JP5659994B2 - 負極活物質、リチウム二次電池、負極活物質の製造方法 - Google Patents
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まず、本発明の負極活物質について説明する。本発明の負極活物質は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物との反応物と、炭素材料と、を有することを特徴とするものである。
本発明における反応物とは、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物とが反応してなるものであり、具体的には、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とが相互作用により結合してなるものである。
本発明に用いられる金属酸化物または金属は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)または一般式Mで表されるものである。本発明においては、上記金属酸化物または上記金属の金属原子が、後述する高分子化合物の側鎖の酸基を反応すると考えられる。
本発明に用いられる高分子化合物は、側鎖に酸基を有するものであり、上記高分子化合物の側鎖の酸基が、上記金属酸化物または上記金属原子と反応すると考えられる。
本発明における反応物は、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とが結合してなるものであると考えられ、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とが結合していることは、例えば、赤外分光(IR)測定により確認することができる。
本発明に用いられる炭素材料は、炭素材料結晶内へリチウムを挿入脱離することにより充放電を行うものである。上記反応物と混合させることにより、炭素材料が上記反応物により固められ、負極活物質内で分散されていると考えられる。
本発明の負極活物質は、上述した反応物と炭素材料と、を少なくとも有するものであり、上記材料のみからなるものでも良いが、上述した反応物、炭素材料に加えて、導電化材をさらに含有するものであることが好ましい。電子伝導性が良好な負極活物質とすることができるからである。導電化材としては、特に限定されるものではないが、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、気相成長カーボン、黒鉛等の炭素材料を挙げることができる。
本発明のリチウム二次電池は、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するリチウム二次電池であって、上記負極活物質層が、上述した負極活物質を用いて形成されたものであることを特徴とするものである。
以下、本発明のリチウム二次電池について、構成ごとに説明する。
本発明で用いられる負極活物質層は、少なくとも上述した負極活物質を用いて形成された層であり、必要に応じて、結着材および導電化材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。負極活物質層における負極活物質の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、20質量%以上であることが好ましく、40質量%〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。また、結着材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を挙げることができる。また、上述したように負極活物質自体が導電化材を含有している場合があるが、負極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。負極活物質に含まれる導電化材と、新たに添加する導電化材とは、同一の材料でも異なる材料であっても良い。なお導電化材の具体的な例については、「A.負極活物質」に記載した通りである。負極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
本発明で用いられる負極活物質層において、上記負極活物質層のX線回折ピーク強度比(002)/(101)は、150以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。また、上記負極活物質層の密度(電極密度)は、0.7g/cm3以上であることが好ましく、0.7g/cm3〜2.0g/cm3であることがより好ましい。
本発明で用いられる正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。正極活物質の種類は、固体電池の種類に応じて適宜選択され、例えば、LiCo2、LiNiO2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiVO2、LiCrO2等の層状正極活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.25Mn0.75)2O4、LiCoMnO4、Li2NiMn3O8等のスピネル型正極活物質、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFePO4等のオリビン型正極活物質、Li3V2P3O12等のNASICON型正極活物質等を挙げることができる。
本発明で用いられる電解質層は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間のLiイオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、固体電解質層等を挙げることができる。
本発明のリチウム二次電池は、さらに、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有していても良い。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもアルミニウムが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、銅が好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム二次電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、繰り返し充放電ができ、例えば車載用電池として有用である。また本発明のリチウム二次電池の形状としては、例えばコイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、上述したリチウム二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なリチウム二次電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。
次に、本発明の負極活物質の製造方法について説明する。本発明の負極活物質の製造方法は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒と、を有する反応液を調製する調製工程と、上記反応液と、炭素材料と、を混合させる混合工程と、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の負極活物質の製造方法について、工程ごとに説明する。
本発明における調製工程について説明する。本発明における調製工程は、Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)で表わされる金属酸化物または一般式Mで表わされる金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒とを含有する反応液を調製する工程である。
本工程における上記金属酸化物または上記金属の濃度は、特に限定されるものではなく、目的とする負極活物質の組成等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記反応液中で、0.1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜30質量%の範囲であることがより好ましい。金属酸化物または金属の濃度が上記範囲よりも大きいと、後述する高分子化合物との結合が不十分となり、負極活物質の形状変化および微細化が生じる可能性あるからである。一方、上記範囲よりも小さいと、リチウムの挿入脱離反応を行う金属が減少し、電池容量も減少する可能性があるからである。なお、本工程で用いられる上記金属酸化物、上記金属は、上記「A.負極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
本工程における上記高分子化合物の濃度は、特に限定されるものではなく、目的とする負極活物質の組成等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記反応液中で、0.1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%〜30質量%の範囲であることがより好ましい。高分子化合物の濃度が上記範囲よりも大きいと、リチウムの挿入脱離反応を行う金属の量が少なく、電池容量が減少する可能性があるからである。一方、上記範囲よりも小さいと、上記金属酸化物または金属と反応する高分子化合物の量が少ないため、リチウムの挿入脱離反応により負極活物質の形状変化および微細化が生じる可能性があるからである。なお、本工程で用いられる上記高分子化合物については、上記「A.負極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
本工程に用いられる極性溶媒としては、上記金属酸化物または上記金属の金属原子と、上記高分子化合物の側鎖の酸基とを反応させることが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、水、アルコール、エステル、アミド、ニトリル、スルホキシド、スルホン、エーテル等を挙げることができ、中でも水が好ましい。安価であるからである。
本工程に用いられる撹拌方法としては、上記金属酸化物または上記金属と、上記高分子化合物との反応物と、を上記極性溶媒中で均一に混合することができれば特に限定されるものではないが、例えば、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、振動撹拌、超音波分散等を用いることができる。
次に、本発明における混合工程について説明する。本発明における混合工程は、上述の「1.調製工程」で得られた反応液と、炭素材料と、を混合させる工程である。混合工程において、炭素材料および上記反応液中の反応物は互いに反応はせず、上記反応物が結着材のように作用することにより、炭素材料を固定している状態であると推測される。
本工程における上記炭素材料の質量比率は、特に限定されるものではなく、目的とする負極活物質の組成等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記反応液中で、0.1質量%〜95質量%の範囲内にあることが好ましく、5質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。炭素材料の量が上記範囲よりも大きいと、溶液に占める炭素材料の粒子の数が多くなり反応物による炭素材料の配向抑制が起こりにくくなる可能性があり、一方、上記範囲よりも小さいと、炭素材料によるリチウム挿入脱離反応による充放電効果が発揮されない可能性がある。また、本工程で用いられる炭素材料は、上記「A.負極活物質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
本工程に用いられる撹拌方法としては、上記炭素材料を上記反応液中に均一に混合することができれば特に限定されるものではないが、例えば、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、振動撹拌、超音波分散等を用いることができる。
本発明の負極活物質の製造方法は、必須の工程である上記調製工程および上記混合工程の他に、必要に応じて任意の工程を適宜有していても良く、例えば、加熱工程、乾燥工程等を挙げることができる。
(反応物の合成)
まず、出発原料として、酸化ビスマス(Bi2O3)と、数平均分子量が250000のポリアクリル酸と、水とを準備した。ポリアクリル酸28gを水2800mlに溶解させ、さらに酸化ビスマス31gを加えて、反応液を調製した。次に、この反応液を80℃で3日間攪拌し、反応液を濃縮後、120℃で減圧乾燥することで、反応物58gを得た。
まず、出発原料として、酸化スズ(SnO)と、数平均分子量が250000のポリアクリル酸と、水とを準備した。ポリアクリル酸28gを水2800mlに溶解させ、さらに酸化スズ27gを加えて、反応液を調製した。次に、この反応液をアルゴンガス下で加熱環流させながら4日間攪拌し、反応液を濃縮後、120℃で減圧乾燥することで、反応物54gを得た。
(X線回折測定)
参考例1および参考例2で得られた反応物に対して、X線回折(XRD)測定を行った。その結果をそれぞれ図2および図3に示す。また、酸化ビスマス(Bi2O3)および酸化スズ(SnO)に対して、XRD測定を行った。その結果をそれぞれ図4および図5に示す。
(負極活物質の調製)
出発原料として、酸化スズ(和光純薬社製)と数平均分子量が250000のポリアクリル酸(和光純薬社製)と水とを用いた。まず、窒素気流下でポリアクリル酸12.9gを水400mlに溶解させ、酸化スズ9.8gを加えて、反応溶液を調製した。次にこの反応液を80℃で12時間撹拌した。上記反応液に平均粒径が15μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛社製、CNP-15)を9.8g加え、さらに80℃で3日間反応させて反応液を濃縮後、120℃で減圧乾燥することで、反応物31.5gを得た。得られた反応物10gをボールミルで1時間粉砕し、導電化材のカーボン(TIMCAL社製、KS4)0.5gを加え、1時間メカニカルミリングを行い、得られた粉末を負極活物質とした。
結着材の前駆体であるポリアミック酸10gを溶解した溶剤n−メチルピロリドン溶液3.3g中に、前述の負極活物質4.3g、導電化材の炭素粉末(アセチレンブラックHS100)0.2gを導入し、均一に混合するまで混練し、ペーストを作製した。次に、上記ペーストに、n‐メチルピロリドン1.6gを加えて混練した後、厚さ10μmのCu集電体上に、目付量4.3mg/cm2で片面塗布し、80℃で0.5時間乾燥させた。さらに、得られた部位をプレスし、窒素雰囲気下350℃で2時間焼成させることにより負極電極を得た。
実施例1の負極電極作製において、負極活物質4.3gの代わりに天然黒鉛(伊藤黒鉛社製、CNP-15)4.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、負極電極を得た。
実施例1の負極電極作製において、負極活物質4.3gの代わりに、酸化スズ4.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、負極電極を得た。
実施例1の負極電極作製において、負極活物質4.3gの代わりに、出発原料として、酸化スズ9.8gと数平均分子量が250000のポリアクリル酸12.9gと水400mlを用い、調製することにより得た負極活物質4.3gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、負極電極を得た。
(X線回折測定)
実施例1の負極電極と比較例1の負極電極について、XRD(X線回折)測定を行い、電極密度の変化における電極の(002)面と(101)面によるピーク強度を測定した。上記電極は各電極密度になるようにプレスされ、窒素雰囲気下350℃で2時間保持することにより結着材を反応させてから用いた。その結果を図6に示す。図6に示されるように、比較例1で得られた電極では、電極密度が上昇するにつれて(002)面の強度の増加が見られ、電極内の黒鉛が配向していることが示唆された。一方、実施例1で得られた電極では、電極密度が上昇しても(002)面の強度の増加が見られないことから、実施例1では電極内の黒鉛が配向していないことが示唆された。
(評価用電池の作製)
ペーストの厚さが25μm、電極密度が1.48g/cm3である、実施例1の負極電極を作用極に用い、対極にLiを用いて、CR2032型コインセル(評価用電池)を作製した。なお、セパレータには、ポリエチレン(PE)製多孔質セパレーターを用いた。電極にはエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。
作用極に用いる試験電極が、比較例1で得られた負極電極を、ペースト厚さが28μm、電極密度1.53g/cm3となるようにプレスおよび焼成したこと以外は実施例2と同様にして、コインセル(評価用電池)を作製した。
作用極に用いる試験電極が、合成例1で得られた負極電極を、ペースト厚さが25μm、電極密度2.15g/cm3となるようにプレスおよび焼成したこと以外は実施例2と同様にして、コインセル(評価用電池)を作製した。
作用極に用いる試験電極が、合成例2で得られた負極電極を、ペースト厚さが28μm、電極密度1.53g/cm3となるようにプレスおよび焼成したこと以外は実施例2と同様にして、コインセル(評価用電池)を作製した。
(電池特性評価)
実施例2、比較例2〜4で得られたコインセル(評価用電池)を用いて、電池評価環境温度25℃、電流レート0.1Cで、充放電を繰り返し行った。電圧範囲は、0.01V〜1.5Vとした。図7にサイクル特性の評価結果、図8放電容量維持率の評価結果を示す。
Claims (4)
- Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物との反応物と、
炭素材料と、を有し、
前記金属酸化物または前記金属が、酸化ビスマス(Bi 2 O 3 )、酸化スズ(SnO)またはスズ(Sn)であり、
前記高分子化合物が、ポリアクリル酸であることを特徴とする負極活物質。 - 前記炭素材料が、黒鉛であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
- 正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するリチウム二次電池であって、前記負極活物質層が、請求項1または請求項2に記載の負極活物質を用いて形成されたものであることを特徴とするリチウム二次電池。
- Liと合金化反応またはコンバージョン反応を起こし、一般式MxOy(Mは金属である)で表される金属酸化物または一般式Mで表される金属と、側鎖に酸基を有する高分子化合物と、極性溶媒とを有し、前記金属酸化物または前記金属が、酸化ビスマス(Bi 2 O 3 )、酸化スズ(SnO)またはスズ(Sn)であり、前記高分子化合物が、ポリアクリル酸である反応液を調製する調製工程と、
前記反応液と、炭素材料とを混合させる混合工程と、
を有することを特徴とする負極活物質の製造方法。
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