより好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば粒度分布計により決定できる。
本発明の負極活物質は、微細化されたものであることが好ましい。比表面積を増大し、負極活物質の利用効率を向上させることができるからである。中でも、本発明の負極活物質は、メカニカルミリングにより微細化されたものであることが好ましい。メカニカルミリングは、機械的エネルギーを付与しながら材料を粉砕する方法であり、単なる微細化(例えば、乳鉢を用いた微細化)よりも、負極活物質を各段に微細化することができ、また、導電化材を反応物の表面に均一に分散させることができるからである。メカニカルミリングとしては、例えば、ボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、中でもボールミルが好ましい。
B.リチウム二次電池
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するリチウム二次電池であって、上記負極活物質層が、上述した負極活物質を用いて形成されたものであることを特徴とするものである。
本発明によれば、上述した負極活物質を用いることにより、比較的安価でサイクル特性に優れたリチウム二次電池とすることができる。
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質層と、負極活物質層と、正極活物質層および負極活物質層の間に形成された電解質層と、正極活物質層の集電を行う正極集電体とを有するものである。本発明においては、負極活物質層が、上記「A.負極活物質」に記載した負極活物質を用いて形成されたものであることを大きな特徴とする。
以下、本発明のリチウム二次電池について、構成ごとに説明する。
1.負極活物質層
本発明で用いられる負極活物質層は、少なくとも上述した負極活物質を用いて形成された層であり、必要に応じて、結着材および導電化材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。負極活物質層における負極活物質の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、20質量%以上であることが好ましく、40質量%〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。また、結着材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を挙げることができる。また、上述したように負極活物質自体が導電化材を含有している場合があるが、負極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。負極活物質に含まれる導電化材と、新たに添加する導電化材とは、同一の材料でも異なる材料であっても良い。なお導電化材の具体的な例については、「A.負極活物質」に記載した通りである。負極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
負極活物質層の形成方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、上述した負極活物質と、結着材と、導電化材とを含有する負極活物質層形成用ペーストを、後述する負極集電体上に塗布して乾燥させた後に、プレスすることにより負極活物質層を形成することができる。本発明においては、プレス後の負極活物質層を、さらに窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で焼成させることが好ましい。よりサイクル特性に優れた負極活物質層を得ることができるからである。焼成温度としては、例えば、200℃〜1000℃の範囲内であることが好ましく、300℃〜700℃の範囲内であることがより好ましい。焼成温度が上記範囲より高すぎると、負極活物質が劣化する可能性があり、一方、上記範囲より低すぎると、焼成処理が不十分となる可能性があるからである。また、焼成時間としては、例えば、1時間〜30時間の範囲内であることが好ましく、2時間〜20時間の範囲内であることがより好ましい。焼成時間が上記範囲より長すぎると、負極活物質に過度の焼成処理が施されることにより、負極活物質が劣化する可能性があり、一方、上記範囲より短すぎると、焼成処理が不十分となる可能性があるからである。
上記負極活物質層中の炭素材料が配向していないことは、例えばX線回折(XRD)測定により確認することができる。具体的には、上記負極活物質により形成された負極活物質層を用いた電極と、炭素材料のみを負極活物質として形成された負極活物質層を用いた電極と、を作製し、それぞれ所定の密度になるようにプレスした時の、X線回折ピーク強度比(002)/(101)を比較する。炭素材料のみからなる負極活物質層では、プレスによる電極密度増加に従い(002)面の強度が強くなり、炭素材料が配向していることが確認できる。一方、上記負極活物質層では、プレスにより電極密度が増加しても、(002)面の強度は変わらず、炭素材料が配向していないことが確認できる。
本発明で用いられる負極活物質層において、上記負極活物質層のX線回折ピーク強度比(002)/(101)は、150以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。また、上記負極活物質層の密度(電極密度)は、0.7g/cm以上であることが好ましく、0.7g/cm〜2.0g/cmであることがより好ましい。
2.正極活物質層
本発明で用いられる正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。正極活物質の種類は、固体電池の種類に応じて適宜選択され、例えば、LiCo、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状正極活物質、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型正極活物質、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等のオリビン型正極活物質、Li12等のNASICON型正極活物質等を挙げることができる。
上記正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば40質量%〜99質量%の範囲内であることが好ましい。また、正極活物質層は、さらに導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良く、導電化材および結着材については、上記「1.負極活物質層」に記載した内容と同様である。正極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
正極活物質層の形成方法は、一般的な方法を用いることができる。例えば、正極活物質と、結着材と、導電化材とを含有する正極活物質層形成用ペーストを、後述する正極集電体上に塗布して乾燥させた後、プレスすることにより正極活物質層を形成することができる。
3.電解質層
本発明で用いられる電解質層は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間のLiイオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、固体電解質層等を挙げることができる。
液体電解質層は、通常、非水電解液を用いてなる層である。リチウム電池の非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を含有する。上記リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClOおよびLiAsF等の無機リチウム塩;およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびこれらの混合物等を挙げることができる。非水電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内である。なお、本発明においては、非水電解液として、例えば、イオン性液体等の低揮発性液体を用いても良い。
電解質層の厚さは、電解質の種類およびリチウム電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
4.その他の構成
本発明のリチウム二次電池は、さらに、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有していても良い。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもアルミニウムが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、銅が好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム二次電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質層および負極活物質層の間にセパレーターを有していても良い。より安全性の高いリチウム二次電池を得ることができるからである。セパレーターの材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリフッ化ビニリデン等の多孔膜;および樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム二次電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
5.リチウム二次電池
本発明のリチウム二次電池は、繰り返し充放電ができ、例えば車載用電池として有用である。また本発明のリチウム二次電池の形状としては、例えばコイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、上述したリチウム二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム二次電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。
C.負極活物質の製造方法
次に、本発明の負極活物質の製造方法について説明する。本発明の負極活物質の製造方法は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒と、を有する反応液を調製する調製工程と、上記反応液と、炭素材料と、を混合させる混合工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、炭素材料と上記反応液を混合させることで、炭素材料が上記反応物により固定された状態で、負極活物質内に分散されていると考えられる。炭素材料が上記反応物により固定されることにより、上記負極活物質を有する電極を作製した際に、プレスをしても炭素材料が配向を持たないため、リチウムの挿入脱離反応による負極の破壊がおこらない。また、安価な材料である炭素材料を用いることで、材料コストを低減させることができ、さらに炭素材料への放充電反応により、サイクル特性の向上が可能となる。一方、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物とを反応させることで、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物の酸基とが相互作用により結合し、金属原子を原子レベルで結合することにより、負極活物質中に高度に分散させることができると考えられる。このため、リチウムの挿入脱離に伴う負極活物質の形状変化が生じても、負極活物質中に予め原子レベルで分散された金属原子により、良好な導電性を経時的に維持することができる。
図1は、本発明の負極活物質の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1において、まず、出発材料として、酸化スズ(SnO)と、ポリアクリル酸と、水とを所定の割合で加熱しながら混合および撹拌をすることにより、SnOおよびポリアクリル酸の反応液を調整する(調製工程)。次に、上記反応液に黒鉛を所定の割合で加えて、さらに加熱しながら混合させる(混合工程)。これにより、負極活物質を得ることができる。
以下、本発明の負極活物質の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.調製工程
本発明における調製工程について説明する。本発明における調製工程は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表わされる金属酸化物または一般式Mで表わされる金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒とを含有する反応液を調製する工程である。
(1)金属酸化物または金属
本工程における上記金属酸化物または上記金属の濃度は、特に限定されるものではなく、目的とする負極活物質の組成等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記反応液中で、0.1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜30質量%の範囲であることがより好ましい。金属酸化物または金属の濃度が上記範囲よりも大きいと、後述する高分子化合物との結合が不十分となり、負極活物質の形状変化および微細化が生じる可能性あるからである。一方、上記範囲よりも小さいと、リチウムの挿入脱離反応を行う金属が減少し、電池容量も減少する可能性があるからである。なお、本工程で用いられる上記金属酸化物、上記金属は、上記「A.負極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
(2)高分子化合物
本工程における上記高分子化合物の濃度は、特に限定されるものではなく、目的とする負極活物質の組成等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記反応液中で、0.1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜30質量%の範囲であることがより好ましい。高分子化合物の濃度が上記範囲よりも大きいと、リチウムの挿入脱離反応を行う金属の量が少なく、電池容量が減少する可能性があるからである。一方、上記範囲よりも小さいと、上記金属酸化物または金属と反応する高分子化合物の量が少ないため、リチウムの挿入脱離反応により負極活物質の形状変化および微細化が生じる可能性があるからである。なお、本工程で用いられる上記高分子化合物については、上記「A.負極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
(3)極性溶媒
本工程に用いられる極性溶媒としては、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とを反応させることが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、水、アルコール、エステル、アミド、ニトリル、スルホキシド、スルホン、エーテル等を挙げることができ、中でも水が好ましい。安価であるからである。
(4)調製工程
本工程に用いられる撹拌方法としては、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応物と、を上記極性溶媒中で均一に混合することができれば特に限定されるものではないが、例えば、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、振動撹拌、超音波分散等を用いることができる。
本工程における加熱温度としては、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物と、を十分に反応させることができれば特に限定されるものではないが、例えば0℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、50℃〜150℃の範囲内であることがより好ましい。加熱温度が上記範囲より低すぎると、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応が十分に行われない可能性があり、一方、加熱温度が上記範囲より高すぎると、材料の劣化や不要な副反応が生じる可能性があるからである。
本工程における反応時間としては、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物と、の反応を十分に進行させることができれば特に限定されるものではないが、例えば、1時間〜500時間の範囲内であることが好ましく、3時間〜200時間の範囲内であることがより好ましい。反応時間が上記範囲より短すぎると、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応が十分に行われない可能性があり、一方、反応時間が上記範囲より長すぎると、生産性が低下する可能性があるからである。
2.混合工程
次に、本発明における混合工程について説明する。本発明における混合工程は、上述の「1.調製工程」で得られた反応液と、炭素材料と、を混合させる工程である。混合工程において、炭素材料および上記反応液中の反応物は互いに反応はせず、上記反応物が結着材のように作用することにより、炭素材料を固定している状態であると推測される。
(1)炭素材料
本工程における上記炭素材料の質量比率は、特に限定されるものではなく、目的とする負極活物質の組成等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記反応液中で、0.1質量%〜95質量%の範囲内にあることが好ましく、5質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。炭素材料の量が上記範囲よりも大きいと、溶液に占める炭素材料の粒子の数が多くなり反応物による炭素材料の配向抑制が起こりにくくなる可能性があり、一方、上記範囲よりも小さいと、炭素材料によるリチウム挿入脱離反応による充放電効果が発揮されない可能性がある。また、本工程で用いられる炭素材料は、上記「A.負極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
(2)混合工程
本工程に用いられる撹拌方法としては、上記炭素材料を上記反応液中に均一に混合することができれば特に限定されるものではないが、例えば、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、振動撹拌、超音波分散等を用いることができる。
本工程における混合時の加熱温度としては、上記反応液が十分に反応する温度であれば、特に限定されるものではないが、例えば0℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、50℃〜150℃の範囲内であることがより好ましい。
また、本工程における反応時間としては、上記反応液が十分に反応し、上記炭素材料が上記反応液中において十分に分散させることが出来れば、特に限定されるものではないが、例えば、1時間〜500時間の範囲内であることが好ましく、3時間〜200時間の範囲内であることがより好ましい。
本工程においては、通常、加熱撹拌後の上記反応液を濃縮し、さらに加熱下で減圧乾燥することによって、上記金属酸化物または上記金属と上記高分子化合物との反応物と、上記炭素材料と、を有する混合物、すなわち負極活物質を得ることができる。
3.その他
本発明の負極活物質の製造方法は、必須の工程である上記調製工程および上記混合工程の他に、必要に応じて任意の工程を適宜有していても良く、例えば、加熱工程、乾燥工程等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包括される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[参考例1]
(反応物の合成)
まず、出発原料として、酸化ビスマス(Bi)と、数平均分子量が250000のポリアクリル酸と、水とを準備した。ポリアクリル酸28gを水2800mlに溶解させ、さらに酸化ビスマス31gを加えて、反応液を調製した。次に、この反応液を80℃で3日間攪拌し、反応液を濃縮後、120℃で減圧乾燥することで、反応物58gを得た。
[参考例2]
まず、出発原料として、酸化スズ(SnO)と、数平均分子量が250000のポリアクリル酸と、水とを準備した。ポリアクリル酸28gを水2800mlに溶解させ、さらに酸化スズ27gを加えて、反応液を調製した。次に、この反応液をアルゴンガス下で加熱環流させながら4日間攪拌し、反応液を濃縮後、120℃で減圧乾燥することで、反応物54gを得た。
[評価1]
(X線回折測定)
参考例1および参考例2で得られた反応物に対して、X線回折(XRD)測定を行った。その結果をそれぞれ図2および図3に示す。また、酸化ビスマス(Bi)および酸化スズ(SnO)に対して、XRD測定を行った。その結果をそれぞれ図4および図5に示す。
図4に示されるように、BiのXRD測定結果においては、複数の回折ピークが検出され、Biが結晶性を有することが確認されたのに対して、図2に示されるように、参考例1で得られた反応物のXRD測定結果においては、回折ピークが検出されず、ハローパターンが得られたことから、参考例1で得られた反応物は、Biとポリアクリル酸とが反応したものであることが確認された。
一方、図5に示されるように、SnOのXRD測定結果においては、複数の回折ピークが検出され、SnOが結晶性を有することが確認されたのに対して、図3に示されるように、参考例2で得られた反応物のXRD測定結果においては、回折ピークが検出されず、ハローパターンが得られたことから参考例2で得られた反応物は、SnOとポリアクリル酸とが反応したものであることが確認された。
[実施例1]
(負極活物質の調製)
出発原料として、酸化スズ(和光純薬社製)と数平均分子量が250000のポリアクリル酸(和光純薬社製)と水とを用いた。まず、窒素気流下でポリアクリル酸12.9gを水400mlに溶解させ、酸化スズ9.8gを加えて、反応溶液を調製した。次にこの反応液を80℃で12時間撹拌した。上記反応液に平均粒径が15μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛社製、CNP-15)を9.8g加え、さらに80℃で3日間反応させて反応液を濃縮後、120℃で減圧乾燥することで、反応物31.5gを得た。得られた反応物10gをボールミルで1時間粉砕し、導電化材のカーボン(TIMCAL社製、KS4)0.5gを加え、1時間メカニカルミリングを行い、得られた粉末を負極活物質とした。
(負極電極の作製)
結着材の前駆体であるポリアミック酸10gを溶解した溶剤n−メチルピロリドン溶液3.3g中に、前述の負極活物質4.3g、導電化材の炭素粉末(アセチレンブラックHS100)0.2gを導入し、均一に混合するまで混練し、ペーストを作製した。次に、上記ペーストに、n‐メチルピロリドン1.6gを加えて混練した後、厚さ10μmのCu集電体上に、目付量4.3mg/cmで片面塗布し、80℃で0.5時間乾燥させた。さらに、得られた部位をプレスし、窒素雰囲気下350℃で2時間焼成させることにより負極電極を得た。
[比較例1]
実施例1の負極電極作製において、負極活物質4.3gの代わりに天然黒鉛(伊藤黒鉛社製、CNP-15)4.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、負極電極を得た。
[合成例1]
実施例1の負極電極作製において、負極活物質4.3gの代わりに、酸化スズ4.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、負極電極を得た。
[合成例2]
実施例1の負極電極作製において、負極活物質4.3gの代わりに、出発原料として、酸化スズ9.8gと数平均分子量が250000のポリアクリル酸12.9gと水400mlを用い、調製することにより得た負極活物質4.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、負極電極を得た。
[評価2]
(X線回折測定)
実施例1の負極電極と比較例1の負極電極について、XRD(X線回折)測定を行い、電極密度の変化における電極の(002)面と(101)面によるピーク強度を測定した。上記電極は各電極密度になるようにプレスされ、窒素雰囲気下350℃で2時間保持することにより結着材を反応させてから用いた。その結果を図6に示す。図6に示されるように、比較例1で得られた電極では、電極密度が上昇するにつれて(002)面の強度の増加が見られ、電極内の黒鉛が配向していることが示唆された。一方、実施例1で得られた電極では、電極密度が上昇しても(002)面の強度の増加が見られないことから、実施例1では電極内の黒鉛が配向していないことが示唆された。
[実施例2]
(評価用電池の作製)
ペーストの厚さが25μm、電極密度が1.48g/cmである、実施例1の負極電極を作用極に用い、対極にLiを用いて、CR2032型コインセル(評価用電池)を作製した。なお、セパレータには、ポリエチレン(PE)製多孔質セパレーターを用いた。電極にはエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。
[比較例2]
作用極に用いる試験電極が、比較例1で得られた負極電極を、ペースト厚さが28μm、電極密度1.53g/cmとなるようにプレスおよび焼成したこと以外は実施例2と同様にして、コインセル(評価用電池)を作製した。
[比較例3]
作用極に用いる試験電極が、合成例1で得られた負極電極を、ペースト厚さが25μm、電極密度2.15g/cmとなるようにプレスおよび焼成したこと以外は実施例2と同様にして、コインセル(評価用電池)を作製した。
[比較例4]
作用極に用いる試験電極が、合成例2で得られた負極電極を、ペースト厚さが28μm、電極密度1.53g/cmとなるようにプレスおよび焼成したこと以外は実施例2と同様にして、コインセル(評価用電池)を作製した。
[評価3]
(電池特性評価)
実施例2、比較例2〜4で得られたコインセル(評価用電池)を用いて、電池評価環境温度25℃、電流レート0.1Cで、充放電を繰り返し行った。電圧範囲は、0.01V〜1.5Vとした。図7にサイクル特性の評価結果、図8放電容量維持率の評価結果を示す。
図7および図8に示されるように、実施例2で得られたコインセル(評価用電池)は比較例2〜4で得られたコインセル(評価用電池)と比較して放電容量維持率が高く、サイクル特性が向上することが確認された。負極活物質が天然黒鉛のみからなる比較例2の場合、実施例2よりも放電容量率の値が低く、経時的なサイクル特性の低下が大きい。放電容量率の値が低いのは、黒鉛が酸化スズより理論電気容量が低いためであり、経時的なサイクル特性の低下が大きいのは、プレスおよび焼成工程による電極形成の際に黒鉛が配向し、そこへリチウムの挿入脱離が繰り返されることで負極の崩壊生じるためと考えられる。
また、負極活物質が酸化スズのみからなる比較例3の場合、サイクル特性も放電容量維持率も、経時による低下が著しい。これはリチウムの挿入脱離反応の際に生じる酸化スズの体積変化が大きく、充放電の繰り返しに伴う負極の崩壊が起こるためと考えられる。
実施例2は、負極活物質に黒鉛を含まないこと以外は、比較例4と同じ電池構造である。しかし、実施例2は比較例4よりも、経時的なサイクル特性の低下が抑制されていることが示されている。実施例2では酸化スズとポリアクリル酸の化合物だけでなく、黒鉛においてもリチウムの挿入脱離が繰り返し行われると予想される。さらに実施例2では黒鉛が配向を持たないため、リチウムの挿入脱離による負極の破壊が抑制され、経時でのサイクル特性の低下も抑制されると考えられる。よって電池全体のサイクル特性の向上が示唆される。

Claims (4)

  1. Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物との反応物と、
    炭素材料と、を有し、
    前記金属酸化物または前記金属が、酸化ビスマス(Bi )、酸化スズ(SnO)またはスズ(Sn)であり、
    前記高分子化合物が、ポリアクリル酸であることを特徴とする負極活物質。
  2. 前記炭素材料が、黒鉛であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
  3. 正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するリチウム二次電池であって、前記負極活物質層が、請求項1または請求項2に記載の負極活物質を用いて形成されたものであることを特徴とするリチウム二次電池。
  4. Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式M(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒とを有し、前記金属酸化物または前記金属が、酸化ビスマス(Bi )、酸化スズ(SnO)またはスズ(Sn)であり、前記高分子化合物が、ポリアクリル酸である反応液を調製する調製工程と、
    前記反応液と、炭素材料とを混合させる混合工程と、
    を有することを特徴とする負極活物質の製造方法。
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